群馬県内食品製造事業者のHACCP対応について

(2016 年 5 月号掲載)
群馬県内食品製造事業者のHACCP対応について
一般財団法人
群馬経済研究所
主任研究員
~要
小此木伸一
約~
1.HACCP(ハサップ)は、EUや米国では適用が原則義務化されている食品衛生
管理の国際標準である。一方、農林水産省の「食品製造業におけるHACCP手法の
導入状況実態調査(2014 年度)
」によると、全国の食品販売金額 100 億円以上の事業
者では約8割がHACCPを導入済みだが、同1億円以上 50 億円未満では3割にと
どまり、中小事業者では普及が進まない状況にある。
2.当研究所が実施したアンケート調査によると、HACCPを導入している県内の事
業者は、導入途中を含めても全体の2割弱であり、売り上げ規模が小さいほど普及が
進んでいない。また導入時の課題では、「施設整備の資金」、「導入後の運用コスト」
など費用面や「人材、人員の不足」といった回答が多かった。
3.群馬県のHACCP認証を取得した食品製造事業者へのヒアリング調査によると、
導入の際の課題は「規定類の整備」と「従業員への徹底」である。また、導入の効果
では、「衛生管理意識の向上」、「継続的、効率的な衛生管理の実現」、「企業の対外的
な信用の向上」、
「クレームの防止」
、
「廃棄ロスの削減」
、
「輸出にも不可欠」などが挙
がった。
4.さらに、HACCP認証は取得するよりも維持することのほうが難しいため、現在
の管理態勢の向上、強化に注力するという意見が多く聞かれた。また各事業者からは、
HACCPの導入には経営者が強い決意を持って取り組むことが不可欠、という意見
もあった。
5.中小の食品事業者へのHACCP導入は進まない状況にあるが、導入を検討してい
る事業者はかなりの割合にあることが分かった。この層にHACCP導入を効果的に
働きかけることが、普及のポイントになると考えられる。群馬県のHACCP認証は、
その基礎となる衛生管理に重点を置き、規定類の例なども整備されて、中小企業者が
取り組みやすい設計になっている。TPP協定の発効にも備えて、食品事業者の挑戦
により、群馬県の食品衛生管理のレベルが向上していくことが期待される。