NABSHOW 2016 速報

NABSHOW 2016 速報
石田 武久 石田 武久 モノレール駅から見た LVCC 会場
世 界 最 大 の 放 送 機 器 展“NABSHOW
そして一番右手に 2 階建てのサウスホール
ス発表に参加した。ミュージックショーで
2016” が 4 月 16 日 か ら 21 日 ま で カ
が繋がっている。
有名なホテルの Ballroom での開催だけに
ジノと享楽、その一方でコンベンションの
展示会前日の日曜日ということもあり来
大画面ディスプレイを自在に駆使し、主力
街、ラスベガスで開催された。世界中でテ
場者は少なく、駐車場もかなりすいていた。
の 4K 機器やワークフローのシステム紹介、
ロが頻発し、経済状況も不透明な状況下に
まずはノースホール内のレジストレーショ
それらを使ったコンテンツ上映など、華麗
あり、幾分懸念もあったが、世界の 166
ンで登録を済ませ、その後、2 階にあるプ
なプレゼンテーションをしていた。
ヶ国から 1870 社以上の企業・団体が出展
レスルームに顔を出した。日曜午前という
その次にシャトルバスでラスベガス最大
し、10 万 3 千人を越える来場者を迎え大
のに、既にかなりの数のメディア関係者が
の 繁 華 街 Strip Line に 接 す る“Palazzo
盛況だった。これからの放送・映像メディ
備え付けや持参のパソコンを使い仕事をし
Hotel”に移動し、ややリラックスした雰
アの展開を占う上で重要なイベントである。
ていた。日本からの顔見知りも見かけたの
囲気の Belden ブランドのグラスバレーの
原稿締め切りまで時間的余裕がない中、本
で、モーニングコーヒーを飲みつつ早速情
コンファレンスに出席した。4K 時代、IP
号で速報を、次号以降で詳細について報告
報交換した。前日のトランジットのトラブ
時代に向けた変革とチャレンジ、さらに世
したい。
ルで、別の空港に廻されたり、飛行便がと
界的に広がりつつある符号化技術 Tico や急
日本列島を襲った大風の影響の余波で成
れずロサンジェルスから深夜バスで早朝に
速な進展が見込まれる IP 化に向けた AIMS
田出発が遅れ、しかも例年以上に厳しくな
ラスベガス入りした仲間もいたようだ。国
アライアンスにおける経営戦略などを熱く
ったセキュリティのおかげで、ロサンジェ
内でめったにあわせる機会がない顔に NAB
語っていた。
ルスでのぎりぎりのトランジットに冷や汗
会場で出会えるのも楽しみの一つである。
その他にも Autodesk や Ross Video、
をかきつつ夜遅くのラスベガス入りとなっ
今日は多くの出展企業が LVCC 内のミー
Imagine Com. などが別々のホテルでショ
た。今回始めて利用したハラーズホテルは、
ティングルームや歓楽街に近いホテルなど
ー的要素も備えたプレスコンファレンスを
メインストリートの Strip Line に接し、北
での記者発表を予定している。それぞれ自
開いていた。時間帯も重なり、場所もばら
側にベネシアンホテル、道路の向かい側に
社出展物の PR や経営戦略などを、各社と
ばらなので残念ながら見送った。そのかわ
シーザースパレス、南側に世界一の巨大な
も大型映像も使い、巧みで魅力ある演出で
り、筆者にとっては始めて足を踏み入れる
空中観覧車で有名なリンクホテルに囲まれ、
披露する重要な場で、どこもかなり大勢の
巨大で超豪華な Wynn ホテルで開催され
観光にとっても地の利が良く、裏手はモノ
メディア関係者を集めていた。会見場所は
て い た ShowStopper の“Official Press
レール駅に接し NAB 会場の LVCC に通う
市内に点在しており、時間と体力の許す限
Preview Ivent”に参加した。これは翌日か
には便利な所にある。
り幾つか会場を回ってみたので紹介してみ
らの公開展示に先立ち、ERICSSON、DJI、
翌朝は時差ぼけのせいか、歳のせいか、
たい。
HP、Imagine Product、G-Technology
早く目がさめたので、早速 NAB 会場に出
昨 年 Qauntel か ら 企 業 名 を 変 え た
など多くの企業がミニコーナーのブースで
かけた。朝早いというのに、カジノを楽し
SAM(Snell Advanced Media) は、LVCC
自社製品を展示するイベントである。夜の
む大勢の観光客を尻目に、ホテル東側に接
のミーティングルームでやや地道な演出な
時間帯だけに、壁際の展示エリアの中央ス
したモノレール駅からわずか一駅、数分で
がら、従来から Quantel が蓄積してきた
ペースにはドリンクと軽食コーナーが設け
LVCC 駅に到着。地上高いところにある
高品質コンテンツ制作システムと Snell の
られ、メディア関係者も交えた大勢の見学
駅舎から見ると、広大な駐車場の向こうに
広範な機器を統合した新製品で総合力を発
者と各社担当者の交流が活発に行われてい
“Westgate”ホテル(旧称ラスベガスヒル
揮して行くと語っていた。その後、LVCC
た。
トン)をバックに、LVCC のノースホール
からかなり離れた場所にある HardRock
が、その右手に広大なセントラルホールが、
Hotel にタクシーで移動し、ソニーのプレ
6
FDI・2016・05
写 3. Opening Ceremony での Gordon 会長
写 1. 華麗な演出の SONY プレスコンファレンス
写 5. NTT グループの最先端機器展示情況
写 4. 日本企業が集中するセントラルホール
写 2. ShowStopper によるプレ合同発表会情況
展示会初日の 18 日の朝 9 時からは、ノ
や中央よりに富士フイルム、池上通信機、
ー ス ホ ー ル に 隣 接 す る“Westgate” ホ
昭特製作所など日系企業がブースを構え、
テ ル の Paradise Ballroom で オ ー プ ニ
多種多彩な制作機器を展示していた。一番
ングセレモニーが開催された。就任 7 年
奥の東側コーナーには今回もソニーが場内
目 に な る Gordon Smith 会 長 の NAB 活
随一の広大なブースを構え、カメラからデ
動報告と今後の展望についての講演に続
ィスプレイ、制作・配信系など多種多彩な
い て、Disney/ABC TV グ ル ー プ の Ben
機器、システムを展示していた。その近辺
Sherwood 会長のキーノート講演があり、
には、アストロデザインが多彩な 4K/8K
続いて ABC News の Bob Woodruff 記者
機器を、日本コントロールシステムが 8K
が Award を受賞した。これまでキャメロ
対応サーバや測定評価装置を展示し注目を
ン監督や名喜劇俳優 Jerry Lewis などが参
集めていた。
加した時に比べると、地味な演出で、例年
に比べるとやや盛り上がりは少なかった。
横長長大で上下 2 フロアから成るサ
その後、4 日間にわたり回った展示会
ウスホールエントランス付近には、昨年
場の状況を紹介してみたい。展示会場の
Belden ブ ラ ン ド に な っ た Grass Valley
LVCC はノース、セントラル、サウスホー
と最近世界市場で高い実績を上げている
ル (2 階建て ) からなり、幕張メッセなどに
Blackmagic Design が例年よりも広大な
比べると広い敷地に広がり、3 ホールとも
ブースを構え、どちらも先進的でインパク
広大で、随所に散らばる各社ブースを見て
トのある展示物を公開していた。その右手
廻るのは、相当の時間と体力を要し、シニ
には、コンテンツ制作系の老舗で新組織と
アの身にとってはかなり難行苦行だが、最
して出発の SAM、デジタルシネマ分野で
新技術に接しられることはこの上ない楽し
例年特徴あるレイアウトと雰囲気で評判の
いことである。 Red Digital、世界の業界に各種機器を提供
最も広いセントラルホール中央部の眺望
している AJA、また例年多種多彩で斬新な
の開けた地の利の良いエリアには、今年も
システムを展示する Vizrt などがブースを
日本企業のブースが数多く見られた。世界
構えていた。また同ホール東側には、NEC
的に放送・映像業界をリードしているキヤ
が最新の 4K/8K コーデック機器を、また
ノンとパナソニックは広大な規模のブース
日系企業の Zaxel と Azlab が 4K/8K にも
とシアターを設け、最近の大きなトレンド
関連する特徴ある機器を出展していた。
になっている 4K 機器をメインに多彩なシ
サウスホール 2 階のエントランス付近で
ステムを展示し、それらを使ったコンテン
は、常連の Avid と Harmonic が軒を並べ、
ツを上映し大盛況だった。
U-HDTV ワークフローなど最新の制作シス
その近辺には日立国際電気、朋栄、JVC
テムを公開し、その裏手で Dolby が最近評
ケンウッド、リーダー電子が軒を連ね、や
判の HDR 技術“Dolby Vision”など特徴
写 6. 8K 放送に備えた NHK ブース状況
ある映像 ・ 音響システムの実演をしていた。
同ホール中寄りでは NTT グループが最新
の符号化・配信技術を公開実演し高い評価
を受けていた。
同ホールの東側奥には、例年ノースホー
ルに開設されていた Future Park が開設さ
れ、その中で一番広い規模の NHK ブース
では、今年から日本で始まる 8K 試験放送
に向け、着実に開発が進んでいる 8K 関係
機器の展示に加え、リオオリンピックで活
躍する 8K 中継車も展示していた。さらに
8K シアターではレーザープロジェクター
による最新コンテンツが 350 インチサイ
ズの大画面スクリーンに公開され大勢の見
学者を集めていた。
今年の技術動向を概観すると、4K シス
テム関連に加え、例年より多く見られた
8K 関連、世界的な映像トレンドになって
いる HDR 映像、急速に進展が進む IP 化関
連、展開が広がっているドローン技術など
である。次号以降で、これらの詳細を紹介
して行きたい。
Ph.D. Takehisa Ishida
映像技術ジャーナリスト
7
FDI・2016・05