調査報告書概要版(PDF:546KB)

平成27年度産業観光を活⽤した
地域活性化事例調査 概要版
平成28年3⽉
経済産業省 九州経済産業局
調査の背景・⽬的
少⼦・⾼齢化に伴う内需の縮⼩
↓
域外からの集客による域内消費の拡⼤
課題への対応
追い⾵
インバウンドの増加
産業観光を
地域活性化
に活⽤
追い⾵
明治⽇本の産業⾰命遺産
世界遺産認定
・地域活性化の取組に係る課題・今後の展開の検討
・観光資源との組み合わせによる新たな活⽤⽅策・求められる施策
・産業観光をインバウンド向けに展開する場合の留意点・求められる施策
・事例集の作成や成果報告会の開催による成果の普及
2
世界遺産登録を契機に⾼まる産業観光への関⼼
• 産業観光に関連する旅⾏経験が
増えている
過去に経験のある旅行テーマ(2006年と2014年の比較)
過去に経験のある旅行テーマ(2006年)
1 癒しの旅
2
3
4
5
例:世界遺産を訪問する旅
2006年 15.6%(10位)
↓
2014年 20.2%(6位)
2014年は「富岡製⽷場と絹産業遺産群」の
世界遺産登録、「明治⽇本の産業⾰命遺
産」の推薦書の提出があり、近代化産業遺産
に対する関⼼が⾼まったことが背景と考えられる
• 産業観光に関連した旅⾏経験は
年配者で多いが、若い⼈でも潜在
需要は⾼い
経験率
60.0
歴史のある街並みなどを訪ねる旅
大自然の魅力を味わう旅
アウトドア体験を楽しむ旅
スポーツ活動を楽しむ旅
過去に経験のある旅行テーマ(2014年)
1 癒しの旅
経験率
46.3
38.4
34.2
33.3
28.2
2
3
4
5
歴史のある街並みなどを訪ねる旅
大自然の魅力を味わう旅
アウトドア体験を楽しむ旅
博物館や美術館を訪問する旅
34.5
26.2
22.9
21.1
6 博物館や美術館を訪問する旅
7 季節の花をたずねる旅
8 地域の食文化を楽しむ旅
24.5
20.9
17.4
6 世界遺産を訪問する旅
7 季節の花をたずねる旅
8 スポーツ活動を楽しむ旅
20.2
16.7
16.6
9
10
11
12
祭りや伝統芸能を鑑賞する旅
世界遺産を訪問する旅
ものづくりの現場を見学する旅
自分の関心のあるテーマを実現する旅
16.9
15.6
15.4
12.6
9
10
11
12
地域の食文化を楽しむ旅
祭りや伝統芸能を鑑賞する旅
自分の関心のあるテーマを実現する旅
歴史的遺産を訪問する旅
16.4
13.0
12.9
9.6
13
14
15
16
病気回復や健康の維持・向上のための旅
歴史的遺産を訪問する旅
子どもや孫と交流するプログラム参加
スポーツ観戦を楽しむ旅
10.0
9.5
8.9
8.4
13
14
15
16
病気回復や健康の維持・向上のための旅
ものづくりの現場を見学する旅
スポーツ観戦を楽しむ旅
ロケ地を訪問する旅
9.0
8.7
6.4
4.7
17
18
19
20
創作体験をする旅
ロケ地を訪問する旅
農業体験や滞在を楽しむ旅
漁業体験や滞在を楽しむ旅
7.8
5.5
3.1
2.0
17
18
19
20
子どもや孫と交流するプログラム参加
創作体験をする旅
農業体験や滞在を楽しむ旅
ボランティア活動に参加する旅
4.2
4.1
2.2
1.7
21 ボランティア活動に参加する旅
1.3
21 漁業体験や滞在を楽しむ旅
1.5
資料)日本生産性本部「2015レジャー白書」
男女・年代別に見た産業観光に関連した旅行経験(2014年)
男性
女性
歴史的遺産を 男性
訪問する旅
女性
ものづくりの現場 男性
を見学する旅
女性
世界遺産を
訪問する旅
10代
6.8
5.4
7.6
8.9
9.3
9.8
20代
11.2
18.9
8.7
6.9
11.7
6.5
30代
11.3
15.8
10.2
6.5
1.5
6.5
資料)日本生産性本部「2015レジャー白書」
40代
14.5
20.0
10.2
8.1
5.9
11.3
50代
19.0
20.8
13.1
9.5
9.5
11.4
60代
22.1
32.2
10.4
9.4
6.8
13.1
(単位:%)
70代
32.4
38.6
15.4
8.7
10.4
10.0
男女・年代別に見た産業観光関連の潜在需要(2014年)
男性
女性
歴史的遺産を 男性
訪問する旅
女性
ものづくりの現場 男性
を見学する旅 女性
世界遺産を
訪問する旅
10代
11.0
25.0
6.0
5.4
1.7
0.9
20代
8.2
15.7
9.7
3.2
▲ 1.5
6.9
30代
11.3
11.9
4.9
5.8
6.0
9.3
注)潜在需要の算出方法=経験率-希望率
資料)日本生産性本部「2015レジャー白書」
40代
11.6
18.4
6.0
3.8
4.3
3.5
50代
12.0
11.8
7.9
1.1
3.2
▲ 3.4
60代
8.5
8.1
2.6
1.0
2.6
▲ 5.7
(単位:%)
70代
1.7
▲ 2.1
▲ 2.2
▲ 0.4
▲ 4.9
▲ 3.8
3
急増する外国⼈はスマホ+Wi-Fiで情報収集
(万人)
160
• 九州への外国⼈⼊国者数は右肩上がり
で増加
121.6
120
40
54.1
インターネット(パソコン)
29.0
観光案内所(空港除く)
19.7
空港の観光案内所
17.1
宿泊施設
16.9
旅行ガイドブック(有料)
10.8
日本在住の親族・知人
10.2
その他
特になし
6.3
4.0
15.2
観光庁「訪日外国人消費動向調査(2014年)」
39.4
87.0
72.6
59.8
44.3 45.5
20
0
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
(年)
資料)法務省「出入国管理統計年報」
100
(%) 0
20
40
無料Wi‐Fi
インターネット(スマートフォン)
フリーペーパー(無料)
80
56.4
60
63.1
105.7
100.1
日本滞在中にあると便利だなと思った情報
日本滞在中に役に立った旅行情報源
60
79.1
80
↓
今後も増加が期待される
40
92.7
100
• 「第⼆期九州観光戦略」では2023 年
の訪⽇外国⼈数440.6 万⼈を⽬標
20
147.7
140
※世界不況や新型インフルエンザの流⾏があった
2009年と東⽇本⼤震災のあった2011年のみ⼀時
的に減少
(%) 0
九州への外国人入国者数の推移
交通手段
32.2
宿泊施設
29.3
買物場所
26.4
観光施設
26.4
土産物
13.0
イベント
12.5
6.7
両替所
5.2
現地ツアー
4.3
宅配便
2.0
祈祷室
0.5
その他
1.9
特になし
80
100
49.1
飲食店
ATM
60
52.6
• 訪⽇外国⼈はスマホを使って情
報収集
• 無料Wi-Fiに対する⾼いニーズ
↓
スマホ+Wi-Fiで情報収集
11.7
観光庁「訪日外国人消費動向調査(2014年)」
4
九州における近代化産業遺産の保存・活⽤の現状と課題
経済産業省が平成19・20年度に「近代化産業遺産群」を認定してから7〜8年が経過。その間に
「明治⽇本の産業⾰命遺産」の世界遺産登録など、九州の近代化産業遺産を取り巻く状況は⼤きく
変化していることから、認定後の現状や活⽤状況、課題などについてアンケート調査を実施。
【アンケート調査の概要】
調査対象:経済産業省が認定した近代化産業遺産(そのうち管理者がわかっているもの)
発送数:195件(近代化産業遺産1件につき1通発送)
回収数:138件
回収率:70.8%
実施時期:2016年1⽉
【アンケート結果のポイント】
・
・
・
・
・
・
・
・
近代化産業遺産は、稼働中、⾮稼働、転⽤にほぼ三等分
近代化産業遺産認定、世界遺産登録により約半数の施設で⾒学者や問い合わせが増加
ストーリーを活⽤した取組は6割が実施、他の観光資源との連携模索が主体
条件付きも含め8割超が⼀般公開、うち有料公開は4割、ガイドありは6割(無料が多い)
ガイドの課題は、繁閑差による⼈繰り、資⾦⾯、ガイドの⾼齢化が主
外国語の受⼊環境整備には遅れ
活⽤の課題は、維持・補修のコストのほか、活動資⾦や⼈材の問題も
来場者の増加は、住⺠の誇り・意識向上に最も貢献
5
九州における近代化産業遺産の保存・活⽤の現状と課題
近代化産業遺産認定、「明治日本の産業革命遺産」世界遺産
登録をめぐる一連の動きを受けての見学者や問い合わせの増減
対象施設の現在の稼働状況
施設の公開形態(ガイドの有無)
ガイド運営上の課題
(%)
0
10
対象施設への来場による効果、影響
20
30
ガイド可能な人材自体がいない
ガイドを教育するノウハウがない
その他
無回答
(%)
1.9 10.4 ガイド有(67施設)
30
40
21.0 17.4 本業のイメージアップや売上の上昇
17.4 ※複数回答
混雑・受入態勢に伴う問題が生じた
6.5 その他
6.5 N=138
※複数回答
無回答
16.4 29.0 34.6 38.8 11.5 50
46.4 ガイド無(52施設)
4.5 1.9 20
地域の観光消費が拡大した
28.8 9.0 10
関係機関との連携が深まった
10.4 3.8 0
住民の誇り・意識向上につながった
16.4 0.0 ガイド運営を続けるための資金がない
ガイドの品質を確保できない
40
26.9 25.0 繁閑差が大きく、人繰りが難しい
見学者数にガイド数が追いつかない
認定資産やストーリーを
活用した取組の実施状況
6
産業観光を活⽤した地域活性化の取組状況
明治⽇本の産業⾰命遺産を活⽤した地域活性化の取組状況
• 明治⽇本の産業⾰命遺産を活⽤した周遊
観光ルートができている地域とそうでない地域
に分かれている。旧来観光地でなかった遺産
では周辺観光地との連携が課題。(右図)
明治日本の産業革命遺産を組み込んだ周遊観光の状況
北九州市
• ⼯業都市としての知名度を⽣かして産業観光に着⽬
• ガイド育成を通じてシビックプライドを醸成
• ⺠間企業の参⼊を誘導
⼤牟⽥市・荒尾市
• 世界遺産登録を受けてガイド育成を強化
(地元⼩学⽣によるガイドも実施)
• クラウドファンディングを活⽤した保存費⽤の捻出
⻑崎市
• 軍艦島クルーズはガイドとセットで⺠間がサービス提供
• ⻑崎さるくに産業観光のメニューが拡充
富岡市・桐⽣市
• プロ化によりガイドの意識向上と⾒学客の満⾜度向上
• 保存費⽤に充てることを明確化した上で⾒学料を値上げ
注) 1.2015年7月出発のプラン
2.国内旅行3社については、首都圏出発、添乗員付きのツアーに限る
3.西鉄旅行についてはバスハイクに限る
資料)ジェイティービー、KNT-CTホールディングス、阪急交通社、西鉄旅行
の旅行プランをもとに九経調作成
7
産業観光を活⽤した地域活性化の取組状況
産業観光を活⽤した地域活性化の取組
飯塚市
⽇南市
• 旧伊藤伝右衛⾨邸の保存・活⽤を契機に観光振興
を強化
• 外部からの評価(新聞の⼀⾯記事)が保存・活⽤
の気運と取組を後押し
• ⾚レンガ館をコワーキングスペースとして活⽤
• 産業観光の1拠点だけではなく、企業誘致や地域
活性化のツールとしても機能
久留⽶市
• 運河論争が市⺠レベルで街のありようを考える契機
となり近代化産業遺産を活⽤した観光まちづくりへ
• アートとの親和性や炭鉱のストーリーを通じた地域
を越えた連携
• 地域資源の発掘とプログラム化による久留⽶まち旅
博覧会の開催
• まち旅による地元の意識変化と先進事例としての知
名度向上
⼭⿅市
• 限られた時間の中で観光客の受⼊態勢を構築する
過程で地域資源を再発⾒
• 反省会通じてガイドのノウハウを共通・蓄積
• 近代化産業遺産を尊ぶ街のDNAが好循環を形成
⼈吉市ほかJR肥薩線沿線市町
• 全線開通100年を契機に近代化産業遺産としての
肥薩線の活⽤強化
• 沿線の地域活性化に関わるキーパーソンのネットワー
ク化
北海道⼩樽市、岩⾒沢市
群⾺県安中市
• 本物の電気機関⾞の運転体験による動態保存を
メニュー化、運営主体の稼ぎ頭に
• ⼤規模修繕経費は価値を認めた⾏政が負担
愛媛県東予地⽅(新居浜市、今治市ほか)
• 季節の花やサイクリングなど、他の観光資源との組
み合わせによる魅⼒創出とリピーターづくり
• 「居⼼地の良い空間」を形成することで、来訪客の
滞在時間の延⻑を促す
8
産業観光を活⽤した地域活性化の課題
⽂献調査やアンケート調査、ヒアリング調査結果をもとに、産業観光を活⽤した地域活性
化の課題を以下のように整理。
産業観光資源の活
用度の低さと受入
環境の遅れ
• キャパシティの限界(敷地、ガイド等)
• ガイドの対応
(高齢化、繁閑差のギャップと人繰り、飛び込み客への対応困難 等)
• ハード・ソフト両面での対応の遅れ
産業観光に対する
ニーズ把握
• マーケティングの基礎となるデータの不足
インバウンドへの
対応
• 多言語対応の遅れ(費用対効果、頻繁な情報更新が困難)
住民や所有者の理
解促進
産業観光資源の持
続可能な保存・活
用
• ユーザー目線での産業観光資源の活用ニーズ把握
• アジアからの観光客における産業観光資源に対する関心の低さ
• 所有者への公開協力と本業への影響の兼ね合い
• 現役施設では、安全の確保や企業秘密保持への対応
• 保存・活用にかかる経費負担への住民の理解
• 観光資源としての維持や大規模修繕にかかる経費の捻出
• ガイドのボランティア依存
• 周辺の観光資源との組み合わせによる魅力の向上
9
産業観光を活⽤した地域活性化に向けた⽅策
(1)産業観光資源の発掘・磨き上げ
◆産業観光資源の発掘
◆他の要素との組合せ
(2)「稼げる」産業観光づくり
◆演出⽅法の⼯夫による付加価値の向上
◆⺠間企業の参⼊を促す取組
◆資源が持つストーリーを通じた広域展開
(3)インバウンド対応
◆インバウンド対応のためのインフラ整備
◆アジアからの誘客には産業観光資源のストーリーを活⽤
◆深い知識を有する外国⼈には⾔葉の問題よりも中⾝が重要
(4)産業観光資源に対する理解の深化を通じた活⽤促進
◆外部からの評価による価値の伝達
◆教育現場との連携による価値の伝達
◆市⺠の理解の⾼まり通じた保存・活⽤の推進
◆観光だけに留まらない活⽤
(5)持続可能な運営
10