2016/ 為替トピックス 4/21 投資情報部 FX ストラテジスト 由井 謙二 新体制のトルコ中銀、まずは順調な滑り出し トルコ中銀は総裁が交代し、新体制で臨んだ4月の金融政策決定会合で、大方の予想通 り、上限金利である翌日物貸出金利を10.50%から10.00%に引き下げた。 声明で、トルコ中銀が物価安定を重視し、引き締め的な政策運営を続ける方針を示したこと が好感され、会合後のリラ相場は上昇した。 4月のリラの対ドル相場は地政学リスク等から上値の重い推移となった後、中旬からは切り 返し、今会合後には再び4/4に付けた昨年11月以来の高値水準に値を戻した。 米利上げペースは市場に配慮した緩やかなものになるとみられ、相対的に金利水準の高い リラのサポート要因となろう。リラ相場は当面、底堅い展開を想定している。 トルコ中銀は2ヵ月連 続で上限金利を引き 下げ トルコ中央銀行(以下、中銀)は、4/20の金融政策決定会合で、大方の予想通り、 政策金利である1週間物レポ金利を7.50%に据え置く一方、上限金利である翌日物 貸出金利については、10.50%から10.00%に引き下げることを決定した。上限金利の 引き下げは3月の前回会合に続き2ヵ月連続となる。 中銀は2015年以降、市場金利を上限金利付近の水準に誘導(引き締め的な政策 運営)をしており、現状では政策金利よりも上限金利が重要な位置づけにあるとされ ている。そのため、今回の措置(上限金利の引き下げ)は実質的な金融緩和とみら れている。 トルコの主要金利の推移 (%) 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 12/1 (週次:2012/1/6~2016/4/20) 12/7 13/1 13/7 市場金利(翌日物銀行間金利) 上限金利(翌日物貸出金利) 14/1 14/7 15/1 15/7 (注)トルコ中銀は資金供給オペ等を通じ市場金利を政策金利近辺に誘導 市場金利の変動を許容する幅として、上限金利と下限金利を設定 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 16/1 政策金利(1週間物レポ金利) 下限金利(翌日物借入金利) (年/月) 2016/4/21 為替トピックス トルコ中銀は引き締 め的な金融政策を維 持する方針を示す 今回の金融政策決定会合は、今月19日に任期満了となったバシュチュ前総裁の後 任として副総裁から昇格したチェティンカヤ新総裁の初の会合である。そのため、新 体制で臨む中銀の金融政策スタンスを見極めるうえで、声明に注目が集まったが、 ほぼ前回の会合を踏襲する内容となった。 中銀は声明で、国際的な金融市場の落ち着きを受けて、上限金利と下限金利の幅 を縮小させる取り組みを一段と進めることを決定したと述べた。物価に関しては、「イ ンフレ率は食料品価格を主因に大きく鈍化し、この傾向は短期的に続く」と指摘し た。ただ、「(エネルギーや食品等を除いた基調的な物価動向を示す)コアインフレ の改善は限定的」と述べ、金融政策に関して、「流動性の引き締めスタンスの維持 が必要」と明言。インフレ期待や企業の価格決定行動をふまえ、引き締め的な金融 政策スタンスを維持する方針を示した。 中銀が指摘した通り、4/4に公表された3月の消費者物価指数(CPI)は前年比 +7.46%と中銀の政策目標(前年比+5.0%±2.0%)の上限を引き続き上回ったものの、 2月の同+8.78%から大幅に鈍化した。食料品・非アルコール飲料が2月の同+8.83% から同+4.58%に鈍化したことが寄与した。ただ、コアCPIは前年比+9.51%と2月(同 +9.72%)からは鈍化したものの、改善の動きは緩やかにとどまった。 トルコの物価指数(前年比) (月次:2011/1~2016/3) (%) 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 インフレ目標(5%±2%) 1 コアCPI(3月:9.51%) 消費者物価(CPI、3月:7.46%) 0 11/1 11/7 12/1 12/7 13/1 13/7 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 会合後のリラ相場は 上昇 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 (年/月) 今会合後のトルコリラ(以下リラ)相場は対ドル、対円で上昇した。会合前には政府 サイドから大幅な利下げを求める声が出ていたなかで、中銀が物価安定を重視し、 引き締め的な政策運営を続ける方針を示したことが好感されたとみられる。新体制 となった中銀は、金融市場の信認を繋ぎ止めることに成功し、まずは順調なスタート を切ったといえよう。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/4/21 為替トピックス 外部環境の落ち着き を受けて、リラの対ド ル相場は底堅い動き を想定 リラの対ドル相場は米金利先高観測の後退等を背景に4/4に昨年11月以来の水準 を回復した。その後は、地政学リスクの高まり等から上値の重い推移となったが、中 旬以降は世界的なリスクオンムードの継続に支えられて切り返し、今会合後には再 び4/4に付けた高値水準に値を戻す展開となった。 今後のリラ相場は底堅い展開を想定している。まず、外部要因では、米利上げペー スは金融市場に配慮した緩やかなものになるとみられ、相対的に金利水準の高いリ ラのサポート要因になろう。リスクセンチメントが改善した2月中旬以降、海外資金が トルコへの証券投資に回帰する動きが継続している。他方で、国内要因では、地政 学リスクが警戒されることや、中銀の金融政策は物価に配慮した引き締めスタンスと はいえ、今後も上限金利の引き下げが予想されていることから、金利先安観測がく すぶり、上値を抑える要因になろう。対円では、200日移動平均線近辺では戻り売り に上値を抑制される可能性がある。当面は下値を固める動きになるとみている。 海外投資家のトルコ証券投資動向とリラ相場 (ポイント) (1ドル=リラ) (週次:2014/1/3~2016/4/8) (億ドル) 8.0 (%) 5 株高・債券高(金利低下) 100000 2.00 6.0 (週次:2012/1/6~2016/4/20) 110000 1.80 資金流入・リラ高 トルコの主要株価指数と10年国債利回り 6 株安・債券安(金利上昇) 資金流出・リラ安 2.20 90000 7 2.0 2.40 80000 8 0.0 2.60 70000 9 ▲ 2.0 2.80 ▲ 4.0 3.00 60000 10 ▲ 6.0 3.20 50000 11 4.0 ▲ 8.0 14/1/3 14/5/30 14/10/24 15/3/20 15/8/14 債券(左目盛) 株式(左目盛) 3.40 (年/月/日) 16/1/8 1.6 1.8 2.0 2.0 2.2 2.2 2.4 2.4 2.6 2.6 3.0 3.2 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 14/7 15/1 15/7 16/1 (年/月) 10年国債利回り(右逆目盛) トルコリラ円の推移 (日次:2012/1/2~2016/4/20) リ ラ 安 (1リラ=円) 60 55 50 50 45 45 3.0 3.2 14/1 55 40 ドルトルコリラ 100日移動平均線 200日移動平均線 13/7 60 2.8 2.8 13/1 イスタンブール100(左目盛) (1リラ=円) (1ドル=リラ) リ ラ 1.6 高 1.8 12/7 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 ドルトルコリラの推移 (日次:2012/1/2~2016/4/20) 12 12/1 トルコリラ(対ドル、右逆目盛) (注)株式、債券ともに4週移動平均 出所:トルコ中央銀行、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 (1ドル=リラ) 40000 トルコリラ円 100日移動平均線 200日移動平均線 40 35 35 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 (年/月) リ ラ 高 リ ラ 安 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/4/21 為替トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定の手 数料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸費用等)を ご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購入対価のみを お支払いいただきます。 各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれがあり ます。 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの遅 滞・不履行が生じるおそれがあります。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふま えて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状況によっ ては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目 論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160421-11 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4
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