平 成 28 年 4 月 12 日 ( 火 ) 14 時 資 料 提 供 同時資料提供 ・大阪府政記者会 ・大阪経済記者クラブ ・大阪商工記者会 お問い合わせ 大阪府商工労働部 商工労働総務課 (大阪産業経済リサーチセンター) 経済リサーチグループ 福井 T E L : 06-6941-0351( 内 線 2635) e-mail: [email protected] U R L : http://www.pref.osaka.lg.jp/aid/sangyou/ 『基盤産業の立地が地域経済に与える影響に関する調査研究 ~大阪府内市区町村における分析~』 大阪経済衰退論はたびたび論じられており、その主な要因として、産業構造転換の遅れ や製造業の衰退が挙げられます。製造業の衰退や工場流出は、元々製造業が基盤産業であ った地域経済にとっては大きなダメージとなります。なお、基盤産業とは、移(輸)出品 等によって地域の外部から需要を稼ぎ地域の成長への基盤となる産業を指し、地域経済と は、大阪府内市区町村の経済を指します。 本 調 査 で は 、「 製 造 業 の 立 地 が 地 域 経 済 に プ ラ ス で あ る 」 と い う 仮 説 を 検 証 し て い き 、 製造業の衰退が地域経済の衰退につながっているのかを明らかにすることを目的として います。しかし、製造業だけが地域の基盤産業というわけでは ありません。また、立地 する地域特性の違いによって基盤産業は異なります。 そこで、製造業に限定せず、産業別の基盤産業の立地が地域の経済に与える影響を考 え、基盤産業は地域によってどう異なるのか、また、そもそも基盤産業は地域経済(成 長)に寄与しているのかを検証し、その結果を『基盤産業の立地が地域経済に与える影 響 に 関 す る 調 査 研 究 ~ 大 阪 府 内 市 区 町 村 に お け る 分 析 ~ 』( 資 料 No.153) と し て ま と め ました。 ○ 調査結果のポイント 【経済基盤モデルと基盤産業】 ■地域経済の衰退・低迷という問題は、経済基盤モデルという経済成長 理論に帰結でき る。経済基盤モデルでは、基盤産業の成長が地域の成長につながるとされる。 ■経済基盤モデルで規定される基盤乗数は、基盤産業の成長がどの程度地域の成長に影 響 を 与 え る か を 表 す 数 値 で 、 回 帰 分 析 に よ っ て 推 定 で き る 。 通 常 、 基 盤 乗 数 は 1を 超 え 、 乗数値の倍数だけ地域の成長に乗数効果を持つ。 【地域における基盤産業】 ■大阪府内地域における産業集積の特徴をみるため、基盤産業の識別に用いた修正特化 係数を用いた因子分析と、因子分析を基にしたクラスター分析を行った。 ■因子分析の結果、産業集積の因子は 7 つが特定され、因子分析を基にしたクラスター 分 析 を 行 っ た 結 果 、 大 阪 府 内 地 域 は 、 12 の 産 業 集 積 ク ラ ス タ ー に 分 け ら れ た 。 【回帰モデルによる分析】 ■推定された基盤乗数は 2 弱の値が得られ、基盤産業は乗数倍だけ地域経済にプラスに 影響するといえる。 ■基盤産業のうち製造業の産業数が過半数以上を占める、製造業基盤型地域の基盤乗数 は、同じく 2 弱の値が得られ、製造業基盤型地域の基盤産業も乗数倍だけ地域経済にプ ラスに影響するといえる。 ■実際に製造業基盤型地域における基盤産業の従業者数が減少することで、基盤乗数倍 だけ地域の従業者数が減少していることが分かり、基盤産業の衰退が地域経済の衰退に つながっていることが分かる。 【まとめ】 ■基盤産業の多くが製造業である地域において、製造業が衰退をしてしまうと、すなわ ち地域経済の衰退につながるということである。基盤産業を適切に認識し、こうした産 業の誘致や継続的な立地をはかっていくことが地域経済政策上大切であるといえる。 ○調 査 結 果 の 概 要 大阪経済の衰退と工場立地 ◆ 製 造 、 卸 ・ 小 売 、 金 融 ・ 保 険 、 サ ー ビ ス と い っ た 主 要 産 業 で み る と 、 大 阪 府 は 、 70年 度 か ら 90年 度 に か け て は 製 造 業 の 生 産 額 が 最 も 大 き か っ た が 、2000年 度 以 降 プ レ ゼ ン ス が 下 が っ て い る 。 一 方 、 第 3次 産 業 は 製 造 業 の 衰 退 を カ バ ー す る よ う な 成 長 を み せ ず 、 2009年 度 時 点 の 大 阪 経 済 は 特 徴 の 無 い 産 業 構 造 を 示 し て お り 、目 立 っ た 牽 引 産 業 が 無 い と い え る 。 つまり、製造業の衰退が大阪経済衰退の一つの要因と考えられる。 ◆製造業の衰退や工場転出には様々な要因が考えられるが、要因の 一つと考えられる工場 三法による、大阪における工場立地の制約はデメリットが生じていた可能性が高く、大阪 の近隣地域を中心として工場移転を促したと考えられる。 ◆工場三法に関わらず、根本的な問題としての工場用地の不足や住工混在問題は現状にお いても解消されず、地域において工場適地が不足している現状であり、近隣地域への移転 が続いている状況であると考えられる。 経済基盤モデルと基盤産業 ◆ 地 域 経 済 の 衰 退・低 迷 と い う 問 題 は 、経 済 基 盤 モ デ ル と い う 経 済 成 長 理 論 に 帰 結 で き る 。 ◆基盤産業とは、輸移出品等によって地域の外部から需要を稼ぐ産業で、地域の成長への 基盤となる産業を指す。 ◆経済基盤モデルでは、基盤産業の成長が地域の成長につながるとされる。 ◆経済基盤モデルが説く基盤産業は、修正特化係数を計算することで識別できる。 ◆経済基盤モデルで規定される基盤乗数は、基盤産業の成長がどの程度地域の成長に影響 を 与 え る か を 表 す 数 値 で 、 回 帰 分 析 に よ っ て 推 定 で き る 。 通 常 、 基 盤 乗 数 は 1を 超 え 、 乗 数値の倍数だけ地域の成長に乗数効果を持つ。 地域における基盤産業の一覧 ◆大阪府内市区町村における産業別の基盤産業を識別した結果、地域によって、基盤産業 集積の傾向が異なることが分かる。 ◆大阪府内地域における産業集積の特徴をみるため、基盤産業の識別に用いた修正特化係 数を用いた因子分析と、因子分析を基にしたクラスター分析を行った。 ◆ 因 子 分 析 の 結 果 、大 阪 府 内 地 域 に お け る 産 業 集 積 の 因 子 は 7 つ が 特 定 さ れ 、因 子 分 析 を 基 に し た ク ラ ス タ ー 分 析 を 行 っ た 結 果 、 大 阪 府 内 地 域 は 、 12 の 産 業 集 積 ク ラ ス タ ー に 分 け ら れ た ( 図 表 1 )。 ◆特に、製造業の集積が強いクラスターも分かった。 図表1 クラスター分析による大阪府内市区町村の産業集積の特徴マップ (出所)国土交通省国土政策局 「国土数値情報(行政区域デー タ )」を も と に 大 阪 産 業 経 済 リ サ ーチセンター作成。 回帰モデルによる分析 ◆識別された地域別基盤産業の従業者数データを用いて、基盤乗数を推定した。 ◆ 推 定 さ れ た 基 盤 乗 数 は 、 2009 年 か ら 2014 年 に か け て は (1)と (2)、 1996 年 か ら 2006 年 に か け て は (3)と (4)で あ る ( 図 表 2 )。 基 盤 乗 数 は 2 弱 の 値 が 得 ら れ 、 基 盤 産 業 は 乗 数 倍 だけ地域経済にプラスに影響するといえる。 ◆基盤産業のうち製造業の産業数が過半数以上を占める、製造業基盤型地域の基盤乗数は、 2009 年 か ら 2014 年 に か け て は (6)と (7)、 1996 年 か ら 2006 年 に か け て は (8)と (9)で あ る ( 図 表 3 )。同 じ く 基 盤 乗 数 は 2 弱 の 値 が 得 ら れ 、製 造 業 基 盤 型 地 域 の 基 盤 産 業 も 乗 数 倍 だけ地域経済にプラスに影響するといえる。 ◆経済基盤モデルに基づかず、課税対象所得を回帰した分析からも、基盤産業は地域経済 にプラスに影響するといえる。 図表2 推定された基盤乗数 図表3 推定された基盤乗数(製造業基盤型地域) ※ (2)(4)(7)(9)は 、 デ ー タ の 一 階 の 差 分 ( 前 の 期 と の 差 、 つ ま り 成 長 の 形 ) を と っ た も の 。 ◆製造業基盤型地域における、地域経済を表す全産業の従業者数と、基盤産業の従業者数 の推移をみて明らかなように、製造業基盤型地域における基盤産業の従業者数が減少する ことで、基盤乗数倍だけ地域の従業者数が減少していることが分かり、基盤産業の衰退が 地 域 経 済 の 衰 退 に つ な が っ て い る こ と が 分 か る ( 図 表 4 )。 図表4 製 造 業 基 盤 型 地 域 に お け る 全 産 業 従 業 者 数 ( L) と 基 盤 産 業 従 業 者 数 ( LB) の減少数(単位:人) まとめ 基盤産業は地域経済を牽引する産業である。基盤産業の多くが製造業である地域におい て、地域経済を牽引する製造業が衰退をしてしまうと、すなわち地域経済の衰退につなが るということである。地域における基盤産業を適切に認識し、こうした産業の誘致や継続 的な立地をはかっていくことが地域経済政策上大切であるといえる。 ○報 告 書 の 閲 覧 報 告 書 冊 子 ( 資 料 №153) は 、 大 阪 府 府 政 情 報 セ ン タ ー に お い て 閲 覧 い た だ け ま す 。 ま た 、 一 冊 180 円 で ご 購 入 も い た だ け ま す 。 ※大阪府府政情報センター 大阪市中央区大手前2丁目 大阪府庁本館1階 URL TEL 06-6944-8371 http://www.pref.osaka.lg.jp/johokokai/jigyo3/kankobutu.html なお、この報告書及び当センターが実施した調査結果は、当センターのウェブサイト で ご 覧 い た だ け ま す ( http://www.pref.osaka.lg.jp/aid/sangyou/ )。
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