Page 1 Page 2 東 美菜子氏の学位論文審査の要旨 論文題目 定量的

熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
定量的磁化率強調像を用いた脳内鉄沈着の評価
Author(s)
東, 美菜子
Citation
Issue date
2016-03-25
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/34566
Right
東 美菜子 氏 の学位 論文 審査 の要 旨
論文題 目
定 量 的磁 化 率 強 調 像 を用 いた 脳 内 鉄 沈 着 の 評 価
(The evaluation
of iron deposition
in brain with quantitative
susceptibility
mappinng(QSM))
加 齢 や 変 性 疾 患 に お い て 脳 内 に 鉄 沈 着 が 見 ら れ る こ と が 報 告 さ れ て お り、鉄 代 謝 の 経 過 で 発 生 す
る 活 性 酸 素 が 組 織 障 害 の 引 き 起 こ す と 言 わ れ て い る 。MRIで
は 鉄 の 沈 着 の 評 価 が 可 能 で あ り、T2WI
やT2*WI,SWIな
果 を 用 い た 画 像 の ア ー チ フ ァ ク トを 作
ど が 知 られ て い る 。 これ ら は 、blooming効
る こ と で 鉄 沈 着 部 の 同 定 が よ り容 易 と な る 利 点 が あ る 。 しか しな が ら、 こ れ ら の 画 像 は 定 量 評 価 の
乏 し い こ とが 欠 点 と され る 。
申 請 者 は 、blooming効
果 を 排 除 し、 鉄 の 同 定 能 は 低 下 す る も の の 、 鉄 の 磁 化 率 そ の も の を 定 量
的 に 評 価 で き る と い う 点 が 優 れ て い るQuantitativeSusceptibilityMapping(QSM)を
用 い て 、加 齢
や 変 性 疾 患 に 伴 う脳 内 の 鉄 沈 着 を 評 価 す る こ と を 試 み た 。健 常 者 の 大 脳 皮 質 の 加 齢 に よ る 鉄 沈 着 の
検 討 に 関 して は 、 健 常 ボ ラ ン テ ィ ア で3TMRI装
歳)の42大
置 でQSMを
施 行 した21症
例(10-72歳
脳 半 球 を 対 象 と し た 。 関 心 領 域 を 置 き 、 磁 化 率 の 定 量 値(ppb)を
、 平 均36
測 定 し、そ の 定 量 値
の 年 齢 、 性 、 左 右 差 の 影 響 に つ い て 統 計 学 的 に 検 定 した 。 そ の 結 果 、 中 心 前 回 皮 質 と 上 前 頭 回 皮 質
の 磁 化 率 は 年 齢 に 伴 い 磁 化 率 が 増 加 し、中 心 前 回 皮 質 の 磁 化 率 の ほ う が 有 意 に 高 い も の で あ っ た が
、40歳 を 超 え る と 増 加 が 少 な く な る こ と が 明 ら か に な っ た 。QSMを 用 い た パ ー キ ン ソ ン 病 の 深 部 灰
白 質 の 磁 化 率 の 評 価 に 関 し て は 、QSMを
用 い てパ ー キ ン ソ ン病患 者 の黒 質 を含 む深 部灰 白 質 の磁 化
率 を 測 定 し、QSMの 有 用 性 を 検 討 す る た め に 、T2*WIの
磁 化 率 よ り得 られ るR2*mapを
併 せ て 行 い 比 較 した 。 そ の 結 果 、 パ ー キ ン ソ ン病 患 者(24名)は
健 常 者(24名)と
用 い た 評価 を
比 較 し黒 質 の
鉄 沈 着 が 多 く 、特 に 、 そ の 傾 向 は 黒 質 の 後 方 に 顕 著 で あ り 、過 去 の 組 織 学 的 報 告 と合 致 す る 結 果 で
あ っ た 。QSMの パ ー キ ン ソ ン 病 の 診 断 能 は 、R2*画 像 と 比 較 し高 く 、パ ー キ ン ソ ン病 の 診 断 に お い て
QSMが
有 用 で あ る こ と を 指 摘 し た 。QSMを
統 萎 縮 症(MSA)の
用 い た パ ー キ ン ソ ン 病 ・進 行 性 核 上 性 麻 痺(PSP)・
多系
深 部 灰 白 質 の 鉄 沈 着 の 比 較 に 関 し て は 、 黒 質 の 中 間 部 と 淡 蒼 球 の 磁 化 率 は 、PSP
(7名)がMSA(5名)、
パ ー キ ン ソ ン 病(17名)、
、 黒 質 や 淡 蒼 球 の 磁 化 率 評 価 は 、PSPとMSAや
健 常 者(18名)よ
り も 有 意 に 高 値 を 示 し(P〈0.05)
パ ー キ ン ソ ン病 との 鑑 別 の 一 助 とな る 可 能 性 を示 唆
した 。
審 査 で は 、QSMで
同定 で き る鉄 の 特 徴 、鉄 沈 着 の背 景 、鉄 沈着 と変性 過 程 との 関係 、パ ー キ ン ソ
ン 病 の 進 行 度 とQSMの
断 に お け るQMSの
関 係 、R2*mapとQSMの
使 い 分 け 、ア ル ツ ハ イ マ ー 病 や レ ビー 小 体 型 認 知 症 診
可 能 性 、臨 床 応 用 へ の 課 題 、本 研 究 成 果 に 基 づ い た 今 後 の 研 究 戦 略 な ど に つ い て
の 質 疑 が な され 、 申 請 者 か ら は 適 切 な 回 答 が な さ れ た 。
本 研 究 は 、QSMを
用 い て 加 齢 と鉄 沈 着 の 関 係 を 明 ら か に した 。 ま た 、QSMが
断 に 有 用 で あ る こ と 、PSPと
パ ー キ ン ソ ン 病 やMSAと
パ ー キ ン ソ ン病 の 診
の 鑑 別 に も 有 用 で あ る こ と 明 ら か に した 。 本
知 見 に よ り 、鉄 の 磁 化 率 そ の も の を 定 量 的 に 評 価 で き るSMQが
変 性 疾 患 の 鑑 別 診 断 に 応 用 で きる 可
能 性 を 示 し た だ け で な く 今 後 の 課 題 を 明 ら か に した 点 で 、 学 位 の 授 与 に 値 す る と 評 価 され た 。
審査委員長
神経精神科学担当教授
幾
認
孕