流通論A 【授業概要】 2016年度 春学期 金1限 EB1 流通論では、現代の商業と流通を、その構造、 経済主体間の関係、および商業者の行動とそ の革新性の3つの側面から総合的に考察する。 【担当】 南川和充 J棟805 [email protected] 【到達目標】 1. 商業者の存在根拠を理解している。 2. 商業構造の規定要因、チャネル構造と その再編の規定要因を理解している。 流通論Aでは、商業者の役割を論じた後、商業 構造の規定要因など構造の側面と、信頼とパ ワー関係、流通チャネルの規定要因と環境の 変化による再編などの関係の側面を主に取り 上げる。 1 【授業計画】 1. 商業とは何か 2. 小売商業の構造(1) 3. 小売商業の構造(2) 4. 卸売商業の構造 5. 現代の流通構造 eコマースによる変化 6. 商業における信頼関係 7. 商業におけるパワー関係 8. 流通チャネル構造の理論的考察 9. 中間試験 :授業時間中 持ち込み全て可 教室変更予定 10. 生産者による流通系列化 11. 垂直的取引制限の経済学 12. 小売業者による製販統合 6月10日 13. 小売業者によるPB開発 14. 流通チャネル再編の事例(1) 3 15. 流通チャネル再編の事例(2) 2 【教科書】 高嶋克義『現代商業学(新版)』有斐閣 講義スライド、資料、課題などは適宜配布 【授業時間外の学習 (準備学習等)】 教科書・配布プリントの予習・復習。テレビや 新聞などの商業・流通関連のニュースに注意 を払うこと。 【評価方法】 レポート(演習課題)40%、中間試験30%、 期末定期試験30% 4 【進め方、その他】 【進め方、その他】 • 事前に教科書の該当ページを読んできて下さい。 • 読んで、事前に指示される課題があった日は解答を 作成して授業に来て下さい。講義中は事前課題の 正解を示しながら教科書の内容を中心に解説して いきます。 • 授業中に指名して各自の解答を発表してもらったり、 板書したりしてもらうこともあります。事前課題につ いては、出席確認を兼ねて、その講義時間内に回 収します(返却しません)。また、 • 出席確認を兼ねて講義開始時刻から10分間程度 の小テストを実施する日もある(出題内容は、その 前回の内容)。当日だけ回収します(返却しません)。5 • 中間試験の出題範囲は,それまでの講義内容,課題内容。 • 期末試験の出題範囲は,中間試験以後のすべての講義内容, および,課題内容(その他すべて)。 • 中間,期末とも,英文のケースを読んで日本語の設問に日本語 で解答する形式も行なうかもしれない。 • 持ち込みはすべて可(教科書,講義スライド,資料,小テスト,課 題,参考文献,電子辞書等,など)。 • 中間,期末は受講生名簿(学籍番号)の順で座席を指定する。 中間(期末)試験の日までに6回以上欠席している場合は,「欠 席過多(S)」による不合格で,中間(期末)試験時の座席表から 氏名を削除するので受験できない。また,期末試験までの段階 で欠席過多ではないとしても,成績の持ち点が29点以下である とき,たとえ期末試験で30点満点を採ったとしても合計60点未 満しかならないので不合格となるため,期末試験の段階で座席 表から氏名を削除しておく。 6 商業の“構造” 、 小売“構造” 、 卸売“構造” 、・・・ • 教科書の 2ページ目の一番下の段落 商業の全体的な特徴を測定可能な形で表現する ために、商業の構造的特徴が重要になる。具体 的には、どれだけ多くの商業者がいるのか、その 平均的な企業や店舗の規模はどうか、生産者か ら消費者に商品が流通する間に、いったいどれ だけの商業者の手を経るのかといった指標で、 ある地域やある時代における商業の全体的な 「骨格」を示すことである。 Structure = “構造” • From Wikipedia Structure is a fundamental, tangible or intangible notion referring to the recognition, observation, nature, and permanence of patterns and relationships of entities. This notion may itself be an object, such as a built structure, or an attribute, such as the structure of society. 属性 • 教科書の 5ページ目: 復習 例 製造原価 第1章 商業とはなにか 90円 この章の問題 生産者 商業者の存立根拠 “レゾンデートル” • なぜ商業者(商人)が存在するのか? • 生産者と消費者の直接取引と比較しての,商 業者の介在する商品流通の経済的効率性の 考察。 90円 生産者の取り分: マージン 10円 出荷価格 100円 卸売業者 卸売業者の取り分: マージン 30円 卸売価格 130円 小売業者 製造原価 小売業者の取り分: マージン 20円 出荷価格 100円 卸売業者 を 省くと 出荷価格 100円 小売業者 小売価格 150円 間接流通 生産と消費の隔たり 懸隔 種類 7 消費者 マージン 10円 生産者 マージン 20円 小売価格 120円 消費者 150円より 安い 理由 空 間 生産と消費の場所が空間的に分離 2. 商業者 の 役割は何か 時 間 生産と消費の時点が時間的に分離 品揃え:個々の生産者の品揃えは、特定の商品、大量に 個々の消費者の好む品揃えは多数の商品、各々を少量ずつ → 流通業者による「品揃え形成機能」 • 商業の空間的効用と時間的効用 懸隔を架橋する行為=流通活動 – 消費者は生産者のところまで出かけなくても,もっと近い 商業者の店舗で買い物できる。 – 消費者は商品をいつでも購入することができる。 時間:生産は時間的に集中して行われる • 商業者固有の役割 消費は長期間に小刻みに行われる → 流通業者による「在庫・保管機能」 – しかし,これらの効用は商業者でなくても,倉庫業者や輸 送業者が中継しても作り出せる。ではどこが違うか? – 所有権の移転(取引)。商業者は自ら取引の費用やリスク を負担して,品揃えを形成する。 空間:生産は特定の場所で集中的に行われる 消費は多数の場所で分散的に行われる → 流通業者による「輸送・配送機能」 8 「品揃えの齟齬」 → 「品揃えの形成」 品揃えの形成が、商業者という独立した 主体の存立を支持している条件。 商業者のおこなう活動 → 流通活動 商業者は → 空間効用、場所効用、をもたらす 商業者だけでなく生産者も消費者も 流通活動をおこないうる。 商業者だけでなく生産者も消費者も 自らの手で 空間効用、 場所効用、をもたらすこともできる。 3. 商業における品揃え形成 取引数節約 • 品揃え形成 – 「広さ」(種類が異なる商品の多様性の程度)と 「深さ」(同じ種類の商品の色,サイズ,ブランドの 多さの程度) – 商業者が自らの判断で望ましい品揃えを形成す るためには「生産者からの独立」が重要。通常は これを商品の所有権買取で達成。 • 品揃え形成による経済的メリット – 「取引数節約」と「情報縮約」 社会的にみて、 9 生産者、消費者、全体で • 品揃えの広さによってもたらされる。消費者 が多様な商品を買い揃える場合に,品揃え が取引数を節約する。 • 単純なモデルによる節約の導出 – 異なる商品を生産するm人の生産者 – m種類の商品をすべて必要とするn人の消費者 – 直接取引の場合の総取引数mn – 商業者が一人介在する場合の総取引数m+n – m,n>2 ならば,mn>m+n 証明: 左辺-右辺 = mnーmーn = (mー1)(n ー 1) -1 10 4. 品揃え形成による流通費用の節約 情報縮約 • 主に品揃えの深さによってもたらされる。消費 者が比較購買する際に,品揃えが探索回数 を節約させる。 • 単純なモデルによる節約の導出 – n人の消費者がm人の生産者の商品を比較購買。 – 直接取引の場合の総探索回数mn – 商業者が一人介在する場合の総探索回数 – m,n>2 ならば,mn>m+n • 商業者介在の場合の流通費用の構成 「流通費用」=「消費者費用」+「商業者流通サービス費用」 +「生産者流通サービス費用」 ※消費者費用:商品を買うときの「不便さ」を消費者が負担 する費用として表したもの ※もし,生産者間,商業者間の競争が激しく,彼らの利潤が ゼロならば,図1-3のように, • 生産者の販売価格=生産費用+生産者流通サービス費用 • 小売価格=生産費用+流通サービス費用 • 直接取引の場合の流通費用の構成 「流通費用」=「消費者費用」+「生産者流通サービス費用」 11
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