地盤震動2 長尾 毅(神戸大学)

被害調査行程
地震工学委員会 平成28年度第1回研究会
(2016年熊本地震・被害調査報告 続報)
2016.5.12
• 4/15 新神戸⇒博多(新幹線),以下レンタ
カーで移動,益城町にて被災調査
• 4/16 熊本市,益城町で被災調査
• 4/17 熊本市,御船町,益城町にて被災調査
神戸新聞社記者が調査に同行
• 4/18 益城町,阿蘇市において被災調査,そ
の後博多駅⇒新神戸.
• ㈱ニュージェック・伊藤佳洋氏と調査を実施
神戸大学 都市安全研究センター
工学研究科市民工学専攻
長尾 毅
本資料は速報であり,今後の検討により異なった見解が得られ
る可能性があることをご承知ください
1
2
被害状況(益城町)
常時微動観測ポイント
大被害住宅の特徴
①古い住宅
②盛土上の住宅
③軟弱地盤上の住宅
3
4
常時微動H/Vスペクトル~南北測線(役場東側)
常時微動H/Vスペクトル~地震観測点
10
1
1
frequency(Hz)
spectral ratio
spectral ratio
T18
0.1
0.1
1
1
T17
0.1
0.1
10
1
T20
10
0.1
0.1
1
役場の震度計の1Hzは盛土な
どの非線形の影響による可能
性がある.
100
frequency(Hz)
10
1
1
10
10
0.1
1
10
frequency(Hz)
5
10
10
10
1
T21
0.1
0.1
frequency(Hz)
100
frequency(Hz)
NS04142126
EW04142126
frequency(Hz)
10
1
T22
10
0.1
0.1
1
frequency(Hz)
spectral ratio
KiK‐net(A16)は3Hz.4/14の
強震記録は2Hzピークで地表
/地中のスペクトル比は3Hz
ピークである.
10
1 10
Fourier spectrum(Gal*s)
spectral ratio
1
3
10
A16
1
spectral ratio
0.1
0.1
frequency(Hz)
1
1
spectral ratio
10
frequency(Hz)
0.1
0.1
10
T16
spectral ratio
1
spectral ratio
役場西(A04)は2Hz,役場東
(T16)は3Hz.盛土の影響で特
に西側は長周期化していると
考えられる.
1
A04_1
0.1
0.1
10
10
spectral ratio
spectral ratio
10
1
10
0.1
0.1
T24
T23
10
0.1
0.1
1
frequency(Hz)
1
frequency(Hz)
• 県道28号より北側は概ね2‐3Hz:被害比較的小
• 南側は局所的に1Hz⇒大被害箇所,秋津川付近では2Hz程度⇒被害
中程度(河川沿いに軟弱層が堆積しているという単純な問題ではない)
• 被害程度と卓越周波数が対応し,堆積層の厚い地点で被害が大 6
10
常時微動H/Vスペクトル~東西測線(県道沿い)
T09
0.1
0.1
0.1
0.1
10
1
1
frequency(Hz)
1
T25
0.1
0.1
10
1
0.1
0.1
1
T03
10
0.1
0.1
frequency(Hz)
10
1
T02
10
0.1
0.1
1
frequency(Hz)
1
10
1
T29
0.1
0.1
1
T01
1
10
7
frequency(Hz)
0.1
0.1
spectral ratio
0.1
0.1
1
10
frequency(Hz)
8
もう少し詳しい地盤構造の把握のために:アレイ観測結果の解析
KiK‐net益城 A16‐A17 (以下暫定版)
1
3
1 10
1
A16-A17
phase velocity(m/s)
0.1
0.1
10
frequency(Hz)
10
spectral ratio
T30
10
frequency(Hz)
A13_1
1
100
0.1
1
T15
0.1
0.1
1
period(s)
10
KMMH16
7m
14m
frequency(Hz)
10
spectral ratio
KiK‐net益城では若干非線形の影響が残っている可能性はあるが,
概ね地震前のS波速度構造による理論位相速度と整合する
1
T33
0.1
0.1
1
10
9
frequency(Hz)
位相速度:表面波の伝播速度であり,値が大きいほど固い地盤が堆積していることを示す.
短周期側(図の左側)の値は地表付近の地盤の固さと関連性が高い.
10
3
1 10
A13-A15
:アレイ観測結果の解析
(200m程度の距離の2地点)
phase velocity(m/s)
益城町役場(A3‐A4)
100
0.1
1
period(s)
3
1 10
3
1 10
100
0.01
0.1
1
100
0.1
period(s)
KMMH16
7m
14m
A11-A12
phase velocity(m/s)
益城町役場(西側の盛土部)
の位相速度は0.1秒(波長
20m)以上ではKiK‐net益城と
同等以上の値を示す.すなわ
ち,原地盤の条件は悪くないが,
盛土により地震動増幅の影響
を受け震度7となった可能性
KMMH16
4m
7m
14m
A3-A4
phase velocity(m/s)
spectral ratio
1
1Hzに鋭いピークがあるか,または1‐2Hzにかけて広い周波数帯で振幅比が高い⇒
後者は地盤構造の変化する領域で起こりやすい
どの地点もピーク周波数が低く,堆積層が厚いかまたは軟弱な地盤が堆積している
地点といえる
僅かな距離でも大きな被害の違い
常時微動H/Vスペクトルにも違いが認められる
10
1
T30
10
frequency(Hz)
0.1
0.1
10
10
frequency(Hz)
T09~T07:被害小,T06:被害大,T05~T03:被害中~大,
T02:被害大,T01:被害小
T02は橋梁下の河川沿いの集落,崩壊家屋は盛土上に建築
東西方向は南北方向程の顕著な傾向は認めにくい
1
1
frequency(Hz)
10
spectral ratio
T05
0.1
0.1
T27
0.1
0.1
10
1
spectral ratio
spectral ratio
1
1
frequency(Hz)
10
1
1
T26
10
frequency(Hz)
frequency(Hz)
10
10
spectral ratio
1
T06
0.1
0.1
10
10
spectral ratio
spectral ratio
T07
1
frequency(Hz)
10
1
10
spectral ratio
1
spectral ratio
spectral ratio
1
常時微動H/Vスペクトル 県道より南の大被害箇所
10
10
spectral ratio
10
spectral ratio
spectral ratio
10
1
period(s)
11
KMMH16
7m
14m
建物被害の極小のA13‐15と益城町における最大被
害地点極近傍のA11‐12では距離は200mほどしか離
れていないが,位相速度は大きく異なっており,A11‐
12地点は極めて軟弱な地盤であるといえる.
12
アレイ観測結果の解析(大被害地域)A1‐A2
アレイ観測結果の解析(大被害地域)A5‐A6
A1-A2
3
1 10
A5-A6
3
100
0.1
phase velocity(m/s)
phase velocity(m/s)
1 10
1
period(s)
KMMH16
7m
14m
100
0.01
0.1
1
period(s)
spectral ratio
10
1
1
各アレイの結果が不整合であり,更に検討
が必要
大被害のA01,02地点は,原地盤そのもの
は非常に悪いというわけではない⇒盛土の
影響による被害拡大の可能性
A02_K
0.1
0.1
KMMH16
7m
14m
10
frequency(Hz)
13
14
アレイ観測結果の解析(大被害地域)A7‐A8
アレイ観測結果の解析(最大被害地域)A9‐A10
3
1 10
phase velocity(m/s)
100
0.1
100
0.1
KMMH16
7m
14m
10
spectral ratio
本地点は調査対象範囲における最大
被害地点であり,位相速度,常時微動
H/Vスペクトルより,常時微動計測地点
の中で最も軟弱な地点であるといえる.
KMMH16
7m
14m
1
period(s)
1
period(s)
0.1秒程度の位相速度は被害小のA13‐
A15地点と同程度だが,0.3秒程度の位
相速度は同地点を下回る⇒地表付近
のS波速度は同程度だが,軟弱層が厚
く堆積している可能性
A9-A10
phase velocity(m/s)
3
1 10
A7-A8
1
T26
15
0.1
0.1
1
10
16
frequency(Hz)
熊本地震を踏まえた今後の課題
地盤条件と建物被害の関連(暫定)
建物被害
大
中
小
地盤固有周期
長(1秒)
中(0.6秒)
短(0.3秒)
• 地点毎の揺れの強さを反映した耐震性評価,設
計法・基準類の整備の必要性
• 構造物の耐震性に関するシステムとしての議論
の必要性
住宅は地盤の上,基礎の上に建つものであり,
構造体のみで地震に耐えるものではない
橋梁は構造本体が健全であっても,アプローチ
部で段差が発生すれば橋梁としての機能を発揮
せず,救援活動などに大きな支障が発生する
地盤の固有周期が長いとは堆積層が厚
く,地震動が増幅されやすいことを示す
17
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