Q&A 特許:山本 裕

藤本昇特許事務所 山本 裕◇弁理士
諸外国における新規性喪失の例外規定について教えてください。
1.はじめに
特許を出願する前に公開され
(香川県 T.W)
● 米国の場合
適用対象
特に制限なし
猶予期間
公知となった日から12
カ月以内
基準日
米国出願日または優先日
証明書
提出義務なし
て公知となった発明は新規性を喪失し、
原則として特許を受けられません。
しかしながら、発明者本人による論
文発表などによって自らの発明を公開
した後に、その発明について特許出願
● 中国の場合
適用対象
中国政府が主催または認
める国際展示会、または
規定の学術会議あるいは
技術会議で、本人が初め
て開示した場合に限る
猶予期間
公知となった日から6カ
月以内
しても特許を受けられないとすると、
米国では猶予期間が長く、基準日と
基準日
中国出願日または優先日
発明者にとって酷な場合があります。
して優先日も考慮され、証明書を提出
証明書
その救済措置として、一定条件の下、
する義務がないので、日本よりも緩い
出願日から2カ月以内に
提出する必要あり
発明の新規性が喪失されていないとみ
規定ぶりとなっています。なお、米国
中国では基準日として優先日も考慮
なす新規性喪失の例外規定が多くの国
において、本例外規定は、米国特許法
されており、証明書の提出期限が長い
で設けられています。
102条
(b)
に記載されています。
というメリットがある一方、適用対象
以下、日本と比較しつつ、諸外国に
おける規定を説明します。
2.諸外国における新規性喪失の例外
はかなり制限されているため、トータ
● 欧州の場合
適用対象
規定の概要
公式または公認の国際博
覧会に、本人が開示した
場合に限る
猶予期間
公知となった日から6カ
月以内
特許公報等に掲載された
場合を除き、
特に制限なし
基準日
欧州出願日
猶予期間
公知となった日から6カ
月以内
証明書
出願日から4カ月以内に
提出する必要あり
基準日
日本での出願日
証明書
出 願 日 か ら30日 以 内 に
提出する必要あり
● 日本の場合
適用対象
なお、日本において、本例外規定は、
特許法30条に記載されています。
56 The lnvention 2016 No.5
ルで考えると、日本よりも厳しい規定
ぶりになっているといえます。
なお、中国において、本例外規定は、
専利法24条に記載されています。
3.おわりに
このように、米国、欧州および中国
における新規性喪失の例外規定は、日
本と異なる点があるため、当該規定の
欧州は証明書の提出期間が長いもの
適用を受けようとする場合には、その
の、適用対象はかなり制限されている
違いに十分注意する必要があります。
ので、日本より厳しくなっています。
また、この規定はあくまで例外規定
欧州における本例外規定は、欧州特
ですので、発明を公知にする前に、特
許条約55条に記載されています。
許出願しておくことを推奨します。