詳細はこちら

第1章
地域活性化への具体的取組
事 例
3-1-2
北海道富良野市(富良野オムカレー推進協議会)
地域資源を活用した新しい食文化の創造による地域飲食店の活性化
北海道富良野市(人口:23,244 人(2015 年 2月末)、
面積 600.97k㎡)は、北海道のほぼ中心に位置し、基幹
リーなどの各種イベントを開催し、カレーによるまちおこ
産業は農業と観光で、ラベンダー・丘陵地等の景観やス
しに取り組んだ。盛り上がりを見せたカレーのまちおこし
キー、昭和 50 年代後半に放送が始まったドラマ「北の国
だったが、2005 年頃には陰りが見え始めた。その原因に
から」の影響もあり、2002 年のピーク時は年間約 250 万
は、他地域との差別化の難しさや、研究会とカレンジャー
人の観光客が訪れていたが、近年ではその影響も薄れ、
ズ間の地産地消に対する意識のズレなどが挙げられる。
これに続く観光資源の開発が課題になっている。
290
ズ」という。)と称して、カレーパーティーやスタンプラ
こうした状況を打開するため、市外から観光情報誌の
こうした問題意識のもと、2002 年に富良野市役所職員
編集長やホテルの料理長を招き、カレーによるまちおこ
であり、現在は富良野オムカレー推進協議会(以下、「協
しの方向性を検討した結果、2006 年にオムライスとカレー
議会」という。)の事務局長でもある松野健吾氏ら若手職
を組み合わせた「オムカレー」が誕生した。過去の反省
員が日常の職務ではなく市民活動の一環として、基幹産
を活かして、地元食材と提供スタイルにこだわるなど「6
業である農業と観光を結びつけるキーワードの「食」に
か条ルール」を定め、食による地域ブランド化を目指す
着眼し、「食のトライアングル(農・商・消)研究会」
(以
こととした。オムカレー誕生時は市内飲食店 8 店舗で提供
下、「研究会」という。)を発足させた。研究会での議論
が始まり、開始直後に観光情報誌で大きく特集されたこと
の結果、富良野地域の農畜産物を十分に活かすことがで
で、最初のゴールデンウィークには観光客らで各店舗に
きる「カレー」をご当地グルメとして売り込むことになっ
行列ができるほどであった。国内有数の観光地の強みを
た。「まるごと富良野を華麗(カレー)に食べよう!」を
活かし、現在では提供店舗は 12 店舗まで広がり、オムカ
キャッチコピーに、カレーを提供している市内の飲食店に
レーの販売は 2010 年をピークにほぼ横ばいで推移してい
呼びかけ、
「ふらのカレンジャーズ」
(以下、
「カレンジャー
る。
2015 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan
第
3部
「地域」を考える―自らの変化と特性に向き合う―
ランチ旗を立てる」ことを盛り込んでおり、協議会は提供
店に対してランチ旗を販売し、販売益を協議会活動費とし
り、提供店が協議会の活動に必要な資金を負担すること
て捻出している。
で財源を確保できるようになったため、オムカレーを PR
協議会の松野事務局長は長期的な目標として「オムカ
するための活動の幅が広がるなど組織的な活動が可能と
レーが目指すのは、観光客をターゲットにした『ご当地グ
なった。この背景には、協議会設立当初から行政などの
ルメ』だけではない。やがては子供の頃から慣れ親しん
補助金等に頼ることなく独自の財源を確保していることが
だ地域の味として、富良野の美しい風景とともに、人々の
挙げられる。協議会活動の資金を捻出するために提供店
記憶の中に残り続ける『食文化』になることである。
」と
の年会費のほか「6 か条ルール」の中で、「オムカレーに
抱負を述べている。
ランチ旗を立てたオムカレー
【事例からの示唆】
■成功要因
協議会の様子
菜、肉などに富良野産や北海道産を使うことを定め、特
産品であるチーズ(バター)もしくはワインを使うことを
地域おこしを行うには、地域にある様々な資源を見つ
明記した「6 か条ルール」を定めた。こうした最低限の
め直し、それらを活用できる商品開発を行うことが極めて
ルールを定めつつ、提供店同士が切磋琢磨してよりよい
重要である。またそうした商品は地元の住民に愛されて
商品をつくり上げていくことができる環境づくりは極めて
こそ対外的に発信できるものであり、地域の様々な主体
重要である。
を巻き込むことが必要となる。
第1 節
オムカレー誕生から3 年が経過した 2009 年に提供店主
体による協議会を設立した。協議会を立ち上げたことによ
またこうした取組を対外的に発信するための中間支援
本事例では、当初開発したカレーでは商品独自性や統
的な役割を果たす人や組織が必要であり、それらを支え
一したブランドを維持することが難しくなったことを受け、
る財源の確保が重要である。本事例のように、個別の店
その反省を踏まえて、外部の支援を活用しながら新たな
舗の視点ではなく第三者的な視点から情報を発信するこ
商品開発を行う、PDCA サイクルを実践した点が成功要因
とができる行政職員が中心となった協議会が PR を担い、
として挙げられる。また、地元の飲食店が大きなリスクを
提供店が活動に必要な資金を負担することで、財源を確
伴わずにオムカレーを提供できる仕組みを構築したことも
保できるようになり、オムカレーを PR するための活動の
大きく、オムカレーが開発されてから3 年間は、実績や成
幅も広がるなど組織的な活動が展開できるように工夫す
果が見えるまでは協議会を立ち上げず、必要最小限の資
ることが求められる。
金で情報発信・PR に努め、認知度を高めていった点が特
徴的であるといえる。
■今後の課題
現在、12 店舗がオムカレーを提供しており、今後提供
■地域資源の活用
店が増加する見込みではあるが、その際のブランドイメー
-地域資源のブランド化による地域飲食店の活性化-
ジの維持方法に関しては課題が残る。こうした点につい
地域資源を活かして特産品を開発し、他の地域に負け
て、協議会では「将来的には他地域に比べ多くの店舗で
ないブランドを構築するためには、地域内におけるブラン
オムカレーがメニュー化され、観光客のほか地域住民も
ドイメージの共有と、ブランドを維持するためのルール作
飲食店や家庭の食卓で当たり前のようにオムカレーを食
りが必要となる。本事例では地域資源を用いたカレーの
べるような文化を醸成することが重要である。
」と考えて
商品開発の際の反省も踏まえ、使用する米、たまご、野
いる。
中小企業白書 2015
291