報告書ダイジェスト版(PDF) - 株式会社日本能率協会コンサルティング

第8回 新たな価値創りに関する実態調査
2016年4月18日(月)12:05~12:30
株式会社日本能率協会コンサルティング 技術戦略センター
本日の内容
Ⅰ.新たな価値創りに関する実態調査の概要
12:05-12:10
Ⅱ.新価値創造・企業の開発現場を取り巻くマクロ環境、
それに伴う研究開発部門の今後の果たすべき役割提言
12:10-12:15
Ⅲ.研究開発部門の目指すべき姿に対し、
12:15-12:25
実態調査から浮き彫りになった現場の現実・実態とのギャップについて
-1.研究開発部門と経営陣とのコミュニケーションギャップ
-2.社内・社外の価値共創パートナーとの連携ギャップ
-3.コスト削減における削減必要額と達成額・実績とのギャップ
Ⅳ.質疑応答
12:25-12:30
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Ⅰ.新たな価値創りに関する実態調査の概要
はじめに
昨今の日本経済は各種経済政策により企業の業績改善の兆しが見えるものの、
中国の景気減速をはじめとした新たな不安要素により不安定な状況に陥っている。
このような経済環境の中、国内各社では更なるコスト削減に取組むと共に、次の成
長に向けた新たな価値作りの方向性を模索していると考えられる。
このような環境変化を踏まえ、国内企業の研究開発現場と事業貢献のための取
組実態を把握するため、本調査を企画・実施した。国内企業約670社の研究開発
部門を対象とし、2015年7月から、2015年10月31日までに回答のあった149件の
質問票について集計、分析を行ったものである。
また、本調査は1994年から3年に一度実施しており、前回は2012年に実施した
「第7回 新たな価値創りに関するアンケート調査」に続くものである。過去の分析
結果との比較・考察も含めて、今後の企業における新価値創造に対する新たな視
点を提供することを目的としている。
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調査概要
1.調査の目的
国内企業の研究開発現場と事業貢献のための取組実態の把握
2.調査の方法
送付先 : 国内の上場・非上場の製造業約670社、1180事業所における
研究、開発、技術、設計、製造の部門長を中心とした
手段
: 郵送
回答数 : 149件
3.調査の内容
1)事業環境及び特性について
2)商品力について
3)商品企画について
4)コスト革新について
5)技術開発について
6)新事業について
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4
回答企業149社の内訳について
◆業種分布
業種
機械
電気機器
化学
輸送用機器
その他製造業
精密機器
食料品
鉄鋼・非鉄金属・金属製品
ゴム・窯業
繊維製品
医薬品
パルプ・紙
建設・不動産
石油・石炭製品
運輸・通信業
サービス業
その他
合計
◆年間売上高別内訳
件数
28
23
21
14
12
11
10
8
7
4
3
2
2
1
1
1
1
149
比率
19%
15%
14%
9%
8%
7%
7%
5%
5%
3%
2%
1%
1%
1%
1%
1%
1%
100%
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年間売上高
件数
比率
5000億円以上
37
25%
1000億円~5000億円
39
26%
500億円~1000億円
21
14%
100億円~500億円
38
26%
9
6%
5
3%
149
100%
100億円未満
未記入
合計
◆製品特性別内訳(複数回答)
製品特性
素材
部品
生産財最終商品
消費財最終商品
法人向けサービス
消費者向けサービス
その他
件数
回答率
39
26%
54
36%
57
38%
57
38%
26
17%
13
9%
6
4%
5
Ⅱ.新価値創造・企業の開発現場を取り巻くマクロ環境、
それに伴う研究開発部門の今後の果たすべき役割提言
機能・性能開発をすれども付加価値を創出できていない厳しい現実
開発を行い機能・性能をあげても、それを市場価格に転嫁できていない。
このギャップはさらに拡大傾向にあり、開発すれどもさらなる価格競争に陥る悪循環へ。
220
売上
200
粗利率
生産量
180
コスト
市場価格
160
機能・性能
140
120
100
80
60
40
1990
1994
1996
1999
2002
2005
2009
2012
2015
(1990年の水準を100とし、1994年:第1回~2015年:第8回調査結果を補正集計したグラフ)
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「モノ」はいいものをつくっている
回答企業が、商品力が低い企業が回答しているのかというと決してそうではない。
◆回答企業の対象商品における顧客・市場の評価と競争力
回答企業の84%が、顧
客・市場の評価は競合
他社を上回っている
回答企業の95%が、ダント
ツ、もしくは平均的な競争
力があるとしている
古きよき時代の製造業の暗黙の前提条件「よいものを沢山つくれば(高性能で安価)、売れる」
これがもはや通用しなくなり、よいものをつくるということだけでは、
儲けることがますます難しい時代になっている。
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事業価値創出ができている企業と、できていない企業との比較
新事業開発の成果についての質問で、「過去10年以内に立ち上げた事業が、期待する収益事業と
なっている」企業群を新事業における「成果創出企業」(62社)とし、それ以外を「成果未創出企業」
(82社)として、新事業開発におけるマネジメントの取組みを比較検証した。
新事業開発に取り組んでいる
とした回答企業のうち、43%
が、過去10年の新事業開発
で成果を創出できている
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これまでの成功要因は、リーダーシップ発揮と技術開発、市場調査
◆成果創出度合いと新事業開発の過去の成功要因
過去10年間の新事業開発の成功要因は、リーダーシップ発揮と技術開発、市場調査といった、
従来からのMOT(技術経営)のオーソドックスな取組みを確実にやっているかどうかであった。
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10
技術開発に成功することに加えて、ビジネスモデル構築がより重要となる
◆新事業開発の成功のために今後の重視すべき項目
今後の新事業開発では、従来からの王道のMOTマネジメントに加え、
「経営層の積極的関与による事業計画練り上げ」、「ビジネスモデルの工夫による収益源確保」
及び、「事業開発推進リーダーの組織的育成」を重視する傾向にある。
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このような時代における研究開発部門の果たすべき役割提言
<これまでの研究開発部門への役割期待>
●他社よりも一歩先をいく技術開発で、よいものをつくる
つまり、技術革新の起点となることがR&Dの役割
よいものを生み出せば、それが事業の好業績に直結していた
ものづくり・製造業にとってのまさに黄金時代
<これからの時代に研究開発部門が果たすべき役割提言>
ものづくりの黄金時代が終焉し、
どれだけよいものをつくっても、売れない時代へ
●「よいものをつくる」前に、競争ルール自体をデザインし、
●そのルールをイノベーションを起点にデファクト化することで、
●利益が必然的に自社に還流されていく仕組みを構築する
つまり、ゲームチェンジに貢献するイノベーション(≠技術革新)を
生みだすことが、これからのR&D部門の役割である
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Ⅲ.研究開発部門の目指すべき姿に対し、
実態調査から浮き彫りになった現場の現実・実態とのギャップについて
-1.研究開発部門と経営陣とのコミュニケーションギャップ
自社の商品力の競争力についての質問で、「市場・業界においてトップ水準である(ダントツ商
品)」と回答した企業を商品力(高)の企業群とし、それ以外を商品力(低)の企業群として、研究開
発部門の役割発揮度合いを検証した。
やはり、「よいものをつくる」点において、研究開発部門が果たす貢献度は大きい。
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自信を失いつつある研究開発部門
その一方で、過去の調査結果と比較すると、
研究開発部門の貢献度は減少の一途を辿っていることが判明した。
研究開発部門の社内プレゼンス低下、
それに伴う開発者の自信喪失、モチベーション低下が懸念される状況である。
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再び自社における研究開発部門のプレゼンスを高めていくためには
研究開発部門の貢献度の高い企業群と、それ以外の企業群における研究開発部門におけ
るマネジメントの取組み内容を比較検証した。
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経営・事業部との密なコミュニケーションがギャップを埋める鍵
「技術の先鋭化は勿論、積極的にコミュニケーションを取ること」
「よいものをつくる」点において、研究開発部門が活躍することは変わりがないが、
「よいもの」=「売れる」という図式が成り立たないなかで、次第に自信を失いつつ
ある実態が判明した。
その一方で、高い貢献を果たしている企業では、経営やマーケティング部門等の
事業部に対し、研究所が積極的にコミュニケーションをとっている企業ほど、寄与
できているとの認識が高まる傾向になることが明らかになった。
社内プレゼンスを高め、研究開発部門が再び自信を取り戻していくためには、一
歩先をいく技術開発という従来からの行動に加え、その技術の持つ事業としての価
値を、経営や事業部と、先行開発テーマの探索・構想段階から密にコミュニケー
ションをとる行動の強化が求められる。そして、ビジネス文脈のなかで新技術を自
社開発することの意味付け・社内オーサライズを取り付けることが重要である。
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-2.社内・社外の商品価値共創パートナーとの連携ギャップ
新しい競争ルールを構築し、ゲームチェンジの起点となるのは、やはり顧客にとって魅力的な新
商品である。自社の商品力の競争力についての質問で、「市場・業界においてトップ水準である(ダ
ントツ商品)」と回答した企業を商品力(高)の企業群とし、それ以外を商品力(低)の企業群として、
新商品企画の際のコンセプトづくりの取組みの違いを分析した。
既存の競争軸のなかで性能差をつけるよりも、従来の延長線上にはない
新機軸のコンセプトをつくる方が商品力(=競争力)に寄与する。
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新機軸コンセプト創出におけるマネジメントの取組み
従来の延長線上にない新機軸コンセプト創出には、競合他社の類似品をベンチマーキングし、差
をつけるといったやり方ではなく、多様な価値観・着眼点を受け入れ、新しい発想を得ることが重要
になる。この観点で、アイディア創出・採択のやり方について、質問した結果を分析した。
(n=123)
有効度平均
◆顧客に対する取組み
■オープンイノベーション
▲外部情報収集
●内部情報収集
4.5
◆顧客による設計
◆顧客訪問
◆リードユーザー法
◆エスノグラフィー
▲破壊的技術の活用
●研究開発部門との連携
■パートナー・サプライヤーの活用
▲周辺視野法
◆ユーザー
◆顧客とのブレスト
■外部専門家
●用途開発
■アイデア
グループ
◆フォーカスグループ
▲特許 コミュニティの活用
コンテスト
●顧客の声
■異業種連携の場作り
マイニング
の分析
■スタートアップ企業の活用
◆熱狂的
●社内
■外部の製品設計
グループの組織化
アイデア収集
■アイデアの公募
4
3.5
3
2.5
社内のみで出来ること
オープンイノベーションや
顧客を巻き込んだ活動
2.0
1.5
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
採用している企業の割合
外部から異質な価値観を導入する有効性は認識しつつも、実践できていない。
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開発コンセプトを、ビジネスのコンセプトに昇華させる取組みの状況
また、いくら斬新なコンセプトであったとしても、研究開発部門の独りよがりではなく、収益モデルとし
てはどう成り立たせるのかを含め、関連部門も納得するコンセプトにするための取組みを行っているか
どうかについて検証した。
0%
商品力(高)
商品力(低)
20%
4%
6%
40%
33%
60%
80%
37%
46%
100%
27%
39%
8%
(1) 商品企画と関連部門との整合の場がなく、企画の意図が他部門に伝わっていない
(2) 商品企画と関連部門との整合の場は有るが、検討が不充分であるため、企画の意図が他部門に伝わっていない
(3) 商品企画と関連部門との整合の場が有り、双方の部門で企画内容に対する検討を実施している
(4) 商品企画と関連部門との整合の場が有り、企画内容を関連部門全体が共有化し、全社一貫した商品開発が出来ている
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社内・社外の価値共創パートナーとの連携強化がギャップを埋める鍵
「自部門・自社だけの自前主義から脱却し、他部門の衆知・顧客活用
を加速せよ」
商品の競争力向上には、従来からのコンセプトの延長線上の高性能化競争だけ
ではなく、従来にはなかった新機軸のコンセプト創出が重要である。社外や部門外
の多様な価値観を組み合わせて商品企画を行うことで、新たな価値の創出につな
がる。あえて異質や違和感を受け入れるマネジメントを実践することが必要となる。
だが、アイデア創出法の採用状況を見てみると、社内のみで出来ることに留まっ
ている企業が多く、オープンイノベーションや顧客を巻き込んだ活動を採用できて
いる企業が少ない。また斬新なコンセプトが、ビジネスとして成功するためには、技
術開発の成功だけでは不十分であり、世の中になかったコンセプトをどのように
ユーザーに訴求し、売る仕組みと利益回収の仕組みをつくるのか、ビジネスモデル
検討がセットで必要となる。
自部門・自社のみの力で、今は存在していない新市場を形成することは難しい。
自前主義から脱却し、コンセプトづくりだけでなく、市場づくりにおいても共創パート
ナーの巻き込み・活用が重要になる。
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-3.コスト削減における削減必要額と達成額・実績とのギャップ
「よいものをつくる」、新商品の開発要素を顧客の付加価値に転嫁することが困難となっているの
に加えて、利益確保がますます難しくなっている要因として、原材料費や労務費などの製造原価、
また本社費など間接費の高騰もその要因として外すことはできない。
こうしたコスト削減の必要額に対し、どれだけコスト削減活動によって成果を出すことができてい
るのかを質問した結果を以下に示す。
回答企業の68%が、必
要なコスト削減目標額
を未達成である
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日常の小集団的改善活動では限界がある
次に、コスト削減目標の達成率別に、コス
ト削減に効果的であった取り組みについて、
比較検証を行った。
◆コストダウン達成率別の成果を上げた取り組み(複数回答)
その結果、従来の日本のものづくり
の強みであった「現場の日常改善活動
の活性化」では、コスト目標未達であり、
ものづくり現場のボトムアップによる強
みも、もはや通用しなくなりつつある厳
しい実態が浮き彫りとなった。
むしろ、コスト削減で成果があがって
いる企業群は、「コストダウンの対象
品目拡大」「目標設定水準向上」「タイ
ミングの前倒し」といった、設計や調達
先変更の自由度が高い開発の上流段
階から、コストダウン可能な選択肢を
広げて、高い目標水準を設定している
ことが判明した。
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各部門の日常的コスト削減努力に頼らず、全社活動で抜本的改革を
「現場改善だけではなく、固定費・間接費まで踏み込んだ
抜本的なコストダウンを」
従来、日本企業が得意としてきた現場改善によるコストダウンでは、特定の工程
の加工費を下げたり、特定の部品のコストを下げるなど、部分最適のコストダウン
に陥ってしまいがちである。また、各現場の担当者が踏み込みやすい変動費だけ
のコストダウンになってしまうケースも多い。そのため、その取り組みだけでは成熟
した市場環境での激しい価格競争では勝ち残ることは難しい。
よって、従来は聖域となっていた固定費や間接費までコストダウンの対象費目を
広げて、バリューチェーン全体最適の視点から、抜本的なコストダウンの可能性を
検討すべきである。例えば、製品構造を変えることで生産方式を抜本的に変えて
変動費・固定費を共に下げたり、部品自体の調達の必要性をなくしてしまうといっ
た可能性追及をすることが必要である。また、間接費まで削減するためには、内外
作見直しやサプライチェーン再構築にまで踏み込んだ検討をしていく必要がある。
このような全社活動で、事業構造の変革にまで踏み込んで抜本的にものづくりの
やり方自体を変えていくことが、日本のものづくりが生き残るために重要になる。
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お問合せ先
株式会社日本能率協会コンサルティング 技術戦略センター
〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋一丁目2番2号 住友商事竹橋ビル11階
TEL:03-5219-8050(代表) FAX:03-5219-8066(代表)
シニア・コンサルタント 近藤 晋
チーフ・コンサルタント 高橋 儀光
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