| 森|神| 心 | M A S A A K I M I YA Z AWA 夜明け前、僕は伊勢神宮の内宮を参拝するため、清流五十鈴川の宇治橋のたもとに立っていた。俗界から聖界への架け橋とされるこの橋を前にファインダーを覗いた僕の心は、遠い記憶 を探る様に過去と現在を彷徨し始めた。気がつくと僕は誰もいない宇治橋を渡りきり架け橋の反対側に立っていた。振り返ると、俗界がすごく遠くに見えた。そして、僕は玉砂利の上を一 歩一歩自分の存在を忘れない様に、深い森の中の聖域へと歩き始めた。しばらくすると、霧の向こうに五十鈴川のほとりの御手洗場が見えてきた。山々を水源にし、森を抜けやがて大海 原へと注ぎ込む聖なる川は自然の摂理を教えてくれた。森を包む朝霧に木漏れ日が神々しく射し込む頃には、僕は神話の現代の語り部として静かにシャッターを押していた。 (宮澤正明) G7富山環境大臣会合2016/富山市開催記念 SHIN |伊勢神話と神の森| 期間◎平成28 年5月2日 (月)〜16日 (月) 9:30 ~18:00(金・土は 20:00 まで、最終日16日は 13:00 終了)※休館日=5月11日(水) 場所◎富山市ガラス美術館(TOYAMA キラリ内) 5階 ギャラリー1《入場無料》 主催:富山市 協力◎池田木材株式会社、株式会社千修 会場協力:富山第一銀行 企画制作◎宮澤正明写真事務所、ハートツリー 人々は太古の昔から森と共に生きてきた。伊勢神宮に見られる森 宮澤正明展 =自然との共生は、日本人の精神的支柱となっている常若という 年 と い う 歳 月 を か け て 遷 宮 を 記 録 し、 SHIN 思想に依るところが大きい。驚くべきことに、千三百年前の姿を 宮 ・ 澤正明は 10 遷宮というシステムによって今の時代と生きた状態で繋いでい る。 写 真 家 森を、神を、その心を自身のフィルターを通してビジュアライズ してみせた。神話の新章は、再び伊勢神宮の宮域林から始まる。 伊勢神話、第二章始まる。 SHIN 伊勢神話 式年遷宮 神の森 | 森| 神|心 | 写真家・宮澤正明は、平成 16 年から平成 27 年の 11 年間に体験した伊勢神宮の撮影について、 「人 生における大きな分岐点となった」と書き記している。伊勢神宮との出会いは、宮澤正明の創作活 動にも計り知れない影響を与え、写真家を志して以来一貫して問い続けてきた「《美》とは何か?」 宮澤正明展◎伊勢神話と神の森 という永遠とも思えた命題にひとつの解を得た。そしてこの核心は、これまで見たことのない到達 MASAAKI MIYAZAWA 点に向かう伊勢神話の旅へと導かれ、宮澤正明を取り巻く状況は一変することになる。平成 27 年 3 月、月讀宮以下 12 別宮の遷宮祭がすべて執り行われたことを以て、諸事完遂した 「第六十二回 G7富山環境大臣会合2016/富山市開催記念 神宮式年遷宮」 。この間、活動の中心には常に伊勢神宮の存在があり、自然と神と人とが共生し創造 した神話の世界を写真家のフィルターを通して現出せしめた作品群は海外でも高い評価を得、伊勢 神話への旅は、出版、写真展、映画制作、講演など多方面にわたる展開において人々の感性にイン スピレーションを与え続けてきた。今回の写真展で提示される新たな伊勢神話への旅の物語は、ふ たたび神宮の森から始まる。そして、私たちは 20 年を式年として粛々と繰り返す、常に若々しく瑞々 しい伊勢神宮にふたたび出会うことになる。 しんにょ SHIN-SHIN-SHIN 常若の森―宮澤正明展「森・神・心」に寄せて― 河合真如(神宮禰冝) か み もり まつ やしろ みやい 森は永遠を約束する聖地。生命を守り育む神秘の森は、神聖の宿る杜であり、神を祀る社の鎮まる宮居となった。 まつる 神々を祭祀ことは、常若の世界を確立する自然と営みの保全に繋がる。人々は循環する季節のなかで神に祈り、行 動して幸をたわまり、感謝の心を表してきた。まさに、森と神と心を一つにして生きてきたのである。その歴史は神 話に繋がり、道を違えなければ、未来へと結ばれていくはずである。時空を超える世界を語ることは、容易ではなく、 誰にでも出来るわけでもない。その意味で写真展「森・神・心」の意義は大きい。見えにくい世界を神宮の祭祀と 風景を通して見せる写真は、神話と常若の思想が今に息づいていることを誰よりも雄弁に物語るからである。 1960 年 東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。1985 年に赤外線フィルムを初めてフォト・ 宮澤正明 みやざわまさあき アートに使用した「夢十夜」で NY ICP インフィニティアワード新人賞受賞。帰国後、ファッション・ 広告の分野に活動を広げる。1999 年に「宮澤正明赤外写真集 1979-1999」を上梓。2004 年よ り伊勢神宮/神嘗祭の撮影を行う。翌年、第 62 回伊勢神宮式年遷宮の正式な撮影許諾を受け 「神 話」をテーマに撮影を開始、遷御の儀までの 9 年間で 6 万点に及ぶ作品を奉納する。初監督作 品に伊勢神宮の森をテーマにしたドキュメンタリー映画『うみやまあひだ』。http://mmmp.net 宮澤正明在廊予定◎ 5 月 2 日(月)11:00 ~ 17:00 映画「うみやまあひだ」上映会&トークショー◎入場無料(事前申込制) 「伊勢志摩サミット」 、 および「G7 富山環境大臣会合」開催記念として、 自然との共生をテーマとしたドキュメンタリー映画「うみやまあひだ」 の上映と、ゲストを迎えてのトークショーを開催いたします。 1回目(10:30 ~ 13:00) 日時:平成28年 5月14日 (土)2回目(15:00 ~ 17:30) 会場◎ TOYAMA キラリ 9 階 ファーストバンクキラリホール(西町) 申込方法:往復ハガキ、またはEメールにて、住所、氏名(参加希望 者全員)、年齢、電話番号、希望回(1回目/2回目/どちらでも可) をご記入の上お申し込みください。 定員◎各回 200 名(申込順)※ 1 通につき 5 人分まで申し込み可能 お問合せ・申込先◎富山市広報課 [email protected] 〒 930-8510 新桜町 7-38 TEL 076-443-2018 応募しめきり◎4月 25 日(月)必着 上映 「うみやまあひだ」 宮澤正明氏が初監督したドキュメンタリー作品。森から始まる物語は見えない 糸で人と人がつながり、言葉が響きあいます。 (79 分) トークショー さ さ 《宮澤正明×上村愛子 、 ん 高倉麻子 》 ん オリンピックを5回経験した元女子モー グル日本代表・上村愛子さん(左) 、選手 としてアトランタオリンピック出場の他、 日本人女性指導者として初の年代別世 界大会を制覇した元サッカー日本女子 代表・高倉麻子さん(右)を迎え、宮澤 監督とのトークショーを開催します。 (水)〜 24 日(火) 今後の予定 「森・神・心〜宮澤正明展◎伊勢神話と神の森」5 月18 日 日本橋三越本店 本館 1 階中央ホール◎入場無料◎額装販売あり◎(問)03-5792-8083(マスターワークス) TOYAMA キラリ 〒 930-0062 富山市西町 5 番 1 号 富山市ガラス美術館 TEL:076-461-3100
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