機関誌「電機」 No.783号 7.5MB - JEMA 一般社団法人 日本電機工業会

2016
<表紙の言葉>
Vol.783
電機
,
THE JAPAN ELECTRICAL MANUFACTURERS ASSOCIATION
(4 月 21 日発行)
福岡支部第 86 回企業研究会講演
誌名のローマ字表記である “DENKI” をメインビジ
ュアルとすることで、電機産業の発展が社会や人々
に貢献し続けた歴史を振り返るとともに、より安心
で便利な未来のために、これからもますます進化し
続けたい、
という想いを表現しています。
「日本における核燃料サイクルの現状について」報告 55
一般社団法人 日本電機工業会 原子力部
TOTO における SOFC(固体酸化物形燃料電池)
モジュールの開発状況
TOTO株式会社 伊藤 一馬
特集 HEMSの現状と今後の展望
業界報告
IoT時代の到来を踏まえた
新たなスマートハウスの可能性について
家電部門のグローバル化の取組み
4
経済産業省 佐野究一郎
7
一般社団法人 エコーネットコンソーシアム 白石 健司
69
12
IEC/SC22H/MT62040-2(UPSのEMC)
マイアミ会議 出席報告
IEC/SC22H/MT62040-2エキスパート 井上 博史
71
17
IEC/SC23E/JWG7
(電気自動車等充電用可搬形ケーブルセット)
フランクフルト会議 出席報告
72
IEC/SC23E国内対応委員会 山口 健二
22
IEC/TC61/SC61D/WG9(家庭用空調機器の安全性)
ヒューストン会議 出席報告
エアコン安全 JIS 検討 WG 橋本 均
74
IEC/SC77A(低周波電磁両立性)/WG1(高周波)/TFs
コルドバ会議 出席報告
家電 EMC 技術専門委員会委員 前川 恭範
76
HEMSの全体像
HEMS 専門委員会 北川 晃一
エアコンに関する検討状況
HEMS 専門委員会 加井 隆重
太陽光発電機器および蓄電池機器に関する検討状況
ハイライト
津田会長 記者発表
26
トピックス
調査事業紹介
「中東白物家電市場調査」
37
「白物家電 5 品目の世界需要調査(2008 年~2014 年)」
39
中国家電博覧会2016 視察報告
41
一般社団法人 日本電機工業会 田辺 雅忠
IEC/TC88/PT101
(風力発電システム IEC61400 シリーズ規格の
再構成・作業会)
ロスキレ会議 出席報告
78
風力発電システム標準化委員会 石山 卓弘
IEC/TC116
(電動工具の安全)
WG7/WG8
プレトリア会議 出席報告
第 59/61/116 小員会 WG5 主査 成田 正己
81
IEC/SC121A/WG3(低圧開閉装置及び制御装置)
ニース会議 出席報告
制御装置技術専門委員会 前田 育男
84
IEC62109-1(太陽光発電用パワーコンディショナ安全性)
規格改訂作業部会 出席報告
太陽光発電システム機器分科会 五十嵐広宣
85
第13回 アジア大電力試験所会議 仁川会議 出席報告 46
理事会報告
日本短絡試験委員会 松村 年郎、中本 哲哉
アジア電機工業会連盟(FAEMA)
バンガロール フォーラム/年次総会出席報告
2015年度(平成27年度)第4回理事会
48
87
フラッシュニュース
一般社団法人 日本電機工業会 中村 大介
平成28年経済センサス ―活動調査の実施について―
ドイツの経験を踏まえた
日本のエネルギー政策のあり方について
―ドイツ在住の作家 川口マーン惠美氏講演会より―
64
IEC/SC22G/MT7
(可変速駆動システムのEMC)
東京会議 出席報告
可変速駆動システムIEC対応分科会 佐藤 以久也、井上 博史
HEMS促進のための取組み
- 2016 年度 電気機器の生産見通し-
一般社団法人 日本電機工業会 渡辺 秀武
標準化活動紹介
スマートハウスの実現と国際標準化の取組み
HEMS 専門委員会 尾関 秀樹、中村 一尊、山本 雅一
60
総務省 経済産業省
52
一般社団法人 日本電機工業会 原子力広報分科会
統計
編集後記
90
92
89
3
特集
HEMSの現状と今後の展望
HEMS * を中心としたスマート家電が期待され、堅調な需要が見込まれています。家電製品、太陽
光発電、燃料電池、蓄電池、電力量計等を、通信規格である ECHONET Lite を用いて HEMS コン
トローラに接続し、電力の集中管理や機器の制御を行うシステムが各社から発表されています。
本号では特集として、国の取組み、関連団体や一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)関係委員会
の活動状況など、最新の状況を取りまとめました。
* HEMS…家庭におけるエネルギー管理システム
IoT 時代の到来を踏まえた新たなスマートハウスの可能性について
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長
佐 野 究一郎
1.はじめに
IT 技術を用いて、エネルギーの最適な活用や豊かな暮
らしを実現する「スマートハウス」については、これまで
も産官学によって幅広い取組みが進められてきた。昨今
の状況を整理すると、大きく2つの潮流からスマートハウ
電のネットワーク化や、スマートロックなどのこれまで電
化されていなかったようなものすらネットワーク接続され
つつある。
2.政府としてのこれまでの取組み
(エネルギーマネジメントを中心に)
スをとらえることができる。
第一の潮流は、“エネルギー” である。震災以降のピー
前項において2つの潮流を取り上げたが、スマートハ
クシフト/ピークカットを含む省エネルギーへの要請の高
ウスの実現に向けた取組みは主にエネルギーの観点から、
まりや、再生可能エネルギーの導入拡大への対応等から、
HEMSによる家庭内のエネルギー利用状況の見える化や、
HEMS(Home Energy Management System)を中心に、 エネルギー機器における制御の実現を目指し、①通信規
家庭内の創蓄省エネルギー機器をITで制御する高度なエ
格の標準化、②新サービス創出のための環境整備、に取
ネルギーマネジメントの実現が求められてきた。2015 年
り組んできた。
7 月に策定された2030 年に向けた長期エネルギー需給見
通し(いわゆる「エネルギーミックス」
)においても、家
庭部門の省エネの比率や、エネルギーマネジメントの寄
① 通信規格の標準化
家庭内の多種多様な機器がメーカーに依存せずに接
与度は大きなものと想定されており、2015 年 12 月には、
続され、通信や制御が行われるよう、HEMSとスマート
資源エネルギー庁からZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・
メーターや家庭内の創蓄省エネ機器との間の通信インタ
ハウス)の実現に向けたZEHロードマップも発表されて
フェースとして、
「ECHONET Lite」の推奨を決定した。
いる。
第二の潮流は、“IoT(Internet of Things)
” である。
このECHONET Liteについては、国際標準化を推進
するとともに(ISO/IEC 14543-4-3が 2015 年に完了)
、家
モノのインターネットに対する関心が高まる中、これまで
庭内のエネルギーマネジメントへの貢献度が高いと想定
はインターネットにつながることが想定されていなかった
される8つの機器(
「スマートメーター」
「蓄電池」
「太陽
ような様々なものがネットワークに接続できるようになっ
光発電」
「電気自動車充電器」
「燃料電池」
「給湯器」
「エ
ている。ロボット掃除機、インターネット冷蔵庫などの家
アコン」
「照明機器」
)を重点機器として、2016 年 4 月よ
4 電 機 2016・April
IoT 時代の到来を踏まえた新たなスマートハウスの可能性について
り第三者 AIF(アプリケーション通信インタフェース)認証
盤-HEMSデータ利活用事業者間 API(アプリケーション
制度を開始した。2015 年 4 月現在、ECHONET Liteは
プログラムインタフェース)標準仕様書や HEMSデータ利
103 機種以上に対応しており、既に重点 8 機器を中心とし
用サービス市場におけるデータ取扱マニュアルの検討・
て対応製品の販売が始まっている。
策定を行った。
② 新サービス創出のための環境整備
3.スマートハウスのドライビングフォース
家庭部門におけるエネルギーマネジメントは、1 軒当た
りの省エネによる電力削減量の絶対量が少ないことに加
さて、冒頭でスマートハウスを巡る2つの潮流について
え、投資効率よりも利便性やライフスタイルの充実といっ
概観したが、改めてこれらの動向の変化の兆しについて
た経済合理性以外の視点を重視することも多々ある。こ
詳述する。
のことから、HEMSの普及を推進するためにHEMSから
得られる電力利用データを活用した新サービスを創出し、
ⅰ)再生可能エネルギーの導入拡大
消費者への訴求を高めるための環境整備にも取り組んで
きた。
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、出力制御の必
要性が生じ、制度改正がなされるに至った。今後は、蓄
具体的には、2014 年 度から2015 年 度にかけて「大
電池等の蓄エネ機器や、ネットワーク接続可能な機器と
規模 HEMS 情報基盤整備事業」を実施し、全国約 1 万
の連携によって、適時適切なタイミングでエネルギーを
4000 世帯に実際にHEMSを導入し、29 事業者が様々な
貯めたり使ったりすることにより、再生可能エネルギー
サービスを提供した。これを通じて、電力利用データを
(主に住宅用太陽光)で発電した電力を最大限活用出来
活用した新サービス創出を促進するべく、HEMS 情報基
るような仕組みが求められる可能性が高まっている。
HEMSデータを活用したビジネスのイメージ
地元商店街連携サービス
在・不在分析による効果的な宅配サービス
HEMS データと消費者の生活に有用となる
サービス(地元商店街で使用できるクーポン
など)とを連携させた地域活性化サービス。
電力利用データを元に、中央管理センターで顧客の
在・不在状況を分析し、導き出した効果的な宅配ルー
トにて配達するサービス。
晴の地域
高齢者見守りサービス
HEMS データから高齢者の生活パター
ン異常を検知。独居老人等の高齢者の異
常を早期に発見し、応急処置や搬送サー
ビスを提供。
HEMS
CEMS
雨の地域
ビル地区
機器メンテナンスサービス
地域エネルギーマネジメントサービス
各種 EMSや創・蓄エネルギー機器に加えて、
電力小売自由化に伴う柔軟な電力料金メニュ
ー、スマートメーターを組合せることで、コミュ
ニティ単位での需給調整や系統安定化に貢献
するサービス。
ホームセキュリティサービス
HEMS データから宅内への侵入者を検知し、宅
内にある家電等を適切に制御し侵入の防止及び
警備会社への迅速な対応を促すサービス。
HEMS データから家電等の異常を検知し、
故障前のメンテナンスサービスや故障時の
部品を事前準備するサービスを提供。ま
た、これらのサービスと保険ビジネスを組
合せることも可能。
特集:HEMS の現状と今後の展望 5
ⅱ)スマートメーターの導入拡大
スマートメーターについては、2015 年 7 月より一部地
域で導入が開始され、2024 年度までに全ての家庭への導
入が完了する予定となっている。これにより、一家に1 台
4.スマートハウスの実現に向けた
新たな取組み
以上のような状況を踏まえて、スマートハウスの実現に
ECHONET Lite 対応機器が導入されることとなる。また、 向けた各種課題について、産学官からなる「スマートハ
これまで、HEMSの導入に際しては電気工事が必要で
ウス・ビル標準・事業促進検討会」において検討を進め
あったが、スマートメーター B ルート通信サービスを活用
るとともに、2016 年 1 月に資源エネルギー庁に設置され
することで、電気工事を行わなくともWi-Sun や HD-PLC
たエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検
経由で電力利用データを取得できるようになり、より一層
討会と連携しながら、アグリゲーターによるエネルギー・
のHEMS 普及拡大が見込まれる。
リソース・アグリゲーション・ビジネスの実現に向けた検
討を進めている。蓄電池の群制御によるアグリゲーショ
ⅲ)電力小売全面自由化
ン・ビジネスの実現のための通信規格の整備をはじめと
2016 年 4 月からの電力小売全面自由化によって、これ
して、各種検討が進められているところであり、様々な
まで一般電気事業者による電力供給に限定されていた低
機器でより高度なエネルギーマネジメントが実現可能と
圧部門において、様々な電力小売事業者が参入するこ
なることが期待される。
とが可能となった。一方で電力自体は、価格以外の差別
これに加え、IoT時代の到来を踏まえた対応を進める
化が困難な財であることから、将来的には付加価値サー
べく、経済 産業省と総務省が連携して、2015 年 10 月
ビスに差別化の中心が移る可能性がある。その場合には、
に「IoT 推進コンソーシアム」を立ち上げた。この傘下の
HEMSを経由した電力利用データを活用したサービスに
「IoT 推進ラボ」においては、スマートハウスを含む様々
よる差別化が活性化する可能性もある。
な分野での “具体的なプロジェクトの創出” を目指して、
事業者間連携や資金支援など様々な支援を行っていく。
ⅳ)エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス
スマートハウスの実現に当たっては、これまでの取組
再エネ発電設備、蓄電池、エコキュート、エネファーム、 みで得られたECHONET Liteなどの資産を上手く活用し
電気自動車、ネガワット等の需要家側のエネルギーリソー
つつ、世界に先駆けた先進的モデルを構築していくこと
スの増加に伴い、アグリゲーターが IoTを活用してこれら
が求められる。
を最適に制御することも可能となりつつある。また、需要
これに当たっては、家庭内の製品や居住者のニーズが
家側のエネルギーリソースの統合制御により、あたかも一
多種多様な住宅・消費者関連ビジネスの分野において、
つの発電所(仮想発電所:Virtual Power Plant)のよう
1つの企業や団体が上流から下流まで全てのサービスを
に機能させ、系統の調整力として活用するための実証事
提供することが難しいと考えられることを踏まえ、各企業
業も始まりつつある。
や団体がそれぞれの強みを活かしつつ、他のパートナー
と連携できる仕組みを提供するオープンなサービス連携
ⅴ)“IoT” 時代の到来
“IoT”の分野においても、日々様々な製品・サービスが
戦略を推進していくことが求められるのではないか。
経済産業省としても、本稿で記述したようなスマート
生まれつつある。特にこの分野については、欧米において、 ハウスを巡る動向やスマートハウスビジネスの特徴を踏ま
AllSeen Alliance や Open Interconnect Consortium 等に
えつつ、産学官一体となって必要な取組みを行ってまい
おける取組みや、Google、Apple 等のITプラットフォー
りたい。
マーの取組み、IFTTTのようなサービス連携プラット
フォーム、Philipsの「Hue」のようにオープンな連携を
前提にした製品展開などが特筆される。
6 電 機 2016・April
スマートハウスの実現と国際標準化の取組み
スマートハウスの実現と国際標準化の取組み
一般社団法人 エコーネットコンソーシアム
企画運営委員会 委員長
白石 健司
◇
エネルギーについての課題解決やエネルギー市場に
1.はじめに
対応するためには、各機器の省エネを進めるだけでなく、
今では、多くの人がスマートフォンを持ち、パソコンは
太陽光発電や燃料電池などの創エネ機器、蓄電池などの
もちろんのこと、テレビやゲーム機などもインターネット
蓄エネ機器と一緒に管理することが必要になる。そうす
につながり、これらの端末を使って、ホテルやレストラン
ることで、家全体のエネルギーを効率よく使い、より少な
の予約、ショッピングなど様々なサービスを利用している。 いエネルギーで生活することを可能にするのがスマートハ
インターネットはすでに生活インフラの一部となり、通信
ウスである。図1にスマートハウスのイメージを示す。ス
を介してネットにつながる機器が身の回りに広がりつつある。
マートハウスの実現には、それぞれの機器がネットワーク
一方、地球環境を守るためのCO 2 排出削減の実現、東
につながることが必要であり、これを実現するための通信
日本大震災から派生した電力需給の逼迫など、エネル
規格としてECHONET Lite 規格が活用されている。
ギーに関連して解決すべき課題が多く存在する。さらに
本稿では、スマートハウスのベースとなる機器をつなぐ
は、電力システム改革の一環として2016 年 4 月から始ま
ネットワーク実現のために活動を行ってきた一般社団法
る電力小売自由化や、節電分の電気を扱うネガワット市
人 エコーネットコンソーシアムの設立と規格作成の経緯、
場に向けた動きの中で、家庭のエネルギーもその市場の
そして、規格の国際標準化に向けた活動について紹介す
対象となることが求められている。
る。
図 1 様々な機器のエネルギー管理を実現するスマートハウスのイメージ
◇日立アプライアンス株式会社 家電・環境機器事業部 多賀家電本部 第四設計部
特集:HEMS の現状と今後の展望 7
2.エコーネットコンソーシアムの設立と
ECHONET Lite 規格制定までの歩み
2.1 エコーネットコンソーシアムの設立と
ECHONET 規格の制定
しかしながら、2002 年にはECHONET 規格を使った
製品が発売されたものの、新しいサービスの創出や市場
の拡大には至らなかった。
2.2 ECHONET Lite 規格の制定
当コンソーシアムは、ホームネットワークを実現するこ
当コンソーシアムは、設立から10 年以上が経過した
とで、私たちの生活をより便利に、安全、安心にしたい
2010 年、それまで行ってきた普及活動からECHONET
という理念 をもって1997 年に設立された。設立当時は、
規格を見直し、世の中の変化に対応した新たな規格の開
携帯電話が普及し始め、デジタル化に向けて進化してい
発に着手した。ECHONET 規格から下位の通信手段を
る時代であり、家庭内の設備・家電機器をネットワーク
規定する部分を切り離し、IP(インターネット通信手順)
につなげることで新しいサービスや製品が現れ、市場が
等、世の中にある通信技術を自由に利用できるように変
拡大すると期待されていた。そのような中で、ホームネッ
更し、2011 年に機器との通信に必要な部分のみを規定し
トワーク実現に向け、各メーカの製品が互いにつながる
た軽くシンプルな規格、ECHONET Lite 規格を制定した。
ために共通の通信基盤を作ることを目指して当コンソーシ
これにより、機器の開発を容易にするとともに、住宅やビル
アムが設立され、ホームネットワークの通信規格の作成
で使用されている様々な通信手段を活用できるようにした。
を開始した。その結果、2000 年にはECHONET 規格が
ECHONET Lite 規格は、電力システム改革の一環とし
*
てホームネットワーク実現の重要性が高まる中、2012 年
制定されている。
* ECHONET は、Energy Conservation & Homecare Network の頭文字を
組み合わせたものである。その言葉が示すように、エネルギー管理による効
率的利用で地球環境の改善に貢献すること、高齢化社会において住む人が
安心・安全かつ快適な暮らしができる生活環境を提供することのできるホー
ムネットワークを実現することを目的としている。
2 月に「スマートハウス標準化検討会」にて、ホームネッ
トワークのための公知な標準インタフェースとして推奨さ
れている。図2にECHONET 規格とECHONET Lite 規
格の構成を示す。
図 2 通信レイヤからみた ECHONET 規格と ECHONET Lite 規格の構成
8 電 機 2016・April
スマートハウスの実現と国際標準化の取組み
3.国際標準化活動
3.2 ECHONET Lite 規格の国際標準化活動
3.1 ECHONET 規格の国際標準化活動
準化に向けた活動を開始している。
ECHONET Lite 規格については、2011 年から国際標
当コンソーシアムでは、ECHONET 規格が制定された
ECHONET Lite 規 格は、従 来のECHONET 規 格 の
2000 年から国際標準化組織への提案活動を開始している。
一部を抜き出して変更しているので、既にECHONET
ECHONET 規格を提案するに当たっては、1つのまと
規格で国際標準となっている規格のメンテナンスまた
まりとしてではなく、6つの部分に分けて提案を行った。
は追加で提案することとした。ECHONET Lite 規格の
また、白物家電に関連する規格はISO/IEC JTC 1/SC
主要な構成部分として「電文構成と機器オブジェクト」
25、AVと白物家電共通規格はIEC TC100を提案先とし
「ECHONET Lite 通信処理部」の2つを提案対象とした。
た。規格提案はECHONET 規格の電文構成を規定した
ECHONET 規格の「機器メンテナンス用インタフェー
部分から始め、
「機器メンテナンス用インタフェース」と
ス」として、既に国際標準となっているIEC 62394のメ
してISO/IEC JTC 1/SC 25 へ提案した。続いてセキュア
ンテナンスとしてECHONET Lite 規格の「電文構成と機
通信の提案を行ったが、その他については、最初の提案
器オブジェクト」の提案を2011 年に行った。この際、付
の進捗が進んだ 2005 年以降に行っている。
表となっていた機器オブジェクト詳細規定を国際標準
最初の提案規格「機器メンテナンス用インタフェース」
の対象として追加している。この提案は、IEC 62394
は2006 年に国際標準規格 IEC 62394として登録された。
Ed.2.0として2013 年に規格化が完了した。その後、機
以降、提案活動を進め、2009 年には全ての規格化が完了
器オブジェクトの対象機器追加やエネルギー関連の情報
している。図3に国際標準化が完了したECHONET 規格
更新が行われていることから、2014 年に新バージョン
を示す。
Release Gで再提案を行った。現在は、2016 年の規格化
に向けて活動を推進している。
図 3 ECHONET 規格の国際標準化
特集:HEMS の現状と今後の展望 9
「ECHONET Lite 通信処理部」については、
「通信ミ
などのメリットがある。さらには、今後、ホームネットワー
ドルウェア」規格 ISO/IEC 14543-4-1,2の追加規格 ISO/
ク市場の拡大とグローバル化が進む中において、国内外
IEC 14543-4-3として2012 年に提案し、2015 年 9 月に国
への普及拡大、または他規格との共存を可能にするため
際標準として登録が完了した。図4にECHONET Lite 規
にも国際標準規格であることが基本となる。
格の国際標準化の活動内容を示す。
これからも ECHONET Lite 規格のメンテナンスおよ
3.3 その他の国際標準化活動
び新規に制定される規格についての提案活動を行ってい
当コンソーシアムでは、これまで述べてきたような国際
く予定である。これまで行ってきた国際標準化について
標準化への規格提案活動を継続して推進することと併せ
の提案開始から規格化までの行程を図5に示す。
て、国際標準となった規格の国際的認知度や地位の向上
のための活動も重要と考え活動を行っている。
ホームネットワークでは、世界でただ 1つの規格が国
近年、各国のスマートグリッド構築に向けた活動に沿っ
際標準となるのではなく、国ごとに事情が異なることを
て、配電網から電力需要家までの制御に関する規格化活
考慮して複数の国際標準を認めるマルチスタンダードと
動が盛んになり、関連してホームネットワーク規格にかか
なっている。ECHONET Lite規格も、その中の1つでは
わる議論がなされることが多くなっている。このような中
あるが、国際標準規格として登録されることの意義は大
で家庭のエネルギー管理に関連する議論が従来と異なる
きい。それによってECHONET Lite 規格が国際標準のレ
委員会で交わされることがあり、このような場合には関係
ベルにあることの証となり、他規格や文献からの参照対
する国内委員会に協力を仰ぎながら、コンソーシアムとし
象となるなど、世界での認知度を向上するためには必須
て発言の機会を得て、積極的にECHONET Lite 規格の
の条件になる。そのほか、ホームネットワークの通信規格
特長を訴求するなどにより、ECHONET Lite 規格の立場
として強制規格に採用しても、TBT(Technical Barriers
が不利になることを防いだり、国際的地位や認知度の向
to Trade)協定に従って貿易障害とみなされることがない、
上を図るための活動を行っている。
図 4 ECHONET Lite 規格の国際標準化
10 電 機 2016・April
スマートハウスの実現と国際標準化の取組み
4.ホームネットワーク普及に向けて
4.1 ECHONET Lite AIF 仕様書の作成
HEMSの普及のためには、違うメーカ間の製品が通
始し、対象機器も当初は上記で説明した重点 8 機器のみ
だが、順次、対象機器を広げていく予定である。
5.おわりに
信でつながる相互接続性の実現が必要である。この実
現を目指して、ECHONET Lite 規 格 では 規 定のない
設備・家電機器はその買替寿命が長く、ホームネット
アプリケーションソフトウェアの動作も含めて記載した
ワークに接続できる機器が家庭に浸透していくには長い
ECHONET Lite AIF 仕様書を作成した。この作業では、
時間を要する。その間、変わらない基盤技術を提供する
各機器の関連工業会の方々にも多大なご協力をいただ
ことがホームネットワークの普及には必要であり、当コン
いている。この仕様は機器ごとに作成しており、現在は、
ソーシアムの長年の活動を通して作られたECHONET
「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会(経済産業
省)
」で定めた重点 8 機器を対象に仕様書を作成した。
Lite 規格であれば、これを可能にできると考えている。
国内では、すでに設置が始まったスマート電力量メー
タにもこの規格が採用されており、設置完了が予定され
4.2 ECHONET Lite AIF 認証制度の構築
ている2024 年には、すべての家庭にECHONET Lite 規
国内外においてECHONET Lite 規格に準拠した製品
格に対応したスマート電力量メータが設置されることにな
が普及していくためには、第三者による製品認証がきち
る。これに対応したホームネットワーク対応機器の普及
んとなされていることが必要である。
が進むことで、スマートハウスの普及拡大も実現してい
ECHONET Lite 規格では、機器またはソフト製造者が
くものと考えている。一方、設備・家電機器についての
自分で試験を行い、その結果を当コンソーシアムが認定
グローバル化は今後さらに進むと予想される。そのような
する認証機関で精査する方式によってロゴ認証を行って
状況の中で、ECHONET Lite 対応機器が国内外で普及
いたが、ECHONET Lite AIF 認証制度では、試験につ
拡大していくためには、規格としての国際的地位の向上、
いても当コンソーシアムが認定した試験機関で行うことに
他規格との共存を可能にしていくことが重要であり、当コ
している。これにより、第三者による試験、認証を行うこ
ンソーシアムでは、この実現に向けて引き続き活動を推
とで相互接続性の向上を図り、マルチベンダー化を実現
進していく予定である。
することを目指している。この制度は2016 年 4 月より開
図 5 ECHONET 規格、ECHONET Lite 規格の国際標準化行程
特集:HEMS の現状と今後の展望 11
HEMS 促進のための取組み
HEMS の全体像
一般社団法人 日本電機工業会
HEMS 専門委員会 委員長
北川 晃一
◇
のである。HEMSは、住宅に設置されるエアコン、給湯
1.はじめに
器や照明などのエネルギー消費機器と、
太陽光発電(PV)
1997 年に第 3回気候変動枠組条約締結国会議(COP3)
や燃料電池(FC)などのガスコジェネレーションシステ
で京都議定書が採択された。これを機会に、日本のエネ
ムの創エネ機器と、発電した電気などを蓄える蓄電池や
ルギー政策が展開され、トップランナー方式による省エ
電気自動車(EV)などの蓄エネ機器をネットワークでつ
ネ家電の開発、太陽光発電やヒートポンプ給湯器等の機
なぎエネルギー管理を行うシステムである(図1)
。すな
器の開発が進むとともに、住宅においては次世代省エネ
わち、これまで単独で性能改善が進められてきた省エネ
ルギー基準が 1999 年に制定された。その後、2008 年の
家電機器を、創エネ・蓄エネ機器と統合制御することに
洞爺湖サミットでは、当時の福田首相が、環境と両立す
より、エネルギーのピークシフト・ピークカットはもとより、
る経済活動で低炭素社会を目指すとの趣旨をスピーチに
地産地消を実現することを狙いとするものである。
織込み、ゼロエミッションハウスがモデル展示された。さ
また、HEMSで集積された電力や機器の使用状況をク
らに、2010 年 6 月のエネルギー基本計画において、2020
ラウド環境で共有し分析することにより、個人の嗜好に応
年までにZEH(Net Zero Energy House)を標準的な新
じたサービスを提供するなど、新たな付加価値を生み出し、
築住宅とすることを目指すべき姿として提示し、2012 年、
居住者の快適性・利便性を向上することが期待されている。
2014 年の更新の際にも骨子として維持されている。
上記のように、HEMSに係る生活家電、蓄電池など
今 回 の 特 集 テ ー マ で あ るHEMS(Home Energy
は一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)の会員会社
Management System)は、ZEHで重要な役割を担うも
が取り扱っている製品が多く、JEMAでも各種の委員会
図 1 HEMS の構成例
◇東芝ライテック株式会社 住空間照明機器事業部
12 電 機 2016・April
HEMS の全体像
で断片的に取り上げられてきた。しかしながら、HEMS
にECHONET 規格が制定された。しかしながら、スマー
の重要な構成要素であるHEMSコントローラーについて
トフォンの普及、インターネット環境を利用した各種の
は、これまで工業会としての活動は実施されていなかっ
サービスが実用化されたが、ホームコントロールとしての
た。そこで、2015 年 9 月にJEMAにHEMS 専門委員会を
ECHONET 機器の普及はあまり進まなかった。
設立し、HEMSコントローラーを含めたユースケースの
その後、エネルギー市場関連の環境変化・技術動
向に沿って、創エネ・蓄エネ機器への対象機器の拡大
検討を主体とした活動を積極的に進めている。
本稿では、異なるメーカ機器の相互接続性向上に向け
た通信規格関連の取組み、HEMS関連市場の動向を中
心に、これまでのHEMS関連機器に関するJEMAの活
と、実装をより容易とするための軽装化した新規格として、
2011 年 6 月にECHONET Lite 規格が策定された。
この規格に対応したHEMS 機器を対象として、平成
動状況、今後の計画を中心に報告する。なお、エアコン、
23 年度補正予算にて経済産業省(METI)より補助金制
太陽光発電(PV)及び蓄電池の製品の詳細に関しては、
度が導入され、各社が HEMS 機器の製品開発を加速し、
別稿にて各分科会から報告する。
市場が立ち上がった。さらに、2011 年 3 月の東日本大震
災の影響もあり、地域レベルでの地産地消を含めた住宅
2.HEMS 関連市場の動向
のエネルギーマネージメントの重要性が高まり、スマー
トグリッド・スマートハウス関連の検討が進んだ。その中
で、2012 年 2 月にMETIの「スマートハウス標準化検討
2.1 通信規格関連
HEMSの実現のためには、家電製品だけでなく電子錠
会」にて、ホームネットワークのための公知な標準インタ
や電動シャッターなどの住設機器を含めた幅広い機器が
フェースとしてECHONET Lite 規格が推奨された。すな
ネットワークにつながり制御できることが必要であり、異
わち、図2に示すように、宅内の創エネ・蓄エネ・省エ
なるメーカの機器が相互接続されることが必要である。
ネ機器とHEMSコントローラー間の通信制御と、スマー
そこで、携帯電話の普及が始まり、各種機器のデジ
トメーターとHEMSコントローラー間の通信制御として、
タル化が進展していた1997 年に、一般社団法人 エコー
ECHONET Lite規格が推奨された。特に、電力自由化の
ネットコンソーシアムが設立され、家電機器の遠隔制御・
一環として、スマートメーターは各住宅への普及が計画
モニタリングなどに活用できるホームネットワークの基盤
されており、一家に一台 ECHONET Lite 規格に準拠し
ソフトウェアおよびハードウェアの開発を進め、2000 年
た機器が導入されることとなった。
HEMSタスクフォースにおける
主な標準化対象領域
EV
需要家
太陽光発電
スマートメータータスクフォースにおける
主な標準化対象領域
電力会社
需要家
主な標準化対象
インタフェース
主な標準化対象
インタフェース
HEMS
データセンター
スマート
メーター
家電製品
蓄電池
出典:経済産業省
図 2 ECHONET Lite が推奨された通信インタフェース
特集:HEMS の現状と今後の展望 13
その後、METIの「スマートハウス・ビル標準・事業
月からAIF 認証の第三者認証制度がスタートすることと
促進検討会」で、HEMSでエネルギーマネージメントを
なっている。これらの検討の詳細については、各分科会
促進するために、重点 8 機種が選定され、ECHONET
の別稿にて紹介する。
Lite規格対応機器の普及に向けて、規格の詳細検討とと
もに機器開発が進んでいる。
2.3 エネルギーマネージメント関連
これまで、ECHONET Lite規格を中心とする通信規格
に関する動向を述べてきたが、本稿の主題であるHEMS
2.2 認証制度関連
従 来、ECHONET 規 格、ECHONET Lite 規 格 では、
においては住宅でのエネルギーマネージメントが重要で
各メーカの自己認証資料をベースにエコーネットコンソーシ
ある。以下、重要と思われる項目について、その概略と
アムによって認証が行われ、認証ロゴの使用を許可されて
HEMSに期待される役割について紹介する。
きた。この認証は、規格に準拠した通信プロトコルが正
(1)ZEH関連
しく実装されているかについて確認することを意図したも
住宅のエネルギー消費を削減するためには、まず住宅
のである。
これに対し、メーカ間の相互接続性を高めるために、
の断熱性・気密性を向上させ、暖冷房に消費されるエネ
通信規格書には規定されていないアプリケーションソフト
ルギーを極力小さくすることが必要である。そのうえで、
ウェアについて、
「スマートハウス・ビル標準・事業促進
ヒートポンプ給湯機、LED 照明、高効率の空調機、省エ
検討会」の一つのテーマとして議論されてきた。その中
ネ家電などを導入し、エネルギーを賢く使うことで節電を
で、エネルギーマネージメントで重要な構成要素である
図る。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーを
スマートメーターについて、第三者認証を活用したSMA
導入することにより、年間の一次エネルギー消費量がゼ
(Smart Meter Application)認証制度がスタートし、残
ロまたはマイナスの住宅をZEH として定義されている。
りの重点 7 機器についても検討が進められてきた。
大手ハウスメーカを中心にZEHの基準を満たす新築
すなわち、第一ステップとして運用ガイドライン、第二
住宅が増加している中で、ZEH 補助金の必須要件に
ステップとしてAIF(Application Interface)認証制度の
HEMSの導入が挙げられていることもあり、これらの住
検討が進められてきた。表 1にも示すように、重点 7 機
宅ではHEMSが主に見える化機能として採用されてい
種には、JEMAが取り扱っている製品が多く、JEMA内
る。ただし、見える化機能だけでは需要家の満足度は低
で製品ごとのWG・分科会を組織して、エコーネットコン
く、ライフスタイルに応じた機器制御による節電や、より
ソーシアム、太陽光発電協会・電池工業会・日本冷凍空
安心・安全・快適で楽しい生活を実現する新サービスの
調工業会と連携して対応してきた。その結果、2016 年 4
提供が期待されている。
表 1 重点 7 機種とその検討に参画する業界団体
重点機器
太陽光発電
蓄電池
検討を行う主な業界団体
一般社団法人 太陽光発電協会
一般社団法人 日本電機工業会
一般社団法人 電池工業会
一般社団法人 日本電機工業会
電気自動車用充電器
一般社団法人 電動車両用電力供給システム協議会
燃料電池
燃料電池実用化推進協議会
ガス・石油給湯器
一般社団法人 日本ガス石油機器工業会
エアコン・ヒートポンプ給湯機
照明機器
一般社団法人 日本冷凍空調工業会
一般社団法人 日本電機工業会
一般社団法人 日本照明工業会
出典:経済産業省
14 電 機 2016・April
HEMS の全体像
(3)Virtual Power Plant(VPP)関連
(2)太陽光発電関連
再生可能エネルギーの一つである太陽光発電は、2009
リチウムイオン蓄電池を搭載した家庭用蓄電システム
年 11 月にスタートした余剰電力買取制度を活用した経済
は、METIの補助金を活用して、急速に市場導入が進ん
面での需要家のメリットもあり、新築住宅での普及ととも
でいる。しかしながら、夜間電気料金体系に定められた
に既築住宅への設置も進んでいる。上記のZEHにおいて
夜間充電・昼間放電の運転モードを利用しても、導入コ
も必要不可欠な製品であり、積極的に導入が図られてき
ストに見合う経済効果が得られる状況には至っておらず、
た。しかしながら、大規模な太陽光発電システムを含め
停電リスクに対する安心・安全性を加味した機器として
て導入が進んだ地域では、系統電力の安定性への悪影響
導入されているのが現状である。
を防止するために、2015 年度から出力抑制機能を付加す
その中で、住宅や工場などに蓄電システムを導入するこ
ることを条件として、新規設備の系統連携を認める新制
とで、エネルギーの地産地消を図るVPPについて、既に導
度を採用する電力会社(除く:東京電力、関西電力、中
入されている再生可能エネルギーや蓄電システムを含め
部電力)が現れ、市場に影響が出始めている。
て統合管理することによりピークカット・ピークシフトを図り、
また、2019 年には、余剰買取制度の10 年間を経過し
調整力として活用されている火力発電の削減による省 CO 2
た需要家が出現することから、蓄電システムを導入する
を図ることが検討されている。2015 年 11 月に行われた官
ことにより、太陽光で発電した電力を夕方などにおける住
民対話で、VPP 構想が話題として取り上げられ、2017 年
宅での電力消費にシフトすることで地産地消を進め、再
度にネガワット取引市場を立ち上げることを目的に、2016
生可能エネルギーの有効活用が期待されている。この際
年度からMETIからも補助金が導入されることとなって
にも、電力会社の出力抑制情報や天気予報および住宅で
いる(図3)
。本検討でも、住宅や店舗に設置した蓄電シ
の使用電力量のデータからHEMS により機器制御するこ
ステムを遠隔操作して充放電させるために、ECHONET
とで、より有効なエネルギーマネージメントが期待されて
Lite規格とHEMSの活用が重要な要素となる。
いる。
省エネルギー・新エネルギー部
新産業・社会システム推進室
03-3580-2492
バーチャルパワープラント構築事業費補助金
平成 28 年度予算額 29.5 億円
(新規)
事業の内容
事業イメージ
事業目的・概要
事業例①:蓄電池等のエネルギー設備を活用したビジネスモデルの確立
東日本大震災後、従来の大規模集中電源に依存した硬直的な供給シ
ステムを脱却するとともに、急速に普及している再生可能エネルギー
を安定的かつ有効に活用していくことが喫緊の課題となっています。
こうした状況に対応するため、高度なエネルギーマネジメント技術に
より、電力グリッド上に散在する①再生可能エネルギー発電設備や②
蓄電池等のエネルギー設備、③ディマンドリスポンス等需要家側の取
組を統合的に制御し、あたかも一つの発電所(仮想発電所)のように
機能させる実証事業等を実施します。
また、エネルギー設備や需要家等の地理的な分布が与える影響につ
いても検証します。
こうした創エネ、蓄エネ、省エネを最適に組み合わせることにより、再
生可能エネルギーの導入拡大、更なる省エネルギー・負荷平準化を
図ります。
成果目標
平成 28 年から平成 32 年までの 5 年間の事業を通じて、50MW
以上の仮想発電所の制御技術の確立等を目指し、更なる再生可能エ
ネルギー導入拡大を推進します。
事業例②:高度制御型ディマンドリスポンス
また、節電した電力量を売電できる「ネガワット取引市場」
(平成 29
年までに創設予定)における取引を見据えたアグリゲーターの機器
制御技術の高度化を図ります。
条件(対象者、対象行為、補助率等)
補助
国
補助
(定額、1/2)
民間団体等
民間事業者等
送配電事業者が要請する需
要抑制量に対して、アグリゲ
ーターは過不足のない需要
抑制を確保できるよう、複数
の需要家から需要抑制量を
集めて整形
確度の高いネガワット取引を
実現することで、送配電事業
者が調整力に用いることが可
能に
出典:経済産業省
図 3 VPP 関連の補助金の概略
特集:HEMS の現状と今後の展望 15
3.HEMS 専門委員会での検討状況と
今後の計画
ケースの検討のために、HEMSのユーザ視線での意見を
いただくべく、住宅生産団体連合会にもオブザーバー参
加していただき、活動を進めている。
3.1 JEMA における組織の位置づけ
これまで述べてきたように、住宅のエネルギーマネー
ジメントの重要性が増す中で、HEMSに期待される役割
3.2 現在の活動状況および今後の活動計画
これまでにも述べてきたように、HEMSの普及のため
には、異なるメーカ機器の相互接続性能向上が重要であ
はより重要となっている。
これまでは、エコーネットコンソーシアムが中心となっ
り、ECHONET Lite規格の第三者認証制度が 2016 年 4
てMETIと連携して施策展開を進めていただき、JEMA
月にスタートできることは、大変意義深いものと認識する。
としては必要に応じて関連委員会や WGで対応していた。
しかしながら、これがゴールではなく、次のステップと
今回、HEMSコントローラーを含めた機器・事業化関連
して具体的なユースケースを念頭に置いたさらなる検討
についてはJEMAが積極的に関わることが重要との認識
が必要である。
のもと、2015 年 9 月にHEMS 専門委員会が設立された。
例えば、太陽光発電の出力抑制対応でのHEMS 活用
その体系図を図4に示すが、スマートグリッド委員会の下
については、
「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討
部組織として、AIF関連の検討を関連工業会と連携して
会」からHEMS 専門委員会がチャレンジをいただき、検
推進した各分科会を傘下の組織とする体制となっている。
討を進めている。また、VPP関連についてもMETIの「エ
また、エコーネットコンソーシアムには通信規格関連の
連携を強化することを念頭に、本専門委員会にオブザー
バーとして参加いただいている。
ネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」
(ERAB 検討会)に参画するとともに、蓄電池の通信規格
に関するWGに参画し、アグリゲーションビジネスに必
共創領域と競争領域の両立を念頭に、HEMS 普及に向
要な通信機能をECHONET Lite規格を拡張する検討を
けて各社から意見を出し合う場として、ユーザ視線での
進めている。今後、住設機器をはじめとする重点 8 機種
HEMSに対する要求を実現するために本委員会では活動
以外の相互接続性の向上施策も必要である。
している。基本方針として、
「HEMSを構成する各種機
器について、横断的に情報を共有し、社会的に必要とさ
これまで注力いただいたエコーネットコンソーシアム・
れる共通のユースケースに関する課題への取組みや、国
JEMA 会員各社メンバーの努力の成果を活かすべく、今
や関連団体への意見発信などを通じて、HEMSの普及促
後さらにエコーネットコンソーシアムとの連携を密にし
進と会員企業の事業拡大に資する」ことを掲げている。
て、HEMS 事業の促進を目指し活動してまいりますので、
本委員会には、現在 HEMS関連の事業を推進している
会員会社を中心に16 社が参加している。さらに、ユース
JEMA 会員メンバー各社のご支援をよろしくお願いしま
す。
図 4 JEMA における HEMS 専門委員会の体系図(2015 年 10 月時点)
16 電 機 2016・April
エアコンに関する検討状況
HEMS 促進のための取組み
エアコンに関する検討状況
一般社団法人 日本電機工業会
HEMS 専門委員会
エアコン分科会 主査
加井 隆重
1.はじめに
◇
2.これまでの取組み
これまでもHEMS 普及に向けて様々な取組みがされて
2012 年 6 月に経済産業省が推進するスマートハウス・
いたが、2014 年 3 月からは、
「住宅・ビルの革新的省エネ
ビル標準・事業促進検討会が開始され、HEMS 普及促
ルギー技術導入促進事業(HEMS 機器導入支援事業)
」
進のための活動が現在も継続されている。
等を活用した様々な取組みがなされてきた。現在、大手
デベロッパーのスマートハウスでは、太陽光発電、家庭
用蓄電池、燃料電池を備え、エネルギーの見える化のた
めにHEMSを装備する住宅が多く販売されている。
2.1 運用ガイドラインの作成
(2013 年 7 月〜 11 月)
スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会では、ス
これらの住宅では、ECHONET Lite 通信規格に対応
マートメーターおよび HEMS(家庭のエネルギー管理シ
したエアコンが採用されている。本稿では、経済産業省
ステム)の標準化について提案された。HEMSと接続機
が推進してきたHEMS 普及に向けた取組みを加速するた
器およびスマートメーターとの間の標準インタフェースと
めにエアコン業界が果たしてきた取組みと、今後の市場
しては、ECHONET Liteが推奨され、スマートハウス・
拡大に向けた期待について述べる。
ビル市場普及拡大に向けた相互接続性に係る課題整理と
して次の5 点が挙げられ(図1*1)
、HEMS−重点機器運
(出典:スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会第 1 回資料)
図 1 スマートハウス・ビル市場普及拡大に向けた相互接続性に係る課題の整理
◇ダイキン工業株式会社 テクノロジーイノベーションセンター エネルギーシステムグループ
特集:HEMS の現状と今後の展望 17
*2
用ガイドライン[第 1.0 版]
(案)
が提案された。
を目指し、家庭用エアコンのプロパティを充実させること
で新しい用途への展開を検討した。ユースケースを想定
① 重点機器の下位層(伝送メディア)の特定・整備
し、その際にHEMSからエアコン使用時に新たに必要と
② 重点機器の運用マニュアルの整備
なるプロパティを検討した。
将来の少子高齢化社会、電力抑制社会を想定したニー
③ 他社機器との相互接続検証と機器認証
④ ECHONET Lite 規格の国際標準化の推進
ズとして、①高齢者家族の増加と独居者の増加から日常
⑤デマンドレスポンスシステム標準化の検討
生活において安心安全な暮らしが営まれていることをさ
りげなく見守る、②電力の見える化と電力抑制の対象機
これら課題を検討した結果、重点機器として次の8 機
器としてHEMSが収集するデータの充実によるエネル
種(スマートメーター、太陽光発電、蓄電池、燃料電池、
ギー抑制を想定した。①では、エアコンの家庭での利用
電気自動車用充電器、エアコン、照明機器、給湯器)が
場面で手元リモコンによる個別操作をHEMSが操作ログ
選定され、HEMSと重点機器の連携のため、設置・接
として収集することで利用者の生活を見守ることとした
続・保守等に係る責任分担・作業連携等に係るマニュア
(図2)
。②では、HEMSを利用して需要家の電力抑制を
ルが整備された。エアコンに関するECHONET Lite 仕
想定し、エアコンの内部に保持している消費電力を活用
様検討グループでは、HEMS-重点機器運用ガイドライン
するケースを想定した。ただし、②については、実現に
[第 1.0 版]に沿って検討を進め、エアコンのECHONET
向けた各社の足並みがそろわなかったため、規格とはせ
Lite 仕様の変更を検討し、2013 年 11 月にHEMS-重点機
ず継続検討とした。
器運用ガイドライン[第 2.0 版]を作成した。それを受け
て、表 1に示すプロパティ変更が、一般社団法人 エコー
2.2 第三者接続試験仕様検討
(2014 年 5 月~ 2015 年 2 月)
ネットコンソーシアムにより、Appendix ReleaseDとして
規格化された。
スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会では、
また、ECHONET Lite 規格の国際標準化の推進が図
HEMSと重点 8 機種の市場における相互接続性を向上さ
られることになった。
せるために、ECHONET Liteの機器認証とは別に、第三
者による相互接続確認試験の実施が検討された。これま
でもエアコンとヒートポンプ給湯機を併せて検討してきた
<検討に当たっての留意点>
ECHONET Lite 仕様検討グループでは、HEMS 普及
経緯から、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)では、
表 1 家庭用エアコンクラス構成プロパティ一覧
プロパティ名称
プロパティ内容
EPC
単 位
アクセス
ルール
必 須
状変時
アナウンス注
値域(10 進表記)
節電動作設定
0x8F
機器の節電動作を設定し、状態を取得する。
-
Set/ Get
○
○
運転モード設定
0xB0
自動/冷房/暖房/除湿/送風/その他の運転モ
ードを設定し、設定状態を取得する。
-
Set/ Get
○
○
温度設定値
0xB3
温度設定値を設定し、設定状態を取得する。
℃
Set/ Get
○
消費電流 計測値
0xB9
消費電流計測値
0.1A
Get
室内温度計測値
0xBB
室内温度計測値
℃
Get
外気温度計測値
0xBE
外気温度計測値
℃
Get
風量設定
0xA0
風量レベルおよび風量自動状態を設定し、設定状
態を取得する。風量レベルは 8 段階で指定。
-
Set /Get
注 状態変化時(状変時)アナウンスの○は、プロパティ実装時には、処理必須を示す。
18 電 機 2016・April
○
○
○
備 考
エアコンに関する検討状況
エアコンメーカーによるエアコン分科会を立ち上げ、一般
ECHONET Lite 第三者接続試験においても、市場で一
社団法人 日本冷凍空調工業会のヒートポンプ給湯機の検
般的に使用される運転状態を試験状態に組み入れること
討メンバーにも同分科会に参画いただき、HEMSとエア
により、機器メーカー間の差異が認証試験に影響しない
コン、HEMSとヒートポンプ給湯機間の相互接続性向上
ように設定した。このような視点で、接続試験を実施す
のために、通信インタフェース仕様書*3 *4、認証試験仕
ることで、HEMSメーカーは事前の接続試験無しでマル
様書*5 *6 *7 *8 を作成しECHONETコンソーシアムに提
チベンダーのエアコンとの相互接続が可能になった。
案した。
2.3 AIF 第三者認証試験仕様書作成
(2015 年 5 月~ 9 月)
<検討に当たっての留意点>
ECHONET Lite 通 信仕 様では、機器を制御する設
エアコン分科会では、AIF(アプリケーション通信
定コマンドに対する応答コマンドの自由度が高いため、
インタフェース)第三者認証制度に向けて、エアコン、
HEMSコントローラを設計する際に機器メーカーごとに
HP 給湯機の試験要領について検討した。エコーネットコ
その応答について確認が必要になっていた。これまでは、
ンソーシアムでは、重点 8 機種の機器すべてを統合する
HEMSメーカーとエアコンメーカーが機器発売前に、秘
形で要件定義仕様書*9 を公開した。
密保持契約を締結しメーカー間の個別接続試験を実施し
て市場での問題発生を防止していた。
<検討に当たっての留意点>
今回の第三者接続試験仕様では、制御設定コマンドに
エアコンは、年間約 800 機種もの新製品が ECOHNET
対する応答コマンドのエアコンメーカー間の差異を吸収
Lite 認証機器として販売され、そのほとんどが秋に発表
する形で仕様を策定することにより、メーカーに依存する
される。ECHONET Liteの機器認証は自主認証であり、
ことなく試験が実施できるよう仕様をまとめた。
各メーカーが個々に試験を実施していたため認証試験が
このための基本的な考え方は、HEMSから家庭用エ
一時期に集中することは、問題にならなかった。
アコンを操作する場合、冷房時や暖房時に利用される
今回のAIF 第三者認証試験では、決められたAIF 認証
設定温度は、機器メーカーやエアコン自体に依存するの
機関、AIF 試験機関で各社からのAIF 認証申請を処理す
ではなく、利用者の使用条件に依存することとした。家
ることになる。エアコンは、季節商品であるため、各社の
庭用エアコンでは、一般的に使用される運転モードや温
エアコンの認証試験はほぼ 2カ月間に集中することになる。
度設定範囲にメーカーの違いによる差異は無い。従って、
AIF 認証試験自体に多くの時間を要するのでは、認証試
HEMS
動作状態、節電動作設定、
風量設定の状態変化
エアコン
生活状態の検知
リモコン操作
生活者が、日常生活において、
エアコンのリモコンを操作した
情報を提供し、生活者に意識
させることなく、日常生活状態
を HEMS が検知可能にする。
生活者
図 2 ユースケース例:生活者の日常生活の見守り
特集:HEMS の現状と今後の展望 19
験がボトルネックとなりECHONET Lite 機器普及が妨げ
(2)試験時の機器のイメージ
AIF 認証試験では、AIF 仕様確認に必要な機能のみを
られる。
これを避けるために、ECHONET Lite 通信機能として
試験する。したがって、試験対象はHEMS-エアコン間
まとめられる機器を統合(空調容量の違い、色違い、販
の通信機能であり、エアコンとしての機能試験は不要で
売ルート違いによる型式の違いを、搭載する通信機能が
あるため、AIF 認証試験に必要な部分と機能に特化する
同一であれば、一括して受験)申請することで、受験す
形で、認証試験を受験できるように受験形態の自由度を
べき機器数を抑えた。また、HEMSとエアコン間の通信
高めた。
の接続性試験であることから、エアコンとしての機能(温
HEMS-エアコン間の通信機能以外のソフトウェア改
める、冷やす等)は不要であるため、例えば、室外機部
変を認めることで、例えば室外機の代わりに室外機を模
分は疑似負荷やシミュレータで代用する等を活用し、AIF
擬する装置を接続したり、室外機からの応答を模擬する
認証試験に影響がない形で試験時間の短縮を図った 。
ソフトウェアを搭載する等、疑似装置やコンピュータシ
*9
ミュレータを利用した試験が可能となり、試験時間短縮
が可能になる(図4)
。
(1)申請時の複数機種の統合
申請は、以下に示すグループ単位で行うこととした
① 機器
② 機器の一部+周辺装置
(図3)
。
① 能力や色違い等、ECHONET 通信部分を見れば、
すべて同じ構成に成っている商品グループを一括申
請
(センサ入力、アクチュエータあるいはシミュレータ)
③ 電装品のみ+周辺装置
(センサ入力、アクチュエータあるいはシミュレータ)
② 通信アダプタと、接続できる複数のエアコン機器を
グループとして一括申請
3.今後の期待
③ 上記 a. b.のグループを構成する際に、ECHONET
Lite 通信機能を実現した同一ソフトウェアを搭載(実
エコーネットコンソーシアムから、AIF 試験機関、AIF
装ハードウェアは同一に限定しない)した機器をグ
認証機関が公募(2015 年 11 月)され、2016 年 4 月より
ループとして一括申請
AIF 第三者認証制度が開始される。これまでは、エアコ
図 3 機種統合
20 電 機 2016・April
エアコンに関する検討状況
ンとHEMSとの接続には、商品化前に秘密保持契約を
<参考資料(エコーネット会員向け資料を含む)>
締結し接続試験を実施してきた。AIF 認証試験制度が
* 1 スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会について: スマートハウス・
ビル標準・事業促進検討会(第 1 回)配布資料:2012 年 6 月
開始されれば、HEMSと各社のエアコン間の相互接続
性が、第三者機関による接続試験で確認されるようにな
る。また、利用者視点で想定されるユースケースに必要
なECHONET Liteのプロパティ拡張も行った。
今後は、HEMSと家庭内の様々な機器がつながり新
しい利用方法が広がってくると思われる。利用者視点で
考えれば、達成したい目的があり、その目的のために制
御監視したい機器が複数決まる。その対象機器すべてが、
同一の目的のために必要な制御や監視ができて初めて目
的が達成される。
現在は、機器ごとに個別にプロパティ拡張を検討して
おり、機器ごとの縦割りの検討である。本来、利用者視
点(目的視点)から見れば、目的達成に必要な機器すべ
てが同じようにプロパティ拡張を横串で検討し実現する
* 2 HEMS- 重点機器運用ガイドライン[1.0 版]
:スマートハウス・ビル標準・
事業促進検討会(第 3 回)配布資料:2013 年 5 月
* 3 家庭用エアコン・HEMS コントローラ間 アプリケーション通信 インタ
フェース仕様書 Version 1.00:2015 年 3 月
* 4 HP 給湯機・HEMS コントローラ間 アプリケーション通信 インタフェース
仕様書 Version 1.00:2015 年 3 月
< ECHONET Lite 機器認証試験仕様書>
* 5 家庭用エアコン・HEMS コントローラ間アプリケーション通信インタフェー
ス仕様 Ver.1.00 用 家庭用エアコン用(第 1 版)
:2015 年 3 月
* 6 家庭用エアコン・HEMS コントローラ間アプリケーション通信インタフェー
ス仕様 Ver.1.00 用 HEMS コントローラ用(第 1 版)
:2015 年 3 月
* 7 HP 給湯機・HEMS コントローラ間アプリケーション通信インタフェース
仕様 Ver.1.00 用 HP 給湯機用(第 1 版)
:2015 年 3 月
* 8 HP 給湯機・HEMS コントローラ間アプリケーション通信インタフェース
仕様 Ver.1.00 用 HEMS コントローラ用(第 1 版)
:2015 年 3 月
* 9 ECHONET Lite AIF における 試験機関の要件定義仕様書(H.27 年度
公募版)Version 1.0Draft:2015 年 11 月
ことが理想である。JEMAがそのような役割を果たしてい
ければ、HEMS 普及、エアコン、HP 給湯機のさらなる
普及が達成されるものと信じている。
図 4 試験機器(イメージ図)
特集:HEMS の現状と今後の展望 21
HEMS 促進のための取組み
太陽光発電機器および蓄電池機器に関する検討状況
一般社団法人 日本電機工業会
HEMS 専門委員会 太陽光発電分科会 主査
尾関 秀樹
◇1
HEMS 専門委員会 太陽光発電分科会 副主査
中村 一尊
◇2
HEMS 専門委員会 蓄電池分科会 主査
山本 雅一
◇3
住宅における蓄電池の用途は停電時や非常時の電源と
1.はじめに
しての役割が現在の主流だが、今後は系統連系による活
住宅市場における太陽光発電機器の本格的な販売は
1993 年に始まり、時期をほぼ同じくして導入への補助制
度なども立ち上がったものの、当初は高額であったことも
用や、住宅用太陽光発電と連繋した用途を目的とした製
品が新たな主流となると考えられる。
このように住宅用太陽光発電および家庭用蓄電池はと
もに今後も成長市場として期待されているが、さらには
あり普及には時間がかかると見られていた。
太陽光発電の普及を急速に後押しすることとなったの
住宅市場におけるホーム・エネルギー・マネジメント・シ
は、2009 年に開始された余剰電力買取制度および 2012
ステム(HEMS)との連繋や、今後の制度改革における
年に始まった固定価格買取制度(10kW 以上の太陽光発
電力環境の変化等を想定する上でも重要な機器である。
電に対しては発電電力を20 年間、10kW 未満の太陽光
このような観点から、一般社団法人 日本電機工業会
発電に対しては余剰電力を10 年間買い取る制度)であり、 (JEMA)では「HEMS 専門委員会 太陽光発電分科会お
よび蓄電池分科会」を組織し、HEMSと連繋する上での
これらにより一気に認知度が高まり、普及が進んだ。
2014 年度末時点では、太陽光発電は住宅市場におい
て累計約 170 万戸、住宅総数の約 7%に設置されており
(一般社団法人 太陽光発電協会〔JPEA〕調べ*1)
、また
2013 年度における新築住宅の約 11%に太陽光発電が設
置された(JPEA*1 と国土交通省*2 調べを元に算出)
。
一方、家庭用定置型蓄電池(家庭用蓄電池)は東日本
大震災後の電力需給対策の一環としての補助政策などに
よりその市場が急速に拡大し、それに応じてリチウムイオ
ン電池等の技術開発、製品開発が進んだ。
「定置用リチウ
太陽光発電および蓄電池の課題について取り組んできた。
本稿ではそれらの取組みを紹介するとともに、今後の課
題およびビジョンについても述べたい。
2.重点機器運用ガイドラインおよび
ECHONET Lite 規格・AIF 認証
制度について
HEMSは、家庭におけるエネルギー需給状況を「見え
*3
ムイオン蓄電池導入支援事業費補助金」の登録製品数
る化」するとともに、適切に管理・制御する仕組みとして
において、2011 年度では87 製品であったが、2013 年度
導入が進められている。さらに今後は太陽光発電や家庭
に125 製品、2014 年度には148 製品が登録されるに至っ
用蓄電池をはじめとする創エネ・蓄エネ機器の活用も視
ている。
野に入れた開発が進められており、多種多様な機器同士
◇ 1 オムロン株式会社 環境事業本部 商品開発部 ◇ 2 京セラ株式会社 研究開発本部 エネルギーシステム研究開発部 事業企画部
◇ 3 パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 エナジーシステム事業部 R & D センター
22 電 機 2016・April
太陽光発電機器および蓄電池機器に関する検討状況
の相互接続をHEMSにおいて実現するために、技術開発
仕様書と、認証試験仕様書 Version 1.00」および第三者
および仕組み作りが進められている。
認証を立ち上げるための「ECHONET Lite AIFにおける
具体的には、
「スマートコミュニティ・アライアンス
試験機関の要件定義仕様書 Version 1.0Draft」の検討お
(JSCA)
」の活動の一環として設置されている「スマート
よび作成に注力し、それぞれエコーネットコンソーシアム
ハウス・ビル標準・事業促進検討会」において、2013 年
度よりHEMSと重点機器(スマートメータ、太陽光発電、
蓄電池、エアコン、照明機器、給湯器、燃料電池、電気
より発行いただいた。
以 下 に、そ の 際 検 討 され た ユ ー スケ ー ス お よび
ECHONET Lite 規格の必須プロパティを示す。
自動車用充電器)間における運用ガイドラインの整備が
進められた。
また2015 年 3 月からは一般社団法人 エコーネットコン
3.1 住宅用太陽光発電
(1)想定される太陽光発電でのユースケース
ソーシアムを中心に、重点機器とHEMSコントローラ間
HEMSコントローラが、住宅用太陽光発電から「瞬時
のアプリケーション通信インタフェース(AIF)仕様書と
発電電力計測値」と「積算発電電力量」を取得するユー
認証試験仕様書、さらには試験機関の要件定義仕様書な
スケースを図2に示す。
どの検討、整備が進められている。
これらにおいてはJEMAもJPEA や一般社団法人 電
池工業会とも連携して参画し、その推進のために前述の
HEMS 専門委員会 太陽光発電分科会および蓄電池分科
会を組織して対応している。
図1にその概要を示す。
図 2 太陽光発電で想定されるユースケース
(2)太陽光発電・HEMS間で交換される必須コマンド
表 1および表 2にECHONET Lite 規格における住宅
用太陽光発電で使用される必須プロパティを示す。
表 1 住宅用太陽光発電クラスの必須プロパティ
プロパティ名
図 1 太陽光発電、蓄電池のAIF 認証制度へのJEMAの取組み
EPC
動作状態
0x80
瞬時発電電力計測値
0xE0
積算発電電力量計測値
0xE1
表 2 スーパークラスのプロパティ
3.JEMA における AIF 認証制度の
検討内容
JEMAでは、図1における「HEMS-重点機器運用ガ
イドライン[第 1.0 版]
」および「HEMS-太陽光発電/
蓄電池運用ガイドライン[第 1.1 版]
」における検討を実
施した。その後、JEMA内にHEMS 専門委員会を組織し、
「住宅用太陽光発電/蓄電池-HEMSコントローラ間 AIF
プロパティ名
EPC
設置場所
0x81
規格 Version 情報
0x82
異常発生状態
0x88
メーカコード
0x8A
状変アナウンスプロパティマップ
0x9D
Set プロパティマップ
0x9E
Get プロパティマップ
0x9F
特集:HEMS の現状と今後の展望 23
4.今後の取組みについて
3.2 家庭用蓄電池
(1)想定される蓄電池でのユースケース
HEMSコントローラと家庭用蓄電池間のユースケース
を図3に示す。
これまでいわゆる「運用ガイドライン」や「AIF 認証」
に関して、JEMAとしても会員各社の協力のもと推進し
① 蓄電池の 蓄電残量の表示
ており、その成果として2016 年 4 月よりAIF 第三者認証
②ピークシフトの自動化
が開始された。
確 か にAIF 認 証 は 住 宅 用 太 陽 光 発 電 / 蓄 電 池と
HEMS間の相互接続強化への大きな一歩であるが、しか
しそれが相互接続性の確立・完成ではなく、また今後の
市場環境変化に対し万全といえるものではない。
以下に今後取り組むべき住宅用太陽光発電や家庭用蓄
電池をめぐる動向について述べる。
4.1 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
最近の動きとして、経済産業省 資源エネルギー庁によ
※出典 JSCA スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会 HEMS- 蓄電池 運用ガイドライン [第1.1版]
(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/smart_house/004_haifu.html)を元に筆者加筆
り2015 年 12 月に取りまとめられたZEHロードマップ*4
図 3 蓄電池で想定されるユースケース
にもあるように、今後 ZEHの自律的普及を目指した方向
性が具体化されており、図4に示すとおり、太陽光発電
(2)蓄電池・HEMS間で交換される必須コマンド
の設置が事実上必須となる。
表 3および表 4にECHONET Lite 規格における家庭
用蓄電池で使用される必須プロパティを示す。
表 3 家庭用蓄電池クラスの必須プロパティ
プロパティ名
EPC
動作状態
0x80
運転モード設定
0xDA
蓄電残量 1※
0xE2
蓄電残量 2※
0xE3
蓄電残量 3※
0xE4
蓄電池タイプ
0xE6
運転動作状態
0xCF
定格電力量 ※※
0xD0
定格容量 ※※
0xD1
定格電圧
0xD2
※※
※ いずれかの搭載を必須
※※ オプション
図 4 * 5 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
4.2 住宅用太陽光発電の余剰電力問題
これまで導入普及が進んできた住宅用太陽光発電にお
いて、2015 年 1 月に再エネにおける出力制御の適用範囲
を変更する省令改正が行なわれ、大型のいわゆる産業用
太陽光発電のみではなく住宅用太陽光発電も出力制御の
表 4 スーパークラスのプロパティ
プロパティ名
※出典 一般社団法人 環境共創イニシアチブネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業調査発表
会 2015 経済産業省資料(https://sii.or.jp/zeh26r/file/doc_1124.pdf)を元に筆者加筆
EPC
対象となり、その実証実験が推進されている現状がある。
また、固定価格買取制度における売電価格の低下が進み、
設置場所
0x81
系統からの購入電力との価格的優位性がなくなる、いわ
規格 Version 情報
0x82
ゆる「グリッドパリティ」が現実味を帯びてきている。
異常発生状態
0x88
メーカコード
0x8A
状変アナウンスプロパティマップ
0x9D
Set プロパティマップ
0x9E
Get プロパティマップ
0x9F
24 電 機 2016・April
さらに2019 年には、2009 年に開始された余剰電力買
取制度の買取期間を満了する太陽光発電が発生すること
が確実となっており、これらの余剰電力をいかに有効活
用するか、すなわちエネルギーマネジメントが必須となっ
てくる。
太陽光発電機器および蓄電池機器に関する検討状況
コーネットコンソーシアムや関連する器具工業会、機器
4.3 分散電力活用による仮想発電所の実現
2015 年 6 月の「スマートハウス・ビル標準・事業促進
を活用いただく住宅生産団体連合会とも協力して、住宅
検討会」において、
「2016 年 3 月までに再エネ出力制御
用太陽光発電・家庭用蓄電池を活用したエネルギーマネ
システム下でのHEMS 活用のあり方の成案を得る」 との
ジメントの発展に取り組んで行く。
*6
方向が示され、今後、具体的な実現に向けての検討が官
民協力のもと進められることになっている。
〔参考資料〕
今後は、需要家の元にある太陽光発電や家庭用蓄電池
をはじめとする分散型電源の集約的活用(アグリゲーショ
ン)による仮想発電所の具体化が求められるであろう。
以下に仮想発電所の展開イメージ(図5)を記す。
5.まとめ
* 1 太陽光発電産業ビジョン “JPEA PV OUTLOOK 2030”
「2030 年に向けた確かな歩み」図 2-11
(http://www.jpea.gr.jp/pdf/pvoutlook2015-1.pdf)
* 2 建築着工統計調査報告によると新築住宅着工数は98 万戸
(2013 年度)
(http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_
jouhouka_tk4_000002.html)
* 3 一般社団法人 環境共創イニシアチブ
(http://sii.or.jp/)
住宅用太陽光発電および家庭用蓄電池をかしこく、無
駄なく、効率的に活用するには「エネルギーマネジメント」
が不可欠であり、そのためには住宅におけるHEMSの一
層の普及とともに、機器相互接続の要となるECHONET
Lite 規格、および AIF 認証の整備が不可欠である。
これまでにAIF 認証が整備されてきたことは、住宅用
太陽光発電および家庭用蓄電池とHEMS間の相互接続
強化への大きな一歩となったが、今後の市場環境の変化
にも柔軟に対応できる更なる検討推進が不可欠である。
今後、JEMA、HEMS 専門委員会、太陽光分科会お
よび蓄電池分科会においては会員各社の協力のもと、エ
* 4 「ZEH ロードマップ検討委員会とりまとめ」経済産業省
資源エネルギー庁 省エネルギー対策課(http://www.meti.go.jp/
press/2015/12/20151217003 /20151217003-1.pdf)
* 5 一般社団法人 環境共創イニシアチブ
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業
調査発表会 2015 経済産業省資料を引用
(https://sii.or.jp/zeh26r/file/doc_1124.pdf)
* 6 スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会
(2015 年 6 月)での決定事項
(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/smart_
house/007_haifu.htm)
* 7 産業競争力会議 改革 2020 経済産業省資料
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/wg/kaikaku/
dai5/siryou.html)
産業競争力会議 改革 2020 経済産業省資料を引用*7
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/wg/kaikaku/dai5/siryou.html)
図 5 *7 仮想発電所の展開イメージ
特集:HEMS の現状と今後の展望 25
ハイライト
津田会長 記者発表
- 2016 年度 電気機器の生産見通し-
一般社団法人 日本電機工業会
一般社団法人 日本電機工業会
(JEMA)は、2016年3月17日 ㈭ 、
電機工業会館にて、プレス関係者 20 名の出席を得て、2016
年度電気機器の生産見通しについて、津田会長より記者発表を
行いました。
以下、発表内容と、質疑応答の概要をご紹介致します。なお、
リリース文は JEMA ウェブサイト(www.jema-net.or.jp)でも
ご覧いただけます。
プレスリリース
1.電機産業を取り巻く概況
98.1%となる見込みです。
2015 年度のわが国経済は、労働需給のタイト化を背景
2016 年度は、引き続き良好な企業業績や雇用環境が
に、雇用情勢の改善が続きました。一方で、実質賃金の
継続し、景気全体としても緩やかな回復基調を辿ると期
伸び率が小幅なものに留まっていることを受け、個人消
待しておりますが、中国をはじめとする海外経済の減速
費は年度を通じて伸び悩みました。企業部門については、
が長期化するようであれば、日本経済の回復ペースが
比較的良好な収益環境が継続し、7 〜 9 月以降は設備投
遅れることが懸念されます。一方で、年度後半以降は、
資の増加が続いていますが、2016 年入り後は、中国をは
2017 年 4 月の消費税率引き上げを見越した需要増による
じめとする新興国経済の減速に加え、金融市場の混乱に
景気押し上げ効果が見込まれます。
よる円高・株安傾向が継続しており、先行き不透明感が
強まっています。
電機産業を取り巻く環境について、重電分野は、国内
の電力・民間設備投資が下支えとなることで底堅さが期
電機産業を取り巻く環境について、重電分野は、アジ
待され、また、白物家電分野は、消費者の省エネルギー
アを中心とする新興国経済の減速の影響を受けました。
に対する意識の底堅さに伴う買替え需要とともに、年度
白物家電分野は、2014 年 4 月の消費税率引き上げによる
後半の消費税率引き上げを見越した需要増が見込まれま
需要の減少を脱し、買替え需要を主体に高付加価値機種
す。
が堅調に推移しました。
このような中、2015 年度の重電・白物家電機器を合わ
せた電気機器の国内生産は、5 兆 4,764 億円、前年度比
26 電 機 2016・April
このような中、2016 年度の重電・白物家電機器を合わ
せた電気機器の国内生産は、5 兆 6,303 億円、前年度比
102.8%となる見通しです。
表 1 電気機器の国内生産 2015 年度実績見込みと 2016 年度見通し
2015 年度実績見込み
金 額
(億円)
前年度実績比
(%)
2016 年度見通し
金 額
(億円)
前年度実績見込比
(%)
重電機器
37,047
95.0
37,626
101.6
白物家電機器
17,717
105.3
18,677
105.4
電気機器合計
54,764
98.1
56,303
102.8
白物家電機器国内出荷
21,841
102.8
22,939
105.0
備考 1:国内生産の実績見込み・見通しは、経済産業省 生産動態統計をベースに JEMA が策定しました。
2:白物家電機器の国内出荷の実績見込み・見通しは、JEMA 統計、日本冷凍空調工業会統計をベースに、JEMA が策定しました。
3:端数四捨五入のため、積上げ値と合計値が一致しない場合があります。
図 1 電気機器の年度別国内生産額推移
[ハイライト]
27
ハイライト
2.電気機器の生産状況
2.1 重電機器分野
表 2 重電機器の国内生産 2015 年度実績見込みと 2016 年度見通し
2015 年度実績見込み
2016 年度見通し
金額(億円)
前年度実績比(%)
金額(億円)
5,632
82.2
6,103
ボイラ
2,069
92.4
2,036
98.4
蒸気タービン
2,689
92.5
2,903
107.9
ガスタービン
873
51.1
1,164
133.3
発電用原動機
回転電気機械
前年度実績見込比(%)
108.4
9,200
88.9
9,483
103.1
うち、交流発電機
968
84.9
970
100.2
うち、交流電動機
3,472
81.8
3,664
105.5
961
96.0
975
101.4
うち、サーボモータ
静止電気機械器具
7,931
96.4
7,848
99.0
うち、変圧器
2,291
100.4
2,371
103.5
うち、電力変換装置
4,774
94.5
4,604
96.4
14,285
105.3
14,192
99.3
うち、閉鎖形配電装置
2,321
114.3
2,303
99.2
うち、監視制御装置
2,592
124.3
2,502
96.5
うち、低圧開閉器
4,222
92.9
4,284
101.5
37,047
95.0
37,626
101.6
開閉制御装置
重電機器合計
備考 1:実績見込み・見通し値は、経済産業省 生産動態統計をベースに、JEMA が策定しました。
2:端数四捨五入のため、積上げ値と合計が一致しない場合があります。
図 2 重電機器の年度別国内生産額推移
(1)2015 年度の生産実績見込み
2015 年度の国内生産は、3 兆 7,047 億円、前年度比
95.0%となる見込みです。
や新興国経済の不透明感の影響により減少し、9,200 億
円、前年度比 88.9%となる見込みです。
静止電気機械器具は、7,931 億円、前年度比 96.4%と
発電用原動機は、アジア向け輸出と国内火力案件が高
減少になるものの、変圧器や太陽光発電設備向けパワー
水準であった 2013 年度、2014 年度に比べると平均的な
コンディショナーを主体とした電力変換装置が中心とな
水準に留まり、5,632 億円、前年度比 82.2%となる見込
り、金額的には高い水準を維持する見込みです。再生可
みです。アジアを中心とした新興国経済の減速や、原油
能エネルギー固定価格買取制度における買取価格引き下
価格が低水準で推移していることによるプロジェクト案件
げの影響が懸念されますが、これまでに認可された案件を
の先送りなどの影響によります。
順次生産している状況であり、
水準は維持する見込みです。
回転電気機械は、交流発電機が発電用原動機の減少の
開閉制御装置は、1 兆 4,285 億円、前年度比 105.3%
影響を受け、また交流電動機やサーボモータが中国経済
となる見込みです。そのうち、閉鎖型配電装置が 2020
28 電 機 2016・April
年東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えた大
動している面もあり増加すること、また交流電動機やサー
都市再開発の動きにより、また監視制御装置では電力向
ボモータが、中国経済の停滞感は続くものの、世界経済
けや製造業向けの伸びにより、共に増加する見込みです。
の緩やかな回復による需要増を期待し増加とみているこ
一方、低圧開閉器は、アジアを中心とした新興国経済の
とがその要因です。
静止電気機械器具は、7,848 億円、前年度比 99.0%と
減速の影響を受け、輸出を中心に減少する見込みです。
前年度をやや下回るものの、引き続き高い水準を維持す
る見通しです。再生可能エネルギー固定価格買取制度に
(2)2016 年度の生産見通し
2016 年度の国内生産は、3 兆 7,626 億円、前年度比
おける買取価格引き下げの影響は大きくは現れず、水準
101.6%となる見通しです。
を維持する見通しです。
開閉制御装置は、1 兆 4,192 億円、前年度比 99.3%と
発電用原動機は、国内電力向け案件が予定されており、
生産額は 6,103 億円、前年度比 108.4%と増加になる見
前年度をやや下回るものの、閉鎖型配電装置が東京オリ
通しです。
ンピック・パラリンピック開催を見据えた大都市再開発の
動きにより、また監視制御装置が電力向けや製造業向け
回転電気機械は、9,483 億円、前年度比 103.1%と増
需要の伸びにより、高い水準を維持する見通しです。
加になる見通しです。交流発電機が、発電用原動機に連
[参考]受注形態別の重電機器 2016 年度の生産見通し
2015 年度は、産業用汎用電気機器では中国経済の減速や新興国経済の不透明感の影響を受けて減少する見込みです。2016 年度は、
受注生産品、産業用汎用電気機器ともに国内需要の底堅さに加え、世界経済の緩やかな回復を期待して増加する見通しです。
表 3 重電機器の国内生産 2015 年度実績見込みと 2016 年度見通し(受注形態別)
2015 年度実績見込み
2016 年度見通し
金額(億円)
前年度実績比(%)
金額(億円)
16,684
97.1
16,829
100.9
5,632
82.2
6,103
108.4
発電用原動機以外
11,052
106.9
10,726
97.1
産業用汎用電気機器* 2
13,360
89.5
13,697
102.5
7,004
101.9
7,101
101.4
37,047
95.0
37,626
101.6
受注生産品
*1
発電用原動機
その他の重電機器* 3
重電機器合計
前年度実績見込比(%)
* 1 受注生産品:発電用原動機(蒸気・ガスタービン等)、発電機、大容量変圧器等。電力及び産業用(自動車、鉄鋼等)向けの電気設備。
* 2 産業用汎用電気機器:‌汎用インバータ、サーボモータ、プログラマブルコントローラ等。需要先が多岐にわたる、主に標準仕様で生産する量産
品。流通は代理店経由が多い。
* 3 その他の重電機器:‌電気炉、電気溶接機、分電盤等。機器としては受注生産品または産業用汎用電気機器であるが、データとして分類できない
機器。
備考 1:実績見込み・見通しは、経済産業省 生産動態統計をベースに、受注形態別に JEMA が策定しました。
2:端数四捨五入のため、積上げ値と合計が一致しない場合があります。
図 3 重電機器の年度別国内生産額推移(受注形態別)
[ハイライト]
29
ハイライト
2.2 白物家電機器分野
2.2.1 国内生産の状況
表 4 白物家電機器の国内生産 2015 年度実績見込みと 2016 年度見通し
2015 年度実績見込み
2016 年度見通し
金額(億円)
前年度実績比(%)
金額(億円)
前年度実績見込比(%)
ルームエアコン
5,308
104.7
5,516
103.9
電気冷蔵庫
2,630
108.9
2,947
112.0
電気洗濯機
626
121.9
647
103.2
1,073
101.7
1,099
102.4
891
119.8
880
98.7
換気扇
電気がま*
その他(上記 5 品目以外)
白物家電機器合計
7,189
102.4
7,588
105.3
17,717
105.3
18,677
105.4
*:電気がま:ジャー機能(保温機能)のないものも含む。
備考 1:実績見込み・見通しは、経済産業省 生産動態統計をベースに、JEMA が策定しました。
2:端数四捨五入のため、積上げ値と合計値が一致しない場合があります。
図 4 白物家電機器の年度別国内生産額推移
(1)2015 年度の生産実績見込み
(2)2016 年度の生産見通し
2015 年度の国内生産は、1 兆 7,717 億円、前年度比
2016 年度の国内生産は、1 兆 8,677 億円、前年度比
105.3%と増加に転じる見込みです。
105.4%と 2 年連続で増加の見通しです。
冷夏、暖冬など天候不順があったものの、消費増税後
国内の緩やかな景気回復とともに、消費者の省エネル
の低調傾向を脱し、生産の国内回帰の動きや高付加価値
ギーに対する意識の底堅さに伴う買替え需要が期待され
機種が好調に推移したことで 2013 年度の水準に戻る見
ます。また、下期には消費増税を見越した需要増が想定
込みです。
されることから、国内生産は高い水準となる見通しです。
主要製品別にみると、円安基調が継続したことで一
主要製品別にみると、ルームエアコン 5,516 億円、前
部の機種で国内回帰の動きもみられたルームエアコンが
年 度 比 103.9 %、 電 気 冷 蔵 庫 2,947 億 円、 前 年 度 比
5,308 億円、前年度比 104.7%、電気洗濯機は 626 億円、
112.0%、電気洗濯機 647 億円、前年度比 103.2%と、そ
前年度比 121.9%の見込みです。また、高付加価値機種
れぞれ増加の見通しです。
を中心に好調に推移した電気冷蔵庫は 2,630 億円、前年
度比 108.9%、電気がまは 891 億円、前年度比 119.8%
の見込みです。
30 電 機 2016・April
2.2.2 国内出荷の状況
表 5 白物家電機器の国内出荷 2015 年度実績見込みと 2016 年度見通し
2015 年度実績見込み
2016 年度見通し
金額(億円)
前年度実績比(%)
金額(億円)
前年度実績見込比(%)
ルームエアコン
6,559
101.6
6,822
104.0
電気冷蔵庫
4,171
104.4
4,598
110.2
電気洗濯機
2,855
102.8
2,994
104.9
換気扇
1,146
100.6
1,175
102.5
ジャー炊飯器*
1,287
117.6
1,327
103.1
5,823
100.5
6,023
103.4
21,841
102.8
22,939
105.0
その他(上記 5 品目以外)
白物家電機器合計
*ジャー炊飯器:保温機能(ジャー)がついた電気炊飯器。おかゆ兼用ジャー炊飯器を含む。
備考 1:実績見込み・見通しは、JEMA 統計、日本冷凍空調工業会統計をベースに、JEMA が策定しました。
2:端数四捨五入のため、積上げ値と合計値が一致しない場合があります。
図 5 白物家電機器の年度別国内出荷額推移
(1)2015 年度の国内出荷実績見込み
(2)2016 年度の国内出荷見通し
2015 年度の国内出荷は、2 兆 1,841 億円、前年度比
2016 年度の国内出荷は、2 兆 2,939 億円、前年度比
102.8%と増加に転じる見込みです。
105.0%と 2 年連続で増加の見通しです。
冷夏、暖冬など天候不順があったものの、消費増税後
国内出荷は、緩やかな景気回復とともに、消費者の省
の低調傾向を脱し、高付加価値機種を中心とした買替え
エネ製品・高付加価値製品に対する消費マインドに基づ
需要により、前年度を上回る見込みです。
き、買替え需要を主体に前年度の伸びを上回る見通しで
主要製品別にみると、ルームエアコンは 6,559 億円、
前年度比 101.6%、電気冷蔵庫は 4,171 億円、前年度比
す。
主要製品別にみると、天候は平年並みとおいて、また、
104.4%、電気洗濯機は 2,855 億円、前年度比 102.8%と
下期には消費増税を見越した需要増も想定され、ルーム
増加の見込みです。白物家電全体の国内出荷金額は、過
エアコンは 6,822 億円、前年度比 104.0%、電気冷蔵庫
去 10 年の平均値(2 兆 1,237 億円)を上回る見込みで
が 4,598 億円、前年度比 110.2%、電気洗濯機が 2,994
す。
億円、前年度比 104.9%と増加の見通しです。白物家電
全体の国内出荷金額は、過去の推移をみても高水準とな
る見通しです。
[ハイライト]
31
ハイライト
3.電機産業から国への提言・要望
2015 年度は、2030 年長期エネルギー需給見通し及び
温室効果ガス削減目標の決定、TPP の大筋合意や法人
実効税率の引下げの実現など、わが国及び産業界にとっ
ギー推進(電機業界は、電機・電子低炭素社会
実行計画を推進することで省エネルギー社会の実
現に貢献)
3)トップランナー制度の拡充、全分野への拡大
て重要な政策で大きな進展がみられました。
一方、景気については、雇用環境の改善が続いたもの
b.再生可能エネルギー政策の再構築
の、個人消費には明確な回復がみられず、設備投資につ
1)国民負担の抑制と再生可能エネルギーの最大限の
いても、中国をはじめとする新興国経済の減速の影響か
導入との両立に向けた FIT 制度の抜本的見直し
ら、電機産業の間では慎重な姿勢が広がりました。
・FIT 制度から、市場原理に基づく、かつ低廉、
2016 年度は、緩やかな景気回復が期待される一方、
世界経済の停滞や金融市場の混乱など、景気下振れリス
クの顕在化が懸念されます。
このような中、電機産業の持続的な発展・成長を実現
するために、
「エネルギー・革新戦略と地球温暖化対策の
推進」
、
「国内の景気回復、及び電機市場拡大を促すため
安全、
安定的な電源としての導入制度へのシフト
(コスト効率的導入の実現、未稼働案件への対
応、長期安定的な電源として運用する制度構築、
地熱などリードタイムの長い電源の導入拡大)
2)電力系統制約解消、再生可能エネルギーの導入
拡大に向けた規制改革
の施策」
、
「財政健全化、及び国内で製造を継続するため
3)再生可能エネルギーの効率向上、出力安定化、系
の環境整備」
、そして「グローバル市場の旺盛な需要取込
統運用高度化、コスト低減などの課題に対する研
みのための戦略的施策」が必要であり、そのためには国
究開発推進、認証制度の充実
と産業界が一体となった展開が不可欠です。
このような観点から、わが国電機産業の持続的な発展・
成長を確固とするための効果的かつ実現性を踏まえた政
策を期待し、以下を提言・要望するものです。
c.新たなエネルギーシステム構築
1)電力分野の競争環境におけるエネルギーミックス
実現と温暖化対策の実現の制度整備
2)新たな再エネ・省エネを融合したシステム構築、
[エネルギー革新戦略と地球温暖化対策の推進]
① 2030 年長期エネルギー需給見通し、及びわが国の温
室効果ガス削減 2030 年目標の妥当性の継続的検証と
技術実証、ビジネス創出(再生エネルギー・省エ
ネルギー拡大を推進する IoT を活用した取引シス
テム、バーチャルパワープラントなど)
必要に応じた見直し
・世界に先駆けた高効率・安全安心で高品質・低環境
d.原子力政策
負荷・競争力のあるエネルギーコストを兼ね備えた
1)福島第一原子力発電所の事故で被災された方々
エネルギー社会の構想具体化と実現に向けた施策推
の心の痛みに向き合った福島復興・再生の実行
進(電力コスト目標の更なる低減:国際競争力のあ
2)重要なベースロード電源として明確に位置付けら
るレベルとして少なくとも震災前の水準以下の実現)
・エネルギー・環境機器・システムの飛躍的効率化、
及び IoT 技術を活用した新たなシステムの創出など
イノベーション、技術革新の加速
れた原子力発電に対する国民からの信頼回復
3)福島第一原子力発電所の廃炉、除染、汚染水対
策に対する国が前面に立った解決の推進
4)新規制基準適合性の着実な審査と審査効率性向
上、
ならびに新規制基準に適合すると原子力規制委
② エネルギー革新戦略の立案と推進
a.省エネルギー政策
1)意欲的な省エネルギー目標の実現に向けた産業、
家庭、業務など分野毎の具体的な目標設定と推進
2)業界・サプライチェーン全体としての省エネル
32 電 機 2016・April
員会が判断した原子力発電プラントの再稼働加速
5)競争環境下における原子力事業環境に係る幅広い
検討と適切な制度整備(原子力損害賠償制度の
見直し等)
6)ウラン資源の有効活用、放射性廃棄物の減容・有
害度低減の観点から重要な核燃料サイクルの推進
と、そのための高速増殖炉技術開発の継続
⑦ サイバーセキュリティ対策強化
(重要インフラ、企業を守るための基盤整備)
7)放射性廃棄物処分の現世代における解決
8)産業界の原子力事業における自主的安全性向上、 [景気回復、及び電機市場拡大を実現するための施策]
原子力技術・人材の維持に対する支援
9)エネルギーミックスにおける原子力比率を踏まえ、
⑧ 海外経済の減速及び各国金融政策による世界経済の
混乱の影響を緩和する、適切な景気対策の実施
安全性向上・原子力技術維持のためのリプレー
ス・新増設の検討、個別プラント毎の運転期間
設定
⑨ 省エネ機器普及促進に対する継続的な政策支援
(高効率機器に対する税制優遇策の継続、
補助金付与 等)
10)
世界で増加する原子力を推進する国々に対し、福
島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた原子力
⑩ 科学技術イノベーション創出推進と政府研究開発の拡充
平和利用技術で貢献するための環境整備
⑪ 東京オリンピック・パラリンピックに向けた貢献と目標
e.火力発電の推進
設定、具体化
1)火力発電所の更新・新増設による、高効率かつ環
境負荷を低減できる最新技術の導入促進
⑫ 将来的な人口維持及び地方創生に向けた施策
2)コジェネ、バイオマス・副生物燃焼発電、調整電
源としての小規模 LNG 火力発電の利活用
3)次世代火力発電技術ロードマップに基づく技術開
発、技術実証、商業化の加速
[国内の財政健全化、及び国内で製造を継続するため
の環境整備]
⑬ わが国の財政健全化の着実な推進、2020 年の基礎的
財政収支黒字化の実現
③ エネルギーシステム改革における、高品質かつ低廉な
電力の安定供給を可能とする制度・仕組み作りの慎重
かつ着実な検討
④ 新興国における市場形成、及び環境負荷低減への協
力促進
⑭ デフレ脱却の確実な実現、及び金融緩和政策の出口を
見据えた戦略策定
⑮ 高品質なエネルギーの安定供給とグローバル的に見て
競争力のあるエネルギーコストの実現
1)相手国との信頼醸成によるエネルギー政策・エネ
ルギー管理制度構築、
導入促進、
ルール作りの支援
2)わが国の高効率・環境負荷低減機器・システム導
⑯ 将来的に益々課題となる人手不足を解消するため女
性・高齢者・外国人活用の施策
入促進
⑰ 各国とイコールフッティングとなる税制改正の着実か
[IoT、CPS、Industrie 4.0 の推進]
つ継続的な実施(国際水準並み〔20%台前半〕を踏ま
⑤ あらゆる分野での革新的な産業モデルの創出のための
えた、法人実効税率の更なる引き下げ、研究開発促進
官民一体となった制度・仕組み整備(戦略策定、イノ
税制本則化及び拡充、地方税の見直し〔償却資産に
ベーション・技術開発加速、データ利活用促進に向け
係わる固定資産税廃止・外形標準課税拡大反対 等〕
)
た環境整備・インフラ高度化、産業構造転換のための
制度・ルール高度化、人材育成など)
⑱ 国内外の情報共有、インシデント対応体制の強化、官
民合同の訓練・演習の実施、優れた防御 システムの
⑥ 技術検討、制度検討、ユースケース、マッチングの創
出支援
技術開発、セキュリティ人材の拡充などのサイバーセ
キュリティ対策の強化
[ハイライト]
33
ハイライト
[グローバル市場の旺盛な需要取込みのための戦略的
施策]
⑲ 経済連携の同時的かつ国益を確保する強力な交渉推進
質疑応答
1)TPP の速やかな発効に向けた円滑な国内手続き
[2017 年 4 月に消費増税が実施されない場合の、
2)RCEP、日 EU・EPA、日中韓 FTA の交渉推進、 白物家電機器の 2016 年度見通しについて]
及び包括的で質の高い協定の実現
Q1:白物家電 機 器について、2016 年 度の見通しは、
2017 年 4 月に予定されている消費増税を見越した駆け込
⑳ インフラシステム輸出の強力な推進と面的展開
1)官民一体となった各国との信頼・協力関係、パー
トナーシップ構築
み需要の影響を織り込んでいるということですが、消費
増税が予定通り実施されない場合、前年割れになる可能
性はありますか。
2)各種リスクを踏まえたファイナンス・保険拡充
(円借款の迅速化・制度拡充、官によるリスクへ
A1(津田会長)
:2017 年 4 月の消費増税については、
のより手厚い補完、受注に結びつく F/S の拡充、
前回の増税から 3 年という短いスパンであること、また
日本側実施機関の体制強化)
上げ幅も 2%と小さいことから、大きな駆け込み需要があ
3)わが国の高付加価値技術採用に向けた支援
(F/S・EPC・運用・保守サービスなど日本イニシ
アティブの構築支援、官民一体となった相手国事
るとはみておらず、その後の反動も少ないと考えます。ま
た、もし増税が延期になったとしても、見通しで示した金
額を大きく下回ることはないとみています。
業スキームの早期構築、日本技術採用に向けた入
札評価の整備支援、トップセールスとフォローアッ
プ等)
4)相手国幹部/技術者の人材育成、日本の技術の
広報/発信
5)高効率石炭火力発電の輸出に対する公的金融支
援の戦略的推進
㉑ 官民体制の整備、日本の製品の優位性を正当に評価で
きる規格等の国際標準化の推進、人材育成、認証基盤
整備、アジアを中心とした相手国への採用・普及活動
及び支援事業など、官民が協力した標準化(国際・国
内)の推進
[東芝が白物家電事業を売却した場合の、白物家電
機器の 2016 年度生産見通しについて]
Q2:東芝が白物家電事業を中国企業に売却するという
ニュースがありますが、仮にそうなった場合、本日発表し
[中長期を見据えた人材力の強化]
た見通しは修正されることとなりますか。
㉒ 教育段階における理系、グローバル人材の育成とイノ
ベーションを促す人材の強化
A2(津田会長):東芝は白物家電製品をほとんど海外で
生産していると聞いており、本日発表した 2016 年度の国
内生産の見通しへの影響はほとんど出ないものと考えます。
[2017 年 4 月の消費増税について]
Q3:昨日(3 月 16 日)
、安倍晋三首相らと有識者が世界
経済情勢について意見を交わす「国際金融経済分析会合」
で、コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授が、
34 電 機 2016・April
「世界経済が低迷している現在の状況であれば、日本は
2017 年 4 月の消費税率 10%への引き上げを先送りすべき
り巻く環境の現状をどのようにみているか、また、これか
らどう変わっていくのか、ご見解をお聞かせください。
だ」との認識を示しました。会長ご自身は、2017 年 4 月
の消費増税についてどのようにお考えですか。
A5(津田会長):白物家電事業に限らず、産業は、時代
と共に、その産業が根付く場所として最適な地域へと(生
A3(津田会長):消費増税については、増税の実施時
産や販売)拠点を移していくという特性を持っております。
期における経済状況と、日本の長期的な課題である財政
このことは、産業革命以来、実際に起こっている流れで
再建という 2 つの観点から考える必要があります。今後、
す。現在、白物家電事業では日本から中国あるいは台湾
日本の高齢化が更に進み、社会保障費が増大する中で、
へと移動しつつありますが、これは、家電事業が、中国
日本の長期的な財政再建は必須です。財政再建を進める
市場を含めたグローバル市場の中で産業を(新たに)作
手段として消費増税は有効ですが、消費増税は景気の腰
り上げ、また、日本国内の産業がより高度化していく過程
折れを招くリスクがあるため、消費増税を実施するタイミ
の一つとして、ある意味自然な流れの中にあるのだと思い
ングが争点になります。2017 年 4 月に予定通り消費増税
ます。今後の日本の産業については、IoT、Industrie 4.0
を実施するかどうかを判断することは、今の段階ではまだ
等の観点から、より高度化する方向へと変化するものと考
早いと思います。われわれ電機業界としては、まず経済
えます。
を前に進めることに力を注ぎ、成長戦略を進めるための
施策を官民一体で進める中で、消費増税を実施できる環
境を整えていきたいと考えます。
[ジャー炊飯器の 2016 年度国内出荷見通しについて]
Q6:プレスリリース・6 ページの白物家電国内出荷状況
で、ジャー炊飯器の 2016 年度の見通し値が 2015 年度
[2017 年 4 月に消費増税が実施されない場合および
実施される場合の電機産業全体への影響について]
(の実績見込)に比べると伸び率が大きく減少しています。
Q4:2017 年 4 月に消費増税が実施されない場合、実施
と思いますが、2016 年度の見通しは、中国景気の減速に
される場合の電機産業全体への影響を教えてください。
より、インバウンド需要も減少するという予想を織り込ん
ジャー炊飯器は、インバウンド消費で人気が高い製品か
だのでしょうか。
A4(津田会長)
:電機産業には、企業等の設備投資に向
けたビジネスを行う重電分野と、消費者を顧客とした白
A6(海老塚専務理事):2015 年度のジャー炊飯器の出
物家電分野があります。消費増税が実施された場合につ
荷実績見込みは、他の製品と比べても前年度実績比が少
いて申し上げると、設備投資は、基本的に長期的な視点
し高い水準となっています。インバウンド消費と国内出荷
から計画・実施されるため、重電分野については、前回
との関連を示す正確なデータはなく、どの程度インバウン
の増税時と同様、今回も消費増税による影響を受けるこ
ド消費が寄与したのかを見極めることは難しいのですが、
とはないと考えます。白物家電については、もちろん影響
実際にその影響が少しはあったのではないかとみていま
はあると思いますが、前回から 3 年という短いスパンでの
す。一方、2016 年度の見通しは、2015 年度の出荷額を
増税となることから、前回の増税時と比べると潜在的な需
少し上回る程度であろうと見通しています。
要が小さいと思われ、その影響度合いはかなり小さいも
のになると考えます。
[日本の白物家電を取り巻く現状および今後の見通
しについて]
Q5:東芝が白物家電事業の売却を検討しており、また
[裁判所の判断による原子力発電所の運転停止につ
いて]
Q7:最近、裁判所の判断により、原子力発電所の運転
が止まるような事が起きていますが、このことに関して何
かコメントはありますか。
シャープは白物家電事業も含めて鴻海(ホンハイ)と買
収交渉を進めている状況において、日本の白物家電を取
A7(津田会長):
(3 月 9 日に、大津地方裁判所による高
[ハイライト]
35
ハイライト
浜発電所 3、4 号機の運転差し止めの仮処分が決定され
A8(津田会長):まず、春季労使交渉が平和裏に終了し
ましたが、
)この判決は原子力発電所の安全審査を担う原
たことを嬉しく思っています。景気の先行きが不透明な
子力規制委員会の判断を否定するものであり、少々驚い
中、各企業が自社の事情を勘案したからであろうと考え
ています。私どもは当事者ではないのでコメントしづらい
ます。一方、多くの大手企業が、大幅なベースアップと
ところではありますが、あえて申し上げるとすれば、関西
いう形ではなくとも、一時金支給、非正規雇用の方々に
電力の不服申立てについては、理解できるものと考えます。
対する格差是正、また介護や育児といった面での助成な
ど、様々な形で労働条件を改善させており、全体として
[春季労使交渉について]
プラスの方向に向かっているのではないかと思います。今
Q8:昨日(3 月 16 日)は春季労使交渉の集中回答日で
後、この流れが、中小企業にまで波及していくことを願っ
あり、多くの企業において、ベースアップの回答金額が前
ています。
年割れとなりましたが、この結果について会長のご見解
をお聞かせください。
36 電 機 2016・April
( )内の文言・文章は企画部 広報室にて補足した。
以 上
TO P I C S トピックス
調査事業紹介
「中東白物家電市場調査」
1.発行年月:2016 年 2 月
●
割を占めるが、近年、大型の家電小売専門店等の
2.調査の目的と背景
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)家電調査委
近代小売店も伸長している。
●
員会では、電機メーカーの事業戦略の参考とするため、
世界でも有数の経済規模と購買力を備えた魅力的な市場
サウジアラビアでも伝統的小売店での販売が約 7
UAE ではハイパーマーケット等の近代小売店が主
流である。
●
を持つ中東諸国(サウジアラビア・トルコ・アラブ首長国連
各国ともビルトイン市場を狙った高級家電販売等、
B2B 市場も重要である。
邦〈UAE〉計 3カ国)における白物家電市場を調査した。
3.調査内容
【競合環境】
●
トルコでは、ルームエアコン、冷蔵庫、洗濯機、
電子レンジについては Arcelik 等現地メーカーが
本調査では、文献調査及び現地調査を通じて、中東の
経済動向、事業環境、白物家電市場の現状を整理したう
マーケットシェアの約半分を占める。Arcelik は、
えで、エアコン・冷蔵庫・洗濯機の主要品目を中心に市
高級機種から下位機種までを Arcelik ブランドで、
場動向、消費者需要動向等を調査した。
中級機種から下位機種までを廉価ブランドである
BEKO で押さえている。高級機種ゾーンでは欧州
4.報告書概要
メーカーも多くみられる。中でも、超高級機種は
Miele(独)が、その他高級機種は BSH(独)の
(1)中東諸国のマクロ市場動向
トルコは 7,770 万人と豊富な人口を有し、国内需要
力が強い。日系メーカーのシェアは非常に限られ
も底堅く、白物家電市場は伸長傾向にある。サウジ
ている。
アラビア、UAE は、単独での市場規模はトルコに劣
●
サウジアラビア、UAE では、韓国メーカーの LG、
るものの、1 人あたりの GDP(国内総生産)はトル
Samsung のシェアが高く、特に近年は Samsung
コより高く、潜在的購買力は高いと想定される。
がシェアを伸ばしている。トルコにおいて Miele
が押さえているような超高級機種の市場はほとん
(2)中東諸国の白物家電市場(調査対象 5 品目)の概況
【家電市場規模】
ど存在しない。下位機種は中国メーカーも一定の
シェアを確保している。また UAE では General、
●
トルコは、過去 5 年間で順調に伸長している。
サウジアラビアでは現 地メーカーの Zamil Air
●
サウジアラビア、UAE は、2011 年までは安定的
Conditioner が、エアコンにおいて一定のシェアを
に成長継続しており、2011 年以降も堅調な伸長が
確保している。
みられる。
(3)各国における白物家電の消費性向
【流通構造】
●
シンプルな機能、耐久性、容量、メンテナンス体制
トルコではブランドショップ等の伝統的小売店での
を重視する傾向にあり、複雑な機能、デザイン等は
販売が 7 割と主力であり、量販店を通じた販売は
重視されない。省エネ意識は、トルコは全般的にサ
限定的である。
ウジアラビア、UAE より高いと推測される。
[ハイライト]/[トピックス]
37
TO P IC S トピックス
開することが効果的である。サウジアラビア、UAE
(4)‌中東白物家電市場の将来展望と日系メーカーの方向性
では代理店活用に加え、大型家電小売店への直接営
【地域戦略】
各国を単独の市場と捉えず、欧州、北アフリカ、中
業を行うことが必要である。
央アジアも含めた広域市場を面的に押さえるための
高級機種販売とブランド浸透のために、B2Bルートの
橋 頭 堡と捉え、特に、トルコは上記広域市場に対
中でも、建設・設計事務所向けの営業が有効である。
きょう とう ほ
【商品戦略】
応する拠点、サウジアラビア、UAE は GCC(湾岸
協力理事会) 諸国向けの拠点として有効と考える。
最高級機種は日本国内向けと同レベルの製品を日本
トルコは、2000 年代前半まで GDP が低く、ヨー
から投入、他の機種は、アジアの生産拠点を活用し
ロッパ文化の影響を受け現地および欧州メーカーの
て、中東向けに最小限の仕様変更を行い、フルライ
プレゼンスが高かったため、日本企業が注力してい
ンアップで投入できる体制を整えることが効果的で
なかった市場であるが、人口の多さ、GDP の高さか
ある。
*
ら、日系メーカーが市場参入・伸長する余地が残っ
ていると考える。
* バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、UAE
5.担当委員会
家電調査委員会
6.問い合わせ先
【流通戦略】
小売(B2C)市場では、トルコへの市場参入初期は
家電部 調査統計課
代理店経由販売も視野に入れ、ブランド認知度向上、
TEL:03-3556-5887
ネットワーク構築が進んだ後、ブランドショップを展
[報告書目次]
1.中東諸国の経済動向
1. 1 中東諸国概況
1. 2 トルコ
1. 3 サウジアラビア
1. 4 UAE
2.中東諸国の白物家電市場の概況
2. 1 白物家電市場の成長
2. 2 販売チャネルの動向
2. 3 競合他社の状況
2. 4 白物家電に関する各国の政策
3.白物家電品目ごとの市場動向
3. 1 ルームエアコン
3. 2 冷蔵庫
3. 3 洗濯機
3. 4 掃除機
3. 5 電子レンジ
4.各国における白物家電の消費性向
4. 1 トルコ
4. 2 サウジアラビア
4. 3 UAE
5.中東白物家電市場の将来展望と日本企業の戦略方向性
5. 1 中東白物家電市場の将来展望
5. 2 日本企業の戦略方向性
いずれの調査報告書も、JEMA オンライン
ストアより入手することができます。
www.jema-net.or.jp/cgi-bin/user/
index.cgi
38 電 機 2016・April
調査事業紹介
「白物家電 5 品目の世界需要調査(2008年〜2014年)」
1.発行年月:2016 年 3 月
2.調査の目的と背景
世界規模での生産・販売体制の最適化を進めている家
電メーカーにとって、白物家電の世界の需要、生産、輸
出入等の基礎データの継続的な把握が重要になっている。
そこで、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)家電
②日本、フランスの 2 カ国についてはそれぞれの国の
工業会が出荷・販売統計を作成しているので、これ
を採用した。
4.報告書概要(調査結果の一部)
(1)品目別 2014 年需要コメント
①ルームエアコン
世界需要調査専門委員会では、主要国、地域における公
2014 年のルームエアコンの世界需要は、インド・ブ
式統計(生産・輸出・輸入統計)を収集、分析し、需要
ラジルなど新興国及び米国は増加したものの、経済
実績(台数)をまとめることにより、JEMA の会員企業
危機の影響を受けた欧州諸国をはじめ、世界最大の
をはじめ、白物家電の製造・販売等に関わる関係者の事
需要地である中国などを中心に減少し、全体では前
業戦略立案の基礎となるデータを提供することを目的に
年比 99.0%の 80,482 千台となった。
調査した。
3.調査内容
本調査では、世界各国の公式統計、工業会データ等を
分析し、2008 年~ 2014 年までの白物家電 5 品目につい
② 電気冷蔵庫
2014 年の電気冷蔵庫の世界需要は、欧米は前年並
みとなったが、アジア、日本のわずかな減少により、
全体では前年比 99.6%の 90,212 千台となった。
③ 電気洗濯機
て、主要 62 カ国・地域別に需要実績(台数)を推計調
2014 年の電気洗濯機の世界需要は、アジア新興国
査した。
及び米州では堅調な伸長を持続しているものの、欧
(1)対象品目
ルームエアコン、電気冷蔵庫、電気洗濯機、電気掃
除機、電子レンジの 5 品目とした。
(2)対象国・地域
州(特にロシア)
、日本、中国の減少により、全体で
は前年比 100%の 94,168 千台となった。
④ 電気掃除機
2014 年の電気掃除機の世界需要は、最大市場であ
日本を含む 62 カ国・地域(アジア 15、北米 2、中
る欧州・北米は成熟市場のため、伸びは鈍化してい
南米 8、西欧 17、東欧 8、中東 6、アフリカ 4、オ
るが、普及率の低いアジア新興国でも、経済成長や
セアニア 2)を対象とし、62 カ国・地域の合計を世
生活レベルの向上とともに、市場が徐々に拡大しつ
界計とした。
つあり、全体では前年比 102.5%の 94,004 千台と
(3)対象期間
2008 年~ 2014 年の暦年(1 月~ 12 月)計を対象
とした。
(4)調査方法
なった。
⑤ 電子レンジ
2014 年の電子レンジの世界需要は、中国経済の失
速による影響や、東欧の需要低迷などがあるものの、
① 各国の公式統計(販売統計、生産・輸出・輸入統計)
アジア新興国では中間層の拡大もあり市場は順調に
や、JEMA が入手した情報、調査会社の情報を、収
伸長し、全体では前年比 102.7%の 62,482 千台と
集・分析し、まとめた。
なった。
[トピックス]
39
TO P IC S トピックス
(2)白物家電 5 品目の世界需要推移表
単位:千台、下段は前年比(%)
実 績
2008 年
2009 年
2010 年
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
62,574
59,792
71,468
82,547
75,813
81,305
80,482
103.5
95.6
119.5
115.5
91.8
107.2
99.0
80,943
80,500
84,544
86,733
88,806
90,601
90,212
99.3
99.5
105.0
102.6
102.4
102.0
99.6
86,721
85,261
89,168
93,084
93,902
94,190
94,168
99.8
98.3
104.6
104.4
100.9
100.3
100.0
78,908
77,365
86,079
88,762
88,873
91,669
94,004
103.1
98.0
111.3
103.1
100.1
103.1
102.5
55,649
51,558
56,154
59,013
60,122
60,828
62,482
97.1
92.6
108.9
105.1
101.9
101.2
102.7
ルームエアコン
電気冷蔵庫
電気洗濯機
電気掃除機
電子レンジ
2008 ~ 14 年
平均伸長率(%)
4.3
1.8
1.4
3.0
1.9
(3)地域別の需要台数 2008 年~ 2014 年平均伸長率(%)
世界計
(62 カ国・地域計)
日本・北米・ 西欧計
ルームエアコン
4.3
△ 0.2
6.3
10.7
3.7
電気冷蔵庫
1.8
△ 0.2
3.6
3.0
0.8
電気洗濯機
1.4
△ 0.6
1.7
9.4
0.9
電気掃除機
3.0
1.6
9.1
10.7
3.9
電子レンジ
1.9
1.9
7.2
4.8
1.3
品目名
BRICs 計
※1
ASEAN 7 ヵ国計
※2
その他
※1 ブラジル、ロシア、インド、中国
※2 フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ミャンマー
5.担当委員会:
家電世界需要調査専門委員会
6.問い合わせ先:
家電部 調査統計課 TEL:03-3556-5887
[報告書目次]
Ⅰ.調査の概要
Ⅳ.参考資料
1.調査目的
1.需要台数ランキング(上位 20 カ国・地域)
2.調査内容
2.‌
「日本・北米・西欧計」
「BRICs」
「ASEAN」
「その他計」
3.調査方法
4.ご利用上の注意
Ⅱ.需要実績(推計)
の需要台数
3.輸出台数・輸入台数ランキング
4.2010 ~ 2014 年対ドル換算レート(年平均)
1.品目別・地域別需要グラフ
5.統計出所一覧表
2.地域別・品目別需要グラフ
6.主要国工業会調査の概要
3.品目別・国(地域)別需要実績推計一覧表
7.工業会出荷・販売データ
Ⅲ.生産・輸出・輸入実績データ
1.生産・輸出・輸入推移表
2.輸出仕向け先データ
40 電 機 2016・April
8.輸出入統計における異常値削除に関する説明
中国家電博覧会 2016 視察報告
一般社団法人 日本電機工業会
家電部 企画業務課
田辺 雅忠
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)では、2003
年に中国家用電器協会と友好協力協定を締結しており、
く一緒に展示されていた。
出展企業としては、中国の大手企業はハイアール、美
毎年定期交流会や展示会の開催、後援・視察などを行っ
的、ハイセンス、Skyworth など、日系企業では、パナソ
ている。
ニック、日立、タイガー魔法瓶など、韓国企業は LG、サ
この度、中国家用電器協会が主催する「中国家電博
ムスン、大宇など、欧米企業としては、BSH(ボッシュ
覧会(Appliance & electronics World Expo)2016」が
シーメンス)
、ワールプールなどが出展していた。大手企
3 月 9 日 ㈬ ~ 12 日 ㈯ の 4 日間、上海新国際博覧中心
業の周辺に中小企業の小型ブースが設置されており、総
(Shanghai New International Expo Center)にて開催さ
出展企業は約 600 社、製品は 2 万点以上も展示されてい
れた。
た。主催者は予想来場者数を 15 万人と見込んでいる。
今回はさらに展示面積を拡大し、白物家電の展示会と
また、今回の上海新国際博覧中心では同博覧会だけで
しては世界最大級の規模になった。JEMA は本博覧会に
なく、iFair(上海国際インテリジェンス産業展)などの
協賛していることから、家電政策運営委員会委員長と事
博覧会も同時開催されていた。
務局が同博覧会を視察した。本稿では以下の通り中国家
電業界の状況を紹介する。
1.中国家電博覧会 視察
日 時:2016 年 3 月 9 日 ㈬ ~ 12 日 ㈯
場 所:上海新国際博覧中心
1.1 会場全体の様子
博覧会の会場は、上海新国際博覧中心のうち 7 つの
会場入口
ホール(W1 ~ W5、E1 ~ E2)で構成され、前回より
も 2 ホール増設(前年比約 40%増)された。その 7 つの
ホールの合計面積は約 10 万 m2(ちなみに東京ビッグサ
イトは東西全ホールで約 8 万 m2)である。ホール毎にカ
テゴリーが大まかに設けられており、製品展示が W1:総
合家電と構成部品、W2 ~ W3:総合電機・コンシュー
マ製品、W4:生活家電、W5:環境・健康家電、E1:
厨房家電、と分かれており、E2 のみスマートホームの
サービス(携帯などの電子デバイスや通信機器などを用
いた家電同士のコネクティブ)が展示されていた。しか
し、大手各社のブースでは、そのカテゴリーにこだわり無
会場の様子
[トピックス]
41
TO P IC S トピックス
1.2 オープニングセレモニー
で実際に調理し、試食を行っているコーナーもあった。
華やかな動物の着ぐるみをまとったパフォーマーによる
派手な演出によって口火が切られ、主要出展企業の代表
も含む総勢約 30 名が壇上に立ち、中国家用電器協会の
姜理事長の挨拶が行われた。
パナソニックのブース外観
開会式
パナソニックのキッチンスタジオ
中国家用電器協会 姜理事長の挨拶
1.3 博覧会視察
(1)日系企業の出展状況
日系企業では、パナソニック、日立、タイガー魔法瓶
などが出展しており、冷蔵庫、洗濯機、調理家電、エア
コン、AV 機器等の主要製品が多数展示されていた。製
品毎に、一目でわかるように POP などが用いられ、とこ
ろどころ日本語表記を残すなどの工夫もされていた。ま
日立のブース外観
た、現地(中国)のニーズに合わせて、日本の製品と機
能面で差別化(機能を絞る)されていた。例えば、洗濯
機に関しては、中国では乾燥機能があまり定着していな
いこともあり、洗濯のみの機能を備えたものなどがあった。
パナソニックのブースでは、ハイエンド向けを意識した
全体的に白を基調とした清潔感・高級感あふれる展示と
なっており、海外ブランドで最も大きなブースを展開して
いた。また居住空間を模したモデルルーム内で、イベン
トスタッフが一日の生活を通して家電をどう活用するかと
いう演出が行われているコーナーや、クッキングスタジオ
42 電 機 2016・April
タイガー魔法瓶の炊飯器
(2)中国メーカーの出展状況
ハイアールをはじめ、美的、ハイセンス、Skyworth
(東芝ブランドも展示)
、TCL などの大手企業が出展して
おり、例年通り、奇抜な色の製品展示や派手な演出など
も行われてはいたが、メインとしてはどこのコーナーもス
マートフォンを用いた操作性の訴求などが目立っていた。
そこから操作することが可能になる Wi-Fi 機能を搭載し
た家電は、電子レンジなどの調理家電を始め、空気清浄
機、冷蔵庫、エアコンなどがあった。
特に目立っていたのはハイアールの展示ブースで、ほ
LG のブース外観
ぼ 1 棟(W1)を占めていて最も広い面積を有していた。
その中には製品カテゴリーごとに大小複数のコーナーが
設けられ、6 ブランド(Casarte など、国際的なプレミア
ムブランド)を展開し、大規模な展示が行われていた。
サムスンのブース外観
ハイアールのブース内
ワールプールの三洋ブランド洗濯機
美的のブース外観
(3)その他海外企業の出展動向
BSH(ボッシュシーメンス)などの欧州企業、ワール
プールなどの米国企業、LG、サムスン、大宇などの韓国
企業が出展していた。ワールプールのブースでは、同社
が買収し中国で主に展開している「栄事達」
「三洋」
「帝
度」などの現地向けブランドがメインで展示されていた。
ワールプールの帝度ブランド洗濯機
[トピックス] 43
TO P IC S トピックス
(4)展示傾向
② 洗濯機
中国ではスマートフォンが広く普及していることもあり、
全体的にドラム式洗濯機の展示が多く、各社のコー
全体的に Wi-Fi 機能を搭載した家電が多く展示されてい
ナーにて透明の模型を用い、実際にどのようにドラムが
る印象を受けた。展示されている家電の横にはスマート
回転しているのか一目で分かるようになっていた。
フォンがセットで置かれており、様々な操作ができるよう
また、洗濯槽が上下二つに分かれているものも展示
になっていた。ほぼ全ての製品がスマートフォンと連動で
されていた。種類は二種類あり、ドラム式洗濯槽が二
き、片手で家電を操作できるというコンセプトのもと、展
つあるものと、ドラム式洗濯槽の下に引き出し型の縦
示を行っていた。
型洗濯槽がついているものがあった。洗濯槽の大きい
なお、例年通り PM2.5 の問題もあり、空気清浄機が
多く展示されていた印象も受けた。それぞれ通常の箱型、
方が通常の洗濯用で、小さい方が下着や幼児用の服な
ど、比較的傷つきやすい繊維専用のものだった。
筒型のものなど様々な形のものが展示されていた。
① 冷蔵庫
全体的に、大容量の機種が多く展示されており、昨
年はなかった「扉にタッチパネルのディスプレイがつ
いているもの」もあった。テレビやインターネットなど
を見ることができ、調理レシピなども見ることが可能と
なっていた。
下部の洗濯槽
省 エ ネ 性 能 に つ い ては、中 国 の 省 エ ネラ ベ ル
(CHINA ENERGY LABEL)が冷蔵庫上面に貼られ
ていた。
中国の省エネラベル
ドラム式洗濯機
③ 掃除機
例年通り、キャニスター型の掃除機とロボット掃除
機が展示されていた。ロボット掃除機のカラーバリエー
ションは非常に豊富で、動物などのキャラクターのイ
ラストが入っているものなどが多く展示されていた。
iRobot を始め、中国メーカーからも多く展示されていた。
④ 電子レンジ
タッチパネル式のディスプレイが搭載されている機
種があり、その中にはスマートフォンからレシピを落と
し込み自動調理が出来るなどの機能を兼ね備えたもの
ディスプレイ付き冷蔵庫
44 電 機 2016・April
も展示されていた。その他には外装に透明な模型を用
い、庫内が一目でわかるように展示しているものもあっ
に多く、デザインも様々なものがあり多彩であった。
た。自社製品を使って実際に調理を行っているコーナー
ハイアールのブースでは、冷暖房性能等を体感でき
が各社にあり、来場者にその料理を試食してもらった
るテストルームがあり、室内の温度分布を、サーモグ
り、調理レシピ等の説明を行ったりしていた。
ラフなどを用いて実際に見ることができた。製品の横に
スマートフォンが設置されており、そこから室内の情報
⑤ 調理家電
様々なデザインの炊飯器・ホットプレート・ミキ
を確認することができ、簡単な運転操作ができるよう
になっていた。
サー・トースター・電気ケトル・コーヒーメーカーが展
示されていた。日本のカラーラインアップと似ており、
⑧その他
赤を採用しているメーカーが多い印象を受けた。炊飯
様々なカラーバリエーションのシェーバー、ドライ
器においては高火力を謳う IH 式炊飯器を展示してい
ヤー、電動歯ブラシなどの理美容家電や、扇風機、加
るメーカーもあった。こちらにおいても、スロージュー
湿器、電気ヒーターなどのその他の空調機器などが
サーなどの製品を用い、実際に調理などを行うコーナー
あった。また、ボトル 1 本分の専用ワインセラーなど、
が設置されており、できたてのジュースなどを試飲出
嗜好性を主とする製品も展示されていた。その他には、
来るコーナーがあった。
衣類の除菌・消臭用のタンス型脱臭機や、衣類につい
た部分的なシミなどを除去するための携帯型洗浄機な
⑥空気清浄機
どの製品もあった。
日本で広く普及している箱型の製品をはじめ、筒型
など様々な形の製品が展示されていた。製品の色彩は
白色を基調としたものが多く、清潔感を前面に出して
2.日系企業への訪問
いた。テストルームに製品を設置し、除去性能を紹介
上海と杭州における日系企業の 4 工場を訪問し、視察
しているコーナーもあった。実際の PM2.5 の量を数
を行った。作業をしている方達は非常に若く、どの工場
値化し、ディスプレイに表示されるようになっていた。
も活気にあふれていた。現地の責任者は皆、口をそろえ
PM2.5 の除去性能の訴求は必ずといっていい程どの
て、
「
『現地で高付加価値のものをつくり、現地で高級ブ
ブースにおいてもなされていた。また、空気消毒机と
ランドとして根付かせていく』というコンセプトのもとで、
いう名称で空気清浄機の上位に位置するような製品も
今後も中国で展開していく」と熱く語っていた。現地で
展示されていた。
開発を行い、現地にのみ展開している製品もあるとのこと
で、現地の作業員も自社への思いを熱く抱いてくれるよう
⑦エアコン
高さが 2 メートル近くもある縦型のエアコンが非常
になり、会社と作業員がお互いに良好な関係を築いてい
けるのだと感じた。
[トピックス]
45
TO P IC S トピックス
第 13 回 アジア大電力試験所会議
仁川会議 出席報告
日本短絡試験委員会 委員長
松村 年郎
◇1
日本短絡試験委員会 幹事
中本 哲哉
1.概 要
◇2
3.目 的
開催会議
‌Asian Meeting of High Power Laboratories
AMHPL では、STL 活動として実施しているプロジェ
開催期間
2016 年 1 月 21 日 ㈭ ~ 22 日 ㈮
クトの調整を図るとともに、最新技術の情報交換を行うこ
開催地
仁川(韓国)
とによって、電力需要が伸びているアジア地域において、
参加者
4カ国 30 名
STL メンバ間の連係を図り、かつ、日本がリーダシップ
を発揮することによって、日本のプレゼンスを更に向上さ
2.背 景
現在、世界レベルでの電力需要は年々増加しており、
電力系統は、高電圧化、広域化、多様化している。それ
せる。
4.会議概要
に伴い、大電流試験に対するニーズも増加しており、各
AMHPL は、JSTC が主催し、参加国が持ち回りでホ
国の大電流試験関係者は、試験設備の増強や多様化する
ストを務めている。今回は KERI(韓国電気研究所)の
電力機器に対する試験技術の確立を急いでいる。
アレンジによって仁川で開催された。出席者は、韓国か
大電流試験に関しては、国際的な組織として国際短絡
試験協会(STL:Short-circuit Testing Liaison)が設立
され、大電流試験における共通の基準作成、適合性評
ら 14 名・中国から 7 名、インドから 1 名、日本から 8 名
の計 30 名だった(図 1)
。
日本からの出席者は、以下のとおりである(敬称略)
。
価制度の確立を目指して活動している。日本においては、
STL に対応する組織として、一般社団法人 日本電機工
松村年郎 (名古屋大学、日本短絡試験委員会:委員長)
業会(JEMA)に日本短絡試験委員会(JSTC:Japan
中本哲哉 (東芝、日本短絡試験委員会:幹事)
Short-circuit Testing Committee)を設置し、国内にお
菊池邦夫 (三菱電機、日本短絡試験委員会:幹事)
ける試験機関相互の規格解釈によって、試験の統一化、
腰塚 正 (東京電機大学、日本短絡試験技術委員会:
実施上の技術的諸問題の検討調整、試験技術向上のため
の情報交換などを進めている。
JSTC は、2003 年に日本、韓国、中国、インドの関連
委員長)
合田 豊 (電力中央研究所、日本短絡試験技術委員会:
幹事)
試験研究所によるアジア大電力試験所会議(AMHPL:
池田久利 (東京大学、日本短絡試験委員会:委員)
Asian Meeting of High Power Laboratories)の設立を
里 周二 (宇都宮大学)
提案し、毎年 1 回、定期的に会合を設け、アジアの試験
井上博史 (日本電機工業会、日本短絡試験委員会:事
所間の連携強化・技術交流に努めている。昨年の日本で
の開催に引き続き、今回は韓国で開催した。
◇ 1 名古屋大学 大学院 工学研究科 電子情報システム専攻 電気工学分野
◇ 2 株式会社 東芝 電力システム社 電力・社会システム技術開発センター
46 電 機 2016・April
務局)
5.審議内容
5.1 大電流計測器による比較試験
6.おわりに
AMHPL は今回で 13 回を迎え、参加者間の関係もよ
STL における主要な活動の一つに、大電流計測器によ
り密接になっている。STL のプロジェクトである大電流
る比較試験が挙げられる。国際的な基準としている大電
計測器による比較試験を JSTC 主導で滞りなく進めるこ
流計測器(基準シャント)を複数の大電力試験所に巡回
とができているのも、STL の場だけでなく、AMHPL の
し、測定結果を比較検討することによって測定の不確か
開催によって各国と密接な関係を築いてきたことによるも
さを評価し、その結果、計測のトレーサビリティを確立す
のである。また、各国からの最新技術紹介に加え、開催
ることを目的としている。
国の施設視察は、各国の取組状況を把握するうえでも重
STL では、欧州・アフリカ地域と、北米・アジア地域
要な機会である。今回は KERI のご協力により、高電圧
とでそれぞれ基準シャントを用いた比較試験を行ってい
大電力試験所(Uiwang 支所、Ansan 支所)の視察が行
る。JSTC が運営している北米・アジア地域については、
われた(図 2)
。
当初、予定していた 16 試験所の試験が完了したが、新
今後も AMHPL を主導し、アジア地域での大電力試
たに 5 試験所から比較試験への参加が表明されている。
験においてリーダシップを発揮するために、JSTC として
これら 5 試験所の試験の実施に向けて、事前の調整に時
もますます精力的に取り組んでいく必要がある。関係各
間がかかっていたが、このうちの 2 試験所が今回の会議
所のご指導・ご支援を賜れば幸いである。
に参加していたため、この 2 試験所については、円滑に
試験を実施できることとなった。
また、前回会議において、JSTC で検討することになっ
ていた基準シャントの推奨抵抗測定方法を提案し、了承
された。
5.2 関連技術情報交換
AMHPL では、大電流計測器比較試験のほかに、STL
での検討事項の事前審議、関連する規格類の標準化動向、
関連する試験についての技術情報交換など、国際学会と
同等の活動も行っている。今回発表があった主な内容を
図 1 参加者による集合写真
次に示す。
(1)IEC/ACTAD の活動紹介(日本)
(2)新たな内部アーク試験方法の紹介(日本)
(3)電流計測における不確かさ、及び TRV 測定用試験
発生器の開発(日本)
(4)短絡試験用変圧器における周波数応答解析(日本)
(5)新たな TRV アナライザによる固有 TRV の性能解析
(韓国)
(6)新設した投入電流制御設備の紹介(韓国)
(7)遮断器・変圧器などの IEC 規格の解釈についての議
論(中国・インド)
図 2 KERI 試験所 Uiwang 支所の視察
[トピックス]
47
TO P IC S トピックス
アジア電機工業会連盟 (FAEMA)
バンガロール フォーラム/年次総会出席報告
一般社団法人 日本電機工業会
企画部 国際グループ 主任
中村 大介
1.はじめに
2.FAEMA フォーラム/年次総会
第 11 回 FAEMA(Federation of Asian Electrical
Manufacturers’ Associations:アジア電機工業会連盟)
2.1 概要
テ ー マ は、
「HVDC( 高 圧 直 流 )/LVDC( 低 圧 直
フォーラム並びに FAEMA 年次総会が、インドの電機電子
流)and Market Access」であり、各地域の市場動向に
工業会である IEEMA が幹事となり、バンガロールにて
ついて情報交換を行った。CEEIA、JEMA、KOEMA、
開催された。
IEEMA の順でプレゼンテーションを行った。TEEMA は
FAEMA は、2005 年 11 月に豪・中・印・日・韓・台の
資料のみ配布された。
重電系 6 工業会により設立され、一般社団法人 日本電機
工業会(JEMA)が初代幹事を務めた。毎回各工業会が持
2.2 IEEMA 役員挨拶・IEEMA 概要紹介
ち回りで幹事となり、各国の主要都市で開催されている。
最初に、幹事国であるインド IEEMA の副会長 Indra
なお、各工業会から講演形式の情報交換を行うフォー
Parem Menon 氏並びに、事務局長 Sunil Misra 氏より歓
ラムについては、2008 年に上海で開催されて以降、今回
迎の挨拶があった。次に Anil Nagrani 氏より IEEMA の
で 9 回目を迎える。
概要紹介があった。
IEEMA は 1948 年に設立、現在 950 の会員企業を有
FAEMA バンガロール フォーラム/年次総会
し、国内 13 カ所に事務所を構えているとのことである。
日 時:2016 年 2 月 16 日 ㈫ 11:00 ~ 16:00
インドの電力事情として電力設備容量は、ここ数年で
場 所:BIEC(バンガロール国際展示センター)会議室
267,637MW から 318,414MW に増加、電源構成は、火
出席者:‌FAEMA メン バ ー 6 工 業 会 のうち、 今 回 は、
力 69%、水力 17%、原子力 2%、再生可能エネルギー
AIG(オーストラリア)は欠席であり、TEEMA
(台湾)は、冒頭部分のみ参加となった。
主な出席者(*冒頭のみ出席)
工業会名(国・地域)
IEEMA
(インド)
氏 名
Indra Parem Menon * Vice President
Sunil Misra *
Director General
Anil Nagrani
Deputy Director General
Guo Zhenyan
CEEIA
(中国)
※ 敬称略・順不同
所属・役職等
Vice Chairman
Bai Wenbo
Secretary General
Zhang Shuang
Assistant Engineer
Jiang Wei
Assistant Engineer
KOEMA
(韓国)
Joonhyun Nam
TEEMA(台湾)
Safon Liu *
Project Manager
海老塚 清
専務理事
大黒 靖之
重電部 重電企画業務課 兼
スマートグリッド統括室 主任
中村 大介
企画部 国際グループ 主任
福島 哲美
企画部 国際グループ 担当
JEMA
(日本)
Byungil Park
48 電 機 2016・April
1.2%等とのことであった。
海外投資の呼び込み促進として揚げられた政策 “Make
in India” のもとに活動しており、インド政府との密なる
連携がうかがえる。2,500 億米国ドルの海外投資を 5 年
先に呼び込み、世界 3 位の製造産業国を目指すとのこと
である。
Deputy Chairman
Director
挨拶する IEEMA・Misra 事務局長
2.3 FAEMA メンバープレゼンテーション
各工業会のプレゼンテーションの要旨を次に記載する。
② 東日本大震災によって、東日本地域の発電設備は大き
な影響を受け、この結果、東日本地域(50Hz 地域)
で電力の供給不足が発生し、市民生活は大きな影響
CEEIA『Current Situation and Development
を受けた。日本には 50Hz と 60Hz の地域があるが、
Trend of HVDC Transmission in China』
復興の過程においては、十分な容量の周波数変換設
(中国における HVDC の現況と開発状況)
備や直流送電設備があれば、一方の側で発電容量が
不足しても、電力の安定供給はより確実に行えるので
① CEEIA からは、中国国内での直流送電の歴史や現在
はないかという指摘があった。
の取組みの紹介があった。この技術は 1950 年代から
③ 上 記の 指 摘に 基 づき、本 州 ― 北 海 道 間に第 二の
採用しており、数々の実証実験等のプロジェクトを実
HVDC 送電ルートや、50Hz と 60Hz の境界には直近
施してきている。
の AC500kV 変電所間を接続する HVDC 送電ルート
② 中国の国策である第 12 次 5 カ年計画(2011 ~ 2015
が計画され、近々、建設されようとしている。日本の
年)では、32 の直流送電プロジェクトを建設し、次の
HVDC 送電技術には永年に渡る順調な運転実績があ
第 13 次計画(2016 ~ 2020 年)では、14 件のプロ
り、また、±800kV や ±1000kV の電圧システムにも
ジェクトを完成させ、運用する予定である。
対応できるものである。
③ 標準化にも積極的に取組んでおり、直流送電の規格
④ 日本の質の高いインフラ関連技術がインドを始めとし
である IEC/TC115 をはじめ、UHV 直流送電に使わ
たアジアでの電力安定供給、ひいては、当該国・地域
れる設備の標準化を検討している。現在は、40 名の
の皆さんの生活の質の向上に向けてお手伝いできるも
エキスパートが直流送配電の国際標準化会議に参加
のと確信している。
し、そのうち 5 名が議長をしている。今後もますます、
世界における中国の直流送電でのポジションが重要と
なってくる。
④ 中国国内では、国家規格の管理機関である Standardization Administration of China(中国国家標準化管
理委員会、SAC)にて、SAC/TC333 等、数々の委
員会に積極的に参加している。
発表する JEMA・大黒
KOEMA『The Present and Future of Korea’s
HVDC」
(韓国の HVDC の現況と未来)
① KOEMA からは、国内の HVDC 計画や国際連係に
ついて紹介があった。韓国は HVDC の分野ではビギ
発表する CEEIA・Guo 氏
ナーであるとのこと。
② 韓国では、京畿道を含むソウル市の電力需要が 40%
JEMA『Electricity Market and HVDC Application
に上る一方、発電所は南部や湾岸地域に集中してお
in Japan』
(日本における電力市場と HVDC について)
り、ソウルにどのように安定供給するかが課題となっ
ている。その解決に向けて計画されている国内 6 件
① JEMA からは、大黒より日本の HVDC の状況に関し
次の通りプレゼンテーションを行った。
の HVDC プロジェクトの紹介があった。そのうちの 1
つは、風力発電所を沖合 80km 先に建設し、HVDC
[トピックス]
49
TO P IC S トピックス
(2GW)でつなぐ計画であった。韓国では送電網建設
に反対する住民が多く、訴訟があるとのことである。
③ これらのベースとなる電力安定供給等を盛込んだ第 7
次電力需給基本計画
(2015~2029 年)
の紹介もあった。
④ 将来的な計画として、北東アジアを中心に隣国と連係
を進める国際連係プロジェクト「スーパーグリッド構
想」の紹介があり、ロシア、モンゴル、中国、韓国、
日本をつなぐ送電プロジェクトの紹介があった。
発表する IEEMA・Nagrani 氏
3.年次総会
FAEMA フォーラム終了後、年次総会が開催され、次
回の幹事工業会を検討した結果、TEEMA にお願いする
こととなった。
なお、年次総会は TEEMA が欠席したため、後日同
発表する KOEMA・朴氏
工業会に意向を確認し、次回は、TEEMA が幹事となり
台北で開催される見込みとなった。次回のテーマは、
「電
IEEMA『HVDC and its applications from Indian
Perspective』
(インドの HVDC とその応用)
気エネルギー貯蔵システムの取組み動向」である。また、
「製造業の未来のトレンド」という意見も挙げられたが、
こちらは、任意で取組みたい工業会が講演を行うことと
① IEEMA からは、電力事情と HDVC の技術等の紹介
があった。
② HVDC 技術については、旧来の技術(HVDC Classic)と、更に設備がコンパクト化され、よりスムーズな
なった。更に、これまで同様新メンバー加盟に関する提
案意見が出され検討した結果、名前の挙がった工業会の
うち、次回はマレーシアの電機工業会へ声をかけることと
なった。
電力制御を可能とする新技術(HVDC Light)の比較
等の紹介があった。
③ インドは、安定した電力系統運用のために長距離送
電に有利な高電圧の直流送電系統が必要である。現
在、500kV 級 の HVDC が 10 件 あ り、800kV 級 の
HVDC が 2 件、3 ~ 5 件の 800kV 級 HDVC が 2020
年までに計画されているとのことである。
④ 環境的には従来の AC 送電線よりも、よりコンパクト
な DC 送電線が望ましく、究極的には HVDC の地下
送電が理想だが、距離が長いと高コスト化になるため、
フォーラム集合写真
投資と回収できる費用の兼ね合いとの説明があった。
⑤ 全般的に国際大電力システム会議(CIGRE)で使わ
れた資料を用いてプレゼンが行われていたようである。
4.ELECRAMA2016
FAEMA フォーラム終 了 後 には、同 時 期 に 開 催 の
IEEMA が主催する展示会 ELECRAMA2016(会期 2 月
50 電 機 2016・April
13 日~ 17 日)のガイドツアーも行われた。ELECRAMA
この展示会と同時開催された世界電力会議(WUS:
は、世界最大級の電機産業展示会であり、展示品の対象
World Utilities Summit)には 100 名を超える電力関係
範囲は、発電設備、送配電、電力保護関連機器、制御機
会社の CEO が参加した模様であり、IEEMA からは、今
器、鉄道用電機品、メディカル設備機器、通信設備等多
後は、世界経済会議と同様の規模を目指したいとの説明
岐に渡っている。IEEMA の説明では、3 日間で 75,000
があった。
人もの来場者が訪れたとの情報があり、期間中に 10 万
人を超えたと思われる。
前回のムンバイ開催よりも大規模な展示であり、イン
ドにおける海外製造業の企業誘致を促進する “Make in
India” 政策が進んでいる証左かと思われる。
5.最後に
FAEMA では、年 1 回 6カ国・地域の重電系工業会が
集まり、重電・電力を中心とした電機産業の情報交換を
出展企業は、約 1,000 社(展示スペース 77,000m )
2
行っている。各工業会とも情報提供する内容やレベルに
であった。展示メーカーリストで確認する限り、全ての
ばらつきがあるものの、この会議にとどまらず、適宜、必
ブースを回れなかったが、日系の大手電機メーカーも 7
要に応じて JEMA では、メールによる各国の動向の問合
社ほど出展していた。そのうち 1 社の展示担当者にお話
せ対応や情報交換を行っている。中身が充実したフォー
を伺う機会があった。同社によると、2015 年 10 月にバ
ラムにしていくには様々な課題があるものの、1 つの情報
ンガロールに工場を設置し、2016 年 1 月から生産を開始
ルートとして考えていきたい。この FAEMA 窓口を通じ
したとのことで、今回の工場竣工を機会にバンガロール
たコンタクト先を維持するためにも、今後ともこの関係は
での電機品展示会開催の話をいただき、出展したとのこ
維持していきたい。また、FAEMA の活動活性化と情報
と。また、インド国内でのインフラ整備・改善をもう少し
交換充実のために、メンバー工業会の拡大は 1 つの流れ
進めて欲しいと感じているといったコメントもあった。
と受け止め、今後、更に情報交換レベルやコミュニケー
海外メーカーでは、重電機械大手の Larsen & Toubro
をはじめとする多くのインド企業や、Siemens、ABB、
ション力を上げ、工業会相互の交流深化にもつなげてい
きたい。
Schneider Electric といった欧州企業が展示していた。
ELECRAMA-2016 展示
Larsen & Toubro 社 展示スペース
[トピックス]
51
TO P IC S トピックス
ドイツの経験を踏まえた
日本のエネルギー政策のあり方について
―ドイツ在住の作家 川口マーン惠美氏講演会より―
一般社団法人 日本電機工業会
原子力広報分科会
1.はじめに
2.ドイツが脱原発を決めるまで
2011 年に発生した東京電力福島第一原子力発電所の
ドイツの反原発運動は 1970 年代から全国展開されて
事故をきっかけに、ドイツはエネルギー政策を転換し、ド
おり、東京電力福島第一原子力発電所事故以降のもので
イツ国内にある 17 基の原子力発電所のうち、営業運転開
はない。1986 年にチェルノブイリ原子力発電所事故が
始からほぼ 40 年以上となる老朽化した 7 基と、点検のた
起きた際、牛の乳から基準値を超えた放射性物質が検出
め止まっていた 1 基の計 8 基を即時停止し、残りの 9 基
され、それまでの反原発の市民運動にさらに弾みがつい
についても 2022 年までに停止することを決めた。
た。しかし、ドイツのエネルギー政策は脱原発に向かっ
それから 5 年が経過し、脱原発をはじめ、エネルギー
て一直線に進んだわけではない。2000 年にドイツ社民党
政策に関して他国に先駆けて様々な取組みを進めてきた
(SPD)と緑の党の連立政権が「ある一定量の発電を終
ドイツの実情やこれまでの取組みの矛盾点等について、
えた原子力発電所より順次停止すること」
「原子力発電所
ドイツ在住の音楽家で作家、拓殖大学日本文化研究所客
の新設は認めない」という脱原発合意を決めたが、2009
員教授である川口マーン惠美氏より、
「ドイツの経験を踏
年にキリスト教民主同盟(CDU)
/キリスト教社会同盟
まえた日本のエネルギー政策のあり方について」のテーマ
(CSU)
/自民党(FDP)の保守中道政権が復活すると、
でご講演いただいた。
翌年に稼動年数を平均 12 年間延長することを決めた。
この講演会は、
2016 年 2 月 9 日 ㈫ に一般社団法人 日
ただし、国民の原子力発電への反発は大きく、政権を揺
本電機工業会(JEMA)主催で開催され、約 50 名が聴
るがすほどに高まっていた。その時、偶然にも東京電力
講した。
福島第一原子力発電所の事故が発生し、それ以降さらに
以下に講演内容を紹介する。
反原発運動に拍車がかかった。
ドイツ国内での国会議員選挙における政党間の駆け引
きのタイミングとも重なり、メルケル首相はエネルギー政
策を転換し、脱原発を決断した。
3.今、ドイツで起こっていること
ドイツでは、
「脱原発」
「再生可能エネルギー推進」
「節
電」を 3 本柱としたエネルギー転換政策を進めることと
川口マーン惠美氏
した。このエネルギー転換の結果、ドイツにおける 2014
年の電源構成は、原子力が 15.9%、石炭・褐炭・天然ガ
ス等の火力発電が 53.2%、再生可能エネルギーが 25.8%
となった(図 1)
。しかし、この「再生可能エネルギー推
52 電 機 2016・April
進」政策に伴い、経済性、環境問題、電力ネットワーク整備
上の風力発電については、景観を重視する国民性のため
の遅れ等さまざまな問題点が顕在化してきており、最近は
海岸から遠く離れた沖合に設置することが要求されてお
エネルギー転換の実現性に疑問を持つ人も出てきている。
り、工事の難度の高さに加えて、送電用の海底ケーブル
が長くなるなどの支障があり、ドイツの洋上風力発電の投
資はうまく進んでいないのが実情である。
3.1 再生可能エネルギーの低効率問題
(1)ドイツでは非効率な太陽光発電
太陽光発電は 2000 年から 2014 年の 15 年間で、発電
施設の容量は 400 倍になっている。その背景には、再生
3.2 再生可能エネルギー増とともに高騰していく
電気料金の問題
可能エネルギー発電の固定価格買取制度(FIT)と、太
産業用の電気料金は国際競争力維持のため安く抑えら
陽光パネル価格の低下がある。ただし、晴天の日が少な
れ、産業保護の政策がとられているものの、FIT の影響
いドイツでは、太陽光発電は非効率的な発電方式と言え
により、家庭用の電気料金は高くなっている。家庭用の
る。昼間しか発電できない特性上、発電量を安定化する
電気料金は、EU 圏ではデンマークに次いで 2 番目に高
ためには蓄電設備や他の電源設備が必要になるが、現在
く、原子力の割合が 70%にも及ぶフランスに比較すると
はまだ採算が十分とは言えない状況である。
2 倍である。
(2)消費地とうまくつなげられない風力発電
風力発電は 2000 年から 2014 年の 15 年間で発電施設
3.3 再生可能エネルギー増に伴う環境問題
−石炭火力発電への依存
の容量は 2.8 倍、発電量は 5.4 倍に増加している。2014
原子力発電所を減らす一方で、再生可能エネルギー
年時点で、総発電量の 8.4%を供給できる規模となり、買
を増やすことは電力供給の不安定化をもたらすものと懸
取価格は 58.9 億ユーロになっている。風力発電は太陽光
念される。必要な電力供給を維持するために、ドイツで
発電に比べ効率は良いが、風力発電設備の多くはドイツ
は現在、バックアップの電源は火力が主力になっており、
北部に立地しており、工業が盛んな遠く離れた南部へ送
新規の火力発電所建設も進められている。火力発電と
電するためには送電線の整備が必要である。しかし、送
いっても天然ガスは高価なため、主に石炭火力発電であ
電線の建設は住民の反対運動により大幅に遅れており、
る。中でも褐炭はドイツでの埋蔵量が多く、露天掘りの
風力発電を必要な場所での消費に活用できていない。洋
鉱山から安価に入手可能である。しかし、褐炭は水分含
天然ガス
その他
9.6%
5.2%
585億kWh
317億kWh
石炭
18.0%
1099億kWh
水力
3.4% 208億kWh
褐炭
太陽光
5.8%
352億kWh
石炭
原子力
天然ガス
再生可能
エネルギー
原子力
25.8%
15.9%
1574億kWh
969億kWh
バイオマス
8.0%
489億kWh
褐炭
25.6%
1560億kWh
風力
8.4%
512億kWh
その他
水力
洋上風力
0.2% 12億kWh
太陽光
バイオマス
洋上風力
風力
出典:BDEW(ドイツ連邦エネルギー・水道事業連合会)2014 年 12 月時点資料を加工
図 1 ドイツにおける 2014 年の電源構成
[トピックス]
53
TO P IC S トピックス
有量が多いため、発熱量当たりの CO 2 発生量が良質な
教育では反原発が主流で、世論も同様である。また、報
石炭よりも多くなる。その結果、再生可能エネルギーの
道機関も脱原発を支持している。
拡大に伴って褐炭の利用が増え、結果的に CO 2 の発生
量が増えるという環境問題が発生している。天然ガス火
力発電の方が CO 2 の発生量は少ないが、価格の高い天
5.おわりに
然ガスを輸入する必要があるため燃料費が高く採算性で
川口氏は、
「ドイツは持ち前の技術力、経済力、そして
劣ることから、利用の優先順位は石炭火力発電が優先と
強い信念で、脱原発の道を進んでいるので、その達成は
なっている。
可能かもしれない。しかし、それが日本に当てはまるわけ
ではない。なぜなら、ドイツと日本には以下の二つの決定
3.4 送電ネットワーク整備の問題
脱原発の推進により原子力発電所の運転終了時期が迫
る中、原子力発電を再生可能エネルギーで置き換えるた
めに、再生可能エネルギーで作られた電気を消費地に運
ぶための送電施設を新たに整備する必要が出てきた。し
かし、環境破壊、電磁波による健康被害などで住民によ
的な違いがある。だからこそ、日本は日本の道を進んで
欲しい」と締めくくった。
・ドイツは再生可能エネルギー電力が不安定でも周辺国
と融通できる。
・ドイツには自前の格安エネルギーである褐炭が豊富に
ある。
る反対運動が巻き起こっており、送電設備の建設が滞っ
ている。送電のための大動脈を 3 本通す計画はあるが、
再生可能エネルギーを少しでも多く活用することや、
住民による森林伐採等の反対により一向に進んでいない。
節電を推進していくことは重要である。地域や地方レベ
送電線を地下に埋設するという案もあるが費用が膨大に
ルでは、電力供給に再生エネルギーを多用することが適
なるという問題がある。
したケースも考えられる。しかしながら、日本のエネル
ギー政策において「原子力発電に頼らないドイツ」が本
4.ドイツからみた日本
東京電力福島第一原子力発電所事故後、日本で原子力
当に参考にできるのか、ドイツの脱原子力は 2022 年まで
に本当に実現できるのか、冷静な見守りと判断が必要で
あるとの示唆を頂いた。
発電所が再稼動したことに対して、ドイツでは「日本は
今後は、我々が置かれた状況を理解し、その中で進む
事故から何も学んでいない」と思っている人達が多くい
べき方向を国情等を踏まえて多角的、かつ冷静に判断す
る。また、
「甲状腺ガンの子供が急増」
「危険な地域に住
る姿勢を持たなければならない。
民を戻す」といった報道が見られる。ドイツでは、学校
54 電 機 2016・April
福岡支部第 86 回企業研究会講演
「日本における核燃料サイクルの現状について」
報告
一般社団法人 日本電機工業会
原子力部
1.はじめに
2.核燃料サイクル事業の概要
2016 年 2 月 25 日 ㈭
核燃料サイクルとは、原子力発電所で使用するウラン
に一般社団法人 日本電
の採掘から、濃縮、燃料加工、発電所での使用、使用済
機工業会(JEMA)福岡
燃料の再処理、MOX 燃料加工、発電所での再使用、そ
支部で開催された第 86
して最終的に地層処分に至るまでの一連の流れのことを
回企業研究会において、
いう(図 1)
。核燃料サイクルには、使用済燃料を軽水
原子燃料サイクル専門委
員会の深 澤哲生委 員長
講演する深澤委員長
炉(LWR)で再利用する LWR サイクルと、高速増殖炉
(FBR)
で再利用する FBR サイクルとがある。FBR サイク
(日立 GE ニュークリア・エナジー株式会社)が「日本に
ルでは、消費した以上の核燃料を生み出すことが出来る
おける核燃料サイクルの現状について」と題して講演を
ため、エネルギー自給率が僅か 6%の資源小国であるわ
行った。本稿では、その講演内容の一部を紹介する。
が国にとって、FBR サイクルの実現は非常に重要である。
出典:原子力・エネルギー図面集 2015(電気事業連合会)
図 1 原子燃料サイクル(FBR を含む)
[トピックス]
55
TO P IC S トピックス
管と呼ばれる長さ約 4m ほどのジルコニウム合金製のさ
2.1 日本の特異な地位
わが国は、核兵器不拡散条約体制下の非核兵器国とし
やに密封されて燃料棒となる。燃料棒は数十本から数百
ては唯一、再処理と濃縮を含めた核燃料サイクル事業全
本が束ねられ、燃料集合体として組み立てられた上で原
体を行うことが許された国家である。この特異な地位は、
子炉に装荷される(図 2)
。そしてその後、ウラン燃料は
わが国のエネルギー安定供給実現に向けた先人の努力の
約 3 年間発電に利用されることとなる。
結果として、米国との度重なる困難な交渉の末、手に入
れることができたものであり、今後放棄することがあれば二
度と回復することの出来ない、極めて貴重な財産である。
3.3 使用済燃料貯蔵
原子力発電所で使用された使用済燃料は、再処理され
るまでの間、各原子力発電所内や青森県六ヶ所村の再処
3.核燃料サイクルのプロセス
理工場内で貯蔵されている。ただし、再処理工場はまだ
稼働しておらず、各発電所内の貯蔵容量も逼迫してきて
いることから、発電所外で使用済燃料貯蔵を目的とする
3.1 ウラン濃縮
ウラン鉱山から採掘された天然ウランには、核分裂し
中間貯蔵施設の建設が進められている(図 3)
。
やすいウラン 235 が約 0.7%しか含まれていない。わが国
で使われている軽水炉の燃料には、ウラン 235 の濃度を
3 ~ 5%に高めた濃縮ウランが必要である。そのため、天
然ウラン中に含まれるウラン 235 とウラン 238 との重量
差を利用した遠心分離法と呼ばれる技術により、ウラン
濃縮が行われている。
3.2 燃料加工
濃縮されたウラン燃料は、最終的に直径約 10mm、高
さ 10mm ほどの円柱形のペレットに焼き固められ、被覆
出典:原子力・エネルギー図面集 2015(電気事業連合会)
図 3 使用済燃料の中間貯蔵施設
(リサイクル燃料備蓄センターイメージ図)
出典:原子力・エネルギー図面集 2015(電気事業連合会)
図 2 燃料集合体の構造と制御棒
56 電 機 2016・April
1/2 以下に減らすことができるという利点もある。
3.4 使用済燃料再処理・MOX 燃料加工
再処理とは、使用済燃料から再利用できるウラン、プ
また、原子力の平和利用に徹している日本では、利用
ルトニウムを回収し、その他の放射性物質を含む高レベ
目的のない余剰プルトニウムを持たないことを国際的に表
ル放射性廃液をガラス固化する工程をいう(図 4)
。国内
明している。それゆえ、原子力発電によって生成された
では、日本原燃株式会社が日本初の商業用再処理工場の
プルトニウムを再び核燃料として利用するための再処理
建設を青森県六ヶ所村で進めており、操業開始に向け、
は、プルトニウムの利用目的を明確にするためにも非常に
原子力規制委員会による新規制基準適合性審査を受けて
重要な意義を有している。
なお、現在の再処理事業は、各原子力発電事業者が資
いる。
他国には、使用済燃料の再処理を行わず直接処分す
金を積み立てることにより運営されている。しかし、今後、
る方針の国もあるが、エネルギー資源の乏しい日本では、
電力システム改革の進展等により事業環境が変化して行
再処理をすれば貴重なウラン資源を効率的に利用し、エ
く中でも①安定的な資金確保、②確実な事業実施の担保、
ネルギーをより安定的に確保することができるため、再処
③適切かつ効率的な事業実施ができるよう、再処理事業
理政策が推進されている。
に責任を持つ実施主体「使用済燃料再処理機構(再処
加えて、再処理を行うことには、使用済燃料を直接処
分する場合と比較して、高レベル放射性廃棄物の発生を
理機構)
」の設立、再処理機構に資金を拠出する拠出金
制度への移行等の制度変更が計画されている(図 5)
。
出典:原子力・エネルギー図面集 2015(電気事業連合会)
図 4 再処理の工程
出典:経済産業省資料 http://www.meti.go.jp/press/2015/02/20160205001/20160205001-2.pdf
図 5 再処理事業に係る資金の流れのイメージ
[トピックス]
57
TO P IC S トピックス
法人 日本原子力研究開発機構(JAEA)に代わってもん
3.5 プルサーマル
再処理により使用済燃料から回収されたウランとプル
じゅの運営を行う主体を半年以内に特定するよう勧告が
トニウムの酸化物は混合され、MOX 燃料に加工されて、
発出された。これを受け、現在、文部科学省「もんじゅ」
当面は軽水炉で使用されることになっている。このことを、
の在り方に関する検討会で検討が進められているが、わ
プルサーマルと呼んでいる。
が国にとって高速炉開発は依然として非常に重要である。
MOX 燃料を装荷した原子炉は、ウラン燃料使用時
よりも制御棒の働きが問題ない範囲で若干低下するが、
3.7 高レベル放射性廃棄物最終処分
MOX 燃料の特性や挙動はウラン燃料と大差ないとされ
前述のように、再処理工場では高レベル放射性廃液を
ている。MOX 燃料はフランスなど海外でも多数の使用実
ガラス固化した高レベル放射性廃棄物が生成される。高
績があり、国内でも関西電力株式会社高浜発電所 3 号機
レベル放射性廃棄物は、30 ~ 50 年間貯蔵管理された後
などに装荷されている。なお、MOX 燃料工場は、青森
に、地下 300m 以深に埋設処分(最終処分)される方針
県六ヶ所村の再処理工場隣接地において 2010 年 10 月
となっている。
高レベル放射性廃棄物の最終処分場の立地につい
から建設が進められている。
ては、処分の実施主体である原子力発電環境整備機構
(NUMO)が処分地選定調査(文献調査)の受入れ自治
3.6 高速増殖炉
高速増殖炉とは、発電しながら消費した以上の燃料を
体を 2002 年から公募している。しかし、現在に至るまで、
生成することが出来る(ウラン 238 をプルトニウム 239
調査受入れ自治体は見つかっていない。この状況を踏ま
に変える)原子炉であり、軽水炉等に比べ、ウラン資源
え、国は最終処分政策の抜本的見直しに向け、2013 年
の利用効率を飛躍的に高めることが出来る(図 6)
。
に最終処分関係閣僚会議を創設し、最終処分法に基づく
現在、わが国では、高速実験炉常陽と高速増殖原型炉
基本方針を改定した。それによると、まず国から地層処
もんじゅによって研究開発が進められている。もんじゅ
分の科学的有望地を提示した上で理解活動を推進し、調
については、度重なる機器の点検漏れ等の問題により、
査への協力を国から自治体に申し入れることとしている。
2015 年 11 月に原子力規制委員会から、国立研究開発
科学的有望地は、国民や地域に冷静に受け止めてもらえ
出典:原子力・エネルギー図面集 2015(電気事業連合会)
図 6 ウランの核分裂とプルトニウムの生成・核分裂
58 電 機 2016・April
る環境を整えた上で、2016 年中に提示される方針となっ
再処理を行うと、高レベル放射性廃棄物の発生量を減ら
ている(図 7)
。
すことができ、放射性廃棄物処分に関する負担も軽減さ
このような制度変更、理解活動の促進により、最終処
れる。
分場の立地問題が進展することが期待される。
4.3 余剰プルトニウムの不保持
4.まとめ
原子力の平和利用に徹している日本では、利用目的の
ない余剰プルトニウムを持たないことを国際的に表明して
以上、深澤委員長の講演内容に沿って、核燃料サイク
いる。ゆえに、原子力発電によって生成されたプルトニウ
ルの各工程の概略を説明した。ここで改めて、核燃料サ
ムを再び核燃料として利用する核燃料サイクルは、プルト
イクルの意義を以下に整理する。
ニウムの消費方法としても非常に重要な意義を有している。
4.1 エネルギーセキュリティの向上
5.おわりに
日本のエネルギー自給率は 6%と極めて低く、エネル
ギー資源のほとんどを海外からの輸入に依存している。
当企業研究会には、九州地方に拠点を置く会員企業や
ウランも全量を輸入に頼っているが、核燃料サイクルを
関連経済団体等から約 40 名が参加し、深澤委員長によ
確立することによりウラン輸入量を減少させることができ、
る講演に熱心に耳を傾けていた。また、限られた時間で
電力をより安定的に供給できる。つまり、核燃料サイクル
はあったが質問も複数提示され、わが国における他の原
はエネルギー資源の国内での確保に寄与するため、わが
子力発電所に先駆けて再稼働を果たした川内原子力発電
国のエネルギーセキュリティの向上に貢献するといえる。
所を擁する九州地方における、原子力発電、核燃料サイ
クルに対する関心の高さを伺うことができた。
JEMA 原子力部では、今後も各支部にて原子力関連の
4.2 高レベル放射性廃棄物発生量の減少
使用済燃料を直接処分する場合、その全てを高レベル
放射性廃棄物として処分しなければならない。しかし、
講演会を開催し、それぞれの地域で原子力発電に対する
理解促進を図っていく所存である。
出典:資源エネルギー庁「高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた新たな取組み」
図 7 最終処分場立地選定までのプロセス
[トピックス]
59
TO P IC S トピックス
TOTO における
SOFC(固体酸化物形燃料電池)モジュールの
開発状況
TOTO 株式会社
燃料電池企画部
伊藤 一馬
1.はじめに
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は電池反応の排熱を
また、最近は停電時の自立運転機能を備え災害等によ
る長時間停電時に家庭内の必要最低限の機器を使用する
ことが出来るようになったことも魅力の一つとなっている。
原燃料の改質反応に利用することができるため、高い発
電効率が実現できる。また、改質燃料ガスを精製せずに
そのまま発電用の燃料として利用できることから、システ
ム構成の簡素化によるコンパクト化、低コスト化が可能
である。これらの特長により住宅用燃料電池システムとし
て商品化されているエネファームにおいては、戸建住宅
のみならず集合住宅向けとしても商品化が期待されている。
一方、脆性材料であるセラミックスをセル材料に使用
しているため、起動停止時の熱応力によるセル自身の破
損やガスシール性低下、さらには高温環境下に長期間さ
らされることに起因する経年変化などによる性能劣化が、
実用化に際しての技術的課題として挙げられる。
当社では耐熱サイクル性の観点から円筒形状のセルス
タックデザインを採用し、また、700℃以下の温度域で従
図 1 家庭用燃料電池発電システムの出荷台数推移
(日本電機工業会(JEMA)
「電機」2015 - JUNE)
来のジルコニア系材料と比較して酸素イオン導電性に優
れるランタンガレート系電解質を使用したセル開発を進
エネファームの普及に対する課題は、経済性の向上と
め、高効率かつ、高い信頼性、耐久性を期待されるセル
耐久性・信頼性の確保である。これらについては業界共
スタック、ホットモジュールの開発を行っている。
通の課題として国の支援を受けながら取り組んできた。
経済性については発売当初に比較すれば導入コストが
2.国内の家庭用燃料電池
大幅に下がったもののまだ高価格な状態で、普及に向け
て行政の補助金による支援が継続されている。また、各社
家庭用定置型燃料電池エネファームは、2009 年に市
のモデルチェンジに際してはエネルギー利用効率の向上に
場に登場、現在 3 社が製品を販売し 2015 年には国内累
より、運転時のメリットを高める取り組みも進められてきた。
計 15 万台を突破した。特に近年のエネルギーに対する
耐久性・信頼性の面では、他の家庭用省エネルギー機
関心の高まりを受け、分散型電源の重要性が認識される
器に比較して少ない参入メーカー数が示すように、燃料
につれて、各家庭で火力発電所並みのエネルギー効率で
電池の開発は技術的なハードルが高い。特に長時間連続
発電しながら排熱でお湯を沸かして省エネルギー、CO 2
して発電することを要求されることから、経時的な劣化に
削減に貢献するエネファームは、エネルギー問題を解決
対する耐久性・信頼性の確保が課題となっている。
する一つの答えとして注目を集めている。
60 電 機 2016・April
なかでもセルスタックの劣化メカニズムを究明するとと
もに、短期間で耐久性を評価する技術の開発は極めて重
ムの発売を早期に実現するため、現在も総力を挙げて開
要である。これらの課題解決のために現在、国立研究開
発を継続している。
発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
によって「固体酸化物形燃料電池の耐久性迅速評価方法
に関する基礎研究」が産学で組織され、当社もこれに参
加し研究開発を推進中である。
4.小型円筒形セルスタック開発状況
小型円筒形セルの外観写真を図 3 に示す。耐熱サイク
ル性の観点から円筒形状のセルデザインを採用し、電解
3.当社における燃料電池開発の歴史
質には 700℃以下の温度域で従来のジルコニア系材料と
比較して酸素イオン導電性に優れたランタンガレート系
当社では衛生陶器の生産を通じて培ったセラミックス技
材料を使用している。セルは押し出し成形した第一燃料
術の応用として 1990 年代よりセラミックスを用いた酸素分
極にスラリーコート法にて第二燃料極及び電解質を成膜
離膜の研究を進めていたが、世界で燃料電池の実用化に
して共焼成し、その後空気極を同様に成膜して焼成して
向けた動きが活発化する中で、セラミック薄膜の高温で
いる。スタックは金属製の集電部材を使用してセル間を
の酸素イオン導電性を活用した SOFC の開発を開始した。
電気的に直列接続させている。
当初は業務用途をターゲットにおいて 5kW クラスの開
発を進めていたが、2000 年代に入り家庭用途への展開が
進む中で 2010 年より NEDO の実用化プロジェクトに参画
し、フィールドでの実証を含む実用化検証を行ってきた。
当社ではエネファーム全体の開発は行わず、セルスタッ
クと改質器を搭載し、アノードに燃料ガスと水、カソード
に空気を供給するため流路と高発電効率で熱自立可能な
構造を持つホットモジュールに特化して開発を進めてい
る。実証研究ではシステムメーカーの設計・開発したシ
ステムにこのホットモジュールを搭載して、様々な環境の
家庭で実際に運転してそのデータを取得した。
図 3 セル外観写真
2008 年度から 2012 年度に実施した NEDO プロジェ
クト(PJ)
「耐久性・信頼性向上に関する基礎研究」に
参加し、劣化メカニズムに関する研究開発を行った。こ
の時点での開発セルの耐久性能は、温度 630℃、電流密
度 0.2A/cm2、燃料利用率 75%の条件下において劣化率
0.6% /kh 程度であり、この時実施した各研究機関の分
析結果から、セルの主たる劣化要因はカソード側のクロ
ム被毒によるものと推察された。この結果を受けて対策
を施したセルスタックを開発、セル 16 本を直列に束ねた
図 2 フィールドテスト実施例
この実証研究を通じ得られた知見よりセルスタックおよ
びホットモジュールの改良を進め、システムメーカーによ
ショートスタックを作製して確認を開始した。現在、上述
の NEDO の後継 PJ である「固体酸化物形燃料電池の
耐久性迅速評価方法に関する基礎研究」において対策効
果の検証を行っている。
る採用、TOTO ホットモジュールを搭載したエネファー
[トピックス]
61
TO P IC S トピックス
図 4 の通り運転時間は 2 万時間を越え 、 良好な耐久性
能を示しているとともに、対策の妥当性を確認することが
できている。
6.ホットモジュール発電効率の向上
更なるホットモジュール発電効率アップのため、ホット
モジュール内の配管や空気熱交換器などのレイアウトを
再検討し、セルスタック温度分布の低減を行った。これ
により、2012 年度モデルは 2011 年度モデルと比較して、
発電効率を 3 ~ 4 ポイント向上することができた(図 6)
。
図 4 ショートスタック運転状況
5.ホットモジュール開発状況
家庭用燃料電池システムで使用されることを目指して、
上述のセルスタックから構成される定格出力 800W 級の
図 6 ホットモジュール出力-効率特性
ホットモジュールを開発している。ホットモジュールは熱
放散を極力低減した小型で熱自立容易な構造が望ましい。
補機類の消費電力の低減化が進み、連系電力となる
そこで、セルスタックの発電反応で生じる熱と残燃料の燃
AC 出力への変換前のホットモジュール発電出力も低減
焼反応で生じる熱を、空気の加熱、水蒸気改質反応で生
化が可能となった。2012 年度モデルは 2011 年度モデル
じる吸熱への熱源、改質水の気化熱へ有効に活用できるレ
からの改良により発電出力も向上したため、オーバース
イアウト及び熱収支について検討した。その結果、ホットモ
ペックとなっていた。そこで、2013 年度モデルでは、設
ジュールはセルスタックからの発生熱と燃焼熱を効率よく回
定したモジュール定格出力(DC800W)にて発電効率が
収できるように改質器と空気熱交換器を配置し、金属ケー
最高となるように、セル本数の最適化(削減)と燃料利
スへ内蔵する構造とした(図 5)
。
用率などのホットモジュール運転条件を最適化した。こ
れにより DC300W 付近の発電効率も 2012 年度モデルと
比較して 2 ~ 3 ポイント向上し、発電効率の向上と小型
化、コストダウンを達成することができた。
7.耐久性の向上
上述の通り、主な劣化要因はクロム被毒による空気極
の劣化であることが推察されたことから、劣化対策として
セルスタックの金属製の集電部材とホットモジュールの
金属部材について、クロム蒸発抑制の改良を行った。ま
図 5 ホットモジュールの外観写真
62 電 機 2016・April
たホットモジュールにおいては、セルスタックへの燃料と
空気の分散性の改善を行った。図 7 に 2013 年度モデル
のホットモジュールの定格連続耐久試験の結果を示す。
セルスタック電圧の劣化率を示しており、電圧はセルス
8.今後について
エネファームは国による家庭部門の省エネ化推進、
タック温度や燃料利用率などの変化を補正して初期の電
CO 2 削減の取り組みを受けて設けられた導入補助金によ
圧と比較している。改良を重ねた結果、1.5 万時間を越え
り、導入ユーザーの経済性確保の面での支援を受けてき
て極端な劣化は認められず、安定して運転を継続してい
たが、2015 年、経済産業省から補助金なしで経済メリット
る。2011 年度以前に見られた性能低下の抑制に成功し、
を確保できる目標年度と、それに向けたステップが示された。
ほぼ目標の耐久性能を確保できている。今後は商品化に
このことにより、エネファームの低価格化はさらに重要性
向けて、さらなる劣化の抑制とコストダウン及び量産技術
を増し、各社の最優先課題は耐久性の確保から低価格化
開発を推進していく。
へと移ってきている。また、
価格低下に必要な量産効果を得
るためにも、
これまで設置が困難であった都市部一戸建てや
集合住宅への設置に向けた小型化、
軽量化も、
エネファーム
が今後普及拡大していくための吃緊の課題となりつつある。
さらに大きく市場に目を向ければ、アウトドアレジャー
や仮設用途向けの可搬型システムから、数 kW から数
10kW までの小規模商業施設や数 100kW から MW クラ
スまでの大型施設をターゲットとする業務用途への縦の
展開、欧州など熱利用の大きなエリアをにらんだ横の展
開も、これからの課題として捉えていく必要がある。
当社もまずは開発した SOFC ホットモジュールのエネ
ファーム早期採用を目指しながら、並行して将来のエネ
ルギーを取り巻く状況に合致した商品開発を推進し、燃
図 7 13 年度ホットモジュール運転状況
料電池の普及を通じた生活環境の向上と、地球環境保護
への貢献を目指している。
[トピックス]
63
業界報告
家電部門のグローバル化の取組み
一般社団法人 日本電機工業会
家電部 企画業務課長
渡辺 秀武
1.はじめに
表 1 ASEAN 概況
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)では、会員
家電会社のグローバル事業展開の支援として、家電海外
課題専門委員会・分科会の運営に取り組んでいる。
現在、白物家電業界では海外での生産や出荷比率が高
まっており、海外生産比率も冷蔵庫や洗濯機で 8 割を超
えている。特に市場として存在感を増している東南アジ
ア諸国連合(ASEAN)地域には、会員各社の白物家電
の生産拠点が多く集まり、製造のみならず、設計やマー
ケティング機能の現地化が進んでいるが、JEMA として
現地で発生した法律・規格・規制等の課題に対して関連
情報を収集する仕組みが弱く、対応に遅れが出ていた。
早急な現地での情報収集と伝達の仕組み、また、現地
や近隣諸国の法律・規格・規制等に関して、日本の関係
諸官庁への支援依頼や現地商工会などを通じた現地関係
諸官庁や団体との連絡及び折衝の強化が必要であった。
本稿では、白物家電の生産拠点が多く集まる ASEAN
地域のタイ、インドネシア、ベトナムにおいて、JEMA
の家電分科会設立の経緯や、現在実施している活動につ
(2014 年)
ブルネイ
人 口
(万人)
名目 GDP 1 人当 GDP
(億米ドル) (米ドル)
加盟国
42
173
41,344
1,533
167
1,090
25,445
8,885
3,492
669
118
1,760
マレーシア
2,990
3,269
10,933
ミャンマー
5,344
643
1,204
フィリピン
9,914
2,846
2,871
547
3,079
56,287
タイ
6,773
3,738
5,519
ベトナム
9,073
1,862
2,052
ASEAN
62,330
24,780
3,976
10
EU
50,831
184,606
36,317
28
NAFTA
47,978
204,884
42,703
3
MERCOSUR
29,687
35,189
11,854
6
カンボジア
インドネシア
ラオス
シンガポール
ASEAN:東南アジア諸国連合、EU:欧州連合
NAFTA:北米自由貿易協定、MERCOSUR:南米共同市場
(出典:外務省「目で見る ASEAN」を一部加工)
いて報告する。
(千台)
(千台)
国内生産
世界生産計
海外生産計
国内出荷
図 1 冷蔵庫の国内生産・海外生産・国内出荷台数
(出所:JEMA 資料)
64 電 機 2016・April
国内生産
世界生産計
海外生産計
国内出荷
図 2 洗濯機の国内生産・海外生産・国内出荷台数
(同左)
2.家電海外課題専門委員会・
分科会について
JEMA のグローバル事業展開支援の取組みとして進め
てきた、家電海外課題専門委員会・分科会について概要
② 家電分科会:各国の各社事業拠点の原則として事業
責任者クラス
立ち上げ段階でもあり、家電政策委員会の参加会社で
スタートし、3 つの家電分科会ともに、現在は 5 社で構
成されている。
を紹介する。
2.6 家電分科会の開催について
(1)分科会は、原則 1 年に 2 回開催し、会議に際しては
2.1 目的
(1)現地の事業環境(法律、規格、規制等)の変化によ
JEMA 事務局が必ず参加
り生じる、業界共通の課題に対しての情報共有
(2)公式な業界コミュニケーションの場を構築
3.家電分科会の設立経緯
家電分科会の設立にあたり、2013 年 11 月に会員家電
2.2 活動内容
(1)業界共通の課題を抽出
会社の生産拠点が揃うタイで、
「海外課題検討」の準備
(2)課題に関連した情報の収集
会議を開催し、事業拠点の責任者の方々に活動に対する
課題に対しては JEMA 全体で対応するとともに、
経済産業省など国内機関や、現地の日本商工会など
に依頼して対応。
ニーズ把握を行った。結果として、以下の通り進めること
となった。
(1)課題検討の場として課題の抽出を行う
(2)環境や省エネ関係など、国をまたがるテーマについ
て情報を収集する
2.3 主な対応分野
(1)東南アジア各国政府の施策、法律制定等
(3)東南アジア等の規格の情報収集や日本側からの規格
等の提案を進める
(2)工業規格、認証制度、試験所等
(3)環境、リサイクル、省エネ、安全等の共通課題
また、数年前より競争法コンプライアンスの関係で業
界コミュニケーションの場が少なくなっており、JEMA が
(4)ASEAN 経済共同体関連の情報収集
主催する情報共有の場が必要であるとの要望があった。
検討の結果、正式な WG の設立が了承され、2014 年 5
2.4 体制
家電政策運営委員会傘下に、国内の委員会として家電
海外課題専門委員会を、タイ、インドネシア、ベトナム
の 3 カ国にそれぞれ分科会を設置し活動を推進。
月に第 1 回「タイ海外課題検討 WG」を実施した。
他の ASEAN 地域では、インドネシアで 2014 年 11
月に「インドネシア海外課題検討 WG」の準備会議を開
催し設立が了承、2015 年 11 月に「家電インドネシア分
家電政策運営委員会
家電海外課題専門委員会
家電タイ分科会
科会」を設立し第 1 回分科会を開催した。ベトナムでも
家電インドネシア分科会
2015 年 4 月に「ベトナム海外課題検討 WG」の各社ヒ
家電ベトナム分科会
図 3 家電海外課題専門委員会・分科会体制
アリングを行い、7 月に「家電ベトナム分科会」を設立し
第 1 回分科会を開催した。
併せて JEMA としてのグローバルネットワーク拡大に
向け、独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO)や日
2.5 委員について
(1)対象国で白物家電事業を行っている JEMA 会員の
家電会社
① 家電海外課題専門委員会:各社の海外事業所への
連絡窓口
本商工会を訪問し情報交換を進めた。また、技術支援機
関である地方独立行政法人 東京都立産業技術研究セン
ター(都産技研)バンコク支所や、現地の試験機関との
連携を進めてきた。
なお、ASEAN 地域として 3 拠点での運営となるにあ
[業界報告] 65
業界報告
たり、2015 年の 7 月に海外課題検討 WG の再編を実施
は、JEMA 競争法コンプライアンス規程のもと、以下の
し、日本側の対応委員会として家電海外課題専門委員会
5 項について情報共有と意見交換を行っている。
を新たに設置、併せてタイ・インドネシア・ベトナムの
(1)法・規制、規格・認証関連情報
WG を名称変更し、分科会とした。
(2)環境、リサイクル、省エネ、安全、性能等の課題に
ついて
(3)ASEAN 統合関連情報
(4)日本の家電関連情報(現地に関連)
(5)グローバル家電概況(市場調査・展示会視察報告
他)
この中で、議題の中心となるのは、現地または日本以
タイ海外課題検討 WG 準備会議
外の輸出先での省エネや環境関連を中心とした新しい規
都産技研バンコク支所
制の導入情報についてである。多くの場合は、現地また
は輸出先において、IEC 規格(国際電気標準会議)を
4. 家電分科会の活動概要
ベースとした自国規格への落とし込みに際して行われる、
4.1 活動概要
までに分からないことによる。
現地の生活様式や気候風土を反映した詳細な情報が施行
2014 年の第 1 回タイ海外課題検討 WG を開催して以
JEMA 海外認証制度分科会などと連携した家電分科会
来、タイで 4 回の会議、インドネシアで 1 回の会議、ベ
への迅速な情報の展開や、相手先への意見書の提出、将
トナムで 2 回の会議を行っている。家電分科会での議題
来的には IEC 規格の作成・見直し時において現地の生活
表 2 家電海外課題専門委員会・分科会と、グローバルネットワークのこれまでの取組み
家電海外課題 専門委員会
日 本
家電分科会
タ イ
インドネシア
ベトナム
○タイ WG 準備会議
(11 月)
2013 年度
グローバルネットワーク
・タイ:JETRO・日本人
商工会情報交換(11 月)
●タイ海外課題検討 WG
設立・第 1 回(5 月)
●第 2 回タイ海外課題
検討 WG(11 月)
2014 年度
○インドネシア WG
準備会議(11 月)
・インドネシア:JETRO・
ジャカルタジャパンクラブ
情報交換(11 月)
・インドネシア・
エネルギー 大臣令関連
調査(3 月)
●家電海外課題
●第 3 回タイ海外課題
専門委員会設立(7 月)
検討 WG(4 月)
・日本:都産技研
情報交換(2015年1 月)
●家電インドネシア
○ベトナム WG 準備
・タイ:都産技研・バンコク
支所と連携(4 月)
分科会電子会議(8 月)
ヒアリング実施(4 月)
●家電ベトナム分科会
設立・第 1 回(7 月)
・ベトナム:JETRO・日本
商工会情報 交換(7 月)
●第 2 回家電ベトナム
分科会(11 月)
・タイ:JET Thailand
情報交換(10 月)
・家電海外課題専門委員会体制見直し、WG から分科会へ名称変更(7 月)
2015 年度
・ASEAN 市場に於ける家電工場展開に関する調査実施(9 月)
●第 4 回家電タイ分科会
(10 月)
●家電インドネシア
分科会設立・第 1 回
(11 月)
●第 5 回家電タイ分科会
(5 月予定)
2016 年度
66 電 機 2016・April
●第 6 回家電タイ分科会
(11 月予定)
・ベトナム: JQA
Representative
Office 情報交換(11 月)
●第 3 回家電ベトナム
分科会(5 月予定)
●第 3 回家電
インドネシア分科会
(11 月予定)
●第 4 回家電ベトナム
分科会(11 月予定)
環境を反映した試験条件の提案が JEMA の技術専門委
員会を通した対応が必要となると思われる。
・ メー カ ー(SHARP ELECTRONICS INDONESIA, Panasonic Manufacturing Indonesia)
訪問者:家電部事務局 3 名
第 4 回家電タイ分科会
図 4 インドネシア省エネルギー
マークラベル
エネルギー鉱物資源省にて
図 5 サウジアラビア
の規制関連のラベル
SUCOFINDO にて
4.2 実施調査
(2)ASEAN 市場における家電工場展開に関する調査
家電分科会での要望に基づき、2015 年 3 月にイン
家電分科会では、ASEAN 経済共同体関連の情
ドネシア・エネルギー大臣令関連 調査や同 年 9 月に
報収集を進めている。ASEAN 地域各国に韓国や中
「ASEAN 市場に於ける家電工場展開に関する調査」など
国を中心とした海外メーカーの大規模な投資が続い
を実施した。
ている中で、家電ベトナム分科会での要望に基づき、
ASEAN 地域での家電工場の展開状況を調査、取り
(1)インドネシア・エネルギー大臣令関連調査
まとめを行った。
インドネシアでエネルギー大臣令(省エネ法)が
準備されているが、日本国内の JEMA・会員関係者
にとって認証制度の詳細や試験機関の状況などで不
明点が多く、施行時に冷蔵庫・エアコン等で、市場
での混乱等が予想されるため、家電インドネシア分
科会での要望に基づき、規格関係者や試験機関への
ヒアリング調査を実施し、報告書を作成した。
日程:2015 年 3 月 25 日 ㈬ ~ 27 日 ㈮
訪問先:インドネシア・ジャカルタ
・エネルギー鉱物資源省(MEMR)
・試験機関(SUCOFINDO、LIPI)
図 6 『ASEAN市場に於ける家電工場展開に関する調査』報告書
[業界報告] 67
業界報告
4.3 四半期ごとの電子会議(メールベース)開催
海外での委員会活動ゆえにどうしても開催頻度が限ら
密にしている。また、新規格の情報交換などで現地の試
験機関とのネットワーク強化にも取り組んでいる。
れるため、四半期ごとにメールベースによる電子会議を
実施している。家電部クォーターレポート* 1 を中心に、
民生用電気機器国内出荷実績リリースや新たな規制情報
などを紹介するとともに、現地からの情報収集・情報交
換に努めている。
5.おわりに
ASEAN 地域各国の省エネ規制や安全・性能の認証制
度を整理し、JEMA 海外認証制度分科会などや現地の試
* 1 家電部クォーターレポート:国内・海外の家電業界に関連ある規制・規格、
JEMA 家電部関連の委員会活動、家電部行事、統計情報について取りま
とめた資料。四半期ごとに家電海外課題専門委員会・分科会他に配布。
験機関・支援機関などとの情報交換を進め、より詳細な
情報を収集出来る体制を築くと共に、各国での規制化へ
の対応について、日系メーカーの意見反映のため、日本
商工会や JETRO 事務所との連携、JEMA 家電部各技術
委員会との密な活動を行い、将来的には各国での各種規
格が IEC 整合で進められることから、JEMA からの IEC
への働きかけ強化も含め活動をする。
また、工業会として国際連携を進めるため、2003 年に
*2
中国家用電器協会(CHEAA)
、2008 年に韓国電子情
*3
報通信産業振興会(KEA)
と友好協力協定を締結して
いる。定期的に交流会等を開催し、家電業界の最新動向
等に関する情報および意見の交換を行い、タイムリーな
図 7 家電部クォーターレポート
情報入手を図っている。2013 年からはよりグローバルな
4.4 グローバルネットワークの取組み
活動として、日本、欧州、米国・カナダ、メキシコ、豪
家電分科会の活動に併せて、タイ・インドネシア・ベ
トナムの JETRO や日本商工会と定期的な情報や意見交
州、中国、韓国の家電工業会が加盟する世界家電工業会
*4
(IRHMA)
を発足させ、
情報や意見の交換を行っている。
換を行い、新たな規制などで要望事項が発生した場合に、
*2 CHEAA:China Household Electrical Appliances Association
日系団体を通じて現地関係諸官庁や団体との連絡及び折
*3 KEA:Korea Electronics Association
衝などの協力をお願いできるよう、コミュニケーションを
*4 IRHMA:International Roundtable of Household Appliance Manufacturer Associations
・JETRO ハノイ
・ベトナム日本商工会
・JQA Hanoi Representative Office
家電タイ分科会
家電ベトナム分科会
・JETRO ホーチミン
・ホーチミン日本商工会
・JETRO バンコク
・盤谷日本人商工会議所
・都産技研バンコク支所
・JET Thailand
家電インドネシア分科会
・JETRO ジャカルタ
・ジャカルタジャパンクラブ
図 8 家電分科会とグローバルネットワーク
68 電 機 2016・April
標準化活動紹介
るための編集上の意見を提出している。今回、日本意見
IEC/SC22G/MT7
(可変速駆動システムのEMC)
東京会議 出席報告
の反映とともに、他国の意見及び対応方針を情報収集し、
国内 PDS メーカのグローバル市場での競争力の向上につ
なげることを目的とする。
可変速駆動システム IEC 対応分科会主査
IEC/SC22G/MT7 エキスパート
佐 藤 以久也
◇1
IEC/SC22G/MT7 エキスパート
井上 博史
◇2
【成 果】
今回、改正案に対して、各国からは国内 PDS メーカに
大きな影響を与えるような技術的意見は提出されず、編
集上の意見が大半だった。日本からは全体の約 1/4 を占
める 20 の意見を提出し、そのほとんどが採用され、完成
【概 要】
開催会議 IEC/SC22G/MT7(可変速駆動システムの
EMC)
度の高い規格作成に貢献した。また、次に述べる有用な
情報も入手した。
IEC 61800-3 改 正 案の 審 議 以 外に、関 連 する他の
EMC 規格関連の報告があった。主な内容を次に示す。
開催期間 2016 年 1 月 12 日 ㈫ ~ 14 日 ㈭
開催地
電機工業会館(東京、日本)
参加国
米国、英国、デンマーク、ドイツ、フランス、
日本
1.CISPR 11(ISM 装置の高周波エミッション)
・2015 年 6 月に発行された CISPR 11 Ed.6 の stability date(安定期日:この時までは改正されない)は、
2018 年になっている。
【出席背景】
・第 6 版で追加された太陽光発電システム用パワーコ
可変速駆動システム(PDS)の製品 EMC 規格 IEC
ンディショナ(PV 用パワコン)の直流ポートの限度
61800-3 の改正作業が MT7(Maintenance Team 7)で
値及び測定方法を PV 用パワコン以外の変換装置に
開始されており、これに出席した。IEC 61800-3 は、欧
も適用する件が TF-SPC で検討中である。
州 EMC 指令の整合規格であり、グローバル展開を進め
る国内 PDS メーカにとって対応が必須な規格である。ま
・TF-WPT で、電気自動車用のワイヤレス充電器につ
た、産業分野での一般規格 CISPR 11 との整合も求めら
いて、150kHz 以下の限度値を検討中である。限度
れており、CISPR/B で進められている CISPR 11 の改正
値は、IEC/TS 62578(能動形電力変換装置、TC22
作業と協調しつつ、日本からの提案を行っている。
で作成)に準じている。
【目 的】
今回の会議では、発行された改正案(CDV)に対する
2.CISPR/H(無線局保護のための許容値)
・IEC 61000-6-4(工業環境の高周波エミッション共
通規格、製品がない機器に適用)を改正しており、
各国意見への対応の審議が主要議題である。日本として
CD までは参考だった直流ポートの限度値について
は、CDV に対して、主として規格としての完成度を高め
はCDVで要求事項に変更することが決定されている。
◇ 1 富士電機株式会社 パワエレ技術開発センター 共通技術開発部 ◇ 2 一般社団法人 日本電機工業会 技術部 技術企画課
[業界報告] 69
業界報告
・多くの国が要求事項に含めることは適切ではないと
要望し、議論を深めるため CDV ではなく CD を要
望している。
【今後の課題】
現在、改正作業を行っている IEC 61800-3 については、
概ね各国の合意が得られ、Ed.3.0 の最終原案(FDIS)
・共通規格で規定されると、顧客からの要求事項とな
とすることが合意された。高周波エミッションに関する上
る。また、個々の製品規格は、共通規格の規定を基
位規格である CISPR 11 が 2018 年まで改正されないこ
に作成する必要があるため、PDS にも影響してくる。
とから、IEC 61800-3 Ed. 3.0 の改正後は、当面、改正作
業は行われない見込みである。しかし、次期改正作業で
は、CISPR/B で検討されている直流ポートのエミッショ
3.SC77A/WG8(低周波の電磁環境)
・WG8 に関連して、次の文書が回付されている。
a)77A/914/CD:IEC 61000-2-2(公共低電圧電力
系統の両立性レベル)の 2 ~ 30kHz の追加
b)77A/915/DC:30 ~ 150kHz における両立性レ
ン限度値の適用拡大、SC77A/WG8 で検討されている 2
~ 150kHz の両立性レベルに基づくエミッション限度値、
SC77A/WG1 で検討されている電源高調波の測定方法な
ど、現在は規定がない要求事項の取入れなどを検討する
必要がある(図 1)
。
ベルの方針に関する意見照会
これらの検討においては、日本対他国ではなく、関連
する組織においてパワエレ機器メーカ(TC22)対他業
4.SC77A/WG1(電源高調波)
・9kHz 以下の高調波について、電圧・電流のどちら
界(系統運用者・通信事業者など)の構図となっている。
TC22 での検討の中心は SC22G/MT7 が担っており、今
を測定すべきか検討中である。
後も MT7 の活動に貢献することによって他国のパワエレ
・電源高調波測定時の測定器の適切なインピーダンス
メーカの信頼を得て、協調して CISPR/B、SC77A など、
分野横断的な規格への意見反映に努める必要がある。
値について検討中である。
電力インタフェース:規定なし
PDS
変換器部
(インバータ)
交流入力ポート
電動機
・0 ~ 2kHz:規定あり
・2 ~ 9kHz:規定なし
(SC77A/WG8 で両立性レベル、
SC77A/WG1 で限度値・測定方法を決定後、
取入れ是非を検討予定)
・9 ~ 150kHz:規定なし
(SC77A/WG8 で両立性レベルを
決定後、
取入れ是非を検討予定)
直流ポート
(ある場合)
・150kHz ~ 30MHz:規定なし
(CISPR11 で決定後、取入れ是非を
検討予定)
・150kHz ~ 30MHz:規定あり
図 1 伝導エミッション限度値の規定概要
70 電 機 2016・April
国からの意見によって国内メーカが不利となるような変更
IEC/SC22H/MT62040-2
(UPSのEMC)マイアミ会議
出席報告
が行われることを阻止することを目的とする。
【成 果】
IEC/SC22H/MT62040-2 エキスパート
井上 博史
◇
【概 要】
IEC 62040-2 改正案に次のような日本意見を反映した。
1.他国から、大形 UPS の場合、別置き蓄電池をター
ンテーブル上に配置できないため、放射エミッショ
ン測定に用いる “エンクロージャポート” から別置
開催会議 IEC/MT62040-2(UPS の EMC)
き蓄電池を除外する提案が出された。エンクロー
開催期間 2016 年 2 月 8 日 ㈪ ~ 11 日 ㈭
ジャポートの定義から別置き蓄電池を除外すると、
開催地
Blue Moon Hotel(Miami、U.S.A.)
試験時に別置き蓄電池をターンテーブルに置かな
参加国
米国、オーストラリア、フィンランド、フラン
いことになるが、現行規格・CDV では、試験配置
ス、日本
の図に別置き蓄電池をターンテーブル上に配置する
ことを規定し、大形 UPS については、別置き蓄電
【出席背景】
池を別の場所に置けることを注記で記載している。
提案を採用すると、全ての UPS が別置き蓄電池を
UPS(無停電電源装置)を所管する IEC/SC22H で、
ターンテーブルに配置できないことになり、小容量・
UPS の電磁両立性(EMC)規格である IEC 62040-2 の
中容量 UPS では、試験方法が変更されることになる。
改正作業が行われている。一般社団法人 日本電機工業
提案内容は、試験方法の大幅な変更を伴うため、
会(JEMA)では、UPS 技術専門委員会が母体となって
日本から、エンクロージャポートの定義は変更せず、
IEC 62040-2 に対応する JIS 原案を作成しており、筆者
試験配置図の説明で、別置き蓄電池をターンテー
が事務局として取りまとめを行っている。今回、この IEC
ブルに置かないでよいことを示す詳細説明を規定と
62040-2 の改正作業を行うための会議に出席した。
して追加する提案を行い、了承された(図 1)
。
【目 的】
2.CDV で新たに追加された試験配置の図において、
図の中の記載と、図の下の説明とが一致していな
今回の会議では、発行された改正案(CDV)に対する
かった。日本からの提案によって、図を修正し、説
各国意見への対応の審議が主要議題であり、事前に提出
明も分かりやすく見直され、規格利用者がより理解
した日本意見を次期改正案に反映させること、また、各
しやすい内容に変更された。
放射エミッション測定時に別置き
蓄電池をターンテーブル上に配置
エンクロージャポート
変換装置
別置き
蓄電池
a)現行規格・CDV での定義
放射エミッション測定時に変換装置
だけをターンテーブル上に配置
エンクロージャ
ポート
変換装置
別置き
蓄電池
a)他国の提案による定義
図 1 エンクロージャポートの定義(概略図)
◇ 一般社団法人 日本電機工業会 技術部 技術企画課
[業界報告] 71
業界報告
3.1st CD において、現在、IEC 62040-2 では規定が
なく、他の SC で審議中の 9 ~ 150kHz に関する
Annex F が追加された。Annex F では、TC22(パ
IEC/SC23E/JWG7(電気自動車等
充電用可搬形ケーブルセット)
フランクフルト会議 出席報告
ワエレ)が TS 文書(技術仕様書)で推奨してい
るレベル・UPS メーカによる評価結果が示されて
IEC/SC23E 国内対応委員会
いたが、この周波数帯域については、現在、電力
山口 健二
◇
系統の電磁環境を担当している SC77A/WG8 で検
討中であり、製品規格に適用する限度値が決まるに
は、数年を要する見込みである。SC77A/WG8 で
結論が決まる前にこの附属書で独自のレベルを記載
【概 要】
開催会議 IEC/SC23E/JWG7(電気自動車等充電用可
した場合、現時点では限度値採用の方向性が定まっ
搬形ケーブルセット)
ておらず、試験が不要であるにもかかわらずユーザ
開催期間 2016 年 2 月 1 日 ㈪ ~ 2 日 ㈫
から適合を要求されるなど、UPS メーカに無用な
開催地
フランクフルト(ドイツ)
負担を生じさせるおそれがあるため、1st CD 及び
参加者
6 カ国 16 名(日本含む)
2nd CD に対して、日本から Annex F 全体を削除
する提案を行った結果、前回会議で大半の内容を削
除し、審議状況の概要だけを残すことが合意された。
今回の CDV に対しては、日本以外の 2カ国から
改めて Annex F 全体を削除する意見が出されたが、
【出席背景など】
1.製品:電気自動車等充電用可搬形ケーブルセット(漏
電保護機能を含む)
存続を希望する意見も根強く、議論が難航した。日
本としては、前回の合意内容を尊重して意見提出し
2.背景(全般)
:電気自動車等は、低圧電気設備と異な
ていなかったが、当初から Annex F 全体の削除を
り国をまたぎ活用され、そこに搭載される充電用ケー
要望していたことから、改めて削除に賛同すること
ブルは、汎用性が考慮され国際規格を適用される可
を表明したことによって、Annex F 全体が削除され
能性が高い。新規開発中の IEC 規格(国際規格)の
ることとなった。
動向把握と、その IEC 規格への JEMA 意見に対する
フォローを行う。
【今後の課題】
今回の会議で技術的な議論はほぼ完了したため、審議
結果を反映した改正案を FDIS として発行することとなっ
た。これによって、今回の改正作業は、ほぼ完了した。
3.審議アイテム
(1) 当 該 製 品 の 新 規 制 定 文 書 案(IEC62752 の
FDIS)の結果とコメントの検討
(2)次期改正要望のための提案内容の検討
EMC 規格では、CISPR 11 や、機器横断的に適用す
る基本規格を担当する SC77A が作成する規格の内容を
導入することがルールとなっており、今後は、次期改正
作業に向けてこれらの動向を把握し、日本意見を反映さ
せる必要がある。これまで、これらの議論にも積極的に
【成 果】
今回、次の通り、関連規格の改正審議に参加すると共
に、意見提出、情報入手を行った。
参加し、情報共有を行うことで、今回の会議においても
他国を納得させるだけの説明が可能となり、改正案に反
映させることができた。今後もこれらの議論に参加し、
1.この規格の詳細
この JWG では、漏電保護機能を含む電気自動車等充
規定の適否も含め、最新の情報に基づいて適切に製品規
格に反映させる必要がある。
72 電 機 2016・April
◇パナソニック株式会社 エコソリューションズ社
電用可搬形ケーブルセット(以下、IC-CPD*)の IEC 規
ステム全般を規定した規格の中で規定するという案も
格である IEC62752 の検討を行っている。
あるが、これらの規格間で適用範囲が重複してしまう
* In-Cable Control and Protection Device for mode 2 charging of electric
road vehicles
この規格で扱う IC-CPD は可搬形で、電気自動車等
(以下、EV)に搭載されることも想定している機器で、
という問題が発生する。
日本としてもコンセントから給電するための IC-CPD
として、IEC 62752 の適用範囲に含むべきである旨を
コメントしており、検討を続けてきた。
EV の車載アクセサリ的な扱いもあるため、EV の充電シ
日本コメントも考慮され、この JWG7 での検討の結
ステム全般に関する審議をしている技術委員会(IEC/
論としては、使用条件によって一部外的衝撃を想定し
TC69)と、家庭用漏電保護装置の技術委員会(IEC/
た試験を緩和することで、IC-CPD を一時的に固定し
SC23E)との合同ワーキング(JWG)となっている。今
て用いるものも、IEC 62752 の適用範囲とすることで次
回、IEC/TC69 側からの参加者は半分くらいで、すべて
期改正を行うこととなった。
ドイツからの参加のみであった。
・一方で EV 充電システム全般を規定した規格が既に国
2.国際規格最終案(IEC 62752 の FDIS)の検討
主な審議内容は、以下のとおり。
際規格最終案にあるが、IEC 62752 との適用範囲の
一部重複に関しては、当 JWG の上位委員会(IEC/
SC23E)から、該当の技術委員会(IEC/TC69)へ、
・国際規格最終案に対し、過去に日本から提案して受け
重複回避に向けた提案をすることとした。
入れられたもの(テクニカルな提案を含む)が反映さ
れていない部分があったので、反映するようコメントと
して提出し、受け入れられた。
・IEC 62752 には、IC-CPD に要求している項目の中で、
直流漏電に関する特性の搭載が、規格の発行日に関わ
らず 2018 年 1 月 1 日からと記載されている。今回の
・今回の最終案へのコメントの中で、テクニカルなもの
JWG7 で検討された内容を含んだ次期改正版の発行時
もいくつかあったが、それは次期改正の検討において、
期は、IEC 62752 の制定版に規定する全ての要求事項
コメント内容を精査することとした。
が有効になる時期に合わせて発行するよう検討を進め
ることとした。
3.規格発行後の検討
今回、次期改正に向けて各国から提出されたコメント
内容を検討した。主な内容は、以下のとおり。
【今後のアクション】
この JWG7 は、EV・充電システム業界からの要求と、
・この規格を検討する上で「Portable」という言葉の定
屋内電路側の要求を、それぞれ鑑みながら検討している。
義に関して議論した。この IC-CPD は、可搬形でコ
ある特定の国の技術開発等が先行しており、日本もその
ンセント接続による給電ということもあり、EV に IC-
ひとつである。しかし、今後は、この分野がどのように変
CPD が乗り上げられることを想定した試験等、外的衝
化、拡大していくのかわからない部分でもあるので、技
撃に対する試験が規定されている。
術開発・標準化の動向を注視しておく必要がある。
一方で、使用時には壁にかけるなど一時的に固定
することで外的衝撃を受けにくい状態での使用を意
図しているもの(この議論の中では「Wall mounted」
「Movable」などの呼び方をされていた)も一部の国で
存在するため、この規格で規定されている外的衝撃等
の試験を適用したくないという意見が出された。
本件、IC-CPD の IEC 62752 ではなく、EV 充電シ
会議風景
[業界報告] 73
業界報告
あったが、各国からのコメント審議等に多くの積み残しが
IEC/TC61/SC61D/WG9
(家庭用空調機器の安全性)
ヒューストン会議 出席報告
出たため、今回の作業部会開催に至った。
* 1 CD:委員会原案。各国のコメントを求めることが目的。
* 2 CDV:投票用委員会原案。改正案について投票を行いコメントも求める。
エアコン安全 JIS 検討 WG
橋本
均
◇
【概 要】
【成果及び審議の概要】
10 月までの審議により、日本からの提案を含めて以下
のような提案内容についてほぼ合意を得ることができた。
開催会議 IEC/SC61D/WG9(家庭用空調機器の安全
性、微燃性冷媒追加のための適用審議)
開催日
2016 年 2 月 9 日 ㈫ ~ 11 日 ㈭
開催地
ヒューストン(米国)
参加者
7 カ国 15 名(日本含む)
Meier 議長・Baert 氏/ベルギー、Beggs 氏
大きな技術課題については既に審議完了となり、残すは
各国からの意見についての対応になっていた。
主な合意提案事項
1
2
最大充填量制限の緩和
マルチ室内機に対する充填量緩和
(ISO5149-1 A5 項の引用)
日本提案
日本提案
/ 豪 州、Hansen 氏・Richard 氏・Rodgers
3
自然・機械換気による充填量緩和
氏・Koban 氏・Tharp 氏・Goel 氏 / 米 国、
日本提案
一部ドイツ提案
4
ファンでの撹拌による充填量緩和
日本提案
5
着火源から除外できるリレー開口の規定追加
米国提案
6
着火源から除外できるリレー容量の規定追加(容量算
出の前提となる燃焼速度に対して湿度影響を考慮する)
日本提案
7
フレームアレスタによる防爆除外の規定追加
米国提案
8
許容表面温度緩和のための評価試験方法追加
米国提案
9
冷媒検知器への要求追加
日本提案
Schaumloeffel 氏/ドイツ、Kindblad 氏/ス
ウェーデン、So 氏/韓国、山口氏・片岡氏・
橋本(筆者)/日本
【出席背景・目的】
現在空調機器において、地球温暖化係数(GWP)が
小さい冷媒ガスへの転換が求められているが、これら低
10 同一空間とみなす連続した部屋の定義追加
米国提案
11 微燃性冷媒用マーク追加など表示要求に関する緩和
日本提案
12 サービス作業への要求に関する緩和
日本提案
GWP 物質は相対的に化学的安定性が従来冷媒に比べや
や低く、微燃性を有している。
しかし、今回の作業部会において前回会議で合意した
2010 年に米国の ASHRAE 規格で微燃性冷媒(2L)
項目 2 の ISO5149-1 A5 項の引用に関して米国より引用
が定義されたことを受け、その実用化に向けて、家庭用
項目の再確認を要求され、さらに一部修正(明確化)が
空調機の安全規格 IEC 60335-2-40 Ed.5 の、微燃性冷媒
必要との見解が示された。今回、マルチシステムからペ
使用機器への適用要求事項の追加や緩和のための検討を
アシステムへの条件拡大を含め、上限の充填量や振動値
行う作業グループ WG9 が 2011 年に設置された。米国
制限の数値化等、適用条件の明確化や安全対策の仕様
など地域によって空調機器の方式や形態が大きく異なる
について議論が行われ、合意した部分もあったものの時
ため、国際標準の審議に日本意見を反映させることは非
間的制約もあり多くの項目での議論にまで至らず、一旦
常に重要であり、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)
マルチシステムの冷媒充填量制約については本規格の対
では継続的に SC61D 会議および傘下の作業部会に出席
象から除外し、暗に ISO5149 の引用を必須化することで
者を派遣している。
合意した。しかし、この問題は非常に重要な内容であり、
2015 年 10 月に開催された WG9 シドニー会議におい
て委員会案(CD
*1
もしくは CDV
*2
)にまとめる予定で
欠席メンバーからの意見もあり別グループを立ち上げ継
続審議を行い、合意を目指すことになった。
上記以外の残項目になっていた各国からの意見に関す
◇ダイキン工業株式会社 空調生産本部 企画部
74 電 機 2016・April
る対応の議論を中心に行ったが、上記議論の影響もあり
時間切れとなった。付属書 GG 以降の意見対応が残項目
案する。WG9 としては “permanently” の代わりに
となったものの、今回、特にコメントが多かった表示や説
Part1 の 7.14 項の表示の耐久性要求を満たすこととす
明書に対する要求事項(7 項および附属書 DD)につい
ることで合意。
て完了しており次回の作業部会で審議が終了できる見通
しとなった。
以下コメントごとに主な審議内容を示す。
・日本からの JP02 コメント(充填量が低く特に対策を
必要としないような製品のマークを免除)については
一部合意されたが、A2L 以外にも影響する内容のた
1)5 項へのコメント審議
め、AHG15 の提案文書を併せて修正する。可燃冷媒
・附属書 LL の振動試験の際のサンプル数について文言
製品のうち、充填量が m1 を超えないものだけが梱包
修正し、少なくとも 2 つ準備することとの表現に変更
のマークは不要となるが、その他は梱包状態でも必要
された。
になる。
2)7 項へのコメント審議
・7.1 項への配管やサービスポートへの赤色マーキング
追加の提案について、既に Warning 表示もあり提案
・漏洩検知器を使用する機器に対する記載についての
提案はすでにアドホックグループ 15 でカバーされて
いるとの見解で拒絶された。
を拒絶することになった(現規格を維持)
。
・日本からの JP06 コメント “short service interval” が
・7.6 項 火炎マークについて A2L 冷媒機器に関して
サービス中であるが、サービスとサービスの間とも受
A3 と同じマークの使用をオプションとする提案に対
け取られかねないので、この表現を変更する提案につ
し、拒絶することとした。これにより A2L と A2・A3
いては WG9 の範囲を越えるということで形式的に拒
冷媒の対応が規格適用後明確となり、機器への適用に
絶された。A3 冷媒などを含めて、CDV ステージで再
は注意が必要。なおマーク下部に A2L 文言を追加す
度 editorial なコメントとして提出することとした。
る提案も不採用となった。Edition 6 への移行時には
マークの切替が必要になるので要注意。
3)22 項へのコメント審議
・漏洩検知センサーの機内取り付けについてダクトシス
・火炎マークについては Caution と Warning 表現があ
いまいになっていたが、より高い危険性を示す Warn-
テムの機器については必須(機外センサー不可)とす
ることとした。
ing に統一することとした。なお A2L 用のマークは
warning:low burning velocity flammable material
とした。
ま た Warning については要求に沿って背景色をオ
・22.122 項(空気通路から隔離された部品 [ 圧縮機室
など ] への対応)についてダクトシステムのみの対応
事項だったが全てのシステムに拡大した。
レンジにすべきとの意見があったが ISO3864-1 が規定
しているのは文字警告の背景色であり、黄色のままに
することとした(文字表記の背景色として danger:赤、
4)附属書 BB へのコメント審議
・表中の今回追加された Hot surface ignition tempera-
warning:オレンジ、caution:黄だが、△マークの背
ture に対し(A2L only)を追加するなど文言修正や
景色としては warning でも黄色が使われている)
。
誤記訂正を実施した。また Annex BB 全体が normative であることも確認された。
・マークを色なしでも可とする提案は拒絶された。なお
表示要求にある permanently では無限の寿命とも解
5)附属書 DD へのコメント審議
釈されかねないので、この表現を削除することも提案
・title の修正については本文(7.12 項)から可燃冷媒
されたが、A2L だけの要求ではないので WG16 に提
限定は明らかだが title への追加も問題ないとし、他の
[業界報告] 75
業界報告
変更も含めて合意した。
・DD2.1 項に GG9
(換気関連)
に関する記載要求を追加。
IEC/SC77A(低周波電磁両立性)/
WG1(高周波)/TFs
コルドバ会議 出席報告
・DD3 項への提案(JP22)は拒絶され、サービス前の
家電 EMC 技術専門委員会委員
確認項目として A2L での緩和は認められず、検知器
IEC/SC77A/WG1 エキスパート
前川 恭範
を用いて周辺冷媒の確認が要求される。
・DD3.6 項の “No smoking” 表示の要求については
A2L 冷媒は除外することになった。
◇
【概 要】
開催期間 2016 年 2 月 16 日 ㈫ ~ 19 日 ㈮
・DD9 項の修理、交換前の 2 回のパージ要求について、
A2L 冷媒については optional とし、
省略可能となった。
・DD10 項での気密確認がされた場合の耐圧試験の免
除提案(JP24)については拒絶され、修理後は気密
試験に加えて耐圧試験が要求されることになった。
開催場所 コルドバ大学/コルドバ(スペイン)
出席者
13 カ国 27 名
【背 景】
TFs(タスクフォース)会議は、年に 1 度開催され
る WG1 プレナリー会議に対して中間会議の位置づけ
となる。家電機器に適用される高調波電流限度値規格
6)附属書 FF へのコメント審議
・リークシミュレーションテストにおける許容値の緩和
(米国コメント)
は拒絶され 25%を継続することとした。
IEC61000-3-2(入力 16A 以下)
、IEC61000-3-12(入力
16A 超)及びその測定方法の規格 IEC61000-4-7 におい
て、改訂作業の進捗があり、また、2k ~ 150kHz におけ
【今後の予定】
る電磁環境の両立性レベルを検討している WG8 からの
活動状況について情報が提供されるので、逐次の対応及
今回の作業部会にて審議未了項目が残ったため、4 月
び状況を把握するために出席した。
に作業部会(2 日間)を開催することとなった。次回の作
業部会で各国からの意見対応の審議を完了し、別グルー
プでの検討事項(マルチスプリットシステムの充填量制
【会議結果】
約、UV 関連部品への規制追加、CO 2 システムへの規制
開催前にホストであるコルドバ大学から歓迎の挨拶が
追加、アドホックグループ 15)を含めて委員会案 CDV
あり、WG1 コンビナより感謝の意を表して応えた。また、
(もしくは CD)
として発行し、
FDIS
*3
ステージを経て最短
参加者が簡単に自己紹介を行った。
で 2017 年中旬に IEC60335-2-40 Ed.6 の発行を目指す。
1.TF-PAG / 高調波電流位相角の実態と今後の動向
(2 月 16 日 9:30 ~ 14:30)
* 3 FDIS:最終国際規格案。
・ドイツ電力のエキスパートが高調波電流(3、5 次調波)
の基本波電圧に対する位相角の実態調査結果を文書
化して発行するためのドラフトを用意しており、これ
を審議する予定であったが、ここにきて分析内容や検
討結果の活用についての議論が蒸し返されて審議が進
会議風景
76 電 機 2016・April
◇ダイキン工業株式会社 空調生産本部 企画部
まなかった。ドラフトについて意見があれば 2 ~ 3 週
間以内に提出し、それらは 6 月の WG1 ミラノ会議で
範囲に収まっていれば、位相範囲の条件を満たしているとする。限度値
表 4、5 の適用条件に使用する。測定方法は IEC61000-4-7 によるので、
高調波電流測定機に対する変更は回避できる。
審議されることとなった。また、文書の形態(TR:技
術報告書、TD:技術文書)についても併せて審議さ
れる。
・事前に米国の Prisco 氏(リーダー)が準備していた
改訂案、① エアコン試験条件のタイトル変更(ヒート
ポンプ技術利用機器への適用拡大)
、② 解釈シートの
2.TF2 / IEC61000-4-7(高調波電流測定方法)の
改訂作業(2 月 16 日 14:30 ~ 18:00)
・IEC61000-3-12 で用いる第 5 調波の測定方法は、こ
取り入れ(試験時に入力が 16A を下回る場合の対応)
、
③ 三相受電機器内で単相取りする機器に関する扱いの
明確化、については異論が無かった。
れまでにカナダと米国のエキスパートがそれぞれ提案
し、両方の内容を取り入れた折衷案でまとまっていた
・三相平衡機器の定義は現状のまままとし、IEC61000-
が、ここにきて、ドイツのメンバーから反対意見が出
3-2 と IEC61000-3-12 で統一する必要のないことを確
されて長時間にわたり議論が紛糾した。翌日の TF6
認した。
会議で引き続き審議することとなった。反対理由は、
提案された方法では IEC61000-3-12 で規定された位
相角の範囲を満たせない場合があり、測定機器の変更
に伴う費用の発生が予想されるためである。
4.TF9 / 周波数域 2k ~ 9kHz におけるエミッション
限度値の検討(2 月 17 日 14:45 ~ 18:00)
・IEC61000-2-1 で規定される電磁環境の両立性レベル
が決定次第、限度値について検討を開始することに
・第 7 項の記述見直し案(IEC61000-3-2/-3-12 におい
なっている。
ては、次数間高調波を含めるグルーピング測定を行わ
ないようにする。2014 年の WG1 デンマーク会議にお
・フランスの Berthet 氏 か ら、WG8 に お け る 2k ~
いて、筆者より提案)の審議は、先の議題の審議が長
150kHz の両立性レベルの検討状況が報告された。
引いたため、次回の WG1 ミラノ会議に持ち越された。
2k ~ 30kHz に おける 両 立 性 レ ベ ル に 関 する CD
ドラフトはフランスの Berthet 氏が準備することとなっ
(IEC61000-2-1)へのコメントが 3 月の WG8 東京会
ており、引き続きフォローする必要がある。
議で審議され、CDV に移行する予定。早ければ 4 月
に発行し、2017 年内に IS 発行の運びである。30k ~
3.TF6 / IEC61000-3-12 の改訂作業
(2 月 17 日 9:00 ~ 11:00)
150kHz の周波数域については合意に至っておらず、
引き続き検討中である。
・現在第 2 版が発行されており、これに対する修正 1 案
を審議している。なお、改訂作業が IEC 中央事務局
に登録されておらず、発行時期は未定である。
5.TF11/ 分散電源のエミッション規格の検討
(2 月 18 日 9:00 ~ 12:30)
・TR61000-3-15(分散電源の EMC)の IS(国際規格)
・第 5 調波の位相角測定方法および位相角が規定の範囲
化に伴い、IEC61000-3-16(高調波電流限度値)を作
に収まっていると判定する方法について審議を TF2 会
成するうえで、既存の限度値の見直し(特に THC の
議で引き続き審議した。結局のところ取りまとめには
緩和)を行っている。今回、フランスの Berthet 氏か
ならず、これまでに提案された方法に加えて、オラン
ら限度値案が提示された。
ダの Almering 氏から “Ducth dounut” と称する判定
方式*が提案され、併せて次回 WG1 会議で審議する。
* “Ducth dounut” 方式
IEC61000-3-12 において、第 5 調波の、Rsce = 33 の限度値(Iref の
10.7%)を超えるもののみを対象とし、その 99%以上が規定された位相
・AIC(アクティブインフィードコンバータ)には、電源と
高調波電流をキャンセルするアクティブフィルタの 2 つ
の機能があり、高調波のキャンセルについても検討を
行っていく。
[業界報告] 77
業界報告
6.TF10 / 家電機器に関する要求事項の検討
(2 月 18 日 13:30 ~ 15:00)
・昨年の WG1 北京会議で提案されたホットプレート/
9.次回予定
・WG1 会議:2016 年 6 月 6 日 ㈪ ~ 10 日 ㈮
ミラノ/イタリア
ホブの測定条件(IH 式、非 IH 式)を審議した。IH
式では、最大 THC が期待できる設定状態を確認し、
その設定にてクッキングゾーンを一つずつ動作させて
試験を行う。また、負荷となる水の量や容器のサイズ
【今後の展開】
高調波電流限度値規格 IEC61000-3-2 において、ホブ、
が規定される。これは、CISPR14-1 の測定条件を参
ホットプレートの測定条件がドイツと韓国のエキスパート
考にしているためである。
より提案され審議している。また、分散電源用の高調波
電流限度値規格案に関しては、電力側から限度値案が提
・冷蔵庫の測定条件における温度設定に関する記述に
示されたことから、今後、限度値についての審議が進ん
ついて、温度設定を最低温度に設定することを明確に
でいくと予想される。一般社団法人 日本電機工業会内の
する記述修正を行う。背景は、入力電力/設定温度の
関連委員会においては、エキスパートの派遣など積極的な
どちらを最低となるように設定するのか、という問い
参加をお願いしたい。
合わせが欧州の試験所からあったことによる。
・掃除機および高圧クリーナーの測定条件において、能
力可変式の場合に、最小入力が最大入力の半分以上
ある場合の試験方法(入力が最小設定で 2 回、最大
IEC/TC88/PT101( 風力発電システム
IEC61400シリーズ規格の再構成・作業会)
ロスキレ会議 出席報告
設定で 1 回)を NOTE として記述する。
風力発電システム標準化委員会
・以上は、6 月の WG1 ミラノ会議を経てドラフトが発
石山 卓弘
◇
行される(CDV となる可能性あり)
。
7.TF12 / IEC TR 61000-1-7 の作成
(2 月 18 日 15:20 ~ 18:00)
・TR61000-1-7 の DTR が可決された旨リーダーより報
告された。
・TR61000-4-40/Ed.1(デジタル式測定器における電力
【概 要】
開催会議 IEC TC88 Restructuring 61400-Series PT101
開催期間 2016 年 1 月 20 日 ㈬ ~ 1 月 21 日 ㈭
開催地
ロスキレ(デンマーク)
参加者
6 カ国 14 名(米国、デンマーク、スイス、
ドイツ、スペイン、日本)
諸量)の 1stCD(77A/909/CD)へのコメントの審議
を行ったが、20 ページあるうちの 3 ページしか審議で
きず、次回へ持越しとなった。
【出席背景・目的】
当会では、経済産業省より IEC/TC88(風力タービン)
8.TF7 / IEC 61000-3-2 の改訂作業
(2 月 19 日 午前)
・メンバーが電力関係者に制限されているため、参加でき
ず。
の国内審議団体として指定されており、国の支援を受け
つつ風力発電システムの国際標準化活動を推進している。
今般、2015 年 4 月に開催された IEC/TC88 総会での
審議事項を踏まえ、風力発電に関する IEC61400 シリー
ズ規格を再構築・整理する旨の決定が 2015 年 10 月にな
・WG1 コンビナより、TF10 で審議した内容が CDV と
して発行される可能性ありとの情報があった。
78 電 機 2016・April
◇一般社団法人 日本電機工業会 新エネルギー部 技術課 課長(当時)
されている。
IEC TC88 Restructuring 61400-Series PT101作業会
5.Time schedule
(Dr. Kenneth Thomsen・コンビナー)
は、デンマークからの新規提案として発足、今回の PT101
タイムスケジュールが示された。
作業会は第 1 回会議であるが、今後の国内における風力
・全 6 回の会議予定
発電の国際規格に関する審議・作業にも影響するため、
・頻度:1 年に 4 回
国内委員会への情報展開を図ることを目的に、出席した。
※次回以降の詳細日程は会議の最後に決定することと
した。
【審議事項】
1.Welcome(Dr. Kenneth Thomsen、コンビナー)
コンビナーの Kenneth 氏より、今回の PT101 会議の
概要(Agenda)と各国代表への歓迎の意が示された。
2.Recognition of participants
(Dr. Kenneth Thomsen・コンビナー)
メンバーそれぞれの自己紹介があった。
3.Presentation from TC88 chairman
(Dr. Jeroen van Dam)
TC88 議長の Jeroen 氏より以下の説明があった。
6.Proposed structure of document
(Dr. Kenneth Thomsen、Dr. Peter Hauge Madsen)
■新規格の構成
「high level document(最上位文書)
」を -101 として
作成する。
⇒今後も拡張しやすく、かつアップデートもしやす
い構成の文書にする。
⇒市場で使いやすい規格にする。
■グループ討議・作業
IEC61400 シ リ ー ズ 規 格 の 基 本となる構 成につ
い て 2 つのグ ル ープ に 分 か れ て、
「Design cycle
(Turbine)
」と「Project cycle(Wind plant)
」の検
■現状、TC88 の文書量が膨大になり、WG グループ
討を行った。
も増えた。
(全体で 615 人のエキスパート。MT1 は
86 人)また、認証に関する -22 規格は IECRE へ移
1 日目:規格全体のstructureとして
「Turbine Design」
と「Wind plant」の 2 点を整理。
行手続き中である。
それぞれプロセスに基づく項目をボックス化
■そこで、現状の文書を見直し、新たな構成に改め、
し、具体的な内容を取りまとめた。
アップロードがしやすく、61400 シリーズに関する多
数の文書管理がしやすくなるようにしたい。
2 日目:ボックスの項目や内容について、対応する具
体的な各規格を抽出し、取りまとめた。
4.Background and objectives
(Dr. Peter Hauge Madsen)
Peter氏より背景や対象につき、
概ね以下の説明があった。
■ IEC61400 シリーズは以下の内容が要求されている。
・論理的かつシンプルで使いやすい。
7.Plan of actions
(Dr. Kenneth Thomsen・コンビナー)
以下のアクションについて担当を割り振りし、進めるこ
とにした。
・全てのステークホルダーの必要性をカバーする。
・全てのライフサイクルをカバーする。
① Get input from conveners on structure in future
・明確で一貫性のあるスコープとする。
② Revise the 101 table of contents based on processes
③ Draft contents in “general approach”
[業界報告] 79
業界報告
④ Find general -1/-3 Put into 101 /”110…”/
“111”, “113”(align with -30 work)
⑤ Drafting an official plan
⑥ Drafting TC88/ IECRE plan
⑦ Drafting transition plan
【今後の予定】
Next meeting(Dr. Kenneth Thomsen・コンビナー)
Net meeting
March 31st 14:00 DK time
Meeting2‌June 15-16 Geneva ⇒会議後にメール
照会あり:June 16-17 に変更
Net meeting
August 23st 14:00 DK time
Meeting3
September 21-22 NREL
・References
・Terms and definitions
・Symbols and abbreviated terms
A. Principal elements
B. Design
Design methodology
・Wind turbine types
・Site suitability
・Safety methods and calibration
・Quality and quality management system
Design conditions
・Wind turbine classes
○ Wind conditions
○ Other environmental conditions
61400-XX Wind turbines – General requirements for wind turbine plants
○ Electrical power network conditions
・Site specific conditions
Scope:
○ Assessment of site
○ Assessment of wind conditions
○ ‌Assessment of other environmental
Annex to new project proposal: 88/550/NP
This part of IEC 61400 specifies the essential
general requirements to ensure the safety, reliability, performance, testing and interaction with
electrical power networks of wind energy systems
conditions
○ ‌A s s e s s m e n t o f e l e c t r i c a l p o w e r
network conditions
comprising one or more wind turbines installed on
land or off-shore during the full life from design to
Control system(performance, loads, protection)
decommissioning.
Structural design methodology
This standard is concerned with design of all
subsystems of wind energy systems such as design
conditions and site assessment, loads, control and
protection mechanisms, internal electrical systems,
mechanical systems and support structures, with
test, measurements and validation as well as with
manufacturing, transport & installation, operation
and maintenance and finally decommissioning.
○ Fatigue analysis
○ Stability
○ Critical deflection analysis
This standard is intended as the basic standard in
the 61400 series and defines the methodology and
・Ultimate limit state analysis
・Serviceability analysis
Loads
system for requirements to wind energy systems.
・Loads
・Design situations and loadcases
Proposed Content:
・Load calculations
・Scope
80 電 機 2016・April
Component design
・Blades
・Machine components
・Electrical components
・Support structure/foundation
IEC/TC116(電動工具の安全)
WG7/WG8プレトリア会議 出席報告
第 59/61/116 小員会 WG5 主査
成田 正己
◇
Supervisory control and communication
Plant electrical infrastructure
C. Test, measurements and validation
Design validation
・Safety and function tests
・Loads measurements
・Component tests
【概 要】
開催期間 2016 年 1 月 25 日 ㈪ ~ 29 日 ㈮
開催会議 IEC TC116 WG8(IEC62841-2-XX 手持式
電動工具の安全 個別規定)
(1 月 25 日)
IEC TC116 WG7(IEC62841-1 手持式電動
工具、可搬式電動工具、園芸工具の安全 Type performance
・Power performance
・Wind turbine acoustics
・Power quality
一般規定)
(1 月 26 日〜 29 日)
開催地
プレトリア市(南アフリカ)
参加国 米国(5)
、カナダ(1)
、英国(2)
、ドイツ
(4)
、ベルギー(1)
、スウェーデン(1)
、
南アフリカ(1)
、日本(1)
、事務局(1)
Site characteristics
・Wind measurements
・Marine conditions
・Soil conditions
Wind energy system performance
8 カ国 17 名
【出席背景、目的】
手持式電動工具、可搬式電動工具、園芸工具は製品の
・Grid compatibility
構造、試験方法が類似していることから、従来それぞれ
・System control capabilities
IEC 60745(手持式電動工具)
、IEC 61029(可搬式電
D. Manufacturing
Serial manufacturing
On-site manufacturing
E. Transport & Installation
Design for transport
Design for installation
Handling
Health, safety and environment
F. Operation & maintenance
Manuals
Training
動工具)
、IEC 60335(園芸工具)に分かれていた一般規
定を一つにまとめ、IEC62841-1 として 2014 年 3 月に発
行した。
また従来規格の個別規定の数は全部合わせると 40 に
及 ぶ(IEC60745-2-1 ~ -2-23、IEC61029-2-1 ~ -2-11、
IEC60335-2-77,-2-91, -2-92, -2-94, -2-100, -2-107)
。
現在 TC116 の上記委員会において、IEC62841-1 の
一般規定に整合したこれらの個別規定を順次作成してお
り、これまでに 11 個の個別規定が発行されている。
これらの規格が電気用品安全法の整合規格の元とな
る、将来日本の規格として採用する上で問題となるような
要求事項について事前に日本から提案を行い、国際規格
と日本の規格の整合を図る。
◇株式会社 マキタ 開発技術本部 開発技術企画部 規格管理課
[業界報告] 81
業界報告
【主な審議内容】
前回の会議で議論した反動トルクの測定方法の内
容を織り込んで、CDV 草案を発行することになっ
ている。初期のピークの後、最低 2ms 以上安定し
1.IEC TC116 WG7 会議(IEC62841-1:手持式電
動工具、可搬式電動工具、園芸工具)
たトルクのシグナルが得られる場合と、2 ms 以上
(1)バッテリの高電圧化(75Vdc → 250Vdc)に伴う充
安定したトルクが得られない(過負荷保護装置が働
電器規格 IEC60335-2-29 の出力電圧上限変更
いてシャットオフされているものと判断される)場
IEC62841 シリーズでバッテリの電圧の上限を
75Vdc から 250Vdc に変更する改訂を準備してい
合について、シグナルのカーブを示す図を織り込む
予定である。
るが、充電器の規格 IEC 60335-2-29 に関する最新
草案(61/4866/CDV, 61/4943A/RVC)では、出力
電圧が 120V となっている。
TC116 議 長 Eckerhard Stroetgen 氏 の 名 で、
(2)ジグソー、レシプロソー IEC 62841-2-11(116/246/
FDIS, 116/256/RVD)19.101 項 b)
(レシプロソー
のフロントハンドルのツバ)
TC61 の充電器の規格委員会に IEC60335-2-29 の
レシプロソーのフロントハンドルに要求される
規格を改定して出力電圧を 250V に上げるよう、正
6mm のツバの要求について、以下の記述内容の解
式に依頼書を提出する。今回、その文面を WG7 で
釈が不明確である。
チェックした。
・extend a minimum of 6 mm on either side of
(2)電動工具用スイッチの個別規定 IEC61058-2-6
(23J/394/CDV)
the teeth of the saw blade.
議論の結果、以下の通り修正することとなった。
23J/394/CDV のコメントは 12 月 15 日の電話会
議で議論され、23J/398/RVC が 12 月 25 日に発行
・extend a minimum of 6 mm circumferentially
された。大きな変更なく FDIS へ進む模様。正式な
on either side of the teeth of the saw blade.
規格が発行されるのは 2016 年 7 月の見込みである。
ブレードの面から横方向に 6mm 壁が延長されて
いることで認められる。解釈が明確となるような
(3)IEC 62841-1 改定(第 2 版)
バッテリの高電圧化に関する改訂(Annex C, K,
図を追加する。すでに正式な規格が発行されてい
るため、Corrigendum を発行する。
L の改定)と、IEC 62841-1 本体の改訂がそれぞ
れ議論されているが、CDV 草案までは審議して、
IEC 62841-1 Ed.2 を発行する際に最終的に一つに
する。それぞれの草案がお互いの内容に影響する可
能性があるため、最終的に一つにまとめる際に編集
会議を開催する予定である。
IEC ド キ ュ メ ン ト 116/266/DC に よ り、IEC
62841-1 の第 2 版を作成する上で盛り込んでほしい
(3)グラインダ、ポリッシャ、ディスクサンダ IEC
62841-2-3(委員会草案)
ロンドン会議に引き続き、今回も委員会草案の審
議を行った。
各種の用途別に使用されるアクセサリーのタイプ
と、そのアクセサリーに必要とされるガードの種類
をまとめた表の見直しを行った。
意見を各国から集めている。TC116 内で提示され
ている意見と各国からの意見を集約して、今後第 2
版の草案を審議していく。
19.101 項 (ホイールガード)
ガードの種類を以下の通り明確化した。
2.IEC TC116 WG8 会議
(IEC62841-2-XX:手持式電動工具)
Type A 両側面を覆った切断用ガード
(両側面覆う)
(1)ドリルIEC 62841-2-1(116/100/DC, 116/113A/INF)
Type B 通常の研削用ガード(3mm リップ付)
82 電 機 2016・April
Type C 研削・切断共用ガード(1/4 フロントカー
テン+ 3mm リップ)
Type D カップ砥石用ガード(砥石を 240 度覆う
ガード)
Type E 研削用ダイヤモンドホイールのガード
(コンクリートプレーナ)
A ガードに変換するパーツ。
3)Type C のガード
・55mm を超えるストレートグラインダ:Type A ま
たは Type B または TypeC
・取扱説明書で推奨される他のガードは、メーカー
から入手可能であること。
360 度覆う。Flush grinding( 壁際の
作業)のために 90 度の部分を開けること
従来と異なり、切断砥石を同梱するかしないかに
ができる。ただしガードは取り付いたままで
かかわらず、上記の通りアングルグラインダーには、
あること(取り外せてしまう構造は NG)
。
研削用と切断用の両方に対応したガードを同梱する
ガードの周囲はゴムやブラシなどでも
ことが必要となる。
よい(集じん機能を高める目的で、材料
との隙間をできる限り小さくするデザイン
としているため)
。
ガードは集じん機能付であること(自
己集じん、外部集じん機に接続のどちら
でも可)
。
は
19.102 項(ホイールとフランジの嵌め合い公差)
ホイールの取り付け穴とフランジのホイール取付
は
け部の嵌め合い公差が従来の規格では定められてい
ない。
現在、スピンドルの芯ずれ(eccentricity)に対
する要求はあるがこれだけでは不十分なため、要求
Type F 石工切断用ガード(ベース付の切断用
が新たに織り込まれる予定。
ガード)
ガードは集じん機能付であること(自
己集じん、外部集じん機に接続のどちら
でも可)
。
19.104 項(フランジ寸法)
砥石とフランジが干渉することを防ぐ、寸法要
求が織り込まれる予定であり、最近改 訂された
EN60745-2-3:2011+A13:2015 の 19.104 項 Table
19.101.1 項
Z108, Figure Z107 と同様の内容である。
「ホイールガードを外さずにホイールを交換できる
各国の砥石の寸法(JIS R 6211-14:2003, ISO
こと」の要求について、石工切断用の集じんガード
603-14:1999, ANSI B7.1, 構造規格等)と照らし
は、集じん機能を損なわないようにするためにホイー
合わせて問題ないか確認する必要がある。
ル交換の際にガードを外す必要がある構造を認める
べきという意見が出された。議論の結果、この要求
(4)マルチツール IEC 62841-2-XX(委員会草案)
の対象から Type F のホイールガードを除外する。
マルチツールの個別規定を作成予定。
今回は議題には上がっていたが時間がなく、議論
19.101.4 項
できなかった。次回以降引き続き審議する。
「製品タイプごとの同梱すべきガードの種類」の要
求について。
・55mm を超えるアングルグラインダーには以下の
いずれかのガードを同梱すること。
(5)その他
IEC60745 に基づいた製品の取扱説明書の一般注
意文に IEC62841-1 の内容を先行して使用してもよ
1)Type A と Type B の両方のガード
い旨の INF ドキュメントが正式に発行される。まず
2)Type B ガードと、Type B ガードを Type
は DC 文書で各国に回覧する。
[業界報告] 83
業界報告
IEC60745 の 個 別 規 定 が 全 て IEC62841 に 切
り替わるには長い期間が 必要である。その間に
IEC60745 と IEC62841-1 の一般注意文の二通りを
使い分けずに、IEC62841 の一般注意文に統一が可
能となる見込みである。
【今後の課題】
現在 IEC 62841 シリーズは一般規定と 11 の個別規定
が発行されたが、まだ 30 もの個別規定が従来規格から
移行されていない。また電動刈払機のように、従来個別
会場となったホテル
規定がなかった新しいカテゴリの製品で、新規に個別規
定を追加する予定のものも多くある。今後も多くの個別
規定が作成されていく中で、将来日本の規格として採用
する上で問題とならないよう、日本の規格と国際規格の
整合を図っていく。
【背景・目的】
IEC/SC121A/WG3 は、低圧開閉装置及び制御装置の
IEC 規格を制定している WG である。現在引き続き審議
されている規格改訂における主要な議題の一つは、低圧
【今後の開催予定】
開閉・制御装置の機能安全(Functional Safety)への対
応に伴う既存規格の改訂作業である。
具体的には当該 WG で扱う IEC 60947-5-1(制御回
2016 年
4 月 4 日 ㈪ ~ 8 日 ㈮ :WG7/8/9 サバンナ(米国)
路機器及び開閉素子−電気機械制御回路機器)
、IEC
4 月 11 日 ㈪ ~ 15 日 ㈮ :WG10 サバンナ(米国)
60947-5-5(機械的ラッチング機能を持つ電気的非常停
止機器)等を安全システム(機能安全用途)に組み込む
際に必要なファクターをどのように算出するか、試験・測
定方法を規定するのが的確かということが、議論され規
IEC/SC121A/WG3
(低圧開閉装置及び制御装置)
ニース会議 出席報告
定されようとしている。
このたび、定期会議がニースで開催されることとなり、
制御装置技術専門委員会
委員 前
田 育男
◇
機能安全対応その他に対する検討などの議論が行われる
ため、低圧開閉装置及び制御装置の規格審議内容の把握、
国内の低圧開閉装置や制御装置関連業界、加えて、国内
ユーザーにとって不合理とならない規格策定の推進を目
【概 要】
開催会議 IEC/SC121A/WG3(低圧開閉装置及び制御
装置)会議
開催期間 2015 年 9 月 29 日 ㈫ ~ 9 月 30 日 ㈬
開催地
的に参画した。
【会議の概要】
主に以下のとおりであった。
ニース(フランス)
参加者 米国(3 名)
、ドイツ(5 名)
、フランス(2 名)
、
日本(1 名)
4 カ国 11 名
1.IEC 60947-5-2:近接スイッチ・センサーの機能
安全について
LVD リスクアセスメント(LVD 指令< LVD 2014/35/
◇ IDEC 株式会社 国際標準化・知財推進センター
84 電 機 2016・April
EU >)で要求されているリスクアセスメントは、新しい
文書を検討する際に重要な文書である。当該規格に含め
れた製品は量産品と同じ生産ラインで製造され、さらに
るべき重要なリスクを WG のエキスパートにより抽出した。
1 品ごとに生産条件の記録が実現されていた。
2.IEC 60947-5-5:機械的ラッチ機能を持つ電気的
非常停止装置(非常停止スイッチ)
非常停止装置の ISO 規格、ISO13850 の最新版におい
て、無線で使用する場合の機能の有効/無効の表示につ
いての要求が加えられた。本件については引き続き議論
を続ける。
3.工業会活動(日本)の報告
会議風景
筆者より日本の標準化活動状況(スイッチ類の安全規
格に関する審議など)について報告した。
4.奈良会議(2016 年 4 月 6 日~ 7 日)の案内
IEC/SC121A/WG3 奈良会議を奈良春日野国際フォー
ラム甍で開催することにした。
IEC62109-1(太陽光発電用パワー
コンディショナ安全性)規格改訂作業
部会 出席報告
【今後のアクション】
太陽光発電システム機器分科会
委員 五十嵐
機能安全への対応を盛り込んだ改訂中の IEC 609475-1 は、来年 3 月に発行予定であるが、電気機械制御回
路機器全般の規格に位置づけられている、追加・改訂内
広宣
◇
【概 要】
容は、合理的かつ国内の関連業界、ユーザーにとって有
開催会議 IEC62109-1(太陽光発電用パワーコンディ
用な内容で、さらには、WG2 など同 SC(121A)内で
ショナ安全性)規格改訂作業部会
の異なる WG で扱われる接触器、スタータ等の要求事
開催期間 2016 年 2 月 16 日 ㈫ ~ 19 日 ㈮
項との整合性が維持され発行されるよう留意する。また、
開催地
非常停止スイッチの規格、IEC 60947-5-5 についても、
2016 年 3 月に発行予定であるが、電気機械装置類、制
CSA office- 13799 Commerce Parkway,
Richmond BC Vancouver(Canada)
参加者
5 カ国、10 名
御盤等に広く適用される非常停止用スイッチの規格であ
るため、当該規格改定 TF のリーダーとして、日本国内の
関連業界やユーザーの声を反映した形で、正式発行され
るよう引き続き主導する。
【出席背景・目的】
IEC62109-1 及び -2 は、太陽光発電システム用イン
バータの電気的安全性評価規格として 1998 年より審議
【その他】
を開始し、約 12 年の長期審議を経て 2010 年及び 2011
年に制定・発行された。当該規格は、太陽光用インバー
この機会を活用し、WG 委員の案内により、Industry
タに特化した安全性規格として初めて規格化されたもの
4.0 のモデル工場として新聞や雑誌に紹介されているシー
であり、審議途中において太陽光市場の急激な移り変わ
メンスのアンベルク工場を視察した。
りの影響を受けたことから、作成作業が難航し発行が遅
ここでは、Industry 4.0 の当面の目標とされる「1 品ご
とのカスタマイズ」が実現されていた。カスタマイズさ
◇一般財団法人 電気安全環境研究所
[業界報告] 85
業界報告
れた。現在、欧米を中心にアジア等の海外市場に流通し
出力端子用過電流として定義することとした。
ている太陽光発電用インバータは、適合が必須となって
いる。また、各国の気候・風土に合わせて追加要求事項
(3)型式試験電圧と値(7.5.2.2)について、非絶縁型イ
を制定し、当該規格と併用することで安全性を確認して
ンバータにおける基礎及び強化絶縁の試験電圧決定
いる。しかしながら、一部内容に誤記や試験評価方法等
方法が明確に示されていない。そのため UL62109 に
が不明瞭であることから、発行直後から改訂の要望を日
記載されている内容を引用し、明確にする必要がある。
本からも提出している。また、日本においても、本規格を
基本として JIS 規格の作成を審議しており、定期メンテ
(4)PV Earth Fault Protection(PV-EFP) に つ い て、
ナンス作業と合わせて JIS 策定作業へも情報を反映する
現在 UL62109-2 の規格審議が米国国内で実施され
目的として審議に出席した。
ており、それらの審議内容を反映しながら規格作成
を行うこととしている。その中でも、接地されたイン
【会議結果】
バータシステム用 RCD(漏電遮断器)の保護レベル
に関する検討を行ったが、保護レベルの設定には多
プロジェクトチームは、TC82 Expert member より
くの実際のシステムにおける技術的根拠を基にする
事前に選出されメンバーから構成される。今回の審議
必要があるため、再検討となった。また、TC23(電
は、事前に改訂内容や議論点について各メンバーから意
気用品)及び TC85(電磁気量計測器)では既に
見を提出し、その内容に従い審議を行いその結果を報告
これらに関する規格が制定されており、その規格に
する。また、IEC62109-1 の改訂作業は、類似規格とし
従った機器が生産されている可能性が高いことから、
て IEC62477(TC22:パワーエレクトロニクス)の内
TC82 としては太陽光用発電インバータ用に限定す
容を参照及び引用しながら進めることとした。さらに、イ
ることとした。
ンバータの感電保護等は、システム全体の構成で保護を
行っているため、他の IEC TS62548 等と協調を図らな
(5)機能安全試験について、最低限 SIL2 レベルまでの
ければならない。そのため、太陽光の地絡による保護要
対応が必要であることを決定し、インバータ制御用
求が明確でないことから、安全性規格の一部として PV-
ソフトウエアのバージョンを変更した際にも再確認が
Earth Fault Protection を新たに規格化することとなった。
必要であることを決定した。
1.IEC62109-1 試験項目の検討
(1)出力短絡試験(4.4.4.5)について、試験方法が明確
【今後のアクション】
でないことから各認証試験所において試験方法が異
本会議において現行 IEC62109-1 を基に問題箇所の修
なっている。また、インバータの出力端は、評価用
正案について検討を行い、後日修正が完了したドラフト
電源(系統)と接続されており、電源の短絡容量に
版がプロジェクトチーム内へ配布され、修正箇所につい
依存することが問題となっている。この試験は、本
て確認を行うこととした。また、インバータの安全性機能
来インバータが短絡電流に耐えられることを評価す
については、他の IEC 規格におけるシステム全体の要求
るものである。審議結果は、試験方法を明確にした
事項と並行して審議を進める必要があることから、他の
情報を付属書として作成することとした。
規格審議の進捗について情報収集を行いながら検討を進
める必要がある。PV-EFP 規格は Web 会議にて審議を
(2)出力過負荷試験(4.4.4.7)について、系統連系型イ
ンバータは出力過負荷状態とならないため、表題を
独立型インバータ過負荷試験へ変更するとともに、
86 電 機 2016・April
行い、2016 年 5 月までに NWIP(新業務項目提案)と
して発行する予定である。
理事会報告
2015年度(平成27年度)第4回理事会
日 時:2016 年(平成 28 年)3 月 17 日 ㈭
モノづくり、サービス産業の創出としてスマートマ
ニュファクチャリングの具体的推進等を計画している。
3.2016 年度(平成 28 年度)収支予算(案)
海老塚専務理事より、「2016 年度(平成 28 年度)
12:00 ~ 13:35
収支予算(案)」について説明があり、原案どおり
場 所:当会 4 階会議室
承認された。
事業活動収入は合計 14 億 800 万円、事業活動
議 事:
Ⅰ.議決事項
支出は合計 13 億 2,000 万円で事業活動収支差額は
8,800 万円となる。投資活動収入は 3,800 万円、投
1.会員異動(案)
下記企業の入会について、原案どおり承認された。
資活動支出は 1 億 900 万円で投資活動収支差額は
1)正会員
ダイヤモンド電機株式会社
マイナス 7,100 万円となる。予備費を含む当期収支
2)正会員
日立化成株式会社
差額は、1,160 万円の計画である。
3)賛助会員 ハイセンスジャパン株式会社
併せて正会員 1 社(新神戸電機株式会社)の退会
以上の入退会の結果、会員数は次のとおり。
正 会 員
賛助会員
合 計
平 27 年
11 月 26 日
報告
180 社
101 社
281 社
入会
2
1
3
上田総務部長より、「ラグビーワールドカップ
2019 財界募金」について説明があり、原案どおり
について報告があった。
種 別
4.寄付対応(案)
種別
退会 増減
変更
0
0
0
1
0
1
1
1
2
平 28 年
3 月 17 日
現在
181 社
102 社
283 社
2.2016 年度(平成 28 年度)事業計画(案)
海老塚専務理事より、2016 年度(平成 28 年度)
承認された。
5.2016 年度電機工業永年功績者表彰(案)
本松常務理事より、「2016 年度電機工業永年功績
者表彰」について説明があり、原案どおり 11 名の
受賞が承認された。
6.2016 年度電機工業技術功績者表彰(案)
本松常務理事より、「2016 年度電機工業技術功績
事業計画(案)について説明があり、原案どおり承
者表彰」について説明があり、原案どおり 88 件 40 社
認された。
169 名並びに 2 件 3 委員会 44 名の受賞が承認された。
2016 年度(平成 28 年度)の事業は、電機産業の
7.第 95 回定時総会開催の件(案)
持続的発展に向け、エネルギー・革新戦略の具体化
海老塚専務理事より、「第 95 回定時総会」につい
あるいは国内市場活性化とグローバル市場の需要取
て説明があり、開催日時、場所、議案等について原
込みのための戦略的施策に関する意見発信、新たな
案どおり承認された。
[業界報告]/[理事会報告]
87
Ⅱ.報告事項
1.2016 年度電気機器の生産見通し
海老塚専務理事より、
「2016 年度電気機器の生産
受賞講演
15:35 ~ 16:20
表彰祝賀パーティ
16:30 ~ 18:00
2)2016 年 5 月 17 日 ㈫
2016 年度(平成 28 年度)第 1 回理事会
見通し」について報告があった。
2016 年度の生産見通しは、重電機器が 3 兆 7,626
12:00 ~ 13:30
億円、前年度比 101.6%、白物家電機器が 1 兆 8,677
3)2016 年 5 月 31 日 ㈫
億円、前年度比 105.4%、重電・白物家電機器の合
第 95 回定時総会
10:30 ~ 11:20
計で 5 兆 6,303 億円、前年度比 102.8%となる見通
臨時理事会
11:25 ~ 11:35
しである。
2016 年度電機工業永年功績者表彰式
2.任期満了に伴う役員(理事・監事)改選について
上田総務部長より、役員(理事・監事)の任期満
了に伴う、次期役員の選任スケジュール及び手続き
11:50 ~ 12:10
懇親パーティ
12:10 ~ 13:20
会長交代記者会見
13:00 ~ 13:30
4)2016 年 9 月 16 日 ㈮
について報告があった。
3.電機業界に係る JEMA 関連報告
海老塚専務理事より、
「電機業界に係る JEMA 関
連報告」として、以下 5 テーマについて報告があった。
1)エネルギー革新戦略の概要と電機産業としての
2016 年度(平成 28 年度)第 2 回理事会
12:00 ~ 13:30
5)2016 年 11 月 24 日 ㈭
2016 年度(平成 28 年度)第 3 回理事会
取組み
2)COP21 パリ会議の最終報告と COP21 を受けた
12:00 ~ 13:30
6)2017 年 1 月 5 日 ㈭
2017 年 年賀交歓会(東京)
11:00 ~ 12:30
3)原子力発電を巡る最近の状況
1 月 11 日 ㈬
大阪支部
12:00 ~ 13:30
4)システムコントロールフェア(SCF)2015 開催報告
1 月 12 日 ㈭
福岡支部
12:00 ~ 13:30
5)電機関連の表彰事業審査結果
1 月 13 日 ㈮
名古屋支部
11:30 ~ 14:30
政府温暖化対策計画案
7)2017 年 3 月 16 日 ㈭
4.今後の行事等日程
2016 年度(平成 28 年度)第 4 回理事会
1)2016 年 4 月 15 日 ㈮
2016 年度電機工業技術功績者表彰式
88 電 機 2016・April
15:00 ~ 15:30
12:00 ~ 13:30
ュ
フラッシス
ニュー
平成 28 年経済センサス ―活動調査の実施について―
総務省
経済産業省
総務省・経済産業省では、平成 28 年 6 月に全国全て
かにするとともに、事業所及び企業を対象とした各種統
の事業所・企業を対象とした「平成 28 年経済センサス‐
計調査の母集団情報を得ることを目的として実施します。
活動調査」を実施いたします。
詳細は、以下、経済センサス‐活動調査キャンペーン
この調査は、全産業分野の売上(収入)金額や費用な
どの経理項目を同一時点で網羅的に把握し、我が国にお
サイトをご覧願います。
http://www.e-census2016.stat.go.jp/
ける事業所・企業の経済活動を全国的及び地域的に明ら
[理事会報告]/[フラッシュニュース] 89
統計
■ 電機・電子産業の生産額
(経済産業省「生産動態統計調査」による)
(単位:百万円,%)
2015 年 11 月分
機 種
金 額
2015 年 12 月分
前年同月比
金 額
2016 年 1 月分
前年同月比
金 額
前年同月比
発電用原動機計 ※
21,338
51.2
62,386
82.3
18,573
25.1
回転電気機械計 ※
69,630
86.6
71,509
80.8
64,290
72.9
静止電気機械器具計 ※
61,193
99.4
63,853
83.0
57,074
87.7
109,319
109.5
116,380
93.8
101,261
98.8
民生用電気機械器具◎
71,046
108.8
71,278
105.5
59,748
103.6
エアコンディショナ、フリーザ、除湿機◎
74,020
117.4
74,480
109.7
66,480
109.4
76,023
93.0
94,359
87.8
82,571
93.2
498,281
99.8
480,147
91.4
424,599
87.0
57,497
102.9
56,428
93.9
48,634
94.5
200,238
113.2
188,188
100.7
177,868
97.6
69,533
88.2
113,834
109.6
79,827
79.1
103,889
120.3
100,623
113.9
93,607
109.4
66,079
105.8
70,838
112.7
63,411
101.1
5,416
125.0
5,429
97.1
6,093
109.2
94,092
102.9
104,025
103.4
91,057
91.1
1,577,594
101.8
1,673,757
96.1
1,435,093
89.0
開閉制御装置・開閉機器計 ※
電子計算機及び関連装置
電子管・半導体素子及び集積回路
民生用電子機械器具
電子部品
通信機械器具及び無線応用装置
電球、配線及び電気照明器具
電池
事務用電子機器
電気計測器及び電子応用装置
合計
* 1:太字は JEMA 取扱い製品
* 2:※の和は重電機器の合計
◎の和は家電機器の合計(下表の家電機器数値とは、対象品目に一部違いがあることから合致しない)
■ JEMA 取扱い製品(重電機器・家電機器)の生産・輸出入実績
生 産
(経済産業省「生産動態統計調査」による)
2015 年 11 月分
2015 年 12 月分
2016 年 1 月分
金額(百万円) 前年同月比(%) 金額(百万円) 前年同月比(%) 金額(百万円) 前年同月比(%)
重電機器
261,480
92.2
314,128
86.0
241,198
73.2
家電機器
144,169
112.9
144,907
107.7
125,556
106.6
405,649
98.6
459,035
91.8
366,754
82.0
【 合 計 】
輸 出
(財務省「日本貿易月表」による)
2015 年 11 月分
2015 年 12 月分
2016 年 1 月分
金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%)
重電機器
原子炉およびその部分品
家電機器
輸 入
184,543,642
91.0
204,847,400
366,526
126.1
812,485
25,221,682
107.5
29,304,425
86.8
159,349,061
80.5
54.5
327,963
67.1
109.3
22,465,786
94.0
(財務省「日本貿易月表」による)
2015 年 11 月分
2015 年 12 月分(注)
2016 年 1 月分(注)
金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%)
重電機器
原子炉およびその部分品
核燃料要素
家電機器
117,851,855
120.2
99,319,441
93.5
99,625,230
83.3
3,058
−
5,672
−
0
0.0
0
−
0
−
0
−
87,033,288
109.9
79,762,115
101.4
75,567,904
90.8
(注)輸入の 2015 年 12 月分と 2016 年 1 月分は速報値
90 電 機 2016・April
品目別の詳細な統計データーは、JEMA ウェブサイトで
公開しております(ダウンロード可能)
。
www.jema-net.or.jp
■ 電気機器生産実績の推移
重電機器・家電機器 合計
億円
%
140
7,000
130
6,000
120
5,000
110
4,000
100
3,000
90
2,000
80
1,000
70
0 ,
15/1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
,
16/1
前年同月比(右目盛)
生産額
(左目盛)
8,000
0
年/月
重電機器
億円
%
140
7,000
130
6,000
120
5,000
110
4,000
100
3,000
90
2,000
80
1,000
70
0 ,
15/1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
,
16/1
前年同月比(右目盛)
生産額
(左目盛)
8,000
0
年/月
家電機器
億円
%
140
7,000
130
6,000
120
5,000
110
4,000
100
3,000
90
2,000
80
1,000
70
0 ,
15/1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
,
16/1
前年同月比(右目盛)
生産額
(左目盛)
8,000
0
年/月
[統 計]
91
電機
毎年、4 月に入ると緊張した新入社員の姿を、街角のあち
らこちらで見かけます。まだまだスーツ姿がぎこちないフレッシュ
2016 April 第783号
マンを拝見したり、全国の桜の開花宣言のニュースを聞いたり
頒価540円(本体500円)
すると、新年度が始まったと実感させられます。北海道にお住
2016年4月21日発行
まいの皆さまは、桜の開花は毎年 5 月頃までお預けのようで
すが、今年は 3 月に開通した北海道新幹線を利用して、一足
先に本州の桜の名所を巡って、すでに花見をされた方も多いの
発 行
でないかと思います。桜の開花前線の速度は、平地で 1 日当
たり約 30Km 北上すると言われています。この速度は、人が歩
,
THE JAPAN ELECTRICAL MANUFACTURERS ASSOCIATION
く速度 80m/ 分の約 1/4 の速度に相当しますので、九州地方
編集兼発行人 松本 俊博
で桜が開花した地点からゆっくりと北上すれば、歩きながら日
本全国の桜を見物することができるのです。トライしてみてはい
かがでしょうか?
■本 部・〒102-0082 東京都千代田区一番町17番地4
(電機工業会館)
ところで、北海道新幹線の開通により、九州から本州、北
海道まで新幹線で全国各地への移動が可能となりました。全
国各地が身近となり、特に地方都市では新幹線による経済効
果が大いに期待されております。昨年開通した北陸新幹線に
よる石川県、富山県の経済効果は、それぞれ 124 億円、88
億円との試算が出されていましたが、実際はそれを上回ったよ
うです。一方、北海道新幹線による道内の経済効果は年間約
140 億円になるとの試算も出されていますが、課題も多いよう
電話03-3556-5882 ファクシミリ03-3556-5891
(本誌編集部)
■大 阪 支 部・〒530-0004 大阪市北区堂島浜2-1-25
(中央電気倶楽部4階)
電話06-6344-1061 ファクシミリ06-6344-1837
■名古屋支部・〒460-0008 名古屋市中区栄2-10-19
(名古屋商工会議所ビル6階)
電話052-231-5211 ファクシミリ052-231-5610
■福 岡 支 部・〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-1-82
(電気ビル北館10階)
電話092-761-4778 ファクシミリ092-751-2094
です。北海道新幹線を利用しての東京と函館の移動時間は、
最短で 4 時間 2 分。移動時間について、4 時間の壁が越えら
です。北海道にお住まいの方々からすれば、東京への移動だ
酒屋
郵便局
麹町学園
女子高・中
園の『桜の花見』や、仙台の『牛タン・グルメツアー』などい
くらでもその利用価値は大いにあるのです。ものの価値観には
GS
3 番出口
自分本位の見方が出てしまいますが、その尺度を測る際、自
20
分の考えをあえて否定したり、他人の意見に耳を傾けてみると
します。
4 番出口
麹町小
けを北海道新幹線に期待しているわけではありません。弘前公
別の側面も見えてきて、新たな価値観を見出すことも出来たり
コンビニ
農済会館
新宿通り
麹町 4 丁目
至新宿
半蔵門線 半
蔵門駅
しまいましたが、これは東京から利用した場合の一方的な見方
大妻通り
さんざん北海道新幹線に対する否定的な意見を申し上げて
駅
り
麹町
ビ通 楽町線
有
っており、利便性も改善が必要になりそうです。
テレ
超えてしまうと、旅客は航空便を利用することが多くなるそうで
す。また、東京から函館への直通は一日あたり 10 本にとどま
一番町
日本
れなかったと言われていますが、新幹線での移動で 4 時間を
至九段下
女子学院高・中
至市ヶ谷
麹町 1 丁目
麹町 3 丁目
至永田町
パン屋
至内堀通り
至永田町
■地下鉄半蔵門線 半蔵門駅下車 4番出口徒歩3分
フレッシュマンの方々は、この 4 月から様々な局面で自分と
■地下鉄有楽町線 麹町駅下車 3番出口徒歩7分
は違った価値観とぶつかることになると思います。でも安心して
下さい。今までも異性とのお付合いで、価値観の差を抱えなが
ら続けられたではないですか。さらにその差を愛情に変えられ
たのですから、自信を持って会社生活を始めて下さい。
(matsumo.)
印刷所
港北出版印刷株式会社 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-7-7
JEMAウェブサイト www.jema-net.or.jp
92 電 機 2016・April
(JEMA会員については会費中に本誌頒価が含まれています。)[2016 ⓒ 禁無断転載]