中国の天然ガス・LNG 需給動向 - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

更新日:2016/4/22
調査部:竹原 美佳
中国の天然ガス・LNG 需給動向
 2015 年は経済減速ならびに硬直的な統制価格により代替燃料に対する価格競争力が低下したこと
で消費の伸びは減速。長期契約による新規供給が需要の伸びを上回り供給過剰に。
 需要、供給ともに政府の 2015 年の目標は未達。需要や投資縮小で生産が減少した他、非在来型ガ
スの開発が低調。
 パイプライン輸入量は増加したが伸び率は鈍化。ウズベキスタンは国内需要増で輸出抑制、カザフ
スタンは上流権益保有企業(広匯<Guanghui>)が中国の国産 LNG 向けに調達していたが競争力低
下で抑制。
 LNG 輸入量は輸入開始以来初の前年割れ。長期契約の供給追加に対し需要が追い付かず、スポ
ット調達の抑制に加え、長期契約の見直し、調達の調整、出資事業持ち分 LNG の入札などで対
応。
 国有企業独占打破政策により発電・都市ガス事業者などの非国有石油企業が LNG 受入基地の第
三者アクセスを活用する他独自に LNG 基地の建設や調達を進めている。
 環境・排出抑制政策に伴い天然ガスの潜在需要は高いが、供給(国産・輸入ガス)、統制価格、電気
自動車などの不確実性が存在する。
 硬直的な統制価格により油価下落後価格競争力が低下、15 年 11 月の価格見直し後やや回復した
が需要喚起には卸価格の値下げ、柔軟性向上に向けた政策的支援が求められる。
 中国は中長期的に石炭を抑制し、非化石エネルギーを拡大する政策を進めているが不確実性が存
在、天然ガスはエネルギーミックスの調整役柔軟性が求められる。
 政府主導で設立した天然ガス取引所(上海天然気交易中心)は価格市場化政策に基づく中国の需
給を反映した指標価格(ハブ市場)の形成、アジアにおける価格指標の確立を目指している。課題
はあるが、公開・透明性のある市場創設に向けた動きとして注目。
 日中韓の LNG 大口購入者(JERA、CNOOC、Kogas)が LNG の提携に向け提携の動きがある。不確
実性の高い天然ガス調達への対応はアジア共通の課題であり、仕向地条項緩和など LNG 市場の
流動性向上に向けたアジア消費国間の連携として注目に値する。
1. 天然ガス需給の現状
(1)2015 年の需給実績、政府目標とのかい離
新華社やコンサルタント情報によると、2015 年の天然ガス見かけ消費量は前年比 1.6%増(29 億 m3 増)
の 1,844 億 m3(17.8Bcfd)であった。生産は同 1.2%増(15 億 m3 増)の 1,273 億 m3(17.3Bcfd)、純輸入量
–1–
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
は同 2.4%増(13 億 m3 増)の 571 億 m3(5.5Bcfd)で輸入比率は 31%である(図 1)。
消費の伸びは 2013 年以降減速している。2015 年は前年の約 9%増や 2006~2014 年の年平均 10%増
(年約 150 億 m3 増)に対し大きく鈍化した。国産ガスの供給は同期間に年平均 16%増加(年約 80 億 m3
増)しており、年 150 億 m3 の需要の伸びの約 5 割を国産ガス、残り約 70 億 m3 を輸入ガスがまかなって
いた。
2,400
30%
25%
1,900
20%
1,400
15%
900
10%
400
5%
(100) 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 0%
(億m3/年)
国産ガス
LNG
輸入パイプラインガス
輸出
消費成長(%)
図 1:天然ガス需給推移(2000~2015 年)China LNG Weekly、新華社 China OGP 等に基づき作成
(2)
国産ガス供給:需要低下や投資縮小で生産が減少した他、非在来型ガスの開発が低調で政府
の 2015 年の供給目標は全て未達
政府は環境・排出抑制の観点から非化石エネルギー同様天然ガスの利用促進を進めており、2015 年
の天然ガス消費がエネルギーに占める比率を 7%とする目標(予測性指標)iを設定していたが、実際は
5.9%にとどまり目標は達成できなかった。消費のみならず供給も「エネルギー産業の大気汚染防止作業
計画に関する通知」(14 年 5 月公示)iiにおいて政府が設定した目標(表 1)を 2 割(約 400 億 m3)下回る
結果となった。
–2–
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2015 年の国産天然ガスの生産について政府は 1,450 億 m3(14Bcfd)とする目標を設定し、そのうち 65
億 m3(0.6Bcfd)はシェールガスであった。しかし 2015 年の天然ガス生産 1,273 億 m3(17.3Bcfd)にはシェ
ールガス生産約 45 億 m3(4.3Bcfd)が含まれており、政府目標を 20 億 m3 下回った。
シェールガスの生産は Sinopec による四川堆積盆地東南部に位置する涪陵(Fuling)シェールガス鉱
区の開発が進み、2014 年の 15 億 m3 から 3 倍に増加し、生産に占める比率も 1%から 3%に増加したが、
その他の開発が進まず政府の供給目標(2015 年)を下回った(図2、表1)。またシェールガスの生産コス
トは 6 ドル/MMBtu 前後で開発促進のため 0.4 元/m3(1.7 ドル/MMBtu)の補助金が支給されていた
が、2016 年以降は 0.3 元 m3(1.3 ドル/MMBtu)、2018 年以降は 0.2 元 m3(0.9 ドル/MMBtu)に減額さ
れることもあり、急速な発展は難しいと思われる。
図 2:Sinopec の涪陵(Fuling)シェールガス開発エリア(出所 Sinopec)
ちなみに 2016 年1 月に中国国家統計局が発表した天然ガス需給(速報ベース)によると、生産は前年
比 5.6%増の 1,350 億 m3(17.3Bcfd)となっているが、これは炭層ガス(CBM・CMM)の生産(利用量)約 88
億 m3(0.8Bcfd)を含む。CBM・CMM は山西省を中心に開発・利用が進んでいるが、政府目標 100 億 m3
(1.0Bcfd)を下回った(図 3、表1)。
–3–
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
表 1:政府供給目標と 2015 年実績 単位:億 m3
2015年(実績)
政府天然ガス供給目標
エネルギー発展戦
エネルギー産業の大気汚染防止作業
略行動計画
計画に関する通知(14年5月公示)
(14年11月公示)
2015年(目標)
2017年
2020年
1次エネルギー消費に占める
天然ガス(CBM・CMMを除く)
天然ガス供給(在来型、タイト
ガスを含む)
シェールガス供給
5.90%
7%
9%
10%以上
1,228
1,385
1,650
1,850
45
65
100
300
天然ガス供給計
1,273
1,450
1,750
2,150
輸入(パイプライン)長期契約
336
450
650
輸入(LNG長期契約)
輸出(パイプライン)
天然ガス供給(国産・輸入)
参考:CBM・CMM利用量
参考:供給計(CBM・CMM利
用量を含む)
参考:石炭合成ガス(CTG)供
給
268
-32
1,844
88
1,932
345
469
2,245
100
2,345
2,869
170
3,039
15
90
320
240
エネルギー産業の大気汚染防止作業計画に関する通知(2014 年 5 月)、エネルギー発展戦略行動計画
(2014 年 11 月)、CBM 探鉱開発行動計画に関する通知(2015 年 2 月)に基づき作成
図 3:中国の CBM 資源
–4–
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
また天然ガスの供給には含めないが、中国政府は CBM・CMM に加え石炭合成ガス CTG(Coal To
Gas;石炭をガス化しメタン化反応によりメタンを生成<CO+3H2→CH4+H2O>)を含めた“天然ガスの供給
目標”を 2015 年に 2,300 億 m3 と示しているので CTG の供給についても述べる。CTG の 2015 年の生産
量は約 15 億 m3/年である。CBM・CMM、CTG を加えた 2015 年の供給は 1,924 億m3(18.6Bcfd)で政府
の目標を下回っている(表1)。
CTG の生産量は 2013 年の 19 億 m3(0.2Bcfd)から 15 億 m3 に減少した。CTG 開発は地方振興と低品
位炭の活用という観点から一時脚光を浴び、計画中プロジェクトの生産能力は約 1,000 億 m3/年に達し
た。また長距離輸送パイプラインの計画も進行中だが、経済性や環境への影響(温室効果ガスの排出や
水消費)について懸念が浮上し、2014 年 7 月に政府は「石炭液化(CTL)及び石炭由来の合成天然ガス
プラント(CTG)について科学的な秩序ある発展を求める通知」(国家能源局 2014 年 7 月、国能科技
[2014]339 号)を公示し、CTG の開発許認可について慎重な姿勢に転じた。現在操業中のプロジェクトは
内モンゴルの大唐克旗、匯能化工、新疆の慶華伊犂の 3 件(生産能力計約 30 億 m3/年)にとどまって
いる。Sinopec が計画中の新疆-広東-浙江 CTG パイプライン(総延長約 8,000km、輸送能力 300 億
m3/年)は 2015 年 6 月に環境影響評価について環境保護部の承認を得た。また 2016 年 3 月には
CNOOC の山西省大同 CTG 事業(40 億 m3/年)が同様に環境保護部の承認を得たが CTG の急速な
発展は期待できない。
ちなみに日本の都市ガスにおいて 1970 年代に天然ガスへの転換が進んだ石炭ガス(石炭を蒸し焼き
にして製造)は中国においても天然ガスへの転換が進んでいる(図 4)。石炭ガスの消費量は 2005 年の
256 億 m3 から 2014 年には 5 分の 1 の 56 億 m3 に、利用人口も 4,369 万人から 1,757 万人に減少した。
天然ガスの消費量は 2005 年の 210 億 m3 から 2008 年には石炭ガスの消費量を上回り 2014 年には 4.6
倍の 964 億 m3 に、利用人口は 7,104 万人から 2 億 5,793 万人に拡大した。LPG は、消費総量は、2005
年の2,047万トンから2014年には3,290万トンに増加しているが都市ガスとしての利用は2005年の1,220
万t(熱量換算 157 億 m3)から 2014 年には 1,083 万t(同 140 億 m3)と 2007 年をピークに減少、利用人口
も 2006 年の 1 億 8,013 万人から 1 億 4,3787 万人に減少した。
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1,200
億m3
964
1,000
800
600
400
140
200
56
0
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
石炭ガス
消費量(億m3)
天然ガス
消費量
(億m3)
LPG消費
(億m3)*
図 4:都市ガス供給推移(石炭ガス、天然ガス、LPG:2005~2014 年) 中国能源統計年鑑に基づき作成
(3) 天然ガス輸入(パイプライン・LNG)
天然ガス輸入量(2015 年)は前年比 3.4%増の 603 億 m3(5.8Bcfd)のうちパイプラインの輸入が輸入全
体の 56%、LNG が 44%を占める(図 5)。パイプラインガスの輸入量は前年比 7.2%増(23 億 m3 増)の 336
億 m3(3.2Bcfd)であった。LNG の輸入量は同 1.1%減(22 万トン減)の 1,967 万トン(268 億 m3、2.6Bcfd)で
あった。天然ガス輸入量から香港地域へのパイプラインガスの輸出 32 億 m3(0.3Bcfd)を除く天然ガスの
純輸入量(2015 年)は前年比 2.4%増の 571 億 m3(5.5Bcfd)で輸入比率は 31%である。
ミャン パプアニュー
マー ギニア
4%
カザフ 6%
スタン
1%
ポートフォリ
オ・スポット
4%
豪州
マレーシア
12%
7%
ウズベキ
スタン
3%
インドネシア
6%
トルクメニス
タン
46%
カタール
11%
–6–
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図 5:天然ガスの国別輸入比率(2015 年)
China LNG Weekly に基づき作成
① パイプラインガス輸入:輸入量増加、伸びは鈍化
パイプライン輸入の伸びは 2014 年以降減速している。2015 年は前年の 15%増や 2011~2014 年の年
平均 31%増(年約 60 億 m3 増)に対し大きく鈍化した。トルクメニスタンからの輸入はパイプラインガスの輸
入の 79%、天然ガス輸入全体の 46%を占める最大の輸入相手国である。ミャンマーからの輸入は前年比
31%増加し、パイプラインガスの輸入の 11%を占める。ウズベキスタンは同国国内需要の増加で輸出を抑
制している。カザフスタンからの輸入はトルクメニスタンやウズベキスタンとは異なり同国の上流権益を保
有する広匯能源(Guanghui)が独自のパイプラインにより中国新疆の国産LNGプラント向けに輸入してい
たが、油価低迷に伴う国産 LNG の競争力低下で調達を抑制した模様である(図 5、図 6)。
400
カザフスタン
1%
ウズベキスタ
ン
9%
ミャンマー
11%
億m3
300
200
トルクメニスタ
ン
79%
100
0
2010年
2011年
トルクメニスタン
2012年
ウズベキスタン
2013年
2014年
カザフスタン
2015年
ミャンマー
図 6:パイプラインガスの国別輸入シェアと輸入推移(2010~2015 年)
② LNG 輸入:日韓に次ぐ世界 3 位の LNG 輸入国だが初の前年割れ
2015 年の世界の LNG 輸入量 2 億 4500 万トンのうちアジアが 72%の 1 億 7700 万トンを占め、日本は
35%(約 8500 万トン)と最大の輸入国である。中国は輸入全体の 8%iiiを占め日本、韓国に次ぐ世界第 3 位
の輸入国である。
中国の LNG 輸入は 2006 年以降右肩上がりで伸びていたが、パイプラインと同様 2014 年以降減速し
た。特に 2015 年は 2006 年の輸入開始以来初の前年割れであった。国別で見ると豪州が LNG 輸入の
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28%、天然ガス輸入全体の12%を占める最大のLNG輸入相手国である。2014年は最大であったカタール
(LNG 輸入の 24%、輸入全体の 11%)が 2 位となり、マレーシア(同 17%、7%)、インドネシア(同 15%、6%)、
パプアニューギニア(同 8%、4%)と長期契約の相手国が続く(主要輸入相手先輸入の一部にスポット、ポ
ートフォリオが含まれる)。油価が低迷しスポット LNG 価格は大きく低下していたが、国有石油企業は長
期契約に縛られ長期契約以外(短期・ポートフォリオ契約を含む)の調達を抑制した模様であり、長期契
約以外の比率は 2014 年の 17%から 8%に低下した(図 5、図 7)。
スポット・ポート
フォリオ
8%
パプアニューギ
ニア
8%
2,500
万t/年
2,000
豪州
28%
1,500
1,000
カタール
24%
マレーシア
17%
インドネシア
15%
500
0
2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
豪州
マレーシア
インドネシア
カタール
パプアニューギニア
スポット・ポートフォリオ
図 7:LNG の国別輸入シェアと輸入推移(2010~2015 年) China LNG Weekly に基づき作成
(主要輸入相手先輸入の一部にスポット、ポートフォリオが含まれる)
③ LNG 輸入:長期契約見直し、調整
また長期契約についてカタールからの LNG 調達は前年の 680 万トンから約 200 万トン減少した。これ
は契約の見直し、調達の契約下限(Downward Quantity;DQT)への抑制、調達時期を需要期である冬場
に合わせ調整(先送り)したものと推測される。カタールからの LNG 輸入の月間推移を見ると 4 月と 5 月
に同国からのLNG輸入が減少し、11月以降の輸入が前年に比べ増加していることがわかる(図8)。ちな
みにアジアの他の国でもインド、日本、韓国がカタールからの輸入を前年に比べ減らしているがアジア
の減少分は欧州に向かっている。英国、イタリアなどが輸入を増やした。中東でもエジプトが輸入を開始
したことにより増加しておりカタールの輸出総量はむしろ増加している。
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カタールからのLNG輸入(2014年1月~2016年2月)
140
120
100
80
60
40
20
0
図 8:カタールからの LNG 輸入(2014 年 1 月~2 月) China LNG Weekly に基づき作成
④ 国有石油企業に出資事業持ち分 LNG 入札、転売の動き
CNOOC は豪 QC LNG を 2015 年 9 月と 11 月に計3カーゴを入札に付し、9 月の入札分については
BP と BG が引き取ったと報じられている。QC LNG は CBM を供給源とする豪州の LNG プロジェクト(液
化能力 1 系列 425 万トン/年、2014 年生産開始)でオペレーターは BG(50%)、CNOOC はプロジェクト
に 50%出資するとともに 360 万トン/年(2014~2034 年まで 20 年間)の売買契約を締結しており 2014 年
に広東・珠海(Zhuhai)受入基地(受入能力 350 万トン/年)で引き取りを開始した(表 2)。
表 2:2015 年の LNG 入札・転売事例
供給
売買契約・仕向け先
豪QC LNG(CBM)
液化能力(1系列):425万トン/年
生産開始:2014年
事業者:BG(50%)、CNOOC:50%出資
売買契約:360万トン/年(14~34年)
2015年LNGを入札、転売
広東・珠海(Zhuhai):350万トン/年
操業中、事業者:CNOOC他
天然ガスリファレンスブック他に基づき作成
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図 9:LNG 長期契約の追加供給
今後 Sinopec が Austraria Pacific LNG(以下、AP LNG)について契約の見直し、調達の調整あるいは
余剰の LNG を入札に付すのではないかと見られている。AP LNG は Curtis LNG と同様 CBM を供給源
とする豪州の LNG プロジェクト(1・2系列計 860 万トン/年、2015 年に生産開始)でオペレーターは
Origin Energy(37.5%)である。Sinopecはプロジェクトに 25%出資(残り37.5%は ConocoPhillips)するとともに
760 万トン/年(2015~2035 年まで 20 年間)の売買契約を締結している(残り 100 万トン/年は関西電力
が契約)。2016 年に山東・青島(Qingdao)受入基地(受入能力 300 万トン/年)と広西・北海(Beihai)受入
基地(受入能力 300 万トン/年)で引き取りを開始したが、青島基地は主にパプアニューギニア LNG
(200 万トン/年の売買契約を締結)の LNG を受け入れており、AP LNG を大量に引き取る余地はない。
本来 Sinopec は AP LNG を北海ならびに天津受入基地(1 期受入能力 300 万トン/年)で引き取る予定
であったが天津は工程の難易度や住民の移転及び補償、行政認可手続きに手間取ったことを理由に建
設が遅延しており、2016 年中の操業開始は難しいとされる。また青島等他の受入基地の拡張による対応
も短期間では難しい状況だ。
2016 年には Gorgon LNG も供給を開始する。Gorgon LNG(1~3 系列計 1,560 万トン/年、2016 年
に生産開始予定)のオペレーターは Chevron(47.333%)である。PetroChina は Shell ならびに ExxonMobil
– 10 –
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と計 425 万トン/年(2015~2035 年まで 20 年間)の売買契約を締結している。同社は Gorgon LNG を
河北唐山(Tangshan)受入基地(受入能力 350 万トン/年)ならびに拡張中の大連(Dalian)受入基地(拡
張後の受入能力は 600 万トン/年)で引き取る予定である。
表 3:2016 年に供給を開始する LNG
供給
契約量・仕向け先
豪AP LNG(CBM)
液化能力(1・2系列):860万トン/年
生産開始:2015年
事業者:Origin Energy(37.5%)、
Sinopec:25%出資
売買契約:760万トン/年(15~35年)
①広西・北海(Beihai):350万トン/年
操業中、事業者:Sinopec他
②天津(Tianjin):300万トン/年
事業者:Sinopec他
建設遅延(2017年以降)
豪Gorgon
液化能力(1~3系列):1,560万トン/年
生産開始:2016年(予定)
事業者:Chevron、Shell、ExxonMobil
売買契約:425万トン/年(15~35年)
①河北・唐山(Tangshan):350万トン/年
操業中、事業者:PetroChina他
②大連(Dalian):300→600万トン/年
拡張工事中、事業者:PetroChina他
– 11 –
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
図 10:主な LNG 受入基地、パイプライン
2. 今後の見通し
(1)非国有石油企業の LNG 輸入事業への参加
2014 年頃から非国有石油企業の LNG 輸入事業への参加が進んでいる。北京ガス等を傘下にも
つ国有コングロマリット北京控股(Beijing Holdings)、国産 LNG の製造販売からカザフスタン
上流、LNG 受け入れ基地建設へと事業を広げる広匯能源(Guanhui)、五大国有発電企業の中で
ガス事業に最も熱心な華電(China Power)、河北を拠点に手広く都市ガス事業を展開している新
奥(ENN)などを中心に既存の LNG 受入基地を利用したスポット LNG の輸入や独自の LNG 受
入基地の建設、計画が進行中である。
① LNG 受入基地第三者アクセス(2014~2015 年)
中国の操業中のLNG 受入基地は 13 カ所
(受け入れ能力計約 4,180 万トン/年≒570 億m3/年)
あり、
民間の都市ガス事業者九豊
(Jovo)
の広東・東莞受入基地を除き国有石油企業 3 社
(CNOOC、
PetroChina、Sinopec)が地方政府傘下企業と共同で出資・操業している(図 10)。
2014 年から 2015 年にかけて PetroChina の江蘇・如東(受入能力 350 万トン/年)、河北・
唐山(受入能力 350 万トン/年)、遼寧・大連(受入能力 300 万トン/年)を利用し、上海市政
府系の公益企業申能(Shenergy)、新奥(ENN)、如東基地に 35%出資している太平洋油気(Pacific
Oil & Gas)、親会社北京控股は唐山基地に 29%出資している北京燃気(ガス)がスポット LNG
を調達した(表 4)。調達量は約 50 万トンで 2015 年の LNG 輸入量の約 2.5%に相当にすぎない。
受入基地の第三者アクセスは港湾や設備の空き状況を確認し、船を手配すると少なくとも 2 か月以
上前もって準備する必要があるなど課題も多く、企業は独自の基地建設を検討している。
表 4:LNG 受入基地への第三者アクセス(2014~2015 年)
– 12 –
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
受け入れ基地
出資国有石油企業
利用企業
江蘇・如東
Jiangsu・Rudong
PetroChina
上海申能(Shenergy)、新奥
(ENN)、太平洋油気(Pacific
Oil & Gas)*
河北・唐山
Hebei・Tangshan
北京燃気*
遼寧・大連
Laioning・Dalian
広匯
*太平洋油気は如東基地に 35%出資、北京燃気親会社北京控股は唐山基地に 29%出資
② 非国有石油企業による LNG 受入基地の建設
少なくとも広匯能源(Guanghui)、新奥(ENN)、華電(Huadian)の 3 社が LNG 受入基地
の建設、計画を行っている。これら 3 社は Petronas、Chevron、Total、豪 Origin Energy、BP、
Chevron と 2018~2020 年頃の予定で LNG430 万トン/年の調達で基本合意している。もしこれ
が実現すれば中国の2020年のLNG輸入の1割程度を非国有石油企業が占めることになる
(表6)
。
【Jovo】
操業中のものは民間の都市ガス事業者九豊(Jovo)の広東・東莞受入基地(受入能力 100 万ト
ン)のみである。同社は当初スポットあるいは PetroChina から内航船で LNG を調達するなどし
ていたが 2014 年にマレーシア Petronas と 30 万トン/年の短期契約(2014~2018 年の 4 年間)
を締結した。
【広匯能源】
広匯能源(Guanghui)は江蘇省啓東(Qidong)で LNG 受け入れ基地の建設を計画している。
初期の受け入れ能力は 60 万t/年で 300 万t/年への拡張計画がある。同社は 2015 年 12 月に
カナダ Pacific NorthWest LNG(2015 年 6 月に条件付きで最終投資決定、液化能力 1,200 万ト
ン/年、2019 年生産開始予定)から LNG を購入することで基本的に合意(HoA)した。ただし
契約数量や輸入開始時期は不明である。
【新奥】
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
新奥(ENN)は浙江省舟山で LNG 受け入れ基地を建設中である。受け入れ能力は 300 万トン
/年で、操業開始は 2018 年の予定である。バンカリング(船舶燃料)ターミナルである。同社は
2016 年 1 月に Chevron と Gorgon LNG を最大 50 万トン/年(2018~2019 年から 10 年)の
購入で基本合意(HoA)、Total とは 2016 年 2 月に 50 万トン/年(2018 年から 10 年)の購入
で基本合意(binding HoA)、2016 年 3 月には豪 Origin Energy と最大 50 万トン/年(2018
~2019 年から 10 年)の購入で基本合意(HoA)した。
2016 年 3 月、新奥集団(ENN グループ)子会社新奥生態控股股分有限公司(ENN Ecological
Holdings Co., Ltd)は、Santos 株式 11.7%を 7 億 5,000 万ドルで取得、筆頭株主になった。ENN
は今回の戦略的な株式取得は、今般の株式取得は同社のクリーンエネルギー産業チェーンにおける
上流事業の多角化、業務の国際展開戦略に合致したものと述べている。
【華電】
華電は中国五大発電企業(華電、華能、大唐、国電、国家電力投資公司)の 1 社で天然ガス火力
発電能力の比率が 6.5%と 5 社の中で最も高くさらに 10%に拡大する計画とされる。同社は LNG
受入基地 4 基地の建設を計画している。江蘇省連雲港市赣榆(Ganyu)で 600 万トン/年の受入
基地建設を計画している他広東・汕頭(Shantou)150 万トン/年、広東・江門(Jiangmen)、
海南・澄迈(Chenmai)300 万トン/年などの計画がある。また、は湖南・临湘(Linxiang)に
LNG 貯蔵ターミナルの建設を計画している。
同社は2015 年4 月にはSinopec を通じカナダPacific
North West LNG から LNG80 万トン/年を購入することで合意した。2015 年 10 月には BP と
LNG100 万トン/年の購入で基本合意(HoA)した。2015 年 12 月には Chevron と最大 100 万ト
ン/年の購入で基本合意(HoA)した。
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
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表 5:非国有石油企業の主な LNG 受入基地(建設・計画中)
企業
九豊
(Jovo)
操業中
建設中
広匯能源
(Guanghui)
新奥
(ENN)
華電
(Huandian)
計画中
華電
(Huandian)
華電
(Huandian)
華電
(Huandian)
受入能力
(万t/年)
立地
広東・東莞
(Guangdong
Dongguang)
稼働開始
100
江蘇・啓東
(Jiangsu Qidong)
稼働中
60 2018年(見込み)
浙江・舟山
(Zhejiang・
Zhoushan)
300 2018年(見込み)
江蘇・赣榆
(Jiangsu Ganyu)
広東・汕頭
(Guangdong
Shantou)
広東・江門
(Guangdong
Jiangmen)
海南・澄迈
(Hainan
Chenmai)
600 未定
150 未定
300 未定
300 未定
稼働・建設・計画計
1,810
表 6:非国有石油企業の LNG 調達(合意)
数量
(万トン/年)
広匯能源
(Guanghui)
新奥
(ENN)
新奥
(ENN)
新奥
(ENN)
華電
(Huandian)
Petronas
(加Pacific
NorthWest
LNG)
Chevron
(Gorgon)
Total
(ポートフォリオ)
豪Origin Energy
(GLNG他ポート
フォリオ)
Petronas
(加Pacific
NorthWest
LNG)
華電
(Huandian)
BP
華電
(Huandian)
Chevron
合計
合意時期
2015年12月
N.A HoA
最大50 2016年1月
50
2016年2月
Binding HoA
最大50 2016年3月
80 2015年4月
2015年10月
100 non-bingding
HoA
2015年12月
最大100 HoA
契約開始時期
契約開始年
契約期間
N.A
2018年~2019
年
10年
2018年
10年
2018~2019年
10年
契約開始年
20年
契約開始年
20年
2020年
10年
430万トン前後
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(2)需要の不確実性(価格、電気自動車)
また、環境・排出抑制政策に伴い天然ガスの潜在需要は高いが、供給(国産・輸入ガス)、統制価格、
電気自動車などの不確実性が存在する。
① IEA の天然ガス需給見通し
IEA は World Energy Outlook 2015 において中国は 2030 年には EU を抜き世界最大の天然ガス消費
国となる。中心シナリオにおいて天然ガスの需要は 2013 年の 1,730 億 m3 から 2020 年に 3,150 億 m3、
2040 年までに 4,190 億 m3 増え 5,920 億 m3 となる(年平均 4.7%、155 億 m3 増)。増加の 7 割は発電と産
業部門で特に建築部門は 2013 年から 2040 年までに 850 億 m3 伸びる。より多くの人間が天然ガスの集
中暖房を利用するようになる(石炭ボイラーからの転換)。2040 年には天然ガスが 1 次エネルギーに占め
る比率は現在のほぼ 2 倍の 11%となる見通し、ただしこれは世界平均の 21%を大幅に下回ると述べている。
供給については 2013 年の 1,210 億 m3 から 2020 年に 1,720 億m3、その後非在来型ガスの生産が拡大し
2040 年までに 2,350 億 m3 増え 3,560 億 m3 となる(年平均 4.1%、87 億 m3 増)と述べている。あくまで IEA
のシナリオであり 2014 年以降の需給低迷に伴い下方修正されると思われるが、この通りであれば需給ギ
ャップは 2020 年に 1,430 億 m3、2040 年には 2,360 億 m3 となり、輸入比率も現在の 3 割から 4 割超に拡
大する。
7000
億m3
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
2013年
2020年
2025年
生産
2030年
2035年
2040年
需要
図 11:IEA の中国天然ガス需給見通し IEA WEO2015 に基づき作成
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中国科学技術協会傘下の学術団体である能源研究会 CERS が 2016 年 3 月 1 日に発表した「中国能源
展望2030」(シナリオ)によると、2016~30 年の年平均成長率が 1.4%増という前提でエネルギー消費量は
2020 年に 48 億トン(標準炭換算<以下 tce>、石油換算 33.6 億トン<以下 toe>)、2030 年に 53 億 tce(37.1
億toe)に達する。環境政策と排出削減圧力の下、1次エネルギーミックスは多様化、向上する。石炭消費
が 1 次エネルギー消費に占める比率は 2020 年に 60%、2030 年に 49%となり、非化石エネルギーは 2020
年に 15%、2030 年に 22%となる。CERS は石油と天然ガスについて石油は 2025~30 年頃にピークに達
し、2030 年の消費は 4.6 億 toe(924 万 b/d)、天然ガスは 2030 年に 4.3 億 toe(4,800 億 m3)達しエネル
ギー消費の 12%を占めるとしている(図 12)。しかしこの見通しでは石油の成長が年平均約 10 万 b/d 減
少してしまい、天然ガスの成長は高過ぎる。石油はガソリン等の輸送燃料の需要により 2020 年代中葉ま
で成長が見込まれるため非現実的と思われる。そこで能源研究会予測の石炭・非化石のエネルギーミッ
クスの比率は変えずに石油と天然ガスについて IEA の年平均成長率を参照し試算を試みたところ石油
は 2020 年の消費が 1,250 万b/d、2030 年は 1,400 万b/d となり、天然ガスは 2020 年に 2,250 億m3、2030
年に 3,500 億 m3 となった(図 13)。
中国長期エネルギー見通し
(能源研究会・IEAを参照しJOGMEC試算)
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
2015年
石炭
2020年
原油
天然ガス
2030年
非化石
2015年
2020年
2030年
15/20成長
20/30成
長
原油(万b/d)
1,100
1,250
1,400
2.6%
2.3%
天然ガス(億m3)
2,000
2,250
3,500
2.4%
9.2%
図 12:中国の長期エネルギー見通し(能源研究会・IEA WEO の成長率を参照し JOGMEC 試算)
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② 供給の不確実性
中国は 2020 年の需給ギャップ(IEA WEO2015 ベース)約 1,400 億 m3 を上回る約 2,150 億 m3 に
ついて調達済み(ロシア西ルートを含む)である。
国産・輸入ガスのいずれも供給の不確実性がある。国産ガス(非在来型を含む)供給は前述の通り非
在来型ガスが伸び悩んでおり、在来型についても低油価に伴う国有石油企業の投資縮小が続いた
場合中期的な伸びは期待できない。
2020 年時点の長期契約の状況はロシアの西ルート(Altai)を含めた場合 7 割を占めるが中央アジ
ア、ミャンマーや 2020 年前後に供給開始が見込まれるロシアからの輸入ガス(特にパイプライン)の
供給について契約通りに行われるのか不確実性がある。LNG の供給に柔軟性があれば需給ギャッ
プを補うことができる。
2,500
億m3
2,000
ロシア(PNG)
カザフスタン
ミャンマー
ウズベキスタン
1,500
トルクメニスタン
ポートフォリオ・スポットLNG
ロシア(LNG)
1,000
カナダ
パプアニューギニア
カタール
マレーシア
500
インドネシア
豪州
0
2015年
億m3
2020年
長期契約
図 13:LNG・パイプラインガス長期契約(ロシア西ルートを含む)
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③ 統制価格
原油価格は 1994 年に市場化しており、石油価格は 2013 年 3 月に国際原油価格の変動に応じ 10 営
業日毎に見直す基本原則が導入され、柔軟性が高まった。政府は天然ガスの石油からの代替を促すた
めに石油より 2~3 割安く卸価格を設定していた。天然ガス自動車向けなどの需要が伸びたが、石油価
格に連動した天然ガスの輸入が増加するにつれて事業者の逆ザヤが拡大し、供給の安定性に懸念が
生じた。そこで政府は非民生用の天然ガス卸価格(シティゲート価格)について 2011 年 12 月に南部(広
東・広西)で試行的に非民生卸価格を市場に連動させた。油価に連動した上海ネットバック価格(上海を
基準市場とし各地のシティゲート価格を決定)という方式である。上海の代替燃料(重油・LPG)の 2010 年
輸入価格(重油 60%、LPG40%の加重平均)をもとに石油製品から天然ガスへの転換を促進するため 1 割
割り引いた。
表 7:天然ガス価格改革(2011 年~2015 年 11 月)
価格改革の概要
2011年12月
2013年7月
2014年9月
2015年4月
2015年11月
南部(広東・広西)で非民生卸価格の市場連動を試行
油価連動:上海の代替燃料(重油・LPG)の2010年輸入価格(重油60%、LPG40%の加
重平均)
割引率(10%):石油製品から天然ガスへの転換を促進するため1割割り引く
上海ネットバック:上海を基準市場とし各地のシティゲート価格を決定する
熱量(低位):重油1万kcal、LPG1万2000kcal、天然ガス8,000kcal
全国の非民生卸価格見直し
二段階の価格
①前年消費
②増加分(2011年に南部で試行した制度を適用、ただし代替燃料の輸入価格は2012
年、割引率は15%)
全国の非民生卸価格見直し
①前年消費(価格は平均18%上昇)
②増加分(価格は据え置き)
非民生卸価格見直し
前年消費と増加分価格を統合
①前年消費(価格は平均20%上昇)
②増加分(価格は平均15%下落)
直送価格(化学肥料を除く)の自由化試行
非民生卸価格見直し
①値下げ(30%)
②シティゲート価格を上限価格から基準価格に切り替え、基準価格から上下20%の変動
を認める
前年消費
価格
ドル/
MMBtu
増加分価
格
ドル/
MMBtu
-
-
9.0
12.7
10.6
12.7
10.6
7.7
2013 年 7 月にはこのネットバック価格が全国の非民生シティゲート価格に適用された。この時は前年
消費と増加分(2011 年の南部試行制度を適用し、代替燃料の輸入価格は 2012 年、割引率は 15%)という
二段階の価格が設定された。2014 年 9 月から 2015 年 11 月にかけて非民生用の卸価格(シティゲート価
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格)について 3 度見直しが行われ、2015 年 4 月には前年消費と増加分が統合され、価格は段階的に引
き上げられた。ところが 2014 年下期以降の油価低迷で 10 営業日毎に変動が可能な石油製品価格に比
べ硬直的な天然ガス卸価格は競争力が低下した。2015 年 11 月の見直しではシティゲート価格を 28%値
下げした他上下 20%の変動が許容されるなど柔軟性が高まり、2016 年 1 月以降需要はやや持ち直した
(図 14・15)。しかし恒常的な需要喚起には更なる卸価格の値下げ、柔軟性向上に向けた価格改革が必
要と思われる。
天然ガス卸・輸入価格(2013年1月~2015年12月、ドル/MMBtu)
18
16
14
12
10
8
6
4
2
2013年1月
2月
3月
4月
5月
6月
2013年7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
2014年9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
2015年4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
0
卸価格(前年消費)
卸価格(増加分、15年4月以降は統合)
パイプライン輸入(国境、加重平均)
LNG輸入(CIF平均)
参考:日本JLC
図 14:天然ガス価格推移
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図 15:天然ガス見かけ消費対前年消費(2014 年~2016 年 1・2 月)
新華社 China OGP、ICIS 等に基づき作成
④ 電気自動車普及拡大政策
中国政府は 13 次五か年計画において 2020 年までに新エネルギー車の累計販売台数を 500 万台と
する政策である。新エネルギー車とは電気自動車(バッテリー電気自動車;BEV)とプラグインハイブリッ
ド(PHV)を指す。2015 年の新エネルギー車の販売台数は 33 万台で BEV は前年比 4.5 倍の 24.7 万台、
PHV は同 1.8 倍の 8.4 万台であった。
能源統計年鑑によると 2014 年の天然ガス消費の約 1 割(約 215 億 m3)が交通輸送向けであり、
Energy Intelligence 社によると中国のバスとタクシーの 5%は天然ガス自動車(NGV)である。
NGV の多くは CNG(圧縮天然ガス)、2014 年末現在 CNG 車は 441 万台、LNG 車は 18.4 万台
である。これまで天然ガス自動車は地方政府が公共交通機関やタクシーからの転換を進めたことに
より伸びた。現在は充填ステーションなどのインフラは天然ガス自動車の方が勝っているが政府が
電気自動車を推進し、インフラの整備が急速に進んだ場合ガソリンスタンドなどのインフラが発展
しているガソリン・軽油自動車よりも天然ガス自動車はより影響を受けると思われる。
⑤ エネルギー・電源構成と天然ガス
中国政府は中長期的に石炭火力発電を抑制し、原子力などの非化石エネルギーを拡大する政策で
あり、2020 年までの 13 次五か年計画において石炭がエネルギーに占める比率を 60%以下、非化石
エネルギーを 10%以上とする拘束力のある目標を設定している(表 8)。2015 年 1~11 月時点で
非化石エネルギーが発電電力量に占める比率は 25.4%に達している一方で天然ガス火力が火力発
電に占める比率は 2~3%とピーク調整対応にとどまっている。
前述の中国能源研究会のシナリオによると発電電力量は 2020 年に 6 兆 8000 億 kWh、2030 年
に 8 兆 5000 億 kWh に達し、非化石エネルギー比率は 2020 年に 34.8%、2030 年に 44.3%に高ま
るとしている(図 16)。中国政府は天然ガスについて発電よりも都市ガスや石炭や石油ボイラー
の転換などに向けたいと考えており、基本的に発電向けの伸びしろはそれほど高くはないと思われ
るが石炭の抑制とそれに伴う非化石エネルギーの拡大には不確実性が存在するため、天然ガスに柔軟
性のある供給が求められることとなる。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
表 8:エネルギー・電源構成と天然ガス
「エネルギー産業の大気汚染防止作業計画」(発改委 2014 年 5 月)、「エネルギー発展戦略行動計画」(国
務院 2014 年 11 月)、13 次五か年計画(2016 年 3 月)、中国能源研究会(2016 年 3 月)にもとづき作成。
2015 年実績は国家統計局等にもとづき作成
100000
100,000
85,000
80000
80,000
68,000
60000
60,000
51,257
40000
40,000
20000
20,000
0
2015年1-11月
(実績)
0
2015年1-11月 2020年予測 2030年予測
(実績)
(能源研究会) (能源研究会)
水力
2015年1-11月
2020年
2030年
水力
18.1%
18.8%
16.9%
風力
3.2%
5.4%
10.6%
原子力
3.0%
5.6%
11.8%
非化石計
25.4%
34.8%
44.3%
火力
2020年予測
(能源研究会)
原子力
風力
2030年予測
(能源研究会)
太陽光他
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
図 16:中国の発電電力量長期予測
(3)市場創設、アジア消費国連携の動き
①上海石油天然気交易中心(SHPGX)の設立
中国は政府主導で天然ガス取引所を設立した。2015 年 3 月に上海自由貿易区で上海石油天然気交
易中心(SHPGX)を設立した。出資企業は 10 社で資本金は 10 億元である。出資企業の筆頭は国営通信
社の新華社(価格等のデータを発行)、国有石油会社 3 社(PetroChina、Sinopec、CNOOC)も参加してい
る。国有、地方政府系、民間の発電・都市ガス企業として申能(Shenergy)、北京燃気、新奥(ENN)、中国
ガス、香港中華ガス、華能が参加している。政府が同取引所を設立した目的は天然ガス価格の市場化政
策に基づく中国の需給を反映した指標価格の形成、アジアにおける価格指標(上海ハブ)の確立にあ
る。
図 17:上海石油天然気交易中心(SHPGX)
政府は 2015 年 11 月に市場化推進に関する通知「非民生用天然ガスシティゲート価格引き下げと価格
の市場化を推進する改革に関する通知」(2015 年 11 月 18 日、発改価格【2015】2688)を出した。ポイント
は下記の通りである。
・需給双方が上海石油・天然ガス交易中心(取引所)を活用し、価格政策の許容範囲内(基準価格の上
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下 20%)で取引を行い、取引価格を形成し、2~3 年以内に非民生ガスの公開・透明な取引を行うことを目
指す。
・生産・輸入事業者は長期的な視野で取引に取り組む
・取引所の会員は場内・場外取引の数量・価格等の情報を共有する
・取引所は規範的な管理、運営、透明な取引、公に認められる価格設定に至る手段や方法を追求する
現時点では取引の透明性についての担保、プレイヤーの規模(供給側がどの程度取引に参加するの
か)、また取引を行うにあたり法規制や貯蔵インフラ等の整備が十分にあるのかなど不明な点が多いが
公開・透明性のある市場創設に向けた動きとして注目に値する。
SHPGX は 2015 年 7~12 月にかけて現物取引の試験運用を行い、2016 年から現物取引の本格運用
を、将来は先物取引を予定している。課題(統制価格、市場流動性、法規制、貯蔵インフラ整備など)は
あるが公開・透明性のある市場創設に向けた動きとして注目している。
② アジア LNG 消費国間連携の動き
JERA(東京電力と中部電力の燃料上流・調達から発電に至る合弁会社)はアジア LNG 消費国との連
携を進めている。2015 年7 月にはタイ発電公社EGAT との「LNG 事業」の協働検討に関する覚書を締結
し、2015 年 10 月 シンガポールのパビリオンガスとの LNG ビジネスに関する覚書を締結した。
2016 年 2 月には韓国 Kogas、中国 CNOOC(それぞれの国の最大の LNG 需要家)と LNG の調達提
携について交渉中と伝えられる。JERA-Kogas-CNOOC の 3 社を合わせ調達量は 8,000 万トン/年あり
これは世界の LNG 需要の 3 分の 1 に相当する。まだ合意には至っていないが不確実性の高い天然ガ
ス調達への対応はアジア共通の課題であり仕向地条項緩和など LNG 市場の流動性向上に向けたアジ
ア消費国間の連携として注目に値する。
参考:中国の国有企業独占打破政策
2013 年 11 月の中国共産党第 18 期中央委員会第 3 回全体会議(18 期三中全会)において「混合所有
経済」、「資源配分の市場化」ならびに「資源価格の市場化」という方針が示された。「混合所有経済」は、
国有資本と、集団資本、非公有資本(民間)が相互に資本参加、補完し合うことを意味する。「資源配分の
市場化」は行政独占(制度・規則上の市場参入障碍によって形成される独占)を崩すことを意味し、電力
網、鉄道網、通信網、石油・天然ガスパイプライン網などの整備部門と運営部門を分離する方針が示さ
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れた。この方針を受けて 2014 年 2 月に国家発展改革委員会や国家能源局が石油・天然ガスパイプライ
ンの開放試行法を公布・施行した。「資源価格の市場化」は、水、石油、天然ガス、電力、交通、通信分野
の価格改革ならびに競争的部門価格の自由化(市場価格化)を進めるという方針が示された。
2015 年 10 月に中国共産党第 18 期中央委員会第 5 回全体会議(五中全会)で討議され、2016 年 3 月
に採択された 13 次五か年計画(2016~2020 年)においても市場化改革、探鉱開発から輸入分野に至る
分野の開放、価格の市場化が示された(なお、エネルギー産業に特化した 13 次五か年計画は年内に公
示予定とされる)。
18期三中全会「決定」における石油・天然ガス
関連項目
国家発展改革委員会/国 非国有石油企業の動き
家能源局
混合所有制の発展
(国有企業への国有
〈異業種〉、集団、民間
企業による資本参加)
・Sinopec Corpの石油製品販
売への出資
・PetroChinaのシェール開発
事業への参加
競争的業務の自由化
電力、鉄道、通信、石
油・天然ガスパイプラ
インなどの整備・運営
部門の分離
パイプラインの開放管理
法試行(2014年2月)
LNG受入基地第三者アク
セス(2014年~)
非国有石油企業のLNG受
入基地建設承認(2014年
~)
非国有石油企業への原油
輸入ライセンス付与(2015
年~)
・PetroChinaパイプライン資産
の取得
・PetroChinaのLNG受入基地
を利用したスポットLNGの調達
・独自のLNG受入基地建設・
計画
・原油輸入ライセンス取得
資源価格の市場価格
化
水、石油、天然ガス、
電力、交通、通信の
価格
非民生天然ガス卸価格改
革(2015年11月他)
-
参考資料
中国:“新常態”下のエネルギー・環境政策とシェールガスの開発 (石油・天然ガス資源情報
2015 年 7 月)
「关于印发能源行业加强大气污染防治工作方案的通知」
IEA 天然ガス中期見通し(2015 年 6 月)、GIIGNL、IHS Energy、ダイヤモンドガスレポート
i“予測性指標”政策遂行の結果予測される指標、拘束力のある目標として拘束性指標が存在
ii「关于印发能源行业加强大气污染防治工作方案的通知」(发改能源[2014]506 号)2014
年 3 月 24 日付け、
公示 14 年 5 月 16 日)
iii 中国の統計によると LNG 輸入量は 1967 万トンだが、GIIGNL は純輸入量を 2002 万トンとしている
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