リーバイスの経営戦略から 見出せること

リーバイスの経営戦略から
見出せること
2年
1.はじめに
2.リーバイスの歴史
3.リーバイスのとる経営戦略とは
4.リーバイスのとる経営戦略の利点・欠点
5.まとめ
6.参考文献
清水
1.はじめに
現在、様々な分野の市場が存在し、その市場における競争で優位に立つための経営戦略
が多数存在している。しかし、流行の変化や経済の流れが激しいことからそれに応じきれ
ずにビジネスに失敗してしまう企業も少なくない。このような現代の中で、安定して利益
を上げていきつつ立場を確立していくためには、企業が自身の実力やそれに見合った価格
で商品を顧客に提供していくが必要である。では、どのようにすればこれが実践可能とな
るのか。この疑問を考えていくにおいて、このようなビジネスを実際に可能にしていると
いわれている企業の例として今回はリーバイスを挙げたい。リーバイスは世界中で店舗を
展開するジーンズをメインとしたアパレルブランドである。この企業は、他企業とは違っ
た経営戦略で注目を集めている。その経営戦略とは一体どのようなものなのか、またリー
バイスはなぜそのような戦略を採用しているのだろうか。
2.リーバイスの歴史
まず、リーバイスの経営戦略について考えていく前に、リーバイスがどのような歴史を
経て現在に至ったのかということをみていきたい。
リーバイスは 1853 年に創業者であるリーバー・ストラウスが前身となる雑貨商を開業し、
ゴールドラッシュに沸く金鉱で働く人々のためのキャンバス地を使用したワークパンツを
商品化したことから始まった。後に素材がデニムとなり定番色であるインディゴ・ブルー
が採用された。1873 年に自社と取引のあった仕立屋との、ポケット補強に関する共同アイ
デアを生み出し特許を取得し、ジーンズが誕生した。20 世紀初めには、会社のあったサン
フランシスコでの大地震の被害を受けながらも迅速な復旧を果たしたり、作業効率向上に
より大量生産を可能にするなど成長を遂げていった。そして 1940 年ごろには西海岸の大学
でジーンズが流行したことでワークパンツからファッションアイテムへと進化を始めた。
その流行の勢いによりジーンズの品質に高さが全米に知れ渡り、全土でもトレンドとなっ
た。さらに人気ヒーローがジーンズを着用したことで若者が自己表現するためのファッシ
ョンとなり、米国の影響を世界中の若者が受け、若者のシンボルとして地位を築いた。日
本にリーバイスが本格的に進出したのは 1980 年代に入ってからのことであり、現在のよう
に全国展開している。
このように、リーバイスは長い時間をかけて少しずつブランド力を確立していったので
ある。ワークパンツから始まったリーバイスというブランドのジーンズは、現在世界中の
若者のファッションに非常に多くみられる鉄板のアイテムとなった。 1
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http//www.levistrauss.co.jp/about/history.html
3.リーバイスのとる経営戦略とは
数年前のリーマンショックの影響により、アパレル市場では低価格競争が激化した。そ
のため低価格での商品提供がアパレル企業が競っていくためのベースとなる考えと根付い
ていった。この一環の流れや従業員の自社に対する不安を拭うためなどどいった理由から、
リーバイスも低価格での商品提供という方針を取らざるをえなくなった。しかしブランド
力に見合った商品を今まで提供していたリーバイス自身にとってそれは、損以外の何物で
もなかった。その結果、2010 年には 35 億円もの赤字を出し厳しい経営状況となってしま
った。 2
そのようなどん底からリーバイスを救ったのが、プレミアム戦略というものである。プ
レミアム戦略とは、商品の貴重さや特別さを強調するマーケティング戦略のことだ。リー
バイスの場合、自社が長年にわたって築いてきたブランド力が貴重さや特別さにあたる。
そのブランド力が低価格で商品を売ることにより大きく低下してしまう。そこで、リーバ
イスは価格よりもブランド力を生かした顧客の購入後の満足度や達成感を重視することを
決めた。リーバイス商品を身につけることで顧客が自信をつけ満足することこそが真の価
値であり、他社にはないものであると考えたのである。このリーバイスの信念は、アパレ
ル市場を揺るがし徐々に顧客に受け入れられるようになった。結果、赤字であった利益は
黒字へと回復した。
プレミアム戦略は、リーバイス以外にネスレなどもとっている戦略であり、決して珍し
かったり特殊なものではない。しかしリーバイスの同じ戦略をとった企業と違うところは、
プレミアム戦略を土台としてそこから新たな戦略も見出している点である。
経営状況が回復してから現在、リーバイスはジーンズ以外の全てのファッションアイテ
ムの売り出しにも力を入れている。しかしこれらはジーンズとは違い、季節や流行に応じ
て新商品を低価格で提供している。ブランド力を確立しているジーンズで安定した利益を
得る一方で、その他の商品が会社の成長を促すことを目指しているのだ。つまり、プレミ
アム戦略を貫く一方でそれとは逆の戦略も備える、ハイブリット戦略を行っている。
これが、経営難から見出した独自のやり方を確立したリーバイスの経営戦略である。プ
レミアム戦略をベースとしたハイブリット戦略とまとめていうことができる。 3リーバイス
がどん底の経営状況からプレミアム戦略の方針をとることを決めた際、従業員たちは自社
の今後の行方を非常に不安に思ったという。しかしこの方針を決めた当時の社長であった
斎藤貴氏は、従業員の不安を取り除くために自らの意思決定が確固たるものであり、経営
状況を回復させることを目標とした潔さや覚悟の強さを主張した。この意思を従業員は受
け止め、会社がまとまって目標達成へ動いたのである。経営者の強い意思決定もリーバイ
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齋藤 貴(2014)「老舗ブランドを救ったプレミアム戦略」
。
遠藤功(2008)
スの成功の要因の一つと言えるだろう。 4
4.リーバイスのとる経営戦略の利点・欠点
①利点
リーバイスは他社と経営戦略の取り方を大きく変えたことで市場の注目を集めた。低価格
という顧客からの視点を重視しすぎた考えから脱し、自社の価値を大切にした。顧客にそ
の価値を認めてもらうことは簡単なことではないが、ブランド力という大きな力によりそ
れに成功したのである。自社の価値を認めてもらうことで、安定した利益を得ることが可
能となる。これがリーバイスのプレミアム戦略の利点だ。またプレミアム戦略という土台
から他分野に目を向け、その分野を成長させることができるのもこの戦略の良い所だとい
える。
②欠点
まず、プレミアム戦略は企業のブランド力が確立されないととることのできないものであ
る。このブランド力を築くこと自体が難しい。起業しても、その企業の信頼性や価値を短
期間で築くことは簡単ではないことから最初からプレミアム戦略をとることは自身の力の
みではほぼ不可能である。商品を安くせずに売るということは、それに見合った自社の価
値を顧客に提供するということである。自社の商品に高い価値があると自負していても顧
客にそれが理解されなければ意味はない。理解されるためには先に述べたように実績や歴
史が関係してくる。そのため、これらを兼ね備えない企業にはこの戦略は合わない。 5
リーバイスのとるプレミアム戦略を土台にしたハイブリット戦略は、実績や歴史のある
企業には非常に優位な戦略であるが、実績の足りない若い企業には大きなリスクが伴うと
いうことが分かる。しかし、この戦略を実行することができれば金銭面の利益のみならず
自社の価値の安定も同時に期待することができるため、他企業にとっては参考になるよう
な経営戦略であるということができるだろう。
5.まとめ
顧客側の立場として、自分がどのような商品を手に取り購入しているかを考えてみた。
山梨広一 P.276~283
齋藤貴(2014)
「成長する企業のビジネス戦略 vol.1 リーバイ・ストラウス ジャパン株
式会社」
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低価格高品質が求められている時代であることもあり、確かにそのような商品があれば購
入しリピーターにもなる。しかし、多少値段が高くてもその商品のブランド性や経験を積
み重ねてきた結果である高い機能性があれば購入していることに気付いた。そのような考
えに至るかどうかは人それぞれではあるが、確かに自分と同じ経緯で同じような消費行動
をする人は少なくない。リーバイスの経営戦略について調べ、この会社が私のような顧客
の考えを理解してこのような戦略をとっているということがよくわかった。プレミアム戦
略を実践に使うことはこの戦略の欠点を考えた際に述べたように、自社の力のみでは難し
いことである。
では、よりこのような戦略を他企業が上手く利用することができるようになる手段はな
いのだろうか。ブランド力や実績が保証される必要があるのなら、それを立証してくれる
ような存在があるとよい。もし、若い企業が自身の価値に見合った商品を提供することを
目指すならそれを後ろでサポートしてくれるような企業や人の存在があると時間をかけて
もプレミアム戦略を実際に使うことが可能になるのではないだろうか。例えば、リーバイ
スでは 1960 年代に有名人がリーバイスのジーンズを着用したことで若者の間で人気が爆発
した。現在でも、人気モデルやタレントが着用した衣服や使用したものを最先端のトレン
ドを追う人々はそれらにすぐに手を出す。
このような存在が若い企業の可能性を広げていくだろう。確かに、何度も言うように歴
史の浅い企業が短期間でブランドを確立することは難しい。しかし、商品に実力や品質に
自信があるのならば第三者の存在を利用して顧客側にそれを証明することは可能である。
これらの積重ねによって、少しずつ企業のブランド力は培われていく。プレミアム戦略を
市場に持ち込めるようになれれば、リーバイスのようにハイブリット戦略へ展開していく
ことができる。この戦略以外にも展開が可能な新たな戦略はあるはずだ。ブランドの安定
を第一とするのならば、プレミアム戦略のみを貫いていくことも可能である。
このように、リーバイスの経営戦略の成功例から他企業でもそれが実践可能かを考案し
た。この戦略から見出せることは、企業の持つ価値を顧客に示しつつそれに見合った価格
で商品を提供することの重要性である。価値が理解されてはじめて顧客の心をつかむこと
ができ、その信用の下で安定した利益を上げることができるのではないだろうか。
6.参考文献
遠藤功(2008)「キャッチ・コピーではなく戦略としてのプレミアム」
(http://toyokeizai.net/articles/-/1463)
齋藤
貴(2014)「老舗ブランドを救ったプレミアム戦略」
(http://www.bizcompass.jp/interview/088-1.html)
齋藤貴(2014)「成長する企業のビジネス戦略 vol.1 リーバイ・ストラウス ジャパン株式
会社」(http://www.isssc.com/interview/cg/049/)
山梨広一(2014)
『シンプルな戦略~戦い方のレベルを上げる実践アプローチ~』東洋経済新
報社。
http://toyokeizai.net/(東洋経済新報社)
http://www.bizcompass.jp/ (NTT コムオンライン・マーケティング・ソリューション(株))
http://www.isssc.com/ (ISS Consulting)
http//www.levistrauss.co.jp/ (LEVI STRAUSS JAPAN)