北陸の産業天気図(23 業種)と産業動向 北陸経済研究所では、北陸の主要産業のうち 23 業種について≪27 年度の動向≫と≪28 年度上期の見通 し≫を調査し、産業天気図を作成した。 ◎調査の概要 調査時期:平成 28 年 2~3 月 ヒアリング企業・団体数:75 判定基準:ヒアリング企業の売上高、収益状況および業種全体の統計データから所内で合議 産業天気図一覧表 27年度 上期 27年度 下期 28年度 上期 見通し 27年度 上期 金属・機械業種 27年度 下期 28年度 上期 見通し その他製造業 1 アルミ建材 11 食品製造 2 建設機械 12 眼鏡枠 3 工作機械・工具 13 伝統産業 非製造業 4 繊維機械 5 コンピュータおよび周辺機器 14 建設 6 電子部品 15 マンション・住宅 素材型業種 16 運輸 7 化学・医薬品 17 大型小売店 8 プラスチック成形加工 18 家電販売 繊維工業 9 合繊織物 10 ニット 19 自動車販売 20 温泉宿泊 21 ホテル 22 外食産業 晴れ: 薄日: 曇り: 小雨: 雨: 23 情報サービス 1/3 一般財団法人 北陸経済研究所 ◎今回産業天気図のポイント 図表 1 ランク別の業種数 (産業天気図の概況) 平成 27 年度下期、北陸の産業天気図は「晴れ」が 4 業種、 「薄 日」が 2 業種、 「曇り」が 13 業種、 「小雨」が 3 業種、 「雨」が 1 業種であった。27 年度上期は「晴れ」3 業種、 「薄日」3 業種、 「曇り」13 業種、 「小雨」3 業種、 「雨」1 業種であったので、 「晴れ」が増加して「薄日」が減少した。 28 年度上期の見通しは、 「晴れ」が 2 業種、 「薄日」が 4 業種、 天気図 記号 晴れ 薄日 曇り 「曇り」が 12 業種、 「小雨」が 4 業種、 「雨」が 1 業種である。 「晴れ」と「曇り」が減少し、 「薄日」と「小雨」が増加する という予測である(図表 1)。 12 年度からの各ランクの割合の推移を見ると、27 年度上・ 小雨 雨 27年度 上期 27年度 下期 28年度 上期 見通し 3 4 2 3 2 4 13 13 12 3 3 4 1 1 1 下期は過去 15 年間で最も「雨」 「小雨」の業種の割合が少なか ったが、 「曇り」の業種の割合は最高であった(図表 2) 。「雨」 ・「小雨」は少ないが「曇り」が多いとい う傾向は 26 年 4 月の消費税増税以降続いており、景気が悪いとは言えないが、はっきりと好景気である とも断言しにくい状況である。 図表 2 産業天気図の全業種に占める各ランクの割合の推移 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 見通し 晴れ・薄日 曇り 雨・小雨 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 下 上 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 期 平成12 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28 年 年度 度 (注)28 年度上期は見通し。 ●下期ランクアップは 2 業種、ランクダウンは 1 業種 27 年上期から下期にかけてランクアップしたのは 2 業種、ランクダウンしたのは 1 業種であった。ラ ンクアップした業種は「マンション・住宅」、「温泉宿泊」であり、ランクダウンしたのは「繊維機械」 である。また、28 年上期に向けてランクアップが予想される業種はなく、ランクダウンが予想されるの は「建設機械」 、 「電子部品」 、 「外食産業」の 3 業種である。 上期から下期にかけてのランク変動要因を見ていこう。ランクダウンした「繊維機械」は中国への販 2/3 一般財団法人 北陸経済研究所 売の落ち込みが理由である。ランクアップの「マンション・住宅」は、政府の政策や低金利の効果があ った。同じくランクアップした「温泉宿泊」は、北陸新幹線開業やインバウンドなどが貢献した。 28 年上期見通しのランク変動要因を見ると、 「建設機械」は排ガス規制強化の駆け込み需要の反動がし ばらく続くこと、「電子部品」はスマートフォンなど情報通信機器向けの需要の減速が予想されること、 「外食産業」は北陸新幹線効果がピークを過ぎると見込まれることが理由である。 ●27 年の産業全体の動向はプラス 産業全体の動向を把握するために、各業種のランクを数値に置き換え、23 業種を規模により加重平均し た数値を算出したところ、27 年上期は 3.46、下期は 3.47 であった(図表 3) 。26 年度上期を底として、 引き続き景況感が改善している。電子部品や 化学・医薬品など主要製造業が好調を維持し ていることに加えて、非製造業も景況感が回 復していることが要因である。業種別では、 図表 3 ランク加重平均の推移 5 全体 製造業 見通し 3.47 非製造業 3.79 3.84 4 3.51 3.29 3.02 製造業は上期の 3.84 から下期 3.79 まで低下 したが、下落の幅は小さい。非製造業は上期 の 2.98 から下期は 3.09 まで上昇し、消費税 増税以降で初めて 3 を超えた。 一方、28 年上期の見通しは 3.29 であり、 27 年下期と比較して▲0.18 の低下である。 業種別に分けると、製造業が▲0.28 低下の 3 2.98 3.09 2 3.46 1 0 下 期 上 期 下 期 平成 20年度 19年 度 上 期 下 期 21年度 上 期 下 期 22年度 上 期 下 期 23年度 上 期 下 期 24年度 上 期 下 期 25年度 上 期 下 期 26年度 上 期 下 期 上 期 27年度 28年 度 3.51、 非製造業が▲0.07 低下の 3.02 である。 製造業の低下幅が大きいのは、産業規模が大 (注)28 年度上期は見通し。 きい「電子部品」の景況感が悪化する見通し ◎各業種のランクを数値に置き換え( 「晴れ」=5、 「薄日」=4、 であるという理由が大きい。 「曇り」=3、 「小雨」=2、 「雨」=1) 、これを各業種の直近の 市場規模で加重平均した。 ●新幹線と消費税の動向に注目を これまでの 1 年間で、最大の注目点は北陸新幹線の開業である。産業への影響としては、特に非製造 業に大きな効果が出ている。27 年度上期以降、 「温泉宿泊」 「ホテル」 「外食産業」など、消費者向けのサ ービス業は景況感が良い。しかし、 「外食産業」は 28 年度上期にランクダウンの見通しとなるなど、一 部に慎重な見解も出始めている。 今後については、29 年度から予定されている消費税増税が注目される。28 年度内に発生する影響を見 ると、 「アルミ建材」 「プラスチック成形加工」 「マンション・住宅」 「家電販売」 「自動車販売」など、住 宅や自動車に関係する業種にとってはプラス要因である。また、日本銀行が導入したマイナス金利政策 による金利低下も、価格が高く購入に借入が伴うことが多いこれらの業種にプラス効果が見込まれる。 ただし、前回 26 年 4 月の増税後に大きな反動が生じたのもこれらとほぼ同じ業種である。個々の企業 にとって駆け込み需要を取り込む活動は重要であるが、増税後の反動減への警戒も同等以上に重要な経 営課題となる。増税が延期されると予想する声もあり、消費税の動向については引き続き注目していく 必要がある。 3/3 一般財団法人 北陸経済研究所
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