(2016 年 4 月号掲載) 県内自動車部品製造企業の現況と今後の方向性 一般財団法人群馬経済研究所 主任研究員 斎藤 知宏 【 要 約 】 当研究所では県内自動車部品製造企業を対象にアンケートを実施した。以下はその 結果の概要である。 1.今期の受注・生産高(前期比)をみると、完成車メーカーとの直接取引がある企業 (Tier1) では「 増加 」する との 見方が 過半 数であ るの に対し 、完 成車メ ーカ ー や 大手自動車部品メーカー以外の自動車部品企業と取引する企業(Tier3 相当 注 )で は「減少」するとみる割合が比較的高い。 2.この5年間ほどの取引先数(販売先数)の推移を聞いたところ、取引形態にかかわらず 「増えた」が「減った」を大きく上回っており、製造加工品の品目数も「増えた」との 回答が多かった。 3 . 主 要 取 引 先 か ら 受 け て い る 指 導 ・ 協 力 と し て は 、 Tier1 で は 「 製 造 加 工 技 術 の 供 与」等が多く、大手自動車部品メーカーとの取引が主体の企業(Tier2)では「コ スト削減の支援」が最多であった。また近年取引先から強まってきている要望事項 をみると、Tier1 では「軽量化・小型化」、「部品共通化」などが上位であるのに 対し、Tier2,3 相当の企業では「高精度化」、「短納期化」等が多い。 4.今後の設備投資のスタンスは、取引形態にかかわらず“取引先次第”とする企業が 半数以上を占めている。 5.技術継承における問題点としては、若手人員不足や熟練技術者の不足に加えて、そ の両者の「中間世代が不足している」ことも大きな要因である。また、人員の不足 や 人 材 難 へ の 対 応 と し て は 、 Tier1 で は 「 中 途 採 用 人 員 の 増 強 」 が 最 多 だ が 、 Tier3 相当では「高齢者の活用・定年延長」が多い 6.今後の経営についての方向性をみると、生産計画全体では「現状維持」または「拡 大方向」が大半、海外生産では拡大意欲が強い。また、事業範囲や製造品目数は、 Tier1 では「拡大方向」、Tier2 や Tier3 相当の企業では「現状維持」が多かった。 7.他業種への参入について聞いたところ、「既に参入済」は 12.5%であったが、参 入した事業分野は「医療介護」、「航空宇宙」、などが目立った。 8.系列取引が崩れつつある自動車産業においては、技術開発力次第で新たな受注が受 けられるチャンスもある。取引先への積極的な改善提案を続ける必要があろう。
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