理科教育や環境教育で目指してきたこと

理科教育や環境教育で目指してきたこと
三田市立三輪小学校
主幹教諭 加治木義和
1 取組の内容・方法
(1)丹有地区及び三田市立学校理科指導員として
平成9年から12年間理科指導員として活動した。主に、理科校内研究や理科実験実
技研修会で若手教員と理科指導の在り方についてともに学んできた。その中で、いつも
大切にしてきたことは以下の点である。
・児童の疑問をもとに学習計画を立てること
・児童の思考の流れを大切にした学習展開を図ること
・実験・観察では安全に留意すること
・少ない量で大きな効果の上がる実験であること
いくらすばらしい授業であっても児童が怪我をしてしまうと、それはだめな授業にな
る。そのためには、観察場所の下見や予備実験が不可欠である。そうすることで、児童
がつまずきやすい点が明らかになったり、より効果的な方法が見えてきたりする。研修
会を通して若手教員が理科好きになってほしいと願っている。
(2)阪神地区指導方法工夫改善事業に参加して(3 年「あたたかさと太陽の光」)
ア 研究課題
観察・実験を通して、子どもの疑問や矛盾・不思議が追究・解決される授業の構築
・学習意欲を高め、問題解決能力の育成を深める教材・教具の開発
・思考力を高めるワークシートの在り方について
・思考力を高める授業でのプロセスの在り方について
イ 教材・教具
単元導入時にキャンプ用のアルミ蒸着シートを活用し、ミニソーラークッカーを作
成した。表面を黒くしたフィルムケースをその中心に置き、水が温まるのを体感させ
た。その形状から、子どもたちは太陽の光が集められていること、日光が集まると物
が温められることを意識し、暖かさと太陽の光の関係に問題意識を持ち、学習意欲が
高められた。
ミニソーラークッカーで実験
ワークシート
ウ
ワークシート
3 年生にとって、ワークシートに自分の考えを書き込んでいくことは、労力のいるこ
とである。しかし、書く時間を十分に取り、ワークシートを活用する学習を続けるこ
とで、だんだんと無理なく予想を立て、調べ方を書き、自分の考えを書くことができ
るようになった。そして、思考のプロセスがよく分かるワークシートとなった。つま
り、子どもたちの思考の過程が子どもにも指導者にもよく分かり、思考力の高まりが
明確になるワークシートになった。
エ 思考力を高める授業でのプロセスの在り方
ワークシートを活用して話し合いを進めながら、課題へと高め、それをみんなで追
究していった。その結果、話し合いの過程とワークシートの活用が子どもたちの思考
力を高める手立てになった。
3 つの研究課題について検証を行ったが、それらを効果的に進めていくのは教師自身にか
かっている。教師自身が理科に興味を持ち、理科好きになれば自ずと子どもたちも理科好
きになるはずである。
(3)地域とともに環境学習
三田市、中でも本庄地域は、そばに武庫川が流れ、田や畑に囲まれた豊かな自然環境
に恵まれた地域である。保護者や地域の方の協力を得て、地域の自然環境を生かした学
習がいくらでも可能である。
ア 畝作り・苗の植え付け
4月、地域の方にお世話になり、学校の畑を機械で耕して頂いた、地域の農家、J
A兵庫六甲の方にお世話になりながら、野菜の種や苗を植えて育てた。
イ
野菜が育つ
収穫した野菜でカレー作り
収穫した野菜は、学校で調理してみんなで味わったり、全校生で持ち帰ったりした。
黒豆の種蒔きと植え付け
植え付けの指導を受ける
子どもたちも体験
苗床に黒豆の種をまき、10日程すると学校そばの農家の方の畑をお借りして苗の植え付
けを行った。4年生が道具を使って、ていねいに苗を植え付けた。
ウ 収穫・乾燥・味噌造り
秋も深まった11月の終わり。いよいよ黒豆の収穫。収穫した黒豆は1週間程度室内
収穫した黒豆の選別
黒豆の味噌造り
で乾燥させた。1月になり、JA兵庫六甲女性会の方々にお世話になり黒豆の味噌づく
りを体験した。造った味噌は冷暗所で寝かせ、10月頃味噌ができあがる。
エ 米作り、アイガモ農法体験
5年生が総合的な学習として米作り体験をした。5月の田植え、10月の稲刈り、脱
穀体験を行った。
また、3年生の総合的な学習としてアイガモ農法を体験させてもらった。実際に1羽
ずつアイガモを抱かせてもらい、それを水田に放した。その後、アイガモ農法の仕組み
や農家の方の自然再生の願いを学んだ。
5年生の田植え体験
アイガモを抱く3年生
オ ウド小屋作り・ウドの栽培と収穫
農家の方のお力を借り、子どもたちが竹やワラでウド小屋を作った。近くの農家の方か
らウドの苗を頂き、それを小屋の中に植え付け、栽培した。4月には70cmにも成長し
ウド小屋の前で
大きく成長したウド
たウドをたくさん収穫できた。
カ 池の整備
地域の方に機械で土を掘って頂き、底が土でできている大きな池ができあがった。メ
ダカやコイ、フナを放流した。市内の小学校のビオトープからガガブタなどの水生植物
を分けてもらった。
6年生の子どもたちの提案で、水温が上昇しすぎないように池の上にヒョウタンやヘ
チマの棚を作った。また、池の水をきれいにしたいという子どもたちの提案で、夏休み
に砂利、木炭、竹炭を入れた浄化装置を作り、設置した。
2 取組の成果
(1) 理科好きの子どもを育てる
理科校内研究や実験実技研修会を通して理科に対する先生方の意識が変わってきた。
教師が理科好きになることで理科好きの子どもが育つ。
(2) 指導方法の改善を図る
学習意欲や問題解決能力の向上に向けて教材・教具の開発を図ったことで、子ども
たちが意欲的に学習に取り組み、常に問題意識を持った学習ができた。また、ワーク
シートの工夫により、子どもにも教師にも思考の流れがよく分かる学びができた。さ
らに、話し合いを進め、課題へと高め、それを追究する学習過程とワークシートの活
用が子どもたちの思考力を高めることにつながった。
(3) 地域とともに子どもたちを育む
野菜作りや池の整備等を通して、子どもたちは多くの地域の方に支えられている。
学校と地域・保護者が一体となった学習が効果的であり、それがますます重要になる。
(4) 豊かな心を育む
野菜作りや池の整備等を通して、子どもたちは命を育む。野菜を毎日観察し、慈し
み育てることで、立派な野菜ができることを実感してきた。さらに、できた野菜を食
することで感謝の心を持つことができた。地域の中で生き物を育むことが子どもたち
の豊かな心を育む。
3 課題及び今後の取組の方向
理科学習や環境教育を充実させていくためには、指導者側の目標を明確に持ち、周到
な準備が欠かせない。それらを確実に行うことで、子どもたちは生き生きと学びを深め
ていくに違いない。今後とも若手教員の育成、理科好きな教員の育成に力を尽くしてい
きたい。
また、三田市の中でも特に環境に恵まれた小規模校の特長を生かした実践を行ってき
た。その成果が平成22年度兵庫県グリーンスクール表彰や、平成23年度全国学校ビ
オトープコンクール日本生態系協会賞の受賞、24年度エコスクール認定などに表れた。
今後さらに環境教育を進めていく上で、校内の学習環境を維持管理していかなければな
らない。それが子どもたちを心身ともに育てていく上で大切である。
以上の取組は自分一人でできることではなく、多くの方々の支えがあってこその実践
である。この場をお借りして感謝する次第である。