循環器内科 宮崎 晋一郎 総論 胸が圧迫される。押さえつけられる。 詰まる感じ。締め付けられる感じ。 鋭い、刺すような痛み。うずくような痛み。 胸焼けのような感じ。 肩が痛い(片方/両方)、放散痛。 歯が痛い。のどが痛い。胃が痛い。 冷汗を伴う。 嘔気・嘔吐がある。 体位により変化する。圧痛がある。呼吸により変わる。 呼吸が苦しい。 ニトロペンが数分以内によく効く。 心筋虚血を強く疑う 心筋虚血を否定はできない ERでまず最初に行うこと ①心電図 ②問診 ③身体所見 (④心エコー検査) これらを来院後、数分以内に施行し 重症であるかどうかを判断。 次の検査に向かう。 次に行うこと Ⅰ, 血液検査 Ⅱ, 胸部X線写真 Ⅲ, 胸腹部CT(単純±造影) 迅速に要領よく 急性心筋梗塞 心筋逸脱酵素 WBC(>1h)、GOT(>4h)、LDH(>6h) CK(>4h) トロポニンT(>3h) 腎不全、心不全でも上昇 H-FABP(>2h) そのほかの疾患 ・肺塞栓: D-dimer ・胆石、胆嚢炎: ALP, γGTP, WBC, CRP ・急性膵炎: 血清アミラーゼ 体内分布 ・骨格筋:ほぼMM型 ・心臓:MM型80%、MB型20% ・大脳:ほぼBB型 ・その他(消化管、腎臓、肺、前立腺、子宮) 正常人での血液内への逸脱 主体は骨格筋から MB7~10%以上であれば MM型:95% 心筋由来の可能性が高い MB型:5% 骨格筋疾患 ・直接障害:運動、筋肉注射、手術後、外傷など ・筋ジストロフィー ・甲状腺機能低下症 ・その他:皮膚筋炎、多発性筋炎、重症筋無力症 心筋疾患:心筋梗塞、心筋症(タコツボなど)、心筋炎、 心臓手術、心臓マッサージ後 中枢神経疾患:頭部外傷時 悪性腫瘍:胃癌、大腸癌、肺癌、前立腺癌 トロポニンT(TnT) <特徴> 心筋特異度が高い。 CK上昇しない程度の微小心筋障害も確実に検出される。 発症の超急性期には上昇していないことが多い(>3H)。 TnT陽性かどうかではなく値を確認しよう! 当院の cutoff値 各論 実際、私が何を想定して対応しているか? どういう手順で確定診断に近づけているか? ①急性冠症候群 (心筋梗塞、不安定狭心症) ②急性大動脈解離 ③急性肺塞栓症 68歳 男性 前胸部絞扼感 RCA ③ 100% 血栓閉塞 PCIにて再灌流 ST低下をみたら、必ずその対側誘導をみよう!! ST上昇の鏡面像をみてるかもしれない ACS (非ST上昇型) 次にすることは? 心エコー検査 (ポータブル、ベットサイド) 傍胸骨左室長軸像 短軸像乳頭筋レベル 短軸像腱索レベル 短軸像心尖部レベル 心エコー検査 (ポータブル、ベットサイド) 心尖部四腔像 心尖部長軸像 心尖部二腔像 左回旋枝99%狭窄 左回旋枝の病変では心電図変化が乏しいことも多い 異常所見が胸痛のみで他に全く異常がない(心電図、心 筋逸脱酵素、心エコー)ことも多く経験します。 ポイント ①以前の心電図と比較すること。 ②症状の性状をもう一回再度詳細に聞くこと。 四国の人は「せこい」と表現することもある。 →詳細な問診をすること。 ③時間をおいてもう1回、採血と心電図をとること。 ④左回旋枝の場合、心電図変化が乏しいことも多い 心筋梗塞? 冠動脈 脳虚血 上肢 3~7% 3~7% 2~15% 心タンポナーデ? 約半数で血圧の左右差 腸管虚血 2~7% 腎不全 7% 下肢虚血 7~18% 脳梗塞? 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン2011 頚動脈エコー 迅速な診断が極めて重要 緊急手術 Stanford Debakey 内科的治療 A Ⅰ B Ⅱ Ⅲa Ⅲb 偽腔開存型 緊急性高い 偽腔閉塞型 心嚢液貯留・上行大動脈の拡大 内膜フラップ 胸腹部CT 単純CT 造影CT 偽腔 内膜フラップ 偽腔内も造影され血流を確認 単純CT 造影CT 偽腔閉塞型なら単純CTでもわかる可能性高い。 胸痛・背部痛は単純CTをとりましょう! でも現実は悩ましい症例もあるし、診断を間違えることはあります・・・ 68歳 女性 主訴:前胸部痛 <現病歴> 高血圧にて近医通院中であった。某日、夕方突然の前胸部痛 が出現。症状持続し、当院へ救急搬送された。 <家族歴> 母:心筋梗塞、弟:大動脈解離 <現症> 身長157cm, 体重90kg, BMI 36.1 胸部:心音 清 呼吸音 正常 腹部:軟、平坦、圧痛なし 下腿浮腫あり 心電図 緊急冠動脈造影 単純CT 石灰化が内側に偏位 造影CT 心電図で心筋虚血の所見を認めた場合どうするか? ACSと判断して、ヘパリン投与や緊急冠動脈造影はし てはならない。解離の可能性がないか常に疑い、単純 CTをとりましょう。 突然の激烈な胸痛。痛みは最初が一番強く、その後ジ ワーッと長く続く。 解離の部位、範囲によって多彩な合併症を引き起こす。 ・心臓では心タンポナーデ、大動脈弁逆流症、心筋梗塞 ・他の臓器虚血(脳、上肢、下肢、脊髄、腹腔内臓器、腎) 10%は胸痛を伴わず、多臓器障害が主症状となることも ある。 心電図は解離が冠動脈に及んで心筋虚血にならなけ れば変化をきたさない。 背部痛(胸痛も)から解離を疑うことが大切。 ベットサイドのエコーで上行大動脈の拡大やフラップ の所見を認めれば可能性が高まる。その他、ARや心 嚢液貯留など。 まずは単純CTをとりましょう!!! 重要な所見 ・前胸部誘導 (V1-4)のT波 陰転化 その他 ・右脚ブロック 右軸偏位 ・SⅠQⅢTⅢ 右室 左室 右房 左房 左室の圧排、扁平化 右室・右房の拡大 検査前確率をチェックする目的 68歳 女性 主訴: 呼吸困難 <現病歴> 前日の昼ごろから体動時に左前胸部痛を伴う呼吸困難が出現し ていた。翌朝も次第に増悪するために当院へWalk-Inで受診。 <既往歴> 高血圧、高脂血症、うつ病、右下肢静脈瘤手術歴 <家族歴> 特記事項なし <現症> Height 156cm, Body weight 72.3kg, BMI 29.7 BP112/70mmHg, HR 100bpm, SpO2 80%(RA), RR 30 胸部:心音 整、雑音なし、 呼吸音 ラ音なし 腹部:軟、平坦、圧痛なし、 下腿浮腫 両側あり。 心電図 重要な所見 ・前胸部誘導(V1-5)のT波 陰転化 ・右軸偏位 ・SⅠQⅢTⅢ 心エコー検査 (ポータブル、ベットサイド) 造影CT 単純CT 初めの一般的な検査では異常が全くないこともあり、 症状から鑑別疾患に思い浮かべて積極的に疑うこと。 急性期に典型的な心電図変化を示すのはむしろ稀。 心エコーはすぐ施行できる最も有用な検査であり、特 徴的な所見(左室の扁平化)を覚えておく。 疑った場合は、直ちに造影CTにて確定診断をつける。 その間に血液ガスやD-dimerを測定しておく。 私が胸痛患者を見たときに 考えていること、していること 心電図 心エコー検査 (ポータブル、ベットサイド) ACS? 肺塞栓? 大動脈解離? 単純CT 造影CT 緊急カテ 緊急Ope 血栓溶解療法 問 診 ・ 聴 診 ・ 脈 拍 左 右 差 は 併 行 し て 本日のポイント 胸痛は迅速に要領よく・・・ 心電図・問診・心雑音・脈の左右差 をチェックしながら心エコーの準備 ベットサイドの心エコー 単純CT(±造影) とにかく現場に
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