SKI000901

ソーシャルワークにおける
省察および省察学習について
南
彩子
はじめに
対人援助専門職のトレーニンバに
ーパービジョンのシステムが
不可欠であ るのがスーパービジョンであ
るが, このス
根づきにくいのがわが 国の現状であ る. ソーシャルワーカ
の配置されている 職場に , 必ずしもスーパーバイザーがいるとは
スーパービジョンを 受けるのが実践力向上のためには
一
限らない・機会があ れば
望まれるが,その機会がない場合に
も, ソーシャル ワ 一ヵ 一は 自己の実践をふりかえり ,状況理解を深め, さらに自分自身に
気づき, 気 づいて変えていこうとする「省察力」を 身につけていくことが 望まれる,「省察
力 」を身につけていることは ,スーパービジョンにとっても必要不可欠の 条件であ るとと
もに,「省察力」はソーシャル ワ 一ヵ 一と ソーシャル ワ 一ヵ 一 をめざす学生にとっても 必要
不可欠な力であ る.なぜなら, ソーシャル ワ 一ヵ 一が クライエント
と
関わる際に,技術者
のようにすぐに 基礎理論を応用して 用いることが 出来ない程に ,一人ひとりのクライエン
トのもつ問題状況には 多様性や個別性が 多く存在するからであ る・ したがって,知識や技
術を一様にクライェン ト にあ てはめることができない・そこで ,一つひとつの実践 ( あ る
ぃは 実習体験 ) において,本当に理論を応用することが 出来たのかどうか ,その実践が本
当に専門性のあ るものなのかどうかを 検証する場や 時間が必、要となる・ こうした省察学習
の 連続によって 初めてソーシャルワーカーは 専門性を習得していくことができる・
複合的で不確実性を 含んだ問題状況に 対する実践のなかに ,判断の根拠となる理論や概
念がいかに埋め 込まれていて ,それがどのように関連し合っているのかということは
, 省
察 によって見えてくる , こうした省察を 繰り返し行いつつ 専門的力量を 高めていく専門職
のことを Schon,D. (1983)は, リフレク テ イブ・プラクテイショナ 一 (省察的実践 家 ) と称
している.
このような「省察力」を 習得していくための 学びが,「省察学習 (reflective learning)
であ る.省察学習は,対人援助を行う 他 職種の教育においては 既に現任研修や 実習教育に
」
取り入れられているが ,
ソーシャルワーク 教育の領域ではその 教育方法が 未 だ確立されて
いない. したがって今後,ソーシャルワーカー 養成教育の段階から 自己の実践を 省察する
「省察学習」教育を 導入し,ツールやメソッドの開発や普及を 急がなければならないであ
ろう.そ う することによって ,仕事に就いてからも一人でこれを 継続していける 可能性が
生まれる.省察学習 (reflectivelearning)には,自己省察学習,対話的省察学習,集団
省察学習の 3 種類が用意されている (澤木 1996j が,なかでも,自分1 人で行い うる 「自
己省察学習」の 方法を身につけることで ,卒業後ソーシャルワーカーとなってからも行為
しつつ考える 習慣をつけておくこと , これは専門職としてのソーシャル
ヮ 一力一にとって
欠かせない条件の 一つであ ろう
海外において「省察学習教育」は ,すでに英国を 中心として教師教育㎝ ez row,J. :1981,
土
Boyd,E.M.& Fales.A,W, :1983,
Walker,D.eds.
Calderhead,J. : 1989) , 看護教育
:1985 , Gibbs,G. :1998,
Ried.B. :1993 , Atkins,S.&
(Boud,D.,Keogh,R.8
Murphy,C. :1993 ,
Burns,S.&Bulman.C.eds. :2000), そしてソーシャルワーク 教育 (YelIoly,M.& Henkel,M.
1995, Gould, N.& Taylor,I. : 1996) などの諸領域において 取り入れられているとの 報告
一3 一
が 見られる・また 広く専門職教育において 鍵 となる学習ツールとして 省察の重要性を 強調
した Schon,D, による一連の 研究成果 (Schon,D.1983, 1987, Argy is,C.& Schon,D.A.
「
.
1992) は,ソーシャルワークにおける 専門職養成教育にとっても 看過できないものであ る.
一方わが国では 既に教師教育 ( 佐藤 : 1992, 秋田 : 1996, 澤木 :1998), 看護教育
(Stockhausen,L. 江本リナ 訳 :2001, 田村。 中田・澁谷地 :2003) に省察学習が 取り入れられ
ている・ ソーシャルワークにおいても 渡部 (2003:13-16) によってスーパービジョン 的 機
能を備えた事例検討会に 内省的学習を 取り入れることの 提案がなされている. こうしたこ
とから, ソーシャルワーク 教育に省察学習を 導入していく 可能性についても ,早急に検討
する時期が来ていると 考えられる・そこで 本稿では,省察および省察学習の概俳について
明らかにし, ソーシャルワークに 既に用いられている 自己覚知やアセスメントやスーパー
ビジョン等の 概念との関連についても 考察し, ソーシャル ワ 一ク 教育に導入していく 可能
性は
ついて検討したい
Ⅱ
l 省察学習㏄ efle ㏄ ive learning)
の理論的基盤
省察的実践家を 養成するために 欠かせない省察学習は ,省察力を獲得していくための学
びであ る・そこでまず ,文献レビューを通して,省察的実践家の依拠する概念であ る省察
の概念,省察的実践家の概念,そして,省察学習の概念について 明確化していく.
-1. 省察㏄ efleGtion) の概念について
"reflection" という言葉の 意味は,『ランダムハウス 英和大辞典第 2 版』 (1994:2273)
によれば,①反射,反照,反響,反映,投影,影響
②映像, (鏡 ・水などに ) 映った 影 ③
熟考,熟慮,沈思,反省,が
代表的なものとして 挙げられている.他の辞書も参照した 結
Ⅰ
果,本論文で使おうとしている
" 省察 " という言葉の 意味は,「過ぎ去った自らの 体験に光
を当てるようにして 能動的にふりかえり ,何かに照らして熟考 し ,省察すること」 といっ
た 意味合いであ る.
Dewey,J, は省察的思考㏄ eflective thinking) の概念を生涯にわたって 展開した.
Dewey,J. (1933:9)は,理論と実践,思考と
行動の分離といった 二元論を打破する 方向性と
して,理論は実践に先立って 独立にあ るのではなく
,実践をコントロールするものとして
生じ, 実践に新しい 意味づけを与えるものとして 存在しているとし ,そこで省察的思考が
重要な意味をもっと 考えた. この考え方は ,知ることと行
ていると考える Schon,D.理論の礎になるものであ
う
ことが分かちがたく 結びつい
り,両者の共通点でもあ る,教育の場で
これが生かされる 場合には,事実に関する知識を 学ぶことが目標なので は なく,学生に事
実のもつ意味を 体得させ, 自らの言動をふりかえり ,その根拠づけと推理が同時に 行われ
る知性的な思考様式を 酒養しつつ, なすことによって 学ばせようとするものであ
る.
Dewey,J. (1916:150)は,省察的思考の 5 段階について ,以下のように述べている.①完
全 な性格が決定されていない , あ る 未 確定な状況に 巻き込まれたという 事実から起こる 困
惑・混乱・疑惑.②与えられた諸要素についての 試験的解釈.それは, それらの諸要素に
一定の結果をもたらす 傾向があ ることを告げる.③考慮中の問題を限定し ,明確にする.
考えうるすべての 点についての 注意深い調査.④より広範な事実と 一致させるために , よ
り正確でより 一貫性のあ るものにした , その結果の試験的仮説の 精敏 化 .⑤考案された仮
一4 一
説 き ,現在の状態に適用される行動の 計画として一度立脚してみること.すなわち ,予期
した結果をもたらすために ,何かを実際に行い,それによって仮説を検証することであ る
とした・ す な む ち, あ る 未 確定な状況に 巻き込まれて 混乱した状況下における 何らかの 経
験 をし,そこで何が起こっているのかを 探索。 分析し,問題は何かを明確化しそれを 解
決するための 仮説を立て,実際に行動することによって 仮説を検証する.
ソーシャルケー スワークにおける 問題解決過程と 似てい
この省察的思考のプロセスは ,
る
・
Perlman(1957:88-95)
は,
「ケースワークは ,問題の事実を明らかにするための 調査に
始まり,実践者が事実を分析する 間に診断を行い ,実践者 と クライェン
うと試みるその 間に問題を処遇することで 仕事を終える」
ト
が問題解決しょ
と述べている.つまり ,省察的
思考のプロセスと 問題解決のプロセスとは ,重ね合わせることができる.
さらに 龍崎 (1999 ゴ 6) は, Dewey,J. を引用しながら , 「教育は経験の 絶えざる再構築で
あ る」 とし,また「ある経験における 意味の付与や 拡充を通じて ,後続する経験を望まし
いように導いたり ,方向づけたりすることであり,経験とその再構築を通じた 人間の成長
は,省察的思考によって達成される」 とし, これこそが教育の 本質であ ると考えた.
渡部 (2004:80)は, 「デューイは , 人間の思考のプロセスのもつきわめて 熟慮的な性質
に注目して,それを省察と呼んだ」とし ,省察とは,「自己が
巻き込まれている 未 確定な状
況を,新たに共有され確定された 状況へと更新するプロセスであ
る」と述べている. Dewey,J
による省察概念について 触れている渡部 (2004:81)や真鍋。 木野 (2004:88) 等の文脈に即
して省察とは 何かについてまとめるとすれば
,
「今しょうとしていることと ,その結果起
こることの関係を 認識し, その両者の具体的な 結びつきを発見しょうという ,将来に向け
ての意図的な 努力のことであ る」 と言えよう.単に体験したことを 体験のままで 終わらせ
るのではなく , その体験について 省察することによって , 問題状況の因果関係について 理
解すると共に ,
自らの置かれた 状況を客観化し ,結果として 自己覚知を促進させることが
できる. そのとき体験は 意味のあ る経験に昇華されるのであ る.
早川は 993: 49) は,「省察的思考の 特徴を解明したデューイの『探究の
理論
コ
では,その
論理的側面であ るパターンや 構造とともに , F コミュニカティヴ 刀な 側面も無視できない」
と述べ,省察的思考が対人関係状況のなかで 発生し展開されるものであ
reflective tminkinK)」のプロセスであ るという考え
方を提示している. この考え方は ,対話的省察の基礎になるものであ ろう.
は, 「相互省察的思考
こ eciproca
り, このプロセス
Ⅰ
以上に述べたよ うな 諸研究者の見解を 総合すると,省察のプロセスは,問題解決のプロ
セス に近似しながら ,一人で熟考することも大事であ るが,他者とのコミュニケーション
によって, より促進されていくものであ
ると考えられていることがわかる.
Dewey,J, の立
場を吟味検討しつつ 新たな視点を 拓いた Schon,D,は,さまざまな 専門家たちがどのように
問題解決を行っているのかという 事例研究を通して ,次に述べる省察の概念から 導き出さ
れた「省察的実践 家 」の考え方に 到達したのであ る.
次に海外の論文では ,
以下の 3 者の定義がしばしば 引用される
まず Boyd,E.M.&
FalBR.A.W. (1983:101)は,省察を「関心下にあ る問題とそれに 関わる自己を 内的に吟味す
る過程であ り, あ る経験についての 自己にとっての 意味づけを行い ,明確化することで,
結果として視点の 転換をもたらすものであ る」 と定義している. 次に
Boud,D.,Keogh,R.,Walke,D. (1985Kは,「新しい理解や認識を 導くために,個々人が経験を
一5 一
探索していくなかでの 知的感情的活動をあ らわす一般的用語」であ ると定義している. こ
の両者の定義を 参考にしっ っ Reid,B(1993:305) は, 「省察とは,記述したり 分析したり評
価したりしながら 実践経験をふりかえるプロセスであ り, それは実践についての 学習によ
って成しとげられるものであ る」と定義している. Atkins,S.&Murphy,C.(1993:1189比 よ
る "reflection" に関するレビュー 論文においても , B0yd,E.M.& Fales.A.W. (1983:101)
と Boud,D.,Keogh,R.,Walke,D.
(1985)による定義が 代表的なものであ るとされている・
次にわが国における 仏領域の研究者による 省察の定義を 見てみよう.教育学の 領域では
澤木 (1996:149) が,省察 (省察 ) とは, 「悩み多い教育実践家が ,自分の教育実践の ふ
り返り rsflect on 』をとおして , 自己の教育実践上の 弱点とよさを 自覚し,明日の実践に
前向きに取り 組む助けとすること ,つまり教師が 自己の発達を 自覚し力量形成を 実現する
ぽ
ぇ
ことを目的とする」
ものであ るとしている.
社会学の領域では 野村 (2003:44-47)が, 「省察は基本的にコミュニ ケーションの 力 で
あ る」とし,人が他者に話かけるとき ,その人は自分自身にも話かけているのであ り,。
他
者に呼び起こすのと 同様の反応を 自分自身のなかにも 呼び起こす. その結果他者の 反応
( 態度 ) を自分のなかに 取り入れることができる.つまり
,自分のやっていることが自分
自身にも理解できるようになると
説明している.すなわち ,自分を主題化し 理解すること ,
自分自身を覚部の 視点から見る ,自分自身をあたかも他人を 見るかのように 捉え返すこと
であ るとしている.
看護学の領域では ,本田 (2003:2) が, 「自分自身の 姿を鏡に映し 出すかのような 自己
認識や自己対話ということが
内包されており ,自分自身を振り返り , 問い直すこと ,よく
考えることなどの 意味が含まれている.最近では ,専門職教育や成人教育 (andraeoey)
の分野で中心的な 概念として取り 上げられるようになった」と 述べている・ 実際に看護領
域で省察的実践を 自ら行った青木 (2003:51) は, 「自分自身の 姿を鏡に映してみるかの
ような自己認識や 自己対話,自分自身を 振り返り,熟慮,熟考するという意味も含まれて
いる」 と自身の省察的実践の 記述を通してまとめている.
以上概観してきたことを 考察すると,わが 国では未だ統一された 定義づけは試みられて
いないと言える ,ただここに抽出した定義のエッセンスを 総合してみると ,省察とは何ら
かの体験に基づいたところの 問題状況の理解と ,問題状況への 対応の仕方に 関しての自己
理解の両者を 含むプロセスであ り,結果として自己覚知が促進されるものであ る・この点
では,ソーシャルワークにおける 気づきを促す 事例検討会やスーパー ビジョンが目指して
いるところと 何ら変わりはない.さらに,共通点として考えられることは ,援助者という
ものは他者と 関わる場合に 自分の道徳的基準や 感情に影響されやすく ,そのことを 客観的
に 吟味したり検討したりしない 限りなかなか 気づきにくいものであ るという前提に 立っ
て,自己を内省。
理解して変えていくことも 辞さない気概 や ,より柔軟な発想や責任感と ,
あ る種の危険性を 引き受ける気持ちが 必、 要であ るという点であ る・援助者は 敢えてこ うし
た 省察を継続していかない 限り,専門職として 利用者に対して 必要な援助をなし 得ないと
言っても過言ではないだろう.
家の概念についで
Dewey,J. の影響を受けた Schon,C 。 は, 1983 年の主著において「省察的実践
一 6-
家 ( リフレク
(Schon.D.1983:19-75) . Schon,D.
の提唱する「省察的実践 家 (「 eflective practi Ⅱ oner) 」という概俳は , Dewey,J. の研
究における「省察的思考 ( eflective thinking) 」の概俳に依拠していると 言われてい
る (龍崎 , 2002:278) . もともと Schon,D. は, Dewey,J. の探究に nauiry) の理論に焦点、 を
当てた論文で 1954 午に博士号を 取得した哲学者であ る. Sr,hnn,D.は,探究の理論を実践に
埋め込まれた 理論㏄ heory in practice) すなわち実践的認識論 (epistemology of p 「 acti
ce)へと発展させ「省察的思考」を 専門家の実践の 中核に位置づけ , 「省察的実践 家 」の
概念を提起した (Schon,D. 1983 二 2001, 佐藤。秋田 訳 :3).
ティブ。 プラクティショナ 一 ) 」の概俳を提唱した
「
省察的実践 家は,
D. は,
3
" 行為しながら 考える (think in ac ちぇ on) " 専門職であ る
Schon
種類の省察について 明らかにしている (Schon.D. 1983=2001佐藤,秋田訳 :10).
1 っ 目は, "reflection in action" で,常に援助者が対 侍 する状況と対話しながら ,行
為の意味を客観的に 考察しながら 行動することであ り,これは,一瞬一瞬の
省察過程であ
る.
2 つ目は,
"reflection after action" で,援助を行った後に,出来事やかかわり
行為の意味をふりかえること
, そしてその意味を 考え, 気 づき,言語化することであ る・
3 つ目は "reflectron on action" であ り,実践の事実を対象化。意識化して検討する・
その結果,ふりかえりから一歩進めて,次に似たような状況が 生じたときに ,試してみる
ことができること ,つまり応用できることを 目指すものであ る.
ここで, 「状況との対話」というのは ,実践家がそのかかわっている状況と対話するこ
とによって次の 活動についての 指針を考えていくことであ る.そして「自己との 対話」と
いうのは,問題状況と取り組む自己の 感情,行為,判断の
墓になった知識は 何かについて
自己吟味しながら 客観化していくプロセスであ
る. この両者を含めて ,
「省察的対話」が
展開されていく
Schon,D. (1983=2001佐藤・秋田 訳 :77) は, 「有能な実践 案 は 皆 合理的に分別 t れたり
完全に記述することができない 現象を認識することができる」と 述べている・この 暗黙の
認識と判断のプロセスにおいて ,それを記述することを通して言語化・ 客観化して「問題
状況」とそこに「 関 わる自己」をあ ぶり出そうとする・その 試みが「省察」であ る,
この省察的実践の 概念は,複雑な状況下での対象者の 問題と取り組む 多くの実践家に 当
てはまると考えられる.まずは,実践家が直面しているまさにその状況下で何が 起こって
いるのか,そして実践家の言動の 基底にあ ったものは何かを 認識する・続いて ,その複雑
な 状況下での対象者の 問題の本質を ,実践している真 最中に,実践について 見極めていく・
問題解決の方策を 立案するには ,行為過程でそれぞれに異なった, 自分がかかわっている
状況と対話することによって
意味を理解し , 次に行うべき 活動の方向性を 見出していく・
そして実践活動の 一つ一つの行為過程のなかで
, 常に省察を繰り 返しながら,実践の事実
を客観化して 吟味検討する.そして事後にも自分の 実践をふりかえって 省察・吟味する・
事後の意識的な 省察は,行為のなかで瞬時に形成してきた 理解の意味を 問い,実践の構造
や 問題を捉える 枠組みを発見するとともに ,それを捉えなおし枠組みを組み 変えていく機
会となる (Schon,D.1983 二 2001 佐藤。秋田 訳 : 215-217).
省察的実践の 機能について , Schon,D. は,以下のようにまとめている (Schon,D.1983:61).
1
つ 目は,省察を通して,特殊な実践の反復経験によって 学び取ってきた 暗黙の理解を 表
面化し,批判することができるという
点であ る, 2 つ目は, 自分が経験する 不確かで ュニ
一7 一
一クな 状況に , 新たな意味を 見出すことができるという 点であ る.
schon,D.は,人間の抱える複雑な状況と 問題に対陣する 専門家として 省察的実践 家 の 概
念を導き出したのであ るが,複雑な状況と問題が 目の前にあ ってそれに対する 何らかの 効
果 的解決が求められるからこそ ,専門職には,常に経験した状況とその場における 自己の
関わりをふりかえって 自己対話を繰り
返す学びが必要なのであ
り,その意味では 自己教育
型学習を志向しているとも 言える.
Ⅰ
_3. 省察の理論的モデル
省察の理論的モデルには
大きく分けて 2 つあ る省察プロセスモデルと 省察レベルに 関
するものであ る・プロセスモデルの
代表的な 3 つほ ついて次に紹介する.
1
っ
目は, Bo
ud.,Keogh.,Walker Ⅱ 1985) によるリフレクティブ ,プロセスモデルであ り,これは以下の
①∼③のプロセスをとる・①経験への 回帰 ( 時間的経過に 沿って思い起こされてくる 出来
事を,判断を伴わない記述的な 形で回想することで ,自分の出来事に対する反応を 再検証
すること ) , ②経験と結びついた 感情への注目
(感情を確認し 検証する.その感情が焦点
となることで 自己認識が高まり ,肯定的な感情を高めて保ち,否定的な感情を捨てること
ができるようになること ) , ③経験を認めることを 通しての経験の 再評価 (経験への回帰
が何らかの意味をなす
ること ) の 3
つ
よ j に再構築される 過程で,徹底的な 回顧と内省によって 再評価す
であ る.
2 つ 目は, Gibbs,G. (1988)によるリフレクティブ。 サイクル・モデルであ り,これは以
下の①∼⑥のプロセスをとる
,①記述 (何が起きたのか ) , ②感情 (考えたことや 感情は
どのようなものだったのか ) , ③評価 ( その体験において ,何が良くて何が良くなかった
のか ) , ④分析 ( その状況をど
う
意味づけることが 出来るか ) , ⑤結論 (他に何が出来た
か 几 ⑥行動計画 / 指針 (次に似たような 状況が起こったときど
う
するか ) の 6 つであ る,
3 つ目は,多くの研究者の見解を 総合して, Atkins,S.& Murphy,C. (1993
が提示した, 3 段階プロセスモデルであ
:
1189-1190)
る・これは以下の①∼③のプロセスをとる.①
況に対する ) 不快な感情や 思いへの 気 づき ("w"r
。" 。 ,,
),
(状
②感情や知識についての 批判的
分析 (cri ical analysis), ③新しい視点を 得ること (new perspective),
屯
の 3 つであ る.
これらから考察できることは ,リフレクションとは 何らかの出来事を 契機に時間的経過を
辿って展開されるものであ り,感情への 気 づき (awareness) から認知の探索へと 発展し ,
最終的には視点の 転換に至るプロセスであ
ると言える.つまりこれは,ソーシャルワ 一ヵ
一の実践 力 を高める場合に 置き換えても ,行為の中の " 知 " を探求するための 重要な ツ一
ル であ ると言えよう.
次に,省察力のレベルに 関する理論モデルについて 述べる. Mez 丘 ow,J. (1981:3-24)は ,
① Reflectivity( 見たこと・考えたこと・
行ったことについての 省察的記述がなされてい
ること ), ② Affective Reflectivity( どのように感じたかについて
書かれていること ),
③ Disc ㎡ minant RefIectivity( 行ったことについての 評価が出来ていること ,理由やアセ
スメントが出来ていること ), ④ Judgimental Reflectivity( 好ましい / 好ましくない 等の
), ⑤ Conceptual Reflectivity( 概念に照らして 分析出来てい
⑦
ること ), ⑥ Psychic Reflectivity( 精神的側面からの 省察ができていること㍉
価値判断が出来ていること
Theoretical
Re 巳 ectivity( 理論に照らして 分析できていること ) の 7 つのレベルに 分類し
一8 一
た
・
Powell,J.H,
(1989 :824-832) は, Mez 止 ow,J. (1981) モデルのレベル⑤とレベル⑥を
一
緒にして全部で 6 レベル (① Reflectivity,
② Affective RefIectivity,
③ Discriminant
Reflectivity, ④ JudgimentalReflectivity,
⑤ ConceptualReflectivity,
⑥ Theoretical
Reflectivity) にまとめて,実証研究をしている.以後省察力のレベルに関する研究には
Mezirow モデルの修正版がしばしば 用いられている
(Richardson,G, & Maltby,H.1995:
1044-1050
:
,
Wong,K.,Kember,D.,Chung,L.&Yan.L.
1995
Durgahee,T.
1996)
け
2 . 省察学習の概俳についての 検討
2-1. 省察学習の概俳について
省察的実践家を 養成するためには ,省察に関する適切な知識と 方法とを用いた 学習法が
必要となる・ Reid,B(1993:305) は,「省察とは,記述したり 分析したり 評ィ面したりしながら
実践経験をふりかえるプロセスであ り,それは実践についての 学習によって 成しとげられ
るものであ る」 と述べているが ,
ここでの学習こそは ,省察学習を意味している.
Rake ォ , C.R. (1996:19-22) ほ ,省察学習を「創造的にそれぞれの経験を見直し ,
自分の言葉
でその意味を 明らかにし,探究する過程であ り, 自己認識, 自己実現,新しい知識の発展
を促すものであ る」と定義している , Schon,D,A.
(1983 二 2001 佐藤。秋田 訳 :218) によれば,
省察的実践家を 育てる専門家教育の 特徴すなむち 省察を促す教育の 特徴は,次の 3 つに要
約できる, 1 つ 目は,「なすことによって学ぶこと」であ
り,そこで身につけるべき 技術は,
創造的な技法,問題を設定することや 即興的に対応する 技能,状況と対話し,探求し, 省
察する技法であ り,これらを 身につける格好の 場として実習 (p acticum) という日常の 世
「
界と実践の世界のはざまに 実践を学ぶためにデザインされた
状況が準備される ,
と
言う.
2 つ目は , 「コーチすること」であ り,ここではコーチとの 関係性の中で ,「状況との反省
的 対話」を行いつつ ,コーチが鏡となり,学び手は鏡を通して問題と 自己自身への 省察を
行い,実践を味わい鑑賞し ,そのなかで発見を行なう・ 3 つ目が「協働省察を 行 う こと」
であ り,これが成立するためには ,対象を見る時間の保証 ( 時間的余裕 ), 素材が語りかけ
てくれるものを 聴こ
う
とする忍耐,他者に開かれた開放性が 必要であ るとする.
わが国における 省察学習の定義について 永井 (2005:99) は,
「学習者が経験の 内容や
成立条件について 省察的に,つまり 注意深く検証しながら 進んでゆく学習であ る.その過
程をとおして 学習者は,たとえば,課題の内容についてより 的確に理解すること.問題を
考える方法について 再検討すること・あ るいはまた,自らの生き方を問い 直すことなどに
取り組む」ものであ ると述べている・
す な む ち,単純な学習とは異なり,状況の捉え方や
対象への関わり 方に変化を生じさせ ,学習者が自らの 経験の意味づけ 方を変えてゆくとい
う 可能性を伴うような
学びであ る・看護教育における 省察学習について 研究を行っている
秋元。 含漱。稲光 (1998:61) は, 省察学習とは ,
「創造的にそれぞれの 経験を見通し ,
自分の言葉でその 意味を明らかにし ,探究する過程」であ り, 「自己認識,自己実現,
新
しい知識の発展を 促すもの」であ ると述べている・ 同じく真鍋。 木野 (2004:89) は,省
察学習の中心課題は ,自分自身を 一定の距離を 置きながら見るという 自己モニタ一の 役割
を果たす「自己意識」であ ると主張する・つまり 省察には,自己モニタ一の働きが欠かせ
ず ,自分自身に 起こっていることとその 意味を意識化することで 定着する.さらに ,真鍋。
木野 (2004:90) は,省察学習の必要条件として , 自己意識の質を 向上させるような 環境
一9 一
づくりが必要であ るとし,その際の必要な環境とは ,①ありのままの自己を 映し出す鏡 ( 自
己を客観 視 ・言語化することによるふりかえり ) , ②リフレクションの 過程から意識が 外
れない道しるべによるサポート
(学習・対話 ) , ③鏡の歪みを 修正するための ,他者評価
や グループ討議,④鏡の歪みを修正するための ,必要な知識との比較・対照を 目的とした
文献調査, を挙げている.特に今後の省察学習には ,実践や体験のふりかえりに加えて,
文献との照合は 必須であ ると思われる.
省察学習において 教師の果たす 役割とスキルについて 触れておこう・ Gould,N.d Ⅱ 1996
29) は,省察をしょうとしている 学生に対して ,①何が起こったのか,②ど 感じたのか,
③それは何を 意味するのか ,という 3 つのリフレクティブ・クエスチョンが 効果的であ る
と言う. Atkins,S.& Murphy,C. (1993:1190)は , ①自己への 気 づき (self-awareness), ②
う
記述 (description)
(critical analysis) , ④統合 (synthesis) , ⑤
評価 (evaluation)の 5 つを 省察のための 必須のスキルとして 挙げている・ 主として看護
学の領域における 省察的実践の 事例研究は, Gibbs,G. によるリフレクティブ・サイクル・
モデルや, Atkins,S.& Murphy,C. によるリフレクティブ・スキルを 応用して,事例研究を
行っているものが 多い,これらは,ソーシャルターカー養成教育においても 応用可能であ
ろ
う
, ③批判的分析
.
2-2. 省察学習の特徴
省察学習とは ,単純な学習とは異なり,状況の捉え方や対象への 関わり方に変化を 生じ
させ,学習者が自らの経験の 意味づけ方を 変えてゆくという 可能性を伴 う ような省察を 促
す学びであ る.それは実践 (経験 ) を通した学びであ り,経験したことを意識的に学びに
変えていくプロセスであ る・実践 (経験 ) とは,その場その時の複雑な状況や 問題に,一
瞬一瞬思考を 働かせつ つ 自らの次の行為を 決定していくことの 連続であ る・そうした 複雑
さのなかにあ って,掌中あるいは事後にそれらを 吟味検討することによって , 自分自身を
リニューアルし , 日々反省しつつ 学び続けようとする 姿勢,いかえれば 自己教育を習慣化
させるような 学びであ る.そのプロセスのなかでは, 自己省察,対話的省察,集団省察な
どが交互変換的に 組み合わせて 用いられるが ,養成教育段階では他者の力も借りっ つ 他者
を鏡として自己に 気づくというプロセスを 経て,教育課程修了後は,可能であれば引き続
き 熟練者のチェックも 受けつつ, 自己の実践をできるだけ 歪みの無い鏡にリフレクトさせ
て自己自身に 気づいて,修正していける 自己省察力を 身につけ, 自己省察を職務のなかで
習慣化させることが
目的となる
2-3. 省察学習教育の 方法
省察学習の種類は ,現在のところ 3 種類であ る・自己省察学習,対話省察学習,集団省
察学習であ る. 自己省察学習とは , 自分で自分の 実践 (経験 ) をふりかえる 方法であ る・
これは,省察学習の基本であ り,最終的に誰かの手を借りずとも 単独で実施できる よう に
訓練するものであ る.しかしトレーニンバを積まずに単独でこれを 実施した場合,客観,性
の保持や妥当性の 確保が問題となる・
したがって,この自己省察学習で 行った内省過程を
第三者に聞いてもらい ,協働探究する必要性が生まれる・こうして 1 人ないし 2 人の相手
と行 う のが対話的省察学習であ る・人はしばしば 自分 1 人では問題の 本質が見えていない
一 10 一
ことが多い. または一面的な 見方しかできずに 自己満足に終わっている 場合もあ ろう・そ
のときど
う
だったのか, どうしてそのような 見方考え方をしたのだろうか
かけてもらいながら ,
,
と
他者に問い
自分の実践の 深層部分を表に 引き出し,他者を鏡として気づかなか
った 自分の姿に気づいていくことができる. さらに他者の 視点も借りながら ,新たな見方
を構築していくこともできる. この場合の対話の 相手は,あ る程度のリフレクティブ・テ
ィーチング・スキルと 共に準拠すべきスタンダード
( 当該実践の背景となる 学問領域での
アカデミズムの 言語 ) をもっトレーニンバを 積んだ教師やスーパーバイザ
一でなければな
らない
これを集団で 行
う
のが集団的省察学習であ る. 同じような経験を 積んだ実習生同士あ
る
いは同僚・仲間が 集い , 互いの自己省察の 経過と結果を 話し合いながら 実践 (経験 ) を対
象化し,類似の経験やそれぞれが 経験のなかで 培った実践 知 (p acticalknowledge)や暗
黙 知 (tacitknowing)に照らして,相互作用を通して気づきを 促進していく・この 場合に
「
は ,実践 (経験 ) の中身を掘り 下げていく内に 自己と他者との 視点の違いに 行きつく場合
があ る.そのときには,その差異を受けとめながら ,それがどこからくるのか, どうして
なのかを突き 詰めながら,多様な視点を取り込むことで 最終的には自己への 問いかけを 深
化させていく. こうした場合には ,多種多様な他者の実践 (経験 ) や実践 知 ・暗黙 知が提
起されることもあ り, 自分の達成できなかった 部分やどちらかといえば 自分にとって 見た
く
な い 部分や , 弱い部分などが 析出されてくる 可能性もあ る,集団的省察学習は, 2 9 安
全 な環境のなかで 行われる必要があ る
また神戸大学バループの 田村・中田らの 一連の看護教育における 省察学習教育の 研究に
おいてもリフレクティブ・ジャー
ナル,チューター制 ,
ピアリーダーシップという
3 つの
教授一学習方法を 取り入れることで ,相乗効果を生み出すとしている ( 田村。 中田。 澁谷
地 2004:47-56). リフレクティブ・ジャーナルは 自己省察学習に 相当し,チューター制は ,
対話的省察学習に 相当し, ピアリーダーシップは 集団的省察学習に 相当するものと 考えら
れる.つまりここでも 3 つの方法を組み 合わせて用いることが ,実践的思考能力の育成。
向上に不可欠であ ることが指摘されているのであ
る,
3. 考察と結論
ソーシャルソーカーという 専門職は複雑性が 非常に高く,援助に関する知識や 方法を ク
ライェン ト とその問題状況に 一様にあ てはめることが 難しく,標準化困難な部分があ るた
め,一つ ひとっの個別のケースのなかで ,一瞬一瞬の省察が欠かせない・ また講義を通し
て知識や技術に 関する理屈をいくら 豊富に学んだとしても ,それですぐに実践に移ぜる わ
けではない. さらに学んだ 知識が体験という 行為を通して 経験として主体に 定着しなけれ
ばならない.そのためには体験のなかで ,行為しながら考え,ふりかえり,考えながら行
為を繰り返すという 事中の省察と , さらに行為が 終わってからの 事後の省察のプロセスが
経験からの学びにつながる.
こうした省察力を 身につけていかない 限り, ソーシャル ワ 一
ヵ一の専門性は 向上していかないと 言っても過言ではないだろう・
ソーシャルワークの 領域においては ,
ぅ
と
概念がすでに 用いられており ,
「個人スーパービジョン」,
「自己覚知」あ るいは「スーパービジョン」とい
「自己省察」と「自己覚知」との 関係や,
「集団省察」
と
一 11 一
「対話的省察」
「バループ。 スーパー ビジョン」
との関係
ほ ついても明確化する 必要性があ る.
「自己覚知」とは ,問題状況への対応の仕方に 関して, 自分自身の言動や 態度あ るいは
感情や考え方や 価値観やバイアス 等について意識的にふりかえり ,ありのままの自己に 気
づき, 自己理解を行 う ものであ る・ ソーシャルワーカーが 専門職として 他者を効果的に 援
助しょうとすれば , 自分自身を十分に 理解しなければならない (Compton.&
Galaway. 1989:302-306, Cournoyer,B. 1991:7) . そうした 伯 自覚知」のための 場や方法
を 提供してくれるのがスーパービジョンや
スーパービジョンは ,
省察学習であ る,
ソーシャルワーカーが 体験した事例を 中心として,そのプロセス
のなかで現れた 自己についてスーパーバイザー
一 ビジョンとは ,
とともに吟味検討することを 含む. スーパ
Kadushin,A. によれば教育的・ 管理的。支援的機能をもつ (Kadush n,A.1992,
ぇ
3 「。 ed. :22 づ 3) ものであ り, 自己覚知は,教育的,支援的機能をもつスーパービジョンに
よって促進される・また ,自己覚知の促進だけがスーパービジョンの
スーパービジョンではソーシャルワーカーとしての
果たす役割ではなく ,
専門的な知識や 技術を用いることが 出
来ているか,専門職としての価値や倫理に 裏 打ちされた行動が 出来ているか ,援助が望ま
しい方向に進んでいるか ,ソーシャルワーカーが 組織のなかで 望ましい働きをしているか ,
といった評価も 含めた管理的側面にまでも 焦点を向ける. しかし省察には 管理的機能は 含
まれない・スーパービジョンの
発展のプロセスを 辿れば,新任のソーシャルワーカーが経
験の豊富なソーシャルソーカ
一のもとで学ぶ 方法としてソーシャルワーク 機関の管理
のなかに最初は 位置づけられたが , 1930 年代になると , Dewey,J. の影響を受け (塩村 ,
1992:206), 個別に仕事の 経験を通して 行われる教育的機能が 強調された. そして 1970 年
代 以降, Kadushin,A. (1976, 1,、 ad.) や Shulman,L. (1982)らによって,支援的機能が 加え
られた,すなむち省察もスーパービジョンも , Dewey,J. (1933)の影響を強く 受けていると
いう点では共通しており ,共に教育的。
支援的機能を 担うという点では 一致している.
また, 「自己省察」が 自己との対話と 状況との対話の 2 つを含むものであ ると前述した
・
が,状況との対話というのはクライェン
ト
とその状況との 間で起こっていることがらのア
セスメントとど う遠 さめか, という点が問われるだろう. アセスメントはソーシャル ヮ一
クの プロセスのなかで 必ず通過しなければならない
必須のフェーズであ る. アセスメント
とは, 問題解決のために 情報を収集し ,身体的。
心理的。 社会的状況や 資源状況等につい
て総合的に評価を 行
う
ことであ る.その際,
専門的知識に 照らして今後の 見通しも含んだ
評価を下すのであ る.省察にも「批判的分析」 「代替実 検討」といったプロセスが 含まれ,
この点は両者の 共通項であ る.
また,省察の種類として 相己 省察」 「対話的省察」
一 パービジョン」においても
「個人スーパービジョン」
「集団省察」の 3 種類があ り,
「ス
「バループ。 スーパービジョン」
等の方法が用意されている.省察とスーパービジョンとは ,その形態や内容において , 近
供 している部分が 多くあ る.
「対話的省察」は「個人スーパービジョン」に
該当するだろ
うし, 「集団省察」は「バループ。 スーパービジョン」に 該当するだろう. しかし,今のと
ころ,「自己省察」に対応するスーパービジョンの
スーパービジョンというのがそもそも
形態は整備されてはいない.一人で
行う
言語矛盾であ るからだ. そして, スーパービジョン
にはスーパーバイザーが 必要だが,省察にはスーパーバイザー的 存在の指導者は 必ずしも
明確に想定されていない
,
一 2一
Ⅰ
対話的省察の 対話相手 ( リフレクターといった 言葉は一般的ではないので 敢えて対話相
手とする ) は,実践家の鏡になることによって 省察を促がしていく.省察を促すスキルの
基本は,実践家が実践内容についてふりかえって
語るところを ,
しっかりとついていき ,
傾聴すること ,その時々の考えや思いを 引き出すような 質問を適切に 行うこと,また実践
家の応答に対して 要約したりうまく 言い換えたりしながらフィードバックすることを
繰り
返しながら, 気 づきを引き出していくプロンプターあ
るいはファシリテーター 的 役割をと
る ・考える,あ るいは気づく
主体は実践家であ る.対話相手ご 察 学習の場合は 教師がその
役割をとる ) は気づきの促進者ではあ るが,代わって 答えを与えることはしない.こうした
対話相手との 対話的省察を 経験し,仲間との集団省察を経験することは ,養成教育の段階
から教師が意識化して 行い,教育プロバラムのなかにうまく 構造化して取り 入れることに
よって学生の 省察力を高める・
筆者は,スーパーバイザーがいなくても一人でも行い 得る
自己省察の方法を 学生が身につけることが 大事であ ると考えている. 自己省察をしやすく
するためには , ツールの作成。 開発が必須であ ることは言さまでもない.
ソーシャルワー
ク教育においてこの 方法を早く定着させることが 望まれる.そうして省察力,特に 自己 省
察 力を身につけておくことは ,将来ソーシャルワ 一ヵ 一 としてスーパービジョンを 受ける
際の必須条件ともなるだろう.
先行研究を概観して 言えることは , Schon,D.が省察的実践家の 適用例としてソーシャル
ワーカーを想定したにもかかわらず
,仏領域に比べてわが国のソーシャル ヮ一 クの 領域に
おいては省察や 省察学習に関する 先行研究はわずかであ るということ ,
この領域での 研究を蓄積しなければならないということであ
こ りどう感じたのかを 言語化するだけのふりかえりに
したがって,今後
る,特に,実践場面で
何が起
終わらず,批判的。
理論的レベルに
至るまでの省察が 行われなければならない・そのためには
,
ソーシャルワークの 専門的視
点を盛り込んだ 真に教育効果の 期待できるツールを 開発する必要があ る. さらに, ソーシ
-
ヤノンワ
ク
における省察学習の 具体的手順を 明確にするとともに ,効果的な教育プロバラ
ムを開発していかなければならない・そして
今後教育システムのなかに 省察学習の機会を
取り入れていくことが 必要であ ろう.
Yelloly,M.& Henkel,M. (1995)や Gould, N.& Taylor,I. (1996)が指摘するように , ソー
シ ャルワ
一ク において省察や 省察学習を取り 入れていくことのメリットは
その目指すところは ,省察力を身にっけ ,
明らかであ る
日常の実践のなかで か t な 省察を積み上げるこ
とで専門性を 高めていくことであ る,省察学習の方法を今後体系的にきちんと 整理し, ソ
一 シ ャ ルワー
ク 教育において 用いていくことの 可能性についてより 深く検討していきたい
そして,対人援助のプロを養成していくという 使命をもっ当社会福祉専攻における「 社
会 福祉援助技術演習」や「実習指導」等の 授業において ,省察学習教育を積極的に取り 入
れることによって ,学生の援助技術力を高めることに 力を注いでいきたい.
注
いこれらの実証的研究の 内容のレビュ 一については 紙幅の都合上,
一 13 一
別稿 に譲りたい
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