2157 コシダカホールディングス

(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
2157
コシダカホールディングス
~カラオケで首都圏攻勢とアジア展開を加速、カーブスは圧倒的存在へ~
2016 年 4 月 28 日
ジャスダック
ポイント
・カラオケで先行投資が続く。海外は韓国での展開が加速、シンガポールも日本のまねき
ねこ方式が人気を集めている。海外部門の赤字は、急ピッチで縮小している。国内では首
都圏への出店を強化している。この上期にはその影響が出ているが、競争力は確保でき、
2 年目から投資負担は軽くなるので、2017 年 8 月期からはカラオケの利益がかなり好転し
てこよう。カーブスは、会員が現在 72 万人であるが、100 万人まで拡大できそうである。
従来の見方よりパイはかなり大きくなりそうなので、引き続き業績を牽引しよう。また、
温浴はようやく黒字化し、いい方向にある。
・当社は、カラオケの店舗数でトップクラス、フィットネスの店舗数では日本ナンバーワ
ンである。2016 年 2 月末現在、カラオケ国内 433 店、海外 23 店、フィットネス 1647 店、
温浴 5 店を展開している。当社の事業発展の軸は「既存業種新業態」
、つまり、既存市場
での事業を、新業態の仕組みに変えていくことである。「総合余暇サービス提供企業」を
ビジョンに掲げ、アミューズメント、スポーツ・フィットネス、観光・行楽、趣味・教養
の 4 つを事業領域とし、その中で、
「既存業種新業態」を開発していく。将来は 1000 億円
企業を目指している。
・本業強化に軸足を置いている。市場の拡大という水平の軸、ハード・ソフトの革新とい
う垂直の軸で、カラオケにおける新しいビジネスモデルの確立を目指している。スマホを
活用して自分好みの動画や歌を編集して、カラオケ店で楽しむ「すきっと」
(SKIT:スマ
ート・カラオケ・インターネット・ターミナル)の稼働率が上がりつつある。韓国のカラ
オケは黒字化の目途が立った。今後 100 店を目指す。また、シンガポールに統括会社を設
立したが、2014 年 2 月に買収したシンガポールトップのカラオケチェーン「K BOX」(10
店)を活かして、アセアンの国々にも展開することになろう。
・08 年に買収したフィットネスの「カーブス」は、カラオケの利益率を大きく抜いている。
カラオケは 500 店、フィットネスは 2000 店以上へ拡大する方向である。経常利益 90 億円
は十分狙える体制を整えつつある。前期は業績の伸びが鈍ったが、今期は経常利益で 12%
増と、引き続きピーク利益を更新しよう。ROE は高く、独自のビジネスモデルで価値創造
を行うユニークな企業として高く評価できよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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目 次
1.特色
「既存業種新業態」の総合余暇サービス提供企業
2.強み
女性専用フィットネスが圧倒的キャッシュカウに成長
3.中期経営方針
4.当面の業績
5.企業評価
カラオケの技術革新と内外の市場開拓に先行投資
カーブスが牽引、カラオケの復調は来期から
首都圏攻勢と海外展開の加速に注目
企業レーティング A
株価(16 年 4 月 28 日) 2139 円
PBR 2.75 倍
ROE 17.2%
時価総額 411 億円(19.2 百万株)
PER
16.4 倍
配当利回り 1.4%
(百万円、円)
決算期
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
2008.8
13649
691
731
421
22.0
4.5
2009.8
18955
1496
1427
549
28.7
4.8
2010.8
21932
2503
2579
1125
58.6
10.9
2011.8
29093
3356
3336
2877
149.9
12.5
2012.8
33746
4077
4096
2279
119.3
17.5
2013.8
34515
4151
4237
3072
162.1
25.0
2014.8
37720
4276
4370
2423
127.9
27.5
2015.8
44257
4394
4492
2098
112.8
30.0
2016.8(予)
49600
5130
5020
2410
130.6
30.0
2017.8(予)
54000
5800
5900
3000
169.4
35.0
(16.2 ベース)
総資産 32157 百万円
純資産 13984 百万円
自己資本比率 41.7%
BPS 778.9 円
(注)ROE、PER、配当利回りは今期予想ベース 08.8 期までは単体、それ以降は連結。11.8
期末に 1:400、14.8 期末に 1:2 株式分割を実施。それ以前の EPS、配当は修正ベース。
担当アナリスト 鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下
方修正の可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:
相当の改善を要する、D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
「既存業種新業態」の総合余暇サービス提供企業
「既存業種新業態」を柱に、ビジネスモデルのイノベーションを実践
腰髙社長は、衣食住の次は余暇と考えた。当初はカラオケから入ったが、これは 1 つの
アイテムであり、フィットネスも 1 つのアイテムである。いずれも大衆的(ポピュラー)で
手軽である。この庶民的なものを新しい形で提供したい、というのが当社の基本戦略であ
る。当社の事業ドメイン(領域)は余暇。余暇市場はマクロの統計でみるとあまり伸びてい
ない。しかし、その中で、安・近・短志向は強まっている。安くて近くて短くという手軽
で身近なレジャーの集合体を攻めるべきターゲットとしている。
コシダカHDのビジネス領域
コシダカホールディングス
カラオケまねきねこ
(カラオケ)
カーブス
(女性専用フィットネス)
まねきの湯
(温浴)
・カラオケ店舗数でトップクラス
・国内カラオケ433店を500店に
拡大することを計画
・年40~50店へ出店を拡大、競
争力を確保し、首都圏へ出店
・すきっとコマンダーを独自開発
・居抜き出店に加え、建築出店
も本格化
・投資は1年半から2年半で回収
・郊外ロードサイドで圧倒的な安
さとサービスの良さが強み
・2011年には1人カラオケ「ワンカ
ラ」を開発し、知的所有権を取得
・韓国には13店ほど出店し、これ
から多店舗化を推進。アジア市
場への展開を目指し、シンガ
ポールでK BOX社(10店)を買収
・フィットネス店舗数でNo.1
・カーブスを1647店(うち直営53
店)展開し、圧倒的強み
・年90店ペースでFCを出店
・女性向け30分フィットネスで中
高年の客層を掴む
・カーブスの収益性はカラオケを
上回る
・カーブスジャパンのFCからの
収入は10~12%
・2008年にベンチャーリンクから
20億円でM&A、事業拡大に拍車
がかかる
・2011年1月にシュクラン(直営
19店)を買収
・会員72万人へプロテインも販
売
・2010年に高崎の日帰り温泉
の再生からスタート
・カラオケと同じ居抜きビジネ
スで、独自の接客マネジメント
を導入し、収益向上を図る
・大分に続いて、東京健康ラン
ド、郡山、福岡へと店舗展開。
2店を閉店して、現在5店。将
来は50店舗へ拡大することも
検討
・カラオケとのオペレ-ション
上のシナジー(相乗効果)が見
込める
・省エネへの対応に向け、東
京健康ランドでは温泉を掘っ
てサービスを本格化。黒字化
の目途が立つ
ここにイノベーション(革新的な仕組み)を持ち込もうとしている。これを社長は「既存
業種新業態」と呼んでいる。取り組む事業分野に目新しさはないが、そこでやろうとして
いることは、全く新しい仕組みでサービスを提供しようというものである。まねきねこや
カーブスはまさにその典型で、温浴もこうしたものにしようとしている。
既存業種新業態といっても、新しいことはすぐ真似されてしまうのではないか、という
見方もできる。腰髙社長は、どんなビジネスでもそのまま続けていれば時代に合わなくな
ってくる、と考えている。そこに新しい仕組み(イノベーション)を持ち込んでビジネス化
する。真似ができないようなもので先行し、後で真似されても、徹底的に考えて先行すれ
ば、結果的に真似できないものになる。カラオケまねきねこも、既存のカラオケ店を活用
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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するという仕組みであるが、誰も同じような水準まで真似できず、当社が圧倒的な低コス
トを実現している。
創業期の思い
コシダカホールディングス(HD)のグループ就業者数(8 時間換算)は、現在 3000 人に
達する。創業は 1967 年(昭和 42 年)で、当初は腰髙社長の父がラーメン店(上州ラーメン)
を営んでいた。その後、カラオケで実力を付け、2007 年(平成 19 年)にジャスダックに上場
した。08 年にカーブスジャパンを買収して、事業を一段と拡大してきた。
腰髙社長は東北大学を卒業後、父のラーメン店を手伝い、5 年間厨房に入っていた。30
歳の時に会社を立て直そうと考え、新規事業への参入を考えた。その時、2 つのことを考え
た。1 つは今の本業からかけ離れていない新規事業は何か。もう 1 つは生まれたばかりの新
しい業界のほうがよい、という点であった。そこで、カラオケボックスに行きついた。1 号
店を出したがなかなか客が来ないので、資金繰りには引き続き苦労した。
そこで商売の本質を学んだ。お客に喜んでもらうにはどうしたらよいか。それがなけれ
ば商売は長続きしない。そこで、どうやってお金を借りるかではなく、いかにお金をかけ
ないで商売をやるかを考え、それが居抜きビジネスへと繋がっていった。
1~3 号店までは自前で新規の店を作ったが、4 号店からは居抜きの展開に入った。実行
してみると資金効率がよい。すぐ回収できるので、これだと思った。うまくいったので、
30~40 店になった時に全国展開をしようと決断した。
全国展開にあたっては、事業部制をとった。人を先に送って、物件の選定を担当させた。
これによって、全国同時に居抜きを本格化させた。前のカラオケ店は経営がうまくいかな
かったのに、当社が入るとどうしてうまくいくのか。つぶれる店にはそれなりの理由があ
る。そのマイナス点を普通に直すだけで概ねうまくいく、と腰髙社長は表現する。
アクティブシニア層へのサービス展開
人々は歳を重ねても元気でいたい。若者には負けられないという気持ちを持っている。
健康であり続けるには、運動、コミュニケーション、家族、食事、ストレス発散、リラッ
クス、睡眠などが大事である。ここを市場にしていけば、マーケットは開拓できる。
カラオケでも中高年が増えている。フィットネスのカーブスはもともと中高年の女性が
多い。活動的なアクティブシニア層をどう開拓して、コミュニティ化していくかが焦点で、
今の時代に合った方向である。消費のボリュームは安・近・短にある。シニア層では過去
に経験した余暇活動にニーズがある。そのリバイバル需要を取り組むことを考えている。
中期的なテーマは、
「アクティブシニア層に合致する業態の作り込み」(腰髙社長)であ
る。健康カラオケ教室、カーブスのサプリメントなど、いかに健康を保つか、これをサポ
ートするビジネスモデル作りが注目される。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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アベノミクスの地方創生とクールジャパン
アベノミクスは地方創生に力を入れている。地方は高齢化と人口減少で厳しくなる。地
方に一定の需要はあるが、それを担う人手が足らない。従来と違って、単なるバラ撒き、
補助金ではなく、集約と退出を促進しようとしている。延命ではなく、企業として活性化
し、生き残っていく方策を支援しようという姿勢が強い。
この点を踏まえて、腰髙社長は、全国に展開するカーブスやカラオケの位置付けを再認
識している。カーブスはまさに高齢者の健康を保ち元気にする。カーブスの FC のオーナー
は地元の中小企業からも数多く参加している。彼らの収益機会となり、雇用も作り出して
いる。カラオケは社員独立による FC 化で、より地元密着を図ろうとしている。
もうひとつアベノミクスの成長戦略との関連では、クールジャパン(ポップカルチャー)
が注目される。カラオケのアジア展開に当って、ジャパンテイストを活かすことができる。
その意味で、韓国に次ぐアセアン地域への進出に向け、シンガポールに拠点を設置した。
先義後利が会社経営の基本
常に新しいサービスを作り出し、そこにおもてなしの心を込めていくことが、当社の基
本戦略である。会社のビジョンとしては、日本に留まることなく、アジアを始め全世界へ
展開していくことを挙げている。
経営の基本方針を定めるに当たって、先義後利という標語は、腰髙社長が行動基準に入
れたものの1つである。まず人の道として、顧客のニーズに合った価値提供が最優先であ
って、利は後から追い付いてくるという考え方である。
カラオケとフィットネスで基盤を確立、事業のドメイン(領域)は余暇
手軽さを差別化の核にして、圧倒的な強みを見せている。主力のカラオケは店舗の数で
シダックス(コード 4837)を抜き、日本でトップクラスとなった。第 2 の柱である女性専用
フィットネスのカーブス(スポーツクラブ)は、拠点数で圧倒的 No.1 である。
カラオケまねきねこは郊外を中心に展開しており、これまで都心ではあまり見かけなか
った。これはターゲット層と店舗コストを優先した事業の特色に由来する。フィットネス
のカーブスは、女性専用 30 分のサーキットトレーニングシステムを米国カーブス社から導
入したもので、このフランチャイズを 08 年に買収し、当社が全国に展開している。
現在はカラオケ(アミューズメント)とフィットネス(スポーツ)、温浴(アミューズメン
ト)の 3 つを事業の柱とする。成熟経済に入った日本において、健康で快適に余暇を楽しむ
ことは大きなテーマであり、潜在需要は大きい。また、成長期のアジアにおいても豊かさ
が増してくれば、余暇に対するニーズは当然高まってくる。余暇産業は通常、アミューズ
メント、スポーツ・フィットネス、観光・行楽、趣味・教養に分けられるが、当社はすで
にある程度出来上がっている市場をターゲット(攻める目標)にしている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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セグメント別業績
カラオケ
売上高
営業利益
同利益率
カーブス
売上高
営業利益
同利益率
ボウリング 売上高
営業利益
同利益率
温浴
売上高
営業利益
同利益率
不動産管理 売上高
営業利益
同利益率
合 計
売上高
営業利益
同利益率
2011.8
17389
2243
12.9
8431
1209
14.3
2898
-163
-5.6
174
-36
-20.7
579
296
51.2
29093
3356
11.5
2012.8
18543
2692
14.5
11320
1906
16.8
2961
-7
-0.3
695
-354
-60.0
589
284
48.4
33746
4077
12.0
2013.8
18725
2206
11.8
13860
2556
18.4
(百万円、%)
2014.8
2015.8
19854
23794
1580
1203
7.9
5.1
16028
18649
3282
3856
20.5
20.7
ー
1539
-317
-20.6
389
238
61.1
34515
4151
12.0
ー
1538
-239
-15.5
299
130
43.7
37720
4276
11.3
ー
1495
-89
-6.0
318
127
40.2
44257
4394
9.9
(注)利益率は売上高営業利益率、ーは無し
温浴への展開
カラオケにフィットネスが加わったことで、第 2 の成長期に入った。この 2 つだけでも
相当成長していけるが、2010 年に温浴とボウリングへ参入した。温浴は健康づくり、ボウ
リングは生涯スポーツと捉えた。腰髙社長は全く新規の成長分野を追いかけるのではなく、
カラオケやフィットネスのように当社の得意とするビジネスモデルが構築できるかどうか
という点から M&A を含めて事業化を練っている。
カラオケに次ぐ再生型のビジネスとして、温浴を立ち上げた。まねきの湯 1 号店「箕郷
温泉まねきの湯」
(高崎市)を 2010 年にスタートさせた。高崎駅から車で 30 分くらいの所
にある日帰り温泉を地元の不動産会社から運営受託した。全国に温浴施設は数多くあるの
で、ここに居抜きの経営ノウハウを持ち込もうという作戦である。
2011 年 11 月に大分で 3 店ほどオープンした。大分の 3 店は、らんぷの湯 2 店とまねきの
湯であった。2012 年 6 月には東京と郡山で、11 月に福岡にも開業し、全部で 7 店となった。
しかし、そのうちの 2 店は採算上、2014 年 11 月に閉店したので、現在は 5 店である。
一方、ボウリングは収益化に時間を要し、既存事業とのシナジーも思ったほど働かない
とみて、早々に撤退を決めた。この決断の速さも当社の特徴である。
ホールディング体制のもと本部機能を東京へ集結~監査等委員会設置会社に移行
2014 年 7 月、コシダカホールディングスの本部機能を浜松町の貿易センタービルに集結
した。管理機能の一体化が図られた。グループの経営会議もここを中心に行われる。当社
は、2010 年 9 月よりホールディング(HD)体制をとった。これに合わせて、本部機能の一部
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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を東京事務所として東京駅近くに置いていたが、カラオケのまねきねこは前橋、フィット
ネスのカーブスは田町、温浴は日本橋と分かれていた。これらを統括しマネジメントを担
うホールディングス(持株会社)の本部機能を集結した。2015 年 3 月から、グループの総
務、経理機能を担うコシダカビジネスサポートが独立の会社として活動を開始した。
現在は 3 つの事業を展開し、11 の子会社を有するが、その周辺にいろいろな事業の芽が
出つつある。会社の発展に伴って、人材の強化が一段と必要になっている。これに対して
は、幹部人材を逐次採用して強化している。現在のマネジメント層はほとんど外部からの
採用である。今後とも事業拡大に伴う人材に関して、社内で間に合わない時には適宜外部
から入れていくことになろう。
執行役員制度をカラオケのコシダカにも導入した。これまではコシダカホールディング
スだけで執行役員制度を入れていたが、マネジメントの強化に当って、カラオケ部門にも
導入した。
3 月に、不動産管理会社のコシダカファシリティーズと「すきっと」の開発を担当してい
るコシダカ IP マネジメントが合併し、コシダカプロダクツを設立した。キャッシュマネジ
メント上、一本化した方が管理しやすいという理由による。
昨年 11 月の株主総会で、監査等委員会設置会社に移行した。現在、監査等委員である取
締役は 3 名であるが、常勤も含めていずれも社外である。会計士、大学教授、証券会社出
身が社外取締役となり、監査等委員会のメンバーとなっている。
不動産管理では圧縮記帳の効果を活かしてシティホテルを購入
カラオケの新システム「すきっと」の開発には 10 億円を要したが、これに伴いソフトウ
ェア勘定が増加した。現在「すきっと」の導入が本格化したので、その機器が設備資産と
してバランスシートにのっており、減価償却も始まった。5 年で償却するので、年 2 億円ほ
どの費用が発生している。
また、2014 年 8 月期のバランスシートでは、シンガポールのカラオケの買収(15 億円)
と、不動産の購入による投資(17 億円)で固定資産が 50 億円ほど増えた。それを賄うため
に長期借入金が 27 億円ほど増加した。自己資本比率がやや下がったが問題はない。
不動産管理では、厚木のホテルに買い替え資産の特例で 17 億円ほど投資したが、負の繰
延税金資産が 4 億円ほどあるので、その分税負担が安くすむ。このホテルは年間売上高 3
億円、営業利益 1 億円という採算である。ホテル事業については、マネジメントは委託し、
当社は賃料をもらう不動産賃貸収入という位置付けである。厚木のビジネスホテルの賃料
は年間 1.2 億円であり、これが不動産収入に入っている。
池袋のボウリング場が入っていたビルの売却益については、新しい施設(有形固定資産)
を購入することによって、圧縮記帳ができる。そのために厚木のホテルを購入した。165 室
のシティホテル、17 億円の物件である。ホテルの稼働状況はよいので、利回りは十分確保
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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している。
投資額のうち売却益の 15 億円分を資産圧縮したので、投資リターンは向上した。
当社はホテル事業を本業にするつもりはないが、レジャーという領域の中で、高い投資リ
ターンが見込めるので十分意味はあろう。
連結バランスシート
2009.8
3717
2530
6797
4163
1283
229
流動資産
現金・預金
固定資産
有形固定資産
のれん
ソフトウェア
関係会社株式
資産合計
10514
流動負債
4598
1年以内長期借入金
1179
固定負債 3217
長期借入金
3104
社債
0
純資産
2699
有利子負債
4451
有利子負債比率
42.3
2010.8
5156
3607
6818
4412
981
179
2011.8
6910
4319
11544
8765
712
139
2012.8
7406
4333
12637
9647
409
220
11975
5179
1250
3044
2957
0
3751
4275
35.7
18454
7120
1377
4870
1858
2040
6464
5516
29.9
20043
7241
1264
4518
1947
1800
8283
5252
26.2
(百万円、%)
2013.8 2014.8 2015.8 2016.2
9544
9813
11448
11620
5891
5207
6187
5503
11103 16112
19214
20536
6783 10156
12323
13877
98
21
2082
1722
235
1110
1001
906
1720
28
28
20648 25926
30663
32157
7255
8378
10030
10270
1037
1826
2231
2671
2316
4352
6581
7903
1501
3403
5122
6473
0
0
0
0
11075 13195
14052
13984
2636
5230
7353
9145
12.8
20.2
24.0
28.4
(注)「すきっと」の開発費を2014.8期からソフトウェアに計上。関係会社株式はK BOX。
2.強み
女性専用フィットネスが圧倒的キャッシュカウに成長
(1)カラオケまねきねこは成熟市場で優位性を発揮
既存のカラオケ店を「居抜き」でまねきねこへ
カラオケは、売上高で業界 4 位であるが、店舗数では 2 位である。腰髙社長は 25 年前の
30 歳の時に、カラオケ 1 号店を出した。当時はカラオケボックス(今のカラオケ店のタイ
プ)が始まったばかりであったが、7 年間で 3 店出し、資金的にはそれが精一杯であった。
97 年に成長の原動力となった「居抜き」出店を初めて展開した。居抜きとは既存のカラオ
ケ店が商売を続けられなくなり売りたいという時に、その店を継承する。そのまま店を賃
借し、まねきねこの看板を掲げて活用する、というものである。
中小のカラオケ店が次々に行き詰る中で、それを全国的に手に入れ、その後の 10 年で一
気に 300 店にまで拡大してきたのである。16 年 2 月末で国内の店舗数は 433 店となったが、
大半の店はロードサイドにあり、駅前や繁華街はまだ少ない。現在首都圏への出店を強化
しているが、東京都内にはまだ 41 店舗(ワンカラ 8 店、ムーン・シンシア 6 店を含む)であ
る。その中で、
「リーズナブルで安心・安全な店」というまねきねこのブランドイメージを
確立しつつある。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
8
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IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
カラオケスタジオ業界
順位
会社名
カラオケ店名
1 第一興商
ビッグエコー
2 シダックス・コミュニティー シダックス
3 ビーアンドブィ
カラオケ館
4 コシダカホールディングス まねきねこ
5 ヴァリック
コート・ダジュール
6 シン・コーポレーション
カラオケバンバン
7 ニュートン
パセラ
8 ボナー
コロッケ倶楽部
9 鉄人化計画
カラオケの鉄人
10 ラウンドワン
ラウンドワン
(注)2014年度ベース、伸び率は前年度比
(出所)日経MJ 2015年11月11日号
(百万円、%)
売上高
伸び率
38203
13.5
36884
-11.9
29000
0.0
19854
6.0
17523
6.5
15805
14.3
10597
2.8
8827
1.3
8409
3.8
8265
1.2
カラオケ店でない商業施設にも「建築出店」
店舗の立地は全国に広がるが、なかでも関東、中部が多い。居抜き出店はこれからも続
けるが、一時ほどの勢いはない。そこで、次は既存の商業施設をカラオケ店に転換すると
いう形も本格化させた。これを「建築出店」と称している。建築出店は既存のカラオケ店
を活用するよりは内装にお金がかかるが、出店の場所を居抜きより自由に選ぶことができ
るというメリットがある。レストランなどの既存の店が売りに出されることは多いので、
それを活用してまねきねこのブランドが生きる有利な出店をする。1 人でカラオケを楽しむ
ワンカラも、この建築出店による本格的な都心進出となった。
カラオケ事業の主要指標
(店、百万円、%)
2006.8 2007.8 2008.8 2009.8 2010.8 2011.8 2012.8 2013.8 2014.8 2015.8
店舗数(国内)
193
229
277
294
309
315
323
338
366
412
(海外)
1
2
3
15
19
売上高
8799 11178 13483 15666 16495 17389 18543 18725 19854 23794
1店舗当たり売上高 45.6
48.9
48.7
53.3
53.4
55.2
57.4
54.9
53.7
55.2
粗利益
1821
2152 2339
3260
3776 3610 4778 4297 4254
4137
売上高粗利益率
20.7
19.3
17.3
20.8
22.9
20.8
25.8
22.9
21.4
17.4
(注)海外は韓国9店、シンガポール10店。シンガポールのK BOXは2015.8期より連結対象へ。
1人カラオケ(ワンカラ)を開発
1人カラオケのニーズは相当ある。かつて新宿の歌舞伎町に通常のカラオケ店を出店し
たが、昼間の 3 割は 1 人客であった。かき入れ時に 1 人で来られては困るが、1 人で楽しみ
たいというニーズはあるので、ワンカラを作ることにした。小スペースで、さらにヘッド
フォンを使うことによって、新感覚でカラオケを楽しむというスタイルである。
1 人カラオケの専門店として、2011 年 11 月に神田駅前に1号店をオープンした。楽しみ
方は、練習ではなく、1 人で気兼ねなく好きな歌を好きなだけ歌う。1 人でゆっくり歌うこ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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とが楽しいのである。
これは偶然当ったのではない。腰髙社長の発案で、カラオケのいろいろな楽しみ方を研
究し、提案すべしという方針の中で、社長自身がやりたいと思ったことである。本社の社
長室の隣に実験ルームを作って工夫を重ねてできたものである。
飲食の消費は多くないが、効率よくピットの使用料が稼げるので、従来のカラオケに比
べても採算は十分に見込める。当社のカラオケ店(まねきねこ)は都心には少なかったが、
これがうまく立ち上がってきたので、都心部での直営出店を本格化させた。
カラオケ関連の上場企業比較(関連4社)
社名
カラオケ店舗名
コード
市場
コシダカ
まねきねこ
シダックス
シダックス
第一興商
ビックエコー
鉄人化計画
カラオケの鉄人
2157
4837
7458
2404
JQ
JQ
東1
東2
業界順位
店舗数
売上高(14年度)(億円)
経常利益 (億円)
売上高経常利益率(%)
4位
412
443
45
10.1
2位
283
1744
2
0.1
1位
388
1331
211
15.8
9位
62
98
4
4.5
株価 (4/28)(円)
時価総額 (億円)
PBR (倍)
ROE (%) PER (倍)
配当利回り (%)
2139
411
2.75
17.2
16.4
1.4
501
205
1.14
3.0
4580
2640
2.37
12.0
19.8
2.4
422
28
1.30
14.6
8.7
2.4
(注)売上高、営業利益は全社ベース。業界順位はカラオケ部門の売上高ベース。
コシダカ、鉄人化計画は2015.8期ベース。
PBR、ROE、PER、配当利回りは直近予想ベース。
新規出店は 1 年半から 2 年半で投資回収
もともと本社のある前橋(群馬県)からスタートしているので、コストの高い都心ではな
く、地方郊外の居抜きをベースに経営ノウハウを蓄積してきた。典型的な形は、既存のカ
ラオケ店を利用する。まずそこの土地は借りて地代と保証金を払う。建物の改装やカラオ
ケ機械の入れ替えなど、しめて投資額は 2000 万円程度で済む。このようにして 17 ルーム
を持つ中小型のカラオケ店を再スタートし、年商 5000 万円は稼げる。そうすると店ベース
での営業利益として 20%は見込め、営業利益と減価償却を合わせたキャッシュ・フローで、
投資は 1 年半で回収できる、というのが基本モデルである。
もし新規に同じカラオケ店を作ったら、3 倍から 5 倍の投資がかかる。オープンまでの期
間も短く、通常の 6 ヵ月~1年に比べ、2 ヶ月程度で済む。前の店を知っている客は、料金
は安い、機械(カラオケマシーン)は新しい、内装は一新している、営業時間が延びた、社
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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IRアナリストレポート
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員の接客レベルが高い(スタッフ全員が入店から会計までを担当する)、ドリンクバーや持
ち込みシステムなど使い勝手がよい、などその差がはっきりわかるので、満足度が上がる
わけである。
建築出店になると投資コストは上がる。
改装に 5000 万円はかかるので、負担は増えるが、
それでも同業の大手よりは少ない。一方、ドミナント効果も考えて立地を選ぶので、集客
はこれまでよりやり易く、成功の可能性がより高まる。初年度は投資負担で居抜きよりも
苦しいが、営業利益率は 20%が見込め、投資回収は 2 年半でできると見込んでいる。
(2)女性専用フィットネスのカーブスが急成長
手軽な 30 分フィットネスで健康増進
カーブスではサーキットトレーニングを行う。筋トレマシーンを 12 台円形において、そ
れを 30 秒ずつ運動して、2 周まわる。週 2~3 回やっていると、筋肉に効果がある。有酸
素運動+筋力アップ+ストレッチという運動である。筋力をつけると基礎代謝が上がるの
で、身体の燃焼効率もアップする。いわば、女性専用の筋トレクラブといってよい。ダイ
エットが主目的ではなく、健康を維持して老化防止や病気にならないようにする。メンバ
ーの 80%が 50 代以上である。
スポーツ施設業界
(百万円、%)
順位
会社名
スポーツクラブ店名
売上高
伸び率
1
コナミスポーツ&ライフ
コナミスポーツ&ライフ
73300
-4.2
2
セントラルスポーツ
セントラルスポーツ
48647
5.7
3
ルネサンス
スポーツクラブルネサンス
42025
3.4
4
ティップス
ティップス
34517
4.8
5
スポーツクラブNAS
NAS
17430
11.7
6
コシダカホールディングス カーブス
16028
15.6
7
東急スポーツオアシス
東急スポーツオアシス
15343
3.5
8
メガロス
メガロス
14744
0.7
9
東祥
ホリデイスポーツクラブ
13498
10.2
10 オージースポーツ
コ・ス・パ
11992
-0.4
(注)2014年度ベース、伸び率は前年度比。カーブスの売上高はロイヤリティベース。
FCベースの売上高に換算すると業界2番手クラス。
(出所)日経MJ 2015年11月11日号
カーブスが日本でビジネスを開始する時から、当社はこのフランチャイズに参加してい
た。16 年 2 月末時点で全国に 1647 店、会員数 72.1 万人、1 店当たりの平均会員数は 437
人である。フィットネスの売上規模では業界 4 位だが、店舗数では断然トップである。
カーブスについて、当社の売上高は FC のロイヤリティベースである。72 万人の会員で月
額 6000 円の会費として、店舗ベースの年商は 500 億円を超えるので、この点でみると業界
でも 2 番手クラスに入る。
大手のフィットネス企業とは顧客ターゲットが異なり、棲み分けている。カラオケと同
じように関東、中部が多い。既存の大型フィットネスクラブとのバッティング(競合)はほ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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Independent Research Analyst Report
とんど感じられない。フィットネスに未経験の女性を新規に囲い込んでいる面が大きい。
無駄な贅肉を落として、必要な筋肉をつける。筋肉がつくとエネルギーの消費も効果的に
なる。その筋力強化をサポートするめに、プロテインをサプリメントとして活用している。
カーブスのFC権を買収後、独自の成長を実現
女性専用フィットネスのカーブス(Curves)は、米国のゲイリー・ヘヴィン氏が 1992 年に
創業したもので、世界 85 ヵ国で 5000 店(クラブ)を超えるフランチャイズチェーン(FC)を
展開するフィットネスチェーンである。日本では国内コンサルタント会社が FC 権を取得し
てカーブスジャパンを設立し事業を展開、当社はそのフランチャイズ店として参加してい
た。2006 年に当社のカーブス 1 号店を北海道にオープンし、北海道コシダカ(100%子会社)
がそれを担ってきた。その後コンサルタント会社の経営が厳しくなり、日本における FC の
元締めであるカーブスジャパンが売りに出された。カーブスジャパンの経営は順調で、と
くに問題があったわけではない。そこで、当社が 08 年 10 月に日本における FC 権を持つカ
ーブスジャパンを 20 億円で買収した。
腰髙社長は、カーブスについて日本進出前から知っており、当社に合う面白い事業だと
思っていた。コンサルタント会社が日本での権利を取得し、FC 店を募集するということを
知って、北海道での参加権(FC のエリアパートナー)をとった。FC として 8 店ほど経営して
いたので、カーブスのマネジメントについては充分実績を積んでいた。そこで売りに出た
時には価値をすぐに評価でき、対抗する企業もなかったので入れることができた。
カーブス事業の主要指標
2008.8 2009.8 2010.8 2011.8
店舗数
712
754
864
1038
総会員数(千人)
216
254
322
399
1店当たり会員数(人/店)
303
337
373
384
売上高
na
3288
5436
8431
粗利益
na
1545
2469
3434
売上高粗利益率
na
47.0
45.4
40.7
(注)2008.8期は合併前、2009.8期は合併後の9ヶ月分
(店、百万円、%)
2012.8 2013.8 2014.8 2015.8
1197
1339
1475
1602
503
586
641
711
420
438
435
444
11320 13860 16028
18649
4249
4999
5786
6451
37.5
36.1
36.1
34.6
既存のフィットネスとは違ったビジネスモデルで差別化
カーブスジャパンの経営陣は、増本会長兼 CEO、坂本社長はじめそのまま引き継いで事業
を継続している。カーブスジャパンには腰髙社長が取締役として入り、管理部門には人材
を送り強化したことで、経営の自主性は尊重しながら成果を上げている。全体のマネジメ
ントは、カーブスホールディングスを中間持株会社として作り、そこが担っている。その
下にカーブスジャパン(FC を統括)や直営のハイ・スタンダード(北海道コシダカとシュクラ
ンが 2014 年 9 月合併)がある。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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カーブスは既存のスポーツクラブとは全く違ったシステムで、従来とは違う顧客層を開
拓している。FC 店としてカーブスをオープンするには、オーナーはまず 2000 万円ほど用意
する必要がある。40 坪のスペースを借りて家賃を払い、内装に 400~500 万円、運動器具等
の初期投資に 600 万円、スタートしてから 2~3 か月の運転資金に 1000 万円といった具合
である。顧客会員の月額利用料は 6000 円程度で、300 人の会員で損益分岐点となり、それ
を超えると利益になる。立ち上げ期の店にとっては 300 人をどう集客するかが黒字化のポ
イントであるが、全店平均の会員数は 400 人を超えており、そのピッチも上がっている。
フィットネス関連の上場企業比較(関連4社)
社名
店舗名
コード
市場
コシダカ
カーブス
東祥
ホリデイ
セン トラ ルスポーツ
セントラル
ルネサンス
ルネサンス
2157
8920
4801
2378
JQ
東1
東1
東1
業界順位
店舗数
売上高(14年度)(億円)
経常利益 (億円)
売上高経常利益率(%)
6位
1602
443
45
10.1
9位
64
169
42
24.9
2位
190
509
25
5.0
3位
118
420
26
6.3
株価 (4/28)(円)
時価総額 (億円)
PBR (倍)
ROE (%) PER (倍)
配当利回り (%)
2139
411
2.75
17.2
16.4
1.4
3985
763
4.18
16.1
24.6
0.5
2303
264
1.48
9.0
16.6
1.7
1211
259
2.44
20.3
12.0
2.1
(注)売上高、営業利益は全社ベース。業界順位はフィットネス部門の売上ベース。
コシダカのフィットネスはFC加盟店ベース。
PBR、ROE、PER、配当利回りは直近予想ベース。
FCだけでなく直営店も経営
カーブスの直営店は、従来の北海道コシダカにシュクランを吸収合併し、社名をハイ・
スタンダートとした。シュクランを買収して 2 年が経ち、直営店としての経営の一体化が
特に問題なくできると判断した。現在の 51 店の直営店を有するが、今後は必要に応じて増
やしていく予定である。フランチャイズとのバランス、ドミナントの形成、カラオケとの
シナジー(相乗)効果などを考えている。ハイ・スタンダードはそのための拠点になる。
元来、カーブスの本部であるカーブスジャパンは自ら投資しなくてもフランチャイジー
を増やせば収益は上がる。しかし、FC 本部を経営するだけでは、フランチャイジーの経営
の実態を必ずしもつかめない。直営店の目的は、直接経営することで加盟店と常に同じ目
線で経営を展開し、加盟店を含めたカーブス事業全体の経営効率を上げることにある。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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3.中期経営方針
カラオケの技術革新と内外の市場開拓に先行投資
水平の軸と垂直の軸を追求
2014 年 7 月に本社機能を前橋から東京に移した。これによって。情報の集積が質・量共
に高まり、人材の採用も容易になった。腰髙社長は、カラオケの出店についても、首都圏
集中出店について自信を持ち、攻勢をかけている。
海外についてもフィリピンを視察して、将来性を実感したという。カラオケの海外出店
は加速して行こう。また、カーブスの海外展開についても可能性を探るべく戦略を練って
いくことになろう。
基本的方向は本業集中である。何よりもカラオケの市場拡大と収益性の向上に力を入れ
ている。カラオケの強化に当たって、腰髙社長は 2 つの軸を考えている。1 つは、アジア・
都心の市場開拓という水平の軸であり、もう 1 つはハード・ソフトの革新という垂直の軸
である。
水平の軸では、海外市場の開拓と国内市場における都心の攻めに力を入れる。ハード・
ソフトの垂直の軸では、画期的なカラオケ機器と接客サービスの向上に取り組んでいる。
カラオケの大量出店を開始、トップクラスの店舗体制を目指す
まねきねこ 40 店の出店を 1 つの目標としている。2013 年 8 月期の 3 倍ペースである。
2014
年 8 月期は 30 店、2015 年 8 月期は 32 店であった。この大量出店は、カラオケの体質転換
に目途が立ってきたからである。①「すきっと」の展開や、②社員独立による人材の活性
化も寄与している。これによって、店舗のスクラップ&ビルトにも力が入っていこう。
カラオケの出店は、まねきねこで建築出店と居抜き出店に加えて、M&A にも改めて力を入
れていく。中小チェーンの後継者難もあり、案件は恒常的にありそうだ。
店舗オペレーションの改善にも力を入れている。厨房レイアウトの標準モデル化や、製
造業における生産管理のような基本動作を具現化し、生産性を上げようとしている。
カラオケチェーン「ムーン」を買収
2015 年 2 月に相鉄ステーションリテールの子会社であるムーン社を取得した。カラオケ
事業を神奈川県で展開し、21 店を有していた。2014 年 3 月期の売上高が 1534 百万円、経
常利益 71 百万円であった。M&A による取得原価は 987 百万円であった。2015 年 4 月より当
社の連結に入った。これによって、カラオケ部門の前期の売上高は 6~7 億円、今期は 15
~16 億円が上乗せとなろう。ムーンについては、営業利益については 1~2 億円は出せるよ
うになるので問題ない。ムーンのブランドはそのまま使っていく方向で、まねきねこへ看
板を変えることは早急には考えていない。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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国内では首都圏を攻める~首都圏で 200 店は可能
まねきねこは、首都圏の駅前に後発で出店して、うまくいくのか。これに対して、適正
規模で出店し、まねきねこのよさを分かってもらうと、1 年後には収益性は上がってくると
いうパターンである。つまり、競争力が発揮できると自信を深めている。
首都圏へは 200 店は出せると腰髙社長はみている。首都圏へのまねきねこの出店は 2 月
末で 79 店となり、この上期で 16 店増加し、ピッチが上がっている。
カラオケの出店では、中央線沿線を攻めている。2016 年 8 月期は全体で 40 店の出店を計
画しているが、そのうち建築出店が 30 店で、これは首都圏を主力とする。10 店は居抜きで、
これは全国が対象である。一方で、閉店も 10 店を見込む。
首都圏への出店といっても、中央線沿線、国道 16 号線の内側といった具合で、山手線の
内側にはさほど入っていかない。立地コストをよく見極めて展開する方針である。
首都圏(1 都 3 県)でみると、2016 年 2 月末でまねきねこ 79 店、ワンカラ 9 店、ムーン
(シンシアを含む)21 店で、合計 109 店である。これは国内カラオケ店舗数全体の 25%を
占める。3 年前は 43 店(ワンカラやムーン無し)で全体の 14%であった。今後、この比率
がまねきねこを中心に上がっていこう。
カラオケの首都圏攻勢を決断した理由は、新宿歌舞伎町店の好調さにあった。それまで
当社は地方発ということもあり、コストの高い首都圏、とりわけ都心への出店は積極的で
はなかった。しかし、まねきねこが培ってきた“安心・安全、リーズナブル、フレンドリ
ー”という店舗運営が客にうけている。
競合があっても、まねきねこを利用しようという客が十分いることがわかってきた。都
心というと、ビックエコー、カラオケ館、シダックスが中心であるが、後発でもまねきね
こが入っていく余地はある。新たに+50 店(年商+100 億円)が作れれば、そのインパク
トは大きい。
首都圏におけるまねきねこの店舗数
2013.8
東京
神奈川
埼玉
千葉
合計
2014.8
6
6
17
13
42
7
7
22
13
49
2015.8
17
8
24
13
62
(店)
2016.2
27
9
28
15
79
(注)この他に、ワンカラ9店(東京8店、神奈川1店)、ムーン・シンシア21店
(神奈川13店、東京6店、埼玉2店)で、首都圏合計109店
ワンカラは収益化に目途が立つ~オンライン英会話にもトライ
ワンカラは不振店を閉めて、黒字化にこぎつけた。よい立地があれば蓄積したノウハウ
を活かして出店を再開する方向にある。
また、子会社イングリッシュアイランドを使って、2015 年 9 月からワンカラでオンライ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ン英会話のサービスを始めた。このオンライン英会話の会社は 2015 年 6 月に買収した。月
1 万円程度で、オンラインによる英会話の勉強ができる。自宅で PC を使って勉強してもよ
いが、ワンカラのルームならいくら声を出しても誰に聞かれることもないので、レッスン
を受けやすい。ワンカラの活用法、すきっとに載せられるコンテンツはないかといろいろ
工夫しているが、その中でこの案件が入ってきたので、実行することにした。
ワンカラは現在 10 店(東京 8 店、神奈川 1 店、仙台 1 店)ある。ワンカラはニーズがある
としても、立地によって向き不向きがあり、客数と家賃が採算を左右する。2014 年 8 月期
に 13 店まで増やしたが、2014 年 11 月に四谷三丁目店を、2015 年 1 月に新小岩店、2 月に
飯田橋店をまねきねこ業態へ変更した。新宿、神田、上野など好調に上手くいっていると
ころもあるので、これからは立地をよく見定めていく。
高校生向け“ZERO カラ”を開始、反応は良好
2015 年 9 月から“ZERO カラ”をスタートさせた。高校生の利用を促進するために、カラ
オケの室料を無料とする。ワンドリンクの料金のみで、好きなだけ歌える。業界全体でみ
ても、高校生のカラオケ利用率が下がっているので、若い人々の参加を促して、顧客に結
びつけようという作戦である。1 日当たりの高校生の利用率は全体の 1 割程度を占めており、
その効果は既存店にプラスとなっている。
ハラル対応の店舗もオープン
ワンカラから撤退した四谷三丁目も新小岩も飯田橋も、通常の「まねきねこ」のカラオ
ケ店に変更した。四谷三丁目は既にハラル対応のカラオケ店としてスタートさせ、ムスリ
ム系の人で賑わっている。店内の料理や飲み物に対して、ハラル認証を得ており、ラーメ
ンなども人気になっている。ハラル対応は、国内でムスリム系(イスラム教)に対応する
と同時に、シンガポールからマレーシアやインドネシアに展開する時にも 1 つの経験とし
て役立とう。
垂直の軸~自社開発のコマンダ
独自開発のカラオケ機器(コマンダ)、
「すきっと」システムはコンテンツホルダーからの
持ち込みが増えており、人気が出ている。弱虫ペダルを「すきっと」に入れたら大人気と
なった。アニメーションの展開など、コンテンツの使い易さをアピールしていくと差別化
ができる。
オリジナルの「すきっと」
(Smart Karaoke Internet Terminal)を開発、全店へ展開
「すきっと」については 2015 年 6 月に全カラオケ店に、スキットの機器だけのルームが
設置され、店内での普及が進んだ。
「すきっと」は、当社オリジナルのカラオケコマンダ(機
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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器)である。2013 年秋から当社のカラオケ店に導入を開始した。このコマンダ(機器)は小
型軽量で、スイッチも電源とログオフの 2 つのボタンしかついていない。リモコンはスマ
ホアプリなので、自分のスマホに「すきっと」のアプリをインストールすると、リモコン
として使用することができる。
PC かスマホで「すきっとねっと」をひらき、まずはそこの無料会員になる。無料会員は、
自分の動画を 300M(メガ)までは無料でアップロードできる。3M(メガ)の動画なら 100
曲は入るという容量である。それよりも大量に動画を保存しておき、自由に使いたい時は、
例えば月 500 円で 2.5G(ギガ)まで、月 800 円で 5G(ギガ)まで使える。
「すきっとねっと」で、マイコンテンツを登録していく。カラオケは 1.8 万曲用意され
ていて、新しいものも遂次入っていく。自分の持ち歌に、自分好みの背景映像をのせてい
く。自分だけの動画を利用する。
「すきっと」の7つの機能
~オリジナル動画や自作カラオケをアップして楽しめる~
・スマホがリモコンになる ・・・自分のスマホにすきっとのアプリをインストール
・自分の好きな動画を背景に歌える ・・・自分の動画を自由に入れられる
・お気に入りの曲を200曲登録 ・・・すきっとネットでマイコンテンツを登録していく
・自分の歌を録音してダウンロード ・・・自分の歌を記録できる
・自分の歌を録画して再生、公開 ・・・再生したり、投稿して、皆にアピールできる
・原曲に近いサウンドで採点 ・・・採点を楽しめる
・自分でカラオケが作れる ・・・自分の作品が作れる
ネットワーク化を狙う画期的な取り組み
「すきっと」は自社開発なので、改良をすぐに実行できる。これは、オリジナルコマン
ダを持つメリットである。今までカラオケの機械というと、第一興商(ダム)とエクシング
(ジョイサウンド)しかなかった。もっと楽しめるオリジナルな機器を作ろうと、2 年ほどか
けて開発した。開発に当たっては、富士通と連携した。
当社にとっては、カラオケの新しい楽しみ方を提供できる。しかも、新しいカラオケ機
器を自ら開発した。現在のコマンダは第一興商とエクシング(ブラザー工業の子会社)の 2
社が市場を寡占しており、機器の価格もかなり高い。これに対して、新しい楽しみ方を低
コストで実現することができる。コマンダについては、外部にアウトソーシングして作っ
てもらい、当社はファブレスである。ネット型の全く新しいイノベーションである。
既存のカラオケ機器と併存して、第 3 の機器として使われる。当社の独自のものなので、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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今のところ当店のみで利用して、外販する計画はない。この機器はアジアでも通用する可
能性が高いので、競争力を確保する鍵となろう。
実用新案など特許も取っているので、他社に先行して「すきっと」を自社店舗の差別化
に活かしていくかが決め手となる。このハードのコストは既存のカラオケ機械よりも相当
安いので、投資負担もいずれ軽くなってこよう。
「すきっと」の活用イベントを継続的に開催
「すきっと」の活用では、さまざまなイベントを行っている。「なりきり CV 選手権」で
は、自分のアフレコをなりきり CV に投稿して、出演しようというものである。ショートア
ニメーションの声優になりきって、投稿コンテンツを評価して、
‘最もなりきったで賞’
、
‘最
も見られたで賞’といった内容で表彰する。また、コシダカが現役女子高生による「ZERO
カラ部」を結成し、いろいろな活動を企画支援しているが、4 月には外部の一大イベント「シ
ンデレラフェス」に参加した。
社員独立制度「Be Ambitious」を活かし、FC を増やしていく
ビーアンビシャスというカラオケの社員独立による FC 化は、2013 年 8 月期 3 店、2014
年 8 月期 11 店、2015 年 8 月期 16 店、2016 年 8 月期上期で 19 店と着実に増えている。
カラオケについては、社員独立(ビーアンビシャス)制度を推進している。直営店の3
分の2は独立店にしたい方針である。独立店にした方が、モチベーションが上がり、業績
が格段によくなるからである。社員独立の条件で、最も大事なのは夫婦二人で経営に当た
るという点である。妻がパートナーとして果たす役割が大きく、ここがしっかりしている
と成果は確実についてくるからである。
社員の独立の FC 化を進めても、当社の売上げの仕組みに大きな変更はない。つまり、FC
化によって、売上げは立たずに FC のロイヤルティが入るという形に変わるわけではない。
独立社員への業務委託の形をとるので、店舗も当社の所有である。ただ、売上げに見合っ
て、独立社員の会社の収入が増えるので、オーナーには売上歩合の取り分が従来の社員と
してのボーナスよりはずっと大きくなってくる。その分、当社の取り分が減る可能性はあ
るが、店全体の売上げが拡大すれば問題はない。
アジア市場への展開では、韓国モデルをほぼ確立
韓国では既存店が 2 桁で伸びており、まねきねこによる日本式カラオケの認知度も上が
っている。2016 年 8 月期の上期には 13 店へ拡大し、そのピッチは上がっている。韓国で
100 店(年商 30 億円前後)を目指すことが十分可能であるとみられる。売上高営業利益率
も 10~15%を 1 つのターゲットとする。これを直営でやるか FC でやるかについては、直営
の成果をみたところで判断する方向だ。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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立ち上げ期の数店は当初苦労したが、ここにきて状況がよくなってきた。最大の理由は、
まねきねこの認知度が上がり、人気が出てきたことによる。日本と同じサービスを持ち込
んでいるが、それがうけている。
韓国の場合法規制があり、カラオケの店内で飲食はできない。日本でいえば、映画館の
ようなものである。カラオケルームの中では、売店で買った飲み物(ノンアルコール)や
スナックを持ち込んで、カラオケそのものを楽しむというパターンである。当初は馴染み
が薄かったが、2 年を経て受け入れられるようになった。ネットでの評判も上がっている。
利用者は圧倒的に若者である。
当社の基本理念である①安心・安全、②リーズナブル、③フレンドリーという店舗サー
ビスが、清潔、きれい、感じが良い、明るい、笑顔がよい、という評判になってきた。
韓国の 1 店当たりの売上高は、日本と比べて飲食がない分だけ低い。既存店は減価償却
前で黒字化し、新規店への投資を吸収していけるようになってきた。全体としてまだ赤字
だが、いずれ収益は上がってこよう。
韓国コシダカは、韓国人の総支配人をリーダーに、店長は正社員の韓国人で、あとはパ
ート・アルバイトを 1 店当たり 10~15 人ほど使っている。店舗開発の担当も 2 人ほどおい
て、出店ペースを上げていく。日本と同じように会社では朝会を行っており、社員の士気
は高い。日本人としては、マネージャークラスが 1 人常駐しており、西田執行役員が担当
として出張ベースでマネジメントに当たっている。
当社は、5 年前からまねきねこをアジアでどう展開するのか、当社のカラオケがアジアで
通用するかを検討してきた。中国では海外からの進出企業に 25%の娯楽税がかかるので、
時期尚早と判断した。台湾は競合が激しい。韓国については、消費文化が定着しており、
カラオケも人気がある。ただし、飲食にカラオケを付加したような大人向けの店は多いが、
歌そのものを楽しむ若者も気楽に入れるタイプのカラオケチェーン店は少ない。韓国のカ
ラオケボックスは、20 年前の日本のイメージで、これから伸びる余地があると判断した。
そこで、まず現法として韓国コシダカを 2010 年 7 月に設立した。11 年 6 月に 1 号店、12
年 4 月に 2 号店がオープンした。そして 13 年 4 月に 3 号店を出した。韓国のカラオケの 3
号店は、ソウル市内ではなく、インチョン(仁川)の郊外にある。居抜きの店なので、コ
ストもかなり安い。1、2 号店は実験店で、3 号店が勝負であった。
韓国の 3 号店、4 号店は低コストの出店が実現した。収益的にも黒字化の目途が立った。
反日感情については、特に影響は出ていない。地方、郊外、駅前など周辺を狙って出店を
進めていく。カラオケ専門のノレバンだけではなく、お酒や食事のサービスのできるノレ
タウンにも進出していく方向である。
シンガポールの K BOX に日本方式のまねきねこを導入
シンガポールで、K BOX の 1 店をまねきねこタイプにリニューアルしたら、来店数が 2 倍
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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以上に増えた。日本式がそのまま通用することが分かった。シンガポールでは、今期 1 店
出店して、11 店中 5~6 店を、従来の K BOX からまねきねこの店に作り変える方針である。
シンガポールでは、買収後のテコ入れに日本からベテランを送りこんだ。リストラ前の K
BOX は 12 店を有していたが、まず 2 店を閉めて赤字を止めようとした。シンガポールは家
賃が高く、店舗の経年劣化も進んでいた。そこで、①人材の活性化、②店舗のリニューア
ル、③営業政策の見直し、によって業績向上を図ろうとした。現在の 10 店は K BOX ブラン
ドであったが、まねきねこのブランドを使って実験も行った。韓国はそれで成功している。
アニメ的キャラクターが受けるかどうかもみた。これが当たったのである。
2013 年、シンガポールにコシダカインターナショナルを設立した。ここがアジアの統括
会 社 と な っ て 、 カ ラ オ ケ の ア ジ ア 展 開 の 司 令 塔 と な る 。 こ の 会 社 を 通 し て 、 K BOX
ENTERTAINMENT GROUP PTE.LTD.を 15 億円で買収した。
また、シンガポールでは、コシダカインターナショナルの下に、コシダカマネジメント
シンガポールという孫会社を作った。日本の文化であるファミリーカラオケを普及させる
ことを狙っており、日本のクールジャパン構想にも乗っている。ここは、新しいカラオケ
機器「すきっと」システムをアジアで展開する時のソフトウェアを扱う会社と位置付けて
いる。
アジアでのカラオケ展開は、①自社でやる場合、②合弁でやる場合、③FC 展開など、い
くつかのパターンがあろう。また、直接店舗を運営するのではなく、
「すきっと」システム
というソフトウェアで展開する可能性もある。
内外のカラオケ店舗数
2014.8
353
13
366
2015.8
381
10
21
412
2016.2
402
10
21
433
(店)
2016.8(予)
国内
まねきねこ
ワンカラ
ムーン、シンシア
合計
420
10
21
451
海外
まねきねこ(韓国)
4
9
13
15
K BOX(シンガポール)
12
10
10
11
(内まねきねこタイプ) [0] [0] [4] [6]
合計
16
19
23
26
ジャパンテイストの差別化がポイント
カラオケのアジア展開では、韓国に次いでシンガポールに拠点を築いた。今後はタイ、
マレーシア、インドネシア、フィリピンなどが対象となろう。ポイントは、
「すきっと」を
海外にどのようにもっていくかにある。
ファミリーカラオケの市場は東南アジアの各国にもあるので、ジャパンテイストとサー
ビスの差別化に工夫していく必要がある。一方、アジアの楽曲を日本でも歌えるようにす
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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るという逆のパターンも検討していく。
海外でのカラオケ展開については、日本のまねきねこをコアに持っていくという発想に
変えている。現地に合ったものを作り上げるために、独自のサービスの良さを加えていく
という考えである。
日本のサービスには優位性がある。おもてなしの心による、しっかりしたサービスは日
本の特色(ジャパンテイスト)としてアジアの人々に受け入れられる。日本に来る観光客
が感じる日本の良さをアジアにうまく持っていくことができたら、それが差別化になる。
まねきねこのサービスは、サービスのマニュアルが具体的に設計されており、日本で実
践してきたものである。アジアの人々をうまく教育、訓練できれば通用するものとなろう。
カーブスは今の 1600 店を 2000 店超に増やす方向~開拓余地は大きい
カーブスは意外に頭打ちにならない。50 代以上の女性は 2500 万人いる。カーブスの会員
はまだ 70 万人台、メンバーの口コミで既存店の会員が増えている。今後とも顧客を深張り
すれば、1600 店が 2200 店へと逐次拡大していけることになろう。
カーブスは年 100 店ペースで出店している。これまでよりもメッシュを細かくして、会
員数の獲得を目指す。カニバリなく出店できそうなところもある。一方で、地方の自治体
とも組んでいく。
カーブスは次第に伸びが鈍くなってくるが、
“金のなる木”として高収益を維持すること
ができよう。さらに、その後の展開もやりようはある。健康を維持したいという女性は相
当いる。会員は 72 万人になったが、まだ 72 万人である。会員数からみると、100 万人に向
け拡大余地はあろう。ロコミや介護予防まで含めれば、可能性はさらに広がろう。
カーブスジャパンは、FC 店からのロイヤリティ(会費収入の 5%など)、広告料、事務手
数料などが主な収入で、これが当社の売上となる。規模の効果が働くので、売上営業利益
率は 20%を超えてきている。
カーブス加盟店の出店意欲は高い。既存店が好調で儲かっているので、もっと店を出し
たいのである。1 店当りの BEP(損益分岐点)は会員 300~350 人であるから、ほとんどの
店舗は利益が出るようになっている。そうすると、既存店のオーナーがもう 1 店出そうと
する。既存のオーナー(会社)が複数店を出店するというパターンである。FC のうち加盟
店オーナーは 450 件である。つまり 1 人(または 1 社)で 2 店以上出している人がおり、10
社以上出している FC もある。
今後、カーブスはドミナント化を効率よく図っていく。FC 希望は多いが、地域でのバッ
ティングを避け、うまく出店していくには、特定の FC がその地域をまとめていく方が効果
的である。
カーブスは 10 年目を迎えている。将来は 2200 店舗、会員数 100 万人へ増やすことがで
きよう。本部の当社にとっては、初期投資にお金はいらないので、出店の負担はない。FC
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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がきちんと集客して、十分なサービスを提供できるように指導する力が問われているので
ある。1 店当たりの会員数は増えている。また、それぞれの店のスタッフによる会員フォロ
ーも効果を上げ、退会率はフィットネス業界の中でも低い数値となっている。つまり、収
益性が向上しているのである。
世界のカーブスの中でも日本は優等生
カーブスのテリトリーは日本であるが、世界のカーブスをみると上手くいっていないと
ころも多い。日本のカーブスが独自にビジネスモデルを強化している。
かつて、セブン-イレブン・ジャパンは、米国から導入したコンビニであったが、日本で
独自のビジネスモデルを磨き、本家の米国を救済するという展開にまで至った。これによ
って、セブン-イレブンのグローバル展開が大きく進展した。カーブスがそうなるかどうか
はわからないが、高齢化が進む中でいかに健康を保つかという点で、日本のビジネスモデ
ルが一段と磨かれているのは事実である。
カーブスの米国本部、カーブスインターナショナル(CVI)は、もとのオーナーからファン
ドに所有権が移っている。各国のマスターフランチャイジーの中でも経営が十分でないと
ころもある。本家の米国ではピーク 7000 店までいったが、今では 3000 店程度に減ってい
る。米国があまり上手くいっていないのは、競争環境にある。ダイエットを強調すると、
ダイエットを促進するというエクササイズは他にもいろいろある。
日本のカーブスはダイエットよりも、健康増進をアピールしている。40 代以降の女性が
病気にならずに、健康を維持できるエクササイズと位置付けている。また、FC である加盟
店の指導では、日本はかなり上手くマネジメントしている。
日本のカーブスジャパンは極めて優秀であると評価されている。もしアジアでマスター
フランチャイジーが手に入るのであれば、領域を広げていくことができる。その可能性が
ありうるという点に注目しておきたい。
カーブスはサプリメントも好調
ショッピング販売は会員にモノを売る。2010 年 12 月から力を入れているプロテインが好
調である。会員のうち 15%前後の人がプロテインを購入している。プロテインは月 5000 円
程度である。筋肉がつくと、脂肪の燃焼効率が高まるので、健康によいという理由である。
プロテインは有酸素運動と結びついて、筋力を高める。そのエビデンス(根拠)ははっきり
しており、使っている人も実感できる。そうなると継続率は高まる。
プロテインの販売に伴う利益率は、セグメントの利益率ほど高くはないが、加盟店にと
っても収益商品になるので、ショッピングの拡大はインセンティブに結び付く。
物販としてはプロテインに次ぐものを開発中である。収益源の多様化という点では、プ
ロテインに次ぐショッピング商品を考えていく。また、加盟店への支援を強化して、会員
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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のリテンション(保持)と拡大に力を入れていく。
カーブスの売上高は大幅に増えているが、これは FC のスポット売上(新規 FC に伴うも
の)
、FC のベース売上、直営店、ショッピングの売上増という内訳である。スポットという
のは加盟店 1 店増える毎に入る収入で、
ベース売上は会員数の増加に比例するものである。
知られていないカーブスの効果~地方の健康対策に貢献
カーブスの運動が健康によいというエビデンス(科学的根拠)を、共同研究を通してい
ろいろ出しており、これらをアピールしている。
カーブスジャパンは鳥取県の大山町(だいせんちょう)と組んで、地方創生事業に参画
した。大山町は、医療費削減、運動意識向上に取り組む。大山町、鳥取大学、カーブスが
産学官で組んで、地域の健康作りにソリューションを提供した。
具体的には大山町内にカーブスの店舗を出した。通常の店舗運営と同時に、町の健康対
策の拠点となって活動する。地域に貢献し、ビジネスとしても成り立つのであれば、今後
の広がりも期待できる。
大山町のカーブスは社会貢献的な意味あいもあるが、町が高齢化の中で、健康維持に関
して本気で住民をサポートすると、
人口 7 万人の町でもカーブスの会員が 500 人となって、
ビジネスとして十分成り立つ。健康維持のコストをどう考えるかによるが、地方自治体の
熱意と相談しながら展開することになろう。
東北大学と共同研究、健康維持と要介護リスク低減について実証
熟年層が健康を維持することは、社会的な課題の解決にも結び付く。腰髙社長は、“筋ト
レは歯磨き”と同じであると言う。つまり、日常の習慣にして、健康を増進していこうと
いう発想である。そのエビデンスについても、東北大などと研究を進めている。腰髙社長
は東北大学出身である。その関係もあり、東北大学といくつかの共同研究を行っている。
東北大学加齢医学研究所とカーブスジャパンの共同研究では、
「筋力トレーニング」と「有
酸素運動」
(サーキットトレーニング)を行うことで認知症の予防につながることが実証さ
れている。認知症予防対策としてのカーブスの効果について、今後活動が活発化すること
になろう。
「30 分健康体操」の科学的効果についてワークアウトの効果を測定してみると、メタボ
予防、介護予防、認知機能の確保に寄与がみられる。こうした効果を実証していくことが、
カーブスにとってカスタマーリテンション(顧客保持)となろう。つまり、長く続けること
に訴求できるので、プラスに働こう。
「未病センターカーブス小田原」を設置
神奈川県の「未病センターカーブス小田原」が 2015 年 6 月にオープンした。この未病セ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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ンターは、神奈川県民に手軽に運動や健康チェックを継続的、複合的に実践してもらおう
という狙いで、施設を認証するものである。その第 1 号にカーブス小田原が認定された。
ここでは、体力年齢の測定や健康相談員による運動や食事のアドバイスが受けられる。直
接ビジネスにはならないが、カーブスの社会貢献活動という位置付けである。
温浴施設業界
順位
会社名
温浴店名
1
極楽湯
極楽湯
2
スパサンフジ
湯楽の里 喜楽里
3
オークランド観光開発
竜泉寺の湯 スオミの湯など
4
常磐興産
スパリゾートハワイアンズ
5
東京建物リゾート
おふろの王様
6
大江戸温泉物語
大江戸温泉物語
7
東京ドーム
スパラクーア
8
亀井工業ホールディングス 湯快爽快
9
サンリク
健美の湯
10 リラフル
湯花楽
11 タカチホ
湯ったり苑
12 コシダカホールディングス まねきの湯 らんぷの湯
(注)2014年度ベース、伸び率は前年度比
(出所)日経MJ 2015年11月11日号
(百万円、%)
売上高
伸び率
10558
14.7
8974
-4.4
5394
-0.5
5217
-1.6
4388
3.8
4280
12.6
3540
2.8
2300
-0.7
1808
0.1
1755
4.6
1723
-3.6
1538
-0.1
まねきの湯は黒字化へ
温浴は構造改革が進展し、黒字化してきた。この後どこまで拡大戦略をとるかはこれか
らである。温浴業界での地位は下位にあり、当初の計画であった再生事業としての拡大は、
ビジネスモデルとしてまだ十分でない。
福岡のイオンモールと大分のらんぷの湯の 2 つを 2014 年 10 月に閉めた。イオン志摩湯
処はショッピングモール自体の集客がさほどでもなく、来客数も十分でなかった。ここは
2012 年 10 月に 7 店目としてオープンし、0.4 億円の投資で年商 3~4 億円が見込めると踏
んだが、予定通りにいかなかった。大分のらんぷの湯高松店は老朽化しており、近くに大
分森温泉まねきの湯、らんぷの湯花園店があるので、2 つで十分と判断した。
温浴については、かつてのボウリング事業と同じように、お荷物になっているのではな
いか、という心配もある。しかし、集客と省エネという点で改善効果は出ており、黒字化
も見えたので、特にネガティブになる必要はない。東京健康ランドの温泉掘りは完了し、
昨年 11 月からは温泉のサービスも始まった。
温浴は、顧客へのサービスという点でカラオケと同じであり、シナジーがある。オペレ
ーションのソフト、食事、接客は同じノウハウが通用する。カラオケと同じ居抜き再生の
事業モデルである。
温浴業界をみると、兼業で温浴事業をやっている会社が多い。一定の期間続けてきて、
さて次の事業展開をどうしようかと考えた時、追加投資をするほどではないケースもある。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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そういう温浴を居抜きで借りて、当社のマネジメントを導入して再生するというパターン
である。2012 年 4 月に温浴事業本部を作った。温浴は年商が 1 店当たり、2~3 億円と、カ
ラオケの 0.6 億円に比べて大きい。1 号店の箕郷は年商 3 億円規模である。郡山は 1 億円の
投資で年商 5~6 億円、東京健康ランドは年商 10 億円も期待できる。
東京健康ランドは、2013 年 12 月にカラオケまねきねこを併設した。2 階に 30 室ほどの
カラオケルームを設けた。これで相乗効果を狙っている。また、宿泊施設も設置した。プ
レミアムシートに横になるタイプで、26 人ほどが泊まれる。料金はカプセルホテルに泊ま
るのと同じ水準(夜 3500 円)である。
再生居抜きの案件はいろいろある。まずは、温浴は収益性を 10%まで高めて、ビジネス
モデルのブラッシュアップを図る。その後、次の展開をどうするのかを考えるという方向
にある。局面によっては、出店の再開は十分ありえよう。
コシダカHDの将来展望
2012.8
2013.8
2014.8
2015.8
(百万円、%)
5年後
カラオケ
売上高
18543 [54]
18725 [54]
19854 [53]
23794 [54]
35000
営業利益
2692
2206
1580
1203
3500
同利益率
14.5
11.8
7.9
5.1
10.0
カーブス
売上高
11320 [33]
13860 [41]
16028 [42]
18649 [42]
30000
営業利益
1906
2556
3282
3856
6000
同利益率
16.9
18.4
20.5
20.7
20.0
温浴
売上高
695 [2]
1539 [4]
1538 [4]
1495 [3]
3000
営業利益
-354
-317
-239
-89
300
同利益率
-60.0
-20.6
-15.5
-6.0
10.0
不動産管理
売上高
589 [2] 389 [1] 299 [1] 318 [1] 300
営業利益
284
238
130
127
130
同利益率
48.4
61.1
43.7
40.2
43.3
合 計
売上高
33746 [100]
34515 [100]
37200 [100]
44257 [100]
68300
営業利益
4077
4151
4276
4394
9000
同利益率
12.0
12.0
11.3
9.9
13.2
(注)5年後の数値は、シミュレーション(試算値)でアナリスト予想。カラオケには海外分も含む。
カッコ内は構成比。
[51]
[44]
[4]
[1] [100]
今後の重点施策
全社的な課題は、カーブスの出店拡大ペースが少しずつ落ちてくるので、利益成長の源
泉をいかにバランスさせた事業ポートフォリオを作っていくかにある。
カラオケでは、
「すきっと」による差別化を強化、ワンカラも含めて出店を拡大し、しか
も従来とは違って首都圏を攻めていく。海外では、シンガポールの K BOX にまねきねこの
ノウハウを導入して黒字化した後、アセアンを攻めていく。韓国は黒字経営のビジネスモ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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デルをほぼ確立したので、早急に 100 店を目指す。
カーブスの店舗数については、1600 店を達成した。今後の出店余地について、健康を維
持したいという 50 代以上の女性はまだまだ多い。1 店当たりの会員数とのバランスを図り
ながら、さらに出店を拡大するという工夫はできよう。
温浴は主力の東京健康ランドが温泉掘削を活かした集客と省エネで黒字化を図った。同
時に不採算の 2 店を閉鎖し、収益力の向上がみえてきた。今後、温浴を再生事業として、
本格拡大できるかどうかの確認を行うことになろう。
既存事業で経常利益 90 億円は達成可能
今後の事業の収益性については、セグメント別の売上高営業利益率でみて、カラオケは
10%水準が見込める。カーブスは、FC のマネジメントなので、販管費が相対的にかからな
い。スケールメリットが生きてくるので、20%の利益率は見込める。会員に対するプロテ
インなどの物販は、通販と同様に考えると、会員への訴求なので広告、宣伝費がさほどか
からないので、一定の収益性は十分確保できよう。
温浴のポイントはエネルギー費用である。売上高エネルギー比率が 2 割以上と高いので、
これをいかに省エネ化できるかがポイントである。カラオケ健康歌体操教室による差別化
など工夫も取り入れていく。全体として、10%の利益率は狙えるビジネスである。
コシダカ HD は、まねきねこにカーブスがオンして成長の第 2 ステージを進んだが、
「す
きっと」
・ワンカラのカラオケと、温浴で第 3 ステージにアップできる可能性が高まってい
る。経常利益 50 億円台から、次のステージである 90 億円が視野に入るものと期待される。
4.当面の業績
カーブスが牽引、カラオケの復調は来期から
業績の季節性と消費税の影響
当社の業績の季節性はカラオケに左右される。カラオケは 12 月に最も稼ぐことができ、
次が 8 月である。逆に 10 月、11 月はやや低調となる。これを四半期でみると、2Q(12 月
~2 月)が最もよく、次が 4Q(6 月~8 月)、その次が 3Q(3 月~5 月)で、1Q(9 月~11 月)
が相対的に低い。
2014 年 4 月の消費税のアップに対しては、外税で対応した。カラオケについてはこれま
で内税表示であったが、外税表示に変え 3%分を上乗せした。温浴も同じである。カーブス
についても内税から外税表示にして、3%分は値上げした。ここは自動引き落とし型なので、
さほど影響はなかった。
次の 2017 年 4 月の消費税にも同じような対応をすることになろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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カラオケの業績
全体
国内
海外 韓国
シンガポール
のれんの償却
合計
2014.8
売上高 営業利益
19854
1580
2015.8
売上高 営業利益
23794
1203
(百万円)
2016.8(予)
売上高 営業利益
27400
1500
19775
1632
21787
1775
24900
1740
79
-52
140
1867
300
2200
79
-52
2007
-91
-181
-300
-572
-90
150
-300
-240
2500
(注)韓国、シンガポールの利益は現地ベース。のれんの償却は連結ベース。
国内の利益は全体から海外を引いた推定値。
2015 年 8 月期はカラオケの海外負担が増加
2015 年 8 月期は、売上高 44257 百万円(前年度比+17.3%)
、営業利益 4394 百万円(同
+2.8%)
、経常利益 4492 百万円(同+2.8%)、当期純利益 2098 百万円(同-13.4%)と
なった。カラオケの弱含みを堅調なカーブスでカバーしたが増益率は鈍った。また、カラ
オケでの特別損失もあって、当期純利益は減益となった。
セグメント別では、カラオケは、売上高 23794 百万円(同+19.8%)、セグメント利益(営
業利益)1203 百万円(同-23.9%)となった。①出店が 32 店と活発であったこと、②シン
ガポールのフル連結で、のれんの償却 3 億円、営業利益-2 億円が加わったこと、③すきっ
との全店配備で償却が 3 億円増加したことが影響した。
既存店も低調であった。特に、稼ぎ時である 8 月がよくなかった。上期は+2.2%であっ
たが、下期-4.7%となり、通期でも-1.4%に落ち込んだ。店舗は 46 店増えたが、そのう
ち自社の新規出店 32 店、ムーンの店舗取得 21 店、閉店 7 店であった。まねきねこ+28 店、
ワンカラ-3 店、ムーンシンシア+21 店という内訳である。
買収したムーンの連結に入った。ムーンは年商 15 億円、営業利益は黒字という内容であ
る。のれんの償却があるので、利益面での貢献はほとんどないとみられる。
カーブスは売上高 18649 百万円(+16.4%)、セグメント利益 3856 百万円(同+17.6%)
と好調であった。
127 店の出店で、
店舗数は 1602 店となった。
会員は 71.1 万人(同+10.9%)
へ拡大した。売上高の増加 26 億円のうち、15 億円がショッピング(プロテイン等)の寄与
である。ショッピングが増えているので、利益率はさほど上がっていない。
温浴は不採算の 2 店を閉店したので、売上高は 1495 百万円(同-2.8%)であったが、
赤字幅は前期の-239 百万円から-89 百万円へ縮小した。既存店は+5%と順調で、東京健
康ランドも+13%であった。
2016 年 8 月期上期は出店集中によるコスト負担で減益~会社計画は上回る
2016 年 8 月期の 2Q 累計(上期)は、売上高 24388 百万円(前年同期比+14.3%)
、営業
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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利益 2577 百万円(同-4.7%)
、経常利益 2481 百万円(同-9.7%)。純利益 1391 百万円(同
+7.7%)となった。利益面では減益となったが、社内の当初の予算を 3 億円ほど上回って
おり、内容としては順調である。営業外で為替差損が 1 億円ほど発生しているが、これは
海外子会社への融資の評価損である。
2Q は温浴が黒字化した。カーブスは堅調で、引き続き利益貢献は大きい。カラオケは構
造転換の最中で、まだ投資期にある。しかし、既存店は堅調なので、投資負担のカバーに
は寄与している。2Q をみると、首都圏への出店が 16 店と加速している。ZERO カラは客数
が伸びており、狙いが当たっている。カーブスは顧客満足度が上がっている。温浴は通期
でも黒字を確保できよう。
セグメント別利益では、温浴が黒字化、カーブスも伸びたが、カラオケの減益幅が大き
かった。カラオケのセグメント利益は 763 百万円(前年同期比-22.5%)となった。既存
店は+1.2%と順調であった。
ZERO カラは昨年 9 月から高校生を無料にして、
来店を促進し、
これが効果を上げている。ワンカラは黒字となった。
しかし、出店が 22 店と、前年同期の 15 店より増えている。しかも建築出店が 17 店であ
った。また、16 店が首都圏(東京 10 店、埼玉 3 店、千葉 2 店、神奈川 1 店)であった。
カラオケのセグメント利益が 2 億円ほど減少しているが、出店加速のコストアップが 2
億円、賃料が 2 億円増えていることによる。これを考慮すると内容的には悪くない。
カーブスのセグメント利益は 2106 百万円(同+2.7%)であった。利益の伸びが低いよ
うにみえるが、費用と収入のバランスで下期にずれ込んだ分があるので、実態は+10%前
後で伸びているとみてよい。店舗は 1647 店、会員数も 72.1 万人となった。上期に+45 店
となった。1 店当たりの会員数は 437 人で、前年同期の 424 人より増加している。
温浴は、売上高 776 百万円、セグメント利益 31 百円、利益率は 4.0%であった。ようや
く安定した収益がみえてきた。
2016 年 8 月期も引き続きピーク利益を更新
熊本県にカラオケは 1 店、カーブスは 20 店ほどある。このたびの熊本地震の影響で、そ
のほとんどは休止しているが、人的な被害は出ていない。
通期の会社計画は変わっていないが、利益面では上期に予算を 3 億円ほど上回っている
ので、通期計画は十分達成できよう。
2016 年 8 月期の会社計画は、売上高 49607 百万円(同+12.1%)
、営業利益 4939 百万円
(同+12.4%)
、経常利益 5019 百万円(同+11.7%)
、当期純利益 2410 百万円(同+14.9%)
と順調な増益を見込んでいる。
カラオケの利益は回復してこよう。国内の出店攻勢はあるものの、海外の赤字は縮小し
てくる。カーブスも 100 店ペースの出店で、着実な利益の伸びが見込めよう。温浴はよう
やく黒字化し、安定してこよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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セグメント別業績予想
カラオケ
売上高
営業利益
同利益率
カーブス
売上高
営業利益
同利益率
温浴
売上高
営業利益
同利益率
不動産管理
売上高
営業利益
同利益率
ボウリング
売上高
営業利益
同利益率
合 計
売上高
営業利益
同利益率
(百万円、%) (百万円、%)
2016.8(予)
2017.8(予)
2011.8
2012.8
2013.8
2014.8
2015.8
17389 [58]
2243
12.9
18543 [54]
2692
14.5
18725 [54]
2206
11.8
19854 [53]
1580
7.9
23794 [54]
1203
5.1
27400 [54]
1500
5.5
30000 [56]
1800
6.0
8431 [29]
1209
14.3
11320 [33]
1906
16.9
13860 [41]
2556
18.4
16028 [42]
3282
20.5
18649 [42]
3856
20.7
20300 [42]
4200
20.7
22000 [41]
4600
20.9
695 [2]
-354
-60.0
1539 [4]
-317
-20.6
1538 [4]
-239
-15.5
1495 [3]
-89
-6.0
1600 [3]
50
3.1
1700 [3]
100
5.9
174 [1]
-36
-20.7
579 [2] 296
51.1
589 [2] 284
48.4
389 [1] 238
61.1
299 [1] 130
43.7
2989 [10]
-163
-5.6
2961 [9]
-7
-0.3
*
*
29094 [100]
3356
11.5
33746 [100]
4077
12.0
34515 [100]
4151
12.0
37720 [100]
4276
11.3
318 [1] 127
40.2
*
300 [1] 130
43.3
*
300 [1] 130
43.3
*
44257 [100] 49600 [100] 54000 [100]
4394
5130
5800
9.9
10.3
10.7
(注) (予)はアナリスト予想。利益率は売上高営業利益率、カッコ内は売上高構成比。* は無しを意味する。
シンガポールの収益が好転
シンガポールに変化が出てきた。K BOX をまねきねこの店舗に 4 店ほどリモデルし、いず
れも売上げが倍増している。来店客数も 2 倍以上に伸びており、リモデルの効果は抜群で
あると分かった。国内ではいくらリモデルしても、売上げの倍増はない。アジアの潜在需
要の可能性を腰高社長は実感している。
海外部門の営業利益は改善している。韓国は 13 店となっているので、新規出店のコスト
増で赤字だが、既存店は黒字になっている。シンガポールは 10 店で黒字を確保している。
来期には年商 20~30 億円、のれん償却前営業利益で 1~2 億円が見込めよう。
シンガポールの K BOX は、何故まねきねこに衣替えすると、こんなにも流行るのか。古
い、高い、低サービスを、まねきねこ化で新しい、リーズナブル、高サービスに変えると、
ジャパンテイストが見事に受け入れられる。シンガポールのカラオケのうち、まねきねこ
タイプへのリモデルは上期で 4 店であったが、8 月末には 5~6 店と全体の半分までいこう。
順調な展開が見込めよう
今後の展開について、腰高社長は、1)カラオケの国内は構造転換を一段と進め、海外は
積極的に攻める、2)カーブスのビジネスモデルは頑健で、これからも深堀できる、3)温
浴は黒字化したが、出店はせずに収益の安定化を図る、という方針である。
カラオケの国内は、①大都市、②駅前・繁華街、③建築出店、という方向で転換を進め
る。建築出店は居抜きよりも投資コストはかかるが、競争力が確保できることが分かって
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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きたので、十分対応できる。カラオケは首都圏中心に出店ができており、S&B(スクラップ
アンドビルド)にも力が入っている。
まねきねこの FC 化、ビーアンビシャスはこの上期で 19 店となった。社員が独立して FC
化した店は、オーナーの才覚ですこぶる好調である。これも引き続き増やしていく。海外
は韓国もシンガポールもいい形になりつつある。シンガポールのまねきねこモデルが成功
しているので、これでアジアへの拡大が出来そうである。
カーブスについては、会員 100 万人を目指して拡大できそうである。FC の加盟店(450 件)
が複数の店を持っており、もっと増やしたいという意向は強い。温浴は営業利益率 10%ま
で上げていく。東京健康ランドは宿泊施設も整えて、インバウンドへの対応も図っていく。
業績の鍵となるのは、カラオケの収益力の向上である。カラオケを単に歌うところとい
う狭い意味ではなく、新しい遊び方が工夫できる施設時間サービス業の場であるとして、
いろいろトライしている。
カラオケの海外事業
2015.2(2Q)
店舗数
売上高 営業利益
(店、百万円)
2016.2(2Q)
店舗数
売上高 営業利益
韓国
まねきねこ
5
79
-52
13
125
-56
シンガポール
K BOX
11
1008
9
10
949
86
海外合計
16
1087
(注)2015.2(2Q)のK BOXは連結に含まれず。
-43
23
1074
86
通常投資は内部資金で十分賄えるが、M&A には外部ファイナンスも必要
カラオケへの設備投資が活発化しているが、投資キャッシュ・フローは営業キャッシュ・
フローで概ね賄うことができよう。また、自己株式の取得も行っている。財務バランスで
は、長期借入金を増やしているが、特に問題はない。
カラオケを中心にした出店は建築出店が主体なので、年間で 40~50 億円の設備投資とな
る。この分は内部資金で概ねまわるが、運転資産増もあるので、借入金は年間で 10~20 億
円ほど増加する可能性はある。
国内出店では、まねきねこで年 40 店を目標とする。まねきねこは居抜きで 1 店 20~30
百万円、建築出店で 60~100 百万円ほどかかる。目標通りの出店をすると、まねきねこは
居抜き 10 店で 2~3 億円、建築 30 店で 20~30 億円となり、総額では 22~33 億円の投資と
なる。
居抜きは 3~6 カ月で黒字化、建築出店は 6 カ月~1 年で黒字化というのが、通常のパタ
ーンである。ワンカラの収益性は稼働率にあるので、土日の利用など、コンスタントな稼
働が見込める立地が重要である。
カーブスの FC の拡大に資金は必要ない。直営店には資金が必要だが1店 2000 万円レベ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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ルなので、100 店出しても 20 億円である。カラオケ店は建築出店のウエイトが高まってく
ると投資額は今までより増えるが、リニューアルも含めての営業キャッシュ・フロー(CF)
で賄うことができよう。温浴の投資も基本は居抜きなので、追加投資が中心である。
今後の設備投資については、40~50 億円程度になろう。カラオケ中心である。減価償却
は増えてくるが、31~32 億円程度となろう。よって、設備投資は、営業キャッシュ・フロ
ーで十分対応できよう。
連結キャッシュ・フロー計算書
2011.8
2012.8
2013.8
2014.8
営業キャッシュ・フロー
4412
4241
4289
4042
税引き利益
2678
1787
3509
2220
減価償却
1949
2048
1797
1956
のれん償却
308
310
311
86
負ののれん発生益
-1194
0
0
0
投資キャッシュ・フロー
-1822
-3283
401
-6931
有形固定資産取得
-2197
-2687
-1828
-5043
有形固定資産売却収入
21
60
3758
5
無形固定資産取得
-56
-347
-697
-221
子会社・関係会社株式
341
0
0
-1720
フリーキャッシュ・フロー
2590
958
4690
-2889
財務キャッシュフロー
-1521
-749
-3148
2198
現金・同等物期末残高
4100
4308
5860
5169
(百万円)
2015.8 2016.8 (予) 2017.8 (予)
4694
5980
6670
2242
2410
3000
2427
3100
3200
355
470
470
0
0
0
-4276
-5000
-5000
-3159
-5000
-5000
73
0
0
-135
0
0
-721
0
0
372
980
1670
445
-1000
-1500
6142
6122
6292
配当性向は 20%を目途とする
配当については、継続的に増配していく方向にある。2016 年 8 月期も今のところ 30 円と
前期並みの予想だが、35 円になる公算もあろう。
2014 年 8 月期の配当は 27.5 円と 7 期連続の増配であった。2015 年 8 月期は業績の伸び
悩みで 30 円の据え置きに留まった。株主に関して、当社のビジネスが B to C(対個人顧客
サービス)であることに鑑み、株主=お客様という路線で進みたいと会社は考えている。
配当性向については 20%を目途に考え、引き続き成長志向を強めていく方針である。配
当については、今後とも業績の拡大につれて増配が期待できよう。
5.企業評価
首都圏攻勢と海外展開の加速に注目
今後の成長パターン~差別化で先行
カラオケの収益性が下がってきた。一方で急成長をみせてきたカーブスの業績は引き続
き順調であるが、かつてのような勢いはない。この局面をどうみるか。結論からいえば、
カラオケは内外で相当拡大でき、採算の改善も見込める。カーブスは、伸びしろがあるの
で、飽和するという局面ではない。
カラオケについては、国内では従来の“地方、郊外、ロードサイド”から“首都圏、繁
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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華街、駅近”へと展開する。カラオケの競争力はあるので、十分市場開拓ができるとみて
よい。カラオケの海外は、韓国はすでに日本のまねきねこ方式が定着しており、黒字化の
目途も立っている。シンガポールは買収した K BOX で損失が出たが、ここでもまねきねこ
方式に転換した。これがうまくいくようだと、アジアにおけるまねきねこ方式で新しい展
開が見込める。
カラオケの売上高営業利益率は、かつて 15%ほどであったが、2015 年 8 月期は 5%に落
ち込んだ。これは一時的で、先行投資が効果を上げてくれば 10%に戻すことはできよう。
カーブスも年 100 店ペースの出店で、出店地域が次第に限られてくるという見方が有力
であった。しかし、健康づくりのニーズは高いので、都会においては、1 店当たりの会員が
多いところでは、近くにもう 1 店出すこともできそうである。地方では、自治体と組んで
カーブスを活用してもらうという展開もスタートしている。現在、1600 店、会員 72 万人で
あるが、会員 100 万人、店舗 2200 店に向けて拡大できる余地はありそうである。
温浴は黒字化の目途が立った。宿泊、カラオケ、健康体操とのコラボなどによって、利
益率で 5~10%は目指せそうである。
当面は、カラオケの先行投資が収益性の向上に結びついてくるかどうかに注目したい。
今後の業績パターンは、カーブスの利益を着実に伸ばしつつ、国内のカラオケの首都圏攻
勢を強める。カラオケでは新しい業態作りに取り組んでいる「すきっと」とワンカラが注
目される。サプリメントなどカーブスの顧客への新サービスも可能性を有している。温浴
は黒字化の後、再び店舗の拡大を検討する。再生案件はいろいろありうる。海外のカラオ
ケは現地に合ったビジネスモデルで本格的な展開が加速しよう。
いずれも本業強化を図りながら、周辺多角化を検討し、各事業のシナジーを出そうとい
うものである。経営者の経営力、事業の成長性・持続性、業績の下方修正リスクという 3
つの評価軸から見て、当社は「良好である」
(ベルレーティング法で「A」ランク)と評価
できる(表紙の注を参照)
。1)企業の将来のビジョン、計画を明確に定め、それに経営トッ
プがコミットしていること、2)中期的な事業の持続力と成長力は十分確保していること、
3)当面、業績の下方修正リスクは少なく、着実な利益成長を達成していくものと評価でき
ること、などがその要因である。
東証 1 部への指定替えの条件は満たしている
一部上場への準備は順当に進むことになろう。2015 年 8 月末の腰高社長の持株比率は、
直接保有で 12.35%、支配株主としては 58.95%である。この比率を少しずつ落として、流
動性を高める手立ては逐次実行している。
2014 年 12 月に 222.5 万株(全体の 11.6%に相当)の売り出しを行った。うち 50 万株は
自己株として所有した。オーナー系の持株比率を下げて、流動性を高めることがねらいで
あった。これまでオーナー系の所有比率を除くと、機関投資家と個人投資家の持株比率は
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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半々であったが、個人株主中心に株主を増やした。株式の流動性は高まったので、業績の
良さと相まって、出来高は増えている。
この 1 月には資産管理会社(ヨウザン)の 50 万株を当社が自己株式として取得した。50
万株は発行済株式数の 2.60%に相当する。いずれは留保金課税を受けないように 50%を切
るところまでは減らしていくことになろう。
株主数は約 6000 名である。東証 1 部上場基準の 2200 名を超えている。1 部への指定替え
については特に課題はない。
株主優待は充実している。100 株以上で、5000 円相当の株主優待券と 3000 円相当のカタ
ログギフト(2000 種から選ぶ)がつく。1000 株以上では、カタログギフトが 5000 円相当
となる。
株価を 2500 円とすると、100 株で購入価格は 25 万円。配当が 30 円なので、配当利回り
は 1.2%。これに 3000 円のカタログギフトが付くので、30 円の配当に相当する。配当利回
りは計 2.4%となる。これにカラオケの好きな人は 5000 円相当の優待券がもらえるので、
これが 50 円の配当に相当。配当利回りでは 2%に相当する。全体としては、お得感のある
優待といえよう。
株価(4 月 28 日時点)をみると、PBR 2.75 倍、ROE 17.2%、PER 16.4 倍、配当利回り 1.4%
である。株価がもう一段見直されるポイントは内外のカラオケにある。先行投資がセグメ
ントの利益としてどのくらい上向いてくるかにかかっている。カラオケの業績は、2016 年
2 月期の下期から好転し、来期ははっきりと増益基調に転換してこよう。よって、株価も水
準を切り上げてくるものと期待される。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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