リサーチ TODAY 2016 年 4 月 5 日 日銀短観、業況悪化はまだこれから、日銀は追加策も 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 今年4月1日に日銀から発表された2016年3月の短観では、下記の図表のように、製造業、非製造業とも 業況判断が悪化した。みずほ総合研究所は先週、今回の短観に関するレビューを行っている1。製造業は 海外経済減速を受けた需要低迷等により、総じて悪化。非製造業も建設、不動産等の一部の業種を除き 悪化している。先行きについては、大企業・製造業が3%Pt悪化、非製造業が5%Pt悪化となった。製造業 では海外経済減速が重石となったほか、在庫調整が進まないことへの懸念がある。年初から進んだ円高の 定着も先行きの慎重姿勢の強まりにつながった。2015年度の設備投資計画は大企業・製造業が高めの計 画を維持したほか、中堅・中小企業が上積み。2016年度計画についても発射台としては悪くない。ただし、 現在の為替レート水準が想定レートに比べ依然5円程度円高にあることもあり、今後、業績の下方修正、先 行きのマインド低下の可能性がある。また、新興国を中心にストック調整圧力が強いという構造問題を残す だけに、年後半に向けた更なるマインドの低下には留意が必要だ。国内では、個人消費の停滞が影響して いること、企業の在庫調整が遅れている点も気がかりだ。今回の短観の結果は4月後半に日銀が追加緩和 を行う材料を提供したともいえる。 ■図表:日銀短観の業況判断DI推移 (%Pt) 大企業非製造業 先行き 30 20 10 0 ▲ 10 大企業製造業 ▲ 20 ▲ 30 ▲ 40 ▲ 50 ▲ 60 06 07 08 09 10 11 12 13 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成 1 14 15 16 (年) リサーチTODAY 2016 年 4 月 5 日 下記の図表のように、2015 年度の設備投資計画(土地含みソフトウェア除く、全規模・全産業)は前年比 +8.0%(修正率+0.2%)と高い水準を維持した。大企業製造業で高めの計画が維持されたほか、中堅・中小 企業でも計画が上積みされるなど、企業の設備投資意欲の底堅さが確認できた。2016 年度計画については、 前年比▲4.8%となっている。昨年の同時期が▲5.0%だったことを踏まえれば、発射台としては悪くない。ただし 2016 年度の想定為替レートが 117.46 円であることを踏まえれば、企業業績の一段の下振れ、投資先送り姿勢 の強まりには留意が必要だ。 ■図表:短観の設備投資計画推移(土地含みソフトウェア除く) (前年比、%) 10 8 2015年度 2012年度 6 4 2 2013年度 2014年度 0 ▲2 2016年度 ▲4 ▲6 3月 6月 9月 12月 見込 実績 (注)全規模・全産業。土地を含みソフトウェアを除く。 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成 アベノミクスが始まって3年が経過したが、アベノミクスの好循環の源は、異次元の金融緩和の結果、為 替が円安となり企業業績が改善され、マインドが改善されたことだった。米国を中心とする海外景気の改善 にも後押しされた。しかし、今日、円安による好循環が途切れた状況になったので、マインドの改善は一旦 調整状況になったとみるべきだ。しかも、中国を中心とした新興国のバランスシート調整の影響が、化学製 品や鉄鋼に需給調整圧力を与えている。中国要因は深刻な構造要因としてまだ続くとみるのが自然だ。そ の結果、年後半に向けても、企業マインドの低下が続くことを覚悟する必要がある。今回の短観を受けて、 日本銀行が追加的な緩和策の検討も視野に入れるようになったと考えるのが自然だろう。 1 小西祐輔 「日銀短観(2016 年 3 月調査)」(みずほ総合研究所 『日銀短観解説』 2016 年 4 月 1 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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