68草地貴幸②

和算問題の教材化
―塵劫記の開平術に関する問題―
岡山市立千種小学校
草地
貴幸
1 はじめに
和算とは、江戸の数学と言われるもので明治以降に導入された西洋数学以前の日本の数学のことであ
る。それは上方の町人たちを中心として実用の学として発生し、士族を中心とした江戸で発達をした後、
次第に実用から離れ、趣味・道楽などの芸事として発展し、
「遺題継承(1)」、
「算額奉納(2)」
、
「芸事として
の数学」という独自の文化を築いた。最終的には日本全国の庶民にまで広まったのである。この要因と
しては和算が知的な欲求を満たしたいという好奇心を喚起したことが推測される。現在でも鶴亀算や俵
杉算などが小学校算数の教科書にもトピック教材として取り上げられていたり、パズル感覚の問題が書
籍で紹介されていたりしているのは、児童の関心や意欲を高められるからに違いない。本稿では和算の
書籍として大ベストセラーとなった「塵劫記」
(吉田光由によって 1627 年に書かれたもの)の中から教
材化を試みた問題を紹介する。
<註>
(1)遺題継承とは、吉田光由が「新塵劫記」に解答をつけていない問題つまり遺題を出題したことから
始まった。以降、この遺題を解いた本を著し、自らもその本の巻末に遺題を残すという遺題継承の風
習が始まった。
(2)算額奉納とは、解いた数学の問題などを神社仏閣に額にして奉納することである。問題が解けたこ
とを神仏に感謝して掲げた場合もあれば、研究発表の場として掲げた場合もあるようである。
じんこうき
2 塵劫記に掲載されている開平法に関する問題について
(1)原文とその題意
引用:佐藤健一,(2006)
引用:佐藤健一,(2006)
(2)現代訳
引用:佐藤健一,(2006)
2
(3)教材化
この問題は平方数を求める問題であり、中学校 3 年生の数学の内容である。中学校においては 1 位数
や 2 位数程度の平方数を求める。その際、√2のような無理数も扱うが、χ2 に代入し計算することに
よって近似値を求める。和算では√やχ2 を扱うことなく、面積図を扱いながら直観的に理解しながら
四則計算のみで近似値を求めることができるので小学校でも扱うことが可能である。そこで、中学校数
学の素地として本教材を位置づけ、小学校算数の内容としての教材化を次のように図った。
①問題把握:面積が 15129 ㎡の正方形の土地がある(図 1)。一辺の長さはいくらか。
正方形の面積=一辺×一辺
χ×χ=15129
15129 ㎡
χm
一辺をχとすると
100×100=10000
200×200=40000 だから
10<χ<200
図1
②めあての設定:正方形の面積から一辺を求める方法を考えよう。
③平方数の求め方を考える。
・χ×χに代入して当てはまる数を探そうとしても、うまくいかないことから分かることから少しずつ
見つける方法として、次のような求め方を考える。
3m 20m
E
A
100m
H
D
b
a
b
a
b
2a+b
a
10000 ㎡
っふぁ
J
I
B
a
G
F
図2
図3
C
参考:小寺裕
図 2 のように ED=10 とすると四角形 ABCD=151.29 から四角形 EFGD=100 を除くと、L 字形
ABCGFE=51.29 となる。L 字形 ABCGFE の面積は図 3 のように長方形に変形することで、(2a+b)×
bで求めることができる。a=EF=10 なので、(2×10+b)×bとなる。これが 51.29 を超えないように
するためにはb=2となる。b=HE=2とすると、(2×10+2)×2=44 となる。
そうすると残りは 51.29-44=7.29 となるので、L 字形 ABCJIH=7.29 となるように b=AH の長さを
決めることになる。a=HI=12 なので、(2×12+b)×b=(24+b)×bが 7.29 となるようにする。b=
1では大きすぎるので、0.1 くらいから考えられる。24 に何を書けるとおよそ 7 になるのかを考えるこ
とで、b=0.3 を代入するようにする。(24+0.3)×0.3=7.29 となり、一辺は 10+2+0.3=12.3 と求まる。
3
(4)予想される児童の反応
・正方形の面積は一辺×一辺
100m
・50 ㎡だったら一辺は 5cm。
・100×100=10000 で、1000×1000=1000000 だから、一辺は 100 と 1000
の間になる。
10000 ㎡
・200×200=40000 だから、一辺は 100 と 200 の間にある。
・15129 ㎡の一の位が9だから、一辺の一の位は 3 になる。
・百何十何になることは分かるけど、百何十かが分からない。
200
残りは 15129-10000=5129
100
□
100m
100
□
200×□
200+□
10000 ㎡
・□が 30 だと 200×30=6000 になって越えるので、およそ 5000 になる
のは 200×20 かな。
200+20=220
200
100
20
20
400
残りは 5129-4400=729
20
100
200×20=4000
220×20=4400
100m
240+3=243
240
120
3
2000
10000 ㎡
3
120
9
240×3=720
223×3=729
400
2000
・240×3だと 720 でちょうどよさそう。
・3×3=9で合わせて 729 になる。
・100×100=10000、110×110=12100、120×120=14400、一の位が 9 なので一の位は 3 になるから、
123×123=15129
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5 引用・参考文献
小寺裕,(2010),『博学検定シリーズ 江戸の数学 和算』,技術評論社
佐藤健一,(2006),『『塵劫記』初版本―影印、現代文学、そして現代語訳―』,研成社
佐藤健一,(2008),『日本式数学「和算」でパズルを』,東京書籍株式会社
田村三郎,(2015),『今、なぜ和算なのか』,現代数学社
山川芳一,http://www.mk-s.net/~okuyama/sangaku.html
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