モニタリングシステム“SIPLUS CMS” - 安川シーメンス オートメーション

モニタリングシステム“ SIPLUS CMS”について
三 原 茂 博
安川シーメンス オートメーション・ドライブ㈱ 技術統括部 システム設計部 製品グループ
Monitoring System - SIPLUS CMS
Shigehiro Mihara
Product Group, System Design Department, System Engineering Division,
Yaskawa Siemens Automation & Drives Corporation
ABSTRACT
For stable operation of production facilities, it is necessary to detect significant irregularities in machinery and
process systems early on and analyze irregularity factors. As for machinery vibration, it has been difficult for
those who have neither the expertise nor wealth of experience to judge whether it is on a normal vibration level
or not. Analyzing irregularity factors on process systems requires data collection stations quickly and reliably
sampling various data, for example motor speed/torque, operation status of machinery and tension.
Yaskawa Siemens Automation & Drives Corporation would like to present two types of monitoring systems
here: one which facilitates the detection of irregularities on the motor or bearings by monitoring vibration, speed
and temperature; and another which can save mass data sampled at high speed from machinery and process
systems for a long term.
1.は じ め に
生産設備を安定して稼働させるために
は,機械を正しい状態に維持する必要が
温度を監視する“SIPLUS CMS2000”と,
2-1.SIPLUS CMS2000
大量のデータを高速サンプリングし長期
SIPLUS CMS2000( 以 下,CMS2000)
間保存可能な“SIPLUS CMS4000”があ
はモータやベアリング,その他機械の振
り,それぞれの特徴について紹介をする.
動測定と解析に特化した製品で,簡単な
ある.とくにギアボックスやベアリング
など振動をともなう機械ではその振動が
正常かどうかの判別が難しく,異常な状
態が表面化してからの対策では手遅れと
なることがある.最悪の場合,生産設備
を長期間停止することになり,操業に大
きなダメージを与えてしまう.
当社のモニタリングシステム“SIPLUS
CMS
(Condition Monitoring System)
”
は,
機械の振動・速度・温度などの状態を監
視することで,異常な状態の早期発見,
および機械系異常の原因の解析を可能に
する.
2.SIPLUS CMS の概要
SIPLUS CMS に は 機 械 系 の 振 動・
2014 年 2 月
図 1 SIPLUS CMS2000 により検知できる異常
21
操作で高度な解析が可能となっている.
Web
ブラウザ
Web
ブラウザ
図 1 は検出できる異常の例である.
基本ユニットには IEPE(圧電型)振
動センサー入力(2 回路)
,他のタイプ
Ethernet
のセンサー用アナログ入力(2 回路)
,
トリガ,禁止信号 / 異常信号
速度検出センサー入力(DC24V)
,外部
PLC
から制御をするためのトリガ信号・計測
SIPLUS CMS2000
禁止信号用入力(DI)
,および状態出力
温度センサー
用 DO を備えている.内部で検出された
異常はイベントとして記録されるととも
に,本体 DO により出力される.また
拡張ユニットを増設することで温度セン
IEPE 振動センサー,速度センサー
サー入力,IEPE 振動センサー入力を追
加できる.
図 2 SIPLUS CMS2000 システム構成例
本体 へ の ア ク セ ス は Web ブ ラ ウ ザ
(Firefox または Internet Explorer)で行
CMS2000
うため専用ソフトは必要なく,メンテナ
計測モード
ンスの場面において専用ツールを探す煩
わしさがない.またタブレット PC を使
うことにより,現場でデータを見ながら
メンテナンス作業が可能となる.
図 2 に CMS2000 のシステム構成例を
センサー
示す.
アナログ入力 AI1
アナログ入力 AI2
循環バッファ
トレンド
以下に,CMS2000 の機能をブロック
温度
図化したもの(図 3)と代表的な機能を
速度
固有値
記載する.
DKW
(1) データの実効値化(RMS)
測定されたデータ(実効値)はトレン
現在値
IEPE 振動センサー
ド画面で参照でき,アライメントミス,
RMS
周波数分布
速度
アンバランス,設置施工ミスなどが要因
異常検出値
正常時データ
加速度
の機械振動の振幅増加を検知することが
周波数分布
エンベロープ
できる.
図 4 は,振動 RMS の変化による異常
生データ
検知を表したものである.
(2) DKW モニタリング
図 3 SIPLUS CMS2000 機能ブロック図
DKW とは診断固有値のことで,ベア
リングの損傷の程度を評価するための数
値である.ベアリングの損傷により発
生するパルス状の振動は実効値(RMS)
監視では不可能なため,この DKW の監
視が有効となる.なお,DKW は以下の
数式で算出され,ダメージの程度が大き
くなるほど診断固有値も大きくなる.
22
DKW(t) =
amax (t) × aRMS (t)
amax(0) × aRMS (0)
に損傷がある場合の DKW の挙動を示す.
なお,この DKW 単独で異常要因や部
・amax (t):振動加速度ピーク値,現在値
位を正確に特定するのは難しく,後述の
・amax(0):振動加速度ピーク値,初期値
せてさらに解析を行う.
・aRMS (t):振動加速度実効値,現在値
・aRMS (0):振動加速度実効値,初期値
図 5 に,ベアリングのアウターレース
エンベロープ(H ─ FFT)解析などと併
(3) FFT 解析
測定された振動データを FFT 解析に
紙パルプ技術タイムス
かつ回転に依存がある場合はその周波
実効値(RMS)の挙動
数により異常個所を特定することができ
②
る.
① センサー
図 7 は,ベアリング異常による振動
のエンベロープ解析を示すものである.
③
本体にベアリングの故障周波数を登
mm/s
録することができ,エンベロープ解析の
mm/s
① アライメントミス
② アンバランス
③ 設置施工ミス
結果による異常検知が可能である.また
標準でベアリングモデルを内蔵している
正常値のデータ
機械振動の振幅が増加
ため,ベアリングの仕様から故障周波数
を自動算出し登録することも可能である
図 4 RMS による異常検知
(図 8)
.
(5) トレンド
DKW の挙動
損傷部位
測定されたデータは本体に記録され,
トレンドとして参照することができる.
また機械が正常時のデータを基本データ
として保存し現在のデータと重ねて表示
①
センサー
できるため,傾向を容易に把握すること
m/s
m/s
2
ができる.
2
2-2.SIPLUS CMS4000
SIPLUS CMS4000 は,データを入力
① ベアリングのアウターレース内の損傷
正常値のデータ
アウターレースの一部
に損傷がある場合
図 5 DKW によるベアリング異常検知
ル,条件設定や保存されたデータを参照・
解析するためのソフトである X-Tools,
サンプリングされたデータを保存するた
振動の周波数分布
①
するためのノードと言われるモジュー
めの HDD を装備する PC により構成さ
[mm/s]
1×fRed
センサー
れ,大量のデータを高速で収集でき,か
つ長期の保存が可能なシステムである.
2×fRed
ノ ー ド に は ハ ー ド 信 号(IEPE 振 動
3×fRed
24.8
mm/s
49.6
74.4
f[Hz]
mm/s
① アンバランス
セ ン サ ー, ア ナ ロ グ ) や 通 信 デ ー タ
(PROFIBUS ─ DP) を 入 力 す る 機 器 と
PLC のデータをサンプリングするソフ
トがあり,ハード信号を入力する機器は
正常値のデータ
機械振動の振幅が増加
いずれも保護等級 IP67,周囲温度− 40
∼ +65℃での動作を保障しており,機器
図 6 アンバランスによる振動の周波数分布
本体を現場に設置することができる.
より周波数分布を調査し,振動の性質を
にアンバランスがある場合に,その振動
分析することで異常要因を特定できる.
の周波数分布を示したものある.
図 9 に,SIPLUS CMS4000 の シ ス テ
ム構成例を示す.
例えばアンバランスによる振動は回転周
(4) エンベロープ(H− FFT)解析
波数と同一周波数,アライメントミスに
エンベロープ解析とは振動波形の包
度やトルク,機械のシーケンス動作や温
よる振動は回転周波数または高周波と
絡線(エンベロープ)を FFT 解析する
度・張力などの制御状態の把握が容易に
なって現れる.
ことで,ベアリングなどの異常部位の特
なり,状況分析や要因解析が可能となる.
定に有効である.振動に周期性があり,
HDD の容量ほかシステムを最適化する
図 6 は,1,488min − 1 で回転中の機械
2014 年 2 月
このシステムによりドライブ装置の速
23
ことで,1,000 点のデータを 25msec 周期
損傷部位
エンベロープの周波数分布
[m/s2]
でサンプリングし,6 ヵ月間保存するこ
1×fOR
とも可能である.
2×fOR
3.お わ り に
3×fOR
①
以上,状態モニタリングシステムの
センサー
f[Hz]
SIPLUS CMS2000 と CMS4000 について
m/s2
m/s2
紹介した.
実際の設備への導入にあたっては,ご
① ベアリングのアウターレース内の損傷
要望に応じてさまざまな提案を行ってお
り,とくに CMS4000 については幅広い
正常なベアリング
アウターレースの一部に
損傷がある場合
図 7 ベアリング異常による振動のエンベロープ解析
アプリケーションで使用されるとともに
評価をいただいている.
〈インプット〉
・ボールの接触角:α
・リテーナ径:Dpw
・ボール径:Dw
・ボール個数:Z
状態モニタリングをご検討の際には,
ぜひお問い合わせいただきたい.
〈アウトプット〉
・インナーレース損傷による周波数
・アウターレース損傷による周波数
・ボール損傷による周波数
・ボールケージ損傷による周波数
ベアリングモデル
問合せ先
安川シーメンス
オートメーション・ドライブ㈱
経営企画・マーケティング本部
〒 141-0032 東京都品川区大崎 1-11-1
ゲートシティ大崎ウエストタワー 7F
TEL 03-5745-8018 FAX 03-5745-8025
図 8 ベアリングモデルによる故障周波数算出
e-mail [email protected]
URL http://www.ysad.co.jp
X-Tools
ION PROFIBUS
DP spy T001
FROFINET
IFN
VIB-A
IEEE1394(Firewire)
PROFIBUS-DP
SIMATIC S7PLC
(ION SIMATIC S7 PN)
図 9 SIPLUS CMS4000 システム構成例
24
紙パルプ技術タイムス