千保 喜久夫(せんぼ きくお) 出勤日時限定社員制度への大いなる期待

千保
喜久夫(せんぼ
きくお)
特任教授
専門分野/経営学、福祉経営学、社会保障
(財)年
一橋大学卒業。日本長期信用銀行金融商品開発部長、
金シニアプラン総合研究機構研究主幹を経て、平成22年度か
ら本校。現在、青山学院大学の非常勤講師も務める。
著書:
『邦銀―勝者の選択』
(共著。金融財政事情研究会)
、
『デ
リバティブの知識』(日経文庫)他
出勤日時限定社員制度への大いなる期待
さる3月18日付けの日本経済新聞によると、日本KFCホールディングス(ケンタッキー・
フライド・チキンの会社)が4月から新たに出勤日時限定社員制度を導入するとのことであ
る。この制度は、「出勤日数や1日あたりの勤務時間を社員が自由に決められる仕組みで」、
週の労働時間の目安を20時間程度とするもの。正社員の仕組みとしては、短時間勤務制度
等をさらに前進させた画期的なものだろう(他の正社員区分には、ナショナル社員、地域
限定社員、店舗限定社員がある)。
一般に正社員の勤務時間を週40時間とすると、この制度ではその半分くらいの勤務時間
が想定されていることになる。出勤日数を週4日とすれば、1日5時間労働ですむ。「好きな
日を休日に選ぶ」こともできる。これであれば、育児で保育所や幼稚園への送り迎え、保
護者会、運動会などへの参加、また親の介護などもゆとりをもって計画的に行うことが可
能となる。保育所等への、朝のバタバタの中での送り、忙しい仕事に後ろ髪を引かれなが
ら飛んで帰っての迎えを考えると、共働き世帯等には実に嬉しい制度ではないか。
ただし、その短い勤務時間、不定期な休日取得を誰かが穴埋めしなくてはならない。人
繰り上の難題はシフトを組む担当者や店長に降りかかるだろう。周りの同僚の負担が増す
ことにもなるだろうし、人手の増員が必要になりそうである。
そうした人件費増、また何よりもパート・アルバイト社員の希望者を本制度の正社員と
することは、賞与、社会保険費用等の増加が見込まれる。しかし、そうまでしても有用な
社員の確保が緊要な課題となっていることを象徴するものだろう。働く意欲の高い、質の
高い顧客サービスを提供する社員は何にも代えがたい。社員にとっても「店長まで昇格で
きるなど、キャリアアップの道筋をつくれ」、正社員としてのメリットも得られる。
このような仕事と生活を両立できる制度の充実については、もう1社、例を挙げたい。ア
パレルの㈱ストライプインターナショナル(アースミュージック&エコロジー等を展開す
る会社)である。同社の制度を少し煩瑣となるが紹介すると、短時間勤務制度、産休・育
休休暇の拡大、最大6連休のホリデー制度、年1回7連休のライフスタイル休暇、日曜特別休
暇、子どもが10歳になるまで様々に支援するキッズプラン10制度、イクメン推進休暇など
である。ワークライフバランスに対し隅々にまで行き届いた仕組みであり、さらにこれを
石川康晴社長自ら先導し実施していることが素晴らしいのである。
社員を大切にし、かつそれを企業業績に結び付けていく。そうした今日的な意味におい
て働きやすい職場が今後さらに増えていくことが望まれる。
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