山口学研究プロジェクト・採択プロジェクト一覧

【別添】
山口学研究プロジェクト・採択プロジェクト一覧
プロジェクト(PT)名
PT
期間
研究代表者
山口県防府地
H28 鈴木 素之
域の社会変遷と
∼31 (理工学研
古気候に着目し
(4年 究科・准教
た土砂・水災害
間) 授)
史の編纂
研究グループ(構成員)
<学内教員等>
川島 尚宗 (埋蔵文化財資料館・助教)
高橋 征仁 (人文学部・教授)
楮原 京子 (教育学部・講師)
山本 晴彦 (農学部・教授)
進士 正人 (工学部長,理工学研究科長)
赤松 良久 (理工学研究科・准教授)
田口 岳志 (大学研究推進機構
研究推進戦略部 URA 室・URA)
<学生>
江口 毅 (理工学研究科・
博士後期課程 学生)
プロジェクト(PT)の概要
(1)本研究プロジェクトの概要 本研究プロジェクトは、山口県防府地域を対象として、集落・社会インフラ・経済活動などの社会変遷と年降水量な
どの古気候データを取り込んだ『土砂・水災害発生年表』を作成し、それを地域社会に発信して地元の災害史への関心を呼び起こすとともに、“郷土
愛”の重要性を認識させることを目標とする。また、編纂した土砂・水害史をもとにした『長期リスクマップ』によって確かな防災戦略を描き、それを地
域社会に提案する。更に「時間防災学」研究プロジェクト(代表者:鈴木素之)等と連動して、歴史的タイムスパンから見て「安全・安心な場所は何処
であるのか」を解き明かす。
(2)本研究プロジェクトの背景と目的 本地域一帯は、人間と自然の間に図1(省略)に示すサイクルが働いていたと考えられ、社会的変化と土砂災
害発生の関係を考えるのに適している。本プロジェクトでは、「時間防災学」研究プロジェクトで作成した過去1000年間の『土砂災害発生年表』(後掲)
に社会変遷と古気候の知見を加え、防災学だけでなく人文社会学、気象学の見地から重層的な学術的価値をもつ災害年表に進化させることを目
的としている。また、山口県に残存する歴史資料を解読することによって、災害のローカル性が判明し、地域の成り立ちについて理解を深めながら、先
人の自然観や安全意識を推察し、現在の人々の防災に役立てることも狙いとしている。
(3)本研究プロジェクトの特色 特色としては、①集落:出土資料(土器等)分布から各時代の集落の中心を推定し、集落と崩壊・土石流発生域との
位置関係を調べることにより,先人の防災意識を明らかにする。②社会インフラ:佐波川流域の大雨記録と水害の関係に着目し、河川整備前後の水
害ポテンシャルの増減を調べる。また、佐波川の流路変遷や堤防被災箇所に着目し、佐波川特有の脆弱部を明らかにする。③経済活動:塩田・新
田開発史を探究し、山地荒廃との因果関係を考察する。④古気候:樹木年輪に含まれる酸素同位体比(18O/16O)測定から本地域の古気候を復
元する。
(4)本研究プロジェクトの意義と今後の展開 本プロジェクトの意義は、山口県の史跡・古文書・地理・地質・気候・災害履歴等を包括的に調査解析
し、山口県とその周辺部の大規模災害を1000年単位で予測することである。また、分野横断型のチーム編成でオール山口大学の英知を結集し、地
方創生に貢献することである。山口大学発の文理融合プロジェクトとして他大学・他地域に先駆けて展開する。将来的にこれを核にして研究拠点化
を目指す。
固有の素材や独自の技法を千数百年にわたって保持、継承そして発展させてきた絵画様式である日本画と本学がある山口県地域(本地域)は密
接な関係を有している。日本画の構成要素は、顔料、膠及び基底材(和紙、絹、板材等)であり、顔料は、天然の鉱石を粉砕して分級して調製され、
これに接着剤として機能する膠を混練、この混合物(膠に顔料を分散させたもの)を用いて、和紙、絹、板材などの基底材上に、絵を描く手法が用い
られている。これらの材料の1つである顔料に注目すると、銅を含む各種の鉱石は、日本画の群青や緑青といった顔料として用いられている。本地域
は、長登鉱山に代表される銅鉱石の宝庫であり、さらに色彩や光沢を左右する微量元素が共存する各種銅鉱石の産出が期待される。また、顔料の
1つである胡粉(白色表現などに利用)は、牡蠣殻を数年かけて風化させ、これを微粉化したものが用いられている。本地域は、瀬戸内海に面し、古
来よりこのような牡蠣殻の確保にも適しており、中世以降の日本における胡粉の伝搬に、本地域が関与している可能性も指摘されている。この『地の
<学内教員>
利』は、本地域の大きな特徴となっている。
今岡 照喜 (理工学研究科・教授)
一方、本地域には、文化財修復の第一人者(国の選定保存技術者)であると共に、日本画画家でもある馬場良治氏が居を構えており、その活動拠
永嶌 真理子 (理工学研究科・准教授)
点となっている。また、馬場氏は、独自に開発した新規な膠(以下、開発膠、特許5427590号登録)を用いた文化財修復にも多くの実績(宇治平等
野崎 浩二 (理工学研究科・教授)
院鳳凰堂を始めとする、各地の寺社の板絵や壁画の修復)を有しており、本研究プロジェクトの総合監修として最適任者である。本研究プロジェクトで
藏滿 保宏 (医学系研究科・准教授)
は、この『人の利』も活用する。
上野 和英 (医学系研究科・助教)
文化財修復、特に絵画修復の必要性は、今後さらに高まると考えられている。これは、昭和30年∼40年代にかけて使用された、合成樹脂(ポリビ
福田 隆眞 (教育学部・教授)
ニルアルコールやアクリル樹脂等)を用いた剥落防止剤が白濁化、あるいは、絵画の顔料−膠層を浸潤、粗化して絵画の剥落を一層加速している
中野 良寿 (教育学部・准教授)
現状が有り、一刻も早い絵画修復に関わる人材育成、修復に用いられる技術の改良、修復に関わる新技術の創出が必要となっている。また、韓国
上原 一明 (教育学部・准教授)
や中国では、顔料と膠を用いる絵画様式が既に衰退しており、修復技術を有する技術者が不足していることから、これらの国々が保有している歴史
的に価値の高い古代絵画の修復も、十分には行われておらず、放置、劣化の一途を辿っている。
このような背景のもと、本地域において、絵画修復技術の新展開を可能にする研究プロジェクト、すなわち、各種精密分析手法等による学問的裏
<学生>
付けをベースとした研究と美術史や芸術的感性を背景とする修復技法に関わる研究とを密接に連携させた研究プロジェクトを立ち上げることとした。
※プロジェクト参加教員研究室所属の学生の参
先述した『地の利』と『人の利』を活かし、さらに山口大学の持つ様々な『人の利』や『学術研究資源』を組み合わせて、本研究プロジェクトを実施す
加を計画
る。
<学外>
馬場 良治 (画家/選定保存技術保持者)
加納 隆 (山口大学名誉教授)
H28
山口から始める
堤 宏守
∼30
文化財修復と日
(医学系研
(3年
本画の新潮流
究科・教授)
間)
1
【別添】
プロジェクト(PT)名
PT
期間
研究代表者
「古代テクノポリ
H28
田中 晋作
ス山口 −その
∼32
(人文学部・
解明と地域資産
(5年
教授)
創出を目指して
間)
−」
プロジェクト(PT)の概要
研究グループ(構成員)
<学内教員>
橋本 義則 (人文学部・教授)
村田 裕一 (人文学部・准教授)
坪郷 英彦 (人文学部・教授)
五島 淑子 (教育学部・教授)
楮原 京子 (教育学部・講師)
今岡 照喜 (理工学研究科・教授)
坂口 有人 (理工学研究科・教授)
山本 晴彦 (農学部・教授)
山口県域がもつ歴史、文化的特性は、ややもすれば幕末・維新期や大内氏関係に収斂される傾向が強い。しかし、これに匹敵するもう一つの特性
がある。それは、当県域が「古代テクノポリス山口」とも形容すべき、古代日本を代表する最先端鉱工業地域のひとつであったことである。銭貨の鋳
造が長門鋳銭所(下関市)・周防鋳銭司(山口市)で行われ、東大寺盧舎那仏造立に使用された銅が長登銅山(美祢市)で採掘された。このような
古代国家における経済的基盤や宗教的人心掌握の根幹をなす事業が、政権の中枢がある畿内から遠く離れた当県域(長門国・周防国)を舞台に
展開された背景には、当県域でなければならない必然性があってのことと考えられる。その実態解明が、本プロジェクトの第一の目的である。
具体的には、周防鋳銭司遺跡を核とする鋳銭司・陶地区の生産(鋳造・窯業)遺跡群とこれを管理する官衙を対象として、生産を支える原材料
(銅・鉛・粘土等)の調達を可能とする生産環境、また生産技術や薪炭・水等の生産関係資材の確保と供給、製品の貯蔵と輸送、これら一連の生産
サイクルを維持していく管理・運営組織、さらには生産が環境や社会に及ぼす影響等に関する「古代テクノポリス山口」の総合的な調査、研究を文理
融合の手法をもって目指す。
また、本プロジェクトの第二の目的は、各種研究、調査を学術研究の枠内にとどめるのではなく、地域・行政・大学の協働によって実施し、これにより
地域力・住民力の醸成を図るとともに、その成果を地域創生、地域活性化のツールとなる「地域資産」の創出を目指すことである。たとえば、周防鋳
銭司跡・長門鋳銭所跡・長登銅山跡を核にした「日本遺産」(文化庁)への登録などがその具体的な目標となる。国指定史跡:長登銅山跡は平成
27年度から本格的な史跡整備を目指した調査がはじまっており、同:長門鋳銭所跡は奈良文化財研究所が木簡の釈読に参画している。ここに、鋳
銭司・陶地区総合調査の主たる対象となる同:周防鋳銭司跡での成果を加えることができれば、「日本遺産」への登録実現が十分視野に入ってく
る。
以上の目的をもって、今回の「山口学研究プロジェクト」への応募におよんだ。
<学内教員>
阿濱 茂樹 (教育学部・准教授)
今岡 照喜 (理工学研究科・教授)
小松 隆一 (理工学研究科・教授)
グローカルな視
点で考える山口
県の歴史・文化・
自然・産業
山口県周遊観
光の活性化のた
めの観光客動態
データ収集シス
テムの開発と活
用および観光客
受け入れを含め
た山口型エコ交
通システムの検
討
H28
楮原 京子
∼30
(教育学部・
(3年
講師)
間)
H28
野村 淳一
∼30
(経済学部・
(3年
准教授)
間)
山口県はグロ−バルな視点を持つ歴史が展開された地であり,そうした歴史から醸成された文化や産業,あるいは歴史を支えた自然を通しながら,
郷土から世界を見渡すことのできる恵まれた地でもある。しかし,こうした地域の魅力とも言える事柄が,人々に広く理解されているとは言いがたく,地
域学習の土台となっている学校現場においてもそのような教育は,あまりなされていないのが現状である。
<学外>
そこで,本研究プロジェクトでは,中・高・大の連携体制を築き,各学校において「山口と世界」を考える山口歴史マップを作成し,それらの成果を集
藤村 泰夫 (宇部西高等学校・教諭)
約,発信するものとしてICTを活用したインタラクティブな地域学習サイト「やまぐちアーカイブ」の構築を目指す。特に,中・高・大の連携においては,教
磯部 賢治 (豊浦高等学校・教諭)
員同士の研究活動のみならず,実際に生徒や学生の地域学習の一環として,身近な地域の歴史を掘り下げ,そこから見えてくる山口と世界とのつな
磯村 浩一 (華陵高等学校・教諭)
がりを,フィールドワークも交えながら考える活動を実施する。それは,まさに「山口県教育振興基本計画(山口県教育委員会)」が掲げる「郷土に誇り
佐藤 淳 (山口大学附属山口中学校・教諭)
と愛着を持ち、グロ−バルな視点で社会に参画できる子ども」の育成を実現しようとするものである。 また,歴史を掘り下げる中で,そうした歴史が生
西岡 清美 (元山口県立高校教員)
まれた背景を,社会や政治など人文的要素のみならず,自然的要素との結びつきを含めて検討することにより,地域の自然環境を深く知る事につな
久保 典子 (宇部商業高等学校・教諭)
がると考える。子どもたちを通して,未来へと人の流れがつながっていく「学校教育」という場を活かし,地域の魅力を理解し,他者に,そして世界に,
山下 裕司 (岩国高等学校・教諭)
誇りを持って発信できる人材が育つ基盤を,この山口県に創造する。
柴原 直樹 (毛利博物館・館長代理(学芸員))
弘中 淳一 (やまぐちGIS ひろば/
[宇部興産コンサルタント(株])
<学内教員>
木下 真 (大学教育センター・准教授)
横田 尚俊 (人文学部・教授)
速水 聖子 (人文学部・准教授)
齋藤 英智 (経済学部・准教授)
村上 ひとみ (理工学研究科・准教授)
榊原 弘之 (理工学研究科・准教授)
鈴木 春菜 (理工学研究科・准教授)
宋 俊煥 (理工学研究科・助教)
<学外>
エコマス株式会社
【山口大学ビジネスインキュベーション】
※山口大学発ベンチャー企業
2014年の山口県延べ観光宿泊客数は約176万人(「宿泊旅行統計調査」)で全国33位、日帰り観光客数は約1300万人(「共通基準による観光
入込客統計」)で全国22位となっており、山口県の観光は全国的にみて大きな存在とはなっていない。歴史的資源である萩、自然的資源である秋吉
台など全国的にも知名度の高い一級の資源をはじめ比較的に恵まれた観光資源を持ちながら、それを十分に活かして宿泊客や日帰り観光客を呼
び込むことが出来ていないことが、山口県の観光の大きな課題となっている。
経済学部では2005年度に観光政策学科を設置したことを契機として、山口県観光調査を実施しており、その主な成果は藤井・篠原・齋藤(2008)
「ICタグを用いた観光客動態調査」『経済セミナー』2008年4月号(日本評論社)、野村・木下・齋藤・朝日(2011)「山口県 4 地域間産業連関表を
用いた周遊観光が及ぼす経済効果」『産業連関』で公表されている。これらの成果から、山口県の観光では、自家用車を使い県内を周遊する宿泊
客が約60%と大きいこと、IT技術を活用した観光客動態調査の有用性が明らかとなっている。
以上より、山口県の観光の活性化には山口県全体に広く散らばる魅力的な観光資源をつなぐ経路自体を魅力的にすることが有効であると考える。
現在は、スマートフォンが普及しており、その位置情報を活用することで、観光客の動態を把握することが可能となっている。本研究プロジェクトでは、
山口県の観光客動態データを収集するアプリを開発し、そのデータを活用して自家用車による魅力的な周遊観光ルートの提案、駐車場・案内板など
の改善、山口県観光の魅力の発信に取り組む。このシステムが普及すれば、山口県の観光の実態がリアルタイムに把握でき、機動的な観光施策の
立案・実施も可能となる。また、本研究プロジェクトでは、地域内で観光客がどのような移動手段を使うことが良いかについても検討する。居住地から
萩市や山口市まで自家用車で移動するとしても、市内での移動も自家用車が良いとは限らない。このような地域内の移動手段については、住民やコ
ミュニティを含めた総合的な検討が必要である。こうした観点から山口市などを念頭に山口型エコ交通システムを検討したい。
※研究代表者及び研究グループ構成員の所属・職名等は申請時(H28.1月末)のもの。
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