Page 1 ー研究人材のキャリアー 67 研究者と年齢的限界 東京学芸大学

一 一
一
研 究 人 材 の キ ャ リアー
67
研究者と年齢的限界
東京学芸大学
内田 賢
る発 想 力 に 関連 して, 特 に仕 事 を す る うえ で趣 味
1.は
じ め
に
や レ ジ ャー か ら浮 か ぶ ヒ ン トに っ い て も分 析 す る
(第6節)。
ス ポ ー ッの世 界 で は,30歳 台 や40歳 台 で体 力
や 気 力 の限 界 を理 由 と した 引退 が よ く見 られ る。
2.先
最 後 に若 干 の結 論 を述 べ る(第7節)。
行 研 究
企 業 に働 く人 々 の場 合 で も, 特 に ブ ル ー カ ラー を
中 心 と して 従 業 員 高 齢 化 の なか で 加 齢 に と もな う
企 業 内 研 究 者 に関 す る他 の調 査 研 究 の なか で ,
体 力 や 視 力 等 の 職 業 能 力 低 下 が 問 題 と され , そ の
年 齢 的 限 界 に触 れ た もの が あ るの で 若 干 紹 介 しよ
対 策 と して 職 務 再 設 計 や 職 場 開 発 が 進 め られ て き
う。
た。 一 方 , ホ ワ イ トカ ラ ーに つ い て も, 定 年 延 長
やOA化
と い った環 境 変 化 の なか で , 加 齢 と生 産
性 ・職 業 能 力低 下 の 問題 が取 り上 げ られ る こ とが
①
「研 究 ・開 発 技 術 者 の 処 遇 に 関 す る調 査 報
告 」(昭 和60年
, 日本 生 産 性 本 部)
多 か った。そ して ,加 齢 と と もに知 識 学 習 能 力 ,
モ ラー ル が低 下 し, さ らに職 業 能 力 ま で低 下 す る
行 な う上 で の 技 術 者 の 能 力 的 な 限 界 年 齢 につ い
とい う一 般 通 念 が支 配 的 な な か で, 企 業 の 中高 年
て, 企 業 の役 員 と技 術 者(今
対 策 は如 何 に あ る べ き か が模 索 さ れ て き た。
当)双 方 に質 問 して い る。 そ れ に よ る と, 役 員 ・
欧 米 か ら の技 術 移 入 や 応 用 ・開 発 研 究 中心 で
あ っ た わが 国 企 業 の研 究 開 発 体 制 に見 直 しが 迫 ら
技 術 者 と も に35歳
れ て い る なか で , 企 業 内 研 究 職 の役 割 は一 段 と重
門 と研 究 部 門 に分 け て 分 析 した 場 合 , 前 者 で は
要 にな って い るが , 人 口高 齢 化 に と も な う従 業 員
35歳 前 後 か ら45歳
高 齢 化 は研 究 職 に と っ て も例 外 で は な い で あ ろ
の に対 して ,後 者 で は40歳
う。 も し年 齢 的 限 界 が存 在 し,研 究 職 の 発揮 す る
そ の違 い につ い て この調 査 で は, 開 発 部 門 で は企
能 力 に低 下 の兆 候 が見 られ るの で あ れ ば, そ れ に
業 の 置 か れ た市 場 環 境 や技 術 的環 境 の違 い に よ り
応 じた教 育 訓 練 や人 事 配 置 が必 要 で あ ろ う。 しか
限界 年 齢 に か な り大 きな バ ラ ッキ が 出 るの に対 し
し本 当 に年 齢 的 限 界 は存 在 す る の だ ろ うか。 ま
て, 研 究 部 門 は市 場 環 境 か らの影 響 が相 対 的 に弱
た, 企 業 内研 究 職 は この問 題 を どの よ うに考 え て
い こ とか ら企 業 間 の差 が小 さ くな るた め と解 釈 し
い る ので あ ろ うか 。
て お り,厂研 究 部 門 に典 型 的 に 出 る 「純 技 術 的 」な
こ の小 論 で は, 製 薬 ・エ レク トロニ ク ス ・素 材
と い う3つ の 業 種 の 研 究 職(以 下 で は研 究 者 と呼
限 界 年 齢 に は, 企 業 を越 え た, き わ め て高 い共 通
この調 査 研 究 で は, 専 門 的 ・創 造 的業 務 遂 行 を
回調 査 の研 究 者 に該
前 後 か ら40歳 前 後 を限 界 と
す る回 答 が 最 も多 くな っ て い る。 た だ し, 開 発 部
前 後 ま で 広 く分 布 して い る
前 後 に集 中 して い る。
性 が み られ る こと に な ろ う」 と して い る。
ぶ)を 対 象 と した質 問 紙 調 査 か ら, こ の年 齢 的 限
ま た, 技 術 者 の専 門 的 ・創 造 的 業 務 遂 行 の年 齢
界 の 問 題 につ いて 分 析 を 進 あ て い き た い。 まず 先
的 限 界 に対 応 した キ ャ リア形 成 に関 し, 企 業 は年
行調 査 研 究 を 紹 介 した 後(第2節),
今回の調査
齢 を 基 準 と して 考 え て い る こ と も この 調 査 か ら分
結 果 の概 要 に つ い て 述 べ る(第3節)。
次 い で,年
か る。即 ち,25歳 前 後 か ら30歳 前 後 まで は, 専
齢 的 限界 の存 在 を肯 定 す る研 究 者 と否 定 す る研 究
門 的 研 究 ・開 発 の サ ポ ー ト業 務 ,30歳 前 後 か ら
者 の 間 で の相 違 点 等 に つ い て論 じ(第4節),
実
35歳 前 後 の 間 で は一 人 前 の技 術 者 と して の専 門
際 に 限 界 年 齢 と認 識 され る こ との 多 い40歳
台以
的研 究 ・開 発 業 務 へ の従 事 , そ して40歳
前後 を
降 の研 究 者 を対 象 に よ り詳 しい分 析 を行 な う(第
中 心 と す る40歳
5節)。 また,限 界 を導 く要 因 と して認 識 さ れ て い
リー ダ ー的 業 務 へ の移 行 と い う もの で あ る。 これ
台前 半 層 で は プ ロ ジェ ク ト ・
68
に 対 して 技 術 者 は そ れ ぞ れ に つ い て5歳 程 度 早
表1研
究者 と して活躍 でき る年 齢的限 界 はある
(%)
か
く経 験 さ せ るべ きだ とす る回答 が多 く, ま た, 年
あるLな
齢 を基 準 とす る画 一 的 な キ ャ リア管 理 よ り も能 力
等 を重 視 した個 別 管 理 を指 向 して い る。
平 均 的 に み て 何 歳 ぐ らい まで とお 考 え で す か 」 と
台後
多 くな って
ドイ ッ で は 同 じ く7i.8%と
な って い る(日 本 は14.6%)。
44.1
54.2
45.8
51.1
48.9
58.6
41.2
57.6
42.4
33.7
51.6
50.3
3 Qり
QU 1
4 4
9
7.
尸0
査 結果 の 概要
40.6
55.9
7
(0
尸0
3.調
45.6
59.3
﹂4 7u
ΩU Qり
4
4
い う回 答 が77.8%,
54.4
0
ハ0
ρ0
い るの に対 して, ア メ リカ で は年 齢 に 関 係 な い と
1 8
00 0
◎
4 3
囲 を 見 て 技 術 者 と して 第 一 線 で 活 躍 で き る の は,
42.5
9臼
研 究 で も限 界 年 齢 を質 問 して い る。 「あ な た の周
台 前 半(30.6%)で
57.4
ハ0
ハ0
, 日本 生 産 性 本 部)
ドイ ッ ・ア メ リカ と の比 較 を して い る この調 査
半(29.7%)と40歳
㎝'
8
年 , 日本 生 産 性 本 部), 「米 国 の技 術 者 ・日本
い う質 問 に対 して , 日本 の 技 術 者 で は30歳
別
男
女
年齢別
20歳 台
30歳 台
40歳 台
50歳 台
学歴別
博士課程修了
修士課程修了
学部卒業
業種別
製薬
エ レク トロニ クス
素材
職位別
管理職
一般職
「ドイ ッの技 術 者 ・日本 の 技 術 者 」(平 成2
の技 術 者 」(平 成3年
詠 一一
性
ハ0
尸0
②
全
い
(注)無
回答 は表 示 して い な い
そ れ で は今 回 の調 査 結 果 に っ い て, 全 体 的 な傾
向 を見 よ う。 サ ンプ ル数 は965(う
女 性65)で
ち男 性900,
い。
あ る。
2)限
1)年
齢 的 限 界 の 有 無 一あ る とす る もの が約6
割
界 年 齢 は何 歳 か 一3人 に2人
台
年 齢 的 限 界 が あ る と した 回 答 者 を対 象 に, 「限
「研 究 者 と して 活 躍 で き る年 齢 的 な 限 界 が あ る
とお 考 え で す か 」 と い う質 問 に対 して ,57.4%が
界 年 齢 は何 歳 く らいで す か 」 と質 問 した と ころ,
40歳 台 前半 とす る回 答 が い ちば ん 多 く29.6%で
「あ る」 と 答 え て お り, 「な い」 と す る も の は
あ っ た。 次 い で 多 か っ た の は40歳
42.5%で
22.9%で
あ った(表1)。
年 齢 的 限 界 が あ る とす る回 答 は 男 性 で は
56.8%で
は40歳
後 半 ま で に来 る と考 え て い る
あ る の に対 して, 女 性 は66.2%と
高く
な って い る。 ま た, 年 齢 層 別 に見 た場 合, 各 年 齢
層 で は顕 著 な差 は 出 て い な い。
あ っ たが ,40歳
台後半 の
台 前 半 まで に年 齢 的 限
界 が 来 る と した 回 答 は累 計 で42.6%,40歳
半 まで の 累 計 は65.5%と
台後
な って お り, 年 齢 的 限
界 の 存 在 を肯 定 す る研 究 者 の3人
に2人
は40歳
台 後 半 ま で に そ の 時 期 が 来 る と考 え て い る(表
回 答 に差 が 出 るの は最 終 学 歴 と業 種 で あ る。 回
答 者 の最 終 学 歴 を博 士 課 程 修 了 , 修 士 課 程 修 了 ,
2)0
も っ と も, 年 齢 的 限界 は個 人 差 の 問題 とす る回
学 部 卒 業 で 分 け る と博 士 課 程 修 了 者 の場 合 は年 齢
答 も29.2%と
的 限 界 が あ る とす る回 答 は少 な くな る。 ま た, 業
で結 論 づ け る べ きで は な い とい う意 見 も多 い。
種 別 に見 る と製 薬 は他 の2業 種(エ
年 齢 別 に見 る と, 限 界 年 齢 を40歳 台 前 半 ま で
と答 え た 回 答 が い ち ば ん 多 か った の は30歳 台 で
ス, 素 材)と
レク トロニ ク
は大 き く異 な り, 年 齢 的 限 界 の存 在
を 肯 定 す る回 答 が 非 常 に多 い。 ち なみ に職 位 別 に
48.9%で
見 る と, 管 理 職 と一 般 職 の 間 で は 回 答 に 差 は な
30.4%を
約3割 存 在 して お り, 一 概 に年 齢
あ り,20歳
台 の36.8%,40歳
台 の
大 き く上 回 って い る。 しか し限 界 年 齢 は
一 一研 究人 材 の キ ャ リアー
表2
69
限界の来る年齢
(%)
」3・ 歳 台 前¥/
別
1.3
11.7
5・歳以生
22.9
4.0
29.8
30.1
31.1
10.4
25.4
19.7
4.2
8
尸◎
7響 ハb
9凵 4 凸
8.2
22.0
8
30.8
9凵
29.0
30.8
nd
23.2
0.0
7・ 0
7.2
4
素材
19.3
(U
8
QU
-二 9臼
製薬
エ レ ク トロ ニ ク ス
23.0
35.9
ーム QO O
ハ0
O
業種別
18.4
13.0
Qり 7層 0
40歳 台
50歳 台
18.4
ハ0
Q) 9臼 0
1 9臼 0
20歳 台
30歳 台
⊥個人 差の問題
29.2
7置 0
∩0 7.
り0 ハ0
0り 8
9臼 -←
O
0
年齢別
40歳 台 後 半
29.6
7
ハ0
1
1
11甲 -
男
女
40歳 台 前 半
7 6
0
0 ハ
O
n
O -
体
性
﹂
4 0
1 0
全
30歳 台 後 半
32.2
27.2
29.7
35.7
26.0
30.5
40.8
(注)回 答者 は年齢的限界があ ると回答 した者
表3
第 一 線 の 研 究 者 と して 活 躍 で きな くな る 理 由
(M.A.,%)
体
集中力低下
力低下
チ ャ レ ンジ
精神低下
革新不適応
一
体
雑務多忙
18.4
1.2
26.0
16.4
69.7
54.5
20歳 台
30歳 台
12.6
5.6
23.0
17.2
60.9
50.6
15.9
2.6
27.9
14.3
70.8
55.5
40歳 台
50歳 台
25.4
5.4
24.6
18.8
74.6
55.1
26.9
6.9
23.1
26.9
61.5
53.8
製薬
エ レ ク トロニ クス
16.9
3.5
28.5
68.3
52.7
18.3
9.3
R) 4
1
1
全
灘
23.8
73.8
58.5
素材
25.4
5.4
19.7
66.2
53.5
年 齢別
業 種別
4^
1
9臼 ∩V l
(注)回 答者 は年齢的限界が あると回答 した者
個 人 差 の 問 題 と した 回 答 は, 年 齢 層 間 で 差 は少 な
い。
3)限
界 が 来 る理 由 一管 理 業 務 と雑 務 が 双 璧 ,
内 部 要 因 で は発 想 力 低 下
性 別 で 見 る と, 女 性 は個 人 差 の 問 題 とい う回 答
が 非 常 に 多 い。 た だ し, 女 性 の サ ン プ ル数 は43
第一 線 の 研 究 者 と して 活 躍 で きな くな る主 な 理 由
と少 な い。
に つ い て」複 数 回答 で答 え て も ら った(表3)。
限 界 年 齢 は業 種 に よ って違 い が あ りそ うだ。40
何 が 理 由 で 限 界 と感 じ るの だ ろ うか 。 「一 般 に
選
択 肢 と して用 意 した もの は研 究 者 自身 に 内在 す る
歳 台 前 半 ま で に限 界 年 齢 が来 る とい う回答 は エ レ
要 因(内 部 的 要 因)が5つ(体
ク トロ ニ ク ス が い ち ば ん多 く54.9%, 一 方 製 薬 は
力 ,チ ャ レ ンジ精 神 ,技 術 革 新 不 適 応), 業 務 関連
38.6%, 素 材 は32.4%と
要 因(外 部 的 要 因)が2つ(管
な って お り,技 術 革 新 の
力 ,集 中 力, 発 想
理 業 務 , 雑 務)で
速 さ に よ る違 いが 想 像 で き る。 な お, 個 人 差 の問
あ る。 そ の結 果 , 最 も回 答 が多 か った の は管 理 業
題 とす る 回 答 が い ち ば ん 多 い の は素 材 で40.8%
務 多 忙(69.7%)で
とな って い る。
多 忙(54.5%)も
あ り,第2位
の研 究 以 外 の仕 事
考 慮 す れ ば, 本 人 自身 の内 部 的 要
因 よ り も業 務 関 連 で の障 害 が 研 究 者 と して の活 躍
70
を阻 害 して い る と考 え られ て い る。
識 しな い処 遇 や管 理 を望 ん で い る。 研 究 者 の処 遇
しか し, 内部 的要 因 に つ い て も3割 近 い回 答 者
が 発 想 力 や 体 力 , そ して チ ャ レ ンジ精 神 の低 下 を
や管 理 に対 す る意 見 につ い て の賛 否 を問 うた質 問
限 界 が 来 る理 由 と して い る。
い よ う にす べ きだ 」 と い う項 目 にっ いて 見 る と,
年 齢 層 ご との 特 徴 につ いて 見 る と, 集 中 力 低 下
は高 齢化 す る につ れ て 回 答 が 多 くな って い る。 し
年 齢 的 限 界 が あ る と考 え る研 究 者 は59.8%が
か し発 想 力 に っ い て は逆 の 傾 向 が あ り, 若年 にな
研 究 者 は89.2%が
る ほ ど回 答 が 多 い。 こ れ は ベ テ ラ ン研 究 者 の場
見 に反 対 す る研 究 者 は年 齢 的 限界 あ り と考 え る研
合 , 業 務 経 験 を積 む な か で よ り視 野 が広 が り, 仕
究 者 で11.5%で
事 に結 び付 け られ る発 想 が多 くな るか ら と考 え ら
研 究 者 で は わず か0.8%で
れ よ う。 一 方 , 雑 務 につ い て は ど の年 齢 層 で も同
な い とす る中 立 的 意 見 も含 め れ ば, 年 齢 的 限 界 あ
様 の 回 答 率 で あ る。
り と考 え る研 究 者 の4割
業 種 別 で は, 製 薬 で 体 力 低 下 の 回 答 が 多 く, エ
レク トロニ ク スで は この 回 答 が少 な い 。 素 材 で は
して お らず , 彼 らと して は年 齢 的 限 界 の来 た研 究
の な か で , 「研 究 者 の年 齢 限 界 を あ ま り意 識 しな
こ
の 意 見 に賛 成 して い るの に対 して , な い と考 え る
賛成 して い る。反対 に,この 意
あ る の に対 して, な し と考 え る
あ る。 ど ち ら と も言 え
近 くが この 意 見 に 賛 成
者 の 処 遇 に工 夫 を 求 め て い る と も考 え られ よ う。
集 中 力低 下 等 の精 神 的 問題 の 回 答 が 多 い が, 発想
力 低 下 とチ ャ レ ン ジ精 神 低 下 の 回答 が少 な い。
4.年
齢 限 界 意 識 を 持 つ 研 究 者 と持 た な い
研究者の違 い
3)年
齢 限 界 意 識 と希 望 す る処 遇 方 法
高 度 の研 究 業 績 を あ げ た研 究 者 に対 す る処 遇 方
法 の な か で, 会 社 に重 視 して ほ しい と考 え て い る
もの を回 答 して も ら うと, 年 齢 的 限 界 あ り と考 え
る研 究 者 と な い とす る 研 究 者 の 間 で は 違 い が あ
年 齢 的 限 界 が あ る と考 え る研 究 者 は ど の よ う な
る。 年 齢 的 限 界 を肯 定 す る者 は給 与 や 昇 給 と い う
考 え方 を す る人 々 な の だ ろ うか , 換 言 す れ ば , 年
回 答 が 多 く, 否 定 者 は ボ ー ナ スや 個 人 報 奨 金 , 高
齢 的 限界 が な い と考 え る研 究 者 と は 自分 の将 来 イ
度 研 究 専 門職 へ の登 用 と い う回 答 が 多 くな って い
メ ー ジや指 向 に違 い が あ るの だ ろ うか。 この節 で
るQ
は特 に この点 にっ い て検 討 しよ う。
1)年
齢 限 界 意 識 と高 度 研 究 専 門 職 指 向
年 齢 限 界 が あ る と考 え る研 究 者 は高 度 研 究 専 門
職 指 向 が 相 対 的 に低 い よ うだ 。 年 齢 的 限 界 が あ る
以 上 か ら, 年 齢 的限 界 が な い とす る研 究 者 は高
度 研 究 専 門 職 を指 向 し, 業 績 評 価 にっ い て もボ ー
ナ スや 個 人 報 奨 金 と い った個 人 ベ ー ス で の評 価 を
望 ん で い る よ うで あ る。
とす る研 究 者 で 高 度 研 究 専 門 職 に 「ぜ ひ 就 きた
い」 ま た は 「で きれ ば就 きた い」 と答 え た もの は
46.4%で
あ り,年 齢 的 限界 が な い とす る研 究 者 の
55.2%を
下 回 って い る。一 方 ,年 齢 的限 界 が あ る
とす る研 究 者 で高 度 研 究 専 門職 に 「あ ま り就 きた
くな い」 ま た は 「就 き た くな い」 と答 え た研 究 者
は31.9%と
21.9%を
, 年 齢 的 限 界 が な い とす る研 究 者 の
や は り大 き く上 回 って い る。ど ち らか と
5.限
界 的 年 齢 を 経 験 した 研 究 者 た ち の 意
識
1)40歳
以 上 の研 究 者 分 析 の重 要 性
以 上 の分 析 は, 今 回 の ア ンケ ー ト調 査 の全 体 的
な結 果 を示 した もの で あ る。 前 述 の よ うに研 究 者
の半 数 以 上 は年 齢 的 限 界 を肯 定 し, そ れ は40歳
言 え ば, 年 齢 限界 意 識 の あ る研 究 者 は高 度 研 究 専
台 にや って くる と考 え て い る研 究 者 が 多 い こ とが
門職 を指 向 して い な い よ うで あ る。
分 か った。 しか し, 彼 らの な か に は 自分 で 限 界 が
来 る と意 識 して い るそ の年 齢 に達 して い な い者 が
2)年
齢 限 界 意 識 と研 究 者 管 理
年 齢 的 限 界 が な い と考 え る研 究 者 は, 年 齢 を意
い る。例 え ば,30歳 台 の研 究 者 の意 識 に は実 感 が
伴 って い な い。 もち ろ ん 自分 の上 司 や先 輩 の状 況
一
を見 て回 答 して い る こ と も多 い で あ ろ うが, そ の
研 究 人 材 の キ ャ リアー 一
71
過 去 に基 礎 研 究 部 門 に所 属 して い た が他 部 門 へ
よ うな年 齢 層 の回 答 の分 析 に は 限界 が あ ろ う。 研
異 動 , しか し基 礎 研 究 部 門 に40歳
究 者 の年 齢 的 限 界 につ い て よ り詳 細 に理 解 す る た
復 帰 。 ち な み に基 礎 研 究 部 門 復 帰 前 の所 属 部 署 は
め に は, 実 際 に こ の年 齢 を通 過 した人 々 の み を対
応 用 研 究 部 門 も し くは国 内 ・海 外 留 学 が多 い(こ
象 と して 考 察 す る こ と が有 効 と思 わ れ る。
こ で は留 学 も部 署 の ひ とつ と考 え る)。
そ こで 以 下 の 分 析 で は,40歳 以 上 の 男 性 回 答
者 のみ を対 象 とす る。 改 め て理 由 を列 挙 しよ う。
①
研 究 者 の 年 齢 的 限界 を40歳
台 と認 識 して
い る回 答 が 多 い。
②40歳
③
台 前 半 まで に
基礎→応用型
基 礎 研 究 部 門 か ら40歳
台 前 半 ま で に応 用 研 究
部 門 に異 動 。国 内留 学 経 験 者1名
を除 け ば基 礎 研
究 部 門 と応 用 研 究 部 門 以 外 の経 験 の な い研 究 者 で
台 は既 に人 事 異 動 を 通 じて 他 部 門経
験 者 も多 く, この 実 際 の 経 験 が 年 齢 的 限 界 意
識 に対 して さ ま ざ まな 影 響 を与 え る と考 え ら
れ る。 も ち ろん, 異 動経 験 の な い研 究 者 も含
あ る。
④
応 用 そ の他 型
40歳 台 前 半 に応 用 研 究 部 門 に在 籍 す る もの の
基礎 研 究 部 門 の経 験 はな い。
ま れ るが, そ れ は人事 政 策 上 そ う され て い る
⑤
の で あ って, 異 動 経 験 の な い若 年 研 究 者 と は
基 礎 研 究 部 門 か ら40歳 台 前 半 ま で に製 品 開 発
状 況 が異 な る。
③
部 門 に異 動 。 応 用 研 究 部 門 の経 験 を経 て製 品 開発
男 性 研 究 者 は基 幹 人 材 と考 え られ, ま た女
性 は サ ンプ ル が非 常 に少 な い。
ち な み に,40歳 以 上 の 男 性 回 答 者 は297名
基 礎 → 開発 型
部 門 に異 動 した研 究 者 もい る。
⑥
であ
る。
開発 そ の他 型
40歳 台 前 半 に 製 品 開 発 部 門 に 在 籍 す る もの の
基 礎 研 究 部 門 の経 験 は な い。
そ して 分 析 に あ た って の課 題 は以 下 の よ うに な
ろ う。
①
そ の他 型
上 記 の いず れ に もあ て は ま らな い研 究 者 。
研 究 者 の キ ャ リア の違 い は年 齢 的 限 界 につ
いて の 意 識 に差 を もた ら して い るか 。
②
⑦
もた ら して い る とす れ ば, ど の よ うな もの
な お, ① と② を合 わせ て基 礎 中心 型 , ③ と④ を
合 わせ て応 用 中 心 型 , ⑤ と⑥ を合 わせ て開 発 中心
型 と しよ う。
か 。 例 え ば , 基 礎 研 究 一 筋 の研 究 者 と応 用 研
③
究 中 心 の 研 究 者 の 間 で 意 識 の 違 い は存 在 す る
3)年
のか。
研 究 者 の そ れ ま で 辿 って き た キ ャ リ ア の違 い
齢 的 限 界 に対 す る意 識 の 差
実 際 に 限 界 年 齢 に達 した 研 究 者 と まだ そ の
は, 年 齢 的 限 界 に対 す る意 識 の 差 を 生 ん で い る。
年 齢 に達 して い な い 研 究 者 の 間 で , どの よ う
基 礎 中 心 型 は年 齢 的 限 界 の 存 在 を 肯 定 す る研 究 者
な違 い が存 在 す るの か。
が 多 い が(65.8%),
心 型(46.5%)と
2)40歳
以 上 の研 究 者 の キ ャ リア の分 類
応 用 中 心 型(51.5%),
開発中
比 較す れ ば その違 いが理 解 で き
よ う(表4)。
分 析 の ひ とつ の 軸 と して,40歳 以 上 の 研 究 者
の キ ャ リア を用 い る。そ の場 合 ,40歳 台前 半 に所
考 え て い る と ころ に特 徴 が あ る。 即 ち, 基 礎 一 貫
属 して い た 部 門 を 中 心 と して, 彼 らが そ れ ま で
型 で は 限 界 年 齢 を50歳
辿 っ て き た経 歴 を次 の よ うに分 類 す る。
11.8%, 基 礎Uタ
①
基礎一貫型
40歳 台 前 半 に基 礎 研 究 部 門 に所 属 して い るが ,
'ただ し, 基 礎 研 究 部 門 は限 界 の来 る年 齢 を遅 く
10.0%存
以 降 とす る回答 は
ー ン型 を含 あ た基 礎 中心 型 で も
在 す る の に 対 して , 応 用 中 心 型 で は
7.5%, 開発 中心 型 で は5,0%と
な って お り,基 礎
そ れ まで 一 貫 して こ の部 門 に お り, 他 部 門 の経 験
研 究 に従 事 す る研 究 者 の認 識 の違 い を表 して い る
が な い。
よ うだ。
②
基 礎Uタ
ー ン型
で は, それ ぞれ の タ イ プで は限 界 年 齢 と個 人 差
72
の問 題 を どの よ うに考 え て い るの か と言 う と, こ
回答 率 が高 い の は体 力低 下 で あ る。 そ して雑 務 が
れ につ い て は タイ プ間 の差 は な い。 基 礎 も応 用 も
少 な い の が特 徴 で あ る。 応 用 中心 型 の場 合 は革 新
開 発 もそ の回 答 は約3割
不 適 応 と雑 務 が平 均 に比 べ る と多 くな って い る。
一 方 ,開 発 中 心 型 で は体 力 ,精 神 力 ,発 想 力 ,チ ャ
4)何
と な って い る。
レ ン ジ精 神 そ れ ぞ れ の低 下 ,ま た,管 理 業 務 多 忙 ,
が 原 因 で 研 究 者 と して 活 躍 で き な くな る
のか
雑 務 とす べ て の要 因 にっ い て回 答 率 が高 くな って
い る。 開 発 部 門 は常 に他 社 と差 別 化 す る商 品 の開
研 究 者 と して の 活 躍 を 阻 害 す る要 因 につ いて ,
キ ャ リアの タ イ プの 違 いが 大 き く表 わ れ て い る。
発 に 追 わ れ , しか も時 間 と の戦 い で あ る こ と か
表5は
ら, この よ うに さ ま ざ ま な要 因 で 苦 しむ こと に な
各 タ イ プ ご と に阻 害 要 因 の 回 答 率 を示 し
た もの だ が, 基 礎 中心 型 , 応 用 中 心 型 , 開 発 中 心
型 の3タ
る と考 え られ る。
イ プで見 た場 合 , 基 礎 中心 型 で 平 均 よ り
5)若
表4
研 究者 と して活 躍 でき る年 齢的限 界 はあ る
か
(40歳
以上 の研究者)
該当
者数
一一 一『
「
基礎一貫
基礎Uタ ー ン
ン
基礎中心
基礎→応用
応用その他
応用中心
基 礎→ 開発
開発その他
開発中心
その他
合
(比較)
若年者
全 体
の実 感 の 差
30歳 台 ま で の 若 年 ・中 堅 研 究 者 と40歳
な い
251
17
17(68.0%)
8(32.0%)
51
33
33(64.7%)
18(35.3%)
76150
50(65.8%)
26(34.2%)
261
12
12(46.2%)
14(53.8%)
を肯 定 す る回 答 は若 年 ・中 堅 で57.8%で
77141
41(53.2%)
36(46.8%)
に対 して, ベ テ ラ ンで は55.9%で
53(51.5%)
50(48.5%)
8
8(66.7%)
4(33.3%)
る もの と異 な る もの が あ る。 両 者 の意 見 が共 通 す
ヒ
」
103153
台以
上 の ベ テ ラ ン研 究 者 の 回答 を比 較 す る と, 共通 す
あ る
一
121
る場 合 , これ は若 年 ・中堅 研 究 者 の予 想 が ほ ぼ 的
中 して い る こと を意 味 す る。 例 え ば, 年 齢 的 限界
あるの
あ る。
一 方 , 両 者 の意 見 が 異 な る場 合 , こ れ は若 年 ・
31112
12(38.7%)
19(61.3%)
中 堅 の想 像 と ベ テ ラ ンの実 感 の差 と考 え られ よ う
43120
20(46.5%)
23(53.5%)
(表5)。 例 え ば, 研 究 者 と して 活 躍 で き な くな る
75143
43(57.3%)
32(42.7%)
要 因 と して , 若 年 ・中 堅 が 特 に指 摘 す る の は発 想
166(5(55.9%)
31(44.1%)
力 の 低 下 で あ る。 これ に対 して ベ テ ラ ンは集 中 力
380(57.8%)
554(57.4%)
76(42.0%)
0(42.5%)
297
計
年 ・中 堅研 究 者 の想 像 とベ テ ラ ン研 究 者
等 の精 神 的 問 題 を 指 摘 す る。 特 に精 神 的 問 題 につ
657
965
い て は両 者 の 間 で大 き く異 な って い る。
ベ テ ラ ン研 究 者 が集 中 力 を 問題 とす るの は, 雑
(N.A.1)
表5
第 一 線 の研 究者 と して活 躍 で き な くな る理 由
(40歳 以上 の研 究 者 ,M. A.,%)
体力低下
一
基礎一貫
ン
基礎U夕 一ン
基礎 中心
応用 中心
開発 中心
応用 ・開発
.一 一
一
力低下
集中力低下
チャ レンジ 革新不適応
精神低下 一
一.一
冖
41.2
17.6
9.4
36.4
30.3
1,2
1
23.5
38.0
26.0
28.3
26.4
4.O
4.5
I
1
22.O
28.3
I
1
20.O
26.4
45.0
40.0
30.1
I
1
30.O
28.8
I
32.9
5.O
7.4
一一
一
合
31.3
25.9
17.6
1
雑務多忙
8
52.9
6
42.4
I
1
6
欝
46.0
6
64.2
20.O
I
8
60.0
24.7
1
7
63.0
21.2
一 一
一
6.5
24.1
19.9
7
69.880.072.672.3
54.8
1
15.3
33.227.1
15.369.2
28.7
18.4
31.226.0
16.469.7
尸0
4
PO
27.6
尸0
4
﹁O
(比較)
若年者
全 体
計
1
21.2
管理業
管
務
一
務 や管 理 的業 務 が割 り込 ん で く る 日常 の研 究 状 況
表6趣
研 究 人 材 の キ ャ リアー 一一
味 や レ ジ ャ ー か ら ヒ ン トを 得 る こ とが あ
るか
り込 ん で く る。 別 の仕 事 を片 付 け て席 に戻 った と
66.3
34.1
59.4
37.7
55.9
43.8
64.6
40.9
50.4
31.9
62.0
33.6
59.4
ρO
0
ρ0
Qり
ハb
尸0
0 ∩0
1 8
0
0 0り
QU 7
﹂
4 4
1 4
1
4
nO
ぼ0
﹂
4
りO
Qり
9臼 ハ0
9臼 (︾
﹁0 ハ0
00
7蟹 尸O
Qゾ ー
QU 9臼
l
浮かぶ ヒン ト
∩6
究 者 と 発 想 カ ー趣 味 や レ ジ ャー か ら
27.5
0
00
4 7
1
6.研
58.8
Qリ 0
4 QV
れ る可 能 性 が あ る。
0 ∠1
ハ
0 ρ
0
言 えず , 研 究 者 の さ ま ざ ま な経 験 の な か で高 め ら
34.4
8
7
る。 発 想 力 は加 齢 に伴 って低 下 す る とは一 概 に は
QU
い う若 年 ・中 堅 の危 惧 は取 り越 し苦 労 と考 え られ
8
とを理 解 す る必 要 が あ る。 反 対 に, 発 想 力 低 下 と
1
堅 研 究 者 は将 来 , この問 題 に直 面 す るで あ ろ う こ
ハ0
者 と して の活 躍 を阻 害 す る要 因 で あ る。 若 年 ・中
1
集 中力 低 下 は若 年 者 が考 え る以 上 に第 一 線 研 究
ρ0
阻 む こ とに な るの で あ ろ う。
6.3
3
仕 事 に集 中 しな け れ ば な らな い が, 加 齢 が そ れ を
体
齢
20歳 台
30歳 台
40歳 台
50歳 台
博士号 の有無
在学 中取得
就職後取得
未取得
年齢限界 に対 する考 え方
年齢限界 ある
年齢限界 ない
創造性が あると思 うか
全 く思 わない
非常 にあると思 う
フェロー指 向
ぜ ひ就 きたい
就 きた くない
ハ0
知 れ な い。 この よ うな こ とを 防 ぐに は瞬 間 々 々 で
全
年
く し
全 な
劃
そ れ を深 く考 え よ う と した と ころ に他 の仕 事 が割
きに は さ っ き閃 い た ヒ ン トは も う忘 れ て い るか も
(%)
々 る
時 あ
が背 景 に あ ろ う。 せ っか く ヒ ン トが浮 か ん で も,
73
前 述 の よ うに, 第 一 線 研 究 者 と して活 躍 で きな
し て い る研 究 者 は 他 よ り も ヒ ン トが 浮 か ぶ よ う で
くな る要 因 と して, 創 造 性 等 の発 想 力 が低 下 す る
あ る 。 「よ く あ る」 に 「時 々 あ る」 を 加 え た 回 答 率
か らと い う回 答 が 約3割
で 比 較 す る と, 在 学 中 取 得 者 は48.7%で
の第1位
あ っ た。 これ は 内部 要 因
で あ る。仕 事 に役 立 っ ヒ ン トを生 み 出す
こ の発 想 力 は重 要 で あ る ことが うか が わ れ る が,
に 対 し て , 就 職 後 取 得 者 は36.9%,
40.0%と
あ るの
未取 得 者 は
な って い る。
それ で は この発 想 力 は趣 味 や レ ジ ャー を通 じて も
発 揮 され る ので あ ろ うか 。 この節 で は この点 につ
いて 若 干 触 れ た い。
3)年
齢 的 限 界 と の関 係
年 齢 的 限 界 の存 在 を肯 定 して い る研 究 者 は ヒ ン
今 回 の質 問 紙 調 査 で は, 自分 の趣 味 や レ ジ ャー
トが 浮 か ぶ と い う回 答 が 若 干 少 な く, 全 く浮 か ば
か ら仕 事 に役 立 っ ヒ ン トが 浮 か ぶ ことが あ るか を
な い と い う回 答 が そ の分 多 くな って い る。 この ヒ
尋 ね た(表6)。
ン トにつ いて は次 に述 べ る想 像 性 と もお お い に関
連 が あ ろ う。
1)年
齢 との 関 係
ヒ ン トが 浮 か ぶ こ とが 「よ くあ る」 と回 答 す る
研 究 者 は全 体 で6.3%で
4)創
造 性 に対 す る意 識 と の関 係
あ るが , 年 齢 層 間 で 比 較
創 造 性 が 自分 で あ る と思 って い る研 究 者 はや は
して も差 は ほ とん ど な い。 しか し 「よ くあ る」 に
り ヒ ン トが よ く浮 か ぶ よ うだ 。 自分 の仕 事 に対 し
「時 々 あ る」を加 え た回 答 率 で 比 較 す る と,年 齢 層
て 自分 が 創 造 性 が あ る と思 う研 究 者 ほ ど趣 味 や レ
が 上 昇 す るの に応 じて ヒ ン トが 浮 か ぶ こ とが 多 く
ジ ャ ーを 通 して ヒ ン トが 浮 か ぶ こ とが 多 い と回 答
な る よ うだ 。
して お り, 創 造 性 が な い と思 う研 究 者 ほ ど ヒ ン ト
が 全 く浮 か ば な い と い う回 答 が 増 え る。 同 様 に,
2)学
歴 との 関係
博 士 号 の 有 無 で 見 る と, 在 学 中 に博 士 号 を 取 得
創 造 性 が あ る と人 か ら言 わ れ る こ とが 多 い研 究 者
は, ヒ ン トが 浮 か ぶ こ とが 多 い と回 答 して い る。
74
5)高
度 研 究 専 門 職 指 向 と の関 係
究 者 と して 活 躍 で き る限 界 を感 じさせ る, と い う
フ ェ ロ ー な ど高 度 研 究 専 門 職 に な りた い と希 望
す る研 究 者 は, 趣 味 や レジ ャ ーか ら ヒ ン トが 浮 か
構 図 で あ る。
ぶ こ とが 多 い よ うだ。 高度 研 究 専 門職 にぜ ひ就 き
実 際 , これ ら業 務 関 連 の 外 部 的 要 因 に 比 べ れ
ば, 本 来 , 加 齢 に と もな って 低下 す る能 力 と して
た い と回答 した研 究 者 は47.8%が
ヒ ン トが浮 か
例 示 され る こ との 多 い体 力, 集 中 力, 発 想 力 等 の
ぶ と して い るが, 就 きた くな い と考 え て い る研 究
内部 的要 因 は3割 近 い回 答 率 と は言 え,外 部 的要
者 は30.4%の
回答 率 に止 ま って い る。一 方 ,ぜ ひ
因 に比 較 す れ ば だ いぶ 低 い もの とな って い る。 も
就 き た い と回 答 した研 究 者 で ヒ ン トが 全 く浮 か ば
ち ろん 無 視 はで き な い。 特 に集 中力 につ い て は未
な い と い う回 答 は52.2%で
経 験 者 が 予 想 す る以 上 に低 下 す る よ うで あ る。 し
あ るの に対 して , 就
きた くな い研 究 者 で は69.6%に
上 る。 ヒ ン トが
よ く浮 か ぶ発 想 力 の豊 か な 研 究 者 は, 研 究 者 と し
か し回 答 率 か らみ て , 外 部 的 要 因 が まず 解 決 され
るべ き もの で あ ろ う。
て の頂 点 を極 め た い とい う人 が 多 い とい う こ とで
あ る。
7.結
3)研
論
究 補 助 体 制 の充 実 を
わ が国 企 業 が研 究 開 発 体 制 を い っそ う強 化 す る
た あ に は研 究 者 の活 躍 が 必 要 で あ るが , 従 業 員 全
体 と同 様 に いず れ 高 齢 化 す る研 究 者 が , 加 齢 に よ
1)限
界 を年 齢 で と らえ るべ きか
る能 力低 下 よ り も, 業 務 関連 の要 因 で 能 力 発 揮 の
企 業 内 の研 究 者 の約6割 は, 自分 が研 究 者 と し
て活 躍 で きな くな る年 齢 的 な限 界 が い っ か や って
機 会 を 阻害 され て い る とす れ ば, そ の原 因 の早 急
来 る と考 え て い る。 もっ と も,4割 の研 究 者 が研
た あ に は困 難 が予 想 さ れ るが, 業 務 関 連 の要 因 で
究 者 と して の 年 齢 的 限 界 は な い と考 え て い る の
あれ ば, そ の業 務 を無 く した り, 削 減 す る こ とで
で , 年 齢 的 限 界 が 存 在 す る と い う意 識 は必 ず し も
解 決 で き る ので あ る。 研 究 者 自身 が 自分 に限 界 が
研 究 者 の 間 で は圧 倒 的 と は言 え な い。 しか も, 未
来 る要 因 と して 内 部 的 要 因 を あ ま り指 摘 して い な
だ 限 界 と言 わ れ る年 齢 に 達 して い な い 研 究 者 の 回
い とい う こ と は, 企 業 内 の シ ス テ ム改 善 で 解 決 で
答 は 「40歳 台 は活 躍 で き る限界 」 とい うイ メー ジ
き る こ とが 多 い こ とを意 味 して お り, 明 るい 材 料
に支 配 さ れ て い る部 分 も強 い で あ ろ う し, 個 人 差
で あ ろ う。 で は ど の よ う な こ と が 考 え られ る の
が 大 き い と言 う回 答 も多 か った こ とか ら, 年 齢 的
か。 例 え ば資 料 作 成 や伝 票 等 の書 類 作 成 を他 者 に
限 界 と い う考 え方 は強 調 す べ き で は な い だ ろ う。
代 行 して も らえ れ ば, そ の分 研 究 時 間 が確 保 で き
「40歳 に な る と限 界 が 来 る」 と い う考 え 方 が 広 く
よ う。 研 究 者 へ の ヒア リ ング に よれ ば, そ の よ う
流 布 し, 自己成 就 的 予 言 と して 本 当 に研 究 者 を そ
な 雑 務 に費 や され る時 間 も無 視 で き な い の で あ
の気 に させ て しま って は問題 で あ る。
な除 去 が望 ま れ る。 研 究 者 の能 力 低 下 を抑 制 す る
る。 もち ろん これ らの雑 務 もあ る程 度 の 知 識 が な
け れ ば 出来 な い仕 事 で あ る と考 え られ, 研 究 補 助
2)限
界 を もた らす 外 部 的 要 因 の除 去 を
限 界 は いず れ 来 るか も しれ な いが , そ れ は加 齢
に と もな う身 体 機 能 の低 下 が 原 因 と言 うよ りは,
職 の充 実 が課 題 とな る。 応 用 や開 発 で は雑 務 を 阻
害 要 因 と して回 答 して い る割 合 が多 い が, 企 業 の
研 究 開 発 部 門 全 体 の問 題 と言 え よ う。
業 務 上 の 要 因 が 大 き い。 企 業 内 で ベ テ ラ ンとな れ
ば, た とえ研 究 者 と言 え ど も部 下 や 後 輩 が お り,
そ の指 導 に忙 殺 され るで あ ろ う し, 会議 そ の他 の
4)高
度 研 究 専 門職 の 確立 を
管 理 的業 務 が増 え て こよ う。 そ れ らが研 究 者 の本
・
一方 , 企 業 の研 究 開発 を リー ドで き る第一 線 級
の研 究 者 に対 して は, 管 理 業 務 を離 れ研 究 だ け に
来 の業 務 で あ る研 究 時 間 を減 ら し, 結 果 と して年
打 ち込 あ る環 境 を つ くる だ け で は な く, 経 営 幹 部
齢 的 限 界 に結 び付 け られ る。 年 齢 が 高 くな れ ば管
と同 等 か それ 以 上 の処 遇 を受 け られ, 選 ば れ た研
理 業 務 な どが 増 え , 研 究 に専 念 で き な くな り, 研
究 者 だ けが 就 任 で き る ス テ ー タ ス の高 い専 門 職 一
一
研 究 人 材 の キ ャ リアー
75
高 度 研 究 専 門 職 の 確 立 が 最 も望 ま しい。 高 度 研 究
専 門職 が 確立 され るで あ ろ う基 礎 研 究 部 門 の 研 究
参考文 献
者 は, 年 齢 的 限 界 を認 識 す る者 が 多 い。 しか し,
限 界 年 齢 は平 均 よ り高 い50歳
い。 また 研 究 者 全 体 の4割
台 と考 え る者 が 多
は年 齢 的 限 界 を 感 じて
い な い が , 彼 ら は 高 度 研 究 専 門 職 指 向 も強 くモ
ラー ル は 高 い。 高度 研 究 専 門職 に な り う る者 は多
くお り, 専 門職 確 立 の素 地 は整 って い る と言 え よ
う。 日本 企 業 が以 前 , 高 齢化 対 策 の一 環 と して導
入 し失 敗 した処 遇 的専 門職 の道 を歩 ま な け れ ば,
真 の専 門職 制 度 が確 立 で き る と考 え られ る。
国 内海 外 と もに製 造 業 の企 業 間競 争 が激 しい現
在 , そ の優 劣 を決 定 す る戦 略 要 因 は研 究 開 発 力 で
あ る。 一 刻 も早 い体 制 整 備 が わが 国 企 業 に求 あ ら
れ て い るが , 人 材 が 鍵 で あ る こ と を考 え れ ば, 高
度 研 究 専 門 職 確 立 な ど研 究 者 を対 象 と した新 次 元
の 人 的 資 源 管 理 が 求 め られ て い る ので あ る。
明 石 芳 彦 ・植 田浩 史 編(1995)「
日本企 業 の 研 究 開 発 シ
ステ ム」 東 京 大 学 出 版 会.
伊藤 実 「
技 術 革 新 と 日本型 研 究 開 発 シ ス テ ム」(「 日
本 労 働 研 究 雑誌 」1992年9月
研 究機 構)
今野浩一 郎
,No.393,
日本 労 働
「
技 術 者 の キ ャ リア」(小 池 和 男 編(1991)
「大 卒 ホ ワ イ トカ ラ ー の 人 材 開 発 」 東 洋 経 済 新 報
社.)
財 団 法 人 日本 生 産 性 本 部(1985)「
研 究 ・開発 技術 者 の
処 遇 に 関 す る調 査 報 告 」
財 団 法人 日本生 産 性 本 部(1990)「
本 の技 術 者 」
ドイ ッ の技 術 者 ・日
財 団 法 人 日本 生 産 性 本 部(1991)「
ア メ リカ の技 術 者 ・
日本 の技 術 者 」
「
別 冊 宝 島一 研 究 す る人 生一 」1991年7月
,No.137,
JICC出 版 局.
松 原 治 郎 ・松 山美 保 子 編(1977)「
企 業 の 中高 年 危 機 」
日本 経 済 新 聞 社.
労 働 省 職 業 安 定 局 編 著(1991)「
長 寿社 会雇 用 ビジ ョ
ン」 労 務 行 政 研 究 所.