リニア新幹線情報資料第二弾 リニア建設、川崎市民の不安が解消されるのか心配だ 建設ありき、スケジュールありきで審議すべきでない リニア新幹線の川崎市内でのアセスを審議する川崎市の第6回環境影響評価 審議会が12月20日午後1時半から市役所第3庁舎18階の大会議室で開催 された。JR東海からは中央新幹線建設部の福田部長ら6人が出席した。 今回は、前回のJR東海の事業説明(方法書)について質疑が行なわれる予 定だったが、JR側の市民、神奈川県民のパブコメの補足紹介に対し、委員か ら事業計画の方法書(概要説明)への疑義、不満が相次いだが、市民が期待す る実質的な審議は行われなかった。戸田委員長の裁断で、各委員の個別意見を 一週間以内に審議会事務局に寄せ、事務局がまとめたものを会長、副会長が集 約し決める段取りとなった。 JR側の姿勢は、川崎市内の軌道設置コースや工事期間、立て坑の場所や建 設時期については準備書段階で明らかにするというもの。国の認可を受けた事 業であり、まず「建設ありき」が基本にあって、その目的に向かってスケジュ ール通りに事を進めようという狙いが窺える。一方、審議会にも問題がある。 提出された方法書が「市民の意見を反映しない、かつてないほどいい加減なも の」(戸田委員長)、「方法書には法や条例への対応が無い」(委員)なら、突き 返して出し直させればいいのに、 「もう報告書はできてしまったから」、 「他の自 治体も絡む話だから」 (ともに委員発言)など、私たち市民が首をかしげる進行 も気になった。 また、この日、発言したのは20人の委員のうち、会長を含め5人だけで、 ほかは、会長が再三、意見表明を促したにもかかわらず押し黙ったまま。市民 の意見も、方法書も前回審議(12月7日)で渡されているのに。これでは、 手当を得るために出席しているだけと言われても仕方がない。パブコメで、市 民から100%近い疑念や不安が寄せられ、それらに応える役割と責任を、J Rだけでなく審議会のメンバーも負っていることを忘れてはならない。そして、 公開の審議会の場ではなく、文書による意見集約の形で事が決まるなら、それ は市民不在の密室協議と同じである。専門委員は専門的技術を駆使して、また 公募を含めた市民代表の委員も市民目線に立った責務を全うし、市民の負託に てほしい。 <審議概要> JR東海の補足説明 神奈川県民、川崎市民からのすべての意見を紹介できないが、前回できなかっ たものを紹介する。 「沿線の緑や環境を破壊する。立て坑建設も同じだ」 「東海大地震が発生する可能性が大なのに無謀だ」 「トンネル内で事故や火災が起きたらどう避難するのか」 「原発事故で廃炉や停止、新たに原発は作れない。大電力をどう確保するのか」 「立て坑出口付近の騒音、電磁波の心配」 「トンネル工事で水脈を分断し、地下水が枯渇するのでは」 「工事残土はどう処理するのか」 審議会会長 「何のために市民から意見をもらったのか。ただこのような意見がありました と、ごく一部を紹介して、それでいいのか。方法書を作るにあたって県民、市 民の意見をどう反映させたのか」 JR東海 「それはこれからやります」 会長意見 「すぐ、やってくださいよ。何を考えているのか!」 安全性は東日本地震で実証済み JR東海 「わかりました。まず、リニア中央新幹線建設の目的と意義ですが、東京・名 古屋・大阪の3大都市圏のアクセスを現在よりも1時間短縮でき、そのことで、 ①日本経済と社会活動を活性化できる、②リニアというインフラ新技術の開発 で産業の高度化、振興がはかれる、ということです。 (以下、対策についてのJ R東海の説明) ■立て坑の建設場所は、高度に発展した市街地が避け、企業用地や公共用地を 利用する。立て坑工事ヤードについては緑地の保全に努める。 ■大電力を消費することについては、インフラ整備の電力は確保されるべきと 考える。 ■地震の発生については、東日本大震災でも東北新幹線は大きな被害を受けて いない。阪神淡路大震災以来新幹線の耐震基準は厳しくなった。リニアでもそ の基準で実現する。またリニアは軌道から10センチ浮いて走行するので地震 時に脱線するとは考えていない。 ■緊急時への対応は、客を誘導する係員を乗車させる。列車が止まった場合は、 緊急時は乗客を車外に誘導し、トンネル下部空間を通り、5∼10キロおきに ある立て坑の昇降機を使って地上に避難する。 ■川崎市への方法書は条例に基づいて作成した。評価項目の設定については国 交省のものを参考にした。 ■トンネル工事にあたっては地下水脈について地質調査を行い、専門家の意見 を聞く。工事残土はリニア建設の別の現場で使うか、他の公共事業に活用する。 残土の置き場所は県や関連市町村と相談する。 ■電磁波の影響はない。WHO(世界保健機関)が定めた国際基準を採用して おり、立て坑出口、周辺でも電磁波というレベルではない。リニアの基準は国 の評価でも妥当性が認められている。 ■立て坑付近の振動(微気圧波)は、地下に緩衝坑やあかりフードを作るので 心配ない。 委員質問 「いつ着工して、どのくらい工事にかかるのか。市内の立て坑はいつ作るのか」 JR東海 「平成26年に評価書を作り、同年度中に着工する。軌道と立て坑建設も同時 に着工したい。工事期間は13年。東京・名古屋間の開業は平成39年が目標。 建設費用は自己負担。現在の債務5兆円を超えない費用にする。名古屋以遠の 工事はそれからで、全線開業は平成57年になる」 軌道、立て坑は平成26年度に同時着工、39年開業目指す 川崎市内に立て坑4か所 委員質問 「川崎市内の路線はどうなるのか。立て坑工事はいつからか。それがはっきり しないと議論できない。前段でそういう具体的なプランニングがあるべきだ。 口頭説明だけでは精査できない」 JR東海 「準備書の段階までに詰めて、それから説明する」 委員質問 「シールド工法でトンネルを掘るというが、24時間工事するのか」 JR東海 「立て坑工事を含め、基本は昼間にやる。何かトラブルがあった場合は夜間も ありうる」 委員質問 「実感がわかないので質問したい。神奈川県、川崎市内の工事区間は何キロか。 立て坑は何か所作るのか」 JR東海 「名古屋までの総延長は280キロだが、神奈川内は40キロ、うち川崎市内 が20キロ程度である。トンネルの部分はまだ幅3キロまで詰めとなっており、 正確には決まっていない。立て坑の場所も決まっていないが、20キロだとな れば4か所になる。その工事ヤードは5千∼1万平方㍍。市内のルートの絞り 込み、立て坑の場所は準備書で公表したい」 委員質問 「方法書は分かりにくい。アセス段階で自主的に作られたものであり、法的に 検証されたものではない。一般の人は制度に基づいて作られたと思ってしまう だろう。法律でやるべき評価、条例でやるべき評価を書くべきでないか。方法 書の意味合いを理解しているとは思えない」 JR東海 「アセス法の改訂に基づいて書いている」 委員意見 「川崎市の条例に見合う記述が無い。方法書は法律に見合う本アセスと、川崎 市の条例に見合うものと二本立てにするのが普通ではないか。条例の評価項目 に対応すべきではないのか」 JR東海 「申し訳ない」 会長意見 「申し訳ないでは検討できない」 方法書は中身が無い、でも作り直しさせると審議が遅れる 委員質問 「リニア新幹線ができた場合、運行本数は?」 JR東海 「名古屋まで開業時点では一時間に5本、大阪まで開業時には1時間に8本を 予定」 会長意見 「大工事になるのは日本中が知っている。それにしては方法書の中味はプアだ。 川崎市の審議会なのに市内の工事について具体的な説明が無い」 委員意見 「方法書としては中身が無い。最先端の技術で作るというが、コストを考える と危うい。住民に不安がる。市民の意見をどう反映させるのか不安になる。技 術や視点を個々の地域の環境特性に合わせるきめ細かな方法書ならいいのだが」 (JR東海退席) 委員意見 「他の自治体の評価審議とも絡む。川崎について方法書をやり直させれば大幅 に審議が遅滞する」 会長意見 「個別に意見をもらっていくしかない。方法書についていくら批判してもらっ てもいい。事務局に丸投げするわけではないが、委員の戸別意見を事務局に提 出してもらって、それを整理したうえで会長、副会長に伝えてください。これ ほど批判が出たのは初めて。方法書は出来てしまったから、準備書には反映し てもらいたい」 (以上文責=脱原発かわさき市民の会・天野捷一)
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