テレビ放送電波はどんな形?(その11 ガードインターバル)

No53
Shu-chan の
テレビ放送
放送ネットワーク
道しるべ
東海道(藤枝宿)
<テレビ放送電波はどんな形?(その 11 ガードインターバル)>
映像
デジタル化
多
音声
デジタル化
重
データ
階
層
分
割
外
符
号
化
内符号
キャリア変調
内符号
キャリア変調
内符号
キャリア変調
階
層
合
成
時
間
イ
ン
タ
|
リ
|
ブ
放送局における信号処理
O
F
D
M
フ
レ
|
ム
今回掲載の個所は次の表示部分です。
☆
I
F
F
T
ガ
|
ド
イ
ン
タ
|
バ
ル
付
加
周
波
数
イ
ン
タ
|
リ
|
ブ
O
F
D
M
信
号
・
送
信
機
へ
ガードインターバルの概要
地上デジタル放送の大きな特徴として、マルチパスに強く、さらに同
一周波数ネットワーク(「SFN」といいます。)の構築が可能ということが
あげられます。これに重要な役割を果たすのが OFDM 信号に付加される
「ガードインターバル」です。
テレビ電波の受信では、送信所から直接届く電波のほかビルなど建造
物から反射された電波も受信されます。これをマルチパスと呼びますが、
アナログテレビ放送では、テレビの受信画像にゴースト(二重像)とし
て現れました。一方、デジタルテレビ放送でも“0”と“1”の判別の妨
げになる障害となります。また、隣り合う放送局間で同じチャンネルを
使う場合も同様のトラブルになります。
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受信サービス株式会社
http://www.jushin-s.co.jp/
このため、地上デジタル放送を受信する際、時間的に遅れて到達する
信号を誤りなく受信する工夫が必要となります。
ガードインターバルは、OFDM 波を発生させる際に付加されますが、
OFDM 信号の長さに余裕をもたせて伝送することによりこの問題を解決
しています。すなわち、余裕の部分の時間を長くとり、そこに信号の一
部分を重複して挿入することによりマルチパス妨害に強く、あわせて
SFN が容易になり混信を取り除く効果を著しく向上させています。
その反面、映像・音声やデータ放送などの情報部分の割合が減少します。
☆
ガードインターバルの原理
前回の 図 6 に OFDM 変調器の回路構成例には、IFFT で OFDM 波を
発生させるだけでなくガードインターバルを付加する個所があります。
個々の信号を時間軸上で示すと 図1 ガードインターバルを付加された
OFDM 信号の時間波形に示す雑音に似た波形となります。
OFDM 信号は、有効シンボル期間(OFDM 信号本来の1シンボルの期
間)の後半の波形をコピーして、これをガードインターバルとして有効
シンボル期間の前に付加して伝送します。
同じ波形をコピー
同じ波形をコピー
OFDM 信号
の時間波形
ガード
インターバル
有効シンボル期間
キャリア 1
キャリア 2
キャリア N
時間
有効シンボル長で取り出せばどこをとっても良い
図 1 ガードインターバルを付加された OFDM 信号の時間波形
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送信所から送信された電波は、地形等の影響を受けない希望波(直接波)
とビルなど建造物によって反射された電波が合成された波形の電波(受信
波)となります。その様子を 図2 ガードインターバルの概念図
に示しま
す。
信号の後方の一部をコピー
ガードイン
して前方の付加する
ターバル長
有効シンボル長
時間・先
時間・後
(A)希望波
時間
N シンボル長
N+1 シンボル長
N+2 シンボル長
遅延時間
(B)反射波
N シンボル長
N+1 シンボル長
時間
N+2 シンボル長
反射波により
波形が乱れる期間
(A)+(B)
受信波
時間
時間・先
FFT窓
有効シンボル長だけ切り出す
時間・後
図 2 ガードインターバルの概念図
受信波は、希望波(A)と反射波(B)の和となるため、両者を足し合わせた受
信波
(A)+(B)
は、遅延時間に相当した期間だけ乱れを生じます。
ガードインターバル区間は、反射波によって波形が歪みますので、受信
機側での復調には使用しません。OFDM 波を良くみてみますとガードイン
ターバルの初めから有効シンボル期間の終了点まで正弦波として連続して
います。したがって、これらの期間の中で任意の場所から有効シンボル長
と同じ長さの信号を切り出せば良いことになります。
実際に、復調時に用いる区間は、ガードインターバルの波形を付加した
後の区間で、これを有効シンボル区間といいます。
ガードインターバルと有効シンボル長の比を「ガードインターバル比」
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といいます。
ガードインターバル期間に対して遅れて到達した反射波の遅れ時間の関
係を 図 3 のイメージ図で検討しましょう。
ガードインターバル
希望波(A)
有効シンボル期間
信号Ⅰ
反射波(B)
信号Ⅱ
信号Ⅰ
反射波(C)
信号Ⅱ
信号Ⅰ
信号Ⅱ
信号を切り出す期間
図3 マルチパスが存在する場合のOFDM 波の受信
希望波 (A) と遅れた反射波 (B) (C) の電波が受信機に入力されますが、
(B) (C) の遅れがガードインタ-バル内であると図の
のように信号
を切り出せば、”0”、”1” の信号を誤り無く復号することができます。
ガードインターバル 有効シンボル期間
希望波(A)
反射波(B)
信号Ⅰ
信号Ⅱ
信号Ⅰ
反射波(C)
信号Ⅱ
信号Ⅰ
信号Ⅱ
信号を切り出す期間
信号ⅠとⅡ
が重なり混信
図4
マルチパスの遅延時間が長い場合の例
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図4
では、反射波の遅延時間がガードインターバル長より長い場合の例
です。受信機で切り出された信号は、一つ前の信号が混入しているた
め
”0”、”1” の信号の判定が困難になります。
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