参考資料2-2 海外調査報告 (アメリカ(参考資料)) 平成28年4月7日 一般概況 【アメリカ】 ●正式名称:アメリカ合衆国(United States of America) ●首都:ワシントンD.C.(Washington, D.C.) 【一般事情】 ●面積:962.8万平方キロメートル(日本の約25倍) ●人口:3億875万人 ●言語:英語 ●宗教:主にキリスト教 【政治体制・内政】 ●政体:連邦制(50州他) ●元首:バラック・オバマ大統領(2009年1月20日就任、2013年再任。 1期の任期4年。憲法により三選は禁止。) ●議会:二院制 上院・・・100議席(任期6年)。2年毎に約3分の1ずつ改選 議席の構成は、民主党46、共和党54 下院・・・435議席(任期2年)。2年毎に全員改選。 議席の構成は、民主党188、共和党246、欠員1 大統領選挙人定数:538名 上院定数(100名)+下院定数(435名)+コロンビア特別区(3名) ●与党:民主党 ●行政府:大統領制 大統領:バラック・オバマ(民主党、2009年1月以降2期目) 財務長官:ジェイコブ・ルー(民主党、2013年2月就任) ●内政:2014年11月4日の連邦議会選挙の結果、野党の共和党が 上下両院で過半数を獲得し、議会における与野党の対立が 発生している。 1 【アメリカ国旗】 【アメリカ国章】 【経済】 ●GDP総額:17兆3,481億ドル(2014年、IMF)(日本の約3.8倍) ●一人当たりGDP:5万4,370ドル(2014年、IMF)(日本の約1.5倍) ●経常収支 (対GDP比):▲2.2%(2014年、IMF) ●主要産業:自動車、機械、化学・製薬 等 ●貿易 輸出(実額)1兆6,351億ドル(2014年) (主な品目)航空機、燃料油、石油製品、自動車、医薬品 (主要相手国)カナダ、メキシコ、中国、日本、ドイツ 輸入(実額)2兆3,709億ドル(2014年) (主な品目)原油、自動車、医薬品、時計、コンピューター (主要相手国)中国、カナダ、メキシコ、日本、ドイツ 【二国間関係】 ●対日輸出(実額)7兆5,427億円(2014年) (主な品目)食料品、化学製品、電気機器、一般機械 ●対日輸入(実額)13兆6,493億円(2014年) (主な品目)輸送用機器、一般機械、電気機器 連邦政府の歳出・歳入構成(2017年度予算教書) ○ 歳出面では、社会保障関係の歳出が総額の約3分の2。歳入面では、所得税が全体の5分の3。 ○ 歳入の3分の1を占める社会保障税は、社会保障関係費の財源で、日本の社会保険料に相当。 【歳入】 【歳出】 65% 関税 395(1%) 遺産・贈与税 224(1%) その他 1,238(3%) 個別消費税 1,101(3%) 教育・雇用・社会 サービス 1,076 (3%) その他 1,580 (4%) 運輸 1,002 (2%) 利払費 3,027 (7%) 社会保障年金 9,726 (23%) 復員軍人対策 1,808 (4%) 社会保障税 11,412(31%) 3兆6,437億ドル (対GDP比 :18.9%) 個人所得税 17,880(49%) 国防 6,170 (15%) 医療保険 6,050 (15%) 所得保障 5,359 (13%) 法人所得税 4,187(11%) 社会保障関係費の財源で、 日本の社会保険料に相当。 4兆1,472億ドル (対GDP比 :21.5%) 健康保険 5,676 (14%) 2017年度名目GDP(見通し) 19兆3,028億ドル (出典) 「2017年度予算教書」(2016年2月) (注1) 会計年度は前年10月~当年9月まで。2017年会計年度は、2016年10月~2017年9月。 (注2)連邦税として、酒税、たばこ税などに個別消費税が課される。州、郡、市により小売売上税が課されている(例:ニューヨーク市:合計 8.875%)。 2 連邦政府の歳出・歳入構成(2017年度予算教書) ○ 米国の歳出は、裁量的経費(3割)、義務的経費(6割)、利払費に分けることができる。 ○ 裁量的経費は、毎年度、歳出予算法を成立させる必要がある一方、義務的経費は個々の法律に基づいて 歳出権限が認められているため、毎年度の議会の議決は不要。 「2017年度予算教書」(2016年2月) 借金 5035億ドル 歳入 3兆6437億ドル 裁量的経費 1兆2325億ドル ・国防(Defense) : 6076億ドル ・非国防(Non-defense) : 6249億ドル 義務的経費 2兆6065億ドル ・社会保障年金(Social Security) : 9668億ドル ・メディケア(Medicare) : 5982億ドル ・メディケイド(Medicaid) : 3856億ドル 利払費 3027億ドル 等 ※ 前ページの機能別分類とは項目が同じでも金額に相違が生じる ○ 歳出予算法案や義務的経費を定める法案は、議会が作成し、議決を行う。大統領は、自らの提案を「予 算教書」という形式で議会に提出するが、あくまで審議の参考資料という位置付けで、議決対象ではない。 ○ アメリカでは議会が予算を作成するため、議会に対し予算編成過程で必要な情報を与える機関として、 「1974年議会予算法」により議会予算局(Congressional Budget Office(CBO))が設置されている。なお、予 算教書は、大統領府下に置かれた行政管理予算局(Office of Management and Budget(OMB))が作成し、 原則、毎年2月に提出する。 3 3 連邦政府の歳入・歳出 連邦政府の財政収支 ○ 連邦政府の財政収支対GDP比は、リーマン・ショックを機に、2009年度に▲9.8%まで悪化したが、足元の 2015年度では▲2.5%まで回復し、2008年以来最も良い水準まで回復した。 ○ 歳入は、金融政策等もあり経済状況が改善したことに伴い、所得税収と法人税収が堅調に推移し、一貫 して増加傾向。 ○ 歳出は、歳出抑制を行ったことにより、2009年以降3.5兆ドル前後で一定して推移。 (兆ドル) 4.0 リーマン・ショック (2008年9月) 3.69 3.52 兆ドル 兆ドル 3.5 3.25 3.0 兆ドル 歳出 2.5 歳入 2.0 2.10 歳入 兆ドル 歳出 1.5 財政収支 対GDP比 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 1.2% ▲1.5% ▲3.3% ▲3.4% ▲2.5% ▲1.8% ▲1.1% ▲3.1% ▲9.8% ▲8.7% ▲8.5% ▲6.8% ▲4.1% ▲2.8% ▲2.5% (注)数値は実績。 (年度) 4 金融危機後の経済・財政面における対応 金融危機直後の対応 【オバマ政権下の景気刺激策】 ○ オバマ大統領は、2009年2月17日に「米国再生・再投資法(ARRA法)」を成立させ、2009年度から2019年 度までに総額7872億ドル(対GDP比5.5%)の景気刺激策の実施を決定。 ○ CBOは、対策を行わない場合と比較して、2009年末における雇用を80~230万人、実質GDPを1.4~ 3.8%、2010年末における雇用を120~360万人、実質GDPを1.1~3.4%押し上げると試算。 【オバマ政権下の財政健全化目標】 ○ オバマ大統領は、大統領に就任して最初の「2010年度予算教書」(2009年2月)において、「ブッシュ前政 権から引き継いだ財政赤字を自らの任期終了(2013年1月)までに半減させる」と言及。 ○ 翌年の「2011年度予算教書」(2010年2月)では、中期的な目標として「2015年度までに基礎的財政収支 の均衡(財政収支対GDP比▲3%に相当)」を掲げた。 アメリカが抱える課題 ○ オバマ大統領は、2009年2月23日、ホワイトハウスで財政責任サミット(Fiscal Responsible Summit)を開 催し、同年3月に米国が抱える課題について報告書を発表。 ・医療 : 高コスト構造の抑制、保険カバー率の拡大、メディカルケアの質の向上が必要 ・年金 : 基金の持続可能性の確保、年金受給者の拡大が必要 ・税制 : 経済成長との兼ね合いから、改革の時期と範囲を見極める必要 ・財政 : 長期的な財政収支不均衡を解消する必要 5 経済成長に向けた取組 ○ オバマ大統領は、「2010年度予算教書」(2009年2月)で、経済危機から脱し、「21世紀型社会」へ転換する 必要があるとして、今後取り組むべき政策項目を列挙。 これまでの主な取組 ①米国再生・再投資法(ARRA) ・2009年2月に成立した総額7,870億ドル規模の景気刺激策。減税措置、州・地方財政支援、インフラ・科学技術、弱者保護、 ヘルスケア、教育・訓練、エネルギー関連等の包括的な対策。オバマ大統領は、これにより2年間で350万人の雇用を維持・ 創出すると発表。 ・約800億ドルを再生可能エネルギーなどのクリーンエネルギー技術の拡大、高速鉄道などの環境に配慮したインフラ支援、ス マートグリッド等に投資。 ②減税、失業保険延長及び雇用創出法 ・2010年12月、いわゆるブッシュ減税に関して全米国民に対する2年間延長を含む減税法が成立。 ・CBOの試算によれば、財政規模は8,578億ドル。 ③連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策 ・2008年12月以降、政策金利を0~0.25%に設定(米国史上初のゼロ金利政策)。 ・2012年1月、物価目標を前年比2%に設定。 ・2008年9月のリーマン・ショック以降、3回の量的緩和政策(QE)を実施。 ・2015年12月、政策金利を2006年6月以来、9年半ぶりに利上げ(0~0.25%⇒0.25~0.50%) ④通商政策 ・2015年10月のアトランタ閣僚会合で、米国を含む合計12か国における環太平洋パートナーシップ(TPP)協定について大筋 合意、2016年2月4日署名。 6 経済状況の見通しと実績及び評価 ○ 実質GDP成長率に関して、オバマ大統領が就任して最初に提出した「2010年度予算教書」における見通しと 比べて、実績の方が低く推移。 実質GDP成長率の見通しと実績 (%) 6 4.0% 4.6% 4.2% 3.2% 2.9% 2.6% 3 1.3% 0 2.5% ▲ 1.2% ▲ 0.3% 2008 2009 2010 1.6% 2011 2.2% 2012 1.5% 2013 ▲ 2.8% 2.4% 0.7% 2014 実績 2015 (暦年) 見通し ▲3 (出典) 見通しは「2010年度予算教書」(2009年5月)、実績は商務省経済分析部「National Economic Accounts」(2016年3月) 評価 <CBOへのヒアリング> ○ 各政策の経済効果の正確な推計について試行錯誤している。未整備のインフラへの公共投資は経済活性化の即効性があ るが、教育や研究開発は長期的にペイバックするもので、どの分野に投資すべきかの判断は難しい。 <Center for American Progress(民主党系シンクタンク)へのヒアリング> ○ インフラ整備が遅れている。教育、研究開発など長期的成長につながる投資が行われていない。経済成長につながる歳出 を行っていれば、より高い景気回復が達成できたかもしれないが、結局は歳出が抑制された。 <Heritage Foundation(共和党系シンクタンク)へのヒアリング> ○ オバマ政権下で様々な法律が制定されたが、オバマケアなどは経済成長を阻んでいる。オバマケアがなければ、より早い 回復が可能であった。 7 財政状況の見通しと実績及び評価 ○ 連邦政府の財政収支対GDP比に関して、オバマ大統領が就任して最初に提出した「2010年度予算教書」の 見通しと比べて、2011~2013年度は実績の方が悪く、足元の2014年度、2015年度は実績が見通しを上回っ ている。 財政収支対GDP比の見通しと実績 (%) 0 ▲2 ▲4 ▲6 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 ▲ 3.1% ▲ 9.8% ▲ 8.7% ▲ 8.5% ▲ 6.8% ▲ 4.1% ▲ 2.8% ▲ 2.5% ▲ 3.4% ▲ 2.9% ▲ 2.9% ▲ 2.7% ▲ 3.2% ▲ 6.0% ▲8 ▲ 10 ▲ 8.5% 実績 ▲ 12 ▲ 14 (年度) 見通し ▲ 12.9% (出典) 見通しは「2010年度予算教書」(2009年5月)、実績は「2017年度予算教書」(2016年2月) Cap及びPAYGO法に対する評価 <OMBへのヒアリング> ○ Capの設定額について議論はあるものの、Cap制度自体は歳出抑制に大いに貢献した。 <IMFへのヒアリング> ○ Capは、議会で予算の折り合いがつかない場合に、強制歳出削減の発動に繋がるため、政治的駆け引きに使われないよう 安定的に運用されることが望ましい。Capを名目値で固定せず、修正メカニズムの導入が有益。 <Center for American Progress(民主党系シンクタンク)へのヒアリング> ○ Pay-As-You-Goは、新しく作られる法律がどの程度赤字を増加させるかという事実を認識させることで、過剰な歳出を抑え る効果がある。 8 予算編成の流れ ○ 通常は、2月に大統領府から予算教書が提出された後、議会で予算法案を作成し、新会計年度が始まる9 月末までに議会で審議・可決され、大統領の署名をもって予算が成立する。 大 統 領 府 前年4月~5月 前年9月 10月~12月 当年2月 予算作成方針がOMBから各省庁へ発出 各省庁がOMBに予算案提出 OMBによる査定及び各省庁との折衝・調整 予算教書の提出 議 会 OMB: 大統領府行政管理予算局 CBO: 議会予算局 (注)米国の会計年度は前年10月~当年9月 予算教書の両院各委員会への提示 常任委員会・歳出委員会の見積り 4月 予算委員会:予算決議(歳出全体の水準の大枠)を本会議へ報告、採択 下院:予算法案の審議、可決 4月~ 7月~8月 上院:予算法案の審議、可決 9月 大統領の署名 予算法案の本会議可決 予算成立・会期終了 <OMB及びCBOへのヒアリング> ○ OMBの職員数は約475名。そのうち約50名が政治任用(political appointee)。 ○ CBOの職員数は、上院・下院の区別はなく約230名。ディレクターのみ政治任用。 ○ OMB、CBO、財務省の間で意見交換をすることはあるが、職員の人事交流は行っていない。 9 CBO 財政経済 見通し CBO 改訂財政 経済見通し 経済・財政状況(データ) (単位:%) 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 実質 GDP 成長率 1.0 1.8 2.8 3.8 3.3 2.7 1.8 ▲0.3 ▲2.8 2.5 1.6 2.2 1.5 2.4 2.6 2.8 10年物 国債金利 5.0 4.6 4.0 4.3 4.3 4.8 4.6 3.7 3.3 3.2 2.8 1.8 2.4 2.5 2.1 2.6 経常 収支対 GDP比 ▲3.7 ▲4.2 ▲4.5 ▲5.2 ▲5.7 ▲5.8 ▲5.0 ▲4.7 ▲2.7 ▲3.0 ▲3.0 ▲2.8 ▲2.3 ▲2.2 ▲2.6 ▲3.0 失業率 4.7 5.8 6.0 5.5 5.1 4.6 4.6 5.8 9.3 9.6 8.9 8.1 7.4 6.2 5.3 4.9 インフレ率 2.8 1.6 2.3 2.7 3.4 3.2 2.9 3.8 ▲0.3 1.6 3.1 2.1 1.5 1.6 0.1 1.1 PB対GDP 比 1.7 ▲1.7 ▲2.8 ▲2.4 ▲1.2 ▲0.1 ▲0.8 ▲4.6 ▲11.2 ▲8.9 ▲7.3 ▲5.7 ▲2.7 ▲2.0 ▲1.8 ▲1.5 財政 収支 対GDP比 ▲0.6 ▲3.8 ▲4.7 ▲4.3 ▲3.1 ▲2.0 ▲2.9 ▲6.7 ▲13.2 ▲10.9 ▲9.6 ▲8.0 ▲4.7 ▲4.1 ▲3.8 ▲3.6 債務 残高 対GDP比 53.0 55.4 58.5 65.5 64.9 63.6 64.0 72.8 86.0 94.7 99.0 102.5 104. 8 104. 8 104.9 106.0 (出典)IMF「World Economic Outlook」。但し、10年物国債金利についてOECD「Economic Outlook 98」。 10
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