金沢市小中一貫教育基本方針

金沢市小中一貫教育基本方針
金沢市教育委員会
は
じ
め
に
全国の小中一貫教育の導入の背景は、市町村合併、私立中学校への進学の歯止め、学
校の統廃合、中1ギャップの解消など様々ですが、金沢市においては、これまでの「連
携」を生かし、一歩踏み込んだ「一貫」の視点で、小中学校間の円滑な接続と児童生徒
の育ちや学びの連続性を重視しています。
金沢市教育委員会では、平成22年度に、芝原中学校区・緑中学校区・泉中学校区の
3つのモデル校区を指定し、3か年にわたり校区の実情を踏まえた小中一貫教育の実践
研究を行ってきました。その結果、小中一貫教育は、学習意欲の向上や自尊感情の向上、
不登校児童生徒数の減少につながるなどの成果があるとの報告を得ています。
小中一貫教育モデル事業の最終年度となる平成24年6月には、学識経験者、学校関
係者、保護者の方々で構成する「金沢市小中一貫教育検討委員会」を設置し、金沢市に
ふさわしい小中一貫教育のあり方について、協議を重ねてきました。
このたび、同検討委員会からの提言を踏まえ、金沢市教育委員会として「小中一貫教
育基本方針」を策定しました。金沢市の子どもたちの健やかな成長を願い、子どもたち
の実態や学校規模、地域性を十分考慮し、保護者や地域の皆様にもご理解とご協力をい
ただきながら、小中一貫教育の推進を図ってまいります。
最後に、提言の作成にご尽力いただきました金沢市小中一貫教育検討委員会委員長の
筑波大学 田中統治教授をはじめ、委員の皆様に厚く御礼を申しあげます。
目
次
1
金沢市の小中一貫教育の目的
P1
2
金沢市の小中一貫教育の考え方
P1
3
金沢市の小中一貫教育における取組の視点
P1
4
金沢市の小中一貫教育の方向性
P2
(1) 全中学校区における小中一貫教育の実施
(2) 校区重複型における運営
(3) 教職員の相互理解に伴う合意形成の過程を重視
(4) 優先順位を定めて取り組むことを重視
(5) 時間経過に伴う取組の質・量の高まり
5
金沢市における小中一貫教育の全市的展開
P3
参考資料
・金沢市の小中一貫教育における具体的な取組例
P4
・タイプ別校区一覧
P6
1
金沢市の小中一貫教育の目的
金沢市では、これまでも知・徳・体のバランスのとれた、金沢に愛着と誇りを持つ子
どもの育成に向けて、様々な教育施策を実施し、教育活動の充実に努めてきました。
今後、教育活動をさらに充実させ、より質の高い教育を実施していくためには、「小中
の連続性のある教育活動の充実」が大切であると考え、次の目的のもと、小中一貫教育
を実施します。
金沢市の小中一貫教育は、9年間を見通した連続性・系統性のある教育
活動を展開することにより、各中学校区の特色を伸ばすとともに、課題解
決に向かうことを目的とします。
2
金沢市の小中一貫教育の考え方
上記1の目的を踏まえ、次の考え方のもと、小中一貫教育を進めていきます。
これまでの小中連携をさらに充実・発展させ、各中学校区は、目指す子
ども像を共有し、それぞれの特色を生かした教育活動を展開します。
校区の小中学校の縦のつながりだけでなく、小学校同士の横のつながり
も大切にしながら、中学校区が一体となって取り組みます。
3
金沢市の小中一貫教育における取組の視点
各中学校区において、9年間を見通した特色ある教育活動を行うためには、取組の視
点を明確にすることが必要であり、次の4つを視点として進めていきます。
教育課程づくり
授業づくり
人間関係づくり
-1-
組織づくり
4
金沢市の小中一貫教育の方向性
金沢市の小中一貫教育の目的、考え方及び取組の視点を踏まえ、次の方向性で中学校
区ごとに9年間を見通した特色ある教育活動を推進します。
(1) 全中学校区における小中一貫教育の実施
金沢市では、従来から中学校区の小中学校において、校区の実情を踏ま
えながら様々な連携した取組が行われてきています。こうした取組を生か
し、平成25年度より全中学校区で小中一貫教育を進めていきます。
(2) 校区重複型における運営
複数の中学校に分かれて進学する校区重複型の小学校においては、より
多くの児童が入学する中学校との取組から小中一貫教育を無理なくスター
トさせる方向で進めていきます。ただし、中学校においては、会議等の計
画や取組内容の作成、小中学校の交流等に際して、児童が進学する他の中
学校との連携を密にし、該当の小学校に対して十分に配慮することが必要
です。
施設一体型や校区一体型の中学校区においても、中学校間の連携を深
め、最終的には、児童がいずれの中学校に進学しても、中学校生活に適
応できるよう進めていくことが望まれます。
※
(3) 教職員の相互理解による合意形成の過程を重視
中学校区の小中学校においては、校区の特徴、課題の洗い出しから具体
的な取組に至るまでの教職員の相互理解による合意形成の過程を重視する
ことが大切です。そのためにも、小中学校の教職員が、目指す子ども像を
共有することが必要です。
(4) 優先順位を定めて取り組むことを重視
具体的な取組については、教育課程づくり、授業づくり、人間関係づく
り、組織づくりの4つの視点から、優先順位を定めて取り組むことが必要
です。
(5) 時間経過に伴う取組の質・量の高まり
検証などを適切に行い、時間経過に伴う取組の質・量を高めることが必
要です。
-2-
5
金沢市における小中一貫教育の全市的展開
金沢市の小中一貫教育の目的、考え方、取組の視点及び方向性を踏まえ、ねらいを明
確にし、次の年次計画に基づき全市的な展開を進めていきます。
〔3年間の年次計画〕
平成26年度
平成27年度
年次目標
小中相互理解
小中協働実践
特色ある教育実践
4つの取組
の視点
4つの視点の中から
重点取組を定めての
実践
4つの視点で取組を
充実と発展
検証・改善
検証・改善
○授業
づくり
○人間関係
づくり
○組織
づくり
環境整備
(例)
・小中教育課程の相互理解
(例)
・連続性・系統性のある小中協働
の実践
(例)
・連続性・系統性のある小中教育
課程の編成
・目指す授業スタイルの検討
・小学校高学年一部教科担任制
の検討
・生徒指導に関する共通理解
・特別支援教育に関する共通理
解
・推進体制づくり
・連続性・系統性を踏まえた授業
スタイルの模索
・小学校高学年一部教科担任制の
試行
・生徒指導に関する実践の試行
・特別支援教育に関する実践の試
行
・推進体制の修正
・連続性・系統性を踏まえた授業
スタイルの構築
・小学校高学年一部教科担任制の
修正
・生徒指導に関する実践の修正
・特別支援教育に関する実践の修
正
・推進体制の構築
・9年間を見通した道徳教育、
キャリア教育、健康教育、
食育等の検討
・9年間を見通した道徳教育、
キャリア教育、健康教育、
食育等の試行
・9年間を見通した道徳教育、
キャリア教育、健康教育、
食育等の修正
・各中学校区でグランドデザイ
ンの作成
・各中学校区でグランドデザイン
の修正
検証・改善
・各中学校区のグランドデザイン
の構築
・小中一貫教育担当者の設置
・組織強化
・小小連携、中中連携の充実
・小中一貫教育掲示板の設置
・中学校区の体制づくり
(小中連絡会の定例化)
(合同研修会)
評
価
検証・改善
学校評価に重点目標を設定
保護者・地域への発信
・地域の協力体制づくり
・中学校区の取組の共有化
・中学校区のリーフレットの作成
評価項目・指標の修正
【 小中一貫教育のねらい(例)】
○
○
○
○
確かな学力の向上
9年間を見通した系統的・継続的な学習指導を行うことにより、児童生徒の学習意欲の向上や
学習習慣・学習規律の定着を図り、確かな学力を育成する。
豊かな心と社会性の育成
9年間を見通した系統的・継続的な道徳教育、児童生徒間の望ましい人間関係づくりを目指し
た交流活動や地域での体験活動などを実施することにより、豊かな心や社会性を育成する。
体力の向上と健康な体づくりの推進
9年間を見通した系統的・継続的な健康・安全教育及び食育を推進することにより、体力の向
上と健康な体づくりを推進する。
金沢や地域に愛着・誇りを持てる教育の推進
9年間を見通し、金沢がこれまで培った素材「ひと・もの・こと」を活用することにより、そ
れらとのつながりの中で、豊かな学びを展開し、金沢や地域に愛着・誇りを持てるようにする。
-3-
28
中学校区で一体となった小中一貫教育の推進
○教育課程
づくり
各中学校区の特色や課題に
応じた取組の
定着と深化
年度
平成25年度
平成
年度
参考資料
【金沢市の小中一貫教育における具体的な取組例】
○
教育課程づくり
① 基礎学力の定着に向けた9年間を見通した教育課程づくり
・金沢スタンダード・ベーシックカリキュラムを活用し、小中学校の各教科等にお
ける「小中一貫教育指導計画(仮称)」を作成することができます。各学年の指導
目標や指導内容の系統性を理解することで、系統性のある学習指導を行うことが
できます。
② 小中一貫英語教育における取組成果の活用
・これまで力を注いできた英語教育においては、小中学校の指導の一貫性に向けた
実践や小中学校の教員による指導方法等の相互研修などが実施されてきました。
英語教育での小中学校の取組の手法を他教科等にも取り入れ、教育実践の充実を
図ることができます。
○
授業づくり
① 学びのスタイルの小中共通実践
・小中学校の教職員が、ともに学習面、生徒指導面で学び合うことで、協働意識が
高まり、互いのよさを取り入れた授業改善等を行うことができます。学習内容の
相互理解のもと、指導方法に一貫性を持たせ、授業規律、授業スタイルやノート
指導、板書、話し合いの進め方について共通実践を図ることができます。
② ねらいを明確にした小学校高学年一部教科担任制の実施
・学級担任から教科担任へと指導体制が変わる環境の変化に対応できるよう小学校
高学年に一部教科担任制を積極的に導入することで、学力や学習意欲の向上に向
け、より専門的な教科指導や一人一人のニーズに対応した授業を行うことができ
ます。
○
人間関係づくり
① 9年間の発達の段階を踏まえた生徒指導の推進
・児童生徒や学校の実態に応じ、重点目標や各学年の指導の重点を明らかにした「生
徒指導計画」を作成し、系統的・継続的に規範意識や望ましい人間関係づくりの
ための教育を行うことで、豊かな心や社会性の育成を図ることができます。
② 児童会・生徒会の交流活動の実施
・異年齢集団活動や地域社会と積極的に関わる体験的・実践的な活動を行うことで、
自己肯定感の向上やコミュニケーション能力の育成を図ることができます。
③ 特別支援教育における実践面、情報面での連携
・小中学校の特別支援学級間での共通実践に取り組んだり、特別支援教育コーディ
ネーター間での情報交換を密に行ったりすることで、継続的で一貫した支援につ
なげることができます。
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④ 個別の教育支援計画・個別の指導計画の活用
・児童生徒の情報を共有化し、連携を深め、小中学校間での指導の一貫性を図るこ
とは大切です。個別の教育支援計画・個別の指導計画を小中学校間で引き継ぎ、
積極的に活用を行うことで、児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じ、9年間を
見通した多様できめ細やかな教育を行うことができます。
○
組織づくり
① 目指す子ども像の共通理解
・小中学校の教職員が目指す子ども像を共有することで、ねらいが明確になります。
② 定期的な研修会等の開催
・小中学校が協働して取組を行うためには、教職員の相互理解が必要不可欠です。
そのためにも、定期的な連絡会や推進体制づくりが大切であり、授業を参観した
り、研修会等を実施したりすることにより、小中学校の教職員が互いに学び合う
体制を構築することができます。
※ その他参考となる取組
・総合的な学習の時間等において、金沢「学びタイム」等を用い、連続性・系統性
のある指導内容を構築し、各中学校区で、これまで培った素材「ひと・もの・こ
と」を活用し、豊かな学びを展開することができます。
・9年間を見通したキャリア教育を児童生徒の発達の段階に応じて実施することで、
児童生徒に学ぶこと・働くことへの意欲を高めるとともに、望ましい勤労観・職
業観を育成することができます。
-5-
【タイプ別校区一覧】
①
施設一体型 (中学校と小学校の施設が一体となっている併設校区)
校区(3校区)
②
小学校(3校)
芝原中学校区
湯涌小
内川中学校区
内川小
医王山中学校区
医王山小
校 区 一 体 型 (中 学 校 通 学 区 域 に あ る 小 学 校 の 児 童 が 、 す べ て 同 じ 中 学 校 へ 進 学 す る 校 区 )
校区(9校区)
③
小学校(26校)
兼六中学校区
材木町小
味噌蔵町小
田上小
長田中学校区
長田町小
戸板小
西小
浅野川中学校区
諸江町小
大浦小
浅野川小
西南部中学校区
押野小
三和小
犀生中学校区
犀川小
東浅川小
森本中学校区
森本小
花園小
緑中学校区
緑小
港中学校区
鞍月小
粟崎小
清泉中学校区
三馬小
米泉小
杜の里小
西南部小
朝日小
不動寺小
三谷小
安原小
校区重複型
(中学校通学区域のある小学校の児童が、複数の中学校に分かれて進学する小学校を含む校区)
校区(12校区)
小学校(30校)
泉中学校区
野町小
弥生小
中村町小
野田中学校区
十一屋小
泉野小
城南中学校区
新竪町小
菊川町小
紫錦台中学校区
小立野小
俵小
小将町中学校区
明成小
馬場小
(中央小)
高岡中学校区
中央小
米丸小
新神田小(中村町小)
鳴和中学校区
森山町小
金石中学校区
大野町小
額中学校区
額小
高尾台中学校区
富樫小
伏見台小
北鳴中学校区
小坂小
千坂小
大徳中学校区
大徳小
(木曳野小)
長坂台小
南小立野小
(中央小)(南小立野小)
浅野町小
金石町小
扇台小
(十一屋小)
夕日寺小
(小坂小)
木曳野小
四十万小
(扇台小)
※下線が入っている小学校は複数の中学校に分かれて進学する小学校(7校)
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