Bipolar Ablationにより治療し得た 心室中隔基部起源心室頻拍の1例

Symposium:第 46 回埼玉不整脈ペーシング研究会
●一般演題
Bipolar Ablation により治療し得た
心室中隔基部起源心室頻拍の 1 例
さいたま赤十字病院
羽生総合病院循環器科
筑波大学医学医療系循環器内科
林
渡
根
松
鈴
野
洋 介・新 田
辺 敬 太・平 尾
木
謙・林
村
穣・淺 川
木健司
上昭彦
順
龍
達
喜
一・岩 崎
司・李
基鎬
彦・稲 村 幸 洋・鈴 木 雅 仁
哉・佐 藤
明・大 和 恒 博
裕
50%),局所異常は認められなかった。その他器
はじめに
近年,通常の高周波アブレーションでは治療
質的心疾患はなし。
困難な心室中隔深部に起源を持つ心室頻拍
(VT)
に対して 2 本のイリゲーションカテーテル
冠動脈造影検査:ステント内含め狭窄病変
はなし。
を用いた bipolar ablation により治療に成功でき
る可能性があることが報告されている 1)。
当院においても心内膜側および心外膜側か
らの通電で停止に至らなかった心室中隔起源の
VT に対して bipolar ablation により停止に成功
した症例を経験したため報告する。
2
経
過
a)1st session
まず心内膜側からのアプローチでカテーテ
ルアブレーションを施行した。左室造影を行っ
たところ下壁中隔側において無収縮領域を認め
た。同部位の近傍をカテーテルで mapping した
1
症
ところ心室中隔基部から巣状に広がるパターン
例
56 歳,男性。
を示し
(図 2a)
,QRS から 40msec ほどの先行を
主訴:動悸。
現病歴:50 歳時に急性下壁心筋梗塞を発症
し PCI 治療をされ近医通院中であった。56 歳時
に動悸を自覚し心電図で心室頻拍(VT)を認め
たためカテーテルアブレーション施行目的に当
院紹介となった。
心電図:洞調律時,心拍数 80/ 分,完全右脚
ブロック+左脚前枝ブロック
(図 1a)
。VT,心
拍数 170/ 分,上方軸,左脚ブロックパターン
(図
1b)。
心エコー:全周性に軽度の壁運動低下
(EF
認めた(図 2b)
。pace mapping の一致率は悪い
ものの同部位への通電により 13 秒で VT の停止
に至った。周囲の通電と近傍となる中心静脈か
らの通電を行った。特に中心静脈では左室内に
比較して同様の最早期であり pace mapping も
より一致を認めた。最終的に誘発不能をエンド
ポイントとして終了となった。
b)2nd session
退院 2 週間後に VT 再発あり 2nd session を施
行する方針とした。前回 MCV において pace
mapping がより一致を認めたため心外膜側から
Yosuke Hayashi, et al.:A case of bipolar ablation effective for ventricular tachycardia from postero – septum relating
with myocardial infarction
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Therapeutic Research vol. 36 no. 12 2015
Symposium:第 46 回埼玉不整脈ペーシング研究会
a)
b)
V1
I
II
III
I
V1
V2
II
V2
V3
III
V3
aVR
aVR
V4
V4
aVL
aVL
V5
V5
aVF
aVF
V6
V6
図 1 洞調律時(a)と VT 時(b)
Ⅰ
Ⅱ
V1
V4
MCV
ABLuni
ABL1 2
40msec
ABL3 4
図 2a 左室内における activation mapping
のアプローチでカテーテルアブレーションを施
行した。前回通電した部位近傍において心外膜
側においても巣状に広がるパターンを認めたも
のの局所電位は dull であり
(図 3)
,最終的に通
電は無効に終わった。抗不整脈薬を導入として
経過観察の方針となった。
図 2b 心内膜側における mapping
MCV:middle cardiac vein, ABL:ablation
cathetervein, ABL:ablation catheter
た。これまでの結果から各心腔からのアプロー
チでは通電しきれない中隔深部に起源をもつこ
とが考えられたため bipolar ablation を行う方針
とした。右室・左室それぞれにイリゲーション
カ テ ー テ ル を 留 置 し,そ れ ぞ れ の 部 位 か ら
entrainment を行ったところ右室で concelaed
c)3rd session
entrainment を認めたため(図 4a),同部位とそ
抗不整脈薬導入後も VT 改善なく頻回に発作
の対側となる左室中隔から bipolar ablation を施
が出現するため半年後に 3rd session を施行し
行した(図4b)。通電後23秒でaccelerationを伴っ
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Symposium:第 46 回埼玉不整脈ペーシング研究会
Ⅰ
Ⅱ
V1
V4
MCV
ABLuni
ABL1 2
50msec
図 3 心外膜側における activation mapping
MCV:middle cardiac vein, ABL:ablation catheter
ABL3 4
A
B
Ⅰ
Ⅱ
V1
Ⅰ
Ⅱ
V1
His
His
ABL1 2
ABL1 2
ABL3 4
MAP1 2
MAP3 4
508msec
ABL3 4
458msec
430msec
MAP1 2
MAP3 4
430msec
図 4a 頻拍周期 450msec の VT に対して右室(A)および左室(B)からそれぞれ 430msec の pacing を行い post
pacing inter val を測定
図 4b 右室および左室それぞれからイリゲーションカテーテルで中隔をは
さむ形で留置
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Therapeutic Research vol. 36 no. 12 2015
Symposium:第 46 回埼玉不整脈ペーシング研究会
て停止に至った。impedance は 40Ω の低下を認
ablation で貫壁性の効果を得られることが報告
めた。周囲の通電追加を行い誘発不能となり終
されており 1),本症例のように心内膜側・心外
了となった。その後 12 ヵ月のフォローをする
膜側それぞれからの通電で治療困難である症例
も VT の再発は認められていない。
に対しては bipolar ablation が有効となる可能性
がある。
3
考
察
文
中隔を起源とする VT に対するアブレーショ
ンでは誘発不能に至らない症例が 44%程度あ
ると報告されている 。そうした症例の要因の
2)
一つとして中隔深部に起源をもつことから通常
の高周波アブレーションでは有効通電とならな
いことが指摘されている 3)。in vivo ではあるが,
献
1) Korth J, Dukkipati S, Miller M, et al, Heart Rhythm
2012;9:1932 – 41.
2) Haqqani HM, Tschabr unn CM, Tzou WS, et al.
Heart Rhythm 2011;8:1169 – 76.
3) Nagashima K, Watanabe I, Okumura Y, et al. Circ J
2011;75:565 – 70.
通常の高周波アブレーションと比較してbipolar
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