「上場会社の不正開示と金商法上の責任~東芝の不適切会計事件等を題材に~」 ここ数年、上場会社(株式公開会社)による売上・利益の水増し等の不正会計・粉飾決算等といっ た虚偽の情報開示(不実開示)に関する事件が続発しており、重大な社会的な問題のひとつになって います。虚偽の情報開示(ディスクロージャー)は会社情報に対する社会の信頼を大きく裏切る不正 行為と言うことができます。そこで、このような問題は本連続講演会で取り上げるにふさわしい、 「企 業社会と法」というテーマを代表する現代的な課題となっているものと考えられます。 そうした不正事件は関係者の責任等について、広く会社法や金融商品取引法(旧・証券取引法)を 中心に法的な問題を惹起します。特に 2015 年(平成 27 年)には大手電機メーカー、「東芝」の不適 切会計事件・不祥事が発生し、会社自体とその役員等の両方の両面から、金融庁による課徴金・証券 取引所による制裁といった種々のペナルティーのほか、株主や投資者らから損害賠償を求める訴訟等 が多数提起され、その状況は周知のようにマスコミ等でも大きく報道されているところです。監査法 人等の責任も問題となりえます。 こうした不正な虚偽開示を理由とする金融商品取引法上の損害賠償訴訟に関しては、近年西武鉄道 事件・ライブドア事件・オリンパス事件等といった著名な判決が相当程度蓄積し、法律実務家や研究 者の間等でも活発な議論が展開され、そのなかで公正な証券市場のルールを定める金融商品取引法の 立法的・解釈論上の課題が明らかになってきています。そこで、本講演ではそうした事件と先例とな る訴訟等を題材として豊富に取り上げ、上場会社の民事責任・損害賠償責任の在り方(金融商品取引 法 21 条の2等)を中心として現状における法制度上の問題点を整理し、主要な課題を深く検討する ことにしたいと思います。 1
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