プラスチック系探知機との比較 - エンヴィテック株式会社/ENVITECH

 プラスチック(PS/PVT)系シンチレータ(発光体)は、母材も添加物も有機化合物なので酸化劣化します。それ故、強い潮解性のあるNaI(Tl)シンチレータと共に屋外の精密機器に
は使用してはいけない材料です。しかし、売れています。何故でしょうか。それは、探知機購入の際に必要な知識がエンドユーザーにないこと、そして、金額が安いからだと思います。安心して
使用して戴く為に年次点検は必要ですが、その都度プラスチック系探知機サプライヤーが行っている「探知感度調整」とは、一体どの様な作業なのでしょうか。劣化したシンチレータの感度をよ
みがえらせることなどできません。また、プラスチック系探知機では、Am241を探知できません。何故なら、探知領域下限を100keV以下にするとノイズが増え、BGが上がり探知感度が下が
るからです。それ故、プラスチック系探知機サプライヤーの説明を鵜呑みにして、プラスチック系ゲートモニターを6基、グラップル取付型を5基継続使用したフィンランドのOutoKumpu社は、
2006、2008、2012年と三度も溶解廃炉事故を起こしています。この先例を他山の石とせず、万が一の為の探知機とはどの様なものか、そろそろ真剣に考える時期ではないでしょうか。
バスタブ現象
探知能力比較
テストに使用したシンチレータ
CsI(Tl) Φ350x50mm
PVT 500x1000x50mm 400
1.0
0
6.0
0.5
0.75
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
探知距離(m)
(テストに使用した線源の強さ:37kBq)
6.0
(テストに使用した線源の強さ:370kBq)
註:プラスチックシンチレータはIAEA(国際原子力機関)で検出対象放射性同位体としてCs137、
Co60と共に指定されているAm241からの放射線(59.5KeV)を全く感知しませんでした。Am241
のエネルギー電位は低いのですが、30mmの鉄板を透過する力があります。
CsI(Tl)シンチレータの波形
IAEA( 国際原子力機構 ) が探知を
CPS
CPS
0
5
10
15
Am241
59.5keV
←ノイズ領域
C s137
Co60
662keV
6000
5200
5600
4800
4400
4000
3600
3200
2800
2400
20
時間
25
30
35
40 0
5
10
15
20
<特徴>①エネルギーピーク立たず
②コンプトン散乱による個数のみカウント
③放射線量 (Sv/h) の計算方法はデタラメ
④核種の特定 (同定) 不可能
⑤探知下限を100keV以下にすると、
ノイズ
を多く拾うことになる為にBGが急激に
上がり、探知能力は大幅に落ちる。
クリスタル(CsI(Tl))
プラスチック(PS/PVT)
20keV
20keV
100keV
可 能
不可能
溶解事故を起こした放射性同位体
ゝ
Cs137
(出典 :IAEA【国際原子力機構】2012 年報告書)
ゲートモニター設置例
二基型 + ポータブル統合型
探知機本体
東芝製厚さ計(Am241:18.5GBq搭載)
(製鋼メーカの圧延工程で使用される。)
三基型
四基型
(クリスタル系:CsI)
ガンマ線
ガンマ線
270度探知型
270度探知型
ポータブル型を設置式探知機のIPCに
接続して使用します。
ポータブル型を追加することで三基型と
同等の探知能力となります。
嵩比重が0.5t/m3~の加工後及
び製鋼メーカー納入前や外国への
輸出用のスクラップ、廃棄物の検
査にお勧めします。
ガンマ線
トンネル
効果
360度探知型
振動や熱に強いので台貫の中に取り付ける事
も可能です。嵩比重が高いスクラップや廃棄物
の厳密な検査に適しています。
15
20
25
30
35
チャンネルアラーム作動⇒
40
【シンチレータの性状比較】
発光効率 化学分類 経年酸化劣化 発光体の寿命 資産価値
100
65
無
有
無機
有機
※1 有
半永久的 (発光体)
7∼8年 ※2
無
UN、IAEA、EU委員会、GAZの四公的
機関が要求する技術仕様を満たしています。
シンチレータ別の寿命の違い
プラスチック
(PS/PVT)
シンチレータは有機化合
物なので、7∼8年経つと
探知能力が著しく低下し、
使用不可となります。
半永久的
感度調整は、
果して可能なのか︖
0
(30 年以上)
無機結晶体
(酸化劣化有無)
CPS 感度調整必要無
使用不可
新しいシンチレータへ
交換必要
7~8 年
年
クリスタル(Csl(Tl))は
無機(レアメタル)結晶体
なので酸化劣化しません。
PS/PVTシンチレータの欠点 (出典:原子力百科事典 )
シンチレーション検出器の発光体には、無機物を用いる無機発光体と有機物を用
いる有機発光体がある。有機発光体を溶媒に溶かした後に高分子化して固溶体(例
えばポリスチレンにp-テルフェニルを溶解したもの)とした発光体をプラスチック
発光体という。プラスチックであるために製作と加工が容易かつ大型のものの製作
が可能なので、有機発光体として非常に有用であるがガンマ線には適さない。
PS/PVTシンチレータに寿命がある理由
①白濁化
←放射能マーク
10
弊社製: アラーム作動⇒
プラスチック(PS/PVT)
有機化合物
(酸化劣化有)
電子ボルト
Am241の探知
Co60
5
経年酸化劣化 (註:PS…ポリスチレン,PVT…ポリビニルトルエン )
2MeV
フィンランドのOutoKumpu社の3度の溶解事故の原因となった4GBq以上のAm241
は、日本でも1040基(2003年統計)以上使用されています。(Am241の半減期:432年)
Am241
40 0
クリスタル (CsI(Tl))
①エネルギーピーク立つ
②ガンマ線の個数をエネルギー
( 電子ボルト :eV) と共にカウント
③放射線量の値は正確
④核種の特定も可能
⑤GAZより計測器の認定を受領済
探知エネルギー下限
:
:
1.3MeV
35
アラーム鳴らず⇒通過⇒事故
100
3MeV
30
【光電効果(原子番号の5乗)】
32 チャンネル
100keV
25
チャンネルアラーム
放射性物質が混入していた場合②
他社製: アラーム作動⇒
5
クリスタル(Cs) : 56 = 550.731.776
5
5
プラスチック
(H+C) : 1 + 6 = 7.777
探知感度
1.17&1.33MeV
放射性物質が混入していた場合①
註※1:PMTとの接着面以外は水分に触れない様に、円筒形のアルミ製容器の中に封入されている。
※2:炭素を含む為に、強い酸化劣化がある為。熱にも弱い。
義務付けている三種類の放射性同位体
Cs137,Co60 の波形同一
2000
1600
800
放射性物質が混入していない場合
:4.51g/㎝3
クリスタル(CsI(Tl))
:1.03g/㎝3
プラスチック(PS/PVT)
探知距離(m)
PS/PVTシンチレータの波形
20
アラーム限界値
水準に達せず
バスタブ現象
比重
500
CsI(Tl) 小
0.10 0.25 0.30 0.40 0.50 0.75
***
40
1000
CsI(Tl) 大
+BG低減装置
0
0
CPS
アラーム
トラック進入によるBG値変化と
放射性物質発見の困難さ
トラックOUT
註:出典…国際原子力機関・EU委員会
・国際連合共同作成資料より引用
アラーム
1500
CsI(Tl) 大
2MeV
電子ボルト
アラーム
トラックIN
60
0
PVT
20keV
*100 = バックグランド(BG)値 **120 = アラーム限界値(通常は130∼140に設定してあります。) ***50 = トレーラー侵入時のBG値
Cs137探知テスト
2000
32 チャンネル
バスタブ現象を示すイラスト
2500
反応無し
エネルギーピークを捉えます。
ミリ秒
計数率(CPS)
Am241探知テスト
800
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
140
探知能力に関係するのは、PMT の能力を
120
同一とした場合、シンチレータの面積ではな **100
*
く、素材の比重、発光効率、光電効果です。 80
1600
CPS
このシンチレータ
のみ遮光フィルム
の下に、最初から
3mm厚の鉛板が
貼ってあります。
探知能力比較: ②>③>①
BG の CPS の多さは、探知能力を鈍くします。
つまり探知能力を低くくする訳です。
1200
変化率
(BG 低減装置取付
Cs-I
50φ×350mm
時は
150 ∼ 250cps)
I 50φ×50mm
③BG:1400cps
BG の高さ: ③>②>①
トラック通過中の
BG値現象時間
②BG:560cps
-
32 種類の閾値
ガンマ線の数
<バスタブ現象>
1200
CsI(Tl)
Φ50x50mm
400
①BG:112cps
チャンネルアラーム
トラックが探知機を通過する際の BG 値の変化
※トラックによる遮蔽効果 ( バスタブ現象 ) シンチレータ
光電子増倍管(PMT)
②発光効率劣化
③集光装置劣化
(ライトガイド)
①+②+③
ライトガイド
使用不能
ガンマ線の数を
カウントするの は
PMTです。
シンチレ ータは
シンチレーション光
を発生させる為だ
けの板です。
有機化合物なの
で、ライトガイドと
共に例外なく酸化
劣化します。
費用対効果 (初期投資額の比較だけでいいんでしょうか? )
PS/PVTシンチレータは、酸化劣化により長く持ったとしても10年後には使用できなく
なります。遮光フィルムに包まれていない日本製シンチレータの寿命は更に短くなり、20
年継続使用する場合には、最低3回の交換が必要となります。すると、保守総費用は、
「
探知感度調整」なる不可思議な作業費を含めて、1,700∼2,000万円に上ることに
なります。反対に、シンチレータの交換をしなかった場合には、経年酸化劣化したプラス
チック板が入った箱が、ただ台貫の左右にあるだけの状態となります。
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