2016年5月号発行(PDF形式)

『白藤』
撮影者:冨士久美子
こんな本あるでないで ︵その
︶
波がレースのようにふちどり、行く
手の水平線はかすかに光をはなって
いる﹂
数学科では、ある程度知られてい
る、 い わ ゆ る 卒 業 論 文︵ 卒 業 研 究 ︶
を出さなくても良いことを卒業間近
に知るなどは、数学の学生が世間ず
れしていても頓馬であり、文学系の
∼
﹃左京区七夕通東入ル﹄ 瀧羽麻子・著∼
の若々しい、かなり世間の動きから
ず れ て い る 学 生 生 活 が 微 笑 ま し い。
﹃左京区七夕通東入ル﹄の事から想
像すると、おそらくは京都大学の理
生の質の高さもうかがわれる。
それにしても、こんなに素晴らし
い大学生活は多くの学生には夢の又
題名がユニークな本であり、京都
を 舞 台 と し て い る こ と は 明 ら か だ。
数学科の学生が出てくると言うので
手に取ったのであるが、理系の学生
学部や工学部がモデルだろう。それ
ゆえ、どこかでハイレベルの学生生
活風景である。
学生寮と言う、今風でないところ
に隔離されたような時代遅れの理系
学生に、文学部の花と言う学生が加
わり、変人に位置するような数学専
夢だろう。京都と言う街のもつ温か
さと、学部から研究の雰囲気のある
大学でこそ味わえるものだ。
続編﹃左京区恋月橋渡ル﹄は、時
代遅れの寮に住む不器用な院生の応
援したくなる恋物語。恋が実らず苦
しむ寮生に寮長がしんみりと話すと
徳島科学史研究会会員
三原茂雄︵広島︶
学生の驚きの表現だろう。また、学
部生が先生の学会に付いて行くの
も、そこらの大学生にはレベルが合
わず、お呼びでないと思われる。学
攻の学生が、更に変人奇人として描
かれている。色気のない愛すべき善
人の城の学生寮が愉快に、それでい
て貧乏くさくなく、底抜けに明るい
のである。実験や実習にこせこせし
ながら、悠然とした学生生活は羨ま
しい。
ころはさすが寮長である。物語すべ
てにおいて、善人ばかりで学生たち
が温かく守られている。理科系の学
生への応援物語だ。
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卒業旅行で京都から車で高知の学
会に行く場面で少し徳島の風景の描
写 が あ る。﹁ 明 石 海 峡 大 橋 を 渡 り、
淡路島を走り抜ける。曇ってはいる
ものの、靄の向こうに浮かび上がる
島影が美しかった。グレーの海面を
『左京区七夕通東入ル』
瀧羽麻子・著
(小学館文庫)
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松茂町広島字北ハリ25-1
TEL・FAX 088-699-8778
営業時間:9時∼19時
定休日:月曜、
第2・3火曜
3
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ファンファーレ
絵手紙作品展
ギャラリーカフェ
ファンファーレ
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◎ファンファーレ
絵手紙作品展
期間…5/1㈰∼5/31㈫
作品…絵手紙 50点展示
9:00∼17:00まで
水曜日定休
〒 771-0219 徳島県板野郡松茂町笹木野字八山開拓 214-9
TEL
088-699-2406 水曜定休
クーポン掲載のお問い合わせは徳島新聞松茂専売所 699-3217 まで