平成28年度 内閣・内閣本府等、復興庁及び 外交関係予算

特集
平成 28 年度
内閣・内閣本府等、復興庁及び
外交関係予算について
主計局主計官 山崎
翼
1.概観
など、内閣の重要施策の企画・立案のための担当
私が担当する、内閣、復興、外務、経済協力係
組織がアド・ホックに設置されることが多く、年
の予算の特徴の一つは守備範囲の広さである*1。
末の予算編成においては、財源や予算措置を巡り
内閣係では、皇室費を筆頭に 、憲法等において
厳しい折衝が行われることとなる。
*2
独立した地位を付与された国の機関、すなわち、
以下では、私が担当する 28 年度の内閣官房、
国会、裁判所、会計検査院の予算については、財
内閣府、復興庁及び外交関係予算の具体的内容に
政法上「二重予算制度」 という特別な制度が設
ついて説明することとしたい。
*3
けられているが、このうち国会と会計検査院を担
当している。加えて、内閣の予算を構成する内閣
官房 、内閣法制局及び人事院の予算のほか、内
*4
閣府*4、復興庁*5、外務省の予算、さらには外務
省以外の省庁に措置される ODA 予算を担当して
いる。
2.内閣・内閣本府等予算
28 年度の内閣・内閣本府等*6 予算の概要は資
料 1 のとおりである。
内閣官房・内閣府は、各府省の施策に関する総
合調整機能を担っており、予算の大宗はこうした
外務省の予算は ODA 実施官庁として相応の
総合調整機能を反映したものとなっている。例え
ヴォリュームとなるが、内閣官房・内閣府につい
ば沖縄振興予算においては、沖縄振興計画に基づ
ても、沖縄振興予算や衛星関係予算(準天頂衛星
く関連事業の全体的把握及び事業相互間の進度調
や情報収集衛星)などの重要な予算に加え、例え
整、計画に沿った事業の推進を図る観点から、こ
ば、まち・ひと・しごと創生本部事務局、一億総
れらの事業に必要な経費を内閣府に一括計上し、
活躍推進室、いわゆるオリ・パラ推進本部事務局
必要に応じ事業を実施する所管省庁に予算を移し
*1)そのため、自己紹介で難儀することが少なからずある。
*2)予算書の歳出予算は、所管・予算毎に整理されているが、皇室費はその冒頭に記載されている。
*3)独立機関の十分な機能発揮を図りつつ、国家としての財政の統一を図る観点から、内閣と国会等との歳出見積も
りが異なった場合の手続などが定められている(財政法第 19 条)。本条の適用があったのは昭和 27 年度予算に
関する 1 例のみ。ご関心のある方は「予算と財政法」
(小村武著)をご覧いただきたい。
*4)内閣府の予算でも、警察庁の予算や子ども・子育て本部における社会保障関係費や総合科学技術・イノベーショ
ン会議関係の予算など、他の予算係の所掌に直接・密接に関連する予算は、当該係において査定がなされる。な
お、首相官邸に関する諸経費も含め内閣の運営に関する諸経費は内閣官房に計上されている。
*5)復興予算に関して、復興係が担当するのは復興庁が自ら執行する予算であり、他省庁に移し替えて執行される予
算は、当該省庁の担当係が査定を行う。
*6)内閣本府等予算とは、内閣府の予算のうち(組織)警察庁予算を除いたもの。
2 ファイナンス 2016.4
平成 28 年度予算特集②
平成 28 年度内閣・内閣本府等、復興庁及び外交関係予算について
資料 1:内閣・内閣本府等、復興庁及び外交関係予算
(単位:億円)
区 分
平成 27 年度
予算額
平成 28 年度
予算額
皇
室
費
国
会
会
計
検
査
院
内 閣・ 内 閣 本 府 等
【うち内閣主計官担当分】
内
閣
内
閣
本
府
等
【うち内閣主計官担当分】
61
1,386
171
26,143
4,726
1,091
25,052
3,635
61
1,387
168
27,069
5,348
1,152
25,917
4,195
▲0
0
▲3
926
622
61
865
561
省
6,854
7,000
286
省
省
省
省
省
783
361
119
31
49
35,960
773
356
127
30
55
37,166
▲ 10
▲5
8
▲1
6
1,206
外
務
財
文
厚
農
経
務
科
労
水
産
計
部
生
林
済
学
働
産
業
対前年度
増▲減額
備 考
サミット開催関連経費
(140 億円)を除く。
外務・経済協力係
担当分
平成 28 年度東日本大震災復興特別会計歳出予算(内閣、復興係)
(単位:億円)
区 分
平成 27 年度
予算額
平成 28 年度
予算額
国
会
内 閣・ 内 閣 本 府 等
復
興
庁
1
15
24,364
-
-
24,055
対前年度
増▲減額
備 考
▲1
▲ 15
▲ 309
(注)計数はそれぞれを四捨五入しているため、端数において合計に合致していないものがある。
替えて執行するなど、効果的な総合調整を行って
地利用推進交付金、②沖縄子供の貧困緊急対策事
いる。
業についてそれぞれ 10 億円を措置したほか、③
その他、以下に述べるとおり、地方創生の推
沖縄振興交付金や沖縄科学技術大学院大学、公共
進、官邸主導による広報の強化等我が国が直面す
事業などについて、必要な予算を措置している。
る喫緊の課題に対応するための経費を措置してお
り、内閣・内閣本府等の 28 年度当初予算は全体
として、対 27 年度 926 億円増の 27,069 億円と
なっている*7。
内閣・内閣本府等予算の主な項目は以下のとお
りである。
(1)沖縄振興予算(内閣府沖縄担当部局)
(2)地方創生の推進(内閣官房まちひと
しごと創生本部事務局、内閣府地方
創生推進室)
28 年度からの地方版総合戦略に基づく地方創
生事業の本格実施に向け、地方創生の深化のため
の地方公共団体の自主的・主体的な取組を後押し
する観点から、具体的な成果目標の設定と PDCA
沖縄振興策を総合的・積極的に推進するため、
サイクルの確立の下、官民協働や地域間連携、政
沖縄振興予算について、必要な額を積み上げ、総
策間連携など先駆性のある取組等を支援するた
額 3,350 億円を措置している(対 27 年度 10 億円
め、新型交付金(地方創生推進交付金)として
増)。
1,000 億円を新規に措置している。
具体的には、新規事業として、①拠点返還地跡
*7)主な増額の要因は、地方創生の深化のための新型交付金(地方創生推進交付金)を新規計上したことによるもの。
3
ファイナンス 2016.4 特集
平成 28 年度一般会計歳出予算(内閣、復興、外務・経済協力係)
特集
(3)情報収集衛星の開発・運用推進
(内閣衛星情報センター)
安全保障、大規模災害への対応等の危機管理の
ために必要な情報収集を主たる目的とした情報収
集衛星について、その開発・運用を推進する。ま
た撮像時間の多様化のため、光学時間軸多様化衛
星 1 号機の概念検討に着手する。これら合計で
619 億円を措置している 。
*8
(4)実用準天頂衛星システムの整備推進
(内閣府宇宙戦略室)
対する機運醸成の取組に絞る中で、これまでの自
治体の取組から発掘された優良事例の横展開を図
るものとし、名称も「地域少子化対策重点推進交
付金」として、5 億円を新規に措置している。
3.復興庁予算
復興庁は、東日本大震災からの復興に関する事
業の円滑かつ迅速な遂行を図るため、東日本大震
災からの復興に関する施策の企画立案・総合調整
等を行っている。被災地向け予算については、復
興に関する行政各部の事業を統括・監理する一環
より正確かつ効率的な測位等を可能とする実用
として、復興庁が所管する一括計上予算として東
準天頂衛星システムについて、2~4 号機及び「み
日本大震災復興特別会計に計上しており、28 年
ちびき」の後継機の開発・打ち上げ準備の推進経
度予算では、「復興・創生期間」における被災地
費として、142 億円を措置している。
の復興に必要な取組みを着実に推進するため、対
(5)官邸主導による広報の強化
(内閣広報室、政府広報室)
社会保障と税の一体改革(マイナンバー等)
、
一億総活躍社会の実現等の政府の最重要施策につ
27 年度 309 億円減の 2 兆 4,055 億円*9 を措置し
ている。
復興庁予算の主な項目は以下のとおり。
(1)被災者支援総合交付金
いて、効果的な国内広報を推進する。あわせて、
復興の進展に伴い生じる「住宅・生活再建の相
最近の我が国の領土・主権を取り巻く厳しい情勢
談支援」や「心の復興」などの課題に対応するた
等を踏まえ、国際社会において事実関係に関する
め、「被災者健康・生活支援総合交付金」につい
正しい認識と、我が国の基本的立場や政策に関す
て、支援メニューの追加や関連事業を統合するな
る理解の浸透を図ることを目的に、官邸主導によ
ど制度の拡充を図り、被災自治体における被災者
り国際広報活動をより積極的かつ戦略的に実施す
支援の取組を一体的に支援するため、220 億円を
る。こうした取組のため、83 億円を措置してい
措置している。
る。
(6)地域における少子化対策の重点推進
(内閣府子ども・子育て本部)
(2)東日本大震災復興交付金
被災地方公共団体が自らの復興プランの下に進
める地域づくりを引き続き支援するため、著しい
これまで「結婚・妊娠・出産・育児の切れ目な
被害を受けた地域の復興まちづくりに必要となる
い支援」を目的に実施してきた「地域少子化対策
事業に対し交付する復興交付金について、執行状
強化交付金」について、新型交付金の創設などを
況等を勘案しつつ、復興まちづくりを着実に実施
踏まえ、対象分野を結婚に対する取組や結婚等に
するため、1,477 億円を措置している。
*8)27 年 12 月 8 日の宇宙開発戦略本部において、宇宙基本計画の工程表が改訂され、情報収集衛星の 10 機への機
数増については、「コスト縮減方策等を通じた所要の予算合理化を含む財源確保策を併せて検討する」こととさ
れている。
*9)東日本大震災復興特別会計の 28 年度歳出額 3 兆 2,469 億円のうち、復興加速化・福島再生予備費(財務省所
管:4,500 億円)及び震災復興特別交付税(総務省所管:3,478 億円)を除き、大宗が復興庁所管の被災地向
け予算となっている。
4 ファイナンス 2016.4
平成 28 年度予算特集②
平成 28 年度内閣・内閣本府等、復興庁及び外交関係予算について
(3)福島の復興・再生加速のための施策
復興庁において一元的に受理し、これを踏まえ、
長期避難者への支援とともに住民の早期帰還を
し、予算を計上しているところであり、対 27 年
一層推進する段階を迎えている福島において、長
度1,278億円増の2兆1,161億円を措置している。
期避難者の生活拠点整備、福島への定住支援、帰
また、執行段階においても、復興庁が、事業箇
還加速のための生活環境向上や生活拠点整備等の
所等の事業の実質的内容を決定し、各府省へ予算
施策を一括して支援するため、1,012 億円を措置
の配分を行っている。
している。
4.外交関係予算
28 年度の外交関係予算の概要は資料 1.2 のと
②福島生活環境整備・帰還再生加速事業
長期避難により機能低下した被災 12 市町村を
おりである。
対象に、公共施設等の機能回復、避難解除区域の
28 年度予算では、G7 伊勢志摩サミットの議長
住民の帰還を促進するための取組、直ちに帰還で
国として、安倍政権の「地球儀を俯瞰する外交」
きない区域への将来の帰還に向けた荒廃抑制・保
を一層強力に推進する観点から、政府全体の一般
全対策のための事業を実施するため、76 億円を
会計 ODA について 17 年ぶりに増額するととも
措置している。
に、ODA 事業量についても増額としている。
(4)
「新しい東北」の創造に向けた取組
また、非 ODA 予算も含めた外務省予算につい
ては、特に①サミット等を見据え、難民対策など
被災地で事業展開している多様な主体(企業・
グローバルな課題への対応、②テロ等を踏まえた
大学・NPO 等)による取組について、情報の共
在外邦人の安全対策の強化、③戦略的対外発信の
有・交換を推進するため協議会の運営、被災地の
推進、④外交実施体制の拡充に対して、重点的な
事業者・起業者への資金供給やネットワーク作り
予算措置を行っている。
等の支援、自治体における課題解決に向けた先進
事例等の情報共有等の支援、東北地方の観光振興
に資するモデルケース創出の取組み等を実施する
(1)ODA 予算
①ODA 予算の位置付けと28年度予算の特徴
ODA 予算は、一般会計 ODA 予算がピークを迎
ため、14 億円を措置している。
えた平成 9 年に財政構造改革法が制定され、その
(5)被災地向け予算の一括計上
翌年の 10 年度予算がマイナス 10%シーリングと
被災地向け予算については、被災地からの要望
なった。それ以降、アジア各国が成長を遂げる一
にワンストップで対応するため、被災地の要望を
方で、我が国経済・財政の厳しい状況は変わら
資料 2:平成 28 年度 ODA 予算
項 目
一般会計 ODA
うち無償資金協力+技術協力
外務省(注 1)
外務省 ODA
うち無償資金協力+技術協力
ODA 事業量(注 2)
(単位:億円)
27 年度
28 年度
27’ → 28’ 増減
5,422
5,519
+97.6(+1.8%)
4,067
4,137
+69.4(+1.7%)
6,854
7,000
+145.6(+2.1%)
4,238
4,342
+103.8(+2.4%)
3,767
3,837
+70.2(+1.9%)
1 兆 9,558 億円
2 兆 241 億円
+683(+3.5%)
(注 1)サミット開催関連経費(140 億円)を除く。
(注 2)一般会計 ODA 予算(当初+前年度補正)、円借款、国際機関向け拠出国債等の合計
5
ファイナンス 2016.4 特集
復興事業に必要な予算を復興庁が一括して要求
①福島再生加速化交付金
特集
ず、ODA は、一定の事業量を確保しつつも、一
道支援など、多岐にわたる支援を実施している。
般会計予算ベースでは抑制基調が続いてきた。一
また、技術協力とは、途上国の「人づくり」や
方、我が国から開発途上国への資金には、ODA
制度・政策環境の構築に貢献するため、我が国の
以外にも、国際協力銀行による融資などのその他
技術や知見を相手国の技術者等に伝えることを目
の政府資金(以下 OOF(Other Official Flows)
)
的として行う専門家派遣や研修員の受入れ等であ
及び民間資金があるが、開発途上国向けの民間資
る。
金は、政府資金を大きく上回っており、中でも海
28 年度予算においては、「開発協力大綱」(27
外直接投資は、ODA の約 1.5 倍を超える規模に
年 2 月 10 日閣議決定)の下で、国益に資する開
まで急速に増加している。
発協力を一層戦略的に実施するために必要な経費
このため、開発途上国の経済発展への我が国の
として、無償資金協力については 1,629 億円を計
貢献を評価するに当たっては、単に一般会計の
上し、技術協力(独立行政法人国際協力機構)に
ODA 予算額の多寡を論じるのではなく、円借款
ついては、1,492 億円を計上(27 年度はそれぞ
も含めた ODA の事業規模、OOF 及び民間資金に
れ 1,605 億円、1,464 億円)している。
着目すべきであり、とりわけ民間の海外直接投資
[国際機関への拠出*10]
は、成長や雇用に貢献し開発途上国との関係強化
国際機関等への拠出については、国連分担金
に重要な役割を果たすものであり、ODA 予算の
等、条約等に基づく支払い義務があるもの(分担
多寡を論じるにあたり、重視すべき要素である。
金・義務的拠出金)と、政策的考慮に基づき任意
28年度における一般会計ODA予算については、
に拠出するもの(任意拠出金)から構成される。
G7 伊勢志摩サミット、国連安全保障理事会非常
28 年度予算では、分担金・義務的拠出金とし
任理事国、TICAD Ⅵ等を見据え、特に二国間協
て 1,212 億円(27 年度 1,214 億円)
、任意拠出金
力(無償資金協力、技術協力)を強化することに
として 284 億円(27 年度 274 億円)を計上して
より拡充(対 27 年度 98 億円増の 5,519 億円)し
いる。
ている。また、補正予算や円借款、国際機関への
分担金・義務的拠出金については、外交交渉に
国債の拠出を含む政府全体としての ODA 事業量
より国際機関全体の予算の抑制に努めつつ、円安
についても、増加することとしている(対 27 年
の影響や 28 年からの国連分担率の減(10.833%
度 683 億円増の 2 兆 241 億円)
。
から 9.680%に変更)を見込み計上している。
任意拠出金については、外務省において 28 年
②外務省ODA
外務省 ODA は、主に、無償資金協力と技術協
力、国際機関への拠出から構成される。
[無償資金協力・技術協力]
度当初予算の概算要求に際し、当初予算に計上し
ている全ての国際機関について、①重要外交課題
遂行上の有用性、我が国実施事業との相互補完
性、②機関等の意思決定における我が国のプレゼ
無償資金協力は、返済義務のない資金を供与す
ンス、③機関等の専門分野等における影響力や組
るものであり、主に、比較的所得水準の低い国を
織・財政マネジメント等、④機関等における邦人
対象としている。医療・保健、安全な飲料水の供
職員数、⑤ PDCA サイクルの確保等を評価基準
給といった基礎的生活分野への援助や、地雷除
として A~D の 4 段階評価を実施した。その上で、
去、環境保全等の取組みへの支援、経済発展のた
評価結果に基づいて必要性等を精査の上、政権の
めに必要な道路・橋梁の建設等インフラ整備への
重要外交課題も勘案し、メリハリを付けた予算を
支援、食糧援助、災害や難民援助にかかる緊急人
計上している。
*10)国際機関への拠出で記載されている予算額は、非 ODA 予算も含む。
6 ファイナンス 2016.4
平成 28 年度予算特集②
平成 28 年度内閣・内閣本府等、復興庁及び外交関係予算について
具体的には、以下の通り、積極的平和主義に基
的な貢献をするため 424 億円を措置している。
に資する国際機関に対しては、拠出金を増額・維
持している。
(ⅰ)積極的平和主義に基づくグローバルな課題
への貢献
-国際連合開発計画拠出金(コア・ファンド)
(67.5 億円→ 70.2 億円(+2.7 億円)
)
-国際連合人口基金拠出金
(22.9 億円→ 24.4 億円(+1.5 億円)
)
-国際連合国際防災戦略拠出金
(0.8 億円→ 2.5 億円(+1.7 億円)
)
(ⅱ)戦略的対外発信
-親日派・知日派の育成のための交流拡充拠出
金(28.8 億円→ 33.3 億円(+4.5 億円))
特集
づくグローバルな課題への貢献や戦略的対外発信
②テロ等を踏まえた在外邦人の安全対策の強化
シリアにおけるテロ事件等を踏まえ、在外邦人
の安全対策強化のための施策を推進するため、以
下の施策を措置している。
(ⅰ)日本人学校等の安全対策
警備経費については、これまで日本人学校を
対象としてきたが、子供の安全対策強化のた
め、28 年度から対象を補修授業校まで拡大し、
5.8 億円を措置している。
(ⅱ)在外公館の警備
欧米、中東などを中心に、在外邦人の保護活
動の最後の砦である在外公館等の現地警備員を
増員するため 34 億円を措置している。
-国際機関職員派遣信託基金拠出金
(16.5 億円→ 20.0 億円(+3.5 億円)
)
(2)外務省予算における重点項目
①グローバルな課題への対応
③戦略的対外発信の推進
近年、領土や歴史認識、文化、経済等様々な面
で日本を取り巻く国際情勢が変化してきている。
こうした中で、日本の対外発信力を高め、日本の
サミット等を見据え、難民対策など積極的平和
主張や正しい姿、多様な魅力等を効果的・効率的
主義に基づくグローバルな課題への貢献に重点化
に各国に伝えるとともに、世界各地において親日
している。主な施策は以下の通りである。
派・知日派を育成していく必要があることから、
(ⅰ)平和構築・平和維持・テロ対策
サミット議長国、安保理非常任理事国として
国際的取組への貢献を強化するため 1,165 億円
を措置している。
(ⅱ)女性
28 年度においては、主に以下の措置を実施する
こととしている。
(ⅰ)主要国における日本や他の国々の影響力調
査・分析及び効果的な発信
主要国に所在する在外公館において、諸外国
女性の活躍促進に資する国際社会との協力及
の動向や日本に関連する報道等をモニタリング
び開発途上国支援を強化するため 165 億円を措
するとともに対日世論調査を実施し、その結果
置している。
を踏まえ、日本についてどのような発信を行う
(ⅲ)軍縮・不拡散・原子力の平和的利用
国際的体制の維持・強化を含む取組を主導す
るため 84 億円を措置している。
(ⅳ)開発(防災、保健、教育を含む)
ことが効果的かを分析した上で、セミナー開催
や現地メディア等を通じて的確かつきめ細かい
発信を実施するため、7.5 億円を措置している。
(ⅱ)海外における日本研究支援
人間の安全保障及び「質の高い成長」の考え
世界各国における本格的な日本理解の核であ
方 の 下、 国 際 的 議 論・ 取 組 を 主 導 す る た め
り、親日派・知日派育成の中核ともなる日本研
1,357 億円を措置している。
究に推進力を与えるため、戦略的に選んだ海外
(ⅴ)環境・気候変動
新たな国際的枠組み(パリ協定)に対する積極
の日本研究機関に重点的支援を実施するため、
所要の予算を措置している。((独)国際交流基
7
ファイナンス 2016.4 金運営費交付金 129 億円の内数)
リシャス)及び総領事館 1 公館(ベンガルール
円を措置している。
④外交実施体制の抜本的強化
「地球儀を俯瞰する外交」を推進する観点から、
(ⅱ)総理大臣等外国訪問関係経費
在外公館等の外交実施体制を拡充することで総合
総理大臣及び外務大臣等の外国訪問体制を一
的外交力を強化することが急務となっており、
層強化するため、総理大臣等外国訪問関係経費
28 年度予算においては、以下の措置を実施する
として、14 億円を措置している。
こととしている。
この他にも、外務省定員の増員(90 名の純
(ⅰ)在外公館の新設
増)や既存の在外公館施設の整備など、外交実
資源確保や国際場裡での協力強化、日本企業支
施体制の強化に資する施策に対し、所要の予算
援等の観点から、大使館 4 公館(サモア、マケド
を措置している。
ニア旧ユーゴスラビア共和国、アルバニア、モー
資料 3:ODA の規模と経済・財政
ODAグロス
(兆円)
ODAグロス
一般会計ODA予算
名目GDP成長率
一般会計ODA予算
名目GDP成長率
国・地方財政収支GDP比
現ASEAN10の1人当たりGDP平均,2000年=100
現ASEAN10の1人当たりGDP平均, 2000年=100
国・地方財政収支GDP比
(%)
2.5
・安保法制成立(2015)
・開発協力大綱(2015)
・持続可能な開発のための2030アジェンダ(2015)
2.0
第5次中期目標(1993)
・PKO法成立(1992)
・ODA大綱の制定(1992)
20 400
ミレニアム開発目標 (2000)
米国同時多発テロ (2001)
湾岸戦争への拠出1.5兆円(1990-91(ODA外))
1兆6,626億円
中国有人ロケット打ち上げ(2003)
第4次中期目標(1988)
1.5
25
2
1兆1,687億円
1
第2次中期目標(1981)
大平内閣「総合安全保障戦略」(1980)
1.0
10 200
第1次中期目標「ODAを3年間で倍増」(1978)
0.5
インドネシア反日運動(1974)
5
0.0
0
0
2014
2012
2010
2008
2006
2004
-5
2002
2000
1998
1996
100
骨太2006
「2007年から5ヵ年で▲4%~▲2%」
・一般会計ODA予算ピーク(1997)
・財政構造改革法(1997)
「平成10年度:▲10%シーリング
平成11・12年度:前年度を下回る」
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
・日本のODAが米国を抜いて
世界一位に(1989)
・東西冷戦終結(1989)
1980
1978
1976
1974
・経済社会基本計画「3年以内にGNPの1%
程度の経済協力を前提」(1973)
・オイルショック(1973)
1972
-1.0
1
5,502億円
福田ドクトリン(1977)
日本の賠償支払いが完了(1976)
ベトナム戦争終結(1975)
-0.5
-10
(出所)「ODAグロス」はOECD
DAC,㻌 「名目GDP」及び「財政収支」は「国民経済計算」、「現ASEAN10の1人当たりGDP」はIMF
WEO。の 1 人当たり GDP」は IMF
(出所)
「ODA
グロス」は OECD
DAC,
「名目 GDP」及び「財政収支」は「国民経済計算」、「現 ASEAN10
(注)1:「財政収支」については一時的な特殊要因を除いている。
WEO。
㻌 㻌 㻌 2:「一般会計ODA予算」のうち、1970~1977年については、経済協力費予算を計上。
(注)
1:
「財政収支」については一時的な特殊要因を除いている。
2:
「一般会計 ODA 予算」のうち、1970~1977 年については、経済協力費予算を計上。
・2013年までは「国民経済計算」、2014年は見込み。
・1980年度以降は93SNAに基づく計数、1979年度以前は68SNAに基づく計数。
・財政収支については、1998年度は国鉄長期債務及び国有林野累積債務、2006年度、2008年度、2009年度、2010年度
及び2011年度は財政投融資特別会計財政融資資金勘定(2006年度においては財政融資資金特別会計)から国債整理
基金特別会計または一般会計への繰入れ、2008年度は日本高速道路保有・債務返済機構債務の一般会計承継、2011
年度は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構から一般会計への繰入れ等を除いている。
8 ファイナンス 2016.4
2
15 300
第3次中期目標(1985)
1970
特集
(インド)
)を新設するための経費として、10 億
0
0
-0
-1
平成 28 年度予算特集②
平成 28 年度内閣・内閣本府等、復興庁及び外交関係予算について
資料 4:日本の途上国向け資金(グロス)
10 年間で政府資金の半分程度から政府資金を超える規模にまで急速に増加。
(百万ドル)
ᴾ
120,000
116,062
117,960
109,787
103,894
100,000
87,974
134.3%
91,863
64,402
60,000
54,978
160
140
その他
78,869 77,555
80,000
(%)
120
59,067
100
PFのうち直接
投資 (その他
政府資金)
OOF
40,000
80
ODA
20,000
60
直接投資
÷(ODA+OOF)
40.5%
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
40
(出所)ODA・OOF は OECD DAC, それ以外(民間資金のうち直接投資 , 輸出信用等)は財務省
(出所)ODA・OOFはOECD DAC, それ以外(民間資金のうち直接投資,輸出信用等)は財務省
資料 5:援助形態別に見た我が国 ODA
無償資金協力
贈 与
バイ
(二国間)
政府開発援助
(ODA)
技術協力
有償資金協力(円借款等)
主な例
(億円)
・医療・保健、飲料水の供給
・食糧援助、環境保全
・道路、橋梁の建設 等
1,804
(1,629)
・専門家の派遣
・研修生の受入れ 等
3,305
(3,198)
・経済・社会インフラの整備 等
15,720
(15,438)
バイ(二国間)合計
・UNDP、UNHCR への拠出
・世銀、アジア開発銀行等への拠出 等
マルチ
(国際機関向け出資等)
(多国間)
10,611
ODA 事業量 計
4,521
(3,099)
20,241
(注)計数は、グロスベースの概算値である。
( )内の数字は、ODA 事業予算である。
9
ファイナンス 2016.4 特集
途上国向けの民間資金(㻼㻲)は、政府資金(㻻㻰㻭・㻻㻻㻲)を大きく上回っている。特に直接投
途上国向けの民間資金(PF)は、政府資金(ODA・OOF)を大きく上回っている。特に直接投資(FDI)は、
資(㻲㻰㻵)は、㻝㻜年間で政府資金の半分程度から政府資金を超える規模にまで急速に増加。㻌