共創・共育・共感 尾鷲市教育長だより 2016.4.22.(金) 第173号 宿題は何のため? 教育現場での宿題は何のために出されるのでしょう。宿題のねらいは、大 きく2つに整理することができます。学力の定着をめざすための復習と授業 の理解を深めるための予習(授業に必要な準備をする予習)です。 1.学力の定着をめざす復習について 宿題のなかで、一番多いのは復習を目的としたものです。学校で勉強した ことを家庭学習によってしっかりと定着させようという考えです。 この宿題でよくみられるのは、反復と習熟です。反復練習することによっ て技能をみがき、習熟をとおして学力として定着させようというのです。 代表例は、算数の計算問題のようなドリルです。ドリルとは「反復練習」 と訳されていて、同一行動、同一内容の反復練習が中心になります。 ※反復練習には次の二つがあります! ① 同一問題の反復。同じ問題を日を違えてくりかえし出すこと。 「 あ す は い よ い よ に ゅ う が く し き だ 」( 傍 線 を 漢 字 に 直 す ) と い っ た 問 題 を 月曜日に出して、また水曜日にも出すというように。 ② 同 一 内 容 の 反 復 。 同 じ 内 容 を 「 2 × 9 」、「 9 × 2 」 と い う よ う に 変 え て 、 くりかえして出すこと。 算数では計算問題、国語では漢字の書き取りが多く、シンプルな宿題です。 算数や数学ドリルの宿題では、機械的な反復だけで終わってしまってはい け ま せ ん 。 例 え ば 、「( - 3 ) × ( - 3 ) = + 9 」 と い っ た 問 題 の 場 合 な ど 、 同じ符号を乗ずると、どうして「+」になるのか、その意味も理解していく こ と が 重 要 で す 。と く に 、算 数 ・ 数 学 の 分 野 で は 、「 で き る 」こ と と「 わ か る 」 ことが大切なのです。意味もわからずに機械的に反復するだけでは学力とし て定着しないことが多いのです。 第二は、学校の勉強で獲得した知識・技能を実際にくりかえす宿題です。 家庭科の時間に、目玉焼きをつくったとします。しかし、これはグループ 活 動 だ っ た の で 、「 今 夜 の 夕 食 に 家 族 の た め に 目 玉 焼 き を つ く る 」 と い う 宿 題 を出して、それぞれの子どもが、自分一人の力で目玉焼きをつくるといった 例です。習ったことを用いて技能を定着させるのがねらいです。 このように復習の宿題のもうひとつのポイントは、学校で勉強したことを その日のうちの宿題として出すということ。学校で身につけた知識や技能を 忘れないうちに、学習した記憶や体験のまだ生々しいうちに、その知識や技 能を用いてとりくむ宿題を出すということです。 2.授業に必要な準備をする予習について 授業の理解を深めるために、次のような取り組みがあります。 ①「読む」こと。 例 え ば 、「 明 日 勉 強 す る と こ ろ を 読 ん で く る 」 が あ り ま す 。 明日(または次の)の授業でとりあげる教材を読ませることで、授業への 予備的知識をもたせておこうというのです。テレビや映画の予告編的な効果 があります。 ② 「 調 べ る 」 こ と 。 い わ ゆ る 下 調 べ で す 。「 読 む 」 と 並 ぶ 予 習 の 代 表 例 で す 。 国語や英語などで多い宿題です。国語では「新出漢字の読み」をはじめ「難 語 句 の 意 味 調 べ 」、 英 語 で は 「 単 語 調 べ 」 な ど が あ り ま す 。 辞書を引かなくてはならないうえに、複数の語義から、この文脈ではどの 意味かを特定しなければならず、意外にたいへんな作業です。教えてくれる 人か、教科書準拠の参考書、いわゆる「とらの巻」があればいいのですが、 その備えのない場合は、たいへん時間がかかります。めんどうな宿題なので、 子どもたちのもっとも苦手とする学習です。 ③「観察する」こと。 例えば、明日の理科の授業で「春の花」を学習するような場合、子どもた ち に 「 家 や 家 の 近 く の 庭 に ど ん な 花 が 咲 い て い る か 見 て く る 」「 学 校 に く る と き、道ばたにどんな花が咲いているか見てくる」といった宿題を出します。 自然や社会の諸事実について観察させ、授業に役立てるためです。理科・ 社会・技術家庭などに多い予習です。 ④「資料を集める」こと。 授業に用いる資料・教材をあらかじめ準備させる宿題です。例えば、新聞 ・雑誌から「TPP」についての記事を集めるといった宿題。また「来週の 図画の時間に使うので、色や模様のついた紙を集めておきなさい」といった 教材準備の宿題など。 このように宿題のねらいの代表例は復習と予習なのですが、一般的にいっ て、小学校低・中学年では復習中心、それ以上の学年では、復習を重視した 宿題(例 復習7:予習3 といった宿題)がいいのではないでしょうか。
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