平成28年5月25日 国内最大のツーバイフォー建築物 5階建て特別養護老人ホームが完成 ~ミッドプライウォールシステム※1(高強度耐力壁)を国内で初めて採用~ 平成 28 年 5 月 12 日撮影 大規模木造施設 特別養護老人ホーム「花畑あすか苑」の外観 三井ホーム株式会社(本社:東京都新宿区、社長:市川俊英)は、ツーバイフォー工 法(枠組壁工法)では延床面積で国内最大となる5階建て(1階RC造)特別養護老人 ホーム「花畑あすか苑」 (事業主:社会福祉法人聖風会)が平成28年5月、東京都足立 区で完成することをお知らせいたします。 1 この建物は、ツーバイフォー工法の建築物として国内最大であるだけでなく、特に4 層以上の中層木造建築物の地震時の横揺れに有効な新技術としてカナダで開発されたミ ッドプライウォールシステム※1を採用した国内初の建物でもあります。 建築にあたっては、強度を確保するための独自金物を用いたタイダウンシステム※2 の全面的採用に加えて、個室ユニット組み立てによる施工方法を採用するなどの合理化 への取り組みも含めて、大規模中高層木造建築物としての先導的モデルに評価され、平 成26年度の国土交通省木造建築技術先導事業として採択されています。 当社は、成長事業と位置づける施設系建築「with wood(ウィズ・ウッド)」 において、構造強度や空間創造の柔軟性、経済性など、技術や品質をますます進化させ、 地球環境と人に優しい木造による医療・福祉施設、文教施設、商業施設などの大型施設 系建築事業の拡大を目指してまいります。 ※1 ミッドプライウォールシステム(Midply Wall System)は 1998 年カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバ ーのフォリンテック(Forintek Corp. 前身はカナダ国立林産試験場。現在は FPInnovations として改組)とブリテ ィッシュコロンビア大学によって考案された木質構造の高強度耐力壁です。通常のツーバイフォー建築物と同等の 部材のみを使って組み立てられるにもかかわらず優れた水平耐力性能を発揮できるため、特に 4 層以上の中層木造 建築物に有効な施工技術です。 FPInnovations の Dr. Erol Varoglu とブリティッシュコロンビア大学の Dr. Siegfried Stiemer が"Midply Wall System"の開発者であり、知的所有権を保持しています。 ※2 タイダウンシステム P.4参照 1.建物概要 建 築 地: 東京都足立区花畑 4-20-1 建 築 主: 社会福祉法人聖風会 施設名称: 花畑あすか苑 施 工 者: 三井ホーム株式会社 設 計 者: 株式会社メドックス 構造設計: 日本システム設計株式会社 敷地面積: 4,551.39 ㎡(1,376.79 坪) 建築面積: 2,495.83 ㎡( 754.98 坪) 延床面積: 9,773.24 ㎡(2,956.40 坪) 階 数: 5 階建て(1 階:鉄筋コンクリート造 / 2 階~5 階:2×4 造) 建物用途: 特別養護老人ホーム 140 室、短期入所生活介護施設 20 室 認知症対応型デイサービスセンター、居宅介護支援事業所 地域交流スペース(防災拠点型) 工事工期:2015年3月~2016年6月 [プロジェクト概要] 本プロジェクトは、足立区・荒川区・台東区などで複数の特別養護老人ホーム、高齢 者在宅サービスセンターなどを運営する社会福祉法人聖風会(昭和 30 年設立)が運営主 体となり、都有地に特別養護老人ホームを建築するものです。 事業としては、足立区の第 5 期介護保険事業計画最後の公募『都有地活用による地域 の福祉インフラ整備事業』に応募し、16 法人もの応募の中から選定されました。 「花畑あすか苑」とは、建設地の花畑で毎日、明日、未来と末永く利用者に愛される施設 となるよう願いを込め命名され、全 160 室の超大型施設となります。 2 2.平成26年度の木造建築技術先導事業に採択された技術要素 ① 高強度耐力壁ミッドプライウォールシステムを採用 本建物はツーバイフォー工法にミッドプライウォールを組み合わせた工法が採用され ています。外周部をツーバイフォー構造とした建物に、下層階部分(本計画では2~4 階)の内壁にミッドプライウォールを使用することで耐力壁長を減らすことが可能とな り、共用部分に開放的な空間を実現するとともに高い耐震性を確保することができます。 さらにミッドプライウォールシステムの特長として、特別な材料、装置、スキルを必要と せず、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)用の一般的な材料のみを使って組み立てられるこ とがあげられます。平使いに配置するたて枠で構造用面材(OSB)※3を両側からサンドウ ィッチ状に挟み込むため、くぎは二面せん断※4を受けることになります。二面せん断のくぎ 接合部は一面せん断(一般的なツーバイフォー工法)に比べせん断強度が約80%高いとさ れていることから、建物に地震や台風などの力が作用した時には、ミッドプライウォールシ ステムが優れた水平せん断耐力を発揮します。 ねじ(梁接合用) ミッドプライウォールシステム(ダブル仕様) ※3 構造用面材:オリエンテッド・ストランド・ボード。細長い木片を一定の方向に並べて接着し、熱圧成形したボード。 (OSB) ※4 せん断 :はさみなどを使って挟み切るように、物体のある面の平行方向にすべらせるように力が作用すること。 <模式図> 3 ②独自開発のタイダウンシステムを全面的に採用 中層木造建築物では非常に大きな引き抜き力が耐力壁に生じることになるので、これ に対応するため、従来のホールダウン金物に代わる当社独自開発のタイダウンシステム 「ロッドマン」を全面的に採用しました。 「ロッドマン」は、通常の3階建て以下で使用 しているホールダウン金物の10倍以上の強度を発揮し、建物の中でより高い強度を求 められる部分で使用しています。 平成24年度木造建築技術先導事業(第2回募集)で採択された「銀座2丁目5階建 ツーバイフォー耐火店舗併用共同住宅」において一部試行したタイダウンシステムを、 今回本格導入し検証を重ねることで、今後の大規模中層建築物への活用を図ってまいり ます。 独自開発のタイダウンシステム「ロッドマン」 (3階部分) ③大規模木造建築物に適したユニットによる施工法 個室ユニット(壁の箱組)作成によるユニット工法を5階一部で採用致しました。 施工効率と品質の向上、ならびに高所での作業負担を軽減し、安全性の向上を図るこ とを目的としています。 4 2階~5階は東西ウィングで形成されており、東ウィング5階の個室においては、今 回採用する大規模木造建築物に適したユニットによる施工法を交えて組立て、西ウィン グにおいては、従来の施工法(壁パネルをクレーンで吊り上げる)にて組立てています。 ユニットによる施工法を活用することで、今後の中層・大規模木造建築物の施工効率の 向上を図ります。 個室のユニット化による施工 ① ② クローラークレーンにて吊り上げ 設置用の個室ユニットを作成 ④ 東ウィング 5 階の所定の位置に設置 ③ クローラ―クレーンにて吊り上げ、東ウィング 5 階へ 3.実例紹介 ツーバイフォー工法(枠組壁工法)は、木造建築ならではの木の温もりを持つととも に、地球環境負荷の少ない工法です。 当社のツーバイフォー工法による大規模木造施設建築物は、木造でありながら十分な 耐震・耐火性能を備えています。また、建物自体の自重が軽いため、杭及び基礎工事の コスト削減が図れます。その結果として、トータルコストがRC造で建築するよりも約 15~20%抑えられ、建築工期を短縮出来るなどのメリットがあります。 木の持つ断熱性能は冷暖房効果が高いだけではなく、あわせて健康面での効果も期待 できます。 5 神奈川県鎌倉市 有料老人ホーム 2×4工法 4 階建て 耐火建築 70 室 築 11 ヵ月 延床面積 2,384.02 ㎡ 大阪府堺市 サービス付き高齢者向け住宅棟+デイサービス棟 2×4工法 3 階建て+2 階建て 耐火建築+準耐火建築 53 室 築 2 年 延床面積 2,241.17 ㎡+552.19 ㎡ (写真はデイ棟) 福岡県福岡市 サービス付き高齢者向け住宅+介護サービス棟 2×4工法 3 階建て+2 階建て 耐火建築+準耐火建築 63 室 築 2 年 延床面積 2,612.81 ㎡+764.73 ㎡ 6 ■冷暖房のランニングコストを削減します 当社建築の介護施設は、断熱性と気密性に優れており、冷暖房稼働期間を短縮でき、日常 の設定温度を抑えることが可能となります。RC造に比べて冷暖房のランニングコストの節 約が可能で、環境への負荷も軽減できます。 一般的なRC造と2×4工法による木造建築物の ランニングコスト(冷暖房費比較) 鉄筋コンクリート 木 造 ( 2 × 4 工 造(RC 造) 法) ㎡あたり ランニ 約2,100円/㎡ 約1,600円/㎡ ングコスト 延べ床面積2,500㎡の建物に換算すると 年間ランニング コスト 525万円 400万円 出所:COFI(カナダ林産業審議会)「高齢者施設/住宅の未来を探る」より 以 上 「 」ロゴについて 三井不動産グループでは、グループのロゴである「 (アンド))」マークに象徴される「共生・共存」、 「多様な価値観の連繋」の理念のもと、グループビジョンに「 (アンド・アース)」を掲げ、 当社グループのまちづくりが常に地球とともにあることを認識し、人と地球がともに豊かになる社会を めざしています。 「 (アンド)」マークの理念とは、これまでの社会の中で対立的に考えられ、とらえられてきた 「都市と自然」「経済と文化」「働くことと学ぶこと」といった概念を、「あれかこれか」という「or」の 形ではなく、「あれもこれも」という形で共生・共存させ、価値観の相克を乗り越えて新たな価値観を 創出していくもので、平成 3 年 4 月に制定されました。 *この資料は、次の各記者クラブにお届けしております。 ○ 国土交通記者会 ○ 国土交通省建設専門紙記者会 本件に関するお問い合わせ先 三井ホーム株式会社 広報部広報グループ 電話 03-3346-4649 7
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