広範な寿命域におけるねじり疲労に及ぼす 組合わせ静的荷重の影響の

法政大学大学院理工学・工学研究科紀要
Vol.57(2016 年 3 月)
法政大学
広範な寿命域におけるねじり疲労に及ぼす
組合わせ静的荷重の影響の評価
Evaluation of Effect of Static Combined Loadings on
Torsional Fatigue in Wide Range of Lifetime.
奥村 聡志
Satoshi OKUMURA
指導教員
大川
功
法政大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程
A fatigue life evaluation model was proposed for torsional fatigue with static combined stress over wide
range of lifetime. A total shear strain based model contains effects of change of stress-strain response and
accumulation of ratcheting strain, mean stress on crack initiation and propagation. It was shown that the
model is useful for prediction of lifetimes in steels and aluminum alloy under cyclic torsion with static
combined stress.
Key Words : Torsional fatigue, Static loading, Total shear strain, Cyclic stress-strain, Ratcheting
1.緒論
実働荷重下にある機械部品の多くは曲げや引張り圧縮,
張りを付加すると寿命は大きく減少するが静的ねじり付
加の場合は影響がほとんど見られず,静的応力の種別によ
ねじりなどの繰返し荷重に種々の静的荷重が組合わされ
り,影響が大きく異なることが明らかとなった.しかし,
ている.たとえば,車軸などの動力伝達軸では,曲げとね
引張りとねじりの静的組合わせ応力を付加した場合,ねじ
じりのモーメントが同時に作用するため,組合わせ応力状
り疲労寿命への影響は両者の比率により,どのように変化
態にある.また,実機はキー溝や孔などを有する場合が多
するのかについては明らかでない.
く,疲労破壊はこれらの応力集中部から発生したき裂の成
本研究では,影響が大きく異なる引張りとねじりの静的
長より生じるから,たとえ外力が単純であっても,危険部
組合せ応力が,広範な寿命域におけるねじり疲労に及ぼす
位は組合わせ応力状態となる.
影響について検討した.
実機の応力状態は負荷荷重やその形状によって組合わ
両振りねじりの場合の全ひずみ-寿命関係をフレーム
せ応力状態(多軸応力状態)になっていることが一般的であ
ワークとして,これに静的組合わせ応力の付加による影響
ることから,多軸応力状態における応力―ひずみ応答の変
を組込んだ.まず,静的応力の付加によりき裂面上に生ず
化,疲労き裂の成長挙動や材料の変形挙動を正しく見積も
る平均応力がき裂成長を促進するとして弾性ひずみの項
ることが必要不可欠であるといえる.しかし,応力状態の
を修正した.また,静的応力の付加により繰返し塑性ひず
複雑さ,疲労試験実施の困難さ,コスト等の問題から研究
みが変化することを考慮して塑性ひずみの項にその影響
の歴史は比較的浅い.組合わせ疲労に関する初期の研究は
を加えた.さらにこれらに加えて,疲労変形の累積による
高サイクル疲労[1],特に疲労限度に関する研究が主であり,
延性の低下の影響も組込んで,静的組合わせ応力付加条件
Mises 説や Tresca 説のような降伏条件や強度理論を疲労
下でのねじり疲労寿命評価式を構築した.
の場合にまで拡張したものが提案されている.その後,ね
2.静的組合せ応力の影響を考慮した寿命評価法
じりと曲げの組合せなどの試験結果に基づいた,Gough
(1)全ひずみ-寿命関係に及ぼす静的組合わせ応力の影響
説[2]に代表される経験則が提案され始めた.低サイクル疲
本研究では塑性ひずみに関連した影響が軽微である材料
労[3]に関する研究が始まったのは,1960 年代になってか
に対しても適用するために全せん断ひずみに基づく寿命
らのことであり,組合わせ疲労に関する知見や研究が十分
評価式を提案する.最初に完全両振りねじりにおける全せ
であるとはいい難いのが現状である.
ん断ひずみγt と疲労寿命 Nf は次式で表すことができる.
本研究室ではこれまでに,引張りまたはねじりの単独な
𝛾𝑡 = 𝛾𝑒 + 𝛾𝑝 = 𝐶𝑁𝑓 𝑑 + 𝐻𝑁𝑓 𝛽
(1)
静的応力の付加が広範な寿命域におけるねじりの疲労強
ここで,γe とγp はそれぞれ弾性及び塑性せん断ひずみ
度に及ぼす影響について検討してきた.その結果,静的引
であり,C,D,H,βは材料定数である.本研究では式(1)
振幅 εp を片対数にプロットすると傾きが等しい直線群が
促進に及ぼす平均応力効果や応力―ひずみ応答の変化,疲
得られるとして,図 1 の関係が成り立つことを示した.
労変形の累積を組込むことで,塑性ひずみが小さい材料で
logεp0
あっても,繰返しねじりに静的組合わせ応力を付加した条
件の寿命評価が行えると考えた.そこで,き裂の発生や成
長の促進に関する影響は巨視的なき裂によって破壊が生
じることが多い高サイクル域で支配的になると考え式中
の弾性ひずみの項に,応力―ひずみ応答の変化及び疲労変
形の累積の塑性ひずみに関連する影響は主に低サイクル
域で支配的になると考え塑性ひずみの項に組込んだ.
Plastic tensile strain logεp
に静的組合せ荷重付加の影響である,き裂の発生や成長の
σmax=σa+σm=const.
α
Mean tensile stress σm
Fig.1. logεp versus σm for constant values of σmax.
(2)き裂成長に及ぼす静的組合せ応力の影響
繰返しねじりにおける静的荷重の付加は,き裂の発生や
Lorenzo が提案した図1の平均応力と塑性ひずみの関
成長速度を変化させることが過去の研究より明らかとな
係は,繰返しねじり下の場合にも適用できると仮定して拡
っている.これは,平均応力による,き裂の開閉口挙動と
張した関係を次式に示す.
log𝛾𝑝 = 𝑙𝑜𝑔𝛾𝑝0 + 𝛼𝜏𝑒𝑞𝑚
関連して説明がなされている.
(9)
Akid ら[4]は,最大せん断面上に作用する静的引張り応力
ここで,αは材料定数である.
の影響を見積もった式を以下に示す.
𝜎
𝛾𝑒𝑞 = 𝛾𝑚𝑎𝑥 + k 𝑛𝑚
式(9)に式(8)を代入し,静的荷重の影響を加味したせん
𝐸
(2)
断塑性ひずみ振幅𝛾𝑝 ∗ の予測式を次式に示す.
ここで,k は材料定数,σnm は最大せん断面上に作用す
𝜏𝑎 +𝜏𝑒𝑞𝑚
𝛾𝑝 ∗ = (
る静的な垂直応力であり,E は縦弾性係数である.
また,Miller[5]は最大せん断面上に作用する平均せん断
応力の影響を以下の関係で示した.
𝑘0
1
)𝑛0 10𝛼𝜏𝑒𝑞𝑚
(10)
式(1)のせん断塑性ひずみの項を式(10)の静的荷重の影
響を加味したせん断塑性ひずみに置き換え,1サイクル当
∆τ ∙ 𝑒 𝐴|𝜏𝑚 | = 𝑓1
(3)
りの損傷𝐷𝑝 を次式に示す.
𝑁
⁄𝛽
∑1 𝑓 𝐷𝑝 = (𝛾𝑝 ∗ ⁄𝐻)1
A と f1 は材料定数である.静的ねじり応力は,極性を問
𝑁𝑓 = 1
(11)
的引張りまたは静的ねじりを付加しなかった場合は純ね
(4)疲労変形による損傷の評価法
過去の研究結果より,ラチェットひずみの大きさや累積
じりと同じ結果になる形式となっている.
速度は付加する繰返し応力や静的荷重の大きさに依存し,
わないので絶対値を用いる.式(2),(3)の形式ならば,静
また,その累積過程において寿命の初期段階で最も大きく
次式に等価弾性ひずみを示す.
𝛾𝑒 ∗ = (𝛾𝑒 +
𝑘√3𝜆𝜏𝑒𝑞𝑚√(1⁄𝜆)2 −1
𝐸
)𝑒 𝑢|𝜆𝜏𝑒𝑞𝑚|
(4)
λ = 𝜏𝑚 ⁄𝜏𝑒𝑞𝑚
(5)
𝜏𝑒𝑞𝑚 = √𝜏𝑚 2 + (𝜎𝑚 ⁄√3)2
(6)
変形し,破壊に近づくと変形は飽和に向かっていくことも
分かっている.
静的組合せ応力の付加により,周方向と軸方向に疲労変
形が累積する.そこで,等価ラチェットひずみを定義する.
𝛾𝑐𝑒𝑞 = √𝛾𝑐 2 + (√3𝜀𝑐 )2
ここで,k,u は材料定数である.𝜏𝑚 と𝜎𝑚 は静的なせん
断応力と引張り応力であり,式中のλと𝜏𝑒𝑞𝑚 は,それぞれ
(12)
この等価ラチェットひずみ𝛾𝑐𝑒𝑞 の累積過程を図 2 で示す.
示す.
式(1)の弾性ひずみの項を式(4)の等価弾性ひずみに置き
換え,1サイクル当りの損傷𝐷𝑒 を次式に示す.
𝑁
∑1 𝑓 𝐷𝑒 = (𝛾𝑒 ∗ ⁄𝐶 )1⁄𝑑 𝑁𝑓 = 1
(7)
(3)静的組合せ応力付加条件下の応力‐ひずみ応答
両振りねじりでの,繰返し応力-ひずみ応答は,
Ramberg-Osgood 型に従うとして次式のように表せる.
𝑛
𝜏𝑎 = 𝑘0 𝛾𝑝00
(8)
Ratcheting strain ceq
静的な組合わせ応力比と静的ねじり応力への等価応力を
ある.式中のパラメータ k0 及び n0 は,それぞれ純ねじり
0.05 0.1
0.5
1
Cycle ratio N/Nf
Fig.2. Ratcheting strain with cycle ratio.
等価ラチェットひずみ𝛾𝑐𝑒𝑞 の累積過程を次式で表すことが
での繰返し強度係数と繰返しひずみ加工硬化指数である.
できる.
ここで,τa は応力振幅,γp0 は塑性せん断ひずみ振幅で
次に,Lorenzo は繰返し応力―ひずみ応答に及ぼす平
0.01
𝛾𝑐𝑒𝑞 = 𝐴𝑁 𝑏
(13)
均応力の影響を見積もるために,荷重制御下で最大引張り
静的ねじり試験の破壊時のひずみを𝛾𝑐𝑒𝑞𝑓 とし,𝛾𝑐𝑒𝑞 と置き
荷重 σmax を一定として,平均引張り応力 σm と塑性ひずみ
換え,1サイクル当りの損傷を次式に示す.
𝑁
∑1 𝑓 𝐷𝑟 = (𝐴⁄𝛾𝑐𝑒𝑞𝑓 )1⁄𝑏 𝑁𝑓 = 1
(14)
ト 系 ス テ ン レ ス 鋼 SUS316L , ア ル ミ ニ ウ ム 合 金
次に,1サイクル当りの損傷と応力を関係付ける.疲労変
A6N01-T5 である.試験片形状は,それぞれ図 4,5 に示
形のモデルとして過去に Mroz[6]によって引張り圧縮に静
す.
的引張りを付加した条件での降伏円の移動を考えたモデ
ルが提案されている.本研究ではこのモデルを繰返しねじ
りに静的ねじりを付加した条件についても同様のモデル
で表せると考えた.この時の関係を次式で示す.このモデ
ルでは加工硬化や遷移過程などは考慮せず 1 サイクルで
飽和状態になると考えている.
∆𝛾𝑐𝑒𝑞 =
𝜏𝑎 +𝜏𝑒𝑞𝑚 1⁄𝑛
(
) 0 [1
𝑘0
Fig.4 Configuration of specimens
−(
1⁄𝑛0
𝜏𝑎
𝜏𝑎 +𝜏𝑒𝑞𝑚
)
]
for S45C and SUS316L.
(15)
1
式中には前節で述べた静的荷重を付加したことによる
Φ
応力―ひずみ応答の変化の影響は組み込まれていないた
め,この影響を式(15)に組込むとで静的荷重付加による塑
性ひずみの変化を考慮したラチェットひずみを表せると
考えた.この関係は次式で表すことができる.
∆𝛾𝑐𝑒𝑞 =
𝜏𝑎 +𝜏𝑒𝑞𝑚 1⁄𝑛
(
) 0 [1
𝑘0
−(
𝜏𝑎
𝜏𝑎 +𝜏𝑒𝑞𝑚
)
1⁄𝑛0
]10𝛼𝜏𝑒𝑞𝑚
Fig.5. Configuration of specimens for A6N01.
(16)
図 5 は,実験から得られる式(13)中の毎サイクル当りの
1⁄𝑏
損傷(𝐴⁄𝛾𝑐𝑒𝑞𝑓 )
と式(16)の∆𝛾𝑐𝑒𝑞 の計算値の関係を示した
ものである.両者の関係は,次式で示される.
(𝐴⁄𝛾𝑐𝑒𝑞𝑓 )1⁄𝛽 = 𝑚1 ∆𝛾𝑐𝑒𝑞 𝑚2
試験機は鷺宮製作所製の電気油圧式サーボ試験機(容
量:軸力100kN,ねじり980N・m)を使用し,荷重制御下で
疲労試験を行った.試験は両振りの繰返しねじりと静的組
合わせ荷重を付加した場合について行い,繰返し荷重は正
弦波で負荷した.また,ねじり応力振幅τaと静的ねじり応
(17)
ここで,式中の𝑚1 ,𝑚2 は材料定数である.
力τm及び静的引張り応力σmは公称応力である.
繰返し試験は,寿命域がおよそ102回から106回となるよ
うな応力で行った.
(A/ceqf )(1/)
各材料の試験条件を表1-3に示す.静的応力比λは0,0.3,
0.5,0.7,1まで行った.λ=1は静的ねじりのみ,λ=0は静
的引張り単独で繰返しねじりに付加している.
Table.1 Test conditions of S45C
τ a (MPa)
55
160~300
0
ceq
Fig.3. (𝐴⁄𝛾𝑐𝑒𝑞𝑓 )1⁄𝑏 versus ∆𝛾𝑐𝑒𝑞
110
1
Table.4 Test conditions of SUS316L
τ a (MPa)
(5)静的組合わせ応力を負荷した際の寿命評価モデル
き裂成長面上での平均応力効果を組み込んだ弾性ひず
みによる損傷,式(7),静的応力付加時の塑性せん断ひずみ
190~350
0
による損傷,式(11)及びラチェットひずみによる損傷,式
(13)の総和により破壊に至るとして次式が得られる.
(𝐷𝑒 + 𝐷𝑝 + 𝐷𝑟 )𝑁𝑓 = 1
τ eqm (MPa)
104
λ
0.5
0.7
τ eqm (MPa)
104
λ
0.3
0.5
0.7
1
Table.3 Test conditions of A6N01
(18)
τ a (MPa)
τ eqm (MPa)
1 サイクルあたりの損傷の比率の総和が 100%となった
24.5
90~200
とき破断に至る.
0
それぞれの損傷の大きさは,寿命の初期と後期では,異
なることが予想されるが,今回の寿命評価モデルでは,平
均的に損傷が蓄積していくと仮定している.
0.3
λ
0.5
49
0.7
1
(2)疲労試験結果
図 6 はそれぞれ中炭素鋼 S45C とオーステナイト系ステ
ンレス鋼 SUS316L 及び A6N01 の完全両振りねじりと静
3.検証実験
(1)供試材及び試験条件
的組合わせ応力を付加した条件での疲労寿命結果であり,
縦軸に完全両振りねじりでの全せん断ひずみを用いて整
提案した寿命予測式の有用性を確認するために,これま
理している.その結果,どの材料においても静的組合わせ
でに行われた試験結果を用いて確認を行った.試験に用い
応力を加えた場合,寿命が純ねじりよりも短くなる傾向が
た供試材は,機械構造用中炭素鋼 S45C 及びオーステナイ
あった.
Reduction of fatigue life Nfm/Nf0
延性低下である.さらに,平均応力付加によるき裂の発生
Reduction of fatigue life Nfm/Nf0
γp の変化が考えられる.次に疲労変形の累積による材料の
1
1
Reduction of fatigue life Nfm/Nf0
その原因として,静的荷重付加による繰返しの塑性ひずみ
1
eqm=55
eqm=104
(a)S45C
0.8 a=190MPa
0.6
及び成長速度の促進が考えられる.
静的組合わせ応力を負荷した際の両振りの寿命に対す
る寿命の減少率を図 7 に示す.S45C と A6N01 に関して
は,静的引張り応力の割合が多くなるにつれて寿命に与え
る影響が大きいという結果になった.SUS316L について
は,静的組合せ応力を付加した時が,寿命に与える影響が
大きいという結果になった.
0.4
0.2
0
0
0.5

a=235MPa
1
eqm=104
Total shear strain amplitude t
0.8
10-1
Pure torsion
=1
=0
=0.5
=0.7
=0.9
0.6
0.4
0.2
10-2
(a)S45C
10-3 2
10
3
4
5
10
10
10
Number of cycles to failure N f
10
6
0
0.5

a=120MPa
1
eqm=49
0.8
0.6
10-1
Total shear strain amplitude t
(b)SUS316L
0
0.4
Pure torsion
=1
=0
=0.3
=0.5
=0.7
0.2
(c)A6N01
0
0
0.5

-2
10
1
Fig.7. Effect of static stresses on torsional fatigue life.
;(a)S45C(b)SUS316L(c)A6N01
(3) き裂成長に及ぼす平均応力効果
平均応力効果が顕著となる 105 回以上の高サイクル域で
(b)SUS316L
10-3
102
103
104
105
Number of cycles to failure N f
106
の寿命試験結果より静的引張りまたは,静的ねじりのみの
影響を見積もる.
式(4)中の材料定数 k,u を決定するのに,
小数回の静的引張りまたは,静的ねじりのみを付加した条
Total shear strain amplitude t
件での試験を行い寿命の相違より以下の定数を決定した.
Pure torsion
=1
=0
=0.3
=0.5
=0.7
10-2
Table.4 Material constants k and u
Material
k
u
S45C
0.003
0.005
SUS316L
0.003
0.010
A6N01
0.500
0.002
(4)応力-ひずみ応答
式(8)を用いて,各材料で純ねじりの繰返し応力-ひずみ
応答を求めた.多段振幅試験の結果より材料定数繰返し強
度係数 k0,加工硬化指数 n0 を決定した.図 8 に繰返し応
(c)A6N01
102
103
104
105
Number of cycles to failure N f
Fig.6. 𝛾𝑡 versus 𝑁𝑓 diagrams;
(a)S45C(b)SUS316L(c)A6N01
106
力-ひずみ応答を示す.
Table.5 Material constants 𝑘0 and 𝑛0
Material
S45C
SUS316L
A6N01
k0
619.8
511.8
306.2
n0
0.194
0.132
0.059
次に,式(9)を用いて、材料定数αの決定を行った.図 9
0
Table.6 Material constant α
α
-0.011
-0.015
-0.024
Material
S45C
SUS316L
A6N01
(a)S45C
log[p/{(a+eqm )/k0}(1/n0)]
に静的荷重を付加した際の硬化挙動を示す.
-1
さらに,決定したαと式(10) を用いてせん断塑性ひず
m
m
Combined
-2
0
み振幅の評価を行った.
図 10 を見ると A6N01 では生じる塑性ひずみの大きさ
0
(b)SUS316L
log[p/{(a+eqm )/k0}(1/n0)]
が他の 2 つの材料と比較すると 1 桁程度小さくなっている
ことがわかる.このことから,塑性ひずみが変化すること
による寿命への影響は非常に小さいと考えられる.高応力
-1
域の塑性ひずみが大きくなる範囲では精度良く予測でき
ているが,低応力域では係数 3 の範囲から外れている.こ
れは,低応力は測定が困難なほど生じる塑性ひずみが小さ
m
m
Combined
-2
かったことが原因だと考えられる. A6N01 では静的荷重
付加による影響は寿命域によらず,き裂に関する要因が支
0
配的であると考えられる.
(a)S45C
300
250
m
m
-1
200
(c)A6N01
-2
0
20
40
60
Equivalent mean shear stress eqm
Fig.9. Determination of α
10-2
Plastic shear strain p
450
(b)SUS316L
Predicted plastic shear
strain amplitude p
350
10-1
(a)S45C
10-3
150 -4
10
-3
-2
10
10
Plastic shear strain p
10
-1
250
(b)SUS316L
10-2
10-2
250
80
;(a)S45C(b)SUS316L(c)A6N01
10-1
Predicted plastic shear
strain amplitude p
150 -3
10
Shear stress amplitude a(MPa)
50
100
150
Equivalent mean shear stress eqm
0
log[p/{(a+eqm )/k0}(1/n0)]
Shear stress amplitude a(MPa)
350
10-3
Factor of 3
10-4 -4
10
m
m
Combined
10-3
10-2
Actual plastic shear
strain amplitude p
10-1
Factor of 3
10-4 -4
10
m
m
Combined
10-3
10-2
Actual plastic shear
strain amplitude p
10-2
(c)A6N01
Predicted plastic shear
strain amplitude p
Shear stress amplitude a(MPa)
50
100
Equivalent mean shear stress eqm
(c)A6N01
10-3
200
Factor of 3
10-4
10-5 -5
10
150 -4
10
10-3
Plastic shear strain p
10-2
m
m
10-4
10-3
Actual plastic shear
strain amplitude p
10-2
Fig.10. Comparision between predicted and
Fig.8. Shear stress amplitude versus
actualplastic shear strain amplitudes
Plastic shear strain;(a)S45C(b)SUS316L(c)A6N01
;(a)S45C(b)SUS316L(c)A6N01
10-1
(5)疲労変形の累積
10-1
図 11 に各材料の疲労変形の累積過程を示す.図 11 は両
10-2
返し数比である.図より各材料ともに静的荷重の種別によ
らず繰返しにともないラチェットひずみが直線的に累積
していることがわかる.図に示していない他の応力条件に
おいても同様の傾向が得られた.しかし, A6N01 は疲労
(A/ceqf )(1/)
対数線図で表し,縦軸が等価ラチェットひずみ,横軸が繰
変形が累積するものの,他の 2 つの材料と比較するとその
(a)S45C
10-3
10-4
m
m
Combined
10-5
累積量は 1 桁程度小さくなっていて,あまりラチェットひ
10-6
ずみが累積していないことがわかる. これはラチェット
10-3
ひずみの累積が本来顕著となる低サイクル域でも同様で
10-1
あった.さらに,前節で述べたように生じる塑性せん断ひ
ずみの大きさも他の 2 つの材料よりも小さくなっている
10-2
(A/ceqf )(1/)
ことから,A6N01 については静的荷重付加による塑性変
形に関する影響は非常に小さいと考えられる.
Ratcheting strain ceq
(a)S45C
(b)SUS316L
10-3
10-4
10-5
10-6
10-1
10-7 -4
10
=0.5
=1
=0
a=190MPa eqm=104MPa
10-2
10-1
Cycle ratio N/Nf
ceq
(a)S45C(b)SUS316L
100
Table.7 Material constants 𝑚1 and 𝑚2
Material
m1
m2
S45C
4.00
1.03×107
SUS316L
762.6
2.43
(b)SUS316L
Ratcheting strain ceq
10-3
m
m
Combined
10-2
Fig.12. Determination of 𝑚1 and 𝑚2 ;
-2
10
10-2
ceq
-1
10
10-2
10-3 -3
10
4.寿命評価モデルの適用
=0.5
=1
=0
a=210MPa eqm=104MPa
10-2
10-1
Cycle ratio N/Nf
き裂成長面上での平均応力効果を組み込んだ弾性ひず
100
みによる損傷,式(7),静的応力付加時の塑性せん断ひずみ
による損傷,式(11)及びラチェットひずみによる損傷,式
(13)の総和により破壊に至るとして式(17)が得られた.
-1
10
このモデルを用いるには,現状では両振りねじりでの寿
Ratcheting strain ceq
(c)A6N01
命と応力‐ひずみ関係に加えて,静的ねじり延性値,静的
10-2
応力付加時の塑性ひずみとラチェットひずみ,高サイクル
域での平均応力効果を見積もるための小数回の試験を行
う必要がある.
10-3
10-4
式(17)で示した寿命評価モデルを用いて,各材料での寿
=0.5
=1
=0
a=120MPa eqm=49MPa
-2
10
-1
10
Cycle ratio N/Nf
Fig.11. Accumulation of ratcheting
strain;(a)S45C(b)SUS316L(c)A6N01
命を評価した.その結果を図 13 に示す.様々な静的荷重
条件での寿命は広範な寿命域にわたって精度よく評価で
0
10
きた.
Table.8 Material constants of S45C
n0
0.194
k
0.003
C
0.009
u
0.005
d
0.106
m1
1.03×107
H
0.308
m2
4.00
Table.9 Material constants of SUS316L
k0
511.8
α
-0.015
n0
0.132
k
0.003
C
0.009
u
0.009
d
0.085
m1
762.6
H
0.816
m2
2.43
106
β
0.424
β
0.534
(a)S45C
Predicted life
k0
619.8
α
-0.011
Factor of 3
105
104
=1
=0
=0.5
=0.7
103
Table.10 Material constants of A6N01
k0
306.2
n0
0.059
C
0.016
d
0.117
α
-0.024
k
0.500
u
0.002
102 2
10
5.結論
106
本研究では,影響が大きく異なる引張りとねじりの静的
組合せ応力が,広範な寿命域におけるねじり疲労に及ぼす
影響について検討した.
ワークとして,これに静的組合わせ応力の付加による影響
を組込んだ.まず,静的応力の付加によりき裂面上に生ず
る平均応力がき裂成長を促進するとして弾性ひずみの項
を修正した.また,静的応力の付加により繰返し塑性ひず
みが変化することを考慮して塑性ひずみの項にその影響
Factor of 3
105
104
=1
=0
=0.3
=0.5
=0.7
103
を加えた.さらにこれらに加えて,疲労変形の累積による
延性の低下の影響も組込んで,静的組合わせ応力付加条件
102
下でのねじり疲労寿命評価式を構築した.
102
このモデルの有用性を確認するために 2 種類の鋼材と
アルミニウム合金の中空平滑試験片を用い,広範な寿命域
107
において静的組合せ荷重を付加したねじり試験を行い,疲
労寿命を求めた.提案したモデルを用いて両材の寿命を予
測したところ,十分な精度で寿命評価が可能であることが
参考文献
[1]K.J.Miller,H. J. Mohamed, M. W.Brown,Engineering
Foundation International Conference,pp.639-656, 1986
[2] Gough, H.J, and Pollard, H.V Proceeding of the
Institute of Mechanical Engineers, Vol.131, pp.3-103,
1935
[3] E. Perez Carbonell, M. W. BrownFatigue Fract.
Engng Mater. Struct. Vol. 9, No.1, pp.15-33, 1986
[4] W. Zhang and R. Akid, Fatigue Fract. Engng Mater.
10
Predicted life
わかった.
106
(b)SUS316L
Predicted life
両振りねじりの場合の全ひずみ-寿命関係をフレーム
103
104
105
Actual life
103
104
105
Actual life
(c)A6N01
6
106
Factor of 3
105
104
10
=1
=0
=0.3
=0.5
=0.7
3
102 2
10
103
104 105 106
Actual life
107
Struct. 20, 2, (1997), pp. 167-177
[5] C.H.Wang and K.J.Miller, Fatigue Fract. Engng
Mater. Struct. 14, 2/3, (1991), pp.293-307
[6]Z.Mroz,J.mech.Phys.Solis,15,(1967)
Fig.13. Comparision between predicted and
actual life;(a)S45C(b)SUS316L(c)A6N01