土木学会西部支部 平成 28 年熊本地震緊急災害報告(第3報)

2016 年 4 月 20 日 10:00
土木学会西部支部 平成 28 年熊本地震緊急災害報告(第3報)
熊本大学大学院先端科学研究部
教授
松田泰治
同上
教授
山尾敏孝
同上
教授
松田博貴
同上
教授
柿本竜治
同上
准教授
葛西 昭
同上
准教授
藤見俊夫
熊本大学政策創造研究教育センター
准教授
円山琢也
熊本大学減災型社会システム実践研究教育センター
客員教授
北園芳人
同上
特任准教授
鳥井真之
同上
特定事業研究員 稲本義人
九州大学大学院工学研究院
准教授
梶田幸秀
同上
助教
玉井宏樹
同上
助教
崔 準ホ
九州大学大学院工学府
技術職員
山崎智彦
長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科
准教授
吉田 護
目 次
1.地震の概要
2.益城町における被災状況
3.二俣石橋調査と橋台前の陥没
4.道路・橋梁の被害状況
5.熊本市内の被災状況
1.地震の概要
4 月 14 日 21 時以降に発生した震度 6 弱以上を観測した地震(4 月 19 日 21 時現在)
発生生時刻
震央地名
マグニチュード
最大震度
4 月 14 日 21 時 26 分 熊本県熊本地方
6.5
7
4 月 14 日 22 時 07 分 熊本県熊本地方
5.8
6弱
4 月 15 日 00 時 03 分 熊本県熊本地方
6.4
6強
4 月 16 日 01 時 25 分 熊本県熊本地方
7.3
6強
4 月 16 日 01 時 46 分 熊本県熊本地方
6.0
6弱
4 月 16 日 03 時 55 分 熊本県阿蘇地方
5.8
6強
4 月 16 日 09 時 48 分 熊本県熊本地方
5.4
6弱
熊本県内の被災状況:死者 44 名、行方不明 8 名、重傷 208 名、軽傷 865 名(4 月 19 日 9:00 現在)
:全壊 1,174 棟、半壊 1,303 棟、一部損壊 921 棟
:避難者数 116,861 名、避難所数 667 箇所
〔参考・引用資料〕
気象庁「報道発表資料:平成 28 年 4 月 19 日 22 時 00 分」
熊本県「第 11 回災害対策本部会議資料:平成 28 年 4 月 18 日 16 時 30 分」
2.益城町における被災状況(前震後と本震後の比較)
・国道 443 号,県道 28 号との交差点(寺迫)より 200m ほど北の地点において、14 日晩の前震後で
は,道路陥没が一部的であった(写真 左)が,16 日未明の本震では,アスファルト部分の割れが
全体的に進展し,陥没した部分も半分程度に及んでいる(写真 右)
.
前震後の状況
本震後の状況
・14 日晩の前震後の状況でヒビが入っていたブロック塀が、16 日未明の本震後には完全に倒壊した。
前震後の状況
本震後の状況
・家屋やアパートは、14 日晩の前震でなんとか持ちこたえた建物も、16 日未明の本震では傾いたり
倒壊したりしたケースが多く見られた。
前震後の状況
本震後の状況
3.二俣石橋調査と橋台前の陥没
写真1と写真2は,桁橋の橋台部付近の段差の橋台の橋軸方向の移動に伴い陥没や盛り上がりが発
生したと推定される.段差量は5㎝程度から20㎝程度とさまざまである.
・写真3と写真4は,美里町の二俣の石橋(福良渡)であるが,アーチ上部の壁石が地震により崩壊
した状況である.シートは雨水の浸入を防ぐ防水シートである.
写真1 橋梁橋台部付近の段差の発生状況1
写真3 二俣橋(福良渡)の壁石崩壊1
写真2 橋
写真4 二
4.道路・橋梁の被害状況
4.1 九州自動車道
前震における震度7を記録した益城町付近を通る九州自動車道として,
益城熊本空港 IC-嘉島 JCT
間に,秋津川および木山川が存在する.この 2 つの河川を跨ぐ橋梁として,秋津川橋と木山川橋の被
害状況を調査した.
(1)九州自動車道秋津川橋(益城熊本空港 IC~嘉島 JCT 間)
右側の橋脚の一番右端の支承が破損し,桁の下フランジの座屈が見られる.
同橋脚の中央側の支承も破損,支承板支承の支承板と思われる部品の落下,サイドブロックの落下が
見られた.
秋津川橋の熊本側の橋台.桁と橋台パラペットが衝突し,パラペットのコンクリートの剥落が見られ
る.橋台の背面のブルーシートが,盛土がくずれ道路陥没を起こした現場である.
(2)九州自動車道 木山川橋(益城熊本空港 IC~嘉島 JCT 間)
鋼製ピン支承を止めているボルトの抜け出しや,
支承の上沓やピンが無くなっている被害が見られる.
桁のフランジの座屈,落下したピンを確認できる.
4.2 九州新幹線高架橋橋脚(宇城市大野川の北側)
左の写真の左側が鹿児島側,
右側が熊本側で,
橋脚の右側のみにコンクリートのクラックが見られた.
橋脚に作用する軸力がアンバランスであると思われる.
この橋の熊本側では,防音壁の落下も見られ,現場直下に落下していた.
4.3 国道・県道等に架かる橋梁
(1)比丘尼谷橋
国道 57 号の 4 車線拡幅事業において建設された橋梁.熊本側橋台付近で斜面が崩壊している.橋
台,支承の損傷は起こっておらず,橋梁の崩壊は免れた.
全景
熊本側の橋台付近
(2)国道 57 号 立野交差点付近
路面に割れが生じている.また,標識柱の類いも傾いているものが見受けられた.
路面の割れ
標識柱の傾き
(3)阿蘇長陽大橋
阿蘇長陽大橋を熊本側から向かう場合の,橋梁へのアプローチ部分を調査した.路面は複雑に割れ
ており,橋台付近が崩落しており,長陽大橋を渡ることは不可能であった.写真右では,長陽大橋の
橋桁端部が見られる.
(4)九州自動車道緑川 PA 付近 府領橋
九州自動車道を跨ぐ橋梁.ロッキングピア形式を採用した橋梁である.ロッキングピアが座屈し,
崩壊するに至った.
(5)県道 28 号熊本高森線 大切畑大橋
橋軸直角方向に大きく動き,ゴム支承が破断した.落橋防止装置により,かろうじて橋桁は落ちず
にすんだ.
(6)断層の露呈 阿蘇グリーンヒルカントリー入り口付近
ゴルフ場への入り口となる道路に対して,軸直角に割れている様子である.この付近に断層が存在
することを示している.
(7)俵山トンネル入り口付近
入り口前に道路の大きな割れが存在する.
破壊のメカニズムについては,
今後検討する必要がある.
また,その付近にて,大きな斜面崩壊も見られた.
(8)桑鶴大橋
県道 28 号熊本高森線には,いくつかの橋梁が存在する.桑鶴大橋もその1つであり,斜張橋の 1
つである.桁端部に大きな損傷が見られ,主塔に存在する支承部分については,大きく桁が動いてい
る様子がうかがえる.
(9)桑鶴大橋付近における断層の存在
橋端から約 50~60m 南西には断層群が位置する.全体的には右横ずれのようで,場所によっては
垂直に約 50cm 変位している.産総研の活断層データベースによる布田川断層の推定位置のやや北側
であり,走行方向も大きく斜交することから,その付随断層と考えられる.
5.熊本市内の被災状況
・調査行程
東区東町公務員南住宅を自転車で出発し,健軍商店街を視察後,若葉地区を秋津川に沿って東へ移
動,県道 28 号線を東に移動し,木山交差点にて北上して益城町役場にて駐輪.町役場では,炊き出
しが行われていた.町役場から時計回りに東部,東南部,南部を徒歩で調査し,町役場に戻って自転
車を取り,帰宅.
9:00 東区東町公務員南住宅を自転車で出発,健軍商店街にてサンリブの崩壊現場の確認 図 1
10:00 熊本市農業協同組合 本店湖東支店(沼山津2丁目 8-26)前の倒壊現場 図 2
10:30 九州道と秋津川の交差地点.盛り土崩壊,橋梁部の基礎がゆがんでいた.図 3
12:10 木山交差点南東部,秋津川沿い,益城町文化会館裏の倒壊現場 図 4
12:30 木山神宮西部の倒壊現場.本日の調査現場の中では最も倒壊していた地域 図 5
12:50 同地区にて,区長さんが,無料で湧水の場所を教えておられていた. 図 6
図1 サンリブ崩壊
図 3 九州自動車道の橋脚不等沈下の可能性
図 2 家屋の倒壊.木造瓦屋根住居の倒壊
図 4 擁壁が転倒・周囲の家屋も半壊程度
図 5 調査で最も被害が大きい地域
図 6 区長さんが提供する周辺の方々の水