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第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書
4
基調講演
【スライド 3】
科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドラインについて
まず、アルブミン製剤のアルブミンの生理
作用をまとめますと、最初に「血漿膠質浸透
圧の維持」とありますが、ほとんどのアルブ
〔座長〕 虎の門病院 輸血部
〔講師〕 東京医科大学八王子医療センター 輸血部
牧 野 茂 義
田 中 朝 志
ミン製剤の使用については、膠質浸透圧の維
持を目的として行われています。残りの 3 つ
は生理作用としてはありますが、アルブミン
を投与することで果たしてこういった作用を
期待できるかどうか。まだ確実に証明されて
おりません。但し最近では、抗酸化作用や、
(座長:牧野先生)
それでは、基調講演に移りたいと思います。今回、アルブミンのガイドラインが今年出ましたの
で、その内容につきまして、田中朝志先生から説明していただきたいと思います。
血管の機能・構造に関連する効果が注目され
てきております。
それでは田中先生、よろしくお願いします。
【スライド 1】
(講師:田中先生)
【スライド 4】
これは古いデータですけれども、1998 年に
出されたコクラングループのメタアナリシス
牧野先生、ありがとうございます。
の結果です。循環血液量の減少や熱傷、低ア
では、今年出ましたアルブミン製剤の使用ガ
ルブミン血症で、アルブミン群とコントロー
イドラインについてご説明しますが、まずエビ
ル群どちらがいいかを比較したところ、死亡
デンスをお示しして、ガイドラインのポイント
率の relative risk はアルブミンを使用したほ
についてご説明したいと思います。
うが高い。つまり、アルブミンの使用が患者
さんによくない影響を及ぼすという結果が出
ました。このスタディはかなり議論を巻き起
こしましたけれども、後のスタディの基礎に
なったものと思います。この論文では、アルブミンの効果について警鐘が鳴らされたことに意義
があったと思います。
【スライド 2】
ガイドライン作成の経緯ですけれども、厚労
省のガイドラインができたのが 1999 年で、小
幅な改訂は重ねられてきたのですが、エビデン
スに基づいた推奨レベルの設定は行われてこ
なかったということと、2000 年以降、アルブ
【スライド 5】
次に SAFE Study として知られている、有
名なプロスペクティブスタディーをお示しし
ます。
約 7,000 名の脱水症患者さんに対して、
生食を与える群とアルブミン製剤を与える群
ミン製剤投与に関する重要な知見が集積され
とに分けて、生存率ならびに臓器不全発症率
てきたということで、アルブミン使用について
を見たものです。アルブミン群と生食群の生
適切な判断を行うための支援を目的として作
存率カーブはぴったり重なっており、アルブ
成されたということであります。
ミン群には死亡率を改善する効果はないとい
うことが示されたデータであります。
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第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書
第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書
【スライド 6】
さらに、ベースラインのアルブミン値を
【スライド 9】
死亡率に関しては、今申し上げましたよう
2.5 で区切りまして、2.5 以下と 2.5 以上で分
に、ほとんど変わりがないということですの
けても、信頼区間 1 をまたいでおり、特に有
で、種々の病態で罹病率を調べたものがあり
意差はないということが示されております。
まして、これもメタアナリシスの結果です。
外傷や熱傷、低アルブミン血症、ハイリスク
新生児、いずれも有意差はないですが、唯一、
肝硬変の合併症の腹水のある状態では有意に
罹病率低下が示されていました。
【スライド 7】
【スライド 10】
サブグループ解析でいろいろな病態を見て
これから 3 つは、肝硬変の合併症について
も、やはり有意差は見られていません。ただ、
のスタディです。腹水穿刺時の循環不全発症
外傷では一部でアルブミン群のほうが逆に予
率を見たところでは、アルブミンを投与した
後がよくないというデータがあります。
ほうが relative risk が 0.39 倍、リスクは 6
Severe sepsis はわずかですけれども、もしか
割下がっています。非常に高い有効性が示さ
したらアルブミン群のほうがいいかもしれな
れたというデータであります。
いという傾向が見られ、後の prospective
study につながっております。
【スライド 8】
これは外傷の中でも外傷性脳損傷患者の追
【スライド 11】
I 型肝腎症候群において血管収縮剤であり
跡調査を、
約 460 例で 2 年間されていますが、
ます Telipressin(バゾプレッシンのアナログ
明らかにアルブミン群のほうが死亡率が高い
製剤)と、アルブミンを併用すると、治療反
ことが示されています。外傷性脳損傷患者で
応群では予後がよくなるというデータが示さ
は、アルブミンは使うべきではないというガ
れております。
イドラインの元となっているデータです。
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第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書
第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書
【スライド 12】
もう 1 つ、特発性細菌性腹膜炎において、
【スライド 15】
もう 1 つ、肝切除術における術後アルブミ
抗生剤+アルブミンを併用すると、抗生剤単
ン値の変動を見たデータです。少し細かくて
独に比べ、これも死亡率の odds ratio が 0.34
恐縮ですが、周術期アルブミン使用群では術
と非常に高い効果が示されています。アルブ
後のアルブミン値が低いわけですけれども、
ミンを投与したほうが、投与しない群よりも
使用しなくても手術の侵襲によって、術後の
生存率が高くなるというデータが示されたわ
アルブミンは 1~1.5g/dL 程度下がることが
けであります。
示されています。使用してもしなくても、1
週間ぐらいするとデータが同じになるので、
やはり一時的な減少に伴うアルブミンについ
ては、疑問符がつくと思われます。
【スライド 13】
【スライド 16】
また、重症敗血症についてもアルブミンの
効果についてのスタディーが行われています。
肝硬変の合併症ではアルブミン投与の効果
1,818 名の prospective study がされ、わずか
がありましたが、これは効果の機序を示した
に差があるように見えますけれども、やはり
仮説です。従来の膠質浸透圧維持による効果
生食群とアルブミン群では有意差はありませ
以外に、抗酸化作用等を通じて血管の resist
ん。90 日後の生存率は差がないということで、
ance を改善するのではないかという機序が
生食でもアルブミンでも予後は変わらないと
示されております。
いう結論に至っております。
【スライド 14】
【スライド 17】
これは手術の話です。詳しくは、この論文
を見ていただきたいと思います。Child-pugh
これは旧厚生省のガイドラインです。1990
クラス A、肝癌の手術症例で、術後 2 日目の
年から、ずっと使われているガイドラインで
アルブミン値を測って、3.0g/dL を超えてい
す。急性のアルブミンが 3.0g/dL 以下、慢性
たらアルブミンは投与しない、3.0g/dL 以下
では 2.5g/dL 以下が適応になりますが、新し
だったら投与するという旧厚生省のガイドラ
いガイドラインでは 3.0g/dL はなくなります。
インに沿った使用をされています。安全性が
少なくとも一律に 2.5g/dL 以上に、維持する
確認できたら 0.2g/dL ずつ基準を下げてゆき、
必要はないという方針になっています。
最終的に 2.4g/dL まで下げましたが、腹水な
どの合併症が増えたり、予後の悪化は見られ
ませんでした。よって術後 2 日目のアルブミン値は 2.4g/dL までは、アルブミンを投与しなくて
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よいという結論になっています。
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【スライド 18】
【スライド 21】
アルブミン投与にトリガー値はあるかとい
ガイドラインの内容を順番に申し上げます
うクリニカルクエスチョンに対しては、明確
と、まず、低蛋白血症に起因する肺水腫ある
なトリガー値はないということです。急性期
いは著明な浮腫についてお示しします。臨床
の目標値を 2.5~3.0g/dL に設定した研究は
的に比較的多い病態ではないかと思いますが、
ありますが、アルブミン投与の優位性は示さ
このクリニカルクエスチョンに対しては、利
れていません。ですから病態別に考えていく
尿薬抵抗性で高度の低蛋白血症を伴う肺水腫
必要がありますが、少なくとも 2.5g/dL ある
あるいは著明な浮腫に対しては有効である。
いは 3.0g/dL 以上に保つ必要はないというこ
ただ、予後を改善するとのエビデンスはない
とであります。
ということで、推奨は弱い推奨で、中程度の
エビデンスレベルであります。
【スライド 19】
【スライド 22】
ガイドラインの推奨グレードも、以前はず
解説もよく読んでいただきたいと思います。
いぶん細かく分かれていましたが、最近は、
強い推奨、
弱い推奨の 2 つに分かれています。
位置付けとしては、肺水腫あるいは著明な浮
腫が見られましたら、減塩・水分制限や利尿
薬で治療する。しかし、高用量の利尿薬に反
応がなければ、さらに高度(2.0~2.5g/dL 以
下)の低アルブミン血症を伴う場合には、利
尿薬と高張アルブミン製剤の併用を考慮する
ということになっています。
【スライド 20】
【スライド 23】
さらに、エビデンスレベルも、強・中・弱・
とても弱い、この 4 つになっています。
ただし、この効果は議論があって、有用で
ある患者は限定的である可能性があり、さら
に予後を改善するエビデンスはないというこ
とで、それぞれ文献を示されております。こ
の文献から取られたガイドラインであります
から、もしこのガイドラインをお使いになる
場合には、できれば文献を読んでいただいて、
どういった条件で、どのような患者さんを対
象としておられるかということを一応知った
上で使ったほうがよろしいかと思います。
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第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書
第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書
【スライド 24】
【スライド 27】
病態別に推奨を申し上げます。出血性ショ
大量腹水穿刺排液や、特発性細菌性腹膜炎
ックの状態に対しては、アルブミンは有効か
や、肝腎症候群に対しては、発症予防や生存
というと、死亡率は改善しないけれども、合
率の改善という点で、推奨は高い推奨度で、
併症の発生率を改善できる可能性があるとい
エビデンスレベルも高いものが示されていま
うことです。死亡率は改善しないという否定
す。1A が示されているのは、ガイドライン
形ですけれども、これに対しては強いエビデ
の中でもごく一部でありまして、肝硬変に伴
ンスレベルがあるということで、合併症発生
う合併症については、アルブミンの投与が強
率を改善できる可能性は弱いエビデンスレベ
く推奨されています。
ルということになっています。
【スライド 28】
【スライド 25】
重症敗血症患者は、一部データをお示しし
難治性の浮腫・肺水腫を伴うネフローゼ症
ましたけれども、重症敗血症患者でアルブミ
候群についてです。非常にエビデンスレベル
ン投与は、晶質液と比べて死亡率を改善する
が弱い緊急避難的に利尿薬とともに使用され
効果はない。ただし、重症敗血症患者の初期
るのみであります。
治療において、循環動態を安定させる効果は
あるかもしれないという弱い推奨になってお
ります。
【スライド 29】
【スライド 26】
肝硬変に伴う腹水については、推奨度が強
循環動態が不安定な体外循環は、透析など
く、エビデンスレベルも高くなっています。
ですが、アルブミンは有効ですが、第一選択
肝硬変に伴う腹水に対してのアルブミン投与
は生理食塩水、あるいは降圧薬の調整や昇圧
は、肝硬変診療ガイドラインが別にありまし
剤の使用でして、弱い推奨度になっておりま
て、これとほとんど同じ文言になっています。
す。
利尿剤服用中の肝硬変の腹水に対しては、腹
水消失率を高めるとともに腹水再発を抑制し
て、生存率も改善されるということになって
います。
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第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書
第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書
【スライド 30】
【スライド 33】
次に、凝固因子の補充を必要としない治療
脳虚血(頭部外傷)については、これも一
的血漿交換について、3 つ示されています。
部データでお示ししましたが、外傷性脳損傷
高い推奨になっているのは、神経疾患に対す
患者では有効とは言えず、逆に予後の悪化が
る治療としてアルブミンを置換液とした治療
指摘されているということで、使用しないこ
的血漿交換療法で、高いエビデンスレベルで
とについての強い推奨がついています。くも
す。ABO 型不適合移植の抗 A、抗 B 抗体除
膜下出血後の血管攣縮においては、直接的に
去については、免疫抑制剤の併用で有用で、
予防したり治療する効果はありませんが、循
高い推奨ですが中程度のエビデンスレベルで
環血液量を保つためには有効であるという弱
す。その他の疾患に対する治療的血漿交換は、
い推奨になっております。
根本治療と比して有効性が低いということで、
弱い推奨となっています。
【スライド 34】
【スライド 31】
12 番目として、周術期の循環動態の安定し
7 番目は重症熱傷です。こちらについても
た低アルブミン血症については、アルブミン
有効ということです。体表面積 50%以上の熱
は有効ではないことが、弱い推奨ですが示さ
傷に対してはアルブミン投与が有効です。あ
れております。
まり早期ではアルブミンは投与しないほうが
いいとされていますが、18 時間以内でもアル
ブミン値が 1.5g/dL 未満の場合には投与する
ほうがいいとされています。弱い推奨度で推
奨されております。ただし、アルブミン使用
しても死亡率に対する効果は示されていませ
ん。
【スライド 35】
17 番目として、他の血漿増量剤(人工膠質
【スライド 32】
液など)が適応とならない場合には、アルブ
9 番目として循環血漿量の著明な減少につ
ミン投与は有効とされています。例として急
いてです。急性膵炎、腸閉塞などですけれど
性腎障害、敗血症、頭蓋内出血などの場合で
も、ショック状態にはアルブミン投与が推奨
あります。
されますが、極めて弱いエビデンスレベルし
かない現状であります。
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第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書
【スライド 36】
検査技師の方は興味あるかもしれませんが、
【スライド 39】
推奨されないものとしては、循環動態不安
測定法が幾つかありまして、血中濃度への影
定な体外循環、脳虚血(頭部外傷)
、周術期の
響がどうかということです。BCP 改良法によ
低アルブミン血症など、それぞれ推奨されな
る測定値に 0.3g/dL を加えた値を BCG 法で
いレベルが違いますけれども、原則的に推奨
の近似値とする換算法が提唱されていますが、
されないということになっています。
残念ながらいくら見ても、先ほどデータを示
した大規模比較対照試験では測定法が示され
ていないのです。従って、測定法別の指針作
成は困難であり、現状としては、BCG 法の採
用施設では偽高値となる病態があることを認
識して行うしかないということです。
【スライド 40】
これは、まとめです。
【スライド 37】
アルブミン製剤の適応のまとめです。強く
推奨されるものは 4 病態です。肝硬変に伴う
合併症、治療的血漿交換療法、重症熱傷、他
の血漿増量剤が適応とならないものの 4 つに
限定されます。
【スライド 41】
最後に、ガイドラインがあっても、どのよ
【スライド 38】
弱い推奨には、今までのガイドラインの病
態の多くが入ってきます。
26
うに実際の輸血療法へ活かしていくかが大切
だと思うので、4 枚だけスライドをお示しし
ます。
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【スライド 42】
【スライド 45】
ガイドラインの背景にあるデータについて
これは当院で行っている対策です。アルブ
は、どういう条件で、どういう患者群を使っ
ミン値が基準値を超えていたら、検査技師か
ているかを見た上で、ガイドラインに沿った、
ら担当医に確認をします。医師の裁量権があ
あるいはエビデンスに基づいた使用法をして
りますから、やめてくださいとは申し上げら
いただくのが原則と思います。特にエビデン
れませんけれども、
「基準値を超えていますが、
スが得られた条件を、よく勘案して利用して
本当に使うんですか」というような確認で注
いただければいいのではないかと思います。
意喚起をしているということであります。
【スライド 43】
これは輸血学会で行っています総合的調査
【スライド 46】
まとめです。血液製剤の適正使用を推進す
から取ってきたものです。診療科別アルブミ
ることは、
「血液法」の理念でもありますし、
ン製剤使用量を見ると、圧倒的に多いのが消
われわれの責務であります。最近のアルブミ
化器外科、心臓血管外科、消化器内科、その
ン製剤に関するエビデンスからは、有効性の
他外科など、外科系と消化器系が多いです。
確立された病態は肝硬変の合併症等に限定さ
ですから、こういった使用量の多い科に注目
れていますから、基本的には抑制的な使用を
いただいて、そこでしっかり適正使用がされ
心がけるべきでありますけれども、推奨され
ているかを見るのが、有用ではないかと思っ
る病態については、よく考えて使っていただ
ております。消化器系と外科系がターゲット
きたいと思います。病院で適正使用を推進す
になるということです。
るためには、誰か牽引役が必要だと思います
けれども、各施設の実情に見合った対策をしっかりやれる人を育てていただいて、具体的に対応
していただくのが効果的かなと考えます。
ご清聴ありがとうございました。
【スライド 44】
適正使用については、これは各施設で取り
組んでいただけばいいことですけれども、私
が実際してきたこととしては、各科使用量と
(座長:牧野先生)
田中先生、非常に多岐にわたるアルブミンのガイドラインの説明をありがとうございます。時
保険査定をヒントにして傾向を把握した上で、
間も押していますので、アルブミンのガイドラインというのは、
『日本輸血細胞治療学会誌』の
問題点があったら輸血療法委員会のときにも
61 巻 3 号に、その内容が詳しく出ております。参考文献も付いておりますので、ぜひじっくり見
言いますけれども、不適切なオーダーをした
ていただきたいと思います。
当事者に直接言うということが効果的だと思
本邦のアルブミンの使用量というのは、かなり減少はしてきていますが、今回のこのガイドラ
います。そして、評価には事前・事後があり
インが出ることによって、今後アルブミンの使用量というのは、先生、多くなるのでしょうか。
ますが、できれば事前評価をしてオーダーし
それとも、かなり減ってくるのでしょうか。
た際、あるいは使う前に何らかのアクション
28
を起こすのが適正使用につながるのではないかと考えています。
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第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書
(回答:田中先生)
推奨される病態の症例数によると思いますが、個人的な考えとしては、だんだん減ってくるの
ではないかなと思います。
5
都内における安全で適正な血液製剤の
使用に向けた取り組みについて
(回答:牧野先生)
〔座長〕
適正使用の推進ということで、今後、減ってくるのではないかということです。非常に時間も
押していますので、ご質問はまたロビーでお願いします。
東邦大学 医学部
東京都赤十字血液センター
小 山 信 彌
石 丸 文 彦
では、このセッションを終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
(座長:小山先生)
それでは早速、開始したいと思います。
2 番のセッションについては、
「都内における安全で適正な血液製剤の使用に向けた取り組みに
ついて」ということで、2 人の先生にご講演をいただくことになっています。最初のご紹介を私
のほうがさせていただきます。
まず最初は、
「東京都における取り組み」ということで渡瀬先生です。渡瀬先生は、東京都福祉
保健局保健政策部疾病対策課の先生でいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。
(1) 東京都における取り組み
(都内医療機関の輸血状況、小規模医療機関における輸血マニュアル等)
東京都福祉保健局 保健政策部疾病対策課
渡 瀬 博 俊
【スライド 1】
東京都福祉保健局の疾病対策課の渡瀬と申
します。この場をお借りいたしまして、日ご
ろから福祉保健行政にご協力いただきまして
誠にありがとうございます。私からは、東京
都の輸血状況の報告を中心といたしまして、
輸血等の取り組みにつきましてご紹介を差し
上げたいと思います。
30
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第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書
第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書
【スライド 4】
【スライド 2】
それでは最初に、都の輸血状況についてで
続きまして、輸血管理料の取得状況でござ
います。施設基準に適合していること、こち
らの届け出が行われ、保健医療機関におきま
ございます。直近で平成 26 年、東京都輸血状
しては輸血適正使用加算が行われるというこ
況調査の集計結果につきまして、ご報告をし
とでございます。こちらに関しては、I 型・II
たいと思います。
型ということで、輸血の業務全般に責任を持
この調査は、目的として、都内の医療機関
つ常勤医師が配置されているといった条件を
における血液製剤の使用状況等の調査により、
満たしているものは II 型、さらに厳しく専任
適切な血液製剤使用の推進をしていくための
の常勤医師が配置されているといった条件を
資料ということでございます。対象は、都内
満たしているものは I 型ということです。特に、
にある病床数 20 床以上の医療機関 623 カ所で
病床数の多い医療機関は輸血の機会も多くなるというところで、I 型を取得している医療機関の割
ございます。結果としては、549 機関からご回
答をいただきました。そのうち一般病床 100 床以上の医療機関は 95.7%と、大変多くの医療機関
からご回答をいただいております。こちらから幾つか、概要という形でお示しさせていただきたい
合も増えています。内訳としては、I 型が 61 機関、II 型が 135 機関ということで、前年度に比べ、
こちらも数が増えているという結果でございました。
と思います。
【スライド 5】
こちらは使用状況でございます。全体の割
【スライド 3】
最初に、輸血療法委員会の設置状況でござ
います。こちらは指針によりまして、輸血に
合を見たもので、血小板製剤が半数以上とい
う形です。この割合につきましては、大きな
変動はございませんでした。
必要な管理体制ということで定期的に委員会
を開催し、精度管理、適正使用の推進といっ
たところを検討していただくというものでご
ざいます。委員会を設置している医療機関は、
441 医療機関ということで 80.3%。前年と比
較して、やや改善したというところでござい
ます。また、一般病床 100 床以上の 199 機関
は、委員会を設置しているのは 97%、こちら
【スライド 6】
も増加しているというところでございました。
使用状況の推移でございます。使用量は
年々増加傾向ということで、赤血球製剤、血
小板製剤、血漿製剤、いずれも少しずつ増え
てきているという現状でございます。
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第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書
第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書
【スライド 7】
GVHD 予防のための放射線照射血液の使用
【スライド 10】
疾病別輸血状況につきましては、悪性新生
状況につきましては、全てが使用されていると
物が最も多く、4 割ということでございます。
いうことでございます。
前年も 36%ほどでしたので、ほぼ同様の結果
ということでございました。
【スライド 8】
製剤別購入・廃棄量の状況でございます。全
【スライド 11】
年代別輸血の状況でございます。年齢が高
血製剤につきましては、購入はございません。
くなるほど多くなるというところは明らかで
赤血球製剤につきましては、こちらにお示しさ
ございますけれども、特に 70 歳以上に関しま
せていただいているのが廃棄量ですが、廃棄率
しては、急激に使用量が増加するといった傾
で見ますと、平成 26 年は 2.5%で、前年の廃
向でございます。また、年別の推移を見ます
棄率 2.7%より 0.2 ポイントほど改善したとい
と、前年に比べますと若干改善しているもの
うことでございます。血小板製剤の廃棄率に関
もございますけれども、基本的にはほぼ横ば
しましては、平成 26 年が 0.5%、前年も 0.5%
いといった状況でございました。
で、横ばいといったところでございました。血
漿製剤につきましては廃棄率が 1.6%で、前年
が 0.9%でしたので、やや増加が見られました。
グラフは、病床数を横軸に示しております。一般病床が 100 床を超えているものにつきまして
【スライド 12】
は、基本的には横ばいといったところでございます。大きな病院は使用量が多いということで、病
床数が少ないところも廃棄率は少し高くなってしまっているといった現状がございました。
自己血輸血の状況につきましては、前年よ
りもやや増加といったところでございます。
【スライド 9】
廃棄理由は、有効期限までに使用しなかった
というものが一番多かったということで、破損
や保管環境がその次ということでございます。
引き続き適正利用に関しましてご留意いただ
ければと思いますので、よろしくお願いいたし
ます。
34
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第14回 東 京 都 輸 血 療法研究会報告書
第14回 東 京 都 輸 血 療 法 研 究 会 報 告 書
【スライド 13】
アルブミン製剤の使用量は、前年とほぼ同様
血マニュアルを、部会と東京都輸血療法研究会の世話人会におきまして分担執筆いたしました。9
月から東京都のホームページで、このマニュアルを公表させていただいております。入り口の所に
ということでございます。国内献血由来製剤の
もサンプルを一部置いてございます。
使用率で見ますと、グロブリン製剤については
85.8%ということで、前年よりもやや低下と。
【スライド 16】
アルブミン製剤に関しては 67.1%で、前年の
65.6%よりもやや改善していたという傾向で
ご覧になった方も多いかと思いますが、マニ
ュアルの内容といたしましては、輸血前の準備
ございました。
に始まりまして、輸血の依頼や割り付け、実施
手順、参考様式等で構成しており、実地の場で
役立つような形式ということでございます。こ
ちらの下に、参考にしてくださいということで
URL を示しております。ぜひ一度ご覧いただ
【スライド 14】
ければと思います。
ここまで簡単にお示しさせていただいたも
のは概要といったことでございますが、輸血状
況の調査については東京都のホームページで
公開させていただいております。平成 16 年以
【スライド 17】
降のものについては、インターネットで検索が
最後に、血液製剤の適正使用推進に向けた取
可能ということですので、こちらもご参考にし
り組みを 1 つご紹介させていただきたいと思
ていただければと思います。
また、ご協力いただきました各施設の結果に
います。こちらの血液製剤適正使用アドバイス
つきましては、評価指標という形で全体の平均
事業でございます。この事業は、医療機関に向
値とともに各施設のほうへお返しさせていた
けまして、輸血学の専門医師を派遣し、輸血療
だきますので、こちらも併せてご参考にしていただければと思います。
法等に関する助言や個別相談に応じ、血液製剤
また、この調査につきましては、毎年実施をしております。平成 27 年調査として、今後またご
連絡を差し上げたいと考えているところですので、その際には引き続きご協力いただきますよう重
適正使用への取り組みを支援することを目的
としております。
対象医療機関は、都内の血液製剤の供給実績
ねてお願いいたします。
があり、また今後実績の見込める医療機関とい
【スライド 15】
取り組みとして、もう一点ご紹介させていた
うことでございます。具体的な内容としては、輸血後の感染症対策や廃棄率の削減方法、緊急時の
O 型輸血導入について等、実際に活用ができるものということでございます。
だきますと、医療機関、医療従事者に対する適
切な輸血の推進支援ということで、東京都献血
推進協議会の下部組織である東京都血液製剤
適正使用部会を設けております。部会において
は、輸血療法の安全性の向上を図ることを目的
としておりますが、この中で中小の医療機関を
対象とした輸血マニュアルの作成を行おうと
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いうことで、今回、小規模医療機関における輸
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