為替トピックス - みずほ証券

2016/
為替トピックス
4/12
投資情報部
FX ストラテジスト
由井 謙二
豪州政治動向:7/2にも上下両院解散総選挙の可能性

与党・保守連合のターンブル首相は 3/21、上院で提出している労働関連法案が 5/11 まで
に可決されなければ、上下両院を解散したうえで、7/2 に総選挙を実施すると表明した。総
選挙は当初、今年後半ごろに実施されるとみられていた。

首相発言は、①上下両院のねじれを解消させ、政府の政策遂行能力を高めたい、②保守
連合が高い支持を得ているなか、早めに選挙に打って出たいとの意図があるとみられる。
選挙では、少数政党がキャスティングボートを握る現状の打破につながるかが注目される。

豪州政府には成長戦略とともに中長期的な財政規律の維持が求められる。中長期的な財
政健全化が維持されれば、相対的に高金利の先進国という側面に加え、信用力の高さが
豪州の証券投資に対する安心感をもたらし、豪ドル相場の安定に寄与しよう。
ターンブル首相、上
下両院を解散して総
選挙を7/2に実施す
る可能性を示唆
選挙イヤーである2016年は日米国政選挙が市場の注目を集めているが、豪州では
7月初旬にも上下両院を解散し、総選挙が実施される可能性が高まっている。
与党・保守連合(自由党、国民党、地方自由党)のターンブル首相は3/21、上院に
提出している労働関連法案が5/11までに可決されなければ、上下両院を解散した
うえで、総選挙を7/2に実施すると表明した。総選挙は当初、2016年後半に実施さ
れるとみられていたため、選挙の前倒しを示唆したことになる。労働関連法案は
4/18に召集される議会で審議されるが、上院で一度否決されており、今回も野党・
労働党等の反対で否決される可能性が高いとみられている。豪州で上下両院の解
散となれば、1987年以来、約30年ぶりとなる。
上下両院のねじれが
政府の 政策遂行能
力の低下を招く
ターンブル首相の発言は、①上下両院のねじれを解消させたいとの思惑に加えて、
②保守連合の高い支持を得ているなか、早めに選挙に打って出たいとの意図があ
るとみられる。
①に関して、豪州の議会は日本と同様に2院制が採用され、下院(150議席、任期3
年、小選挙区制)と上院(76議席、任期6年、3年ごとに半数改選、州単位の比例代
表制)からなる。ただ、豪州の上院は予算案の否決権が付与される等、日本の参議
院と比べて強い権限を有している。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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2016/4/12
為替トピックス
2013年9月の総選挙では、保守連合が下院で圧勝し、6年ぶりに政権交代が実現し
たが、半数改選となった上院では、保守連合、2大政党の一角である労働党ともに
過半数を占めるに至らなかった。そのため、緑の党や小数政党が上院でキャスティ
ングボートを握り、保守連合もこれらの政党との連携が不可欠となっている。
そもそも、豪州では1981年以降は一時期を除き、下院を制した政党が上院では過
半数を制することができないという両院のねじれ現象が常態化している。これは、野
党には与党の政策をチェックする機能を担ってほしいという民意が反映されていると
みられている。
ただ、近年では上院でたびたび法案が否決される等、与党は困難な政策運営を強
いられており、支持率が低迷する一因となっている。通常通りの総選挙であれば、
上院は半数改選となり、ねじれ解消は困難となる。そのため、両院解散をともなう総
選挙を実施(下院150議席と上院76議席の全議席が改選)することで、ねじれ現象
を解消させ、政府の政策運営能力を高めたいとの思惑があるのだろう。
オーストラリア下院議席数(全150議席)
オーストラリア上院議席数(全76議席)
その他
4議席
その他
8議席
緑の党
1議席
労働党
(最大野
党)
55議席
緑の党
10議席
保守連合
(与党)
90議席
労働党
(最大野党)
25議席
出所:オーストラリア議会資料よりみずほ証券作成
新政権へ の 期待は
徐々にはく落、与党
内で総選挙の前倒し
を求める声も
保守連合
(与党)
33議席
出所:オーストラリア議会資料よりみずほ証券作成
②に関し、2013年9月の総選挙で勝利したアボット首相(当時)率いる保守連合は、
緊縮的な予算案の発表が国民の不興を買い、支持が低落。長期にわたって野党・
労働党の後塵(じん)を拝した。総選挙が近づくなか、与党内からアボット首相に対
する批判の声が高まり、2015年9月には急遽、与党・自由党が党首選を実施。前通
信相だったターンブル氏がアボット氏を破り、新首相に就任した。
投資銀行出身であるターンブル氏率いる新政権は、市場経済や自由競争を重視
する姿勢を示したことから、市場では新たな経済政策運営への期待が高まり、保守
連合の支持は急回復した。しかし年明け以降は、これまで経済政策で目立った成
果を上げていないターンブル政権への期待がはく落しつつある。今後、さらなる支
持低下も警戒されるなか、与党内で総選挙の前倒しを求める声が高まっていた。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
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2016/4/12
為替トピックス
総選挙で は 両院の 各種世論調査では、依然として保守連合が優勢であるほか、ターンブル首相が野
ねじれ現象が解消さ 党党首よりも支持されている状況が続いており、保守連合が下院を制し、政権を維
持する可能性が高いとみられている。
れるか注目
他方で、上院は予断を許さない。少数政党も議席を獲得しやすい州単位の大選挙
区比例代表制であることから、2大政党ともに過半数を得られないという状況が継続
する可能性がある。ただ、3月に上院選の投票制度が改正され、新制度のもとでは、
有権者の意向が反映されやすくなり、アピール力に劣る少数政党の候補者が不利
になるとみられている。投票制度の変更によって、両院のねじれが解消し、少数政
党がキャスティングボートを握る現状の打破につながるかが注目される。
豪州政府には、成長
選挙結果がいずれにせよ、豪州政府には、競争力や生産性の引き上げにつながる
戦略とともに財政規
律の維持が求められ
る
成長戦略とともに中長期的な財政規律の維持が求められることには変わりはない。
2014/15年度(2015年6月までの1年間)の豪州の純債務残高は名目GDP比15%程
度と低水準にあり、大手格付会社から最上位格付けを維持している。足元では、資
源価格の低迷による法人税収の下振れ等から財政悪化が予想されているものの、
緊縮財政への反発からアボット政権が退陣したこともあり、ターンブル政権はある程
度の財政赤字を許容しつつも、緩やかな財政健全化を進める方針。昨年12月の年
央経済財政見通しでは、2020年度に財政黒字化を達成するとの見通しが示された
(2016/17度予算案は5/3に発表予定)。
中長期的には、消費税に相当する物品サービス税(GST)の課税ベースの拡大等、
税制改革が実施されることで財政健全化が維持されれば、相対的に高金利の先進
国という側面に加え、信用力の高さが豪州の証券投資に対する安心感をもたらし、
豪ドル相場の安定に寄与するとみられる。
(名目GDP比 %)
豪州財政収支(基調現金収支)と純債務残高の見通し
(名目GDP比%)
(年度:2014~2025)
1.0
20
0.5
18
0.0
16
▲ 0.5
14
▲ 1.0
12
▲ 1.5
10
▲ 2.0
財政収支(左目盛)
8
▲ 2.5
純債務残高(右目盛)
6
▲ 3.0
4
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
(注)年度は7月~翌年6月
出所:豪州財務省の年度央経済財政見通し(2015年12月発表)よりみずほ証券作成
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2016/4/12
為替トピックス
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