有 - 三菱東京UFJ銀行

FX Weekly
平成 28(2016)年 4 月 8 日
GLOBAL MARKETS RESEARCH
チーフアナリスト
内田 稔
三菱東京 UFJ 銀行
A member of MUFG, a global financial group
Table of contents
1
今週のトピックス
2
来週の相場見通し
3
来週の経済指標・イベント
4
マーケットカレンダー
1. 今週のトピックス
(1) 高まる日銀 4 月の追加緩和観測とそのハードル
チーフアナリスト
内田 稔
(2) FOMC 議事要旨:熾烈な意見対立とハト派寄りの決定
シニアマーケットエコノミスト
鈴木 敏之
2. 来週の相場見通し
(1) ドル円:107 円台突入の背景は、ドル安ではなく円高
予想レンジ
107.00 ~ 110.50
(2) ユーロ:円高進行によりユーロ円上値重い
予想レンジ
対ドル:
1.1250 ~ 1.1500
対円:
121.50 ~ 125.00
(3) 豪ドル:通貨高牽制が心理的に上値を抑える
予想レンジ
対ドル:
0.7350 ~ 0.7700
対円:
79.50 ~ 83.50
(4) 人民元:方向感を見出し辛い時間帯が続こう
予想レンジ
対ドル: 6.4500 ~ 6.5200
対円:
1
FX Weekly | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
16.50 ~ 17.00
(1) 高まる日銀 4 月の追加緩和観測とそのハードル
見方によっては、リー
マンショックを上回る
円高
今週 7 日、ドル円相場は一時 107 円 67 銭まで下落し、2014 年 10
月以来の安値を記録した。日本銀行(日銀)が、マイナス金利付き
量的質的金融緩和(マイナス金利付きQQE)の導入を決定した 1 月
29 日に記録した直近の高値 121.87 を起点とすると、この 2 ヶ月余
りでドル円は 14 円以上も下落したことになる。こうした急変を受
け、麻生財務相や菅官房長官らが、相次いで円高へのけん制発言を
繰り返しており、新聞紙上では、「為替介入」との文字が浮上。ま
た、1 月に次ぎ、4 月の会合で日銀の追加緩和を求める声も高まり
つつある。実際、今回のドル円急落を、安倍首相が消費税引き上げ
再延期の条件として引き合いに出す「リーマンショックや大震災」
の局面と比較すると、下落幅や下落率こそ両者に及ばないものの、
1 営業日当りの下げ幅では、既にリーマンショックを上回る(第 1
図)。
第 1 図:円高データ
セッション
リーマンショック
震災
マイナス金利後の混乱
起点となる高値
110.67(08/8/15)
83.17(11/3/10)
121.87(16/1/29)
ピークの安値
87.15(08/12/17)
76.25(11/3/17)
107.67(16/4/7)
下落幅(円)
23.52
6.92
14.2
下落率(%)
21.3
8.3
11.7
要した営業日数(日)
88 日
5日
49 日
1 営業日当りの下げ幅
約 26 銭
約 1 円 38 銭
約 29 銭
当局の動き
無し
(但し 10/27、G7 共同声明で為
替市場を注視し、適切に協力す
ると明記)
G7 協調円売り介入実施(3/18)
特になし
(資料)三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
こうしたことを踏まえると、為替介入こそ、国際的な理解を得ら
れず見送られるにせよ、日銀の追加緩和観測は、4 月に向けて高
まっていく可能性が高い。特に、黒田総裁が、物価の先行きを展望
する上で重視する①需給ギャップ、②企業や家計の予想物価上昇率
(期待インフレ)、③賃金の動向、④企業の価格設定行動の内、②
は低下傾向にあり、③も政府や日銀の期待に届いていない。さらに
1 日に発表された日銀短観によれば、④についても、企業の販売価
格DIの低下傾向が継続している(第 2 図)。仕入価格判断DIが、そ
れを上回るペースで低下していることから、黒田総裁は、企業収益
には寧ろプラスとの見方を示したこともあるが、それでも企業の販
売価格が伸び悩むと、幅広い経済主体のインフレ期待を和らげる可
能性に警戒が必要だろう。但し、現時点では、以下に掲げる少なく
とも 4 つの理由により、4 月の政策変更は考えにくい。
2
今週のトピックス | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
第 2 図:企業の販売価格および仕入価格判断 DI(全規模・全産業、「上昇」-「下落」)
40
仕入価格DI
30
販売価格DI
20
10
0
-10
-20
12/3 12/6 12/9 12/12 13/3 13/6 13/9 13/12 14/3 14/6 14/9 14/12 15/3 15/6 15/9 15/12 16/3 16/6
(年/月)
(資料)日銀より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
3
4 月緩和なら、戦力の
逐次投入に該当
1 月末のマイナス金利付きQQE決定後、わずか 3 ヶ月での追加緩
和ともなれば、黒田総裁も嫌う「戦力の逐次投入」と映りかねない。
この場合、既存の政策効果が、想定を下回ったとの連想が働き、か
えって日銀の緩和効果に対する市場の疑念を高めるおそれがある。
効果見極めに時間を要
する
日銀が 1 月に導入を決定したマイナス金利付きQQEに関しては、
導入決定後にかえって株安と円高が進行したほか、負の副作用を指
摘する声も多い。このため、日銀も時間をかけてこの政策の効果を
見極めると考えられる。特に、前回 3 月の会合で、日銀はマイナス
金利が適用される政策金利の残高を「10+α兆円」に維持する方針
を決定したばかり。実務的な観点も含め、次回の緩和までしばらく
時間を要そう。
準備に周到さが求めら
れる
補完措置導入(保有国債の平均年限長期化)、マイナス金利付き
QQE導入とも、結果的にその後の円高を招いた通り、「日銀の緩和
=円安」実現へのハードルは極めて高まったと考えられる(日銀は、
補完措置は追加緩和ではないと説明)。実際、市場は、既に次回の
金融緩和があるとすれば、資産買い入れの拡大、(ETF、REIT、社
債など)他の買い入れ資産の増額や多様化、マイナス金利の深化
(或いは適用範囲の拡大)など 3 次元全てを活用したフルメニュー
で臨むことを既に予想している。サプライズを演出するなら、さら
にもう一工夫が必要と見込まれ、その策定には、周到な準備と時間
を要するだろう。
消費税の行方見極め
国債の大規模な買入れを柱に据えるQQEを遂行する上で、日銀に
とって政府の財政健全化は、極めて重要と言える。その点、110 円
割れを理由に、政府内では、消費税引き上げ延期の議論が今後とも
高まる公算が大きい。仮に、政府が消費税引き上げ再延期を決断す
る場合、前回の例に倣えば引き上げ予定の 11 ヶ月前までとみられ
る(2015 年 10 月引き上げ予定に対して、2014 年 11 月に延期を決
定)。ちょうど伊勢志摩サミットを控える 5 月と予想される。それ
今週のトピックス | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
まで日銀としても消費税の行方に関して、今後の動向を見守ると考
えられ、4 月の会合では動きづらいと言える。
そもそも日銀の金融緩
和に円安をもたらす効
果があるのか?
もちろん、安倍政権と黒田総裁とも、デフレ脱却の上で、円高の
是正を重視している。このため、一段とドル安円高が進む場合、追
加緩和の可能性は高まろう。また、黒田総裁が重視する予想物価上
昇率に影響を及ぼすものとして原油価格の動向にも注意が必要だろ
う。もっとも、昨年ドル円を除くほぼ全ての通貨ペアにおいて、既
に円が全面高となったことは、マネタリーベース拡大に機械的な通
貨押し下げ効果があるわけではないことを示唆している(第 3 図)。
このため、仮に当方の予想に反して、4 月に追加緩和が講じられる
場合であっても、円高基調が継続するというシナリオの変更は必要
ないとみている。
第 3 図:円の名目実効相場 (2012 年 10 月初=100)
(マイナス金利付きQQE)
(QQE拡大)
(QQE導入)
110
1
(円高)
0.9
0.8
100
0.7
0.6
90
0.5
0.4
0.3
80
0.2
0.1
(円安)
70
12/10
13/4
13/10
14/4
14/10
15/4
15/10
0
16/4(年/月)
(資料)Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
米正常化観測(ドル高)やユーロ圏の金融緩和(ユーロ安)の影響を除く為、ドル、ユーロを除く主要 7 通貨(豪ドル、ニュー
ジーランドドル、英ポンド、スイスフラン、スウェーデンクローナ、ノルウェークローネ、加ドル)を対象に均等比率で算出。
チーフアナリスト
4
今週のトピックス | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
内田 稔
(2) FOMC 議事要旨:熾烈な意見対立とハト派寄りの決定
FOMC 議 事 要 旨 が 示
したのは、タカ派とハ
ト派の熾烈な意見対立
着地はハト派寄り
4 月 6 日に、3 月 15-16 日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事
要旨(Minutes)が公表された。その記述から見えることは、FOMC
内で、利上げに積極的ないわゆるタカ派と、利上げに消極的なハト
派の間で、熾烈な意見対立があるが、決定はハト派寄りになったと
いう姿である。
米国経済だけをみれば、雇用は着実に拡大していて、失業率は
5.0%という低い水準であり、インフレの指標には既に心配を要する
動きもあるので、利上げに動くことに違和感はない。それでも利上
げの決定には、国際経済、金融情勢を勘案して、結局、慎重であっ
た。昨年 6 月、9 月も利上げを見送ったのが、イエレンFRB議長の
金融政策の進め方であった。この 3 月の会合も同様であったことに
なる。
さらに、FOMCメンバーは、利上げのパス(経路)を引き下げた。
将来の金利上昇の予想パスが引き下げられる一方で、期待インフレ
率の上昇傾向があることは、ドルの実質期待金利を低下させること
になる。これは、為替相場の円高の動きにも影響を与えているとみ
られる。
この議事要旨にみられる意見対立の論点を確認し、最終的に決定
はハト派寄りになる意味を掘り下げおくことは、今後の市場の動き
をみる上で重要といえる。
① FOMC におけるタカ派とハト派の意見対立
この議事要旨には、次の通り、熾烈な強い意見対立が描かれてい
る。
第 1 表: タカ派とハト派の意見対立の論点
5
タカ派的な論点
ハト派的な論点
景気
世界経済の動向、市場の動揺の逆風があっても、
個人消費は堅調であり、引き続き拡大が見込め
る。
設備投資が軟化している。エネルギー部門の不調
に加え、世界経済と市場の動揺からの悪影響を受
けている。
輸出は外国経済状態から弱く、ドル高の影響も懸
念される。
雇用
今の雇用状態は、持続可能なレベルでは最大限
のところまで強い。労働力不足は、賃金上昇圧力
になっている。
今の雇用は、最大限に未到達。賃金上昇が強くな
いのは驚きで、それはスラックがあることを示してい
る。
ここへきてのインフレ率
の上昇
インフレ率に着実な上昇トレンドがみえる(第 2 表
参照)。
インフレ率上昇の内容は、過去、ボラタイルだった
ものが押し上げているので、インフレ率上昇が持続
するかはわからない。
今後のインフレ率の
行方
原油価格、輸入物価の低下がとまり、雇用の引き
締まりで、この後、インフレ率は上昇する。
世界的なデフレ圧力が、この先、米国のインフレ率
上昇も抑制するようになる。
今週のトピックス | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
第 1 表: タカ派とハト派の意見対立の論点
タカ派的な論点
ハト派的な論点
期待インフレ率
物価連動債と通常債の利回り差で期待インフレ率
をみると、債券市場の流動性の影響などを受けて
いて、妥当な期待インフレ率の数字を示していな
い。サーベイの示す期待インフレ率は、ガソリン価
格に過剰反応する。すなわち、実際に起きている
期待インフレ率の低下は大きくない。
長期の期待インフレ率は既に低下が始まってい
る。また、現実のインフレ率が、目標を下回る期間
が長いと、期待インフレ率が低下してしまう。
世界経済の悪化
(タカ派、ハト派を問わず、多くの参加者の認識として)世界経済の悪化は、米国の国内経済の今後をみ
るダウンサイドリスクである。
多くの国で金融緩和をしており、この動揺の影響
は限定的である。
さらに追加緩和がなされており、それがダウンサイ
ドリスクを小さくする。
各中央銀行の金利は低過ぎるところまで下がって
いて、金融政策には非対称性の問題がある。状況
悪化を相殺できない。
今回の利上げ
今日、利上げを行うべきである。(注:主張者は 2
人とみられる)
<理由>
・世界経済、市場動揺の逆風があっても米国経済
は拡大が持続している
・雇用情勢の改善
・ここへきてのインフレ率の上昇
・原油価格の底入れ
今回は政策金利を維持(注:FF 金利の誘導目標
は 0.25-0.50%)する。世界経済と市場の動揺が、
経済の下降リスクになっているからである。
今後の政策はデータ次第であるが、そのデータ
は、国内の指標だけではなく、海外や市場の動向
も勘案する。
利上げが遅れる弊害
早く利上げをしておかないと、インフレが顕在化し
たときに、大きな利上げが必要になり、弊害が大き
い。
金融政策は非対称。利上げでインフレ抑制はでき
ても、さらなる緩和による刺激は容易ではない。
4 月 27 日の利上げ
ある程度のデータがそろえば、次回(4/26-27)の利
上げが適切である。
4 月に利上げすると、急いでいるという印象を与え
る。それは不適切。
(資料)FOMC 議事要旨より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
第 2 表: 米国のインフレ率の推移 ~タカ派が看過できないコア指数に上昇の動き
(各 前年同月比 %)
15/
16/
9月
10 月
11 月
12 月
1月
2月
3月
CPI
0.0
0.2
0.5
0.7
1.4
1.0
1.9
1.9
2.0
2.1
2.2
2.3
0.2
0.2
0.5
0.7
1.2
1.0
1.3
1.3
1.4
1.5
1.7
1.7
賃金(平均時給)
2.4
2.6
2.4
2.6
2.5
2.3
2.3
期待インフレ率
1.6
1.8
1.8
1.7
1.6
1.5
1.6
同 コア
PCE
同 コア
(注)
『CPI』は消費者物価指数、『PCE』は消費支出価格指数、
『期待インフレ率』は FRB の計算による 5 年先から 5 年のデータ
(資料)米労働省、商務省、FRB のデータより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
② 今後の展開を読む上での注目点
FOMC の 構 成 で 、 タ
カ派は数で劣勢
6
今のFOMCメンバーは、いわゆるハト派の勢力が強いので、着地
はハト派寄りとなり、3 月 16 日のFOMC声明では、世界経済と金融
市場がリスクであることを記し、利上げへの慎重姿勢を示した。ま
今週のトピックス | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
た、3 月 29 日のイエレンFRB議長の講演は、それまでの高官発言と
比べて、利上げに慎重なハト派姿勢が強く出たことが、市場のサプ
ライズになった。しかし、FOMCの勢力分布をみると、イエレン議
長が偏りをもっていたわけでもなさそうである。
第 3 表: FOMC メンバーのタカ派とハト派の 勢力分布 (*は今年の投票権あり)
タカ派
インフレ抑制
中立
ハト派
フィッシャー *
イエレン *
ロックハート
ブレイナード *
ブラード *
タルーロ *
ウィリアムズ
ダドレー *
パウエル *
ローゼングレン *
金融安定
ラッカー
ジョージ *
メスター *
カシュカリ
ハーカー
エバンス
カプラン
(資料)報道などにより 三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチの裁量で作成
タカ派が危惧する問題は、軽んじてよいものではない。しかし、
ここへきて情勢は一段、ハト派の立場の主張が妥当そうな動きに
なっている。対立の論点のひとつに設備投資がある。アトランタ連
銀が第 1 四半期のGDP成長率を推計するGDP Nowでみると、ここ
へきて数字がかなりの低下をみている。直近の 4 月 5 日の第 1 四半
期の成長率の推計は 0.4%である。ISM製造業景気指数が 51.8 まで
回復しても、堅調といえる雇用統計が出ても、この数字は、0.4%で
しかない。この推計では、需要項目別の成長寄与度も試算されてい
るが、設備投資は、マイナス寄与になっている。設備投資が出なけ
れば、米国経済にとって懸案である労働生産性の伸び悩みの解消も
見込み難い。
第 4 図:アトランタ連銀の GDP Now による第 1 四半期 GDP 成長率の推計の推移
(前期比年率、%)
2.5
GDP Nowの第1四半期成長率が大
きく低下 設備投資はマイナス寄与
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
GDP全体
設備投資の成長寄与
系列3
(資料)アトランタ連銀のデータにより 三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチの裁量で作成
7
今週のトピックス | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
2016/4/4
2016/4/2
2016/3/31
2016/3/29
2016/3/27
2016/3/25
2016/3/23
2016/3/21
2016/3/19
2016/3/17
2016/3/15
2016/3/13
2016/3/11
2016/3/9
2016/3/7
2016/3/5
2016/3/3
2016/3/1
2016/2/28
2016/2/26
‐0.5
③ 今後の米国金融政策の行方とその含意
Fed は 利 上 げ を 言 う
が、期待形成を通じて
金融緩和を行っている
タカ派の強めの抵抗があっても、この通り、イエレン議長のもと
でFOMCは、なかなか利上げの実際の決定に進みそうにない。
また、このFOMCで、政策金利の先行きの予想パスは、引き下げ
られている。巷間、米国は利上げへの関心が強く、FOMCメンバー
からも追加利上げについての発言が相次いでいるが、金利予測の提
示を通じる期待形成への働きかけで、実は金融緩和をしているとこ
ろがある。加えて、インフレ率上昇に寛容な姿勢を伴うと、実質期
待インフレ率は低下することになる。ちなみに、インフレ率の目標
の 2%を、一時的に超えるオーバーシュートを受容する発言(2% is
inflation goal, not ceiling 4/7 ブルームバーグ報道)もイエレンFRB議
長から出ている。これは、日米の実質期待金利差を日本が高い方向
へ広げることであり、円高をもたらしている要因といえよう。
第 5 図:FOMC の経済見通しの示す FF 金利の予想の変遷
(%)
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
2015年末
2016年末
2015年9月予測
2017年末
2015年12月予測
2018年末
長期
2016年3月予測
(注) FOMC メンバーの予測の中位値
(資料)FRB のデータにより 三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチの裁量で作成
シニアマーケットエコノミスト
8
今週のトピックス | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
鈴木 敏之
(1) ドル円:107 円台突入の背景は、ドル安ではなく円高
今週のレビュー
ドル円相場、一時 107
円台まで急落
今週のドル円相場は急落した。概ね良好な米経済指標(雇用統計、
ISM製造業景況感指数)を確認した後も、ドル円が下落した前週末
の地合いを受け、ドル円は週初より、軟調に推移。5 日には早々と
110 円台まで下落した。その後、110 円台では一旦、下落ペースが
減速し、6 日にかけて膠着した値動きが続いた。但し、その後、節
目として意識された 110 円台を割り込むと、ドル円は一気に下げ足
を速め、翌 7 日の海外時間に一時 107.67 まで下落。週初の高値
111.74 から最大で 4 円を超える下げ幅を記録した。110 円割れの一
因とされたのが、「恣意的な為替市場への介入は慎まなければなら
ない」との発言を含む安倍首相と米紙とのインタビュー記事だ。こ
れが、円高抑制に対し、日本が消極的と受け止められたと指摘され
ている。さらに、米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(3
月 15~16 日開催分)でも、世界的な景気減速の可能性を踏まえ、
慎重な正常化(利上げ)が必要との認識が改めて確認された。これ
を受け、米国債の利回りが低下し、いくらかのドル安を招いた。加
えて、2 月中旬以降、反転していた米国の株式相場も、上値が重く
なり、VIX指数(別名、恐怖指数)がじわりと上昇するなど、リス
ク回避姿勢が意識された面もあったとみられる。もっとも、8 日の
日本時間のドル円は、一時 109 円目前まで回復する場面がみられる
など、週末を控えた買戻しの動きもみられ、やや小康状態を保って
いる(8 日正午のドル円スポット相場:108.60~62)。
第 1 図:今週のドル円相場
(円)
112.0
↑円安
111.0
110.0
109.0
108.0
↓円高
107.0
4/4
4/5
4/6
4/7
4/8
(月/日)
(資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
来週の見通し
基調は円高も、安値圏
でのもみ合いを予想
9
主要通貨の対ドル変化率(1 日と比較した 7 日)をみると、ドル
は弱いどころか多くの通貨に対して小幅ながらも上昇している。つ
まり、今週のドル円下落の主因は、ドル安ではなく円の独歩高だ。
この背景として、日本の経常収支の改善や円の実質金利の上昇など、
かねてより、複数の円高要因を挙げてきたが、こうした経済の基礎
的条件が、1 週間で 4 円もドル円を突き落とすほど変化したわけで
はない。結局、ドル円急落の背景は、市場参加者のドル高円安期待
が完全に剥落してしまった結果、投機筋の円買いが活発化したと考
えられる。これは、円高の背景として指摘される「リスク回避の円
買い」とはまったく逆の意味合い。即ち、円高を見越した上での
「リスクテイクの円買い」だ。実際、米商品先物取引委員会
来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
(CFTC)の投機筋の動向をみると、最新データである 3/29 時点で
の円の買い越し(ネット)が、約 54 千枚と、金融危機以降の円高
局面を含めても既に高水準となっており、その後も一段と積み上
がったと考えられる(第 2 図)。この円安期待の剥落は、安倍政権
の経済政策運営に対する期待の後退とも密接に結びついているとみ
られる。2012 年 11 月以降の円安は、非居住者による本邦への株式
投資の活発化とともに併走してきたが、非居住者は最大で約 25 兆
円も買い越した日本株に関して、昨年の夏以降に、既に約 11 兆円
も売り越した(第 3 図)。
第 2 図: 投機筋の円の持ち高(ネット)
第 3 図:非居住者の対日株式投資とドル円相場
(枚)
100000
円ロング
(円高期待)
50000
(兆円)
25
(円)
130
125
120
20
115
0
110
15
-50000
105
10
100
-100000
95
5
-150000
円ショート
(円安期待)
-200000
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16(年)
(資料)米 CFTC より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
90
2012年11月以来の非居住者による日本株の買い越し額累計
0
12/11
ドル円(右目盛)
13/5
13/11
14/5
14/11
15/5
15/11
85
80
16/5(年/月)
(資料)財務省より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
このように、今回のドル円急落の背景は、安倍政権の経済政策や、
日銀の金融緩和による物価安定目標達成への懐疑的な見方が、2012
年暮れ以降の円安に対する強烈な巻き戻し圧力となって、値幅を
伴ったドル円急落をもたらしたものと考えられる。実際、今週初、
日銀より公表された「企業の物価全般の見通し」をみても、一段と
物価上昇への期待は萎みつつある(第 4 図)。この為、国際収支の
構造変化や実質金利の上昇などと合わせ、ドル安円高材料が多く、
今後とも円高基調が続く公算が大きい。
もっとも、足元の水準は、2014 年 10 月末の量的質的金融緩和拡
大当時のものと言え、短期的には達成感も醸成されやすい(第 5
図)。前述の通り、円ロングの持ち高も相応に重いため、要人発言
などを受けた不測のドル円反発にも警戒は必要だろう。この為、来
週は依然として下値を切り下げる動きに警戒が必要であるが、今週
とは一転して、神経質な値動きが見込まれる。小康状態の様相を強
め、安値圏でのもみ合いを予想する。
10 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
第 4 図: 企業の物価全般の見通し(全規模・全産業)
第 5 図:12 年以降のドル円相場
(%)
(円)
130
1.8
1.6
120
1.4
110
1.2
100
1
90
0.8
80
1年後
3年後
14/6
14/9
14/12
15/3
15/6
15/9
15/12
16/3 (年/月)
(資料)日本銀行より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
予想レンジ
マイナス金利導入
拡大
5年後
0.6
14/3
量的質的金融緩和(QQE)導入
70
12
13
14
15
16
(年)
(資料)Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
ドル円:107.00 ~ 110.50
チーフアナリスト
11 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
内田 稔
(2) ユーロ:円高進行によりユーロ円上値重い
今週のユーロドル相場は、概ね横這い推移した(第 1 図)。
今週のレビュー
第 1 図: 今週の為替相場推移
(ドル)
1.155
↑ユーロ高
1.150
1.145
1.140
1.135
1.130
↓ユーロ安
1.125
4/4
4/5
4/6
4/7
4/8
(月/日)
(資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
ユーロドルは、米利上げ期待後退によるドル売り地合いの中で、
週初に 1.14 ドル付近で寄り付いた後は、概ね横這い推移した。
5 日の米 3 月ISM非製造業景気指数の市場予想比上振れなどを受
けて、ユーロドルは 6 日に 1.1327 まで軟化した。
しかし、その後、3 月FOMC議事要旨では、何人かのメンバーが
4 月利上げの可能性に言及しつつも、海外や金融情勢は、依然、米
景気へ下向きリスクとし、多数の委員が政策変更に慎重さが必要と
の見方で一致するなど、総じてハト派寄りの見解が示された。ユー
ロドルは 1.1432 まで反発した。
7 日には、東京時間に円高が進行したことを受けたリスク回避姿
勢の高まりを背景に、一時 1.1454 まで幾分上昇した。しかし、ド
ラギECB総裁やプラートECB理事により追加緩和の可能性が示唆さ
れると反落した。その後、マイナス金利幅拡大の可能性を示唆した
3 月ECB理事会議事要旨も材料視されると、ユーロドルは 1.1388 ま
でやや下落した。
この間、円高の進行によって、ユーロ円は 122.55 まで下落した。
第 2 表: 相場に影響した主な経済指標
発表日
4/5
経済指標名
米 3 月 ISM 非製造業景気指数
結果
54.5
市場予想
54.2
前回
53.4
(資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
来週の見通し
来週は、ユーロ圏 2 月鉱工業生産、ユーロ圏 2 月貿易収支、ユー
ロ圏 3 月新車登録台数等の経済指標が発表される。ユーロ圏景気指
標は原油安や物価下落による実質購買力の拡大を受けた個人消費の
増加、ユーロ安を受けた輸出の持ち直しから、引き続き、ユーロ圏
景気の着実な持ち直しを示す良好な結果となろう。
しかし、ユーロ圏景気はデフレギャップ(実際のGDPが潜在GDP
を下回る幅)が引き続き大きい上に、消費者物価指数(HICP)は
前年比マイナスで推移することが見込まれる。ユーロ圏 3 月HICP
はイースター休暇の日並びの関係で上振れることが予想されていた
が、前年比▲0.1%(2 月同▲0.2%)となった。
12 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
第 3 図 :ユーロ圏消費者物価指数(前年比)
(%)
4
3
2
1
0
-1
08/1
09/1
10/1
コアHICP
11/1
食料品等
12/1
13/1
エネルギー
14/1
ユーロ圏HICP
15/1
16/1
(年/月)
(資料)Eurostat より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
3 月ECB理事会議事要旨では、マイナス金利幅拡大は「at this
stage」において▲0.1%の引き下げに留める決定であることが示唆
された。マイナス金利による銀行収益の悪化懸念や副作用の懸念が
議論された一方で、実際には「マイナス金利による副作用は見られ
ていない」との指摘もされている。加えて、マイナス金利の段階適
用についても、オペレーション上の複雑さのために「at this stage」
において見送る点を示した。すなわち、物価見通しが引き下げられ
るような場面では、マイナス金利幅の拡大による追加緩和が実施さ
れよう。
来週のユーロドルはECBによる金融緩和を受けたユーロ売りの一
方、円高進行によるドル売りも意識されることから、概ね横這いで
推移しよう。ユーロ円は想定よりも早い円高進行によって上値が重
い。4-6 月期レンジについても下方修正する。
予想レンジ
予想レンジ
EUR/USD
EUR/JPY
ユーロドル:1.1250 ~ 1.1500
ユーロ円:121.50 ~ 125.00
4 月~6 月
7 月~9 月
10 月~12 月
1 月~3 月
1.05~1.17
120~134
1.04~1.16
122~133
1.03~1.15
119~131
1.02~1.14
117~130
シニアアナリスト
13 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
天達 泰章
(3) 豪ドル:通貨高牽制が心理的に上値を抑える
今週のレビュー
今週の豪ドル相場は、週初 0.7672 で寄り付いた。直後に高値と
なる 0.7677 を記録するも、資源安を背景に、その後軟化。ハト派
色の強いRBA声明文も重石となる中、0.75 台前半へと下落した。週
後半にかけては、ドル売り圧力の高まりを背景に、一時 0.76 台を
回復するも、同水準では上値も重く、再び反落。リスク回避の動き
が強まる中、4/7 には、安値となる 0.7490 まで下落した(第 1 図)。
一方、対円相場は、週初に高値 85.78 を記録するも、リスク回避姿
勢の高まりを背景に軟化。4/7 には約 1 ヶ月ぶりとなる安値 80.64
を記録した。もっとも、引けにかけては、ドル円相場の上昇を受け
て反発。本稿執筆時点では 81 円台後半にて推移している。
第 1 図: 今週の為替相場推移
(ドル)
0.770
↑豪ドル高
0.765
0.760
0.755
0.750
↓豪ドル安
0.745
4/4
4/5
4/6
4/7
4/8
(月/日)
(資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
豪中銀は政策金利の据
え置きを決定
オーストラリア準備銀行(以下、RBA)は 4/5、予想通り政策金
利の据え置きを決定した。一部で利下げを期待する向きもあったも
のの、総じてサプライズは見られなかった(第 2 図)。
第 2 図: 豪ドル相場と豪州の政策金利の推移
(%)
(米ドル)
8.00
1.20
政策金利(左目盛)
豪ドル相場(右目盛)
7.00
1.10
6.00
1.00
5.00
0.90
4.00
0.80
3.00
0.70
2.00
0.60
1.00
0.50
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(資料)RBA、Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
当局は豪ドル高牽制を
再開
しかし、同声明文において、RBAは「under present circumstances,
an appreciating exchange rate could complicate the adjustment under way
in the economy(現在の環境下では、通貨高は進行中の経済調整を
複雑化する可能性がある)」と、豪ドル高に対する警戒感を滲ませ
た。事実、1 月中旬に 7 年ぶり安値(0.6827)を付けた豪ドルは、3
月に入って急反発。3 月末には、昨年 7 月以来となる高値(0.7723)
14 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
を示現する等、わずか 2 ヶ月で約 900 ポイントの上昇を見せている。
こうした状況の中、当局からは豪ドル高牽制が再開。ロウRBA副総
裁による「最近の豪ドル高は比較的緩やかだが小幅に下落すれば歓
迎する(3/8)」や、ガイ・デビルRBA総裁補による「現行水準か
らの下落が好ましい(3/17)」の他、スティーブンスRBA総裁から
も「最近の豪ドル上昇は、商品価格や米金利の見通しを踏まえると
やや先走っている(3/22)」との発言が報じられる等、「豪ドル安
が豪州経済を支援している」としてきた本年 2 月までのスタンスを
一変、豪ドル高に対する警戒感を強めている。
来週の見通し
以上の通り、豪州の金融政策を巡っては、先行き不透明感が根強
く、①RBAは当面、緩和的なスタンスを続けると見られる。足許で
は、②通貨高に対する牽制が強まっている他、③資源価格の反発も
ひとまず一巡。④雇用にピークアウトの兆しが見られる上、⑤通貨
高に伴う交易条件の悪化も警戒される。この為、余程強い米ドル売
り圧力が加わらない限り、豪ドルの上値余地は限られると予想する。
株や資源価格の動向、4/14 に発表される豪雇用統計を睨みつつも、
基本的には上値の重い展開を想定する。
予想レンジ
対ドル:0.7350 ~ 0.7700
対円:79.50 ~ 83.50
アナリスト
15 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
藤瀬 秀平
(4) 人民元:方向感を見出し辛い時間帯が続こう
今週のレビュー
今週の人民元相場は、新規材料に乏しい中、オンショア(CNY)、
オフショア(CNH)共に、方向感に欠ける値動きが継続した。週初
6.4663 で寄り付いたCNYは、対ドル基準値の元安設定を背景にその
後軟化。翌 4/6 には、安値となる 6.4868 まで下落した。しかし、米
早期利上げ観測の後退を背景にドル売りが強まると、CNYも反発。
週後半には、高値となる 6.4587 まで上昇する等、方向感の定まら
ない値動きが継続した。引けにかけては再び下落。足許では 6.48
絡みで推移している。CNHも同様に、週初に高値 6.4670 を示現す
るも、4/6 には安値となる 6.4937 まで下落した。引けにかけて小反
発するも上値は重く、結局 6.49 絡みで越週しそうだ(第 1 図)。
第 1 図 :人民元相場の推移
(CNY)
6.80
対ドル基準値
6.70
オンショア人民元相場
6.60
オフショア人民元相場
6.50
6.40
6.30
6.20
6.10
6.00
15/01
15/03
15/05
15/07
15/09
15/11
16/01
16/03
(年/月)
(資料) Bloomberg、中国人民銀行より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
元の先安観が後退して
いる
元の先安観が後退している。背景には、①米早期利上げ観測の後
退に伴うドル売りの他、②政府による財政出動期待の高まり、③当
局による各種資本規制の強化(個人の外貨両替規制の厳格化や、窓
口指導を通じた企業の外貨買い制限、オフショアへの資金移動制限
など)が挙げられる。当局からも「資本流出圧力は緩和した」との
発言が報じられる等、資本流出に起因した元売りはひとまず後退。
外貨準備のプラス転(第 2 図)、PMI指数の反発も(第 3 図)、足
許の人民元相場を下支えしている。
第 2 図 : 中国の外貨準備高の推移
第 3 図 : 財新 PMI 指数の推移
(兆ドル)
(兆ドル)
(指数)
4.50
0.15
56.0
製造業PMI
外貨準備前月比増減(右目盛)
サービス業PMI
55.0
4.00
中国外貨準備高
0.10
54.0
3.50
0.05
3.00
53.0
52.0
2.50
0.00
51.0
2.00
50.0
1.50
-0.05
49.0
1.00
-0.10
0.50
48.0
47.0
0.00
-0.15
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(資料) Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
16 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
46.0
14
15
16
(年)
(資料)マークイットより三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
来週の見通し
とは言え、中国を巡る不透明感は依然として根強い。過剰生産、
過剰設備を背景に投資や生産が伸び悩む他、輸出の悪化も警戒され
る(第 4 図)。実質実効為替レートの高止まりが一因と見られ、当
局が再び元安誘導に踏み切る可能性は排除できない。無論、当局は
これを否定。「輸出拡大目的で人民元を切り下げる事はしない」と
発言している。しかし、13 通貨で構成されるCFETS指数(人民元
のバスケット指数)はこのところ下落を続け(第 5 図)、市場では、
当局が対ドル相場の安定と引き換えに、他通貨での元安を容認して
いるとの思惑が根強い。来週は、4/15 の実質GDP統計がメインイベ
ントとなるが、人民元相場が主体性を欠く中、方向感を見出すには
至らないと予想。6.45~6.52 内でのレンジ相場を想定する。
第 4 図 : 輸出(前年比伸び率)の推移
第 5 図 : 人民元バスケット(推計値)の推移
(前年比、%)
(指数) 2014/12=100
60
108
輸出の前年比伸び率
↑ 人民元高
50
106
40
104
30
102
20
10
100
0
98
-10
96
-20
94
-30
対USD指数
人民元バスケット
-40
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(資料) 中国国家統計局より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
予想レンジ
92
15/01
15/07
16/01
(年/月)
(資料) CFETS、Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成
ドル人民元:6.4500 ~ 6.5200
人民元円:16.50 ~ 17.00
アナリスト
17 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
↓ 人民元安
藤瀬 秀平
来週の主な経済指標
11 日 (月)
8:50
10:30
10:30
12 日 (火)
13 日 (水)
21:30
3:00
18:00
21:30
21:30
23:00
14 日 (木)
15 日 (金)
16 日 (土)
予想
▲ 12.0%
2.4%
▲ 4.6%
13.5%
▲ 4.8%
▲ 885
▲ 0.5%
0.3%
0.1%
0.1%
334.0
1.85
5.9%
▲ 0.1%
1.0%
10:30
10:30
18:00
18:00
21:30
21:30
11:00
11:00
11:00
11:00
15:00
18:00
21:30
22:15
22:15
23:00
5:00
日
中
中
中
米
米
ユ
米
米
米
中
豪
豪
ユ
ユ
米
米
中
中
中
中
ユ
ユ
米
米
米
米
米
機械受注(前月比、2 月)
消費者物価指数(前年比、3 月)
生産者物価指数(前年比、3 月)
マネーサプライ M2(前年比、3 月)*
輸入物価指数(前年比、3 月)
財政収支(3 月・億ドル)
鉱工業生産(前月比、2 月)
生産者物価指数(前月比、3 月)
小売売上高(前月比、3 月)
企業在庫(前月比、2 月)
貿易収支(3 月・億ドル)
雇用者数変化(3 月・万人)
失業率(3 月)
消費者物価指数(前年比、3 月確定)
消費者物価指数(前年比、3 月確定コア)
新規失業保険申請件数(4/9・万件)
消費者物価指数(前年比、3 月)
実質 GDP(前年比、1Q)
鉱工業生産(前年比、3 月)
都市部固定資産投資(年初来累計/前年比、3 月)
小売売上高(前年比、3 月)
EU 新車登録台数(前年比、3 月)
貿易収支(季調済、2 月・億ユーロ)
ニューヨーク連銀景況指数(4 月)
鉱工業生産(前月比、3 月)
設備稼働率(3 月)
ミシガン大消費者信頼感指数(4 月速報)
証券投資収支(2 月、億ドル)
15:15
22:25
2:00
22:00
4:00
5:00
17:00
3:00
20:00
23:00
23:00
日
米
米
米
米
米
ユ
米
英
米
米
黒田・日銀総裁挨拶(信託大会)
ダドリー・ニューヨーク連銀総裁講演
カプラン・ダラス連銀総裁講演
ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁講演
ラッカー・リッチモンド連銀総裁講演
クノット・オランダ中銀総裁討論
地区連銀経済報告
MPC(BOE 金融政策委員会、政策金利発表) / MPC 議事録
ロックハート・アトランタ連銀総裁講演
パウエル・FRB 理事証言
1:30
米
エバンス・シカゴ連銀総裁講演
12:45
2:00
ユ
日
米
2:00
12:45
米
日
2:00
米
欧州議会本会議(~14 日)
10 年インフレ連動債入札
3 年債入札
G20 財務大臣・中央銀行総裁会議(~15 日)
10 年債入札
30 年債入札
IMF・世界銀行春季総会(~17 日)
30 年債入札
1.0%
6.7%
6.0%
10.4%
10.3%
2.00
▲ 0.1%
75.3%
92.0
中央銀行関連
11 日 (月)
12 日 (火)
13 日 (水)
14 日 (木)
15 日 (金)
16 日 (土)
その他
11 日(月)
12 日(火)
13 日(水)
14 日(木)
15 日(金)
※市場予想は Bloomberg 調査中央値
時刻は日本時間
*印は作成日(4/8)現在で未確定のもの
18 来週の経済指標・イベント | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
前回
15.0%
2.3%
▲ 4.9%
13.3%
▲ 6.1%
▲ 1,926
2.1%
▲ 0.2%
▲ 0.1%
0.1%
325.9
0.03
5.8%
▲ 0.2%
0.8%
26.7
1.0%
6.8%
5.9%
10.2%
11.1%
14.3%
212
0.62
▲ 0.5%
75.4%
91.0
▲ 120
マーケットカレンダー
月
火
2016/4/11
中/消費者物価指数(3 月)
生産者物価指数(3 月)
マネーサプライ M2(3 月)*
日/機械受注(2 月)
水
木
12
米/輸出入物価指数(3 月)
財政収支(3 月)
金
13
米/地区連銀経済報告
小売売上(3 月)
生産者物価指数(3 月)
企業在庫(2 月)
ユーロ圏/鉱工業生産(2 月)
英/MPC(BOE 金融政策委員会、
14
15
米/消費者物価指数(3 月)
ユーロ圏/消費者物価指数確報
米/NY 連銀景況指数(4 月)
鉱工業生産(3 月)
設備稼働率(3 月)
(3 月)
英/MPC(BOE 金融政策委員会)
MPC 議事録
豪/雇用統計(3 月)
~14 日)
ミシガン大消費者信頼感指数
速報(4 月)
証券投資収支(2 月)
ユーロ圏/EU 新車登録台数
中/貿易収支(3 月)
(3 月)
貿易収支(2 月)
中/GDP(1Q)
鉱工業生産(3 月)
小売売上(3 月)
都市部固定資産投資(3 月)
米・ニューヨーク連銀総裁講演
米・ダラス連銀総裁講演
日・黒田日銀総裁挨拶
欧州議会本会議(~14 日)
米・アトランタ連銀総裁講演
米・パウエル FRB 理事証言
G20 財務大臣・中央銀行総裁
米・シカゴ連銀総裁講演
会議(~15 日) IMF・世界銀行春季総会
米・30 年債入札
(~17 日)
米・フィラデルフィア連銀総裁講演
米・サンフランシスコ連銀総裁講演
米・リッチモンド連銀総裁講演
米・3 年債入札
米・10 年債入札
18
19
米/住宅着工件数(3 月)
建設許可件数(3 月)
ユーロ圏/経常収支(2 月)
独/ZEW 景況指数(4 月)
豪/RBA 議事要旨(4/5 分)
20
米/中古住宅販売(3 月)
日/貿易収支速報(3 月)
21
米/フィラデルフィア連銀景況
22
ユーロ圏/製造業 PMI 速報
指数(4 月)
FHFA 住宅価格指数(2 月)
景気先行指数(3 月)
ユーロ圏/ECB 理事会
ECB 総裁定例会見
(4 月)
サービス業 PMI 速報(4 月)
消費者信頼感指数速報(4 月)
米・ニューヨーク連銀総裁挨拶
米・ボストン連銀総裁講演
ユーロ圏財務相会合
EU 経済・財務相理事会(~23 日)
米・5 年 TIPS 債入札
25
米/新築住宅販売(3 月)
独/Ifo 景況指数(4 月)
26
米/FOMC(~27 日)
耐久財受注速報(3 月)
27
米/FOMC
ユーロ圏/マネーサプライ M3
28
29
米/GDP 速報(1Q)
ユーロ圏/欧州委員会景況指数
米/個人所得・消費支出(3 月)
シカゴ PM 景況指数(4 月)
(4 月) ユーロ圏/失業率(3 月)
ケース・シラー住宅価格指数
(3 月)
独/消費者物価指数速報
(2 月) 独/小売売上(3 月)*
消費者物価指数速報(4 月)
GDP 速報(1Q)
CB 消費者信頼感指数(4 月) 英/GDP 速報(1Q)
(CPI、4 月)
日/日銀金融政策決定会合
日/日銀金融政策決定会合
中/製造業 PMI(4 月、1 日)
経済・物価情勢の展望
(~28 日)
豪/消費者物価指数(1Q)
日銀総裁定例会見
消費者物価指数
(都区部 4 月、全国 3 月)
完全失業率(3 月)
家計調査(3 月)
鉱工業生産速報(3 月)
住宅着工件数(3 月)
米・2 年債入札
米・5 年債入札
5/2
欧州議会本会議(~28 日)
3
米・7 年債入札
4
米/ISM 製造業景況指数(4 月) 米/自動車販売(4 月)*
米/ADP 雇用統計(4 月)
建設支出(4 月)
ユーロ圏/生産者物価指数(3 月)
貿易収支(3 月)
豪/RBA 理事会
労働生産性速報(1Q)
製造業受注指数(3 月)
ユーロ圏/小売売上(3 月)
19 マーケットカレンダー | 平成 28(2016)年 4 月 8 日
日市場休場
6
米/雇用統計(4 月)
消費者信用残高(3 月)
中/貿易収支(4 月、8 日)
ISM 非製造業景況指数(4 月)
英市場休場
日市場休場
*印は作成日(4/8)現在で日程が未確定のもの
日市場休場
5
日・独市場休場
照会先:三菱東京UFJ銀行 グローバルマーケットリサーチ
チーフアナリスト 内田 稔
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20 FX Weekly | 平成 28(2016)年 4 月 8 日