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③指向別の広域観光ルート・商品づくり
~市内観光の関係づくり~
○広域連携の関係づくり
有名観光地ではない各地域の観光素材は、それ自体は小さなモノです。しかし、連携
することで、有名観光地に対抗しうる観光エリアを構築することができるといわれてい
ます。
旅行者のライフスタイルの変化やシニア層の増加によって、長期滞在型の観光やテー
マ性のある周遊観光の需要が益々高まっていくと考えられます。
また、増大する外国人観光客は、そこで暮らす私たちには当たり前のようなことが、
新鮮であったり、時に神秘的であることがあります。そこをしっかり見極め、理由と必
然性を持ってストーリー化して提案することが大切です。
このような需要に応えるには、1つの地域でできる観光メニューには限界があるので、
他の地域と連携した多彩なメニューづくりを進める必要があります。また、地域の枠組
みを超えて、市外、県外とテーマに沿って関連付け、必然性を持った広域観光ルートの
設定も重要になってきます。
例えば、冬期間の「雪」をテーマとして考えた場合、二戸市の近隣には、冬にスキー
で県内外から多くの集客のある市町がありますが、当市では、スノーシュートレッキン
グやスノーモビルでの冬の里山探索と、かまくらでの伝統食提供など、旅行者に提供す
るコンテンツを変え、地域の特性に合わせた楽しみ方を提案し、
「雪」をテーマとする
他の観光地にはない特色を出して、広域全体として旅行者の満足度の向上と競争力を高
めていきます。
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広域全体として旅行者の満足度の向上と競争力を高める
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○産業間連携の関係づくり
観光振興は、旅客業や旅館宿泊業など観光業界だけではなく、農業や商工業など地域
の産業が連携して取り組むことで、新たな観光商品づくりにつながると考えます。
農業の観光への寄与は , 地域で生産された特徴あるおいしい食材の提供はもとより、
田植え体験やりんごの収穫体験など体験型グリーンツーリズムで食材や料理、商品への
作り手のこだわりや技術、生産背景が付加価値的を生むことは広く理解されてきていま
す。
そして何よりも、観光に欠かせない緑豊かな自然環境や美しい田園など里山の景観は
農林水産業に支えられています。
また、商工業と観光の視点では、漆や南部せんべい等地域の伝統工芸、伝統食品の工
場見学、体験にとどまらず、「産業観光」という概念が確立されつつあります。
例えば、日本酒をテーマにした場合、その原料となる「酒米」の生産ほ場の見学や体
験、生産者との交流から、精米・整粒加工、酒の仕込み等酒蔵見学、伝統食と日本酒を
味わうなど1次から 2 次、3 次との産業間連携、地域の6次産業化を進めていきます。
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○産学官連携の関係づくり
地域を特徴づける持続可能な観光の振興は、中長期的な取り組みが求められます。
そのためには、民間事業者のチャレンジ性とビジネススキル、学問領域の調査・分析・
研究に基づく知見や裏づけ、行政の持つ地域づくり・街づくりの視点を融合させる必
要があります。
各地の観光協会の領域にとどまらない広域的で将来を見据えた活動を、産学官連携で
取り組む仕組みづくりを進めます。
加えて、観光に携わる人材の育成についても産学官が連携した継続的な取り組みが
求められます。産業界のニーズを踏まえた実践的で優秀な人材の育成に教育界が取り
組み、それをさらに産官でフォローしていく体制づくりを進めます。
市内の取み組みの一例では、中学生が地域の農業者と一緒に農業体験、加工体験し
た商品を、修学旅行で上京した際に、首都圏の量販店で生徒たちが販売したり、地元
をPRしたりする活動をしています。
このような活動をさらに発展させ、次代を担う若者がふるさとを愛し、地域に誇り
に持てるよう取り組んでいきます。
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○着地型観光づくり
「着地型観光」とは、従来の発地の旅行代理店等が企画する旅行商品に対し、旅行者
の受入れ先が、地域ならではの発想で企画し、地域での交流などを通じて旅の楽しさを
提供するという新しい観光形態をいいます。
a. 地域のブランド化を目指す
「着地型観光づくり」にあたって、まず取り組むのは、特産品・商品のブランド化、
商店街や施設のブランド化、行事のブランド化、人のブランド化によって地域の価値を
新たに創造し、向上させます。
ただし、「ブランド化」といっても、ファッションや貴金属等のブランド化とは異な
ります。
旅行者の多くは、旅行先で食べたり、飲んだり、遊んだりすることも観光の目的です
が、「新しいことを学び、同じ趣味や価値観の方々と交流したい」という旅行者が年々
増えていることに着目します。
市内の一例では、軽米町出身の古舘春一氏の描く漫画『ハイキュー!!』は、累計発
行部数 1,400 万部を超え、多くのファンを有しています。
ここ数年、ハイキューファンが軽米町や、作品中に登場するキャラクター「金田一勇
太郎」と同じ名前の金田一温泉を巡礼する旅行者が増加し、ファンの間では「聖地」と
なっています。
このようなファンがくすぐられる、更なる宝物の掘り起こしやイベント(バレーボー
ル大会を開催するなど)の開催を進めます。
市内にはそのほかにも、コアなファン(マニア)がくすぐられる宝物や場所がたくさ
んあります。ファンの志向や価値観に着目し、
「一度は行きたい」場所づくりが地域の
ブランド化につながります。
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b. 地域ブランドに磨きあげる
地域ブランドとして確立するには、その宝に関わる様々な分野の専門家に「学ぶ」必
要があります。
「学び」の姿勢が、お客様への訴求力につながり、その姿勢が強いほど、人を呼び込
みリピートにつながると考えます。
学びといっても、学術的な知見ということだけでなく、
「その世界」に精通したカリ
スマ的なファンや、支える方々の意見を聞き、情報を整理し発信・提案することだと考
えます。
これまでの、国内の観光地は「大衆」を相手に観光ビジネスを展開してきましたが、
本市は「たった一人のお客様のための観光」=「スモールメリット」を狙います。
一人のファンを満足させることができれば、その多くのファンの興味関心や賛同を得
られます。そして確実に人が人を呼び、集まり、魅力的な観光地となります。
◎着地型観光のポイント
①どんな方に来て頂きたいのか?対象を明確にし、それにふさ
わしい居場所と出番をつくる(旅行者が主役になれる戦略)
②旅行者の「好き」
、興味、価値観に合わせたコミュニティをつ
くる
③旅行者同士、旅行者と地域住民がともに楽しめるプログラム
をつくる
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【ターゲット】
日本の特色あるまつりに興味がある欧米外国人
「人形まつり」について知りたい!
祭りを知る
深く学ぶ
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ふれあい
○お客様が訪れたくなる観光戦略(観光需要喚起)の考え方
多様化、細分化される観光ニーズや外国人観光客の増大に対し、全国 1,742 市町村の
中から二戸市を選んで来ていただくための仕掛け(戦略)も必要と考えます。
■観口(かんこう)
食をテーマとした観光。二戸の伝統食や二戸を代表する食材を利用した料理の提案の
みならず、食を介したイベントの開催や料理教室・体験、キャラクターやロゴデザイン
など、食を通じた地域デザインを展開します。
■観好(かんこう)
心の豊かさを満たしてくれる観光。お客様の趣味・志向、
「好き」をテーマとしたファ
ンのための場所づくりやイベントを開催します。
■観交(かんこう)
交流が生まれる観光。街コンや宿コン、カーリングやマラソンなど各種スポーツイベ
ントの開催等、人と人との出会いの場をつくります。
■観光(かんこう)
観光は観光でも多くの人が光り輝く観光です。日本一やギネスに挑戦といったイベン
トを開催します。
以前、世界一長い焼き鳥に挑戦したことがありますが、参加する多くの人々が主役に
なって光り輝く時間と空間を創造します。
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■観耕(かんこう)
グリーンツーリズムなど農山村生活体験観光。農作業や農産加工体験、オーナー制や
古民家宿泊など、日本の懐かしい農山村生活を体感していただきます。
■観工(かんこう)
モノを作る手づくり観光。企業の歴史や技術・商品の紹介と合わせて、見て・触れて・
創り・感動し、交流していただきます。
■観康(かんこう)
健康や美容を維持増進させるための観光。湯治場としての温泉利用にとどまらず、病
院や、医薬品企業、健康食品企業、美容室、栄養士などの協力・連携を進め、健康と美
をテーマとした、新しい湯治場を提案します。
いろんな着眼点から、「訪れる人」を主役にさせ、
「人を幸せにさせる時間と空間を創
造」すること。常にお客様視点で、その対象者が訪れたくなる仕掛けを考え、地域資源
(宝)とともに商品化することを進めます。
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④情報の相互交流
~お客様とつながる関係づくり~
観光振興において、地域の魅力や価値の情報を的確に発信することで、旅先として選
ばれる地域となっていくことが重要です。
さらに、地域を訪れた旅行者に対して適切な情報を提供することは、顧客満足度を左
右する大きな要因ともなります。
○訪れたくなる情報発信
まだ行き先が決まっていないお客様に対し、地域のイメージや楽しみ方を喚起させ、
旅行先として選ばれるよう、一般的には、
「広告」
、
「人的販売(営業)
」
、
「広報」
、
「販売
促進」といったプロモーションを行います。
ただし、多様で膨大な情報があふれている中、限られた予算や労力の中で、しかも、
観光地としてはほとんど知られていない本市が、一般的に行われる大衆向けのプロモー
ションを行っては全く効果が期待できません。
まずは、コアなターゲット(ファン)に、心をくすぐるコア(専門的)な情報を提案
することを主体に情報を発信します。
ターゲットの世界観やテーマ等によって、動画配信や SNS、印刷物や手書きボードな
ど効果的に届く方法や媒体、タイミング等を選定して的確に発信します。
お客様が、旅行プランを計画するとき「ワクワク、ドキドキ」させる、情報の提案、
発信が重要になります。
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○情報発信・情報提供媒体はお客様をみて
旅行者は、その地域に興味を持った時点から、その地域に滞在している間も様々な情
報を必要とします。
その際に、必要な情報を探し出すまでに時間がかかったり、スムーズに情報を入手で
きなければ、満足度の低下につながり、二戸市全体のイメージダウンとなって、リピー
トにはつながらなくなります。
旅行者の年齢や旅行形態などの属性や利用スタイル等を考え、インターネット情報を
主力に、マップやガイドブック、パンフレット等の紙面媒体、案内サイン等の情報媒体
を組み合わせて情報提供します。
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○市民とお客様がつながる情報
世の中には多様で膨大な情報が溢れていると先述しましたが、更新されない情報(イ
ンターネット、紙媒体も同様)は、イメージダウンにつながりかねません。
しかしながら、予算の関係上、パンフレットなどの紙媒体物は頻繁に更新できないほ
か、ホームページやブログの更新も労力やネタ(情報収集)にも限界があります。
本市では、facebook など SNS を通じて、二戸に暮らす皆さんのお奨めしたい情報(季
節の景色や場所、食や伝統行事 etc)を発信、サイト上にテーマごとにまとめて情報提
案することで、最新の情報を多彩に提供します。
また、旅行者にも、SNS等を通じて二戸を訪れた感想や想い出を発信して頂きます。
旅行者が発信した情報は、観光地側が発信する情報に付加価値を与えてくれます。
SNS 情報に加え、旬の季節やイベント開催時には、手書きのDMを送ることで、心の
こもったアナログ情報により楽しい時間と空間の記憶が蘇り、また訪れたくなる、食べ
たくなる衝動をかき立ててくれます。
【参考】facebook の可能性
facebook の利用者は世界で 10 億人、国内で 2,000 万
人を超え、学生はもとよりシニア層にもコミュニケーシ
ョンツールとして利用者が拡大し続け、世界で最も影響
力の高い SNS ツールといわれています。
ちなみに、500 人の方から情報に対し「いいね!」
を頂いた場合、facebook の友達1人あたり 100 人の方が見てくれるとすれば、
「500
いいね!」× 100 人(友達の友達)+500 人(自分にいいね!を押してくれた方)=
5 万 500 人つまり「500 いいね!」の先には、5 万 500 人の人が情報を見られる状態
にあるということになります。
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『にのネット(facebook ページ)』
にのネットとは「二戸を愛してやまない観光マインドあふれる、ありのまま
の二戸の楽しみ方を発信、企画するネットワーク」です。二戸をよく知り愛し
てやまない市民が12のカテゴリで「二戸のリアルで楽しい、ここにしかない
観光まちづくり」をおすそわけし誘客を図ります。
にの四季
にの湯だな
にの技
にの歴文
四季の風景
温泉情報
手仕事
歴史・文化
にのまつり
にのしごと
にのグルメ
にのんだくれ
祭り、イベント
産業
グルメ情報
酒・酒場
にのまちにの人
にのスポ
にの漆
にの鉄にのタク
まちと人
スポーツ
漆関連情報
ときどきさんぽ
駅・交通
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⑤外国人観光客への対応
○外国人観光客の現状
2014 年に 1,300 万人を超えた訪日外国人旅行者は、2020 年の東京オリンピック・パ
ラリンピックを控え、今後、さらなる増大が予想されています。
一方、国内旅行者は少子高齢化により人口減少が始まって久しく、国内消費金額も減
少し続けており、平成 26 年度の観光庁の調査では一人当たりの全消費額は4万7千円
程度となっています。
外国人旅行者の消費は、交通、宿泊、飲食、買い物、娯楽など幅広い分野にわたり、
一人あたりの消費金額は 15 万1千円程度と、国内旅行客の約 3. 2倍となっています。
訪日外国人旅行者の来訪回数は、1回目が 43.1%と最も多く、2回目が 17.1%を占め
る一方で、10 回目以上も 11.0%と少なくなく、全体の 56.9%の外国人が2回以上来訪
しているという調査結果となっています。
また、「次回の訪日でやりたいこと」の調査では、
「温泉入浴」が約 45%で最も多く、
次いで「四季の体感」が 28%、
「自然体験、
農山漁村体験」が 15.5%の順となっています。
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○外国人観光客を呼び込むために
a. 受け入れ態勢の整備
自然や歴史、豊富な体験メニューなど外国人旅行者が魅力的に感じる観光資源が豊富
にあっても、受け入れ態勢ができていなければ、誘客には結びつきません。
「外国人観光客を呼び込むためには外国人の感性が必要」という考えから、国際交流
協会を主体に、二戸市内で活動するALT(外国語指導助手)や二戸市在住の外国人と
交流会や研修会を開催し、外国人観光客の受け入れに向けたホスピタリティの向上や外
国語が話せなくても外国人とコミュニケーションが図られるツールの製作、外国人向け
の情報発信を展開します。
b. 人材育成
外国語が堪能な人材の確保・育成を図ります。次に、外国語が堪能な人材を確保した
うえで最も重要な、地域の歴史や伝統、文化自然、産業、暮らしなどの「地元学」を学
び、ガイド(地域通訳案内士)として育成する体制を整備します。
c. インフラ整備
誘導看板や案内標識などの案内サインへの外国語表記の追加や、観光マップやガイド
等の外国語版を製作します。
外国人旅行者にとって情報入手の生命線といえるネット情報を容易に受信可能とする
ため、各地での無料 Wi-Fi の整備を進めます。
海外旅行では換金が必要な現金よりも手軽なクレジットカードの利用が好まれます。
クレジットカード利用対応も地域に拡大整備していきます。
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d. 外国人向け体験プログラムづくり
日本の農山漁村観光は、日本人よりも外国人に喜ばれるといわれます。畳や障子の日
本家屋、日本食、伝統行事や日常の慣習なども外国人にとっては新鮮で珍しいことがた
くさんあります。
外国人の視点に立って、生活の中から外国人対応の体験プログラムを考えます。
昔遊びや伝統行事の中に、外国人観光客を惹きつけるメニューが必ずあります。
(どっ
ぴきやお手玉などの遊びや、神楽、しめ縄、蓑づくり体験など)
また、外国人には、映画やテレビなどの映像から一部偏った「日本への憧れ」を持っ
ている方も少なくありません。(例えば、日本人は芸者のように毎日着物を着ている。
日本家屋には忍者が住んでいるなど)
受け入れの際には、できるだけ昔ながら和の装い(作務衣等)で対応することもおも
てなしにつながります。
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