「写真が語るいのちのバトンリレー ~ 看取りの現場から」

「写真が語るいのちのバトンリレー
國森
~
看取りの現場から」
康弘〈写真家〉
滋賀県東近江市の農村地帯や東日本大震災で被害を受けた地域などでご縁を頂いた、
数々のご家族たちのかけがえのない「看取り」と、それを支える「地域まるごとケア」に
ついて、写真を通じて見ていきたいと思います。
一週間前に自ら入れ歯を外して以降一切ものを食べず、そのまま眠るように息を引き取
ったおばあさん、その姿を見守り見送った小学五年の女の子、認知症を抱えながら一人暮
らしを最期まで続けたおばあさん、住み慣れた地域で人々がずっと過ごせるよう寄り添う
多様な専門職やご近所さん、病気を抱え幼くして旅立った少女と、その家族や友だち……。
感謝や別れを大切な人たちと交わしながら、命をまっとうしようとする。そんな「看取
り」には悲しみだけでなく、ときには充足感やエネルギー、生命のほとばしりのようなも
のまで感じることがありました。死は単なる終わりではなく、命をつなぐ壮大なバトンリ
レーの一舞台であると教えて頂いた気がしています。命は有限であり、且つ、受け継ぎ継
承していくもの、と。
「生老病死」を、われわれは暮らしから遠ざけ過ぎてしまったのかも知れません。小学
生への様々な調査で2,3割の子どもが「命はリセットできる」「人は死んでも生き返る」
と考えているという結果が出ているそうです。それは大人たちの姿勢を映す「鏡」ではな
いでしょうか。
地域の真ん中で、尊厳を失うことなく、自分らしく、歳を重ねて、生き切る――。そん
な「天寿まっとう」がどこの地域でも実現され、個として、総体として、のちの世代にも
いのちをつないでいけたら。
震災によって多くの方々が犠牲になった地で、身内を亡くした悲しみを刻みながら、命
を生き抜かんとする方々にも出会いました。
写真を見ることを通して、
「専門職として、あるいは家族として、自分に何ができるのか」、
「生きとし生けるものとして自分自身はどのように命をつないでいくのか」を、改めて考
える機会にもなればと願います。