第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 18】 実施時期は、今年は 9 月から 12 月までの間 で、14 の医療機関を対象に行っております。 講師として、4 名の輸血療法の専門家の先生に (2)血液センターにおける輸血医療サービスへの取り組み (中小規模医療機関への輸血検査研修、赤血球抗原情報の提供) お願いしております。各講師の先生それぞれお 日本赤十字社 関東甲信越ブロック血液センター 忙しい中、ご講義をお願いしておりまして、大 日 野 郁 生 変恐縮ではございますが、申込みいただきまし ても実施できる医療機関数が限られておりま す。実施する医療機関数については、年々拡充 を図っているところでございます。できるだけ ご要望にお応えできるよう努力したいと考え ておりますが、申込みいただいても、すぐにお受けできない場合がございます。この点につきまし (座長:石丸先生) それでは、引き続きまして、血液センターの取り組みについて、関東甲信越ブロック血液センタ ーの日野さん、よろしくお願いいたします。 ては深くおわび申し上げます。ただ、引き続きご利用いただきまして、適正使用につなげていきた 【スライド 1】 いと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 以上、簡単ではございますが、東京都の取り組みにつきましてご紹介させていただきました。今 後ともよろしくお願いいたします。 皆さん、こんばんは。血液センターの日野と 申します。 まず初めに、今回は血液センターの取り組み (座長:小山先生) というより、現在行っているサービスのご案内 ありがとうございました。 になります。2 点とも東京都が中心になって全 ただ今、東京都の血液製剤適正使用に向けた取り組みについてご講演いただきましたけれども、 国に展開出来ているのは、医療機関の皆さんの フロアのほうから何かご質問等ございますでしょうか。よろしいですか。 これは先生、100 床未満のところで輸血療法委員会が開かれていなかったので、そこに対するア ドバイス事業が非常に重要だという理解でよろしいですか。 (回答:渡瀬先生) 使用量という点で見ると、確かに病床数の多くないところにつきましては少ないかもしれません。 ご協力があって、こういった取り組みができて います。こういった事業を展開していく上では、 医療機関の皆さんのご協力や支援があってで ございます。今後とも、このような際には、寛 大な気持ちを持ってアンケートや調査にご協力いただけると助かります。 今後そういったところに関しましても、輸血療法適正使用に向けて、アドバイス事業という形で進 めさせていただきたいと思います。申込みの数につきましては、年々減っているという状況もござ いますので、ぜひ一度お申込みいただければと思います。 【スライド 2】 (座長:小山先生) 申込数について実施が少ないですね。それは最後に先生がおっしゃったように、人が足りないと いうことでしょうか。 (回答:渡瀬先生) では、始めさせていただきます。 今回お話しする内容、まず 1 点目は中小規模 の医療機関に対する輸血検査研修会を始めて いますので、その内容です。2 点目は、どちら 専門の先生にもお願いしている中で、実際に実施している数については、年々少しずつ増やして かというと大きな医療機関向けへの情報にな いるところでございます。全て申込みいただいたところにというと、なかなか難しい部分もござい りますが、赤血球抗原の情報提供を今年の 5 ますが、今後とも拡充は図っていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。 月から開始していますので、そちらのご案内を させていただきたいと思います。 (座長:小山先生) これから申し込んでいただいた場合にも、全てには対応出来なく、そこは何とかしなければなら ないというところですね。ほかによろしいですか。 38 それでは、前段はこれで終わりまして、後段を石丸先生にお願いいたします。 39 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 3】 した。実際に、その解決策にはどういった方法を採られるかというと、一番が回答が多かったのが、 46%で血液センターに相談するといった回答でした。 では、まず 1 つ目からお話をしていきます。 【スライド 6】 初心者向けの研修会を実際に開いた場合に は、参加をする意思がありますかといった質問 では、70%の施設が参加をしてみたいといっ た希望がありました。 【スライド 4】 これは、平成 25 年に全国の医療機関に供給 された赤血球製剤の医療機関病床別の供給数 になります。10,000 施設の医療機関で輸血が されていることになります。300 床以上の大き 【スライド 7】 な医療機関は赤血球の輸血量も多いので、実際 また同時期に、東京と埼玉県を除いた医療機 に使われる赤血球の量は、相対的には 70%ぐ 関に対して同じようなアンケートをしており らいを占めます。一方で、病床を 20 床未満の ます。その中で血液センターへの要望として、 施設は、4,000 施設にもなります。そして 300 「検査の困りごとがあった際に、血液センター 床未満の医療機関は、総施設数の 9 割ぐらい に何か要望することがあったら教えてくださ の輸血を実施しているといった背景が供給数 い」では、研修施設を血液センターに設置して からは見て取れます。 ほしいですとか、自分の施設に検査技師を派遣 して研修をしてほしい、複数施設集めての研修 会の開催をしてほしいという回答が、全体の 7 割ぐらいでした。 【スライド 5】 今回、検査の実技研修会を始めるに至った経 緯についてお話しします。平成 25 年、都内の 医療機関で 300 床未満の病院にアンケートを させていただきました。ご協力ありがとうござ います。その中で、「日常の輸血検査で困った 経験がありますか」という質問からです。年間 1 回しか輸血をしない医療機関で問題なく輸 血がされれば、当然なしというご回答かと思い ますが、半数以上は経験があり、その困った経 験の検査項目についても多岐にわたっていま 40 41 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 8】 【スライド 10】 そういったことを踏まえまして、平成 26 年 すみません。少し見にくくなります。血液セ 1 月より、東京の辰巳にある製造所では、検査 ンターが実習を展開している以上は、最終的に の実技講習会を開催しております。これは今年 は病院において、輸血の安全性が高まらないと、 10 月までの開催の状況になります。若干供給 行っている意味も若干ぶれてしまいます。そこ 数が多い施設もありますが、現在 180 施設、 で実習終了後には、医療機関向けに、実習を通 延べ 245 名の方の参加をいただいております。 じて、参加施設が改善されることにより、より 実施回数は 36 回です。 安全な輸血になるのではないかといった内容 実習の特徴としては、中小規模施設で、院内 を、協議書という形で提供させていただいて、 で輸血検査をしている施設に限定させていた 今後の病院全体のフォローアップもさせてい だいております。自施設で輸血検査せずに全部 ただいています。これは各病院の担当の MR 外注でやっている施設は、ここには該当しないということになります。また、不規則抗体の同定ま が持参して、改善へのサイクルを回していく展開を現在しております。 でできている施設の方は、こちらの研修に来ていただいても、あまり勉強することはありませんの で、そういった施設も除かせていただいています。 この講習会は年に 2 回募集をしていますが、今年度分としてはすでに終わっております。ご興 味のある医療機関で、こんな案内は来たことがない、こういう勉強会をしているのを知らなかった 内容は基礎的な実習です。実践的と書いていますけれども、今回この実習を展開するにあたって、 もともと病院で輸血検査をされていた職員に実習をお願いをしております。ちょっと言いにくいで すけれども、血液センターはどうもお堅いことしか言ってくれないといったイメージがあるかもし といった病院の方がいらっしゃるようでしたら、ぜひご自身の医薬情報担当者、東京都センターの 学術にご連絡いただければと思います。 また、ここにはクリニックの方もいらっしゃっているかと思いますけれども、クリニックでは検 れませんが、この研修では、ガイドライン等守ってもらわなければいけない部分は守るべきですが、 査技師ではなく、看護師がクロスマッチしなければならない現状があるということを時々耳にして もう少し実践的な実習の内容で対応しております。 おります。その是非の論議はありますけれども、そういった看護師向けの実習も来年度は展開をし ていこうかと考えています。 【スライド 9】 【スライド 11】 実習内容は不規則抗体のスクリーニング検 査、一部簡単な同定検査をしています。非常に 基礎的な内容のみになります。現在は最大 8 では、2 点目です。赤血球抗原情報の提供に ついてお話をしていきます。 名の実習生に対して、2 名ないし 3 名の講師が 付いて、みっちり実習をしています。併せて管 理業務、製剤の保管や、輸血実施における留意 点を説明します。ガイドラインに書いてあるこ とばかりではなく、病院ではこういったところ に注意する必要がある、こういった資料をきち んと保管しなければいけないなど実践的なこ とを説明しています。場合によっては、それらの見本の提供もしているというのが現在の講習内容 になります。 42 43 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 12】 【スライド 14】 まず、赤血球抗原情報の提供に至った経緯で 検索の方法になります。血液センターでは、 す。大規模病院の皆さま、お待たせしましたと 血液センター独自のシステムがありますので、 言わんばかりですけれども、昔から全国大学病 こちらから検査をしている赤血球の抗原情報 院輸血部会議では日赤への要望として、購入済 について抽出し、クラウドサーバー上にアップ みの血液製剤について、ABO、D 抗原以外に します。病院では、個別の医療機関コードとパ も抗原検査(E、e、C、c、Fy、Jk など)を実 スワードを入力し、製剤のバーコードを読み取 施しているのなら開示をしてください。院内血 っていただくと、抗原情報が得られるといった を当日緊急で使いたいときには、そういった抗 非常に簡単なものになっています。 原の情報提供をしてくれないんですかと、ずっ と言われておりました。 われわれ血液センターの人間も、もちろんそういう情報を知っていますので、いつになったら行 われるのかと思っていましたが、なかなか話が進みませんでしたので、東京都として、そういった 【スライド 15】 情報提供ができないかと進めてまいりました。 実際に利用いただいている医療機関、また血 液センター内部からのコメントになります。一 【スライド 13】 番のメリットは、緊急輸血が必要になった場合 まず進めるにあたって、どういった抗原を選 でも、院内在庫の選択ができる。もちろん院内 択すべきかといったところになります。当然、 在庫があっての話ですが、院内在庫を至急使う 抗原の頻度の高い、いわゆる稀血の情報を開示 場合に使用ができる。逆に、院内の在庫血より、 しようにも、それは開示できるものもありませ 仮に抗 E 抗体保有の患者さんが急に輸血をす んし、適合した製剤もないので、そういったも るかもしれないからということで準備してお のは冷凍血液や、登録者の対応など病院から予 くこともできます。 約をいただいて対応するといった方法しかあ りません。 また、以前は院内で、抗血清を使って適合血 を検査されていたかと思います。その際は、抗原頻度が 10%の血液型の時は、10 本検査してよう 逆に、抗原頻度が非常に低い製剤は容易に適 やく 1 本見つかる。今はそれがシステム的に見つけられますので、検査の手間が省けるし、試薬 合血があります。実際問題となるのは、抗原頻 代も節約できるということになります。ただ、当然ですが、在庫血液がないので特に利用の機会が 度として見ると 10~90%ぐらい、よく目にする抗原の名前が載っていると思いますけれども、そ ないといったご意見もありますので、在庫のない医療機関にとっては、あってもしようがないシス の中でも臨床的意義のない抗体は外させてもらって、臨床的意義のある 11 抗原についての情報の テムということになります。 開示を行いました。 血液センター側として見ると、抗原陰性血のみの供給もありますが、在庫を持っている医療機関 で在庫から見つけられることも増えておりますので、配送回数が減少していることもございます。 おかげさまで、5 月から東京での展開をさせていただいていますが、現在は全国的な展開にシス テムが運用されております。一重に皆さまのご協力があっての話です。 44 45 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 【スライド 16】 最後、使用上の注意ということで、これは皆 さまからご要望がある中で、お願いというより も、ごめんなさいというような内容になります。 6 輸血療法シンポジウム テーマ:周産期の輸血療法について 検索しても情報が付加されていない。いわゆる 〔座長〕 慶應義塾大学 輸血・細胞療法センター 未検査のものがあります。輸血用血液製剤の出 東京慈恵会医科大学附属病院 輸血部 庫について、この検査が 100%必要とされてお 半 田 誠 田 﨑 哲 典 りませんので、全ての献血者について検査がさ れておりません。血液センターとしても、なる べく情報付加するように検査の頻度を上げて いますが、通常検査でそこまで追い付いていな いので、抗原情報が載っていない製剤があるといったところについては、ご理解いただければと思 (座長:田崎先生) それでは、輸血療法シンポジウム「周産期の輸血療法について」を、始めたいと思います。進行 は私、慈恵医大の田﨑と、慶應大学の半田先生です。 います。 また、今は 30 日で抗原情報を破棄する形で、新しい製剤の情報のみを付加しています。過去 周産期の輸血療法に関しましては、皆さまご存じのように、いろいろな問題があるわけです。そ 使用した製剤の情報を載せられないんですかといったお話もだいぶ聞きます。情報量が膨大である の主な理由は、一般の成人と異なり赤ちゃんが使うということと、妊娠・出産が関わるということ ことで、ある一定の部分で情報を破棄しないと使い勝手が悪くなってしまう状況がございます。 です。安全な輸血には検査が重要で、特に新生児や妊婦は非常に難しいところがあります。その辺 輸血は、交差適合試験を実施して行うのが大前提であります。今回の抗原情報は付加情報とし て取り扱っていただくよう、ご理解いただければと思います。 を東邦大学の奥田さんに、 お話しいただきます。 臨床では産科的 DIC(Disseminated Intravascular Coagulation:播種性血管内凝固症候群)と輸血が大きな問題で、これに関しては兵藤先生からお 話をいただきます。 【スライド 17】 以上、2 点。ご清聴ありがとうございました。 それから、もう 1 つは産科クリニックへの血液供給と問題点検証ということで、これは血液セ ンターのほうから、どのような形になっているのか。抄録を拝見しますと、クリニックで使われる ことが非常に多くなっているという話がありますので、その辺を含めて、お話しいただきます。 それでは先ずは、一番最初に申し上げましたけれども、藤田先生にそれらの問題点をまとめてい ただき、つまり小児への輸血、特に分画製剤、血小板の輸血、合成血ですね、そして産科出血への 対応といったことに関してオーバービューをいただいた後に、今申し上げたような項目に関して、 4 人の先生からご講演いただきたいと思います。 それから、一番最後には総合討論。おそらく 20 分程度になるかもしれませんけれども、そうい う形で進めたいと思います。 それでは、まず最初に墨東病院の藤田先生から、オーバービューということでお願いいたします。 (座長:石丸先生) ありがとうございました。 今日ご紹介にありました東京都や血液センターの取り組みが、今後ますます有意義なものとなる ためには、ご来場の皆さまの積極的な参加が必要だと思います。残念ながら質問の時間が取れませ んので、今後とも皆さんのフィードバックをいただくこととして、このセッションは終了とさせて いただきます。ありがとうございました。 46 47 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 紹介したいと思います。また、産科出血への治療の変化としましては、輸血の順番とか輸液の内容、 DIC の治療薬、放射線学的な止血、外科的な手術も含めて考え方が変わってきていると思います オーバービュー ので、その辺も確認したいと思っております。 東京都立墨東病院 輸血科 藤 田 浩 【スライド 3】 これは平成 25 年の人口動態調査で、出生場 【スライド 1】 所を国で統計を取っています。左側が全国で、 右側が東京です。東京の場合は、全国に比べて 墨東病院の藤田です。 病院で生まれる方が多いですが、決して診療所 で生まれるお子さんも少なくはありません。従 いまして、診療所で出産されて、弛緩出血で大 量出血になることはゼロではなく、小規模なク リニックでも輸血をせざるを得ないケースも あるかと思います。 【スライド 4】 これは墨東病院の事例です。墨東病院は救命 【スライド 2】 目的の母体搬送を受けておりまして、1 年間で 本日は、「周産期輸血:残された課題」と書 10~14 件ぐらいですが、搬送前に輸血を受け きましたけれども、新生児領域では小容量分割 ている患者さんが年々増えていることを示し 輸血について、カリウム吸着フィルターの出現 た図です。2010 年には「産科危機的出血に対 によって現場が混乱しているということを 1 する対応に関するガイドライン」が公表されて つ課題として挙げております。これにつきまし おり、ショックインデックスに基づいた治療を ては、本日は討議されませんが、日本輸血・細 行うということが徹底されている背景から、診 胞治療学会で、タスクフォースで検討中です。 療所でも、赤血球輸血、新鮮凍結血漿を輸血す じきにご案内できることとなっておりますの る機会が増えているものと推察しています。 で、そちらをご参照していただきたいと思いま す。 また、交換輸血に関しても都内ではだいぶ減りましたけれども、合成血と ABO 不適合妊娠の場 合は使いますけれども、ABO 不適合妊娠以外の交換輸血には同型を使うということで、同型の合 成血はわが国では存在しないという問題もございます。新生児輸血、胎児輸血など、言えばきりが なく、残された課題はあるかと思いますが、本日は主に産科輸血のほうで議論していただきたいと 思います 1 つは小規模医療機関での輸血が、母体搬送を受け入れる墨東病院で感じていることですが、母 48 体搬送前の輸血、輸液、抗 DIC 治療について、まだまだ課題があるのではないかということをご 49 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 5】 【スライド 7】 平成 27 年度のアドバイス事業は、中規模病 転院前の輸血使用状況をまとめてみました。 輸血されている分は、赤血球が 8 例、新鮮凍結 院は例年どおり行われ、先ほど課長から説明が 血漿のみが 2 例、あとは RBC+FFP の組み合 あったとおりです。今年度は小規模医療機関に わせなどの使用状況です。 関して 2 医療機関、在宅輸血・外来輸血主体の また、抗 DIC 療法としては、注目はトラネ クリニックにアドバイス事業で伺っておりま キサム酸が 1 例しかないということです。 す。結構、熱心で先生方の出席率も非常によか CRASH Study で産科出血に対してトラネキサ ったです。今回、産科クリニックは対象外にな ム酸が有効であるというデータが出て注目さ っております。今後、産科クリニックなどの小 れていますが、実際、搬送前に使用される例は 規模診療所に対するアドバイス事業を、どう展 少なく、逆にフサンなどのメシル酸化合物の使 開していくかというのも東京都の課題と考え 用とか、AT III(アンチトロンビン III)製剤の使用が多いというのがわかるかと思います。 ております。 【スライド 8】 【スライド 6】 その事例を分析していく中、特に 20 床未満 が 13 例、13 例中 9 例が輸血していますが、考 本日のシンポジウムの説明は、座長の先生か らご紹介がありましたので、これは省略させて いただきたいと思います。以上です。 えなければいけないことを 2 点、赤字で書きま した。転院前に FFP のみが 2 件です。後ほど、 兵藤先生の講義で FFP は赤血球に先んずるこ とがあるというご説明があるかと思いますけ れども、そうは言っても FFP だけ輸血されて 搬送される例がありました。 また、小規模ですが転院前に、RBC 12U、 FFP 10U、PC 10U(約 6L)という大量輸血 をされる患者さんもいらっしゃいました。不意に大量輸血をせざるを得ないケースもありますので、 その際の温度管理、電解質管理などの認識、どのように対応していくかという知識の獲得が重要で はないかと考えました。 (座長:田﨑先生) ありがとうございました。 藤田先生から幾つか問題点が指摘されましたので、これは一番最後のディスカッションで取り上 げたいと思います。先生、ありがとうございます。 50 51 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 3】 (1)周産期領域における輸血検査 ~産科 不規則抗体検査を中心に~ 妊娠初期検査における輸血関連検査としま しては、こちらに示していますように、ABO 血液型、RhD 血液型、不規則抗体スクリーニ 東邦大学医療センター大森病院 輸血部 奥 田 誠 ングが挙げられております。ABO、RhD 血液 型検査は、妊娠初期の 15 週目までに実施する ことが強く推奨されております。不規則抗体ス クリーニングに関しましては、間接抗グロブリ (座長:田﨑先生) ン試験を含む方法で、妊娠初期および後期に検 続きまして、第 1 席、 「周産期領域における輸血検査」ということで、東邦大学の奥田先生、お 願いいたします。 査が必要とされております。特に妊娠 28 週以 降に可能な限り実施することが望ましいとさ れております。これらの検査に関しましては、母児間不適合妊娠の予測、または対応として行うこ とが目的となっております。 【スライド 1】 皆さま、こんばんは。東邦大学の奥田と申し 【スライド 4】 ます。 本日は、 「周産期領域における輸血検査」、特 ISBT(国際輸血学会)において赤血球同種 に不規則抗体検査を中心にというお題を頂戴 抗原は、現在 342 種類、303 抗原、33 系列に いたしまして、お話をさせていただきます。よ 分類されております。周産期領域におきまして、 ろしくお願いいたします。 これら全ての抗原に対し、臨床的意義のある抗 体が産生されるわけではありません。 【スライド 2】 日本産科婦人科学会、および日本産婦人科医 【スライド 5】 会により、「産婦人科診療ガイドライン」が提 示されております。本ガイドラインにおきまし 周産期における妊婦と胎児・新生児への臨床 ては、学会のコンセンサスミーティングに基づ 的意義のある抗体とは、生体内で赤血球を破壊 き作成され、CQ(Clinical Question)のレベ し、溶血性輸血副作用の原因、または胎児・新 ルも同時に提示されております。この中には、 生児溶血性貧血の原因となる赤血球抗体のこ 臨床検査を含む輸血検査において、妊婦の管理 とを指します。一般的に、これら抗体は間接抗 という項目の中で掲載されており、CQ レベル グロブリン試験(IAT)で陽性となります。ABO も非常に高く提示されております。 血液型以外では、わが国で特に問題となる抗体 は、抗 Rh 系、抗 Duffy 系、抗 Kidd 系、抗 Diego 系などです。われわれ検査技師として、 52 最も気を付けなければいけないのは、これら抗 53 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 することが望ましいです。出生後、児の ABO 血液型検査と、RhD 血液型の検査を行うことが望 体を見逃すことなく確実に検出することであると考えております。 ましいとされております。 妊娠初期または妊娠期間中から不規則抗体が検出されている場合は、妊娠中期には 4 週ごと、 【スライド 6】 後期におきましては 1~4 週の間隔で Sc 検査を実施し、抗体価の上昇を確認する必要があります。 続きまして、周産期領域における主な不規則 児の出生後には、直接抗グロブリン試験(DAT)を実施します。DAT 試験が陰性であっても児の 抗体の産生機序についてお示しいたします。経 血球から抗体の解離試験を実施することが望ましいと考えられています。いずれにしましても、不 胎盤出血が主な原因であるといわれておりま 規則抗体を確実に検出することが重要なポイントとなっております。 す。特に、妊娠中期から後期にかけ、母体内で 児の抗原が胎盤を経由し母体血流に入り込む 【スライド 9】 現象です。母体内に入り込んだ児の抗原に対し、 抗体が産生され、胎盤を経由し児に入り込む現 先にも示したように、見落としなく効果的に 象が、これら疾患の原因です。 臨床的意義のある抗体を検出することは、とて も重要なことです。こちらのスライドは、日臨 技(日本臨床衛生検査技師会)の精度管理調査 報告書から抜粋した内容です。現在多くの施設 で高感度な LISS(低イオン強度溶液)、または 【スライド 7】 こちらのスライドは、やや古いデータですが、 PEG(ポリエチレングリコール液)を用いた 間接抗グロブリン試験が実施されております。 さまざまな報告からもわかりますように、微量 これら LISS、PEG については、効果的に抗体 なものも含め経胎盤出血は、ほぼ全例の妊婦さ を検出することが広く知られております。 んで発生していると考えられています。 【スライド 10】 こちらのデータは、1999 年に日本輸血学会 に投稿された論文から引用いたしました。デー タとしてお示ししますように PEG を使用した 間接抗グロブリン試験は、アルブミンを使用し た間接抗グロブリン試験データに比較して、臨 【スライド 8】 こちらは、「産婦人科診療ガイドライン」に 床的意義のある抗体に対し高感度に抗体を検 出されることがわかります。 準じた新生児溶血性疾患の輸血関連検査、およ び検査の実施タイミングについて、ご説明をさ せていただきます。 RhD 陽性、不規則抗体陰性の場合、再度妊 娠後期で Sc 検査を実施し、陰性であれば、そ の後の検査は不要となります。RhD 陰性の場 合には、RhD 不適合妊娠の可能性があるため、 54 20 週目、28 週目、妊娠後期に Sc 検査を実施 55 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 11】 一昨年 12 月に、『日本輸血細胞治療学会誌』 間が必要です。 昨年度より、関東甲信越ブロック血液センターより、赤血球抗原検索システムが配布されており にリリースしました「赤血球型検査ガイドライ ます。これは、血液センターでの抗原検査一次スクリーニングの結果を基にデータベースに登録さ ン改訂版」です。こちらに記載されております、 れており、医療機関においても製剤の製造番号から検索できるシステムです。今年の 12 月より全 臨床的意義のある抗体と抗原陰性血の選択に 国展開され、血液製剤の在庫を持つ医療機関においては、非常に有用性の高いシステムとしてリリ ついてお示しいたします。今回のガイドライン ースされております。 改訂にあたり、周産期領域を含め、臨床的意義 の高い抗体に対し、抗原陰性血の選択の必要性 【スライド 14】 を明確にいたしました。ご参照いただければ幸 これが具体的に検索したときの内容です。お 甚です。 手持ちの在庫血の製剤番号から、迅速に抗原の 検索が可能になっております。周産期領域にお いての緊急手術や出産後の管理、新生児の輸血 【スライド 12】 への対応については、非常に有意義なものです。 こちらのスライドは、産婦人科診療ガイドラ インより、抗 D 以外に留意すべき不規則抗体 として胎児・新生児溶血性疾患に関与すると考 えられる重要な抗体、および可能性のある抗体、 または関与しない抗体についてまとめてみま した。特に、抗 c、抗 Jka など重要な抗体とし て挙げられています。可能性の高い抗体として は、抗 E、抗 Dia、抗 M、比較的可能性の低い 【スライド 15】 S、抗 まとめになります。効率よく臨床的意義のあ Jra などが知られています。一方、関与しない る不規則抗体を検出すること、これは非常に重 ものとしては、抗 C、抗 e、抗 抗体としては、抗 Lewis や Jkb、抗 P1、Xga などが挙げられています。これらの留意すべき抗体が検出さ れた場合には、抗原陰性血を準備し対応することが重要です。 要な責務です。不規則抗体を有する妊婦さんに ついて速やかに臨床側へ報告し、分娩時の予測 せぬ異常出血に備えるために、自己血輸血また は抗原陰性血の準備を整えることが大事です。 不規則抗体を保有する妊産婦、HDFN(胎 【スライド 13】 児・新生児溶血性疾患)の可能性を有する児に 先ほど、日野さまからもご紹介がありました ついては、出生後の児の血液型、直接抗グロブ ように抗原陰性血ですが、院内に在庫があり、 リン試験および抗体解離試験を速やかに実施す かつ院内で抗体試薬の準備がある施設におき ることが重要なポイントです。HDFN の原因抗体を検出し、輸血による治療等が必要であれば、速 ましては、自施設で抗原陰性血を確保すること やかに抗原陰性血を用いて対応することが重要です。 が可能です。一方、血液センターに製剤を発注 以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。 し抗原陰性血を得ることも可能です。前者にお いては、全ての施設で主要抗原に対する抗体試 薬を準備することは非常に困難です。後者にお いては、血液センターから供給されるまでの時 56 57 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 2】 (座長:田﨑先生) ありがとうございました。 さて、産科にとって出血というのは、死亡に ただ今の奥田先生のお話、新生児や周産期の輸血検査ですが、何かご質問ありますでしょうか。 直結する重要な事項であります。日本産婦人科 1 件ほど受け付けたいと思いますけれども。特に、妊婦の不規則抗体の管理に関しては非常に大事 医会では、平成 21 年から妊産婦死亡の症例を なことと思いますが、いかがでしょうか。ございませんか。 全例登録するような事業を始めておりますけ そうしましたら、一番最後に総合討論で、検査の件を含めてお願いしたいと思います。 れども、妊産婦死亡の原因として一番多いのは 産科危機的出血、こちらにあります古典的羊水 塞栓症。羊水塞栓というと、肺に羊水の成分が (2)産科出血の輸血と抗 DIC 対策 詰まることをイメージされると思いますが、実 際に問題となるのは激しい DIC が起きること で、こちらも出血が生命に直結します。このよ 東京都立墨東病院 産婦人科 兵 藤 博 信 うに妊産婦死亡の原因としては、出血が一番問 題となっている現実がございます。 (座長:田﨑先生) それでは、次の第 2 席、 「産科出血の輸血と抗 DIC 対策」ということで、墨東病院の兵藤先生、 よろしくお願いします。 【スライド 3】 特に、産科危機的出血の原因をさらに、この ように分類しました。羊水塞栓症が最も多く、 【スライド 1】 羊水塞栓症と判断つかないような弛緩出血、こ 墨東病院産婦人科の兵藤と申します。 の子宮型羊水塞栓症と弛緩出血は似たような 周産期の診療におきましては、特に出血に対 病態ではないかということが最近言われてお する輸血というのは非常に重要なものでござ ります。これらは激しい DIC を起こしますの います。日ごろから大変お世話になっているわ で、こういったものへの対策をわれわれは日常 けですけれども、この場を借りてお礼申し上げ 考えていかなければなりません。 ます。 【スライド 4】 妊産婦死亡症例を基にして、毎年、母体安全 への提言が医会から出ておりますけれども、そ の中で輸血というのは大変重要な役割を占め ております。実は、出血が一番多いというのは 日本の特徴でありまして、欧米では出血による 死亡は減少傾向にあるといわれております。た だ、これには別の事情がありまして、欧米では 心疾患、心血管病変に基づく死亡というのが一 58 番多く、日本の出血が多いというより、欧米で 59 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 7】 はほかにもっと多い原因があるというのが実際のところでございます。 先ほど藤田先生の話に出てまいりました、2010 年「産科危機的出血への対応ガイドライン」と 羊水塞栓症は、産科 DIC が先行して、それ いうもので、われわれ臨床家が適切な輸血を行うような道筋が示されております。翌年の提言には、 で大量出血につながるというパターンです。こ 「日ごろからシミュレーションを行う」「地域の実情を考慮した」というような文言が入っており ちらは特に、FFP を先行して投与しないと何 ます。さらに翌年には FFP の投与の重要性を、これは産科に特徴的な出血 DIC の状態だというこ とも収拾がつかない。産科出血には、それ以外 とを死亡症例のところでまとめております。こちらについて、さらにこの後、述べていきたいと思 にも癒着胎盤、前置胎盤、あるいは胎盤が残っ います。 て、あるいは子宮の損傷が起きてというような 出血もあります。これは一般の大量出血から DIC というものと同じような経過をたどりま 【スライド 5】 産科出血の特徴というのは短時間、1 時間ど すが、他科の疾患に比べると凝固因子の消費が 非常に激しいので、最終的には FFP を有意に ころではなく、分単位で状態が変わるくらい激 多く補っていく必要があります。 しい出血が起こり得ます。さらに凝固因子の消 この提言の中では、産科 DIC スコアが 8 点以上あれば、FFP を 15 単位以上、アンチトロンビ 費が激しい。単純に出血という事象が起きただ ンを 3,000 単位投与するというようなことが明記されています。 この産科 DIC スコアというのが、 けでなく、 妊娠の成分が体内に入ることで DIC 非常に実践的な DIC スコアで、これは他科と違って産科の実情に即したスコアであります。 がさらに加速的に起こります。そういった状況 が、例えば出血が起きやすい分娩というのは、 前もって予測できれば、前もって準備するとい 【スライド 8】 う手が打てますけれども、まったくそういうも のが準備できないところで起こり得る。つまり、 どういったものかといいますと、まず疾患だ 開業医さんのお産でも生死に関わるような出血が十分起こり得るというのが大きな特徴です。 けで点数がスコアリングされます。検査結果と いうのも一応スコアリングに入りますが、基礎 疾患、例えば常位胎盤早期剥離、羊水塞栓症、 あるいは低凝固性の出血が2,000mL 以上あれ 【スライド 6】 ば、そういったことだけで8点、あるいは、血 これは、その母体安全への提言で挙げられた 圧などの臨床症状だけでも8点を超えたら DIC 症例です。30 歳代の経産婦さんで、一般開業 に進展する可能性が高いので治療を始めまし 医さんでのお産です。妊娠 39 週にお産して、 ょう、検査結果を待たなくてもいい、というこ 出血が 1,500mL ぐらいになったので高次医療 とが提唱されているスコアリングです。症状だ 機関へ母体搬送されました。到着時からショッ けで治療を始めなさいというようなことが、実際に言われています。 クインデックス 1.4 ぐらい血圧が下がって頻脈 だった。ただ、意識は鮮明だったので、いろい ろな止血処置をしていましたが、この時点です でに低凝固性の出血であったということです。 2 時間半たって、ここの施設も 2 次施設のよ うでしたが、凝固が非常に落ちているのがわかり、並行して赤血球をポンピング輸血しています。 止血困難で子宮摘出決定となっても、とにかくさらに赤血球を補うことでというようなことでやっ ていきました。子宮を摘出して、出血部位が収まっても止血困難。その後で FFP の投与が開始さ 60 れ、間に合わずに死亡。事後の検査では、子宮型羊水塞栓症という判断がされました。 61 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 9】 【スライド 11】 産科出血においては、FFP を先行させても ボリューム負荷、あるいは時間がかかるとい 構わないということがガイドラインで言われ うことに対する重要な武器として、クリオプレ ております。 シピテートがあります。クリオは一般の製剤化 まず、2010 年の産科危機的出血に対するガ はされていないにしても、産科出血に対してフ イドラインの中で、ショックインデックスが ィブリノゲンが、かなりの勢いで感度以下まで 1.5 を超える場合、もしくは産科 DIC スコアが 下がってしまうので、これを補充することは非 8 点を超える場合には直ちに輸血開始。最初か 常に理にかなっております。素早くということ ら赤血球だけでなく、新鮮凍結血漿を投与しま と、ボリューム負荷が気になるところを過剰輸 しょう。DIC には常に気を配りながら、特に 液を避けるという、この 2 点から非常に重要な 産科 DIC 先行のようなケースでは FFP を先行 武器となって、産科 DIC への対応策として役 しましょうと書かれております。実際に FFP を解凍するため、赤血球より投与するのは時間がか 立ちます。 かるので、そういう点でも先行して準備を始めるというような姿勢が重要だといわれております。 【スライド 12】 実際に墨東病院はクリオを院内でつくって 【スライド 10】 いただいているわけですけれども、これは常位 FFP を使うことでの留意点は当然ありま 胎盤早期剥離など DIC を伴うような母体搬送 す。過剰な FFP の投与でボリューム負荷がか で、対照群はクリオ導入前、クリオ群はクリオ なりかかって、肺水腫の原因ともなり得るのと、 導入後のデータです。年齢、DIC スコア等は もう 1 つは輸血管理料が問題になるケースが 若干クリオ群のほうが DIC の度合いが強いと あるようです。 「FFP の年間使用単位が赤血球 いうか、やや重症ですけれども、クリオを積極 と比べて、ある程度の割合以下でないと輸血管 的に用いることで輸血量がずいぶん減少した 理料の算定が」というような文言が、その理由 という実績がございます。こういったことを考 の中に書いてあります。 えても、クリオは非常に産科出血には有効であ 産科危機的出血というのは、基本的には出血 性ショックなので、ボリュームはどんどん入れ るという証拠となるかと思います。在院日数も、その結果、短くすることができるので非常に役に 立っています。 るような方向に行くのは、それは合理的だと思います。一般の外傷患者ですら、FFP の割合を増 やすことで生存率が向上する可能性が報告されていますし、それを踏まえても、さらに凝固因子の 【スライド 13】 消費が激しい産科出血においては、その比を 1:1、あるいはそれ以上にすることは十分許容され 得るものと考えています。 最終的にまとめますと、母体の安全のために は、出血へどう対応するかというのが最も重要 なことであります。その出血に必ず伴ってくる 産科 DIC は、FFP が赤血球よりも優先的に使 われるべきです。クリオが使えるのなら、それ が一番役立つ供給であるということです。 以上です。ありがとうございました。 62 63 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 1】 (座長:田﨑先生) ありがとうございました。 東京都の松﨑でございます。「産科クリニッ 産科出血の輸血、特に抗 DIC 療法ということで、FFP の使い方が非常に大事だということでし クへの血液供給と問題点検証」ということでお たが、検査とかそういう問題よりも、その状況であっては、まず FFP を選択しろというスライド 話をさせていただきます。今日はたくさんの方 が非常に印象的だったと思います。今回のご発表に関しまして、1 件ほどご質問とか、ご意見をい がおみえですけれども、クリニックからおいで ただきたいと思いますけれども、ありませんか。 の方は挙手を、どのぐらいおられるのでしょう 藤田先生、どうぞ。 か。 いない。産科クリニックの方は? (藤田先生) いない、 (笑)というところでお話をさせていただきま 欧米で出血死が少ない理由として、フィブリノゲン製剤、クリオ、使用環境が日本と異なること す。 が原因と考えてよろしいでしょうか。それとも、やはり太った方が多いので、心血管系で亡くなる 方が多いということでしょうか。 【スライド 2】 (回答:兵藤先生) 日本の出生死亡率は、だいたい 100 万分娩があって、年間 50 弱ぐらい。欧米の約半分と捉えて これは東京都センターの血液供給状況です。 いただいていいと思います。直接比較のデータを私はここに挙げておりませんが、出血で亡くなる 19床以下の施設は、36%、280施設です。全施 方は実は同じぐらいで、欧米はそれプラス心血管系のイベントで亡くなるケースが多いです。その 設が775施設です。 ように考えられるのではないかと推測しています。 供給単位数は、左側が赤血球製剤、右側が血 漿製剤です。19床以下の施設の赤血球供給量は 1.6%、約10,000単位です。血漿の供給量は0. (座長:田﨑先生) ありがとうございました。 3%で、約1,000単位になっています。クリニッ それでは、また最後に総合討論をしたいと思います。 クの使用量は非常に少ないです。 (3)産科クリニックへの血液供給と問題点検証 【スライド 3】 東京都赤十字血液センター 松 﨑 浩 史 これは 19 床以下のクリニックの中で産科を 見たものです。昨年度、産科クリニックへの血 液供給は 36 施設ということです。赤血球と血 漿の供給量は、赤血球は 8%、907 単位で約 (座長:田﨑先生) それでは、第 3 席の「産科クリニックへの血液供給と問題点検証」ということで、東京都セン ターの松﨑先生、お願いいたします。 64 1,000 単位です。血漿については 43%、452 単 位で、クリニックへ供給する血漿のうち半分ぐ らいは産科へ供給しています。 65 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 4】 【スライド 6】 2011 年度~2014 年度の産科クリニックへの エリアを色で示しますと、このようになって 血液供給状況です。先ほど、FFP の投与が推 おります。これは 36 施設への、血液供給回数 奨されるというお話がありましたが、そこに注 です。立川エリアでは、年に 1 回というところ 目して見ますと、左は産科クリニック数です。 が 4 施設、駒込エリアでは 3 施設全てが年に 1 横軸は、2011 年、2012 年、2013 年、2014 年 回です。渋谷エリア、辰巳エリアを含め、どこ で、縦軸は施設数です。年間約 40 施設の産科 も年に 1 回だけ、そういうことが起こるクリニ クリニックに血液を供給していて、特に FFP ックが多いということがわかるかと思います。 を供給したところを黄色で示しております。そ れ以外は、赤血球・FFP を供給したところで す。先ほどのお話では、2012 年に FFP の早期 投与が言われたということですけれども、FFP を使用する施設が増えました。右は供給量です。 2012 年から FFP の供給量が急激にというか、漸次増えているということがわかるかと思います。 【スライド 7】 産科クリニックへの血液の供給状況は、年間 40 施設ぐらいですが、新鮮凍結血漿の供給が 【スライド 5】 産科クリニックへの血液の供給回数は、年間 徐々に増えています。先ほどの 2 つのガイドラ イン(産科危機的出血への対応ガイドライン、 約 150 回ありました。そのうち、緊急便、至急 産婦人科診療ガイドライン)で FFP の使用を 便、時間指定という通常の供給ではない供給の 推進しているということで、1 人当たりの使用 仕方が 110 回あります。110 回のうち夜間に供 量も増えているし、使用するクリニックも増え 給したのが 60 回です。産科クリニックには定 ています。また、FFP だけを使用するクリニ 期供給ではない供給の仕方で、特に夜間にたく ックもあるということです。 さん頻回に供給されていることがわかります。 東京都の供給エリアは、立川エリア、駒込エ リア、辰巳エリア、渋谷エリアと、供給箇所を 供給エリアとしては、立川エリア、渋谷エリ ア、辰巳エリアへ供給することが多く、年間約 150 件。半分は年に 1 回の供給です。110 件が緊 急、至急、時間指定。その半分が夜間であるということです。 分けております。駒込エリアの緊急便が少ない のは、駒込地区のクリニックは非常に少ない、大病院が多いためだと思います。一番多いのは、多 摩地区というか、西の方ですね。そちらの緊急便が、多いことがわかります。 【スライド 8】 血液センターから見た心配事というのは、 FFP の融解はどのようにしているのでしょう かということと、クリニックでの血液型の確認 や、交差適合試験はどのようにされているのか ということです。 66 67 第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書 第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書 【スライド 11】 【スライド 9】 新鮮凍結血漿の融解は、ここにおられる皆さ 先ほど、関東甲信越ブロックの日野さんがお んはご存じのことですので、本当はクリニック 話ししましたが、血液センターでは、「輸血検 の方にお話ししなければいけないと思います。 査・管理業務講習会」を実施しております。先 このように容器を 2 つ用意していただいて、温 ほどクリニックの看護師さん対象にも広げよ 度を温度計で測って、凍結血漿を交互に入れ、 うというお話があるように、今、輸血検査およ 30~37℃で溶かしてください。お湯を追加す び輸血管理体制の向上をしようとしている病 ることは、しないでいただきたいということで 院、院内で不規則抗体検査まではできないとこ す。また解凍に、こういう大きなものはクリニ ろの方、輸血業務を実際に行っている検査技師 ックでは必要ないと思いますが、恒温槽を使っ の方などに対しての講習会をしております。 講習内容は、①、②、③は輸血検査といわれ ていただければいいなと思います。 るものです。特に、不規則抗体検査などは、実際にされていない方に研修しております。血液型検 査と不規則抗体検査は、早めに正確にしておくというのがとても大事だと思います。輸血が必要に なって、検査するのでは間に合わないと思いますので、ぜひそのようなことを日ごろから気を付け 【スライド 10】 ていただければよろしいかと思います。 血液型については、大病院では二重チェック されています。 「大病院では」というのもおか しいですけれども、保険では 1 回しか通らない 【スライド 12】 という矛盾があるなか、クリニックでは、どう やって血液型を検査しているのでしょうか。 東京都センターは、産科クリニックの現状に 1 回は、初期検査ということでよろしいと思 合わせて、新鮮凍結血漿の融解方法、あるいは います。もう 1 回は、 「献血に来る」というの 血液型検査についての情報提供をしていきた が一番よろしいのではないでしょうか。妊娠す いと思いますので、クリニックの皆さんにご利 る前に献血をしておくと、血液型が正しくわか 用いただければ幸いです。 るということで、若年層対策ということも血液 ありがとうございました。 センターではしているわけですけれども、ぜひ献血に来ていただくのがよろしいかと思います。 血液センターに献血に初めて来られる方で、どれぐらいの人が自分の血液型を知っているか。日 本人は非常に血液型をよく知っております。10 代の方で 90%ぐらいは、すでに血液型を知ってい ます。 東京都で調べますと、10 代であれば 89.6%、20 代が 93.8%、30 代は 97.4%、 40 代は 99.2%、 あとは 100%ということで、年齢が上がるほど血液型をご存じです。 また、知っている血液型がどれぐらい正しいか。検査技師の方は血液型が正しいと確信するまで、 患者さんというか、その方にお伝えしないと思われますけれども、95%以上が正しい血液型をご 存じであるということが、東京都の初回献血者のデータでわかっております。そういうこともあり ますので、妊婦さんが自分で血液型を知っていれば、95%ぐらいは正しいかもしれないと思った りしています。 (座長:田﨑先生) ありがとうございました。たぶん会場にはクリニックの方もいらっしゃると思います。挙手され ていないだけかなと思いますが。 FFP を使っているところが増えつつあるという、ご発表でしたがあとは血液製剤の扱い方です ね。それと、検査はどうなっているのか、その辺が松﨑先生としては非常に危惧されていることか と思いますが、何かこの件でご意見とか、ご質問ありますでしょうか。 ございませんか。なければ総合討論ということで、残り 20 分強ですかね。 では半田先生、よろしくお願いします。 68 69
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