卸薬業H28.4月号

卸DI実例集
第392回
Question No.1652
られている。2)
アザチオプリンと相互作用のあるアロプリ
ノールが併用される理由について教えてくだ
さい。 (2015年12月)
骨髄抑制などの副作用が増強するおそれがある。
その反面、AZAとアロプリノールの併用療法は、
このため、両薬剤の併用は併用注意となっており、
添付文書には「併用する場合は、AZAの量を1/ 4
Answer
∼1/ 3に減量すること。」と記載されている。3),4)
潰瘍性大腸炎における難治例には、適正なステ
なお、同じXO阻害薬であるフェブキソスタット及
ロイド使用にも関わらず効果が不十分なステロイ
びトピロキソスタットとAZAとの併用は禁忌であ
ド抵抗例と、ステロイド投与中は安定しているが
る。3),4),5),6)これらの薬剤は、XO阻害作用を有
ステロイドの減量に伴い再燃増悪するステロイド
するためアロプリノールと同様の可能性が考えら
依存例等が存在する。潰瘍性大腸炎治療指針にお
れること、AZAの具体的な減量の目安は不明であ
いて、ステロイド依存例には「通常、免疫調節薬で
ることから併用禁忌となっている。7),8)
あるアザチオプリン(AZA)50∼100 mg/日または
6-メルカプトプリン(6-MP)30∼50 mg/日を併用
図.アザチオプリンの代謝経路(模式図)
6-メチル-メルカプトプリン
(6-MMP)
する。これらの効果発現は比較的緩徐で、1∼3
か月を要することがある。」と記載されている。1)し
かし、ステロイド依存例の中にはAZAを使用して
もなお効果が現れない方、腎機能が悪い方、AZA
アザチオプリン
(AZA)
6-メルカプトプリン
(6-MP)
キサンチン
オキシダーゼ(XO)
を増量することができない方などAZAの使用が懸
念される症例が存在する。
XO阻害薬
(アロプリノールなど)
このような懸念を払拭する方法の1つに、AZA
ロプリノールの併用療法がある。AZAは、右図の
6-チオグアニン
ヌクレオチド
(6-TGN)
とおり生体内で抗悪性腫瘍薬である6-MPに変換
主活性代謝物
とキサンチンオキシダーゼ(XO)阻害薬であるア
され、核酸合成を阻害することにより免疫抑制作
用をあらわす。さらに、細胞内に取り込まれた6
【参考資料】
1)潰瘍性大腸炎治療指針(2015年3月改訂)
-MPは代謝が進むと最終的に6-チオグアニンヌク
2)Prog.Med.31:2371∼2375,2011
レ オ チ ド( 6-TGN)と な る。 こ の 6-TGNはDNA
各社添付文書
に取り込まれて細胞障害作用を発揮すると考えら
れている。3),4) 一方、アロプリノールはXO阻害
作用を有する高尿酸血症の標準的な治療薬である
が、もともとは、XOによる6-MPの急速な不活化を
抑制しようとする試みから開発された薬剤である。
AZAとアロプリノールを併用すると6-MPの代謝
酵素であるXOが阻害され、6-MPの血中濃度が上
昇することでAZAの作用が増強する。XO阻害薬
を併用することで少ない投与量のAZAで効果が期
待できるとの報告があり、AZAの使用が懸念され
る症例には選択肢の1つとして有用であると考え
Vol.40 NO.4 (2016)
18 (234)
6-チオ尿酸
(6-TU)
3)アザニン®錠
4)イムラン®錠
5)フェブリク®錠
6)ウリアデック®錠
各社インタビューフォーム
7)フェブリク®錠
8)ウリアデック®錠
〈執筆協力会社〉㈱アスティス 医薬情報室
るのに適しています。
Question No.1653
一方、生理食塩液は、血漿中の電解質の陽イオ
等張液である、
『5%ブドウ糖液』と『生理食
塩液』
の薬理作用からみた違いは何か。また、
各メーカーからこの製剤が数多く販売されて
いるが、包装規格単位及び容器の形態・材質
(略号)の一覧が欲しい。 (2016年1月)
ンをすべてNa+に、陰イオンをすべてCl−に置き換
えたもので、この液500mL 1本を投与すると、約
77mEq/LのNa+(食塩4.5g)が供給されることにな
ります。また、血管内に投与された生理食塩液は
細胞外液に分布しますが細胞内外に浸透圧差が生
Answer
じることがないので、細胞外から細胞内へと水分
が移動することもありません。
血漿の浸透圧とほぼ等張にするため、5%ブド
そのため細胞外液に水分と電解質を補給したい
ウ糖液には水に5%のブドウ糖(C6H12O6)が、生理
+
−
食塩液には水に0.9%(154mEq/L)のNa とCl が
場合や、出血、ショック、熱傷、手術などのとき
それぞれ添加されています。
に細胞外液を補給するために選択されるほか、大
量嘔吐や糖尿病性昏睡の脱水補正を目的に投与さ
まず、5%ブドウ糖液は、ブドウ糖を配合して
れることもあります。
等張にしていますが、ブドウ糖は血液に入るとす
ぐに代謝され、エネルギーとなって自由水となる
しかしながら、まれに生理食塩液に含まれるNa+
水と、二酸化炭素になり、結果として低張液を投
とCl−によって電解質バランスが変化し、高クロー
与したことになります。これらの過程を経て血管
ル血症、代謝性アシドーシスが引き起こされること
内から細胞外に分配された水は、細胞外液の浸透
があるので注意が必要です。
以上のとおり、2つの輸液製剤の基本的な違い
圧が下がることで、細胞内液へと移動します。そ
して、体液の分布比率に準じて、細胞内に2/ 3、
は、Na濃度と分布する場所が細胞内か細胞外かの
細胞外に1/ 3の割合で分布しますので、5%ブ
違いといえます。
なお、関連商品等一覧は、次のとおりです。
ドウ糖液は、単純に細胞内と細胞外に水を補充す
【生理食塩液】
包装/規格・単位
商品名(メーカー)
⃝局方品 ○後発品
○生理食塩液「フソー」
○生食液「小林」
○生理食塩液「NP」
5mL
10/管
(扶桑=アルフレッサ)
50/管
(共和クリティケア) 50/管
(ニプロ) 50/管
(日新-山形=日本ジェネリック) 50/PA
○生食液NS
○生食注20mL「ウジ」
○生食注「トーワ」
○生理食塩液SN
○生食注20mL「CMX」
○生食注20mL「Hp」
○生食注20mL「TX」
○生食注100mL「CHM」
(日新-山形=共和クリティケア)
(日新-山形=富士フイルム) 50/PA
(日新-山形=ファイザー)
(共和)
(東和)
(シオノ)
(ケミックス=日医工)
(原沢)
(トライックス)
(ケミックス)
10mL
20mL
50mL 100mL 200mL 250mL 500mL
50/管
50/PA
50/PA
50/WPA
50/PA
50/WPA
50/PA
50/PA
60/PA
50/管
50/PA
60/PA
60/PA
60/PA
20/袋
50/PA
10/PB
10/PB
○生理食塩液PL「フソー」
(扶桑)
10/PA
50/PA
100/PA
10/PB
10/PB
20/
○生理食塩液バッグ「フソー」
(扶桑)
○生理食塩液「マイラン」
○生理食塩液「ヒカリ」
100/PA
100/PA
(光)
50/PA
(ケミックス=日医工)
(テルモ)
30/PB
20/袋
20/PB
20/袋
(マイラン=ファイザー)
(マイラン=沢井)
(光=共和クリティケア)
○生食液500mL「CMX」
○テルモ生食
1.3L
1.5L
2L
20/袋
10/PB
(大塚製薬工場)
○大塚生食注
1L
10/PB
20/PB
10/PB
10/PB
20/袋
10/PB
10/PB
30/袋
20/袋
20/細口
20/広口
20/袋
20/PB
20/
20/
20/袋
24/AL
20/PB
20/PB
20/細口
20/袋
20/広口
20/細口
20/広口
20/広口
20/袋
10/細口
10/広口
10/袋
10/
5/袋
10/袋
10/AL
5/袋
5/AL
10/細口
10/広口
10/袋
10/袋
8/袋
Vol.40 NO.4 (2016)
19 (235)
包装/規格・単位
商品名(メーカー)
○局方品 ○後発品
5mL
10mL
20mL
50mL 100mL 200mL 250mL 500mL
(川澄)
(川澄)
(川澄=テルモ)
○カーミパック生理食塩液
○カーミパック生理食塩液L
○生食注シリンジ「オーツカ」
○生食注シリンジ「テバ」
○生食注シリンジ「SN」
○生食注シリンジ「NP」
○生食注シリンジ「テルモ」
○大塚生食注2ポート
○大塚生食注TN
○生食注キット「フソー」
○生食溶解液キットH
○テルモ生食TK
20/袋
10/筒中口 10/筒中口
10/筒横口
(大塚製薬工場) 50/筒中口 50/筒中口
10/筒ロック
10/筒ロック 10/筒ロック
(テバ) 10/筒
10/筒
10/筒
(シオノ=光) 10/筒
10/筒
10/筒
10/筒中口 10/筒横口
10/筒中口
10/筒横口 50/筒横口
(ニプロ)
10/筒ロック
10/筒ロック 10/筒ロック
10/筒中口 10/筒中口
(テルモ)
10/筒ロック 10/筒ロック
(大塚製薬工場)
10/キット
(大塚製薬工場)
10/キット
(扶桑)
10/キット
(ニプロ=光)
10/キット
(テルモ)
1L
1.3L
1.5L
5/袋
5/袋
5/袋
2L
10/袋
10/キット
10/キット
10/キット
10/キット
20/キット
管:ガラス製アンプル PA:プラスチックアンプル PB:プラスチックボトル WPA:ワイドオープンポリエチレンアンプル
AL(エアレス):透析器の洗浄などに使用する袋タイプ(エアを少なくしてある) :開栓用ダブル :開栓用シングル
【5%ブドウ糖液】
分類
20mL
50mL
包装/規格・単位
100mL
200mL
(大塚製薬工場)
50/PA
10/PB
10/PB
(第一三共)
(光=共和クリティケア)
50/管
(光)
50/PA
(扶桑)
10/PA
50/PA
商品名(メーカー)
○大塚糖液5%
○糖液注5%「第一三共」
○光糖液5%
○ブドウ糖注5%PL「フソー」
5%
250mL
20/袋
30/PB
500mL
20/袋
10/PB
10/PB
10/PB
10/PB
(扶桑)
(テルモ)
(ニプロ)
ブドウ糖注射液5%「マイラン」
(マイラン=ファイザー) 100/PA
(日新-山形=共和クリティケア=ファイザー
50/PA
○5%ブドウ糖注射液「ニッシン」
=日本ジェネリック=富士フイルム)
(共和クリティケア)
○小林糖液5%
(大塚製薬工場)
10/キット
○大塚糖液5%2ポート
大塚糖液5%TN
(大塚製薬工場)
10/キット
(テルモ)
○テルモ糖注TK
(ニプロ=光)
○5%糖液キットH
(ニプロ)
10/キット
10/筒横口
(ニプロ)
○ブドウ糖注5%シリンジ「NP」
10/筒ロック
ブドウ糖
○ブドウ糖注5%バッグ「フソー」
○テルモ糖注5%
○ブドウ糖注5%「NP」
20/袋
20/PB
20/PB
20/袋
20/袋
20/袋
20/PB
30/袋
20/袋
20/PB
20/袋
20/袋
20/袋
20/PB
20/PB
キット
10/キット
10/キット
20/キット
10/キット
10/キット
管:ガラス製アンプル PA:プラスチックアンプル PB:プラスチックボトル
【容器の形態と略号】
管
PA
WPA
PB
ガラス製アンプル
プラスチック製、
ポリエチレン製のアンプル
ワイドオープン ポリエチレン製
アンプル
プラスチック製、
ポリエチレン製のボトル
袋
細口
広口
プラスチック製、ポリエチレン製のバッグ
細口開栓
広口開栓
Vol.40 NO.4 (2016)
20 (236)
筒
シリンジ
開栓用ダブル
開栓用シングル
キット
大塚生食注TN
テルモ生食TK
大塚生食注2ポート
生食溶解液キットH
生食注キット「フソー」
[参考文献]
・各社添付文書
・大塚製薬工場ホームページ輸液・栄養読本
〈執筆協力会社〉㈱アスティス 医薬情報室
Vol.40 NO.4 (2016)
21 (237)