アルク英語教育実態レポート

アルク英語教育実態レポート
Vol.6
[2016 年4月]
■■
■■
日本の高校生の英語スピーキング能力実態調査 Ⅰ
-3年間追跡調査における1年目調査レポート-
はじめに
株式会社アルクは 1969 年の創業以来、月刊誌『ENGLISH JOURNAL』、通信教育講座「1000 時
間ヒアリングマラソン」
、書籍「キクタン」シリーズなど、さまざまな英語学習教材を開発してきまし
た。近年は「英語スピーキング能力測定試験 TSST(Telephone Standard Speaking Test)」、「英語学
習アドバイザー資格認定制度 ESAC(English Study Advisors’ Certificate)」を独自に開発し、学習成
果の検証や継続的学習支援のサービスも提供するようになりました。
私たちは、語学学習者に成果をもたらす有益な方法を常に追求したいと考えています。そのために
アルク教育総合研究所を設立しました。
「アルク教育総研」は、学習行動が成果に結びつきやすくなる
ことを目指し、教材・学習法の研究、学習者個人・企業・教育機関のニーズ調査等を随時行い、その
結果を公表しています。
ここ数年、大学の英語入学試験に4技能試験を導入する動きが活発です。学校レベルで、あるいは
教師の個人レベルで、授業の中で「英語を話す」ためのさまざまなアクティビティが実施されてきて
います。しかし、その高校生の「スピーキング能力の実態」に関わるデータはまだ少ないのが実情で
す。
そこでアルク教育総研は、2015 年から 2017 年までの3年間、日本の高校生の英語スピーキング能
力の実態およびその背景について、TSST を使用した調査を実施することにいたしました。ここに1年
目の結果をまとめ、レポートいたします。英語教育関係各位の参考になれば幸いです。
1
◆本レポートの概要◆
■高校生
1.高校1年生の英語スピーキング能力:9段階評価でレベル3が 67.2%
・調査協力校の高校1年生の TSST レベル分布は、
「レストランでの食事の注文など身近である程度
定型的な受け答えは、暗記した表現を多く使ってかなりできる」レベル3が 67.2%と最も多い。
2.高校1年生の英語学習実態:スピーキングは学校で、単語・文法は自宅学習で
・96.1%の生徒が、授業中に 30%以上英語を使う場面があるが、どのような活動で英語を使うかは、
学校により異なる。調査した3校中、スピーキング能力が最も高い B 高校では、アンケートに回答
した生徒のうち 65.7%が、
「会話・ディスカッション」で英語を使うと答えており、他の2校の3
倍以上であった。スピーキング力が高い生徒が多いと、「会話・ディスカッション」を授業に取り
入れやすい、もしくはそうした活動を実施することで生徒のスピーキング力が上がる、といった関
係性が伺える。
・自宅でする学習は、
「単語・文法・教科書そのもの」に関する学習が多く、
「自分で文を作って話
す」ことにつながる学習はあまり行われていない。自宅学習に「自分なりの文を作り出す」活動を
取り入れることにより、スピーキング力のさらなる向上が期待できる。
■高校英語教師
1.高校英語教師の英語スピーキング能力:「英語で授業が可能」なレベル6以上が 60.0%
・英語教師の英語スピーキング能力は、
「多少の不自由さはあっても英語で仕事ができる」レベル(9
段階評価のレベル6以上)を満たす人が 60.0%。残りの 40.0%もほとんどがその1段階下のレベ
ルに集中している(レベル5が 33.3%)
。スピーキング力の面では「事前準備等をしっかりと行え
ば、英語で授業を行うことができる」教師が多い。
2.高校英語教師の英語授業実態:授業でもっと英語を使いたいが、不安も残る
・82.4%の教師が、授業中の発話の 25%以上を英語で行っている。
・授業での生徒の英語使用率は、教師と同じ(41.2%)か、それより少ない(35.3%)。教師が英語
を多く使っていると、生徒も英語を多く使う傾向がある。
・76.5%の教師は、授業で理想通り英語を使用できていないと考えている。その背景には、
「日本語
で説明しないと生徒が理解できたかどうか不安になる」といった生徒側の状況や「授業で教師の
話す英語は正しいお手本でなければならないが、常に正しい英語を使えるか不安」という教師の
考えなどがある。生徒と教師の「英語を使うこと」に対する意識を変えていくことで、授業中の
英語使用を増やし、生徒のスピーキング力を伸ばすことができる可能性がある。
2
◆目次◆
はじめに
p. 1
本レポートの概要
p. 2
1
2
調査概要
1.1
目的
p. 5
1.2
方法
p. 5
1.3
対象
p. 5
1.4
実施時期
p. 6
TSST について
2.1
TSST の概要
p. 7
2.2
TSST の評価方法
p. 7
2.3
TSST の評価基準と9つのレベル
p. 8
2.4
日本人全体の英語スピーキング能力のレベル分布
p. 9
2.5
社会人・大学生の英語スピーキング能力のレベル分布
p. 9
2.6
高校段階で目標とする英語スピーキング能力
p.10
■高校生への調査結果
3
4
調査協力校の高校1年生の英語スピーキング能力
3.1
調査協力校の高校1年生の英語スピーキング能力の分布
p. 11
3.2
調査協力校の高校1年生の日本人全体の中での位置づけ
p. 12
高校1年生へのアンケートに見る英語学習実態
Q1
あなた自身の受ける授業で、英語を使う場面はどの程度ありますか。
p. 13
Q2
「授業中、英語を使う」のは、具体的にどのような活動や場面ですか。
p. 15
Q3
あなたが実際に英語を使う(話す/書く、その練習をする)のはどんな場面ですか。
p. 19
Q4
学校の【授業以外】で、あなたが実際に英語を使う(話す/書く、その練習を
する)のはどんな場所・場面ですか。
p. 21
Q5
英語に関し【自宅】でどのような学習を主にしていますか。
p. 25
Q6
英語に関しどのような学習が大切だと思いますか。
p. 29
Q7
英語に対するあなたの考えをお聞かせください。
p. 36
Q8
あなたが受けた英語テストの「最新」の結果と受験時期を教えてください。
p. 41
Q9
TSST 受験時には今の実力を発揮できたと思いますか。
p. 43
Q10
TSST は英語のスピーキング能力が測れる有効な試験だと思いますか。
p. 46
Q11
TSST をまた受けたいと思いますか。
p. 49
3
■高校英語教師への調査結果
5
6
調査協力校の英語教師の英語スピーキング能力
5.1
調査協力校の英語教師の英語スピーキング能力の分布
p. 52
5.2
調査協力校の英語教師の日本人全体の中での位置づけ
p. 52
英語教師への調査に見る高校英語授業の実態
Q1
授業における教師自身の英語使用状況について。
p. 53
Q2
上記(Q1 の選択肢)を選んだ理由は何ですか。
p. 53
Q3
授業における生徒の英語使用状況について。
p. 56
Q4
授業における生徒の英語発話の「誤り」にどう対処していますか。
p. 57
Q5
授業における自身の英語使用状況についてどう考えていますか。
p. 58
Q6
授業における生徒の言語活動についてどう考えていますか。
p. 59
Q7
授業における日本人英語教師の英語使用についてどう考えていますか。
p. 60
Q8
仮に、実態(=教師の発話も生徒の言語活動も英語使用が少ない)と理想
(=教師の発話も生徒の言語活動も英語使用が多い)にギャップがある場合、
Q9
その理由は何だと考えますか。
p. 62
「Can-do リスト」をどのように活用していますか。
p. 64
Q10
ご自分の通った高校での、授業における教師の英語使用状況について。
p. 65
Q11
ご自分の通った高校での、授業における生徒の英語使用状況について。
p. 66
Q12
現在のご自身の英語のスピーキング力は主にいつ、どのように身につけましたか。
p. 66
Q13
TSST 受験時には今の実力を発揮できたと思いますか。
p. 67
Q14
TSST は英語のスピーキング能力が測れる有効な試験だと思いますか。
p. 69
Q15
TSST をまた受けたいと思いますか。
p. 70
Q16
TSST を生徒(高校生)に受けさせたいと思いますか。
p. 70
Q17
留学・海外経験についてお聞きします。
p. 71
Q18
英語能力に関する外部試験の受験経験と取得資格・スコア等についてお聞きします。p. 72
p. 74
まとめ
<参考>
p. 75
各種テストの能力指標一覧
4
1 調査概要
1.1 目的
1.
日本の高校生の英語スピーキング能力について調査し、実態を明らかにする。
2.
日本の高校生の英語スピーキング能力の背景となる学校の内と外での英語学習実態を調査・分析
し、高校の教育現場が授業方法や評価方法を検討する際の参考情報を提供する。
3.
調査データは個々の協力者からの了承の下、個人情報を伏せた形で大学の研究者と共有し、今後
の研究に生かす。
1.2 方法
1.
協力を依頼した高校3校の高校生及び英語教師に、TSST(Telephone Standard Speaking Test)
を受験してもらい、その結果をまとめ、分析する。
2.
TSST を受験した高校生及び英語教師には、英語学習や授業に関するアンケートにも回答しても
らい、その回答結果をまとめ、分析する。
3.
TSST およびアンケートは年1~3回、3年間実施し、経年変化を調査する。
4.
調査結果は大学の研究者と共有し、専門的見地からの分析を加え、公開する。
※TSST 受験の呼びかけ、アンケートの実施はすべて学校の英語教師の協力のもとに行う。
1.3 対象
今回の調査については、高校3校(本レポートでは「私立 A 高校」、
「公立 B 高校」、
「公立 C 高校」と
記載)の協力を得た。原則として、2015 年度の高校1年生「全員」を対象とし、3年間追跡調査する
(実際には、諸事情により A 高校では希望者のみの受験となった。また、C 高校では工業系の専門学
科の生徒は受験せず、普通科の生徒のみが受験した)
。個々の協力者からは、個人情報を伏せた形で調
査結果を分析・公表の対象とすることの承諾書を得る。
さまざまな面で特色の異なる3校に協力を仰ぐことで、大きな偏りなく、日本の高校生の実態に近い
姿をあぶり出すことを目指した。協力校のプロフィールは下記の通り。なお、偏差値はインターネッ
トから得られる複数の情報から、当研究所が独自に判断した。
■私立 A 高校
首都圏にある大学付属の私立高校。入学時の偏差値は 58。学業だけでなくクラブ活動や学校行事も盛
んで、希望者への語学留学など課外活動も充実している。卒業生のおよそ 90%が系列大学に進学する。
5
■公立 B 高校
地方にある公立高校。入学時の偏差値は 60。英語教育や異文化理解に重点を置く専門学科を有してい
る。卒業生のほとんどが国公立大学をはじめとする4年制大学に進学する。
■公立 C 高校
地方にある公立高校。入学時の偏差値は 49。工業系の専門学科を有しており、理科系科目の教育が特
に盛んである(今回の調査に参加したのは、p.5 に記載した通り、普通科の生徒のみである)。卒業生
のおよそ 70%が大学や専門学校へ進学し、30%が技術職等で就職する。
1.4 実施時期
TSST の受験およびアンケートの実施時期は下記の通り。
私立 A 高校…2015 年 11 月
公立 B 高校…2015 年7~8月
公立 C 高校…2015 年 11~12 月
6
2 TSST について
2.1 TSST の概要
英語スピーキング能力を測定するツールとしての TSST(Telephone Standard Speaking Test)は、
電話を使った英語スピーキング能力測定試験である。1997 年から始まった対面インタビュー型テスト
SST(Standard Speaking Test)の実績と経験からアルクが独自に開発し、2004 年から運用を開始し
た。法人団体受験を中心に利用が伸び、SST と合わせた受験者数は 2015 年 12 月時点で累計9万件を
超えるまでになっている。
TSST は団体受験、個人受験、いずれの形式でも利用できる。その概要は以下のとおりである。
1.
固定電話、携帯電話を利用して受験する。
2.
受験期間中は 24 時間受験が可能。
3.
受験時間は約 15 分。
4.
高校生以上の受験者が対象。
5.
質問項目は受験者ごとにデータベースからランダムに抽出され、全 10 問が出題される。
6.
10 の質問は、身の回りの具体的事柄について述べたり、何かの手順を説明したりするなど、難易
度の異なるもので構成されている。
7.
質問音声は日本語・英語両方の言語で流れる。質問の英語が聞き取れないために回答できないこ
とを防ぐためである。
8.
1問の回答時間は 45 秒。既定回答時間が経過後、次の質問が自動的に流れる。
9.
録音された回答音声を3人の評価官が個別に聞いて評価した後、コンピューター処理して一つの
評価を決定する。
10. 原則的に、受験期間終了後、約1週間で結果を Web 上で公開し、受験者が各自結果を確認する。
11. 法人団体受験の場合は、法人側担当者が受験者の結果一覧を Web からダウンロードできる。
2.2 TSST の評価方法
TSST は以下の4つの評価基準に基づいて「英語を使って何ができるか」を評価する。
言葉を使って何ができるか
聞き手にどれくらい正確に理解されるか
= 総合的タスク・言語機能
=正確さ(文法、語彙、発音、流暢さ)
単語・句・文・段落をどのように使っているか
どのような内容、状況について話せるか
=テクストの型
=内容範囲・コンテクスト
評価者は上記基準に基づき、発話全体を見渡して評価する(包括評価 holistic rating という)
。
7
2.3 TSST の評価基準と9つのレベル
Global Functions
Level
9
8
英語を使って
できるタスク
3
2
1
Text Type
参考
対応できる
状況/話題
使用できる
文章の構造
職場や生活の場で
できること
文法には小さな誤りが 個人的あるいは一般的 パラグラフを使って論 海外駐在で仕事をする
時にあるが、意思疎通 な話題について具体的 理的なまとまりのある /ネイティブスピーカ
の妨げにはならない。 に話せる。
話ができる。
ーと時事問題ついて議
母語話者に近い発音。
論する/人前でスピー
母語話者なみの流暢
チをする。
さ。
詳細な描写、比較、説
明がかなりできる。複
雑な事態にある程度対
応できる。
複雑な構文では時に大
きな誤りがあるが、簡
単な構文では殆ど誤り
はない。日本語的発音
が混じることもある
が、かなり流暢。
Level 6 と同じ。
基本的には Level 6 と Level 6 と同じ。
同じだが、文法的な正
確さや発音の良さの点
でより優れていること
がある。
簡単な質問ができ、答
えられる。社会生活の
維持に必要な対話がで
きる。
複雑な構文ではよく大 主に自分自身と身近な センテンスを使って話 海外出張で困らない/
きな誤りがあるが、簡 出来事に関する話題に すことができ、複雑な 商品やサービスの問題
単な構文では誤りは少 ついて話せる。
構 文 を 使 う こ と も あ 点を指摘し、苦情を言
ない。日本語的発音が
る。
う/商品やサービスの
多いが、時には流暢で
問題点を指摘し、苦情
ある。
を言う。
Level 4 と同じ。
基本的には Level 4 と Level 4 と同じ。
同じだが、文法的な正
確さや発音の良さの点
でより優れていること
がある。
殆どの個人的あるいは 複雑な構文を使って話 海外出張で仕事をする
一般的な話題について ができる。パラグラフ /問題があった時に解
具体的に話せることが を使うこともある。 決策を提案する/自分
多い。
の業務について詳しく
説明する。
基本的には Level 6 と
同じだが、時にはより
優れた構文の構成力が
ある。
海外出張で困らない/
商品やサービスの問題
点を指摘し、苦情を言
う/商品やサービスの
問題点を指摘し、苦情
を言う。
基本的には Level 4 と
同じだが、時にはより
優れた構文の構成力が
ある。
自分の業種や業務につ
いて簡単に概要を説明
する/入手したい情報
を得るために質問する
/道案内をする。
社会生活の維持に必要 複雑な構文では頻繁に 主に自分自身と身近な センテンスを使って話
な受け答えが何とかで 大きな誤りがあり、簡 出来事に関する話題に せるが、単純な構文が
きる。
単な構文でもたまにあ ついて何とか話せる。 殆どである。
る。日本語的発音と遅
いスピードのためわか
りにくいことがある。
自分の業種や業務につ
いて簡単に概要を説明
する/入手したい情報
を得るために質問する
/道案内をする。
サバイバルに必要な受
け答えもかなりできる
が、暗記した表現が多
い。
簡単な自己紹介をする
/レストランで食事を
注文する/道に迷った
時に人に助けを求め
る。
5
4
Context/Content
時制を使いこなし、詳
細な描写、比較、説明
ができる。複雑な事態
に対応できる。
7
6
Accuracy (grammar,
pronunciation,
fluency, etc.)
正確さ(文法、
発音、流暢さなど)
簡単な構文でも大きな
誤りが時々ある。強い
日本語的発音と繰り返
しや長い沈黙のため母
語話者にはわからない
ことがある。
主に自分自身と身近な
出来事に関する話題に
ついて話せることが多
い。
センテンスを使って話
すこともあるが、句や
未完のセンテンスが多
い。
暗 記 し た 表 現 が 使 え 簡単な構文でも大きな 日常生活の話題につい 単語や句が中心で、セ 決り文句の挨拶を交わ
る。物事を列挙するこ 誤りがよくある。強い て断片的に話せる。
ンテンスが混じる。 す/食べ物や身近なこ
とができる。
日本語的発音と繰り返
とについての好みを表
しや長い沈黙のため母
す。
語話者にはわからない
ことが多い。
暗記した限られた表現
が使える。物事を簡単
に列挙することができ
る。
大きな誤りが簡単な構 日常生活の話題につい 語 や 句 が 殆 ど を 占 め
文でも頻繁にある。強 て非常に断片的に話せ る。
い日本語的発音と繰り る。
返しや長い沈黙のため
母語話者にはたいてい
わからない。
8
挨 拶 さ れ た ら "Hello"
や"Hi"と返す/感謝を
示 す た め に "Thank
you"と言うことができ
る。
2.4 日本人全体の英語スピーキング能力のレベル分布
下の図は大学生以上の受験者 23,218 人における TSST のレベル分布を示したものである。約4割を
占めるレベル4が最も多く(39.1%)、1つ下のレベル3(22.9%)、1つ上のレベル5(21.9%)がそ
れぞれ2割強を占める正規分布のような形をしている。
TSSTレベル分布
40%
30%
20%
10%
0%
TSST
人数
割合
1
2
1
2
3
4
5
6
870 5,306 9,087 5,092 1,711
3.7% 22.9% 39.1% 21.9%
7.4%
44
0.2%
3
4
5
6
7
8
9
7
662
2.9%
8
287
1.2%
9
計
159 23,218
0.7% 100.0%
2.5 社会人・大学生の英語スピーキング能力のレベル分布
レベル分布の内訳はどのようになっているのだろうか。以下は、大学生以上の受験者 23,218 人のレ
ベル分布を、受験者カテゴリー(「企業団体受験者」「大学団体受験者」「その他受験者」)別に示した
グラフである。なお、
「その他受験者」は主に個人受験者を指している。
受験者カテゴリー別 TSSTレベル分布
企業
大学
その他
50%
40%
30%
20%
TSST平均
全体
4.23
企業
4.14
大学
4.21
その他
4.97
10%
0%
受験者カテゴリー別
TSSTレベル分布
人数
企業
割合
人数
大学
割合
人数
その他
割合
1
2
3
4
43
0.2%
0
0.0%
1
0.0%
2
832
4.3%
27
1.6%
11
0.5%
3
4,649
24.1%
384
23.0%
273
12.1%
4
7,642
39.6%
743
44.4%
702
31.0%
1
5
6
TSST
5
6
4,165 1,238
21.6%
6.4%
341
117
20.4%
7.0%
586
356
25.9% 15.7%
9
7
8
9
7
427
2.2%
42
2.5%
193
8.5%
8
184
1.0%
11
0.7%
92
4.1%
9
101
0.5%
8
0.5%
50
2.2%
計
19,281
100.0%
1,673
100.0%
2,264
100.0%
全てのカテゴリーに共通するのは、レベル4が最も多くなっているという点(「企業」が 39.6%、
「大
学」が 44.4%、
「その他」が 31.0%)である。p.8 で見た通り、レベル4は「単純な構造ではあるがセ
ンテンスを使って話せ、社会生活の維持に必要な受け答えが何とかできる」ようなレベルである。ま
た、
「企業」
「大学」に限って言えば、レベル3~5に受験者の8割以上が集中しており、それぞれ 85.3%、
87.8%を占める。海外赴任や留学に出て何とかやっていけるのはレベル6以上であるが、レベル6以
上は、企業・大学それぞれの受験者のうち1割強しかいない(企業が 10.1%、大学が 10.7%)
。これ
は、社会人や大学生が仕事や学業で英語を話す必要性に迫られた場合、その9割近くが、かなり苦労
しつつ取り組むことになることを示している。
なお、
「その他」に比較的レベルの高い受験者が多いのは、積極的に自分のスピーキング能力を調べ
たいという個人のほか、何らかの必要があって TSST を受験した英語教師や企業の人事担当者などが
含まれているためと思われる。
2.6 高校段階で目標とする英語スピーキング能力
留学や、社会に出てからの英語を必要とする業務を大きな支障なくこなすためには、レベル6以上
のスピーキング力が必要である。大学等でスピーキング力を向上させることを勘案しても、高校卒業
までに、少なくともレベル4を目指したい。この目標を実現するためには、高校段階でどのような学
習を行うべきなのだろうか。
この疑問に答えるため、まずは高校生の英語スピーキング力の現状と、その背景となっている学習
状況を正しく把握することが肝要である。次章以降では、今回の高校1年生に対する調査結果を分析
した上で、今後、どのような学習によって生徒のスピーキング力を向上させることができるのか、考
察したい。
10
3 調査協力校の高校 1 年生の英語スピーキング能力
3.1 調査協力校の高校1年生の英語スピーキング能力の分布
2015 年度の調査では、私立 A 高校、公立 B 高校、公立 C 高校の1年生のうち、各 97 人、136 人、
91 人の計 324 人が TSST を受験した。評価不能となった1人を除く 323 人のレベル分布は下記の通り。
高校1年生 TSSTレベル分布
80%
67.2%
70%
60%
50%
40%
30%
18.6%
20%
10%
12.7%
0.0%
1.2%
0.0%
0.0%
0.3%
0.0%
5
6
7
8
9
5
6
7
8
9
4
1.2%
0
0.0%
0
0.0%
1
0.3%
0%
1
TSST
人数
割合
2
3
4
1
2
3
4
0
41
217
60
0.0% 12.7% 67.2% 18.6%
計
0
323
0.0% 100.0%
レベル2~4が 98.5%と大半を占め、中でもレベル3が 67.2%と最も多い。レベル3は「レストラ
ンでの食事の注文など身近である程度定型的な受け答えは暗記した表現を使ってかなりできるが、句
や未完のセンテンスも多い」ようなレベルである。次いで多い、一段階上のレベル4(18.6%)は「簡
単な文を作ることができ、自分の学んでいることや学校生活について簡単に概要を説明するなど、社
会生活の維持に必要な受け答えが何とかできる」レベルであり、一段階下のレベル2(12.7%)は「決
り文句の挨拶を交わしたり、単語や句を使って日常生活について断片的に話したりできる」ようなレ
ベルである。「文法的な正確さなどの点でレベル4より優れている」レベル5、
「複雑な構文を使って
話ができる」レベル8も、少数ながら存在する。
学校別の TSST レベル分布についても見てみたい(次ページのグラフ参照)。p.12 以降で紹介する、
生徒のアンケート分析と関わる要素となり得るからである。レベル3が最も多い点では3校とも共通
している。しかし隣接するレベルの割合を見ると、A 高校、C 高校では、レベル2が約 20%でレベル
4が約 10%とレベル2が多いが、B 高校ではレベル4が多く 30%を占め、レベル2はほとんどいない
という違いが見られた。
TSST のレベル平均も次ページの表に示した。高校1年生全体では 3.10 で、このことからも、今回
の調査対象の高校1年生の代表的なレベルは「3」であると言える。
11
学校別 TSSTレベル分布
私立A高校
公立B高校
公立C高校
80%
70%
60%
50%
40%
TSST平均
高校1年生全体
私立A高校
公立B高校
公立C高校
30%
20%
10%
3.10
2.87
3.40
2.90
0%
1
2
3
4
5
6
7
8
9
3.2 調査協力校の高校1年生の日本人全体の中での位置づけ
TSST レベル2~4の取得者が大半を占める調査協力校の高校1年生は、日本の英語学習者全体の中
ではどのような位置を占めているのか。これからの英語学習によってどのようなレベル分布に変化し
ていくことが予想できるのか。大学生、社会人の TSST レベル分布と比較してみたい。
p.9 で示したとおり、大学生、社会人の TSST レベル分布はほぼ同じ形である。約 40%を占めるレ
ベル4をピークとしてレベル3、レベル5がほぼ同じ 20%強を占めており、正規分布のような形をし
ている。
調査協力校の1年生全体の分布では、レベル3がピークで 67.2%である。次に多いのがレベル4の
18.6%、それにレベル2の 12.7%が続き、他のレベルはごく少数にとどまっている。これは、生徒に
よるレベル差が少ないと言える。大学生、社会人の分布と比較すると、最多グループより上の層(=
レベル4)が、その下の層(=レベル2)よりやや厚くなっているのが特徴である。今後さらにレベ
ルの向上を図るのであれば、TSST の評価基準の観点から、以下のような学習行動が有効と思われる。
①
単語・句を使って断片的にコミュニケーションを行っているレベル2グループが、発話の機会を
増やし英語を声に出すことに慣れると同時に、基本的なセンテンス構造を習得する
②
センテンスを作って話そうとして途中で止まってしまうレベル3グループが、短いセンテンス中
心の発話練習をする
③
基本的にセンテンスを作って発話できているレベル4グループが、使う1文をさらに長くする、
単文に加え重文、複文なども交えることなどに留意しながら、単位時間当たりの発話量を増やす
(=流暢さを向上させる)練習をする
高校卒業時までに多くの生徒がレベル4に到達すれば、これまでに TSST を受験した大学生・社会
人と類似したスピーキング力の分布を持つことになる。その後大学等でさらに学習を重ねれば、社会
に出るときまでには、
「多少の不自由さはあるものの英語を使って仕事ができる」レベル6以上の能力
を目指すことも可能であろう。
12
4 高校1年生へのアンケートに見る英語学習実態
学校の内と外での英語学習実態が、高校1年生の英語スピーキング能力にどのような影響を及ぼし
ているのかを探るため、TSST 受験者にはアンケート調査にも協力してもらった。アンケート内容の公
開に同意した 305 人を対象とし、質問項目ごとにアンケートの回答結果とその分析を以下に示す。
なお、それぞれの質問に関しては、調査対象者全体データの分析に加えて、学校別の分析と、TSST
レベル別の分析(サンプル数が比較的多いレベル2~4のみを対象とした)も行った。各学校の特徴
(運営母体・偏差値・生徒の進路など)や TSST レベルと、質問の回答との関連を見ることで、生徒
の英語学習実態を、その背景も含めてより的確に把握できると考えたからである。
■英語学習・使用状況■
Q1
あなた自身の受ける授業で、英語を使う場面はどの程度ありますか。
(ひとつ選択)
1. 授業・言語活動の 70%以上で英語を使っている
2. 授業・言語活動の 50~70%で英語を使っている
3. 授業・言語活動の 30~50%で英語を使っている
4. 授業・言語活動で英語を使うことはほとんどない
授業で英語を使う場面
人数
40
授業・言語活動の70%
以上で英語を使っている 割合
13.1%
人数
121
授業・言語活動の50~
70%で英語を使っている 割合
39.7%
人数
132
授業・言語活動の30~
50%で英語を使っている 割合
43.3%
11
授業・言語活動で英語を 人数
使うことはほとんどない
割合
3.6%
人数
1
無回答
割合
0.3%
人数
305
計
割合 100.0%
授業で英語を使う場面
授業・言語活動
で英語を使うこ
とはほとんどな
い, 3.6%
授業・言語活動
の70%以上で
英語を使ってい
る, 13.1%
授業・言語活動
の50~70%で
英語を使ってい
る, 39.7%
無回答, 0.3%
授業・言語活動
の30~50%で
英語を使ってい
る, 43.3%
「授業・言語活動の 30~50%で英語を使っている」が最も多く 43.3%で、
「授業・言語活動の 50~70%
で英語を使っている」が 39.7%と拮抗している。
「授業・言語活動の 70%以上で英語を使っている」は 13.1%
で、上記を合計した 96.1%が、授業中にある程度英語を使っていると答えている。
■学校別
「授業で英語を使う場面」について、私立 A 高校および公立 C 高校の2校と、公立 B 高校とで、異
なる傾向が見られた。授業・言語活動の半分以上で英語を使っていると答えた生徒の割合(
「授業・言
13
語活動の 70%以上で英語を使っている」と「授業・言語活動の 50~70%で英語を使っている」の割合の合
計)は、A 高校と C 高校では、それぞれ 46.3%、45.1%と半分以下であるのに対し、B 高校では 61.9%
と6割を占めている。B 高校には、英語教育や異文化理解に重点を置く専門学科があり、英語教育に
特に力を入れていることなどから、授業の中で英語を使う場面が意識的に多く設けられているのかも
しれない。
学校別 英語を使う場面
私立A高校
11.3%
35.0%
47.5%
5.0%
授業・言語活動の70%以上で英語を使っている
授業・言語活動の50~70%で英語を使っている
公立B高校
20.9%
41.0%
36.6%
1.5%
授業・言語活動の30~50%で英語を使っている
授業・言語活動で英語を使うことはほとんどない
公立C高校 3.3%
41.8%
49.5%
5.5%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
■TSST レベル別
サンプル数が比較的多い TSST レベル2~4で、
「英語を使う場面」を示したのが下のグラフである。
授業の半分以上で英語を使っていると答えた生徒の割合(「授業・言語活動の 70%以上で英語を使ってい
る」と「授業・言語活動の 50~70%で英語を使っている」の割合の合計)は、TSST レベル2が 56.4%、
レベル3が 49.0%、レベル4が 62.7%と、真ん中のレベル3の割合が、他のレベルに比べて少なくな
っているが、レベルの推移と比例あるいは反比例した特徴は見えない。
TSST 2~4 英語を使う場面
2
17.9%
38.5%
38.5%
5.1%
授業・言語活動の70%以上で英語を使っている
授業・言語活動の50~70%で英語を使っている
3
12.7%
36.3%
46.1%
4.4%
授業・言語活動の30~50%で英語を使っている
授業・言語活動で英語を使うことはほとんどない
4 10.2%
52.5%
37.3%
0.0%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
学校別、TSST レベル別の分析結果を見る限り、授業中にどの程度英語を使う場面があるかに関して
は、学校や教師による授業設計・運営方針等の影響が大きく、個々の生徒のスピーキング能力にはあ
まり左右されないようである。
14
Q2
「授業中、英語を使う」のは、具体的にどのような活動や場面ですか。具体的に書いてください。
自由記述の回答について、代表的なものを以下に列記する。会話や発表などの「英語を発信する活
動」から、発音や音読など「書かれた内容を声に出す活動」、教師が授業を英語で行うのを聞くなどの
「英語を受信する活動」
、テストまで、多岐に渡る内容となった。
1.
授業開始後、名前を呼ぶ、など以外基本は英語
2.
全ての英語の授業の活動で英語を使う
3.
ALT(Assistant Language Teacher)の先生と1つのテーマを決めて、英会話をする
4.
授業の初めに、席の隣同士であるテーマについて話し合う
5.
英会話での NET(Native English Teacher)との会話やパートナーへの説明
6.
コミュニケーション英語Ⅰの授業の冒頭で約5分で行う“small talking”
7.
ミニ会話(授業の冒頭で行う)
、グループ発表
8.
冒頭の 10 分で取り組む1分間スピーチ
9.
自分の意見を言う場面
10. 感想を英語で発表する
11. 作文の発表
12. 先生に続いて音読する
13. 教科書の文を隠し音読する
14. 隣の人と英語と日本語に分けての音読
15. 英語Ⅰの授業で発声練習を 10 分ほど行っている
16. 授業での発音問題など
17. 授業の最初に行う英単語を相手に伝わるように英語やジェスチャーで伝える活動
18. 予習で解いた問題を英語で読んで答える
19. 先生に指名されたとき
20. 答えを言うとき、先生に質問するとき
21. 総合英語の授業で活動を説明するとき(先生が)
22. 授業のほとんどは英語が使われるが、自分で話す機会はそれに伴わない
23. 英語Ⅰ、表現英語の授業で問題演習に 20 分
24. 授業の始めに取り組むウォーミングアップ
25. 教科書を読むとき、最初のあいさつ
26. スピーキングテスト
「英語使用」という概念と授業の中の活動との結びつけ方に何らかの特徴はないかを探るため、自
由記述の内容を以下9つのカテゴリーに分類して分析してみた。次ページの表とグラフは、回答割合
の多い順に並べてある。なお、
「音読、ペアでの会話」といったように複数のカテゴリーにまたがる回
答は、複数回答として扱い、それぞれのカテゴリーでカウントした。また、回答割合は、分析対象者
305 人を母数として算出してある。
15
授業中、英語を使う活動
授業中、英語を使う活動
人数
音読
割合
人数
会話・ディスカッション
割合
人数
その他
割合
人数
質疑応答・発言・問題解答
割合
人数
スピーチ・プレゼンテーション
割合
人数
単語練習・発音
割合
人数
先生の英語を聞く
割合
人数
授業の(ほぼ)すべての活動
割合
人数
無回答
割合
120
39.3%
116
38.0%
62
20.3%
49
16.1%
38
12.5%
26
8.5%
13
4.3%
9
3.0%
3
1.0%
音読
39.3%
会話・ディスカッション
38.0%
その他
20.3%
質疑応答・発言・問題解答
16.1%
スピーチ・プレゼンテ ーション
12.5%
単語練習・発音
8.5%
先生の英語を聞く
4.3%
授業の(ほぼ)すべての活動
3.0%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
英語を使う活動や場面は、
「音読」が 39.3%で最も多い。
「音読」に分類した回答には、
「隣の人と英
語と日本語に分けての音読」「教科書の文を隠し音読する」「先生の読んだ文章をリピートする」など
も含まれており、複数のパターンによる音読活動が行われている様子が読み取れる。なお、20.3%を
占める「その他」に分類した回答には、
「教科書を読む」といった、音読とも黙読とも取れる分類不能
な活動も多く含まれるため、実際には 39.3%より多くの生徒が授業中に音読を行っていると思われる。
次いで多い「会話・ディスカッション」は 38.0%を占め、
「音読」と拮抗している。
「英語を使う活
動」と問われて多くの生徒が連想するのは「英語を声に出す」ことが伴う活動であり、実際に授業で
も行われているのだろう。なお、同じ「声に出す」活動であっても、
「スピーチ・プレゼンテーション」
(12.5%)と「単語練習・発音」
(8.5%)は、
「音読」
「会話・ディスカッション」に比べて少なかった。
■学校別
各項目における学校別の回答の割合を比べ、私立 A 高校における割合が多い順に並べたグラフを次
ページに示してある。私立 A 高校、公立 C 高校の2校と、公立 B 高校で、傾向が大きく異なる結果と
なった。
私立 A 高校と公立 C 高校では「音読」が最も多いが、B 高校では「音読」は A 高校、C 高校の半分
程度である(次ページのグラフ上でオレンジ色の線で囲んだ項目。A 高校が 50.0%、B 高校が 26.1%、
C 高校が 49.5%)
。一方、公立 B 高校で最も多いのは「会話・ディスカッション」であるが、A 高校、C 高
校では「会話・ディスカッション」は B 高校の3分の1以下にとどまっている(次ページのグラフ上で緑
色の線で囲んだ項目。A 高校が 11.3%、B 高校が 65.7%、C 高校が 20.9%)
。この違いは何を示すの
だろうか。
16
学校別 授業中、英語を使う活動
私立A高校
公立B高校
音読
公立C高校
50.0%
49.5%
26.1%
その他
38.8%
12.7%
15.4%
単語練習・発音
4.5%
7.7%
16.3%
11.3%
会話・ディスカッション
65.7%
20.9%
7.5%
3.7%
2.2%
先生の英語を聞く
6.3%
17.2%
11.0%
スピーチ・プレゼンテ ーション
6.3%
質疑応答・発言・問題解答
13.4%
28.6%
1.3%
0.7%
1.1%
無回答
0.0%
6.0%
1.1%
授業の(ほぼ)すべての活動
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
各校の TSST レベル分布と重ね合わせてみると、この違いの背景が見えてくる。教科書等に記載さ
れた、すでに組み立てられた英文を声に出す「音読」に比べると、自身で英文を組み立てる活動が伴
う「会話・ディスカッション」は、扱うトピックにもよるが、一般的にはより高いスピーキング力が求め
られる。p.11~12 で見たように、A 高校と C 高校では TSST レベル4に比べて2の生徒が多い。B 高
校では、レベル2の生徒は非常に少ない一方で、レベル4の生徒の割合が他の2校に比べて約 20 ポイ
ント多い。B 高校は、レベル3、4という、
「簡単な構造の文を、誤りは含みながらも何とか組み立て
ようとする」生徒が多いため、
「音読」で「英文を丸ごとインプットする」活動から一歩進んで、
「会
話・ディスカッション」により「英文を自分で組み立てる」活動がより多く実践されているのかもしれな
い。見方を変えれば、B 高校の授業では「会話・ディスカッション」活動が盛んなため、レベル3、4の
生徒が多くなっているのかもしれない。
「会話・ディスカッション」に分類した記述をさらに読み込むと、活動内容の詳細に言及しているもの
については、①「授業の始めに2人ペアで英語の会話をする」
「総合英語でお題が出されてそのお題に
ついてのディスカッションをグループで行う」といった「生徒同士で行う活動」と、②「ALT の先生
との会話」といったように「教師対生徒で行う活動」の2種類に大別できた。B 高校の生徒は、ほと
んどが「生徒同士で行う活動」を挙げていたが、A 高校と C 高校の生徒は、「教師対生徒で行う活動」
を挙げている人が多かった。Q1 で見たように、授業中の英語使用場面は学校や教師の方針に左右され
る部分が大きいことを考え合わせると、B 高校では、英文を自分で組み立てようとする TSST3以上の
生徒に対して、指導する教師側が生徒同士の活動を促していることを示しているのかもしれない。
もう1点、学校間での差があったのは、
「質疑応答・発言・問題解答」である(上のグラフ上で青色の
線で囲んだ項目)
。A 高校と B 高校ではそれぞれ 6.3%、13.4%であったが、C 高校ではそれより 15
17
ポイント以上多い 28.6%であった。C 高校においては、TSST レベル2の生徒が 24.2%と A 高校(レ
ベル2が 18.8%)や B 高校(レベル2が 0.7%)に比べてやや多いことも影響して、教師対生徒のや
り取りが中心となる「質疑応答・発言・問題解答」が多いのかもしれない。
なお、
「その他」は A 高校が 38.8%で、B 高校(12.7%)や C 高校(15.4%)より 20 ポイント以上
多い。これは A 高校の回答に「教科書を読む」といった音読か黙読かが判別できないものや、
「英会話
の授業」など漠然とした内容で分類が難しいものが多く、それらを「その他」に分類したためである。
■TSST レベル別
各項目における TSST2~4のレベル別の生徒の割合を比べ、レベル2における割合が多い順に並べ
たのが、以下のグラフである。目を引くのは、オレンジ色の線で囲んだ「会話・ディスカッション」の項
目で、レベル2が 15.4%であるのに対し、レベル3では 36.3%、レベル4では 57.6%と、レベルが上
がるにつれて割合が増えている点である。この結果だけからは、一見、TSST のレベルが「会話・ディ
スカッション」を授業で行っている割合と関係しているように見える。しかしながら、各学校で TSST
レベル別に「会話・ディスカッション」の回答割合を比べてみると、TSST レベルが異なっても「会話・デ
ィスカッション」を授業で行っている割合には大きな差がなかった。このことから、TSST のレベルが「会
話・ディスカッション」への参加に影響しているというよりは、授業での活動については、各学校がそれ
ぞれの生徒のスピーキングレベルを考慮して英語活動を行っている、と考える方が妥当であろう。
TSST 2~4 授業中、英語を使う活動
2
3
4
音読
30.5%
その他
11.9%
質疑応答・発言・問題解答
23.1%
22.1%
17.9%
18.6%
6.8%
15.4%
会話・ディスカッション
38.5%
42.6%
36.3%
57.6%
10.3%
12.7%
13.6%
スピーチ・プレゼンテ ーション
10.3%
8.8%
6.8%
単語練習・発音
授業の(ほぼ)すべての活動
2.6%
2.0%
5.1%
先生の英語を聞く
2.6%
4.9%
3.4%
2.6%
1.0%
0.0%
無回答
0%
10%
20%
18
30%
40%
50%
60%
70%
Q3
あなたが実際に英語を使う(話す/書く、その練習をする)のはどんな場面ですか。過去半
年間の経験から yes / no の該当する方に○をつけてください。
1. 授業中に:yes /
no
2. 会話学校で:yes /
no
3. その他([例:英語音声のテレビを見る])
(※「その他」は自由記述による回答であるが、分析しやすくするため、以下の表およびグラフでは、便宜上、
「その他」に具体的な記述があるものを「Yes」
、具体的な記述がなく「なし」などが記述されている、または
記述がないものを「No」として分類した。
「無回答」はないものとして扱った。
)
実際に英語を使う場面
人数
授業中に
割合
人数
会話学校で
割合
人数
その他
割合
Yes
299
98.0%
49
16.1%
58
19.0%
No
4
1.3%
240
78.7%
247
81.0%
無回答 計
2
305
0.7% 100.0%
16
305
5.2% 100.0%
0
305
0.0% 100.0%
実際に英語を使う場面
授業中に
98.0%
会話学校で
16.1%
その他
19.0%
0%
1.3%
0.7%
78.7%
81.0%
5.2%
0.0%
Yes
No
無回答
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
ほぼ全員(98.0%)が、
「授業中に」英語を使うと答えている。
「会話学校で」使うというのは 16.1%、
「その他」への具体的記述があったのは 19.0%であった。
「その他」として具体的学習行動を記述した内容について、代表的なものを、TSST レベル別に記載
したものが下記である(レベル5と8はサンプル数が少ないため割愛した)。質問は、英語を「話す・
書く」体験について問うているが、回答の多くは「見る・聞く」に関わる内容である。下記では類似
の回答はまとめて記載しているが、特に「映画・テレビ・洋楽などを英語音声で視聴する」といった
趣旨の回答は非常に多く、
「その他」の回答の半数以上を占めていた。高校 1 年生にとっての「英語を
使う体験」とは「見る・聞く」ことも含んでおり、実際の行動もそれに関わっているものと思われる。
■TSST 2
・英語の曲を聞く
・英語音声の映画・ドラマを見る
・英検の勉強
■TSST 3
・課題、旅行、母との会話
・スピーチ
・海外の映画やドラマを英語音声で見る
・英検の勉強
19
・英語音声のテレビを見る、洋楽を聞く
・たまに映画を英語音声で見る
・友達との会話
・部活の活動での話し合い
・家で英語の勉強をするとき
・LINE とかで
・家で英語の CD を聞く
・チャロを見たことがある
・ラジオでの英語聞き取り
・課題やディクテーションによる、リスニング
・洋楽を歌うとき
・日本人の講師の先生のお話を聞いた
・電子辞書で英語を聞く
・教科書を読む
■TSST 4
・英検の勉強
・家での勉強
・英語音声の映画を見る
・洋楽を聞く
・外国に行ったとき
・英語音声のテレビを見る、英語字幕の動画を見る
・アメリカでプレゼンをした
・英語の本を読む
・知り合い(オーストラリア出身)との会話
■学校別
以下は、各項目について、Yes と回答した生徒の割合を学校別に示したグラフである。オレンジの線
で囲んで示した通り、私立 A 高校で「会話学校で」英語を使うと回答した生徒の割合が、公立 B 高校、
公立 C 高校より約 20 ポイント多い(Yes の割合が A 高校 32.5%、B 高校 10.4%、C 高校 9.9%)
。
「授
業中に」「その他」については顕著な差はなかった。
学校別 実際に英語を使う場面
私立A高校
公立B高校
公立C高校
95.0%
99.3%
98.9%
授業中に
32.5%
会話学校で
10.4%
9.9%
20.0%
23.1%
12.1%
その他
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90% 100%
■TSST レベル別
次ページのグラフでは、TSST2~4のレベル別に、各項目の Yes の割合を示した。オレンジの線で
囲んで示した通り、「その他」で英語を使う場面を上げた生徒の割合が、TSST レベル2では 10.3%、
レベル3では 18.1%、レベル4では 25.4%と、レベルが上がるにつれて増える。TSST レベルが高い
ほど、授業や会話学校以外での英語使用に意欲的な様子が見て取れる。
「授業中に」
「会話学校で」につ
いては TSST レベルの違いによる顕著な差はなかった。
20
TSST 2~4
実際に英語を使う場面
学校別
実際に英語を使う場面
私立A高校2
3 公立B高校
4
公立C高校
100.0% 95.0%
97.5% 99.3%
100.0% 98.9%
授業中に使う
授業中に
17.9%
16.2%
10.4%
13.6%
9.9%
会話学校で使う
会話学校で
32.5%
10.3% 20.0%
18.1%23.1%
12.1%25.4%
その他
その他
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
Q4
学校の【授業以外】で、あなたが実際に英語を使う(話す/書く、その練習をする)のはどん
な場所・場面ですか。過去半年間の経験から yes / no の該当する方に○をつけてください。
1. 塾・予備校:yes /
no
2. 家庭教師:yes /
no
3. 通信教育:yes /
no
4. ラジオやテレビ番組:yes /
no
5. 日本人講師による英会話:yes /
no
6. ネイティブスピーカー講師による英会話:yes /
no
7. その他(具体的に)
(※「その他」は自由記述による回答であるが、分析しやすくするため、以下の表およびグラフでは、便宜上、
「その他」に具体的な記述があるものを「Yes」
、具体的な記述がなく「なし」などが記述されている、または
記述がないものを「No」として分類した。
「無回答」はないものとして扱った。
)
質問項目のいずれかに Yes と答えた、または「その他」で具体的に英語を使う場面を挙げた生徒は、
合計全体の 54.1%。約半数の生徒が「授業以外で実際に英語を使っている」と回答していた。
以下は、Yes の回答割合が多い順に並べた表とグラフである。
実際に英語を使う場所・場面
ネイティブスピーカー講師による英会話
ラジオやテレビ番組
日本人講師による英会話
塾・予備校
その他
通信教育
家庭教師
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
21
Yes
62
20.3%
59
19.3%
57
18.7%
50
16.4%
29
9.5%
15
4.9%
2
0.7%
No 無回答 計
222
21
305
72.8%
6.9% 100.0%
222
24
305
72.8%
7.9% 100.0%
223
25
305
73.1%
8.2% 100.0%
239
16
305
78.4%
5.2% 100.0%
276
0
305
90.5%
0.0% 100.0%
266
24
305
87.2%
7.9% 100.0%
277
26
305
90.8%
8.5% 100.0%
実際に英語を使う場所・場面
Yes
No
無回答
ネイティブスピーカー講師による英会話
20.3%
72.8%
6.9%
ラジオやテレビ番組
19.3%
72.8%
7.9%
日本人講師による英会話
18.7%
73.1%
8.2%
塾・予備校
その他
16.4%
78.4%
9.5%
90.5%
通信教育 4.9%
0.0%
87.2%
家庭教師 0.7%
0%
5.2%
7.9%
90.8%
10%
20%
30%
40%
50%
8.5%
60%
70%
80%
90% 100%
「英語を使う場所・場面」は、
「ネイティブスピーカー講師による英会話」
(20.3%)が最も多く、
「ラジ
オやテレビ番組」(19.3%)、「日本人講師による英会話」(18.7%)、「塾・予備校」(16.4%)がそれに続
く。講師の存在の下で英語を使う場合が多いが、ラジオやテレビ番組で使う生徒もいる。
「その他」の回答で代表的なものを、TSST レベル別に以下に記載した(レベル5と8はサンプル数
が少ないため割愛した)。Q3 と同様に「見る・聞くことに関わる活動」もあったが、
「外国人と話す活
動」も挙げられていた。
■TSST 2
・外国人に話しかけられたとき
・外国の映画を見るときなど
・洋楽を聞く
■TSST 3
・自宅学習
・英語の音声と日本語の字幕で映画を見る
・海外サイトの個人での和訳、DVD での副音声
・曲を聞きながら英語を口ずさむ
・ワークブック
・外国人の方から道を聞かれたとき
・部活
・洋楽を聴くとき
・動画の字幕を見る
・町にいる外国人と話す
■TSST 4
・家での自主学習
・ディクテーションの練習
・友達との会話
・家族とまれに英語で会話するとき
・外国の人と話す
・家で学習
・部活動(英会話部)
・知り合いとの会話
■学校別
学校によって「英語を使う場所・場面」に違いはあるだろうか。まず、
「実際に英語を使う場所・場
面の有無」の割合を比較するため、質問項目のいずれかに Yes と答えたか「その他」で具体的に英語
22
を使う場面を挙げた生徒は英語を使う場所・場面「あり」、質問項目すべてに No と答え「その他」に
も具体的に英語を使う場面の記述がなかった生徒を英語を使う場所・場面「なし」と見なして、その学
校別割合を以下にグラフで示した。私立 A 高校では英語を使う場所・場面「あり」が 73.8%で、公立
B 高校の 44.8%、公立 C 高校の 50.5%と比べて 20 ポイント以上多くなっており、A 高校では授業外
で英語を使用する生徒が他校より多い結果となった。
学校別 実際に英語を使う場所・場面の有無
あり
私立A高校
なし
73.8%
公立B高校
26.3%
44.8%
公立C高校
55.2%
50.5%
0%
10%
20%
30%
49.5%
40%
50%
60%
70%
80%
90% 100%
英語を使う場所・場面の内訳についても見てみたい。以下のグラフは、各項目の Yes の割合を学校
別にまとめ、私立 A 高校での割合が多い順に並べたものである。
「ネイティブスピーカー講師による英会
話」
「日本人講師による英会話」
「塾・予備校」
(グラフでオレンジ色の線で囲んだ項目)において、私立
A 高校の生徒が Yes と回答している割合が多く、他の2校と比べて約 10 ポイントまたはそれ以上の差
があった。理由は推測するしかないが、協力校3校の中で、A 高校のみ「首都圏」の「私立高校」で
「大学に付属」している、という環境の違いが何らかの影響を及ぼしているのかもしれない。
学校別 実際に英語を使う場所・場面
私立A高校
公立B高校
ネイティブスピーカー講師による英会話
37.5%
10.4%
日本人講師による英会話
19.8%
15.7%
13.2%
塾・予備校
10.4%
30.0%
26.3%
16.5%
17.5%
20.1%
19.8%
ラジオやテレビ番組
その他
8.2%
7.7%
13.8%
6.3%
4.5%
4.4%
通信教育
家庭教師
公立C高校
0.0%
0.7%
1.1%
0%
10%
23
20%
30%
40%
■TSST レベル別
TSST レベルの差は、
「英語を使う場所・場面」に影響を及ぼしているだろうか。学校別と同様の方
法で、「実際に英語を使う場所・場面の有無」を、TSST2~4のレベル別にグラフにしたものを下記
に示す。レベル4において、英語を使う場所・場面がある生徒が、レベル2、3に比べて約 10 ポイン
ト多い(レベル2が 53.8%、3が 52.0%、4が 62.7%)
。
TSST 2~4 実際に英語を使う場所・場面の有無
あり
2
なし
53.8%
3
46.2%
52.0%
4
48.0%
62.7%
0%
10%
20%
30%
37.3%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
英語を使う場所・場面の内訳をみるため、各項目の Yes の割合を TSST レベル別にまとめ、レベル
2における割合が多い順に並べたグラフを以下に記載した。
「ラジオやテレビ番組」において、レベル
3の Yes の割合がレベル2、4より少なくなっている(レベル2が 25.6%、3が 16.2%、4が 25.4%)
が、その要因を特定するのは難しい。
TSST 2~4 実際に英語を使う場所・場面
2
3
4
ラジオやテレビ番組
15.4%
日本人講師による英会話
19.1%
20.3%
15.4%
ネイティブスピーカー講師による英会話
10.3%
塾・予備校
その他
7.8%
5.1%
3.9%
通信教育
家庭教師
25.6%
25.4%
16.2%
21.6%
20.3%
17.2%
18.6%
10.3%
15.3%
8.5%
2.6%
0.5%
0.0%
0%
10%
24
20%
30%
Q5
英語に関し【自宅】でどのような学習を主にしていますか。yes / no の該当する方に○をつけ
てください。(宿題を含む)
1. 単語練習:yes /
no
2. 文法ドリル(ワークシート/ワークブック)
:yes /
3. 教科書本文の書き写し:yes /
4. 新出単語の意味調べ:yes /
no
no
no
5. 主要なフレーズの書き写し:yes /
6. 教科書本文の音読:yes /
no
7. 教科書本文の和訳:yes /
no
no
8. 教科書本文やキーセンテンスの暗記:yes / no
9. 英語で日記を書く:yes /
no
10. スキットなど次の授業での発表活動の練習:yes / no
11. 教科書本文の内容についての調べ物:yes /
12. 入試や検定試験の問題:yes /
no
no
13. テレビやラジオやインターネットの英語講座の視聴:yes /
14. スピーチやプレゼンテーションなどの原稿作成・練習:yes /
no
no
15. その他(具体的に)
自宅でする主な学習を、Yes の回答が多い順に並べると以下の表とグラフになる。
自宅でする主な学習
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
単語練習
新出単語の意味調べ
文法ドリル(ワークシート/ワークブック)
教科書本文の音読
教科書本文の和訳
教科書本文やキーセンテンスの暗記
教科書本文の内容についての調べ物
入試や検定試験の問題
主要なフレーズの書き写し
教科書本文の書き写し
スキットなど次の授業での発表活動の練習
スピーチやプレゼンテーションなどの原稿作成・練習
テレビやラジオやインターネットの英語講座の視聴
英語で日記を書く
その他
25
Yes
239
78.4%
224
73.4%
206
67.5%
170
55.7%
148
48.5%
128
42.0%
109
35.7%
102
33.4%
85
27.9%
75
24.6%
72
23.6%
65
21.3%
37
12.1%
23
7.5%
12
3.9%
No
64
21.0%
75
24.6%
88
28.9%
127
41.6%
148
48.5%
164
53.8%
168
55.1%
155
50.8%
205
67.2%
220
72.1%
210
68.9%
226
74.1%
254
83.3%
267
87.5%
293
96.1%
無回答
2
0.7%
6
2.0%
11
3.6%
8
2.6%
9
3.0%
13
4.3%
28
9.2%
48
15.7%
15
4.9%
10
3.3%
23
7.5%
14
4.6%
14
4.6%
15
4.9%
0
0.0%
計
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
305
100.0%
自宅でする主な学習
Yes
無回答
No
単語練習
78.4%
新出単語の意味調べ
73.4%
文法ドリル(ワークシート/ワークブック)
28.9%
55.7%
教科書本文の和訳
41.6%
48.5%
教科書本文やキーセンテンスの暗記
48.5%
42.0%
教科書本文の内容についての調べ物
53.8%
35.7%
入試や検定試験の問題
教科書本文の書き写し
24.6%
スキットなど次の授業での発表活動の練習
23.6%
スピーチやプレゼンテーシ ョンなどの原稿作成・練習
72.1%
3.3%
7.5%
4.6%
4.6%
87.5%
その他 3.9%
0%
4.9%
83.3%
7.5%
4.9%
96.1%
10%
20%
30%
40%
50%
3.0%
67.2%
74.1%
12.1%
2.6%
15.7%
68.9%
21.3%
3.6%
9.2%
50.8%
27.9%
2.0%
4.3%
55.1%
33.4%
主要なフレーズの書き写し
英語で日記を書く
24.6%
67.5%
教科書本文の音読
テレビやラジオやインターネッ トの英語講座の視聴
21.0% 0.7%
0.0%
60%
70%
80%
90% 100%
自宅で最も多く行われている学習は、
「単語練習」
(Yes の割合が 78.4%、以下同じ)、
「新出単語の
意味調べ」(73.4%)といった「単語に関する学習」
、次いで「文法ドリル(ワークシート/ワークブック)」
(67.5%)である(上のグラフでオレンジ色の線で囲んだ部分)。これらはいずれも7割前後の生徒が
行っている。
次に多く行われている学習は、
「教科書本文の音読」
(55.7%)、
「教科書本文の和訳」
(48.5%)、
「教
科書本文やキーセンテンスの暗記」(42.0%)、「教科書本文の内容についての調べ物」(35.7%)といっ
た「教科書そのものに関する学習」である(上のグラフで緑色の線で囲んだ部分)。しかしこれらを実
施している生徒は3~5割前後で、
「単語・文法に関する学習」と比べると少ない。また、同じ教科書
に関する学習と思われるものであっても、
「主要なフレーズの書き写し」(27.9%)や「教科書本文の書
き写し」(24.6%)といった「書く」学習はさらに敬遠されがちである。
「単語」
「文法」「教科書そのもの」以外に関する学習は、全体的にあまり実施されていないが、そ
の中では「入試や検定試験の問題」(33.4%)が比較的多く行われている。
「スキットなど次の授業での
発表活動の練習」
(23.6%)、
「スピーチやプレゼンテーションなどの原稿作成・練習」
(21.3%)、
「英語で日
記を書く」
(7.5%)といった「発信型活動」や、
「テレビやラジオやインターネットの英語講座の視聴」
(12.1%)
は、あまり実施されていない。
26
■学校別
「自宅でする学習」において学校による違いがあるかどうかを調べるため、各項目について Yes の
割合を学校別に示し、私立 A 高校における Yes の割合が多い順に並べたものが下のグラフである。多
くの項目で、公立 B 高校の Yes の割合が、私立 A 高校と公立 C 高校に比べて多いことが目につく。具
体的には、
「その他」を除く 14 項目中、7項目において、B 高校が、A 高校、C 高校の両方を約 10 ポ
イントまたはそれ以上上回っている。しかし、すべての項目で多いわけではない。「単語練習」(A 高
校の Yes の割合が 81.3%、B 高校が 89.6%、C 高校が 59.3%、以下同一順で掲載)
「新出単語の意味
調べ」
(58.8%、87.3%、65.9%)、
「文法ドリル(ワークシート/ワークブック)」
(50.0%、87.3%、53.8%)
といった「単語・文法に関する学習」、
「教科書本文の音読」(52.5%、69.4%、38.5%)、「教科書本文
やキーセンテンスの暗記」(36.3%、66.4%、11.0%)といった「教科書の内容の定着に関する学習」、
そして「入試や検定試験の問題」
(25.0%、39.6%、31.9%)、
「英語で日記を書く」
(2.5%、14.9%、1.1%)
は B 高校の Yes の割合が多いが(下のグラフでオレンジ色の線で囲んだ項目)、反対に、
「教科書本文
の和訳」
(58.8%、41.8%、49.5%)、
「教科書本文の書き写し」
(35.0%、11.2%、35.2%)においては、
B 高校が、A 高校と C 高校を、約 10 ポイントまたはそれ以上下回っている(下のグラフで緑色の線で
囲んだ項目)。どのような要因が B 高校と、A 高校、C 高校との違いを引き起こしているのだろうか。
学校別 自宅でする学習
私立A高校
公立B高校
公立C高校
81.3%
単語練習
59.3%
58.8%
65.9%
新出単語の意味調べ
教科書本文の和訳
41.8%
49.5%
87.3%
58.8%
52.5%
教科書本文の音読
38.5%
69.4%
50.0%
53.8%
文法ドリル(ワークシート/ワークブック)
主要なフレーズの書き写し
19.8%
66.4%
11.0%
教科書本文の書き写し
35.0%
35.2%
11.2%
32.5%
29.9%
教科書本文の内容についての調べ物
スキットなど次の授業での発表活動の練習
12.1%
47.3%
28.8%
26.9%
14.3%
スピーチやプレゼンテーションなどの原稿作成・練習
87.3%
37.5%
27.6%
36.3%
教科書本文やキーセンテンスの暗記
89.6%
28.8%
23.1%
25.0%
39.6%
31.9%
入試や検定試験の問題
16.3%
12.7%
7.7%
テレビやラジオやインターネッ トの英語講座の視聴
5.0%
4.5%
2.2%
その他
2.5%
1.1%
英語で日記を書く
0%
10%
14.9%
20%
27
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
B 高校が、A 高校や C 高校と異なる点は、p.11 で見たように「TSST のレベル分布で他の2校より
2が少なく4が多い」ことである。TSST レベル3、4が多い B 高校では、A 高校、C 高校に比べて、
英文を組み立てたり、文構造を理解したりする力がある生徒が多く、同じ教科書そのものに関する学
習でも、
「和訳」や「本文を書き写して一字一句を確認する」といった、どちらかと言えば「内容理解」
に近い学習の必要性が少ないため、その分を「理解した内容を定着させる学習」や教科書以外の学習
に振り向けているのかもしれない。
B 高校との違いほどではないが、A 高校と C 高校においても自宅でする学習に違いが見られた。A
高校の生徒は、C 高校と比べ、14 項目中8項目において、約 10 ポイントまたはそれ以上多く学習し
ている。具体的には、
「単語練習」(A 高校が 81.3%、C 高校が 59.3%、以下同一順で掲載)、
「教科書
本文の和訳」(58.5%、49.5%)、
「教科書本文の音読」(52.5%、38.5%)
、
「主要なフレーズの書き写し」
(37.5%、19.8%)、
「教科書本文やキーセンテンスの暗記」
(36.3%、11.0%)、
「スキットなど次の授業で
の発表活動の練習」(28.8%、14.3%)、
「スピーチやプレゼンテーションなどの原稿作成・練習」(28.8%、
12.1%)、「テレビやラジオやインターネットの英語講座の視聴」(16.3%、7.7%)である。A 高校と C 高
校では、TSST のレベル分布は似ているが、入学時の偏差値には9ポイント差がある。C 高校よりも偏
差値が高い A 高校では、学習習慣や自分なりの学習法が身についている生徒が多く、さまざまな方法
で自宅学習を実施しているのかもしれない。なお、
「教科書本文の内容についての調べ物」についての
み、C 高校が A 高校より Yes の割合で 10 ポイント以上多かった(A 高校が 32.5%、C 高校が 47.3%)。
「教科書本文の和訳」では A 高校が C 高校を約 10 ポイント上回っている(A 高校が 58.8%、C 高校
が 49.5%)ことと考え合わせると、C 高校では、教科書本文の和訳をする代わりに、
「内容について調
べる」ことによって内容理解をしている生徒が多いのかもしれない。
■TSST レベル別
TSST レベルの差は、自宅でする学習と関係しているだろうか。次ページに TSST2~4のレベル別
に各項目の Yes の割合をまとめ、レベル2における割合が多い順に並べたグラフを掲載した。レベル
2と、レベル3・4で、傾向が分かれている。「その他」を除く 14 項目中8項目において、レベル3
と4の両方が、レベル2を 10 ポイント以上上回った。その具体的な項目は、
「新出単語の意味調べ」
(レベル2が 61.5%、3が 75.0%、4が 74.6%、以下同一順で掲載)、
「単語練習」
(59.0%、80.9%、
83.1%)、
「文法ドリル(ワークシート/ワークブック)」
(43.6%、67.6%、81.4%)といった「単語・文法に
関する学習」、
「教科書本文の音読」
(35.9%、58.8%、55.9%)、
「教科書本文の和訳」
(33.3%、52.0%、
47.5%)、
「教科書本文やキーセンテンスの暗記」
(17.9%、45.6%、44.1%)といった「教科書そのもの
に関する学習」
、「入試や検定試験の問題」(17.9%、35.3%、37.3%)、「スキットなど次の授業での発表
活動の練習」(7.7%、24.5%、30.5%)である(次ページのグラフでオレンジ色の線で囲んだ項目)。
その一方で、
「教科書そのものに関する学習」の中で「教科書本文の書き写し」
(41.0%、26.5%、8.5%)
のみ、レベル2が3を 14.5 ポイント、4を 32.5 ポイントと大きく上回っていて、他の項目と明らか
に傾向が異なっている(次ページのグラフで緑色の線で囲んだ項目)。教科書そのものの学習方法が、
レベル2を境に、
「一言一句書いて確認」することから、「和訳で内容を理解」したり、「音読や暗記、
主要なフレーズのみの書き写しによって定着」させたりすることへ移行するのかもしれない。
28
TSST 2~4 自宅でする学習
2
3
4
61.5%
新出単語の意味調べ
75.0%
74.6%
59.0%
単語練習
43.6%
文法ドリル(ワークシート/ワークブック)
教科書本文の書き写し
35.9%
教科書本文の音読
81.4%
58.8%
55.9%
33.3%
教科書本文の和訳
67.6%
41.0%
26.5%
8.5%
80.9%
83.1%
52.0%
47.5%
30.8%
37.7%
32.2%
教科書本文の内容についての調べ物
28.2%
27.5%
28.8%
主要なフレーズの書き写し
テレビやラジオやインターネッ トの英語講座の視聴
23.1%
9.3%
13.6%
教科書本文やキーセンテンスの暗記
17.9%
入試や検定試験の問題
17.9%
45.6%
44.1%
35.3%
37.3%
17.9%
20.1%
スピーチやプレゼンテーションなどの原稿作成・練習
1
7.7%
スキットなど次の授業での発表活動の練習
27.1%
24.5%
30.5%
2.6%
9.3%
5.1%
英語で日記を書く
0.0%
2.5%
その他
0%
10%
11.9%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
■英語に対する考え方■
Q6
英語に関しどのような学習が大切だと思いますか。yes / no の該当する方に○をつけてください。
1. 単語をたくさん覚える:yes /
no
2. 文法の知識を増やす:yes /
no
3. 英語をたくさん聞く:yes /
no
4. 発音をきれいにする:yes /
no
5. 自分の考え・意見を英語でたくさん書く:yes /
6. 英語をたくさん読む:yes /
no
7. 問題をたくさん解く:yes /
no
8. 英語テストでいい点数を取る:yes /
9. 英語でたくさん会話をする:yes /
no
no
10. 英語を1文 1 文日本語に訳す:yes /
no
29
no
大切だと思っている学習を、Yes が多い順に項目を並べると、以下の表とグラフのようになる。
どのような学習が大切だと思うか
Yes
293
96.1%
280
91.8%
279
91.5%
278
91.1%
262
85.9%
247
81.0%
233
76.4%
225
73.8%
187
61.3%
152
49.8%
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
単語をたくさん覚える
英語でたくさん会話をする
文法の知識を増やす
英語をたくさん聞く
英語をたくさん読む
自分の考え・意見を英語でたくさん書く
発音をきれいにする
問題をたくさん解く
英語テストでいい点数を取る
英語を1文1文日本語に訳す
No 無回答
計
10
2
305
3.3%
0.7% 100.0%
23
2
305
7.5%
0.7% 100.0%
20
6
305
6.6%
2.0% 100.0%
20
7
305
6.6%
2.3% 100.0%
37
6
305
12.1%
2.0% 100.0%
44
14
305
14.4%
4.6% 100.0%
66
6
305
21.6%
2.0% 100.0%
70
10
305
23.0%
3.3% 100.0%
106
12
305
34.8%
3.9% 100.0%
141
12
305
46.2%
3.9% 100.0%
どのような学習が大切だと思うか
Yes
無回答
No
単語をたくさん覚える
96.1%
3.3%
0.7%
英語でたくさん会話をする
91.8%
7.5%
0.7%
文法の知識を増やす
91.5%
6.6%
2.0%
英語をたくさん聞く
91.1%
6.6%
2.3%
英語をたくさん読む
85.9%
自分の考え・意見を英語でたくさん書く
12.1%2.0%
81.0%
発音をきれいにする
14.4% 4.6%
76.4%
問題をたくさん解く
21.6%
73.8%
英語テストでいい点数を取る
23.0%
61.3%
英語を1文1文日本語に訳す
34.8%
49.8%
0%
10%
20%
30%
46.2%
40%
50%
60%
70%
80%
2.0%
3.3%
3.9%
3.9%
90% 100%
どの項目についても Yes が No より多いが、その中で最も多くの生徒に大切だと認識されている学
習は、
「単語をたくさん覚える」
(Yes の割合が 96.1%、以下同じ)である。
「文法の知識を増やす」は 91.5%
で、
「単語・文法知識の習得」(上のグラフでオレンジ色の線で囲んだ項目)が大切だと思われている
ことが分かる。Q5 で見たように、自宅でする主な学習も、
「単語・文法に関する学習」が上位であり、
学習に対する考えと実際の学習行動が同じ傾向を示している。
「英語でたくさん会話をする」
(91.8%)、
「英語をたくさん聞く」
(91.1%)、
「英語をたくさん読む」
(85.9%)、
「自分の考え・意見を英語でたくさん書く」
(81.0%)といった「英語をたくさん使う」こと(上のグラフ
30
で緑色の線で囲んだ項目)も8~9割の生徒が大切だと思っている。しかし、
「話す・書く」ことにつ
いての自宅学習は、Q5 で見たように、
「音読」という形で口に出してはいるものの、
「スキットなど次の
授業での発表活動の練習」「スピーチやプレゼンテーションなどの原稿作成・練習」「英語で日記を書く」と
いった、英文を自分で組み立てて話したり書いたりする「発信型活動」はあまり行われておらず、大
切だという認識と実際の行動にギャップがあると言える。
また、
「発音をきれいにする」
(76.4%)、
「問題をたくさん解く」
(73.8%)、
「英語テストでいい点数を取る」
(61.3%)についても、6割以上の生徒が大切だと思っている。Q5 の自宅学習では、「教科書本文の
音読」は 55.7%の生徒が行っていたので、
「発音をきれいにする」ための学習行動はある程度なされて
いると見なしてもよいかもしれない。
Q6 の項目では唯一、
「英語を1文1文日本語に訳す」の Yes の割合が 49.8%と過半数を下回っていた。
しかし、Q5 では、48.5%が「教科書本文の和訳」を自宅学習で行っており、8~9割が大切だと思っ
ている「発信型活動」よりも、学習されている割合はむしろ多い。ここでも認識と行動のギャップが
見て取れる。
■学校別
「大切だと思う学習」に関して、学校による特徴があるかどうかを調べるため、各項目の Yes の割
合を学校別に示し、私立 A 高校における Yes の割合が多い順に並べたものが次ページのグラフである。
まず、3校の生徒に共通して大切だと認識されていたのは、
「単語をたくさん覚える」
(A 高校が 96.3%、
B 高校が 96.3%、C 高校が 95.6%、以下同一順で掲載)
、
「英語でたくさん会話をする」
(91.3%、94.8%、
87.9%)、「英語をたくさん聞く」(91.3%、94.8%、85.7%)、
「文法の知識を増やす」(88.8%、92.5%、
92.3%)である。
「単語・文法に関する学習」と「聞く・話すことに関する学習」は、いずれの学校の
生徒も大切だと思っている。
一方で、それぞれの学校において、他の2校と Yes の割合が大きく異なる項目もあった。 私立 A 高
校では、他の2校と比べて、
「発音をきれいにする」が 10 ポイント以上多い(次ページのグラフでオレ
ンジ色の線で囲んだ項目。A 高校が 88.8%、B 高校が 67.9%、C 高校が 78.0%)
。公立 B 高校では、
他の2校と比べて、「自分の考え・意見を英語でたくさん書く」が約 20 ポイント多い(次ページのグラフ
で緑色の線で囲んだ項目。A 高校が 72.5%、B 高校が 91.0%、C 高校が 73.6%)
。公立 C 高校では、
「英語を1文1文日本語に訳す」が他の2校よりも約 20 ポイント以上多い(次ページのグラフで青色の
線で囲んだ項目。A 高校が 47.5%、B 高校が 39.6%、C 高校が 67.0%)。
「単語・文法」や「英語を聞
く・話す」ことは3校共通で大切だと思われている一方、A 高校の生徒は「発音をきれいにしてスム
ーズにコミュニケーションを取ること」、B 高校の生徒は「英語で考えや意見を発信すること」
、C 高
校の生徒は「英文を和訳により理解すること」ことを、他校の生徒に比べて大切だと思っている様子
が伺える。
31
学校別 どのような学習が大切だと思うか
私立A高校
公立B高校
公立C高校
96.3%
96.3%
95.6%
単語をたくさん覚える
英語でたくさん会話をする
91.3%
94.8%
87.9%
英語をたくさん聞く
91.3%
94.8%
85.7%
■TSST レベル別
88.8%
92.5%
92.3%
文法の知識を増やす
72.5%
73.6%
自分の考え・意見を英語でたくさん書く
91.0%
85.0%
90.3%
80.2%
英語をたくさん読む
発音をきれいにする
67.9%
88.8%
78.0%
73.8%
67.9%
問題をたくさん解く
57.5%
59.0%
英語テストでいい点数を取る
47.5%
39.6%
英語を1文1文日本語に訳す
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
82.4%
68.1%
67.0%
70%
80%
90% 100%
■TSST レベル別
「大切だと思う学習」と生徒の TSST のレベルは関係があるのだろうか。
「大切だと思う学習」の各
項目について、Yes の割合を TSST2~4のレベル別に示し、レベル2の Yes の割合が多い順に並べた
ものが次ページのグラフである。TSST レベルに応じて Yes の割合も連動して上がったり下がったり
した項目が2つあった。レベルと共に割合が上がったのは「自分の考え・意見を英語でたくさん書く」
(次
ページのグラフでオレンジ色の線で囲んだ項目。レベル2が 64.1%、3が 81.4%、4が 89.8%)であ
り、下がったのは、「英語を1文1文日本語に訳す」(次ページのグラフで緑色の線で囲んだ項目。レベ
ル2が 61.5%、3が 51.5%、4が 39.0%)である。これは何を示しているのだろうか。
p.8 で見たように、TSST レベル2は「単語や句を使って断片的に話す」レベル、3は「誤りはある
が短い文を作って話そうとする」レベル、4は「簡単な構造の文を作って話せるレベル」である。レ
ベル2では、まだ文を作ることが難しいので、まずは英文を丸ごと覚えたり、英文を組み立てるため
に構造を理解したりする学習が有効である。レベルが3、4と上がるにつれて、英文の組み立て方が
分かるようになるので、実際に何度も組み立てて練習することが、より効果的な学習となる。レベル
3、4の生徒は、自身が英語を学習したり使用したりした経験からそのことに気づいていて、それが
「自分の考え・意見を英語でたくさん書く」のレベルによるポイント差に反映されているのかもしれない。
「英語を1文1文日本語に訳す」のポイント差についても同様に、TSST 評価基準からの考察が可能
である。
「英文を組み立てる」ためには、その前提として英文構造の理解が必要なため、英語を自分で
32
組み立てられる人は、すでに組み立てられた英文も理解できるはずである。TSST レベル2の人は文構
造の知識が定着しておらず、文を作ることが難しいので、簡単な文でも、1文1文和訳して文構造を
確認しなければ理解できない場合が多いのかもしれない。しかし、レベルが3、4と上がるにつれて、
英文を自分で組み立てられるほどに文構造に関する知識が身についてくるので、学習者自身にとって、
内容理解のために1文1文和訳する必要性が下がるのではないだろうか。
TSST 2~4 どのような学習が大切だと思うか
2
3
4
94.9%
96.1%
98.3%
単語をたくさん覚える
文法の知識を増やす
87.2%
94.1%
84.7%
英語をたくさん聞く
87.2%
91.2%
93.2%
84.6%
92.2%
94.9%
英語でたくさん会話をする
79.5%
88.2%
81.4%
英語をたくさん読む
74.4%
75.5%
66.1%
問題をたくさん解く
71.8%
78.4%
71.2%
発音をきれいにする
z 自分の考え・意見を英語でたくさん書く
64.1%
英語テストでいい点数を取る
52.5%
英語を1文1文日本語に訳す
39.0%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
51.5%
81.4%
89.8%
61.5%
64.2%
61.5%
60%
70%
80%
90% 100%
<最も大切だと思う学習>
Q6 では「11. 上記で最も大切だと思う学習はどれですか。番号を指定してその理由を記述してくださ
い。
」という項目も聞いている。最も大切だと思う学習の順位は次ページのようになった。
「最も大切だと思う学習」は、
「無回答」が 27.5%で最も多い。10 項目それぞれの大切さに関して
Yes / No を尋ねた部分では、10 項目中4項目で、9割以上の生徒が「大切だ」と答えていた。
「どの学
習も大切であり、1つに絞れない」という迷いがあるのかもしれない。
「無回答」を除くと、
「英語でたくさん会話をする」が 22.3%と最も多く、次いで、「単語をたくさん覚
える」の 20.7%である。この2つの項目は、10 項目それぞれの大切さに関して Yes / No を尋ねた部分
でも、大切だと思う人が多い項目の1位、2位であったが、
「最も大切だと思う学習」においても同様
の結果となった。 この結果だけを見ると、
「最も大切だと思う学習」は、
「単語」と「会話」で意見が
分かれているように見える。しかし、自由記述で記載してもらった「最も大切だと思う理由」を読み
33
解くと、
「単語」を選んだ生徒のほとんどが、
「単語を覚えないと、会話が成り立たないから」
「単語が
分からないと長文の内容が理解できないから」
「単語を知らなければ、自分の意見を言うことができな
いから」といったように、
「受発信のために単語が必要」という趣旨を述べていた。
「単語学習が最も
大切」と考える生徒も、その多くが会話を含む受発信を意識しているという点で、
「会話」を選んだ生
徒と同様、英語でのコミュニケーションに関心が高いと言えるのではないだろうか。
「無回答」「英語でたくさん会話をする」「単語をたくさん覚える」以外の項目は、いずれの割合も 10%
以下である。10 項目それぞれに関して Yes / No を尋ねた部分では9割以上が「大切だと思う」と答え
た「英語をたくさん聞く」と「文法の知識を増やす」についても、それぞれ 7.2%、6.2%と、
「最も大切」
と思う生徒は少なかった。
最も大切だと思う学習
無回答
英語でたくさん会話をする
単語をたくさん覚える
英語をたくさん聞く
自分の考え・意見を英語でたくさん書く
文法の知識を増やす
英語をたくさん読む
英語テストでいい点数を取る
問題をたくさん解く
無効
発音をきれいにする
英語を1文1文日本語に訳す
計
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
84
27.5%
68
22.3%
63
20.7%
22
7.2%
22
7.2%
19
6.2%
6
2.0%
6
2.0%
5
1.6%
5
1.6%
3
1.0%
2
0.7%
305
100.0%
最も大切だと思う学習
英語テストでいい
点数を取る, 2.0%
問題をたくさん
解く, 1.6%
英語をたくさん
読む, 2.0%
無効,
1.6%
発音をきれい
にする, 1.0%
英語を1文1文日
本語に訳す, 0.7%
文法の知識を増
やす, 6.2%
自分の考え・意見
を英語でたくさん
書く, 7.2%
無回答, 27.5%
英語をたくさん聞
く, 7.2%
単語をたくさん覚
える, 20.7%
英語でたくさん会
話をする, 22.3%
■学校別
「最も大切だと思う学習」に関して、学校による特徴があるかどうかを見るため、学校別の項目の
選択順位とその割合を調べたところ、私立 A 高校と、公立2校で異なる傾向が見られた。まず、A 高
校では、
「無回答」が B 高校、
C 高校より約 15 ポイント以上多かった(A 高校が 40.0%、B 高校が 20.9%、
C 高校が 26.4%)
。 次に、
「無回答」の割合による影響を排除するため、「無回答」と「無効」を除い
た回答割合を次ページのグラフに示す。A 高校では、
「最も大切だと思う学習」は、
「英語でたくさん会
話をする」が 42.6%で最も多く、次いで「英語をたくさん聞く」の 21.3%である(次ページのグラフでオ
レンジ色の線で囲んだ項目)。続く「単語をたくさん覚える」は 12.8%と比較的少ない。一方で、B 高校、
C 高校では、
「単語をたくさん覚える」が最も多く(B 高校が 33.0%、C 高校が 34.8%)、僅差で「英語
でたくさん会話をする」が続く(B 高校が 30.1%、C 高校が 25.8%)
(次ページのグラフで緑色の線で囲
んだ項目)
。A 高校で 21.3%を占めた「英語をたくさん聞く」は、B 高校が 4.9%、C 高校が 10.6%と、A
高校に比べて 10 ポイント以上少なかった。
34
学校別 最も大切だと思う学習(無回答・無効を除く)
私立A高校
公立B高校
公立C高校
英語でたくさん会話をする
42.6%
30.1%
25.8%
英語をたくさん聞く
4.9%
21.3%
10.6%
単語をたくさん覚える
12.8%
自分の考え・意見を英語でたくさん書く
8.5%
12.6%
7.6%
文法の知識を増やす
4.3%
発音をきれいにする
4.3%
1.0%
0.0%
問題をたくさん解く
4.3%
1.9%
1.5%
英語をたくさん読む
2.1%
2.9%
3.0%
英語テストでいい点数を取る
0.0%
3.9%
3.0%
英語を1文1文日本語に訳す
0.0%
1.0%
1.5%
0%
33.0%
34.8%
8.7%
12.1%
10%
20%
30%
40%
50%
■TSST レベル別
TSST のレベルと「最も大切だと思う学習」の関係はどうだろうか。TSST2~4の各レベル別の回
答割合を見ると、
「無回答」において、レベル2の割合がレベル3、4の倍以上となっていた(レベル
2が 56.4%、3が 25.0%、4が 18.6%)
。レベルが上がるにつれて「無回答」の割合が減少するとこ
ろを見ると、TSST レベルが上がると、英語学習や英語使用の経験が増えることなどにより、自分にと
って「最も大切な学習」は何かが分かってくるのかもしれない。
次に、「無回答」の割合による影響を排除するため、
「無回答」と「無効」を除いた回答割合のグラ
フを次ページに示す。レベル2のサンプル数が小さかったため、ここではレベル3、4のみを分析対
象とした。レベル3、4で特筆すべき違いがあったのは「単語をたくさん覚える」で、3が 33.1%、4
が 23.4%であった。p.8 で紹介した TSST の評価基準に立ち戻ってみると、レベル3は「短い文を作
って話そうとするが、長い沈黙もある」レベル、4は「簡単な構造の文を作って話せるレベル」であ
る。レベル3の生徒は、4の生徒に比べると、まだ単語が分からないために発話できないことも多い
ので、「単語をたくさん覚える」ことが自分の英語学習には大切だと感じているのかもしれない。
35
TSST 3, 4 最も大切だと思う学習(無回答・無効を除く)
3
4
33.1%
単語をたくさん覚える
23.4%
29.8%
英語でたくさん会話をする
34.0%
11.3%
英語をたくさん聞く
6.4%
文法の知識を増やす
8.6%
6.4%
自分の考え・意見を英語でたくさん書く
8.6%
12.8%
2.6%
4.3%
英語をたくさん読む
2.6%
2.1%
問題をたくさん解く
1.3%
2.1%
発音をきれいにする
1.3%
英語テストでいい点数を取る
英語を1文1文日本語に訳す
8.5%
0.7%
0.0%
0%
Q7
10%
20%
30%
40%
英語に対するあなたの考えをお聞かせください。下記の項目に6段階でお答えください。
1. 英語のクラスが好きで、この先もっと英語を勉強するのが楽しみだ。
2. 英語を使って国際的に仕事をしている人を、格好いいと思う。
3. 自分の将来の仕事に必要になるから、英語を勉強することは大切だ。
4. 英語を勉強している主な理由は、大学受験だ。
5. 英語を使って難なく意思疎通をしているような人が、将来の理想の自分だ。
6. 本当のところ、英語を習得したいという欲望はない。
7. 英語を一緒に話せる外国人の友達がいたらいいのに、と思う。
8. 日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。
9. 大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。
1
2
3
4
5
6
強く反対だ(全くそ 反対だ(そう思わな 少しだけ反対だ (あ 少しだけ同意する
同意する(そう思
強く同意する(非常
う思わない)
う)
にそう思う)
い)
まりそう思わない) (少し思う)
36
Q7 は英語学習への動機づけに関わる質問である。自発的理由によって進んで勉強したいという「内
発的動機づけ」
、試験があるから勉強するというような「外発的動機づけ」の両方を含んだ項目になっ
ている。
「6. 強く同意する(非常にそう思う)」を選んだ人が多い順に項目を並べると下のような表と
グラフになる。
英語に対するあなたの考え
1
人数
割合
人数
自分の将来の仕事に必要になるから、英語を勉強することは大切だ。
割合
人数
英語を使って難なく意思疎通をしているような人が、将来の理想の自分だ。
割合
人数
英語を一緒に話せる外国人の友達がいたらいいのに、と思う。
割合
人数
英語のクラスが好きで、この先もっと英語を勉強するのが楽しみだ。
割合
人数
英語を勉強している主な理由は、大学受験だ。
割合
人数
日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。
割合
人数
大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。
割合
人数
本当のところ、英語を習得したいという欲望はない。
割合
2
0.7%
4
1.3%
8
2.6%
15
4.9%
6
2.0%
25
8.2%
55
18.0%
93
30.5%
114
37.4%
英語を使って国際的に仕事をしている人を、格好いいと思う。
2
3
5
1.6%
6
2.0%
8
2.6%
28
9.2%
17
5.6%
33
10.8%
82
26.9%
57
18.7%
92
30.2%
4
13
4.3%
19
6.2%
32
10.5%
52
17.0%
51
16.7%
53
17.4%
77
25.2%
78
25.6%
46
15.1%
5
52
17.0%
69
22.6%
71
23.3%
73
23.9%
83
27.2%
98
32.1%
51
16.7%
46
15.1%
26
8.5%
6
無回答 計
158
0
305
51.8%
0.0% 100.0%
114
0
305
37.4%
0.0% 100.0%
91
2
305
29.8%
0.7% 100.0%
86
0
305
28.2%
0.0% 100.0%
55
0
305
18.0%
0.0% 100.0%
43
0
305
14.1%
0.0% 100.0%
21
2
305
6.9%
0.7% 100.0%
19
0
305
6.2%
0.0% 100.0%
10
1
305
3.3%
0.3% 100.0%
75
24.6%
93
30.5%
93
30.5%
51
16.7%
93
30.5%
53
17.4%
17
5.6%
12
3.9%
16
5.2%
英語に対するあなたの考え
1
2
3
4
5
無回答
6
英語を使って国際的に仕事をして いる人を、格好いいと思う。 0.7%
1.6%
4.3%
17.0%
自分の将来の仕事に必要になるから、英語を勉強することは大切だ。 1.3%
2.0%
6.2%
17.4%
30.5%
本当のところ、英語を習得したいという欲望はな い。
10%
30.5%
20%
17.4%
30%
40%
16.7%
25.6%
30.2%
50%
14.1%0.0%
5.6%6.9%
0.7%
15.1% 3.9%6.2%
0.0%
15.1%
60%
0.0%
18.0% 0.0%
25.2%
18.7%
0.7%
28.2%
32.1%
37.4%
0%
16.7%
26.9%
0.0%
29.8%
27.2%
18.0%
大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。
23.9%
16.7%
0.0%
37.4%
30.5%
17.0%
8.2% 10.8%
日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。
30.5%
23.3%
英語を一緒に話せる外国人の友達がいたらいいのに、と思う。 4.9% 9.2%
英語を勉強している主な理由は、 大学受験だ。
51.8%
22.6%
英語を使って難なく意思疎通をしているような人が、将来の理想の自分だ。 2.6%
2.6%10.5%
英語のクラスが好きで、この先もっと英語を勉強するのが楽しみだ。 2.0%
5.6%
24.6%
70%
80%
8.5% 5.2%
3.3%
0.3%
90%
100%
全体の傾向を分析しやすくするため、アンケート結果を、①「同意」グループ(
「6. 強く同意」+「5.
同意」+「4. 少しだけ同意」)、②「反対」グループ(
「1. 強く反対」+「2. 反対」+「3. 少しだけ反
対」
)に分割して示したのが下の表と次ページのグラフである。
反対
(1+2
+3)
英語を使って国際的に仕事をしている人を、格好いいと思う。
6.6%
自分の将来の仕事に必要になるから、英語を勉強することは大切だ。
9.5%
英語を使って難なく意思疎通をしているような人が、将来の理想の自分だ。 15.7%
英語のクラスが好きで、この先もっと英語を勉強するのが楽しみだ。
24.3%
英語を一緒に話せる外国人の友達がいたらいいのに、と思う。
31.1%
英語を勉強している主な理由は、大学受験だ。
36.4%
日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。
70.2%
大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。
74.8%
本当のところ、英語を習得したいという欲望はない。
82.6%
英語に対するあなたの考え
37
同意
(4+5 無回答 計
+6)
93.4%
0.0% 100.0%
90.5%
0.0% 100.0%
83.6%
0.7% 100.0%
75.7%
0.0% 100.0%
68.9%
0.0% 100.0%
63.6%
0.0% 100.0%
29.2%
0.7% 100.0%
25.2%
0.0% 100.0%
17.0%
0.3% 100.0%
英語に対するあなたの考え(同意・反対)
反対
(1+2+3)
英語を使って国際的に仕事をしている人を、格好いいと思う。
自分の将来の仕事に必要になるから、英語を勉強することは大切だ。
同意
(4+5+6)
無回答
6.6%
93.4%
9.5%
英語を使って難なく意思疎通をしているような人が、将来の理想の自分だ。
90.5%
15.7%
英語のクラスが好きで、この先もっと英語を勉強するのが楽しみだ。
0.7%
75.7%
31.1%
英語を勉強している主な理由は、 大学受験だ。
0.0%
83.6%
24.3%
英語を一緒に話せる外国人の友達がいたらいいのに、と思う。
0.0%
0.0%
68.9%
36.4%
0.0%
63.6%
日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。
70.2%
大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。
0.0%
29.2%
74.8%
本当のところ、英語を習得したいという欲望はない。
25.2%
82.6%
0%
10%
20%
30%
40%
0.7%
0.0%
17.0% 0.3%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
「同意」グループの割合の1位から3位(上のグラフではオレンジ色の線で囲んで示した)は、内
発的動機づけに分類される「英語を使って国際的に仕事をしている人を、格好いいと思う。」
(「同意」グル
ープの割合が 93.4%、以下同じ)および「英語を使って難なく意思疎通をしているような人が、将来の理想
の自分だ。」
(83.6%)、外発的動機づけに分類される「自分の将来の仕事に必要になるから、英語を勉強
することは大切だ。」
(90.5%)である。いずれも「将来の英語使用」に関わる項目である。このことか
ら、大半の生徒は「習得した英語を使って将来活躍する」ことの可能性を認識し、
「英語を使って活躍
する自分を「将来の理想的自己像」と考えていることが分かる。
上記に次いで「同意」グループの割合が多いのは、グラフ上で緑色の線で囲んだ「英語のクラスが好
きで、この先もっと英語を勉強するのが楽しみだ。」
(75.7%)、
「英語を一緒に話せる外国人の友達がいたら
いいのに、と思う。」(68.8%)である。1位から3位が「将来の英語使用」に関する項目であったのに
対して、この2項目は「現在の英語学習と英語使用」に関わる内発的動機づけを問うものである。7
割程度の生徒は、今、英語を学んだり、使用したりすることに対しても意欲的であることが見て取れ
る。
一方で、
「英語を勉強している主な理由は、大学受験だ。」では、
「大学受験」が外発的動機づけとなっ
ているかどうかについて問うているが、この「同意」グループの割合は 63.6%である(上のグラフで
は青色の線で囲んで示している)。さらに、前ページのグラフに戻り、
「同意」の内訳を見てみると、
「4.
少しだけ同意」が最も多く 32.1%で、「5. 同意」(17.4%)と「6. 強く同意」
(14.1%)に比べて高い
数字になっている。大学受験は、英語学習の動機づけとしてある程度影響を及ぼしているものの、他
の内発的動機づけ、外発的動機づけに関する項目に比べると、その影響力はやや少ないようである。
なお、今回のアンケートは、高校1年時のものであるため、入試が近づくにつれてこの認識が変化す
るのかどうか、高校2年次、3年次に実施予定のアンケートで追跡したい。
さらに Q7 では、
「日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。」
「本当のところ、英語を習得したい
という欲望はない。」という項目で、生徒が、動機づけがない状態にあるかどうかも聞いている。この
2項目は、いずれも「反対」グループの割合が 70.2%、82.6%と多い。これは、前者が「自分の将来
の仕事に必要になるから、英語を勉強することは大切だ。」、後者が「英語を使って難なく意思疎通をしてい
るような人が、将来の理想の自分だ。」とほぼ対をなす考えであることを鑑みると、当然の結果と言える。
38
最後に、大学入試の出題形式について問うた「大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。」に
ついてであるが、
「反対」グループの割合が 74.8%と、否定的な生徒が多かった。英語ができるように
はなりたいが、入試でスピーキングを評価されることは避けたい、ということのようである。
■学校別
英語学習の動機づけに、学校による特徴はあるだろうか。
「同意」グループの割合を学校別に算出し、
私立 A 高校の「同意」グループにおける割合が多い順に並べたのが下のグラフである。
学校別 「強く同意する」「同意する」「少しだけ同意する」を合計した割合
私立A高校
公立B高校
公立C高校
96.3%
94.0%
90.1%
英語を使って国際的に仕事をして いる人を、格好いいと思う。
自分の将来の仕事に必要になるから、英語を勉強することは大切だ。
76.9%
英語を使って難なく意思疎通をしているような人が、将来の理想の自分だ。
92.5%
89.6%
67.0%
英語のクラスが好きで、この先もっと英語を勉強するのが楽しみだ。
67.0%
英語を一緒に話せる外国人の友達がいたらいいのに、と思う。
49.5%
45.0%
英語を勉強している主な理由は、 大学受験だ。
日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。
18.7%
大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。
12.1%
95.0%
97.0%
80.0%
79.1%
78.8%
76.1%
73.9%
64.8%
38.8%
36.3%
26.9%
37.5%
17.5%
11.9%
24.2%
本当のところ、英語を習得したいという欲望はない。
0%
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
まず目につくのは、上のグラフでオレンジ色の線で囲んだ3つの項目、
「自分の将来の仕事に必要に
なるから、英語を勉強することは大切だ。」(A 高校が 95.0%、B 高校が 97.0%、C 高校が 76.9%)、
「英
語を使って難なく意思疎通をしているような人が、将来の理想の自分だ。」(A 高校が 92.5%、B 高校が
89.6%、C 高校が 67.0%)、
「英語を一緒に話せる外国人の友達がいたらいいのに、と思う。」(A 高校が
78.8%、B 高校が 76.1%、C 高校が 49.5%)において、C 高校の「同意」グループの割合が、他の2
校に比べてそれぞれ約 20 ポイントまたはそれ以上少ないことである。A 高校では、都合により、TSST
の受験及びアンケートは希望者のみが対象となった。また、B 高校では、全員が TSST を受験してい
るが、英語教育や異文化理解に重点を置く専門学科を有しているという特徴がある。一方で、C 高校
は、英語教育よりむしろ理系の教育が盛んな学校であり、TSST は原則として普通科の全員が受験して
いる。A、B 高校の TSST 受験者は、C 高校に比べて、もともと英語学習に興味があり、意欲の高い生
徒が集まっている可能性がある。この違いが、生徒の英語学習への動機づけの強さに影響を及ぼして
いるのかもしれない。
「英語を勉強している主な理由は、大学受験だ。」
(上のグラフで緑色で囲んだ項目)でも、
「同意」グ
ループの割合に、学校による差が見られる。A 高校が 45.0%に対し、B 高校が 73.9%、C 高校が 64.8%
と、A 高校が他の2校に比べて少ない。A 高校のみ大学付属の私立校であり、卒業生の約9割の生徒
が系列大学に付属推薦により進学することなどが、
「大学受験」が英語学習への動機づけとなっている
生徒の割合が少ないことにつながっているのかもしれない。
39
動機づけがない状態かどうかを問う項目「日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。」
(前ペー
ジのグラフで青色で囲んだ項目)は、B 高校の割合が他の2校に比べて少ない(A 高校が 38.8%、B
高校が 18.7%、C 高校が 36.3%)。また、
「本当のところ、英語を習得したいという欲望はない。」において
も、A 高校が 17.5%、B 高校が 11.9%、C 高校が 24.2%と、差は少ないが、B 高校の割合が少ないと
いう点では共通している。B 高校では、他の2校に比べて、英語学習に後ろ向きな生徒の割合が少な
いと言える。
最後に、
「大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。」については、A 高校の「同意」グルー
プの割合が最も多く 37.5%、B 高校が 26.9%、C 高校が 12.1%であった。上で指摘したように、A 高
校と B 高校では、英語に興味があると思われる生徒が調査協力者に多いこと、さらに A 高校では、大
学受験(一般受験)に直面する生徒が少ないことが、この差に影響しているのかもしれない。
■TSST レベル別
生徒の TSST のレベルは、英語学習の動機づけと関係があるだろうか。下のグラフでは、TSST2~
4のレベル別に「同意」グループの割合を算出し、レベル2の「同意」グループの割合が多い順に並
べた。
TSST 2~4 「強く同意する」「同意する」「少しだけ同意する」を合計した割合
2
3
4
94.9%
92.2%
96.6%
英語を使って国際的に仕事をしている人を、格好いいと思う。
79.5%
自分の将来の仕事に必要になるから、英語を勉強することは大切だ。
90.7%
96.6%
76.9%
82.4%
91.5%
英語を使って難なく意思疎通をしているような人が、将来の理想の自分だ。
61.5%
英語のクラスが好きで、この先もっと英語を勉強するのが楽しみだ。
76.5%
81.4%
61.5%
67.2%
英語を一緒に話せる外国人の友達がいたらいいのに、と思う。
78.0%
59.0%
64.2%
64.4%
英語を勉強している主な理由は、 大学受験だ。
日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。
28.4%
25.4%
本当のところ、英語を習得したいという欲望はない。
5.1%
18.6%
41.0%
28.2%
20.5%
23.5%
32.2%
大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。
0%
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
内発的・外発的動機づけに関する6項目のうち、上のグラフでオレンジ色の線で囲んだ4項目(「自
分の将来の仕事に必要になるから、英語を勉強することは大切だ。」「英語を使って難なく意思疎通をしてい
るような人が、将来の理想の自分だ。」
「英語のクラスが好きで、この先もっと英語を勉強するのが楽しみだ。」
「英語を一緒に話せる外国人の友達がいたらいいのに、と思う。」)において、TSST のレベルが上がれば
上がるほど、「同意」グループの割合が増え、レベル2と4では約 15 ポイントまたはそれ以上の差が
ある。また、
「英語を使って国際的に仕事をしている人を、格好いいと思う。」は、
「同意」グループの割合
には大きな差はないが(レベル2が 94.9%、3が 92.2%、4が 96.6%)
、その内訳を見ると、「6. 強
く同意」が、レベル2で 33.3%、3で 50.5%、4で 67.8%と、レベルに応じて約 17 ポイントずつ多
くなっていた。以上のことから、TSST のレベルが高い生徒の方が全般的により強く英語学習への動機
を持つ傾向があると分かる。
40
ただし、
「英語を勉強している主な理由は、大学受験だ。」に関しては、
「同意」グループの割合に大き
な差はない(レベル2が 59.0%、3が 64.2%、5が 64.4%)。「6. 強く同意」を見た場合でも、レベ
ル2が 10.3%、3が 15.7%、4が 11.9%と、レベルに応じた大きなポイント差は見られず、TSST の
レベルとの関係性は確認できない。大学受験に関しては、むしろ p.39 で見たように、学校ごとの特徴
が大きく影響しているようである。
動機づけがない状態かどうかを問う2つの項目「日本にいる限り、英語ができなくて困ることはない。」
(レベル2の「同意」グループの割合が 41.0%、3が 28.4%、4が 25.4%)、
「本当のところ、英語を習
得したいという欲望はない。」(レベル2が 28.2%、3が 18.6%、4が 5.1%)については、動機づけに
関する項目とは反対に、レベルが上がれば上がるほど、「同意」グループの割合が少なかった。
以上のことから、TSST のレベルが高い生徒は英語学習への動機づけがより高い、もしくは、英語学
習への動機づけが高いとスピーキング能力に良い影響があり TSST の評価が高くなる、ということが
言えそうである。
最後に、
「大学入試にスピーキングテストも含むべきだと思う。」は、
「同意」グループの割合が、レベル
2が 20.5%、3が 23.5%、4が 32.2%と、レベル2、3に比べて、レベル4が高い結果となった。
■TSST 以外の英語テストについて■
Q8
あなたが受けた英語テストの「最新」の結果と受験時期を教えてください。
GTEC for Students
/
英語検定試験
/
大学受験模擬試験
テストの結果を回答した人は、GTEC for Students 12 人、英語検定試験(以下「英検」と記す)190
人、大学受験模擬試験(以下「大学受験模試」と記す)55 人であった。分析対象者 305 人の中で占め
る割合は、GTEC for Students 3.9%、英検 62.3%、大学受験模擬試験 18.0%である。ここでは、比
較的サンプル数の多い英検と大学受験模試についてのみ結果を分析する。GTEC for Students につい
ては、サンプル数が十分でなかったため、今回は分析対象外とした。
<英検>
英検の結果を回答した人数とその割合を以下に示す。
英検保有級
英検保有級
5級
4級
3級
準2級
2級
準1級
計
人数
割合
3
1.6%
7
3.7%
107
56.3%
66
34.7%
6
3.2%
1
0.5%
190 100.0%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
5級
4級
3級
準2級
2級
準1級
英検保有級割合のうち最も多いのは、56.3%を占める3級、次いで 34.7%を占める準2級である。
3級は、文部科学省が「中学卒業段階の英語力の達成目標」としており、準2級は、同じく文部科学
省が、2級と共に「高校卒業段階の英語力の達成目標」としている。英検と TSST との相関を見るた
41
め、5級を1、4級を2、3級を3、準2級を4、2級を5、準1級を6と置き換えて相関係数を算
出したところ、0.46 であった。これは、「中程度の相関がある」と言える。
調査協力校全てで、TSST は生徒全員が高校入学後に受験しているが、英検は、受験年月が判明して
いるものであっても、受験時期が 2010 年から 2015 年までと生徒によってまちまちである。この違い
が、相関係数に影響を及ぼしてはいないだろうか。それを調べるため、調査対象となっている高校1
年生が高校に入学する前の 2015 年3月以前と、入学した同年4月以降に分けて、英検を受験した時期
と保有級との関係を見てみた。2015 年3月以前に英検を取得したのは 121 人、4月以降は 55 人、時
期が不明等で分類不能だったのは 14 人である。下のグラフで見ると、2015 年3月以前に受験した生
徒の英検保有級の割合は、
3級が 74.4%と多く準2級が 16.5%である。
英検級保持者に限って言えば、
その多くが高校入学時点で「中学卒業段階の英語力の達成目標」を達成していたことになる。 また、
2015 年4月以降に英検を取得した生徒の内訳は3級が 16.4%で準2級が 78.2%と、ほぼ逆転してい
ることから、高校入学後は、準2級に挑戦する生徒が多いと言える。なお、2015 年3月以前に受験し
た生徒の保有級と TSST レベル、2015 年4月以降に受験した生徒の保有級と TSST レベルとの相関は
いずれも 0.44 で、英検保有級全体と TSST の相関係数 0.46 との大きな違いは見られなかった。
取得時期別 英検保有級
5級
4級
3級
準2級
2015年3月以前 1.7%
4.1%
準1級
74.4%
2015年4月以降0.0% 16.4%
10%
16.5% 2.5%
0.8%
78.2%
分類不能 7.1% 14.3%
0%
2級
5.5%
0.0%
57.1%
20%
30%
40%
50%
21.4% 0.0%
60%
70%
80%
90% 100%
■学校別
今回の分析対象者のうち英検級保有者は全体の 62.3%であったが、学校による傾向の違いがあるか
を見るため、英検保有級の割合を学校別に示したのが下のグラフである。私立 A 高校、公立 C 高校で
は3級保持者の割合が最も多い(3級は A 高校で 63.6%、B 高校で 30.3%、C 高校で 80.0%)
。一方
で、公立 B 高校では準2級の割合が最も多くなっている(準2級は A 高校で 22.7%、B 高校で 63.2%、
C 高校で 11.4%)。TSST においても、学校別に見ると、A 高校と C 高校ではレベル4よりレベル2の
割合が多い一方、B 高校ではレベル4の割合の方が多く、B 高校の生徒のスピーキング力の分布が他
の2校より高い方に寄っている結果であったが、英検についてもそれと類似した傾向が見られた。
学校別 英検保有級
5級
4級
3級
私立A高校 6.8%6.8%
公立B高校0.0%
2級
準1級
63.6%
30.3%
22.7% 0.0%
63.2%
公立C高校0.0%
5.7%
0%
準2級
5.3%
1.3%
80.0%
10%
20%
30%
40%
50%
42
11.4%2.9%
0.0%
60%
70%
80%
90% 100%
<大学受験模擬試験>
大学受験模試の偏差値保持者における、偏差値の割合を 10 刻みで示したのが下の表とグラフである。
偏差値 50~60 が最も多く 30.9%、次いで 60~70 の 27.3%となっている。学校別に分けた場合、統計
データとして扱うにはサンプル数が十分でないため分析対象外とした。なお、大学受験模試の偏差値
と TSST との相関係数は 0.51 で、英検と同様に、
「中程度の相関がある」結果となった。
大学受験模擬試験 偏差値
大学受験模擬試験
偏差値
30~40
40~50
50~60
60~70
70~80
80~90
計
40%
人数
4
10
17
15
8
1
55
割合
7.3%
18.2%
30.9%
27.3%
14.5%
1.8%
100.0%
30%
20%
10%
0%
30~40
40~50
50~60
60~70
70~80
80~90
■TSST について■
Q9
TSST 受験時には今の実力を発揮できたと思いますか。
(ひとつ選択)
1. 非常にそう思う
2. そう思う
3. わからない
4. そう思わない
5. 全くそう思わない
→その理由を教えてください。(自由記述)
TSSTで実力を発揮できたか
人数
4
非常にそう思う
割合
1.3%
人数
47
そう思う
割合
15.4%
人数
83
わからない
割合
27.2%
人数
132
そう思わない
割合
43.3%
人数
38
全くそう思わない
割合
12.5%
人数
1
無回答
割合
0.3%
人数
305
計
割合
100.0%
TSSTで実力を発揮できたか
非常にそう思う,
1.3%
全くそう思わない,
12.5%
そう思う,
15.4%
無回答, 0.3%
そう思わない,
43.3%
わからない,
27.2%
肯定的な感想を述べた生徒(「非常にそう思う」
「そう思う」の合計)が 16.7%、
「わからない」が 27.2%、
否定的な感想を述べた生徒(「そう思わない」「全くそう思わない」の合計)が 55.8%である。
「実力を発
揮できなかった」生徒が「発揮できた」生徒の3倍以上に上った。なぜそのように感じたのだろうか。
生徒には回答理由も自由に記述してもらった。
「そう思わない」
「全くそう思わない」と回答した生徒の
うち、回答理由を記載したのは 149 人。その内容は、下記の6つに分類できる。各カテゴリーの下に
は、回答の代表例を記載した。
43
■あまり話せなかった(=発話量が少なかった)
・緊張してしまって全然話すことができなかった。
・とっさには単語が出てこなかった。
・話が途中で切れてしまったから。
・すらすらと答えることができなかったから。
■うまく話せなかった(=発話の質に不満)
・覚えている単語の使い方が分からなかった。
・話すには話したけど、詰まったりしたから。
・焦ってしまい、文法がめちゃくちゃになってしまった。
・何回も言い直したり、パッと伝えたいことが出なかったりしたから。
■緊張した・焦った
・初めて受けたので緊張があったから。
・焦ってしまって冷静に問題に向きあえなかった。
■時間が短い
・時間が短くて、考えをまとめられなかったから。
・時間を気にしすぎたから。
・答えることに時間がかかったから。
・時間制限があり、焦ってしまった。
■質問が難しい
・質問が予想以上に難しく、焦ってしまった。
・質問内容があまりに抽象的だったから。
■その他・分類不能
・初めてやる試験の方法だったため。
・親がすぐ近くにおり、集中できなかったため。
・自分の実力の無さに気づいたから。
・電話で相手を見て話すことができなかったから。
・知らない英単語があった。
・適当に受験したから。
下のグラフでは、上記6カテゴリーの回答割合を「その他・分類不能」を除き、多い順に示した。
なお、複数カテゴリーにまたがり、厳密な分類が難しい回答は、より要素が強いと思われるカテゴリ
ーに分類するか、
「その他・分類不能」とした。回答割合が最も多かった「あまり話せなかった(量)」が
44.3%、続く「うまく話せなかった(質)」が 16.8%なので、
「あまり話せなかった(量)」が群を抜いて多い。
「予測できない質問に対してその時その場で限られた時間で話す」というテストの形式に対して、
「十
分に発話すること自体が難しい」と感じた生徒が多かったことが読み取れる。
TSSTで実力を発揮できなかった理由
その他・分類
不能, 15.4%
質問が難し
い, 4.7%
時間が短
い, 6.0%
あまり話せな
かった(量),
44.3%
緊張した・
焦った,
12.8%
うまく話せ
なかった
(質), 16.8%
44
■TSST レベル別
生徒の TSST レベルにより、TSST で実力を発揮できたかどうかの印象は異なるのだろうか。TSST
2~4のレベルごとに、回答割合を示したのが下のグラフである。「そう思わない」「全くそう思わない」
を合計した割合は、レベル2が 66.7%、3が 52.0%、4が 61.0%と、レベル3が最も少なくなってい
る。
「わからない」は、レベル2が 17.9%、3が 31.4%、4が 18.6%と、レベル3が最も多い。レベル
2、4に比べると、レベル3の生徒は、
「自分が持っているスピーキング力を出しきれているのかどう
か分からない」と感じた生徒が多かったようである。
TSST 2~4 TSSTで実力を発揮できたか
非常にそう思う
2 0.0%
3 1.5%
4 1.7%
0%
15.4%
そう思う
わからない
17.9%
そう思わない
38.5%
14.7%
28.2%
31.4%
18.6%
10%
41.7%
18.6%
20%
全くそう思わない
30%
10.3%
52.5%
40%
50%
60%
8.5%
70%
80%
90%
100%
生徒の TSST レベルと、
「TSST で実力を発揮できなかった理由」に関係があるかどうかも調べるた
め、
「そう思わない」
「全くそう思わない」と回答し、回答理由も記述した生徒のうち、サンプル数が一定
以上あったレベル3(サンプル数 96 人)、レベル4(サンプル数 33 人)について、回答理由の割合を
示したのが下のグラフである。レベル3では、「あまり話せなかった(量)」が 49.0%と約半数を占める
が、レベル4では 24.2%と半減している。また、それと反比例するように、
「緊張した・焦った」が、レ
ベル3の 9.4%から、レベル4では 27.3%に増えている。TSST を受験することを通して、レベル3の
生徒の多くは「発話量を増やす」ことを、レベル4の生徒は「緊張したり、焦ったりしないで落ち着
いて話す」ことを、スピーキングにおける課題と感じたのかもしれない。
TSST 3, 4 TSSTで実力を発揮できなかった理由
あまり話せなかった(量)
うまく話せなかった(質)
緊張した・焦った
時間が短い
質問が難しい
その他・分類不能
3
49.0%
4
24.2%
0%
10%
17.7%
12.1%
20%
30%
27.3%
40%
50%
45
9.4%
9.1%
60%
70%
5.2%4.2%
6.1%
80%
14.6%
21.2%
90%
100%
Q10
TSST は英語のスピーキング能力が測れる有効な試験だと思いますか。
(ひとつ選択)
1. 非常にそう思う
2. そう思う
3. わからない
4. そう思わない
5. 全くそう思わない
→その理由を教えてください。(自由記述)
TSSTはスピーキング能力が測れる有効な
試験か
人数
75
非常にそう思う
割合
24.6%
人数
164
そう思う
割合
53.8%
人数
49
わからない
割合
16.1%
人数
15
そう思わない
割合
4.9%
人数
2
全くそう思わない
割合
0.7%
人数
1
無回答
割合
0.0%
人数
305
計
割合
100.0%
TSSTはスピーキング能力が測れる有効な試験か
そう思わない,
4.9%
全くそう思わな
い, 0.7%
無回答, 0.0%
わからない,
16.1%
非常にそう思う,
24.6%
そう思う, 53.8%
肯定的な感想を述べた生徒(「非常にそう思う」
「そう思う」の合計)が 78.4%、
「わからない」が 16.1%、
否定的な感想を述べた生徒(「そう思わない」
「全くそう思わない」の合計)が 5.6%である。Q9 で「実力
を発揮できたか」に肯定的に回答した人が 16.7%だったことと比べると対照的な結果である。
なぜ「有効な試験だ」と思ったのかを調べるため、
「非常にそう思う」「そう思う」と回答した生徒で、
回答理由の自由記述があった 188 人のコメントを、以下の9カテゴリーに分類し、
「その他・分類不能」
を除く回答割合を多い順に示したのが、次ページのグラフである。
■テストの形式が良い
・TSST の出題方式がネイティブスピーカーと会話する時のようだったから。
・電話の対応ということで、本当に一対一でテストを受けられるから。
・日本語での説明もあり、求められるのはスピーキング力だけ。
■その場でテーマを与えられて即座に話すから
・緊張した中でどのような質問が来るかわからず、すぐに答えなければならないから。
・質問から答えるまでの時間が短いので、本当の力が問われると思うから。
・どんな質問をされるのかその時にならないと分からないから。
■実際に話すから
・自分で考えた意見を英語で言うから。
・文の組み立てと発音をしなければならないから。
・自分の思っていることがいかに話せるかというのが試されるから。
46
■質問のトピックが良い・種類が多い
・日常でよくする話が問題になっているから。
・身近な話題から少し難しい話題までたくさんあるから。
・話題が多いので、さまざまなことを言わなければならないから。
■評価方法・内容が良い
・いろいろな観点からスピーキング能力を測っているから。
・実際にいろいろな人が聞いてくれるから。
・(受験後にもらう)アドバイスがまさに今の私の状況だったから。
■実力が分かる
・自分のしゃべる英語がどれだけ通じるか分かるから。
・スピーキング能力を測る機会があまりないから。
・ある意味数値で出るので分かりやすい。
■会話力が上がる
・短い時間でスラスラ言う力が身につくと思うから。
・話した方が英語を得意にできるから。
・何を聞かれるか分からない中、スピーキングテストをするのは自分の力が上がると思う。
■話す機会となる
・話す機会がめったに日常でないから。
■その他・分類不能
・海外に行った時に一番大切なのはやはりコミュニケーションができるかだと思うから。
・知識がないとたくさん話せないと思うから。
TSSTが有効な試験だと思う理由
会話力が上がる,
3.2%
その他・分類不
能, 11.7%
その場でテーマを
与えられて即座に
話すから, 23.9%
話す機会となる,
3.7%
評価方法・内容が
良い, 4.3%
テストの形式が良
い, 6.9%
実力が分かる,
21.3%
実際に話すから,
11.2%
質問のトピック
が良い・種類
が多い, 13.8%
47
TSST が、英語のスピーキング能力が測れる有効な試験だと思う理由は、
「その場でテーマを与えられ
て即座に話すから」が最も多い 23.9%、次いで「実力が分かる」の 21.3%である。「その時・その場で
英語を話す機会は少ないが、挑戦して実力を測りたいと思っている」意欲的な生徒の姿が浮かび上が
ってくる。
■TSST レベル別
生徒の TSST のレベルにより、TSST の受け止め方に違いはあるだろうか。TSST2~4のレベル別
に、回答割合を示したのが下のグラフである。
「非常にそう思う」
「そう思う」生徒の割合は、レベル2が
71.8%、3が 78.9%、4が 81.3%で、レベルが上がるにつれて多くなっている。TSST はどのレベル
の生徒にも概ね肯定的に受け止められてはいるが、レベルが高い生徒からの評価が高い傾向にある。
TSST 2~4 TSSTはスピーキング能力が測れる有効な試験か
非常にそう思う
2
そう思う
わからない
20.5%
3
23.1%
54.4%
27.1%
0%
10%
全くそう思わない
51.3%
24.5%
4
そう思わない
54.2%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
5.1%
0.0%
16.2%
3.9%
1.0%
11.9%
6.8%
0.0%
80%
90%
100%
生徒の TSST レベルと、
「TSST が有効な試験だと思う理由」に関係があるかどうかも調べるため、
「非常にそう思う」「そう思う」と回答し、回答理由も記述した生徒のうち、サンプル数が一定以上あっ
たレベル3(サンプル数 127 人)、レベル4(サンプル数 42 人)について、回答理由の割合を示した
のが下のグラフである。レベルによる特筆すべき違いは見られなかった。
TSST 3, 4 TSSTが有効な試験だと思う理由
テストの形式が良い
その場でテーマを与えられて即座に話すから
実際に話すから
質問のトピックが良い・種類が多い
評価方法・内容が良い
実力が分かる
会話力が上がる
話す機会となる
その他・分類不能
3
4
5.5%
22.8%
7.1%
0%
12.6%
31.0%
10%
20%
14.2%
7.1%
30%
40%
4.7%
19.0%
50%
48
18.1%
4.8%
60%
70%
3.9%4.7%
19.0%
80%
13.4%
0.0%
2.4% 9.5%
90%
100%
Q11
TSST をまた受けたいと思いますか。
(ひとつ選択)
1. 非常にそう思う
2. そう思う
3. わからない
4. そう思わない
5. 全くそう思わない
→その理由を教えてください。(自由記述)
TSSTをまた受けたいか
人数
非常にそう思う
割合
人数
そう思う
割合
人数
わからない
割合
人数
そう思わない
割合
人数
全くそう思わない
割合
人数
無回答
割合
人数
計
割合
TSSTをまた受けたいか
56
18.4%
139
45.6%
45
14.8%
48
15.7%
17
5.6%
0
0.0%
305
100.0%
全くそう思わない,
5.6%
わからない,
14.8%
無回答, 0.0%
そう思わない,
15.7%
そう思う, 45.6%
非常にそ
う思う,
18.4%
肯定的な感想を述べた生徒(「非常にそう思う」
「そう思う」の合計)が 64.0%、
「わからない」が 14.8%、
否定的な感想を述べた生徒(「そう思わない」「全くそう思わない」の合計)が 21.3%である。
「また受け
たい」生徒が、
「受けたくない」生徒の約3倍に上る。
「また受けたい」のはなぜなのだろうか。
「非常にそう思う」
「そう思う」と回答した生徒で、回答理由
の自由記述があった 166 人のコメントを、以下の7カテゴリーに分類し、
「その他・分類不能」を除く
回答割合を多い順に示したのが、次ページのグラフである。
■(実力を発揮できなかったので)リベンジしたい
・今回残念な結果になってしまったのでもう1回挑戦して良い結果を出したい。
・実力を発揮できなかったから。
・しっかり緊張しないで次は受けたいから。
■成長を実感したい
・1年でどれくらい成長したか知りたいから。
・単語の量も、表現も増えるのが楽しみだから。
・もっと一生懸命勉強してきた成果が前回とどう違うか確かめたいから。
■もっと上のレベルを狙いたい
・次は今よりも上のレベルに行きたいから。
・次のレベルを目指していこうと思った。
49
■会話力をアップさせたい
・回数を重ねて英会話の能力をつけたい。
・海外の人と接することができるようになりたいから。
・もっと答えられるようになりたいから。
■実力を試したい
・自分の実力をちゃんと確めたいから。
・普段あまり自分のスピーキング能力を測れないので良い機会だから。
■テストの受験が楽しい
・次はもっといい回答をしたいし、トーキングしているようで楽しかったから。
・話すのが楽しくなった。
・緊張感の中テストを行って、終わったあと英語を話せて楽しかったから。
■その他・分類不能
・自分の話す力の弱点が分かるから。
・問題がどのようなものか分かったから。
・質問の内容が面白かったから。
TSSTをまた受けたい理由
その他・分類不
能, 15.1%
リベンジしたい,
20.5%
テストの受験が楽
しい, 6.6%
会話力をアップさ
せたい, 7.8%
もっと上のレベル
を狙いたい, 9.6%
実力を試したい,
20.5%
成長を実感した
い, 19.9%
「TSST をまた受けたい」理由で最も多かったのは、「リベンジしたい」と「実力を試したい」がそれ
ぞれ 20.5%。「リベンジしたい」が多かったことについては、Q9 で、55.8%の生徒が「実力を発揮でき
なかった」と思っていることから考えると、当然の結果と思われる。
「実力を試したい」は、Q10 で「TSST
が有効な試験だと思う理由」を述べた生徒のうち 21.3%が、TSST について「実力が分かる」ことを
評価していた点とも符合する。19.9%と僅差で3位の「成長を実感したい」、続く「もっと上のレベルを
狙いたい」
(9.6%)、
「会話力をアップさせたい」
(7.8%)の3項目には、TSST がスピーキング力を数値
で評価するテストである点を前向きに捉えて、成長やレベルアップしようとする生徒の姿が見える。
6.6%と割合は少ないが、
「テストの受験が楽しい」というものもあった。
50
■TSST レベル別
生徒の TSST のレベルにより、TSST をまた受けたいと思う割合は異なるのだろうか。TSST2~4
のレベルごとの回答割合を示したのが下のグラフである。
「非常にそう思う」と「そう思う」の生徒の割
合の合計は、レベル2が 61.5%、3が 62.3%、4が 71.2%で、レベル2、3に比べて4が約 10 ポイ
ント多い結果となった。
TSST 2~4 TSSTをまた受けたいか
非常にそう思う
2
そう思う
12.8%
3
10%
20%
全くそう思わない
12.8%
46.6%
30.5%
0%
そう思わない
48.7%
15.7%
4
わからない
13.7%
40.7%
30%
40%
50%
無回答
20.5%
5.1%
0.0%
17.6%
6.4%
0.0%
18.6%
60%
70%
80%
6.8% 3.4%
0.0%
90%
100%
生徒の TSST レベルと「TSST をまた受けたい理由」に関係があるかどうかも調べるため、「非常に
そう思う」「そう思う」と回答し、回答理由も記述した生徒のうち、サンプル数が一定以上あったレベル
3(サンプル数 108 人)
、レベル4(サンプル数 40 人)について、回答理由の割合を示したのが下の
グラフである。
「リベンジしたい」
(レベル3が 23.1%、4が 12.5%)、
「成長を実感したい」
(レベル3が
22.2%、4が 12.5%)の割合が、レベル3の生徒はレベル4の生徒に比べてそれぞれ約 10 ポイント多
い。レベル4の生徒に比べて自身の伸び代を感じているのかもしれない。
TSST 3, 4 TSSTをまた受けたい理由
リベンジしたい
成長を実感したい
もっと上のレベルを狙いたい
会話力をアップさせたい
実力を試したい
テストの受験が楽しい
その他・分類不能
3
23.1%
4
12.5%
0%
10%
22.2%
12.5%
20%
9.3%
12.5%
5.0%
30%
40%
8.3%
20.0%
50%
51
23.1%
4.6%
7.5%
60%
70%
9.3%
30.0%
80%
90%
100%
5 調査協力校の英語教師の英語スピーキング能力
5.1 調査協力校の英語教師の英語スピーキング能力の分布
2015 年度の調査に際し、協力いただいた私立 A 高校、
公立 B 高校、公立 C 高校の英語教師にも TSST
受験とアンケート回答をお願いした。日本人の英語教師 30 人の TSST の結果は以下のとおりである。
英語教師 TSSTレベル分布
40%
30%
20%
TSST平均
全体
5.83
私立A校
6.23
公立B校
5.38
公立C校
5.67
10%
0%
TSST
人数
割合
1
2
3
4
1
2
3
4
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
5
6
7
5
6
7
2
10
10
7
6.7% 33.3% 33.3% 23.3%
8
8
1
3.3%
9
9
計
0
30
0.0% 100.0%
5.2 調査協力校の英語教師の日本人全体の中での位置づけ
サンプルは少ないが、協力校の英語教師の英語スピーキングレベルは、TSST の受験者全体と比較し
てどのような特徴があるのだろうか。p.9 で示した調査対象 23,218 人のレベル分布と比較してみる。
TSST 受験者全体の分布のピークはレベル4であるが、今回の調査対象の英語教師の分布のピークは
レベル5、6になっている。平均レベルを見ると TSST 全体が 4.23 に対し教師は 5.83 と 1.60 レベル
高くなっている。ちなみに、『アルク英語教育実態レポート vol.5』で指摘があるとおり、企業の「業
種別」で見て最もレベルの高い部類に入る「銀行業」1,771 人の TSST 平均は 4.84 である。高校教師
はこれより 0.99 レベル高い結果になっている。
TSST レベル6とは、
「海外に仕事で赴任あるいは留学しても、自分の専門分野のことが母語で分か
っていれば、多少の不自由はあるものの大きな支障なく業務なり研究なりをこなせる」レベルである。
英語教師の場合もレベル6以上のスピーキング能力が備わっていれば、生徒のレベルと授業の目的
に応じて準備をすれば、英語を使って英語の授業を充分に運営できると思われる。すでに見たように、
今回の調査対象の高校1年生 323 人の TSST の分布は、
全体の 67.2%を占めるレベル3をピークとし、
平均レベルは 3.10 であった。英語を使って英語の授業をする場合、TSST レベル3の生徒を前に、レ
ベル5、6の教師が英語を使っている、という実態が浮かび上ってきた。
では、英語教師はどんな思いを抱きながら、どの程度教室で英語を使っているのだろうか。以下に
まとめるアンケート結果からその姿を見てみよう。
52
6 英語教師への調査に見る高校英語授業の実態
英語教師の TSST 受験者 30 人にはアンケートもお願いした。アンケート結果の公表に同意いただい
た 17 人のアンケートの回答結果とその分析を、質問項目ごとに示す。
■授業での英語使用状況■
Q1
授業における教師自身の英語使用状況について。
(ひとつ選択)
1. 発話を概ね(75%程度以上)英語で行っている
2. 発話の半分以上(50~75%程度)を英語で行っている
3. 発話の半分未満(25~50%程度)を英語で行っている
4. 発話が英語であることはあまりない(25%程度未満)
授業における教師自身の英語使用状況
発話を概ね(75%程度以上)英語
人数
2
で行っている
割合
11.8%
発話の半分以上(50~75%程度) 人数
7
を英語で行っている
割合
41.2%
発話の半分未満(25~50%程度) 人数
5
を英語で行っている
割合
29.4%
発話が英語であることはあまりな
人数
3
い(25%程度未満)
割合
17.6%
人数
0
無回答
割合
0.0%
人数
17
計
割合
100.0%
授業における教師自身の英語使用状況
発話を概ね
(75%程度以上)
英語で行ってい
る, 11.8%
発話が英語であ
ることはあまりな
い(25%程度未
満), 17.6%
無回答, 0.0%
発話の半分以上
(50~75%程度)
を英語で行って
いる, 41.2%
発話の半分未満
(25~50%程度)
を英語で行って
いる, 29.4%
最も多いのは「発話の半分以上(50~75%程度)を英語で行っている」(41.2%)、次に「発話の半分未
満(25~50%程度)を英語で行っている」
(29.4%)である。
「発話を概ね(75%程度以上)英語で行っている」
(11.8%)も含めると、82.4%の教師が、授業中の発話をある程度英語で行っていることが分かる。
Q2
上記(Q1 の選択肢)を選んだ理由は何ですか。
(ひとつ選択)
1.
生徒が理解できないから
2.
文法など複雑な内容は日本語で行うべきだから
3.
英語使用に誤りが含まれる可能性があるから
4.
入試に役に立たないから
53
5.
日本のような英語を実際に使う機会の少ない環境では、英語使用の授業の実質的効果が少ないので、日本
語のみで言語知識の指導をすべきだ
6.
生徒が英語に触れる機会を増やすため、教師はできるだけ英語を使用すべきだ
7.
その他、コメントがあればお書きください
(授業における教師自身の)英語使用状況の理由
文法など複雑な内容は日本語で行うべきだから
生徒が理解できないから
その他
生徒が英語に触れる機会を増やすため、教師はできるだけ英語を使用す
べきだ
英語使用に誤りが含まれる可能性があるから
無回答
入試に役に立たないから
日本のような英語を実際に使う機会の少ない環境では、英語使用の授業
の実質的効果が少ないので、日本語のみで言語知識の指導をすべきだ
計
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
7
41.2%
3
17.6%
3
17.6%
2
11.8%
1
5.9%
1
5.9%
0
0.0%
0
0.0%
17
100.0%
(授業における教師自身の)英語使用状況の理由
日本のような英語を実際
に使う機会の少ない環
境では、英語使用の授
業の実質的効果が少な
いので、日本語のみで言
語知識の指導をすべき
だ, 0.0%
入試に役に立たないか
ら, 0.0%
無回答, 5.9%
英語使用に誤りが含ま
れる可能性があるから,
5.9%
文法など複雑な内容は
日本語で行うべきだから,
41.2%
その他, 17.6%
生徒が英語に触れる機
会を増やすため、教師は
できるだけ英語を使用す
べきだ, 11.8%
生徒が理解できないか
ら, 17.6%
Q1 で問うた教師自身が授業でどの程度英語を使用しているかについて、その理由を問うたのが Q2
である。
「文法など複雑な内容は日本語で行うべきだから」が最も多く 41.2%、次いで「生徒が理解でき
ないから」「その他」がそれぞれ 17.6%、さらに「生徒が英語に触れる機会を増やすため、教師はできる
だけ英語を使用すべきだ」が 11.8%、
「英語使用に誤りが含まれる可能性があるから」が 5.9%と続く。こ
こで注目したいのは、
「その他」と「生徒が英語に触れる機会を増やすため、教師はできるだけ英語を使
用すべきだ」以外の回答はすべて「教師の英語使用が(少)ないこと」の理由を説明する内容となって
いる、ということである。これらの選択肢を選んだ 11 人(64.7%)は、
「さまざまな事情から、あえ
て授業中に日本語を使っている、もしくは使わざるを得ない」という状況にあるのだろうと推察され
54
る。なお、
「日本のような英語を実際に使う機会の少ない環境では、英語使用の授業の実質的効果が少ない
ので、日本語のみで言語知識の指導をすべきだ」「入試に役立たないから」という理由を挙げた人は1人
もいなかった。
教師の英語使用状況とその理由には何らかの関連性があるのか、Q1 の選択項目と紐づけて考察する
ため、以下に Q1 の「教師自身の英語使用状況」と Q2 の「理由」を掛け合わせたグラフを示した。
教師自身の英語使用状況(Q1)とその理由(Q2)
生徒が理解できないから
発話を概ね(75%程度以上)英語で行っている
0
(n=2)
1
1
文法など複雑な内容は日本語で行うべ
きだから
英語使用に誤りが含まれる可能性が
あるから
発話の半分以上(50~75%程度)を英語で行って
いる(n=7)
1
発話の半分未満(25~50%程度)を英語で行って
いる(n=5)
1
発話が英語であることはあまりない(25%程度未
満)(n=3)
1
2
1
3
2
0
0
1
1
2
0
入試に役に立たないから
英語使用の授業の実質的効果が少な
いので、日本語のみで言語知識の指
導をすべきだ
生徒が英語に触れる機会を増やすた
め、教師はできるだけ英語を使用すべ
きだ。
その他
0
0
無回答
0
2
4
6
8
まず、Q1 での英語使用状況について、「発話を概ね(75%程度以上)英語で行っている」以外の回答を
した教師については、
「生徒が理解できないから」または「文法など複雑な内容は日本語で行うべきだか
ら」と答えた人が一定数以上いる(「50~75%程度」で3人、
「25~50%程度」で4人、
「25%程度未満」
で3人)ことに着目したい。
「文法」と「生徒が理解できるかどうか」は、授業で英語を比較的多く使
っている教師にもほとんど使っていない教師にも共通した「英語使用が(少)ない」理由になってい
るということである。逆に言えば、この点がクリアできれば、教師が英語を授業でより多く使える、
ということではないだろうか。
同じく「英語使用が(少)ない」理由を説明する「英語使用に誤りが含まれる可能性があるから」に
ついては、
「発話の半分以上(50~75%程度)を英語で行っている」うちの1人が英語使用状況の理由とし
て挙げていた。サンプル数が少ないので断定はできないが、英語使用割合が増えると、教師自身の英
語の誤りが気になり始めるのかもしれない。
「生徒が英語に触れる機会を増やすため、教師はできるだけ英語を使用すべきだ」については、Q1
で「発話の半分以上(50~75%程度)を英語で行っている」
「発話の半分未満(25~50%程度)を英語
で行っている」と答えた教師のうちそれぞれ1人がその理由として挙げていた。また、「発話を概ね
(75%程度以上)英語で行っている」で「その他」を選んだ1人も、
「教員のしゃべる英語が 100%は
理解できなくても、活動を通して目標を達成できるよう努力させるよう支援し、その過程で語学のト
レーニングができることが理想だと考えているため」と、
「生徒が英語に触れる機会を増やすため、教
師はできるだけ英語を使用すべきだ」の選択肢と類似したコメントを記載していた。このことは、英
55
語使用が多い、少ないにかかわらず「生徒のためにできるだけ多く英語を使用すべき」と考える教師
がいるということを示している。
最後に「その他」であるが、
「発話の半分以上(50~75%程度)を英語で行っている」を選んだ教師
で「その他」を選んだ2人は、自由記述で「目的に応じて」
「その時授業内でつけたい力による」と記
載していた。
これらの結果を総合すると、
「授業での英語使用割合が多い教師も、少ない教師も、英語を多く使用
したいと思っているが、文法指導や生徒の理解度などの都合により日本語を使うことがある」という
状況が浮かび上がってくる。その中で、目の前にいる生徒の状況やその授業で何を達成したいかに応
じて、実際に授業で使う英語の量を、教師が自身で決めて、あるいは学校方針により調節しているの
ではないだろうか。
Q3
授業における生徒の英語使用状況について。(ひとつ選択)
1. 言語活動の 75%程度以上を英語で行っている
2. 言語活動の 50~70%程度を英語で行っている
3. 言語活動の 25~50%程度を英語で行っている
4. 言語活動を英語で行うことはほとんどない(25%程度未満)
授業における生徒の英語使用状況
言語活動の75%程度以上を英語で行っている
言語活動の50~70%程度を英語で行っている
言語活動の25~50%程度を英語で行っている
言語活動を英語で行うことはほとんどない(25%程度未満)
計
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
1
5.9%
5
29.4%
9
52.9%
2
11.8%
17
100.0%
授業における生徒の英語使用状況
言語活動の75%
程度以上を英語
で行っている,
5.9%
言語活動を英語
で行うことはほと
んどない(25%程
度未満), 11.8%
言語活動の25~
50%程度を英語
で行っている,
52.9%
言語活動の50~
70%程度を英語
で行っている,
29.4%
56
Q1 においてもそうであったが、この設問に関しても、同じ学校に勤務する教師間でも回答が分かれ
ていた。授業スタイルの個人差、あるいはこの問いに含まれる「言語活動」という言葉の解釈の違い
に起因するのかもしれない。
Q1 で見た通り教師の英語使用は「発話の半分以上(50~75%程度)
」が最多の 41.2%、次が「発話
の半分未満(25~50%程度)」で 29.4%だった。生徒は「言語活動の 25~50%程度を英語で行ってい
る」が 52.9%で最も多く、次が「言語活動の 50~70%程度を英語で行っている」の 29.4%であった。
教師の英語使用割合と比べると、1位、2位が逆転している。
また、生徒の言語活動の半分以上を英語で行っている(「言語活動の 75%程度以上を英語で行ってい
る」と「言語活動の 50~70%程度を英語で行っている」の合計)教師は 35.3%である。p.13 で示した高
校生へのアンケートの Q1「あなた自身の受ける授業で、英語を使う場面はどの程度ありますか」の結
果では、
「授業・言語活動の 70%以上で英語を使っている」と「授業・言語活動の 50~70%で英語を使って
いる」を合計した割合は 52.8%であった。教師の回答結果と比較すると、
「言語活動の半分以上を英語
で行っている」と答えた割合は、生徒の方が 17.5 ポイント多い。高校生へのアンケートの Q2 に見ら
れるように(p.15 参照)
、高校生が「授業中、英語を使う」具体的な場面として、教師の英語を聞くな
どの受信活動も「授業・言語活動」に含めていることが影響しているのかもしれない。
教師と生徒の英語使用状況の関係はどのようになっているのだろうか。それを調べるため、Q1 で問
うた教師の英語使用割合が、Q3 で問うた生徒の英語使用割合より「多い」
「同じ」
「少ない」の3種に
分け、それぞれの割合を示したのが下のグラフである。
「教師と生徒の英語使用の割合が同じ」が 41.2%
と最も多く、次に「教師が生徒より英語使用の割合が多い」の 35.3%が続く。
「教師が生徒より英語使
用の割合が少ない」は 23.5%である。教師は、生徒と同等かそれ以上の割合で、授業で英語を使って
いる傾向があることが分かる。
授業における教師自身の英語使用状況(Q1)と
授業における生徒の英語使用状況(Q3)の関係
教師(Q1)=生徒(Q3)
(教師と生徒の英語使用の割合が同じ)
23.5%
41.2%
35.3%
Q4
教師(Q1)>生徒(Q3)
(教師が生徒より英語使用の割合が多い)
教師(Q1)<生徒(Q3)
(教師が生徒より英語使用の割合が少ない)
授業における生徒の英語発話の「誤り」にどう対処していますか。
(ひとつ選択)
1. 生徒の発話の誤りは、可能なかぎり注意して直す
2. 言語活動では発話の質より量を重視するので、生徒の発話の誤りの訂正は最小限にとどめる
3. 生徒の発話の誤りは、授業の目的に応じて適宜判断して対処する
4. その他の対処法(具体的に)
57
生徒の英語発話の「誤り」にどう対処していますか
生徒の発話の誤りは、授業の目的に応じて適宜判
人数
断して対処する
割合
言語活動では発話の質より量を重視するので、生徒 人数
の発話の誤りの訂正は最小限にとどめる
割合
人数
生徒の発話の誤りは、可能なかぎり注意して直す
割合
人数
その他の対処法
割合
人数
計
割合
生徒の英語発話の「誤り」にどう対処していますか
10
58.8%
5
29.4%
1
5.9%
1
5.9%
17
100.0%
その他の対処法,
5.9%
生徒の発話の誤り
は、可能なかぎり
注意して直す,
5.9%
生徒の発話の誤り
は、授業の目的に
応じて適宜判断し
て対処する, 58.8%
言語活動では発話
の質より量を重視
するので、生徒の
発話の誤りの訂正
は最小限にとどめ
る, 29.4%
「生徒の発話の誤りは、授業の目的に応じて、適宜判断して対処する」が 58.8%で最多である。目
の前の生徒の様子と授業目的を「適宜判断して」対処するのはごく自然なことであろう。
「言語活動で
は発話の質より量を重視するので、生徒の発話の誤りの訂正は、最小限にとどめる」が次に多い 29.4%
である。
「生徒の発話の誤りは、可能なかぎり注意して直す」は 5.9%と少なかった。
「その他の対処法」
として「教員が repeat して訂正している。例)生徒:I playing soccer.
教員:Oh, you play soccer.」
との具体例を記した回答もあった。
生徒へのアンケートの結果から、自宅学習においては発信型活動をあまり行っていない反面(p.25、
Q5 参照)、ほとんどの生徒が授業中には「実際に英語を使う」(p.19、Q3 参照)と判明した。その中
には、
「会話・ディスカッション」などの発信型活動も含まれている(p.16、Q2 参照)。スピーキング能力
を上げようとすれば、生徒同士のペアワークあるいは教師とのやり取りなどを通じて「授業中に英語
を使う練習を数多く行うこと」は不可欠である。一方で、p.11 で示したように、高校1年生 323 人の
TSST レベルの平均は 3.10 であり、このレベルの生徒は短いセンテンスであっても自ら作り出して発
話する際には「誤り」を犯す。スピーキング力の向上を目指した授業において、正しいセンテンスを
作れるよう指導することと、英語を話す体験を多く積むことのバランスをどう取るのか。
「誤り」にど
う対処するかは、授業目的との兼ね合いで判断する大きな課題だと思われる。
■授業での英語使用に対する考え方■
Q5
授業における自身の英語使用状況についてどう考えていますか。(ひとつ選択)
1. 言語活動の 75%程度以上を英語で行いたい
2. 言語活動の 50~70%程度を英語で行いたい
3. 言語活動の 25~50%程度を英語で行いたい
4. 言語活動を英語で行うことはほとんどなくしたい(25%程度未満)
58
(教師)自身の英語使用状況についての考え
人数
言語活動の75%程度以上を英語で行いたい
割合
人数
言語活動の50~70%程度を英語で行いたい
割合
人数
言語活動の25~50%程度を英語で行いたい
割合
言語活動を英語で行うことはほとんどなくしたい 人数
(25%程度未満)
割合
人数
計
割合
(教師)自身の英語使用状況についての考え
10
58.8%
6
35.3%
1
5.9%
0
0.0%
17
100.0%
言語活動の25~
50%程度を英語
で行いたい, 5.9%
言語活動の50~
70%程度を英語
で行いたい,
35.3%
言語活動を英語
で行うことはほと
んどなくしたい
(25%程度未満),
0.0%
言語活動の75%
程度以上を英語
で行いたい,
58.8%
ここからは英語教師としての自分の行動ではなく「思い」を問うている。
「言語活動の 75%程度以
上を英語で行いたい」が 58.8%で最多、
「言語活動を英語で行うことはほとんどなくしたい(25%程度
未満)」は該当者なしである。
「英語は英語を使って教えたい」という強い意志が表れている。
教師の英語使用についての考えと、英語使用状況の実態との関係はどのようになっているだろうか。
それを調べるため、Q1 で問うた授業における教師の英語使用割合(=実態)が、Q5 で問うた英語使
用状況についての考え(=理想)より「多い」「同じ」
「少ない」の3種に分け、それぞれの割合を示
したのが下のグラフである。
「理想より実際の英語使用が少ない」が 76.5%で、続く「理想通り英語を使
用している」の 23.5%の3倍以上を占める。
「理想より実際の英語使用が多い」人はいなかった。
授業における教師自身の英語使用状況(Q1)と
教師の英語使用についての考え(Q5)の関係
0.0%
実態(Q1)<理想(Q5)
(理想より実際の英語使用が少ない)
23.5%
実態(Q1)=理想(Q5)
(理想通り英語を使用している)
実態(Q1)>理想(Q5)
(理想より実際の英語使用が多い)
76.5%
Q6
授業における生徒の言語活動についてどう考えていますか。
(ひとつ選択)
1.
生徒同士の言語活動は、誤った言語でのやりとりになるので、最小限にすべきだ
2.
生徒同士の言語活動は、誤った言語でのやりとりであっても、最大限行うべきだ
3.
生徒同士の言語活動は、誤った言語でのやりとりになるので、教師とのやり取りに限定すべきだ
4.
生徒同士の言語活動は、誤った言語でのやりとりであっても、教師との正しい英語のやりとりができて
いれば、ある程度行うべきだ
5.
その他、コメントがあればお書きください
59
授業における生徒の言語活動について
生徒同士の言語活動は、誤った言語でのやりとりであっても、最大
限行うべきだ
生徒同士の言語活動は、誤った言語でのやりとりであっても、教師
との正しい英語のやりとりができていれば、ある程度行うべきだ
その他、コメントがあればお書きください
生徒同士の言語活動は、誤った言語でのやりとりになるので、最小
限にすべきだ
生徒同士の言語活動は、誤った言語でのやりとりになるので、教師
とのやり取りに限定すべきだ
計
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
12
70.6%
3
17.6%
2
11.8%
0
0.0%
0
0.0%
5
29.4%
授業における生徒の言語活動について
その他、コメントがあれ
ばお書きください
11.8%
生徒同士の言語活動
は、誤った言語でのや
りとりになるので、最
小限にすべきだ
0.0%
生徒同士の言語活動
は、誤った言語でのや
りとりであっても、教師
との正しい英語のやり
とりができていれば、
ある程度行うべきだ
17.6%
生徒同士の言語活動
は、誤った言語でのや
りとりになるので、教師
とのやり取りに限定す
べきだ
0.0%
生徒同士の言語活動
は、誤った言語でのや
りとりであっても、最大
限行うべきだ
70.6%
「生徒同士の言語活動は、誤った言語でのやりとりであっても、最大限行うべきだ」が 70.6%を占
め圧倒的である。Q5 で見た、教師の「言語活動の 75%程度以上を英語で行いたい」が 58.8%であっ
たことと対をなす考えと言えるだろう。「その他」の具体的コメントとしては「Goal を達成するため
のコミュニケーション活動は英語であっても日本語であってもいい。設定した Goal を達成することで
必ず英語でなければならない部分は押さえられるよう設計してあるから」
「目的に応じて」との記載が
あった。
生徒も教師も英語使用は多いほどよい、という考えが基本にあり、実際にどの程度使うかは「目的
や状況に応じて」決めている、という実態が伺える。Q4 で見たとおり、生徒の誤りをどの程度訂正す
るかも授業目的に応じて判断するとのことだった。では、英語使用を最大化したいという教師自身の
英語のあり方についてはどう考えているのか。それを問うたのが Q7 である。
Q7
授業における日本人英語教師の英語使用についてどう考えていますか。該当する方に○をつけ
てください。
1.
ネイティブスピーカーの音声がモデルであり教師の英語使用は最小限にとどめた方がよい:yes / no
60
2.
日本人学習者のモデルは、英語のネイティブスピーカーではなく、日本人の英語の使い手であるので、
教師の英語使用は多いほどよい。
:yes / no
3.
教師は誤った英語を使用すべきでないので、正しい「クラスルーム・イングリッシュ」を使える範囲で
使用すべきだ:yes / no
4.
生徒の英語との接触を最大化するために、教師は英語を最大限使用すべきである:yes / no
5.
その他、コメントがあればお書きください
日本人英語教師の英語使用について
生徒の英語との接触を最大化するために、教師は英語を最大限使用
すべきである
日本人学習者のモデルは、英語のネイティブスピーカーではなく、日
本人の英語の使い手であるので、教師の英語使用は多いほどよい
教師は誤った英語を使用すべきでないので、正しい「クラスルーム・イ
ングリッシュ」を使える範囲で使用すべきだ
ネイティブスピーカーの音声がモデルであり教師の英語使用は最小
限にとどめた方がよい
Yes
13
76.5%
9
52.9%
7
41.2%
0
0.0%
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
No
2
11.8%
5
29.4%
8
47.1%
14
82.4%
無回答
2
11.8%
3
17.6%
2
11.8%
3
17.6%
計
17
100.0%
17
100.0%
17
100.0%
17
100.0%
日本人英語教師の英語使用について
Yes
No
無回答
生徒の英語との接触を最大化するために、教師は英語を最大限使用す
べきである
76.5%
日本人学習者のモデルは、英語のネイティブスピーカーではなく、日本
人の英語の使い手であるので、教師の英語使用は多いほどよい
52.9%
教師は誤った英語を使用すべきでないので、正しい「クラスルーム・イン
グリッシュ」を使える範囲で使用すべきだ
29.4%
41.2%
ネイティブスピーカーの音声がモデルであり教師の英語使用は最小限に
0.0%
とどめた方がよい
11.8% 11.8%
47.1%
82.4%
17.6%
11.8%
17.6%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
Yes の回答が多い順に並べたのが上の表とグラフである。
「生徒の英語との接触を最大化するために、
教師は英語を最大限使用すべきである」の Yes が 76.5%で最大、
「ネイティブスピーカーの音声がモデ
ルであり教師の英語使用は最小限にとどめた方がよい」の Yes が 0.0%であった。これは教師も生徒も
最大限英語を使用した方がよいとする Q5、Q6 の回答結果と同じ傾向を示している。
学習者が目指す到達点を目標(ゴール)、学習者が学習インプットとして使う手本を模範(モデル)
として分けて考える時、ここで回答した教師はネイティブスピーカーの英語が目指すべきゴールだと
は考えていないと思われる。これは、日本人教師の話す英語が生徒にとってのモデルにもなる、とい
う考えにつながっていくものであろう。しかし一方で、
「日本人学習者のモデルは、英語のネイティブ
スピーカーではなく、日本人の英語の使い手であるので、教師の英語使用は多いほどよい」では Yes
が 52.9%、No が 29.4%と Yes が圧倒的ではなくなり、「教師は誤った英語を使用すべきでないので、
正しい「クラスルーム・イングリッシュ」を使える範囲で使用すべきだ」の項目では Yes が 41.2%、
No が 47.1%と拮抗した結果になった。これは何を意味するのだろうか。
教師は英語使用を最大化すべきと考える一方、その教師が使う英語は「正しい手本」でなければな
らない、という考えがあり、「正しい手本」を示せるかどうか不安があるのではないだろうか。
61
教師の TSST レベル平均は 5.83 であった。TSST レベル6の話者は一般に、動詞の時制や代名詞の
選択を間違えて相手に誤解を与えかねないような「大きなミス major error」はあまりしない。しかし、
前置詞、冠詞、
「三単現の s」など、意味は誤解なく相手に通じるが文法的には正しくない「小さなミ
ス minor error」は時々犯す。教師が生徒の前で英語を話す場面とは、指示を出す、例示する、説明す
る、訂正する、などの機能を果たす時であろう。正しい指示文や例文は授業内容に応じて事前に準備
できるので誤りは防ぎやすいが、授業中に生徒の発話を訂正したり何か補足説明したりというその場
に応じて適切な表現を選ばなければならない時などに、誤りを犯すことへの不安があるのではないだ
ろうか。
「TSST レベル平均 5.83」というスピーキング能力で「日常会話」のように英語を話そうとす
るとき、教室では正しい英語を模範的に使わねばならないという意識とせめぎ合いが起こっているこ
とをアンケートは示しているのかもしれない。
教師が常に事前に準備した正しい英語だけを使えば、こうしたせめぎ合いは起こらないかもしれな
い。しかしそれは「教師が非母語話者として英語を使うモデルになる」という考えから外れることに
ならないだろうか。たとえネイティブスピーカーであっても、
「日常会話」では、常に文法的に正しい
センテンスを作って誰かと言葉をやりとりしている訳ではない。言い淀み、言い直し、繰り返しなど
がごく自然に起こり、文が完結しないことも多いのである。日本人の教師は英語の非母語話者である
ので時には誤った英語を使ってしまうこともあるが、授業の目的を果たすためにきちんと準備し最大
限英語を使おうとしている、という態度が生徒への「ロールモデル」になるのではないだろうか。Q7
での自由コメントには、
「JTE(日本人英語教師)は生徒にとって英語を使用する上でロールモデルで
ある。楽しそうに英語を話す姿を見せることに意味がある」との記述もあった。
その他の自由コメントとしては、
「生徒の理解度やクラスサイズに応じて対応する」
「Yes/No を答え
るのが困難」との記述があった。
Q8
仮に、実態(=教師の発話も生徒の言語活動も英語使用が少ない)と理想(=教師の発話も生
徒の言語活動も英語使用が多い)にギャップがある場合、その理由は何だと考えますか。該当する方
に○をつけてください。
1.
文法は日本語で説明しないと生徒が理解できたか不安になるから:yes / no
2.
授業を英語で行った場合、苦手な生徒は英語だけで理解できるか不安になるから:yes / no
3.
授業を英語で行った場合、入試に対応できる学力をつけられるか不安になるから:yes / no
4.
教科書の内容が難しく、日本語で説明しないと生徒が理解できないから:yes / no
5.
学校の英語指導方針によるものだから:yes / no
6.
生徒のどんな言語活動を英語で行ったらよいか指導法がわからないから:yes / no
7.
教師自身の英語スピーキング力に自信がないから:yes / no
8.
その他
62
実態と理想にギャップがある場合の理由
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
人数
割合
文法は日本語で説明しないと生徒が理解できたか不安になるから
授業を英語で行った場合、苦手な生徒は英語だけで理解できるか不安になるから
教科書の内容が難しく、日本語で説明しないと生徒が理解できないから
教師自身の英語スピーキング力に自信がないから
授業を英語で行った場合、入試に対応できる学力をつけられるか不安になるから
生徒のどんな言語活動を英語で行ったらよいか指導法がわからないから
学校の英語指導方針によるものだから
Yes
15
88.2%
14
82.4%
10
58.8%
9
52.9%
5
29.4%
5
29.4%
2
11.8%
No
1
5.9%
2
11.8%
6
35.3%
7
41.2%
11
64.7%
11
64.7%
14
82.4%
無回答
1
5.9%
1
5.9%
1
5.9%
1
5.9%
1
5.9%
1
5.9%
1
5.9%
計
17
100.0%
17
100.0%
17
100.0%
17
100.0%
17
100.0%
17
100.0%
17
100.0%
実態と理想にギャップがある場合の理由
Yes
No
無回答
文法は日本語で説明しないと生徒が理解できたか不安になるから
88.2%
授業を英語で行った場合、苦手な生徒は英語だけで理解できるか不安になるから
5.9%5.9%
82.4%
教科書の内容が難しく、日本語で説明しないと生徒が理解できないから
11.8% 5.9%
58.8%
教師自身の英語スピーキング力に自信がないから
35.3%
52.9%
41.2%
5.9%
5.9%
授業を英語で行った場合、入試に対応できる学力をつけられるか不安になるから
29.4%
64.7%
5.9%
生徒のどんな言語活動を英語で行ったらよいか指導法がわからないから
29.4%
64.7%
5.9%
学校の英語指導方針によるものだから
11.8%
0%
10%
82.4%
20%
30%
40%
50%
60%
5.9%
70%
80%
90% 100%
Q5 で見たように、
「実際に授業で英語を使う割合が理想より少ない」と答えていた教師の割合は
76.5%であったが、ここでは一般論として教師と生徒の英語使用の実態と理想にギャップがある場合、
何が原因となり得ると思うかを、下記3種類の要素を選択肢に挙げて問うた。回答で Yes が多い順に
並べたのが上記に示した表とグラフである。
①
「文法は日本語で説明しないと生徒が理解できたか不安になるから」
「授業を英語で行った場合、
苦手な生徒は英語だけで理解できるか不安になるから」
「教科書の内容が難しく、日本語で説明
しないと生徒が理解できないから」といった主に【生徒側】に起因するもの
②
「教師自身の英語スピーキング力に自信がないから」
「生徒のどんな言語活動を英語で行ったら
よいか指導法がわからないから」といった主に【教師側】に起因するもの
③
「授業を英語で行った場合、入試に対応できる学力をつけられるか不安になるから」「学校の英語指
導方針によるものだから」といった【環境】に起因するもの
実態と理想にギャップがある場合に理由と考える上位3つは、
「文法は日本語で説明しないと生徒が
理解できたか不安になるから」
(Yes が 88.2%)、
「授業を英語で行った場合、苦手な生徒は英語だけで
理解できるか不安になるから」
(Yes が 82.4%)、
「教科書の内容が難しく、日本語で説明しないと生徒
63
が理解できないから」
(Yes が 58.8%)である。日本語を使わないと生徒の側に情報が伝わらない、と
いう「生徒側」に原因を求めるもの(①)が並んだ。Q2 では、授業における英語使用状況の理由とし
て、17 人中 10 人(58.8%)が「生徒が理解できないから」
「文法など複雑な内容は日本語で行うべき
だから」という生徒側の理由を挙げていた。一般論を尋ねた Q8 でも同じような結果が出たが、それに
加えて「教科書の内容の難しさ」も課題として挙げられた。
②の「教師側」に原因を求めるものとしては、「教師自身の英語スピーキング力に自信がないから」
が Yes 52.9%、No 41.2%で Yes が多いものの、「生徒側」に原因を求めるものと比べて No との差は
小さい。Q7 で見た「教師は誤った英語を使用すべきでないので、正しい「クラスルーム・イングリッ
シュ」を使える範囲で使用すべきだ」の項目では Yes(41.2%)と No(47.1%)が拮抗していた。こ
れと「教師自身の英語スピーキング力に自信がないから」で Yes と No の差が小さくなっていたこと
を思い起こしてみると、ここで言う「スピーキング力に自信がない」というのは、
「授業で常に正しい
英語を使うのが難しい」ということなのではないかと推測できる。
先に見たように TSST レベル平均 5.83 の教師は英語を話して「小さな誤り」を犯す事がある。しか
し、TSST レベル平均 3.10 の生徒を前にして、TSST レベル平均 5.83 の教師は授業運営に必要な英語
を使える状態にある。その時に犯すかもしれない「小さな誤り」をロールモデルとして許容できるか
できないかという1点で、見解が分かれているように見える。
なお、同じく原因を教師側に帰する「生徒のどんな言語活動を英語で行ったらよいか指導法がわか
らないから」は Yes が 29.4%、No が 64.7%で No の割合が Yes を大きく上回った。教師は、
「教師自
身の英語スピーキング力」と比べると、「指導法」にはあまり不安を感じていないようである。
「環境」に起因する理由(③)である、
「授業を英語で行った場合、入試に対応できる学力をつけられる
か不安になるから」で Yes と答えた割合は 29.4%だった。Q1 で授業での教師自身の英語使用の理由を
問い、「入試に役に立たないから」を挙げた人がゼロだった事も思い合わせれば、大学入試という観点
から授業での英語使用を否定的に見る傾向は弱いと言える。また、「学校の英語指導方針によるものだ
から」も Yes が 11.8%、No が 82.4%と No が圧倒的に多く、
「仕方なく英語を使用している」様子は
見られない。Q5~Q7 で見た、教師と生徒の英語使用についての考えと照らし合わせると、
「言語活動
を英語で行うことそのもの」への疑問や不安を持つ教師は少ないようである。
Q9
「Can-do リスト」をどのように活用していますか。(ひとつ選択)
1.
Can-do リストを作成し、英語活動と関連づけて運用している
2.
Can-do リストを作成し運用はしているが、
「~ができる」ということの客観的評価が難しいので、評
価と関連づけていない
3.
Can-do リストは作成したが、英語活動と関連づけての運用は難しく、あまり活用できていない
4.
Can-do リストは作成していないし、その必要性も感じていない
5.
Can-do リストの作成・運用に関してコメントがあればお書きください
(注:この設問は1校のアンケート内容には入っていなかったため、2校の教師の回答集計になっている)
64
「Can-doリスト」をどのように活用していますか
Can-doリストは作成したが、英語活動と関連づ
けての運用は難しく、あまり活用できていない
人数
4
割合
33.3%
Can-doリストを作成し、英語活動と関連づけて
運用している
人数
3
割合
25.0%
Can-doリストは作成していないし、その必要性
も感じていない
人数
3
割合
25.0%
Can-doリストの作成・運用に関してコメントがあ
ればお書きください
人数
1
割合
8.3%
人数
1
割合
8.3%
人数
0
割合
0.0%
人数
12
割合
100.0%
無回答
Can-doリストを作成し運用はしているが、「~が
できる」ということの客観的評価が難しいので、
評価と関連づけていない
計
「Can-doリスト」をどのように活用していますか
Can-doリストを作成
し運用はしている
が、「~ができる」と
いうことの客観的評
価が難しいので、評
価と関連づけていな
い, 0.0%
無回答, 8.3%
Can-doリストの作
成・運用に関してコ
メントがあればお書
きください, 8.3%
Can-doリストは作成
したが、英語活動と
関連づけての運用
は難しく、あまり活
用できていない,
33.3%
Can-doリストは作成
していないし、その
必要性も感じていな
い, 25.0%
Can-doリストを作成
し、英語活動と関連
づけて運用している,
25.0%
「Can-do リストは作成したが、英語活動と関連づけての運用は難しく、あまり活用できていない」が 33.3%
で最も多く、
「Can-do リストを作成し、英語活動と関連づけて運用している」
(25.0%)、
「Can-do リストは作
成していないし、その必要性も感じていない」
(25.0%)がそれに続いた。同じ学校に所属しながらも教師
により「活用」の程度が分かれている。文部科学省が使える英語能力育成の指標の1つとして CAN-DO
リストの導入を呼び掛けているが現場では今も試行錯誤が続いている様子が伺える。
自由コメントの記載には「CAN-DO リストの作成をしていない。学校の会議で議題として取り上げ
られたことはないが、必要性がないとは思わない。知らないだけ」とあった。
■教師の英語学習経験■
Q10
ご自分の通った高校での、授業における教師の英語使用状況について。
(ひとつ選択)
1. 言語活動の 75%程度以上を英語で行っていた
2. 言語活動の 50~70%程度を英語で行っていた
3. 言語活動の 25~50%程度を英語で行っていた
4. 言語活動を英語で行うことはほとんどなかった(25%程度未満)
(教師自身が)通った高校での授業における教師の英語使用状況
人数
1
言語活動の75%程度以上を英語で行っていた
割合
5.9%
人数
0
言語活動の50~70%程度を英語で行っていた
割合
0.0%
人数
2
言語活動の25~50%程度を英語で行っていた
割合
11.8%
人数
13
言語活動を英語で行うことはほとんどなかった
(25%程度未満)
割合
76.5%
人数
1
無回答
割合
5.9%
人数
17
計
割合 100.0%
65
(教師自身が)通った高校での
授業における教師の英語使用状況
無回答, 5.9%
言語活動の
75%程度以上を
英語で行ってい
た, 5.9%
言語活動の25
~50%程度を英
語で行っていた,
11.8%
言語活動の50
~70%程度を英
語で行っていた,
0.0%
言語活動を英語
で行うことはほ
とんどなかった
(25%程度未
満), 76.5%
回答した教師の 76.5%が、自分の高校時代の教師は「言語活動を英語で行うことはほとんどなかっ
た」と答えていた。Q1 で見たとおり、82.4%の教師は授業中 25%以上、授業目的に応じて英語を使
っていた。つまり、教師は自分が高校時代に受けた授業とは異なる授業スタイルを実践していること
を示している。
Q11
ご自分の通った高校での、授業における生徒の英語使用状況について。
(ひとつ選択)
1. 言語活動の 75%程度以上を英語で行っていた
2. 言語活動の 50~70%程度を英語で行っていた
3. 言語活動の 25~50%程度を英語で行っていた
4. 言語活動を英語で行うことはほとんどなかった(25%程度未満)
(教師自身が)通った高校での授業における生徒の英語使用状況
人数
0
言語活動の75%程度以上を英語で行っていた
割合
0.0%
人数
0
言語活動の50~70%程度を英語で行っていた
割合
0.0%
人数
2
言語活動の25~50%程度を英語で行っていた
割合
11.8%
言語活動を英語で行うことはほとんどなかった
人数
14
(25%程度未満)
割合
82.4%
人数
1
無回答
割合
5.9%
人数
17
計
割合 100.0%
(教師自身が)通った高校での
授業における生徒の英語使用状況
言語活動の50~
70%程度を英語
で行っていた,
0.0%
無回答, 5.9%
言語活動の25~
50%程度を英語
で行っていた,
11.8%
言語活動の75%
程度以上を英語
で行っていた,
0.0%
言語活動を英語
で行うことはほと
んどなかった
(25%程度未満),
82.4%
Q10 は自分の高校時代の英語教師を、Q11 は生徒としての自分を振り返ってもらった。生徒として
「言語活動を英語で行うことはほとんどなかった(25%程度未満)
」のは 82.4%と教師以上に英語を使
っていなかったことになる。このような方々はどのようにして英語を身につけ、時代の要請に沿って
英語での授業を展開する、またはしたいと思うようになったのだろうか。それを次の Q12 で探った。
Q12
現在のご自身の英語のスピーキング力は主にいつ、どのように身につけましたか。最も有益
だったと思うものを選んでください。
(ひとつ選択)
1. 中学・高校のときの授業で
2. 大学の授業で
3. 留学で
4. 英会話学校で
5. 通信講座・教材等を利用した自己学習で
6. 教師になってからの海外長期研修で
7. 帰国生であり、海外滞在時に
8.その他
66
(教師自身の)英語のスピーキング力の身につけ方
人数
8
割合
36.4%
人数
7
大学の授業で
割合
31.8%
人数
3
英会話学校で
割合
13.6%
人数
3
その他
割合
13.6%
人数
1
通信講座・教材等を利用した自己学習で
割合
4.5%
人数
0
中学・高校のときの授業で
割合
0.0%
人数
0
教師になってからの海外長期研修で
割合
0.0%
人数
0
帰国生であり、海外滞在時に
割合
0.0%
人数
22
計
割合
100.0%
留学で
(教師自身の)英語のスピーキング力の身につけ方
中学・高校のときの
授業で, 0.0%
通信講座・教材等
を利用した自己学
習で, 4.5%
その他, 13.6%
英会話学校で,
13.6%
教師になってから
の海外長期研修で,
帰国生であり、海外
0.0%
滞在時に, 0.0%
留学で, 36.4%
大学の授業で,
31.8%
質問は「最も有益だったと思うもの」を1つ選ぶ形だったが、17 人中5人が2つの要因を挙げた。複
数回答を含めて多い順にまとめたものが上の表とグラフである。最多の「留学で」と回答した8人
(36.4%)の教師は米国または英国への留学であり、留学期間は1人のみ2年間、その他の7人は8
~13 カ月の間であった。次は「大学の授業で」
(31.8%)、
「英会話学校で」
(13.6%)となっている。
「その他」とした3人(13.6%)が挙げている理由が興味深い。
「仕事の中で」
「教師になってから
の授業実践や ALT(Assistant Language Teacher)との会話で」「実際に授業をする中で」というの
である。教師が仕事を通して英語能力を伸ばすということは、授業で使う英語の準備をする、授業中
に英語で話す、授業の打ち合わせ等のためネイティブスピーカーの教師と会話するなどの活動の中で
スピーキング能力を身につけた、ということであろう。英語のノンネイティブスピーカーである以上、
教師も常に学び続けなければならないこと、日本人の教師が英語を使って仕事をするということ。こ
れは教師がまさに二重の意味で生徒のロールモデルになっている、と言えるのではないだろうか。教
師が仕事をすればするほど、つまり、生徒が英語に触れるのを最大化する努力を重ねるほどに、教師
の英語能力が伸び生徒の英語能力も伸びる、という好循環が生まれやすくなるのではないだろうか。
■TSST について■
Q13
TSST 受験時には今の実力を発揮できたと思いますか。(ひとつ選択)
1. 非常にそう思う
2. そう思う
3. わからない
4. そう思わない
5. 全くそう思わない
→上記の理由は?
67
TSSTで実力を発揮できたか
人数
0
非常にそう思う
割合
0.0%
人数
7
そう思う
割合
41.2%
人数
6
わからない
割合
35.3%
人数
3
そう思わない
割合
17.6%
人数
1
全くそう思わない
割合
5.9%
人数
17
計
割合 100.0%
TSSTで実力を発揮できたか
全くそう思わない,
5.9%
そう思わない,
17.6%
非常にそう思う,
0.0%
そう思う, 41.2%
わからない, 35.3%
今回の調査では、教師のスピーキングの能力を測定するため、そして生徒がどんなテストを受ける
のかを経験してもらうために、教師にも TSST を受けてもらった。
「TSST で実力を発揮できたか」と
いう質問に対し、肯定的な感想を述べた教師(
「非常にそう思う」と「そう思う」の合計)が 41.2%、
「わ
からない」が 35.3%、否定的な感想を述べた教師(
「そう思わない」
「全くそう思わない」の合計)が 23.5%
であった。生徒へのアンケートの Q9 では、同様の質問に対し否定的な感想を述べた生徒が 55.8%と
過半数を超えていたことと比べると、TSST の平均レベルが 5.83 の教師は、実力を発揮できたと思っ
ている割合が多い。
自由記述で述べてもらった回答理由を以下に示す。教師は、生徒に比べて英語を話すことに慣れて
いる様子が伺える。
「生徒がこのテストを受けたら」と想像しながら受験した教師が1人いた。自分の
生徒ならこの質問にはこんな回答をするだろうと想像できるということは、授業を通して生徒たちが
話す英語の特徴またはレベルをおおよそ把握しているということだろう。これは、授業中に生徒が英
語を話す時間をある程度設けていなければできないことである。なお、
「非常にそう思う」と「わから
ない」を選んで理由を述べた人はいなかった。
■そう思う
・普通だと感じたため
・試験形式にとまどうことなく、スピーキングに集中できたから
■そう思わない
・もう少し時間があれば……という場面がいくつかあったので
・指示を守らない解答をしてしまった
■全くそう思わない
・高校生だったらどういう結果が来るか知りたくてそれ風に受験したから
68
Q14
TSST は英語のスピーキング能力が測れる有効な試験だと思いますか。
(ひとつ選択)
1. 非常にそう思う
2. そう思う
3 わからない
4. そう思わない
5. 全くそう思わない
→上記の理由は?
TSSTはスピーキング能力が測れる
有効な試験か
人数
1
非常にそう思う
割合
5.9%
人数
11
そう思う
割合
64.7%
人数
4
わからない
割合
23.5%
人数
0
そう思わない
割合
0.0%
人数
1
全くそう思わない
割合
5.9%
人数
17
計
割合 100.0%
TSSTはスピーキング能力が測れる
有効な試験か
全くそう思わない,
5.9%
そう思わない,
0.0%
非常にそう思う,
5.9%
わからない, 23.5%
そう思う, 64.7%
「非常にそう思う」
(5.9%)と「そう思う」
(64.7%)を足すと 70.6%の教師が TSST を肯定的に捉
えている。同様の質問に対し肯定的な感想を述べた生徒(Q10 で「非常にそう思う」
「そう思う」の合計)
は 78.4%であったので、類似した傾向であった。
回答理由を記したコメントは以下の通り。生徒の TSST 受験の感想にあったのと同様に、その時そ
の場で英語を使う能力が試されることを評価する声があった。一方、同じ質問内容が日本語と英語の
両方の音声で流れる出題形式を「不自然」と指摘する声もあった。
「非常にそう思う」理由にはコメン
トはなかった。
■そう思う
・(もう少し時間があれば・・・という)先のコメントと矛盾してしまうようですが、瞬時にいかに答えることが
できるのか、が本当の実力だと感じます
・モノローグレベルでは測定できている
・内容にもよるが、実践的で良い
・プロが複数で採点しているから
■わからない
・評価が難しそうだから
■全くそう思わない
・内容が不適切。日本語不要。日本語があるため、速いスピードの英語の質問を聞く感覚が働いていない。
スピーキングする以前に質問自体が不適切
69
Q15
TSST をまた受けたいと思いますか。
(ひとつ選択)
1. 非常にそう思う
2. そう思う
3. わからない
4. そう思わない
5. 全くそう思わない
→上記の理由は?
TSSTをまた受けたいか
TSSTをまた受けたいか
人数
非常にそう思う
割合
人数
そう思う
割合
人数
わからない
割合
人数
そう思わない
割合
人数
全くそう思わない
割合
人数
計
割合
2
11.8%
10
58.8%
3
17.6%
1
5.9%
1
5.9%
17
100.0%
そう思わない,
5.9%
全くそう思わない,
5.9%
非常にそう思う,
11.8%
わからない,
17.6%
そう思う, 58.8%
「非常にそう思う」(11.8%)と「そう思う」(58.8%)を足すと 70.6%の教師が TSST を再受験し
たいと考えている。
「そう思う」と「全くそう思わない」を選んだ6人はその回答理由を以下の通りに
記述していた。肯定的意見は、能力を客観的に測ること自体に受験の意義を見出しているものが多い。
否定的意見は、Q14 と同様、テストの形式そのものを「不適切」としている。
■そう思う
・何度か試してみたい
・自分の練習のため
・スピーキングを手軽に測ることができるので
・練習教材の充実が必要です
・比較できるから
■全くそう思わない
・内容が不適切。日本語不要。日本語があるため、速いスピードの英語の質問を聞く感覚が働いていない。
スピーキングする以前に質問自体が不適切
Q16
TSST を生徒(高校生)に受けさせたいと思いますか。(ひとつ選択)
1. 非常にそう思う
2. そう思う
3. わからない
4. そう思わない
5. 全くそう思わない
→上記の理由は?
70
TSSTを生徒に受けさせたいか
人数
1
非常にそう思う
割合
5.9%
人数
13
そう思う
割合
76.5%
人数
2
わからない
割合
11.8%
人数
0
そう思わない
割合
0.0%
人数
1
全くそう思わない
割合
5.9%
人数
17
計
割合 100.0%
TSSTを生徒に受けさせたいか
全くそう思わない,
5.9%
非常にそう思う,
5.9%
そう思わない,
0.0%
わからない,
11.8%
そう思う, 76.5%
「非常にそう思う」
(5.9%)と「そう思う」
(76.5%)を足すと 82.4%の教師が自分の生徒に TSST
を受験させたいと考えている。
「そう思う」
「わからない」
「全くそう思わない」を選んだ理由を7人が
以下の通りコメントしている。肯定的意見は、受験の簡便性、質問内容と学校の授業との整合性など
を指摘している。否定的意見はテストの形式を「不適切」としている。
■そう思う
・希望者は多いはずだから
・練習になると思うから
・スピーキングを手軽に測ることができるので。田舎ではテストを受けに行くだけで大変なので、電話の使用
は良いと思います
・練習教材の充実が必要です
・試験時間が短く受けやすい。日常に関する様々なトピックにすぐに答えないといけないので基本的会話力を
測ることができる
■わからない
・評価が難しそうだから
■全くそう思わない
・内容が不適切。日本語不要。日本語があるため、速いスピードの英語の質問を聞く感覚が働いていない。
スピーキングする以前に質問自体が不適切
■教師の留学・海外経験、資格試験■
Q17
留学・海外経験についてお聞きします。
■留学経験(1 年以上)
:有/無
■留学以外の海外経験:有/無
71
教師の留学・海外経験
人数
留学経験(1年以上)
割合
人数
留学以外の海外経験
割合
有
無
7
41.2%
0
0.0%
8
47.1%
10
58.8%
無回答
計
2
17
11.8% 100.0%
7
17
41.2% 100.0%
教師の留学・海外経験
有
留学経験(1年以上)
無
無回答
41.2%
留学以外の海外経験 0.0%
47.1%
58.8%
11.8%
41.2%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
留学経験を持つ教師 41.2%、留学経験のない教師 47.1%でほぼ同数となった。留学先は米国または
英国のいずれかで、留学期間は、2年間が1人、他6人は8~13 カ月の間であった。留学以外での海
外経験について「有」と回答した教師はいなかった。
TSST を受けた教師 30 人のレベル平均は 5.83 であったが、留学経験「有」という7人の TSST レ
ベルの平均を取ると 6.29 まで上昇する。この7人に限定して Q1「授業における教師自身の英語使用
状況」の回答内容を改めて見てみると、「発話を概ね(75%程度以上)英語で行っている」
「発話の半
分以上(50~75%程度)を英語で行っている」
「発話の半分未満(25~50%程度)を英語で行っている」
「発話が英語であることはあまりない(25%程度未満)」の4つに分散しており、スピーキング能力が
高い教師ほど授業で英語を話している、という傾向は見えない。これまでの指摘通り、授業でどの程
度英語を用いるかは授業の目的や生徒の状況に応じて判断している、ということが推測できる。
Q18
英語能力に関する外部試験の受験経験と取得資格・スコア等についてお聞きします。
・受験経験あり
・受験経験なし
→受験経験ありの場合の取得資格・スコア等
1. 英検準1級
2. 英検1級
4. TOEIC600~730 点
7.その他(試験名:
3. TOEFL の PBT550 点以上、CBT213 点以上、iBT 80 点以上
5. TOEIC730~850 点
スコア/級:
)
受験経験の有無を、以下のグラフに示す。
英語能力に関する外部試験の受験経験
人数
14
有
割合
82.4%
人数
0
無
割合
0.0%
人数
3
無回答
割合
17.6%
人数
17
計
割合
100.0%
72
6. TOEIC850 点以上
試験の種類とその結果の内訳は、以下の表とグラフに示す通りである。
英語能力に関する外部試験の結果
人数
7
割合
29.2%
人数
6
TOEIC850点以上
割合
25.0%
TOEFLのPBT550点以上、
人数
4
CBT213点以上、iBT 80点以上 割合
16.7%
人数
3
TOEIC730~850点
割合
12.5%
人数
2
TOEIC600~730点
割合
8.3%
人数
1
英検1級
割合
4.2%
人数
1
その他(IELTS)
割合
4.2%
人数
24
計
割合
100.0%
英語能力に関する外部試験の結果
英検準1級
英検準1級
TOEIC850点以上
TOEFLのPBT550点以上、CBT213点以上、
iBT 80点以上
TOEIC730~850点
TOEIC600~730点
英検1級
その他(IELTS)
0%
10%
20%
30%
何らかの英語能力試験を受けていたのは 82.4%、無回答 17.6%であった。試験の種類は英語検定試
験、TOEICⓇ、TOEFLⓇ、IELTS の4種である。複数の試験結果を回答した人も含めて集計し多い順
に並べたのが上の図表である。
「英検準1級」29.2%、「TOEIC850 点以上」25.0%、「TOEFL の PBT550
点以上、CBT213 点以上、iBT 80 点以上」16.7%、
「TOEIC730~850 点」12.5%、「TOEIC600~730 点」
8.3%、「英検1級」と「その他」が 4.2%であった。「その他」は IELTS である。
文部科学省が「第2期教育振興基本計画*」
(平成 25 年6月閣議決定)において定めた高校の英語教
員の英語力の目標は、
「英検準1級、TOEFL iBT 80 点、TOEIC 730 点程度以上」を 75%が達成、で
ある。以下の表とグラフでは、
「英検準1級」
「TOEFL の PBT550 点以上、CBT213 点以上、iBT 80 点以上」
「TOEIC850 点以上」
「TOEIC730~850 点」のいずれかを取得していると答えた教師を「文科省の目標レ
ベルを満たす」としてその割合を示した。外部試験受験者の中で文科省の目標レベルを「満たす」教
師は 85.7%であった。今回の回答データに限って言えば、文科省が望ましいとしている英語能力の目
標はクリアしていると言える。
(*http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/detail/1336379.htm)
外部試験の結果が文科省の目標レベルを
満たすかどうか(外部試験受験者のみ)
満たす
満たさない
計
人数
割合
人数
割合
人数
割合
12
85.7%
2
14.3%
14
100.0%
外部試験の結果が文科省の目標レベルを
満たすかどうか(外部試験受験者のみ)
満たさない,
14.3%
満たす, 85.7%
73
まとめ
本報告書は、3つの高等学校の協力を得て進める、高校生の英語スピーキング能力に関する3年間
追跡調査の1年目の結果である。日本の高校1年生 323 人の英語スピーキング能力とその学習状況を
アンケート調査した結果をまとめた。協力校の英語教師計 30 人にも英語スピーキング能力試験の受験
とアンケートへの回答をお願いした。高校生の英語スピーキング能力の現状と、教える側、教わる側
両方の視点から、その背景を明らかにするのが本調査の目的である。
調査協力校の高校生の TSST レベル分布では、レベル1評価の受験者は 1 人もいなかった。質問さ
れて沈黙してしまう、2、3の単語を並べて終わってしまう、
「わかりません」と日本語で答える、な
どの反応を示すような高校生がほとんどいないことは、10 年ほど前から集めてきた事例に基づき予想
していた。予想と違ったのは、分布のピークがレベル3であったこと、レベル4が 18.6%もいたこと
である。高校1年生にはもっとレベル2が多いと考えていた。
レベル3の生徒が 67.2%を占めたことの背景はアンケートで明らかになった。今回調査に協力して
くれた3校では、多くの教師がある程度以上英語を使って授業を進めていた。また、生徒側も、音読
など声を出す活動に積極的であったり、英語学習に内発的に動機づけられていたりする人が多かった。
教師、生徒共にスピーキングテスト TSST への関心も高い。こうした環境の下、生徒の意欲をさらに
引き出す授業や学習のアドバイスにより、TSST のレベルを引き上げることが可能であると思われる。
例えば、自宅学習に「自分なりの文を作り出す」内容を取り入れることなどにより、スピーキング能
力のさらなる向上が期待できるであろう。
3校で違いが見られた点としては、現在の TSST のレベル分布と、それに関連する学習実態である。
TSST のレベルが3以上の生徒が多かった B 高校では、授業中の英語を使う活動や自宅学習の内容に、
A 高校、C 高校と異なる点があった。A 高校、C 高校でも、英語活動を活発化させることにより、生
徒のスピーキング能力が向上し、さらに英語活動が活性化するといった好循環を生み出すことができ
るのではないだろうか。
今後、この高校生たちはどんな授業と自宅学習を経験し、その結果として TSST レベル分布がどの
ように変化していくのか。3 年間の追跡調査を専門家のアドバイスを仰ぎながら実施し、日本の高校生
の英語スピーキング能力育成に役立つ資料を提供していくことで、日本の英語教育の発展に貢献して
いきたい。
■謝辞■
本調査は企画段階から金谷憲・東京学芸大学名誉教授の助言をいただきました。調査協力校の選定に当たっては、根岸雅史・東
京外国語大学大学院教授、長沼君主・東海大学准教授にお力添えいただきました。調査結果の集計・分析では阿部真理子・中央
大学教授から貴重なご意見をいただきました。ここに記して感謝いたします。
74
■参考■
各種テストの能力指標一覧
TSST
TOEIC
英検
CEFR
C2
9
8
1級
6
B2
5
4
600
400
1
300
C1
160
2級
70
140
60
130
500
50
120
110
400
準2級
7.0
6.5
100
300
80
3-5級
800
B1
様々な状況および話題について、完璧ではないに
しても、自分の言いたいことを常に具体的に 、説得
力を持って言うことができており、論理的に話 を展
開する能力を発揮しつつあります 。
過去のできご とや物事の説明をする際 、まだ話題
に左右されますが、細かい描写 を加えたり 、自分 の
経験談を交えたり、簡単な感想や意見を交えること
より、自発的に話を膨らませ ること ができます 。
6.0
身近な話題であれば、多くの場合、自 分から付加
的な情報を提供しています。適切な言葉が 見つか
らない場合も、知っている単語を駆 使してなんとか
言いたいことを伝えることができます 。
5.5
様々な質問に文で答えることができ、簡単な理由 を
説明したり、描写をしたりすることができます 。身 近
な話題であれば、自分から情報を付け加えること も
あります。
700
600
5.0
A2
500
400
300
英語を話してできること
どんな状況においても、筋道を立てて、十分な説得
力をもって話すことができています。第三者 へのア
ドバイスや抽象性の高い内容を話すときも、聞 き手
が理解しやすいように話を構成しています 。
身近なことに関しては、余裕を持って話すことがで
きます 。比較や 過去ので きご との説明 もできます が 、
複雑な内容の場合は言いよどみや情 報の不 足が
見られることがあります。
90
A1
IELTS
B2
80
A2
2
BLATS
C2
B1
600
500
GTEC for
Students
150
800
3
TOEIC
Speaking
100
90
準1級
700
TOEFL
ITP
C1
900
7
TOEFL
iBT
A1
きちんと受け答えできるのは身近な話題に限られ
ますが、半分程度の確率で構造 が簡単な文で基本
的な内容は伝えることができます。
発話までに時間がかかり、内容も最小限 の情報に
限られます。自分から情 報 を付け加え ること はほと
んどありませんが、質問に対して返答す ることがで
きます。
質問に反応することができずに沈黙が続いてし まう
ことが多く、発話はすでに暗記している短文に限 ら
れます。
この表はあくまでも目安です。下記を参照してアルクが独自に作成しました。
http://4skills.eiken.or.jp/qualification/comparison_cefr.html
http://www.ets.org/toefl/institutions/scores/compare
http://takeielts.britishcouncil.org/find-out-about-results/understand-your-ielts-scores/common-european-framework
-equivalencies
http://www.ielts-prep.jp/about/toeic.html
http://www.alc.co.jp/company/report/
https://www.ets.org/toefl/institutions/scores/compare/
http://www.cieej.or.jp/toefl/itp/correlation.html
http://www.toeic.or.jp/sw/about/data.html
http://www.benesse-gtec.com/fs/teachers/te_gteccbt
75
◆連絡・問い合わせ先◆
株式会社アルク
東京都杉並区永福 2-54-12
Email: [email protected]
76