結合生産・価値・剰余価値 竃弩〆剰余価値論への新しいタイプの批判について 甲 賀 光 秀 、\ 問 題 資本制のもとで利潤はアキレスの腱である。利潤が正値をとって存在しなけれぼ資本蓄積は不可能であり、蓄 積がなければ資本制がなく資本家階級の存在もない。この利潤が存在するためには、生産過程で労働者階級が剰 余労働を強制されていることが絶対必要な条件である。利潤の源泉が労働者階級の行う不払労働にあるというこ とは資本制にーたいするどのような感情的判断とも無関係に存在する客観的事態である。しかし、経済学がこのこ とを科学的に。発見するのはそう簡単なことでぱなかった。 ﹁剰余価値が利潤の源泉である﹂という命題は竃、員 の発見した剰余価値論の﹁基本定理﹂といえる。この命題にたいして従来から種々のタイプの俗流経済学的批判 が提出されてきた。そしてその都度、峯胃〆主義者の側から反批判がなされてきた。 最近も、新古典派経済学の知的破産とともに買彗〆に新しい関心が寄せられる状況のなかで、いくつかの新. ※ しいタィプの買胃〆の﹁基本定理﹂にたいする批判が提出されている。 ※ 拙稿閉、甲オ◎豪奪試■旭参照。−の番号は末尾の文献を.小す。 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 一 ︵六五三︶ 立命館経済学︵第二十四巻.第五.六合併号︶ 二 ︵六五四︶ 本稿はその新しいタィプの価値論.剰余価値論批判を検討することが目的である。本稿でとりあげる一っのタ イプの批判の内容は、生産過程で結合生産が存在する場合には剰余価値は正値をとらなくとも負値であっても利 潤は正値をとることがあり、したがってく胃*の﹁基本定理﹂は妥当しないというものである。勿論、この批, 判の内容は流通過程での撹乱的影響から生じる相対価格体系の歪みから生じるある種の生産部門の資本家の取得 する利潤が正であるのに、そこでは剰余労働は行なわれていないといった間題ではなく、ある種の生産物の直 接.間接投下労働量が、生産過程で生産財と直接労働を投入しているにもかかわらず、負値をとることそのため 剰余価値も負値をとるが利潤は正値をとるという間題である。’本稿では、結合生春が存在する場合に・その結合 生産物の価値規定、剰余価値規定について極端な簡単化の仮定のもとで論じ、若干の論点をめぐる議論を批判的 に検討する。 価値.剰余価値・利潤存在の条件 結合生産物なし・二生産物の場合 結合生産物が存在しない場合に、二生産部門の簡単化のもとで、価値の量的規定、剰余価値・利潤存在の条件 について、すでに明らかになっていることがらを確かめておく。 杜会的分業が支配し、生。産手段が資本家階級により私有されている資本制のもとで、次の簡単な生産構造を前 提にする。 ¢商品は二種類存在し、いずれの生産物も生産財として、かっ消費財として使用されるものとする・生産期問 は同一とする。 @第.¢商品−単位を、現存している正常な化産条件のもとで生産するのに必要な第.!商品の量をぎ︵“、Hポ N︶とする。sぐVo︵︷oH竺二、︶。 どの商品の生産にも、同質の直接労働が必要であり、第・z商品−単位生産するのに必要な直接労働量を3 ︵rHL︶とする。ミV○ @賃労働者階級の一時間あたりの実質賃金バスヶツトは所与とし、それを︵・01、ら︶とする。 ⋮ 価値規定 以上の簡単化の前提のもとでは、第.z商品の価値は、第乞商品−単位生産するのに必要な各種生産財の価値と ※ 直接労働時問の総計で決まるから、oま巨撃−置塩の価値決定式の簡単な場合をえる。すなわち第.z商品の価値 は次の連立方程システムで決まる。 ※ く・穴.O昌岸ユ睾甘︸び饒誘け¢O。。。導・弓烹弓亭◎qO︷く竺亮◎︷Oミ巨雲8&◎一りり・0。べー竃・置塩信雄閉。 一一、、、、圭、、、ガ心︶一 一一一 ここで、ちは第づ商品−単位の価値を示す。さて、一般に、どの生産過程でも、生産財と直接労働の投入が必要 であるとすれぼ、直接・間接投下労働量11価値は正値をとると考えるのは自明のことのように思える。古典派の 経済学老、例えば、p霞8邑oはすべての生産財の価値が、その生産過程を順次逆行してゆげぼ、結局、直接 労働のみの集計に帰着すると考えていたから、価値の正値性には、何の疑いも挾みえなかった。P霞8邑◎が 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶. 三 ︵六五五︶ 、 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 四 ︵六五六︶ ﹁原理﹂の第一章で用いている設例は、第−財が直接労働と無償の自然資源で生産され、第2財は、第−財と労 働から生産されるというようなものである。この場合には、生産過程の数がどのように大であっても、どの生産 物の価値も正値を必らずとる。しかし、杜会的分業の体系がP霞8&◎の想定したようなものではたく、どの’ 生産財の生産にも必らず一っ以上の生産財が投入されなければならないという現実の生産構造にリァリスティッ クであるためには、くp員の想定した生産構造でなげれぼならない。○o式の体系は、簡単であるが、この点をみ たしている。さて、そのような場合には、どの生産物の価値も正値をとるということは無条件に1はいえたい。Oじ で決まるちがすべて正値をとるためには、すでに知られているように、労働生産性が一定の発展水準に到達して 一H一、 いることが必要である。すなわぢ、所与の標準的生産条件のもとで、それぞれの生産過程で純生産物の生産が可 能でたげればたらない。実際、0D式は、移行して行列表示で記すと、 一︵“︶一一い一一一じ−oじ となる。前提により、ぎぶV◎であるから、“V◎なるためには、 ︵H1s旨︶V◎一 S 戸−生V◎ ︵口一 でなげればならない。ここで−1とは、oo式の之ベクトルの係数行列からなる行列式である。G○、何の条件 がみたされれば、そのとき、ちはすべて正値をとる。ところで、この前提のもとで、各生産物の純生産が可能で ある た め に は 、 第 ・ z 生 産 物 の 総 生 産 量 を 巧 で 記 す と 、 ︸︸一一ぷ∴ ︵い︶ をみたす巧、巧が存在することが必要である。したがって、吻か、変形して、ふたたび行列表示で示すと 一︵、り︶’一い一〇じ・一り 、い、 タV9 ぎV◎. ︵H13一︶V〇一 ︵へ︶ となる。以の北の係数行列は、甘の係数行列の転置行列である。oでも、 −ート、一V○ ︵口︶、 がみたされれば二V7保証される。すなわち、価値の松条件と純差可能条件とは等値である。 式の解を求めると、 ︵Hls曽︶ぎ十3忘心 s旨3+︵一13H︶3 “” > § “11 − ﹀ 但し、>H︵HI3一×Hl享︶−s室.3・ 11只ーと 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 五 ︵六五七︶ 、 いま、 ︶ 1 ︵ 立命館経済学︵第二十四巻.第五・六合併号︶ 六 ︵六五八︶ をえる。杜会的分業が支配しているもとで各部門とも他の部門の生産物を生産財として使用するが、杜会的分業 体系として純生産物の生産が可能でなけれぱ、各部門の生産物の生産に幾ら生産財と直接労働を正の量だけ投入 しても各部門の商品の価値は正値をとらないのである。 ところで、第.、商品−単位生産するのに直接・問接必要な投下労働最が○O式あるいは側式で決まるというのは、 次のことを含んでいる。 第.、商品をb9で1単位生産するためには、第・z部門とそれ以外の部門で幾ばくかの生産をすることが必要で ある。各部門についてそれを求めると、純生産可能条件を前提して、 ざ一113−ざ−十s旨ぶ−十H ぶ−113峯H−十s竃ぶ一 s ざM113忘∼十s旨ぶN ぶ心113苓∼十ぶ忌∼十H 一岬一 となる。ここで、〃は、第ノ部門で純生産物ユ単位生産するときの第・z部門の生産必要量を示す。︵こ1IHL︶↑O・ 伺から、 ぎ、−市宰ぶ心﹂沁ぜ 一9 s旨 ︵H−s巨︶ 旨、、11下生・、一、11下生 S をえる。したがって、第一生産物を正味−単位生産するために、は、第一、二の両部門で、それぞれミ︸一一ぶさ、 ● だけの労働が必要であり、総計3ぎ、十3ぶ、だげの労働が必要となる。そのように考えると、それぞれの場合、 ︵HIs曽︶ぎ十3忘心 きざ−十§ぎ−H −ート、一 一。。一 きざ心.十きさ旧11 8ミH+︵Hl3−︶き −1﹄、一 だけの労働が、正味−単位生産のため必要なことがわかる。側式の値は、榊式のへ、らにそれぞれ等しい。価値 の量的規定において、生産財の価値移転部分は、﹁過去﹂労働の移転と考えがちであるが、そうでは一なく、現存の 正常な条件のもとで、必要な生産財を再生産するときに必要な労働旦里であることを明示的に示したものとい、尺る。 似剰余価値。 杜会で剰余生産物の生産が可能であるためには、総生産物から消耗生産財を控除して残る純生産物が生産され 七 ︵六五九︶ 一〇 ることは必要であるが十分ではない。純生産物から直接生陸に従事した労働者の労働力再生産用の消費財を控除 して、なお残余の生産物が正の量なければ剰余生産物を生産したことにはならない。 漣粉井蹄薄”夢肝騨書−董諌肝腺津−峡璽d璃辛砕圭ま購津、 である。 われわれの前提のもとでは、次の関係をみたす拘が存在することである。 ざV︸︸十£ぶ十ぎ︵3べ−十きぶ︶ ぎV3妄一十s竃ぶ十8︵3ぎ十ミき︶ ぎ V p ぶ V ◎ 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 似式を移行して整理すると、 一パ汀二■い一一一一一・n一・ ぎぶV◎なるためには、 ︵Hl3Hlyぎ︶ 1︵Q旨十ダき︶ 011 1︵3旧十83︶ ︵HIQ竃−y§︶ なる行列式の値が正で、 ︵HI3−Iyき︶V〇一 ︵HI3Iy§︶Vo 八︵六六〇︶ ♂一、 8 亘 なることが必要である。各部門で単位生産物あたりの純生産量から、 労働者用消費分を控除して残余が正である ことが必要である。 さらに、Gの値は、適当に変彬すれぼ次のようになる。 ﹀11−ート、一11︵H13一︶︵H−3旧︶−3、ぶ一 かつ第二項が正であればよい。 s ?>・一工・・一、.、心、服、十、、心ミ心−ざ、、、ミ、十咋員、、一ミ。 即ち、胸からGが正なるためには、−−\、一が正であること、 純生産可能であり、 第二項は、正値のちを代入すれば、 、、.ぎ、、V。一 一星 であることになる。d勾は、単位時問の労働で得た実質賃金バスヶツトの化産には単位時問を要さないということ である。剰余生産物の生産が可能であるためには純生産が可能であり、かっ労働者が剰余労働を強制されている ことが必要である。逆に、G↓が成立すれぼ、側を充たすおVoか存在する。即ち剰余労働時問が正であれぼ、 純生潅可能匁条件のもとで、剰余生産物の生産は保証される。 く胃〆の剰余価値率は、一nの労働時問をrとし、暮一11車とすると、 、ぺ 氏︸十饒、3が ミい尽HhI︵ミ・十暑一︶ 一一占 であり、剰余価値率閉は、Bとちが所与のときにrと同方向に変動1し、rが所与のとき、Bやちと逆方向に変動 することが容易にわかる。 側 利潤の存在条件 く彗R剰余価他論の﹁基■本定蝦﹂ 資本制は商品形態を纏った搾取杜会である。すでにみたように、純生産物の牛産が可能であるときに、労働者 が生産過程で剰余労働を強制されれば、資本家階級が取得する剰余生産物が生産される。しかし、各部門の資本 家は商品生産老として、彼らの商品価格が生産費を上回ることによって利潤を取得することができる。資本家階 級の取得する利潤が生産過程での労働老の剰余労働にもとずく剰余生産物の価値、剰余価値の資本制的現象形態 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 九 ︵六六一︶ 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 一〇 ︵六六二︶ であることを論証したのは峯。。員である。剰余価値が正でなけれぼ、したがって労働者の剰余労働がなげれぼ、 利潤は正値をとりえないという命題、あるいは、利潤の源泉は労働者の剰余労働に1よるという命題は峯∼員の 発見した﹁基本定理﹂といえる。この﹁基本定理﹂を、われわれの前提のもとで確かめておこう。第.Z生産物の >Vs旨>十3も斗ミ3 .︾ V s 昌 > 十 3 ︾ 十 ミ § ミー1>F+ぎポ 享V9 ミV◎ 移行して整理し、〃を消去すれぼ、 豆 豆 価格をA、貨幣賃金率を〃とすれぼ、各部門で利潤が存在するためには、次の関係がみたされたけれぱならたい。 胸を、 一一三二“いじ一一し・一一一 を得る。0dにおいて寧Vo︵“1−HL︶なる力が存在するためには、カベクトルの係数行列の行列式 ︵Hl3H−ダき︶ 1︵ss+pぎ︶ 1︵SH+P3︶ ︵H−s竃IF3︶ O,11 § ’ Gが、それぞれ自身及び、主対角要素がそれぞれ正でなげればならない。帥は、剰余生産物の存在条件をみたと きにでくわしたq◎式のGの転置行列式である。したがって、剰余条件岬がみたされていることが、各部門の利潤 が正値をとって存在するための必要条件となることがわかる。逆に、q↓がみたされているものとで、¢◎をみたす 享V110︵r一L︶なる力が存在する。勿論、各部門で現実に資本家階級が利潤を取得しうるためには、Odをみた すような力で彼らの商品が市場で有功需要にであい販売されなければならない。搾取の条件と利潤の実現の条件 は直接的には一致するものではない。 二 結合生産・価値・剰余価値 1− ○oS夢の結合生産物のとり扱い ※ いで得られた諸結果は、われわれの簡単化の前提を外して商品の種類及び生産部門を一般に〃箇あるとし、労 ※※ 働者の賃金バスヶツトの種類を伽箇︵ミwミ︶として、さらに異種労働の存在を考慮にいれても得ることができ る。この方法の特徴の一つはく︸員が得た結論に別の論証によっても到達しうるということよりも、現実の複 雑な杜会的分業の諸関係を理論的に厳密に把握しうるという点にある。理論が厳密性や一般化を求めるあまり現 実の最も本質的特徴を見失うような方法は経済理論としての資格においては、現実の本質的特徴を反映した一次 近似の理論よりも明白に劣等なものであることはいうまでもない。この点で複雑な杜会的分業の体系のうえにた っ資本制のもとで労働価値説はこれを反映し、杜会発展のストラテディツクな変数を基軸に掘えた経済理論を志 向する点で優位な資格をもっといえる。前提¢∼¢は、これらの本質的特徴を失せずに蛙大限の簡単化を行なっ たものといえる。 ※ 勺.cつS虫p12 ※※ 拙稿閉参照。 緒合生産・価他・剰余価値︵甲賀︶ 一一 ︵六六三︶ 立命館経済学︵窮二十四巻・第五・六合併号︶ 一 一二 ︵六六四︶ ところで、現実の資本制の生産過程の他の特徴は大量の固定生産設備が存在し、多くの生産過程では単一の生 産物を生産しているのではなく複数の生産物を生産しているというところにある。結合生産物の存在及び固定設 傭の存在は複雑な杜会的分業の存在とともに現実の生産過程の顕著た特徴をなす。本節は結合生産という特徴を 考慮にいれればHの諾結果は妥当したくなるというE・J誌上のH・oo訂&昌彗13及びこれに関連した森嶋旧m の議論を中心に。検討する。 結合生産という特徴をとり入れた場合にはHの前提◎は外さなけれぼならない。・結合生産が存在する生産過程 では単一の商品だげを生産することは不可能である。その結合生産の生産過程を操業させれば必らず複数箇の生 産物が生産される。最も簡単には一っのプロセスで二っの生産物が生産されることになり、ブロセスの分割可能 性や加法性を前提すれぼ、いずれか一方の商品を1単位生産するとき他の商品は1単位生産されるとしよう。結 合生産物の価値決定式は次のようになる。 “十き113ト十3ト十ミ § 帥式では、商品の種類は二種あるとしている。第一生産物−単位と第二生産物刃単位生産するのに、第一生産物 ∼、第二生産物∼及び労働が∼単位必要である。一生産過程で財が二箇生産されるのであるから、帥の関係だげ では第一、第二の生産物−単位の価値は決まらない。この結合生産物の価値を決定するために、勺・coS夢12は 次の方法を提示した。それは財の数と生産プロセスの数とを同一にするという方法である。そのための工夫とし て帥式と同様に第一生産物・第二生産物を生産する別のプロセスの存在を仮定するという方法である。例えば、 ︾十811多戸十3ポ十3 、 夏 を考えて、岬、q萄を連立させてれ及びちを決定する仕方である。ここで∼は、第・Z番目の生産ブロセスで投入さ れる第ノ番目の生産財の量であるとよみかえねぼならない。これが第一の工夫である。もう一つの別の工夫も提 示している。それは、結合生産物、いまの場合財1,2、を用いて同一の商品を生産する二っのプロセスの存在 を前提することである。この場合、生産物の種類は三箇で生産プロセスの数も三箇となる。 ︸十きと・ト十3羊・一・。羊ミニ ジー1・葦十ぎ“士ぎ十§一 一星 ジー1亀葦“十§§か十ぶ。・が十ぶ一 これでれ、ら、なの三箇の未知数を決定しうる。これがoっ§まの工夫であるが、しかし彼は結合生産物の価値 規定については、労働をその個々の生産物のあいだに割当てる明白な基雌はないということ及び緒合的に生産さ れた個々の商品に別々の労働量を割当てるということは意味がないという理由で次の考えを示している。結合生 産物を生産する体系全体を考察して、例えぼ帥、蝸の体系で、それぞれのプロセスの操業度水準を適当に組合せ ポことによって一定の純生産物を生産することを想定すろ。そして、ある組合せでは純生産物が︵﹃ござ︶生産 され・他の組合せでは︵メ十ガ■︶生産されたとする。そのとき、後者では純生産物の構成で第−財の純牛産 物だげが1単位前者に比して増大させられている。この後者の直接労働必要量の前者に比しての追加分が、第− 二二︵六六五︶ 財の価値とみなす。第2財にっいても同様に︵さ一5+H︶の組合せの純生産物の生産の際の所要直接労働量と 前者を比較することでその価値を決定できると考えた。 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 1︶ 俵 吐 ﹄4 産 入 投 1 12 ︵O oO 1■ 1■ 0 10 Fo O ス 2 俵 2︶ 入投 出産 1品商 2品商1 働労 1品商 2品商 152 ■1 n6ススセセロ ロ.ププ 502 O0 1 51 0oo3 Fo り^ 1 計 01 6 33 71 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 2 品 商 1 品 商 働 労 2 品 商 1 品 商 ス ロ セ ー ロ フ ○ セ フ ○ 一四︵六六六︶ 吻 H.ooa&昌彗の議論。 ○っa&昌竃13は、次のような数値例を想定してcっ蟹穿の 第一の方法にしたがって議論をしている。 前提。二つのプロセスが存在し、投入−産出係数は表1の 1 商 冊 1 商 冊 1 2 OO n5 oo Fo 5 2 3位単づつ生産され、.資本家階級は5 前提により次の結果をうる。 全部を新投資に充当すると仮定する。 とする。このとき資本家は剰余生産物 ロセス2は1単位の水準で操業された すなわちプロセスーは5単位の、プ 生産がおこなわれたとする。 以上の前提で次のような操業水準で で︵・。\9閉\o︶であるとする。 とおりである。労働者の実質賃金率は財1と2のバスケヅト 3︶ 俵 物金資 産 投 純生賃新 ︵表3︶より明らかなごとく純生産物は第1,2財はそれぞれ8単位、 ・単位、2単位の剰余生産物を取得している。労働者階級は、6単位の労働 と 交 換 に 3 単 位 、5単位の実質賃金を 入手している。 ところで、︵表1︶のような生産過程の場合には商品1,2の価値決定は次式でえられるとcoa&昌彗は考える。 ¢qを解げば、 一一バギ一二 .“1lーピ “11心 をえる。そこで︵表3︶をもとに、y、〃を計算することができる。 ぺ1−・。・一L一寸・§1−べ一 8 ミー1閉×︵lH︶十N×︵心︶111H、・ 9 く十ミーIo 純生産物の価値は正で、アも正であるが、剰余価値は一となって負値をとる。 次に、 ︵表1︶のような生産体系のときに、賃金後払いの仮定で、各部門で利潤率が均等化するような相対価 格ピ正の利潤率を決定できる。貨幣賃金率を〃、瓦、瓦を第一、二商品の価格とするとき、次の諸関係をみたす。 ︵ H + 、 ︶ 岬 > 十 ミ ー l o b 一 十 > 一五 ︵六六七︶ ︵一十、︶H○サ十ミー1o。>十烏ぎ■ 8 oo>十9M11oミ 吻式から〃を消去すると、 三﹃一ギ恥ギ、ポ一 結合生産・価 値 ・ 剰 余 価 値 ︵ 甲 賀 ︶ 立 命 館 経 済 学 ︵ 第 二 十 四 巻 ・ 第 五 ・ 六 合 併 号 ︶ 整理して、1IH+、とおくと、 一、バ、∴一亨一じ 一六 ︵六六八︶ をえる。ただし、享11享§ プは均等利潤率である。鯛と。。>十9一1IHより経済的に有意味な解 H ,H+8ぎ千吋干一 g 蔓 2 をうる。以上から、この設例では剰余価値が一で負値をとるにもかかわらず、均等利潤率ヅが0.で正値をとるこ 十 .とになるのがわかる。また、逆に剰余価値が正で利潤率が負値をとる数値例を示している。co訂&昌彗は、結合 生産の場合には必らず剰余価値と利潤率の符号が逆であると主張しているのではなく、正の剰余価値の存在は利 潤率が正値をとるための必要条件でも十分条件でもないということを結論づげている。 ooa&昌彗は、価値や剰余価値が負値をとることが奇妙に思えるのは、商品の価値をその商品−単位だげ分離 して純生産するための労働量と定義するくp員式の議論に依拠しているからであるとみる。ところで、結合生 産の場合には一般的にはただ一箇の商品だげを生産することが不可能であるのだから、oos肇の方法で縞合生産 物の価値を求めなけれぱならないとすれば、負の価値や負の剰余価値というのは少しも奇妙なものではたく経済 的に意味のあるものだとする。二っのプロセスで結合的に1生産された二商品の投下労働量は次のようにして処理 する以外にないと考えている。︵表1︶の数値例では、ブロセスーを単位水準操業して純生産物を結余的に︵ピH︶ 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 岸 −⋮⋮−−⋮十 1 晶 商 引 2 ! 0 1 1 ︶ だけ生産する、プロセス2では同様に純生産物を︵c。﹄︶だげ結合生産する。︵図 1︶において0A,0Bは︵表1︶の数値例のプロセスー及び2の純生産物ベクトル を示す総計労働−単隻矯してプロセスーと・を結合して生産すれ娃上の 点を選ぶことが可能である。例えば、プロセスーを北単位水準で操業し、プロセ ス2を一;単位水準で繋する一汀一・・ことで純生産物を一二︸一だけ 珂 け 生産したいとする・そのときには、プ一セス・島単位、プロセス・晶単位操 業すれぼ蝸上の点Cをうることができる。こ 1のようにプロセスーとプ、セス2の ▲ 繋水準の相対砦適当妄えることで、一定の限度内で一図でム上の点一二商 品の生産される割合を変えることが可能である。各プロセスに配分される労働の 総計が1単位でなけれ紙の延長と。・の延長で囲まれる麗内で二商品の純生産物比率を変えることができる。 一表2一の数値例では・讐婁それぞれのプロセスの操業水準とし、乃、差それぞれの純生産物の量とすれ ば、 冬とま言工宇・し 冨 ︵ぎ一宇︶い︵o◎一べ︶ . . を解くことで∼いご1言る一一とができる。っぎに⋮一の比率で純生産物を生産するためには、良一、一、 きムであれぼよいことになる。したが一て第一生産物の純生産量を・単位だけ増加させ、第二生産物の純生産 を不変とする組合せでは・プロセス・に・単位、プロセス・に・単位の労働を配分すれぱよい。合計。単位の労 結合生産.価値・剰余価値一甲賀一 一七一六六九一 立命館経済学一第二十四巻.第五.六合併号一 一八一六七〇一 働が必要となる。ここで、純生産物の組合せが一。。・べ一から一;に変化することで必要になる追加的労働は一単’ 位となる。第一生産物の純生産だけが−単位増加したのであるから、この変更のために必要な追加直接労働量を 第一生産物の生産に必要な価値とみなすことができる。この場合一単位の追加労働量が必要であ一たから第一生 産物の価値は一となつたのである。また、純生産物を一童の組合せで生産するときにはブ一セスーを6単位 の水準で、プロセス2を2単位の水準で操業しなげればならない。したがって総計8単 2 出搬1。位の労働が必要となる。一;から婁一一と第二生産物の純生産量を−単位増加させ 1 るのに必要な追加量島単位であるから、第二商品の価値島となる。 商 このように結合生産物の価値規定を考えると負の価値量は奇妙でなく経済的に意味の 産品93 1■ 1■ 働 あるものであることがわかる。第一商品と第二商品の価値が反対の符号をもったのは・ プ ︶入労 一図−一で竃盤の勾配歪であること、即ちプ一セス・は−単位の直接労働で書一 投別5。方法であるといえる。一表−一のよう姦値例でな−一亭一ものであれぱ背負の勾 俵冊。1。の純生産物を生産し、プロセスーは、単位の直接労働で︵、・、︶の純生産物しか生産で 商 きないということによつている。プロセスーはブロセス・に比して明らかに劣等な生産 商 配をもち両商品の価値は同符号で正値をとる・ ス ス 12 ぎ十ポー1S亡 セセ 。。“一亡ぎ1IH◎ポ十H ロ ロ 8、 切 フフ →ポー1↑ 側 ○o汀&昌彗の検討 ○っ訂&旨彗の数値例︵表ユ︶は︸oっs藪の提示した方法で結合生産物の価値計算をするためのものであるが、 この点の検討をする。プロセスーとプロセス2は第一と第二の商品をそれぞれ結合的に生産するが、両プロセス を同一部門とみなさないのはなぜだろうか。結合生産が一般的であるときにはある生産過程または生産部門を識 別する基準はどのような生産物が生産されているかによってではなく、一束の生産財と労働を特定の比率で投入 して一東の生産物を特定の比率で産出するということに求めるべきだという考えによるのであろう。この結果、 両者を独立した生産部門のようにみなしている。すでにみたように個々の商品の価値量を連立方程式システムの 解として決定する方法の特徴は、現実の資本制が複雑な杜会的分業の体系のうえに存在しており、その杜会的分 業の態様を把握するうえで有効なものであるという点に求められる。oっ訂&旨§の設例はこの杜会的分業という 特徴を反映しているのだろうか。プロセスーでは︵99H︶11︵第一商品、第二商品、労働︶を投入して、︵9H︶11 ︵第一商品、第二商品︶を生産している。労働者の実質賃金も第一商品と第二商品から構成されている。このプ ロセスーではユ単位の直接労働を投入することによって、︵−−︶の純生産物を生産している。したがって、結合 生産物の価値は、 羊“1lH 8 で定式化される。未知数は二箇あるから的だけでは決定しえない。cっ量まの方法は、現実にそのような牛産過程 が独立の生産部門として存在しているか否かに無関係に式の数の不足をヵバーするために他の同一の結合生産を するプロセスの存在を前提する。○っ訂&昌彗はプロセス2として︵〇一HPH︶を投入ベクトル、︵。・一S︶を産出べ 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 一九 ︵六七一︶ 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 二〇 ︵六七二︶ クトルにもっものを想定ピた。ここでは、1単位の直接労働によって︵o.L︶の純生産物を結合生産できる。し たがって、価値の定式化は、 。。サ、十ざバH § となる。吻だけでも未知数は二箇だから決定できない。プロセスーはプロセス2に比して明らかに劣等な生産方 法であり、一般の場合であれば標準的な生産方法のもとでの生産条件が杜会的価値を決定し、それにもとづいて 同一部門の非標準的な生産方法で生産された個別価値が計算される。商品の杜会的価値は標準的生産方法のもと で、その商品を1単位生産するのに1必要な直接・間接労働量で決まるのであり、非標準的な生産方法のもとでの 生産条件は価値の量的規定に無関係である。非標準的生産方法のもとで生産された生産物も一物一価の原則によ る標準的方法のもとでの価値で評価をうける。oっa&昌竃の場合的と吻のちとぺを同じものとみなし、両式を連 立させてむ、らの解を求めている。これは、商品の価値決定として妥当なものであろうか。容易にわかるように、、 プロセスーの操業にーとっても、プロセス2の操業にとっても互いに他のプロセスでの生産を前提にしなければ不 可能ということはない。したがって、両プロセスが存在していても、両プロセスの間には杜会的分業による相互 依存の体系としての関係は存在しない。杜会的分業が存在しないもとでは商品生産もないし搾取も利潤も資本制 的形態では存在しない。単に方程式の数を一つ追加するという形式的処理では結合生産物の存在という特徴を反 映してはいても現実とは無関係な設例に終らざるをえない。このことをもってoっa&冒竃のように竃胃内の剰 余価値論の基本命題を否定することはできない。プロセスーは2に比して劣等であるから常には採用されないし、 仮に採用されても的、吻を連立させてむ、らを求めるのは価値を求めることと同じではない。 c。訂&昌竃の他の特飲は、恒常成長経済を想定していることである。各商品の需給が一致し、各プロセスの生 産が同一率で拡大を持続しうるような両プロセスの相対的操業度を想定して負の価値量及び負の剰余価値量を意 義づげている。 ︵表1︶の数値例と実質賃金率︵。。\9閉\o︶のもとでは次の関係をみたす均等成長率8が定まる。 薫芦三一デ汀りHご 憂 ここで刈、巧は両プロセスの操業度水準を示す。鯛で正の灼、巧が存在したけれぼ、両商品の需給一致をもたら ︵六七三︶ 霊 このために明白に劣等 す9は存在しえない。理由は実質賃金率が︵。。\P岬\¢︶と所与のとき、労働者貯蓄がO、資木家の消費Oのもと では両財の需給が一致するために、は、ぶ11◎とすると 一H式 ︶ m べ ・ よ \ o 、 一 1 1 o 昌 二 伽\睾一11ざ となってやぎV◎をうることは不可能であり、また、ぎ110とすかと、 一汽灯十閉\のぶ、、、ぶ一 篶をうるためには となり、りきVoをうることは不可能である。 そこでぎぶV◎としなげれぼならず、 な生産方法が使用されると考える。鯛で止の巧、 ■一閉ヱ叱 −払 H〇 一−︷ 一、。工壬 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ . 二二 ︵六七四︶ がみたされたげれぼならない。鋤は、的のカベクトルの係数行列の転置行列の行列式である。したがってH+、 HH+灼1Ibとなる一﹂とがわかる。したがって灼1Io﹄である。毎期二〇%の率で両プロセスの操業度が拡大さ れる経済のもとで刈、篶の絶対水準を知るには、プロセスーとプロセス2に配分される直接労働の総計が与えら れれぼよい。実際的で内11◎・ドぎ十ぶ11oを考慮すればざH9ぶ11−を得る。次に、内1lo・ドぎ十ぶ11“実質 賃金率︵o\9・。\蜆︶を与えれば、ざ11o。一ぶ11心を得るがそのとき純生産物の組合せは第一番目の場合より直接労 働総計−単位を減少させても︵o、︶だげ生産できる。第三の例は、内1−◎.ドざ十ぶ11一実質賃金率︵◎。\“o\べ︶ であり、結果としてざ1lPぶ1IHで、第二例に比して直接労働を2単位増加さ畦て純生産物を︵o﹄︶だげ生産 できる。 以上の検討から明らかなように、co訂&昌§は、■oosまの方法に従いながら、方程式の数と未知数を等し くするためにプロセスーとプロセス2という杜会的分業の体系としての相互依存関係が必然的でない両者を連立 させて結合生産物の価値を求めた。そして、明白に劣等なプロセスユの生産条件が価値規定に入り込む根拠を、 所与の実質賃金率のもとで経済が均衡成長を持続するために操業されねぼならないこと、及び両プロセスで均等 な利潤率をもたらす正の価格体系が存在しうるということに求めた。しかし、価値や剰余価値が規定されるため には、各部門の標準的生産条件のもとでの技術状態︵ぎ一3及び実質賃金率に関する情報があれば十分である。 均衡成長のための想定は必要ではない。プロセスーかプロセス2のいずれかが標準的生産条件にーなれば、価値規 定に入り込むのはその生産条件のみである。 同一の生産物を異なった割合ではあるが生産する結合生産の二っのプロセスを、われわれが同一部門とみなし ■ ︵いづれも雛1、第2商品を生産しているのだから︶、いずれかのプロセスが標準的生産条件になると考える見解にた ※ いして、予想される反論は次のものである。すでにみたように、oosま17g昌彗目式の定式化を採用する場合に は生産部門なり、止産ブロセスを特徴づける基準として、どのような生産物が︵一っまたは複数箇︶生産されてい るかによってではなく、一束の生産財を一束の生産物に変換するのを生産とみることから生産部門の特徴づけは どのような割合で組合せられた生産財をどのような割合で生産物に変換されるかということに求めることが不可 欠だと考えている人々からの反論である。しかし、○。訂&8彗の設例で検討したようにその根拠は必然的なもの ではない。プロセスーと2の両者の生産条件が価値規定に入り込むとoっ訂&昌彗が考えるのは決定されるべき商 品の数と生産プロセスの数を一致させるためであり、均衡成長の条件で各生産物の需給一致を保証させるためで あった。このような形式的処理の問題であれぼ必然的とはいえないのは明白であり、また、価値規定には生産物 の需給の一致という条件は全く不要のものである。 ※ −.く◎箏zo量昌”箏箏3 予想される反論の他のものは、プロセスーと2を同一部門とみることを序定しても提出されるものである。同 一生産物部門では一般に生産方法が複数箇存在する。く。。員も、同一部門について上位、中位、下位の生産条件 の存在を前提にして価値や生産価格を論じている。そしてそれらが平行して同時に使用されることも承認してい るが、それらは資本家の技術選択基準からして等しく有利次ものではなく最良のものや不利なものであり、価値 規定に入るのは中位のものであり、各部門で中位のものが一意的に決定されると考えているそれを各部門の標準 的生産条件とみなしているようである。ところが、資本家の技術選択基準からして有利なものは必らずしも一意 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 二三 ︵六七五︶ 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 二四 ︵六七六︶ 的に定まるとはいえない。複数箇の生産方法が存在して、それらが等しく有利であり資本家的観点からは無差別 だとするならば標準的生産条件がいずれかに特定されるとする議論は成立しない。そのときにぽ価値決定は不定 になり、その結果搾取率も不定となる。 価値は標準的生産条件が変化すれぱ変化することは当然である。問題は異時点の変化ではなく同時点で資本家 に。ある。この場合に。価値は不決定となると考えている。 にとって所与の実質賃金率のもとでは等しい利潤率をもたらす技術条件は複数箇存在することがあるということ ※ ※ く.峯冒オ巨昌四旧 この疑間にこたえるために標準的生産条件にっいてすこし検討しておく。標準的生産条件が各部門で一意に定 まれば、どの時点でも価値は決定できる。だが標準的生産条件がどの条件になるかは一時点を眺めていても決定 できない。どの技衡的条件が標準的条件として特定化されるかを確定するためには景気循環の諸局面の経過が、 一循環の期間が必要である。一循環を経過して標準的生産条件の各部門の技術が確定するときには、各部椚とも その標準的生産条件の技術を採用した資本家は均等な一般的利潤率を保証されている。各部門で均等な利潤率を もたらすような各部門の生産技術がその部門の標準的生産条件となる資格をもつと考えることは一応の根拠があ る。この場合、この資格をもっ生産技衛が各部門にっいて複数箇存在すれば、標準的生産条件となるも9が複数 ,箇存在することになると考えていることが問題である。一循環をとおして均等な利潤率を獲得しえた一部門の複 数箇の技術が、いずれもその部門の標準的生産条件になるとはいえない。均等利潤率を稼得しうる生産技術とい うものを標準的生産条件としての資格をもつ必要条件であるとみることは根拠があっても、それは十分条件とは 雀ない・均等な利潤率を走らす複数断の生産条件はただちに同等だとはいえない。・塁滞の存在を考慮す れぱそれぞれの技術での生産量、稼得利潤量、その技術採用のための最低必要資金量などが窪れぼ資本家の資 金調達力の差異に依存して嚢箇の技陛全く無差別とはいえなくなる。当該循鑑問をとおして標準的な資金 調達能力を保有する資本祭採用するものがこれらのなかから標準的生産条件として確定少ぺ、れると考えれぼよい。 このよ乏考えれば・同一部門で複数箇の技術が生産物−単位あたり簿利潤率が均等になることがあつて姦 準的生産条件は一意的に特定可能であり、価値決定は一意的となりうる。また仮に、この十分条件負備した生 産技術喜部門で嚢箇存在することがありうる可能性を排除で差いということを根拠にして、く、、一の価値 概念を放棄し・﹁最適濯一で代替させ価値概念に立脚して解明できる資本禦会の特質規定、そのもとでの講 現象の特殊な性格の解明を放棄することは俗流経済学一琴差済学をひき寄芸結果にしかな崖い。 ○o訂&昌彗の場合の設例ではプロセス2を“単位操業すれば、︵鼻岬も︶という純生産物︵彼のどのケ、スより も最大のもの一を、常位の労働で生産することができ、労働生産性は彼のどの例よりも大になる。均衡成長のた めにプロセスーが導入されても、プロセス・だけで生産するよりは杜会全体の労働生産性は悪化することになる が・腰はプロセス・の条件で規定され、け一して負値をとらないCしたがつて、剰余価値蓋値をとらない。 レo 固定設備の.処理方式としての結合生産 ○o訂&昌§の論議が峯胃閑の一剰余価値論の基本命題を桓否する意図のもとに展開されたものであり、これまで の検討は彼の擢概念の理解が浅薄をのであり、したがつて彼の結論は成立しないことをみてきた。工かし、 c・a&昌彗の依拠しているoっ§まが、結合生産物の価値規定を考慮に入れた主目的は耐久的な寿命をもっ固定 結合生産.価値・剰余価値︵甲賀︶ 二五 ︵六七七︶ 立命館経済学︵第二十四巻.第五.六合併号︶ . . 二六 ︵六七八︶ 資本を使用する生産過程の特徴を理論化することにあった。単一の生産物を生産する生産過程の場合にも・固定 設傭が用いられている場合であれぼ結合生産として処理することが有効である・ ↑○ 中古設備の価値 単一の生産物の生産過程でも、固定設備が使用されている場合には、ある年齢の固定設備と原材料と直接労働 を投下して生産物とその期使用した中古の固定設備を結合生産物として生産するとみなし、さまざまな年齢の固 定設備のそれぞれの価値を決定しうる。したがって、この取扱いの場合には、結合生産とみなすが・固定設備を 使用する産業はその固定設備の総耐用年数と同数の別々の過程に細分されるものとみなされる。結合生産物の数 ︵未知数︶と生産過程が同数になり解を決定しうる。例えぼ、原材料を無視して、簡単な場合にこの特質をうかび あがらせてみる。小麦を生産する産業では、小麦と藁を結合生産するとみなすのではなく、トラクターと直接労 働を用いて小麦と一期使用ずみのトラクターを結合生産するとみなす。いまトラクターの耐用年数は四年である とし、その新品をトラクター製造部門で生産するのに価値は四であるとする。新品のトラクターを使用する生産 過程では、トラクター一台と直接労働を伽単位、一期使用ずみの生産過程では∼単位、⋮⋮とする。それぞれの 8 生産過程では篶単位の小麦が生産されるとする。小麦−単位の価値と各年齢ごとのトラクターの価値は次式で決 まる。 二“、、1一〇11杜 、7“、込−二十koごノ柵”、7“、“−.〇十ミo 、了ミー・・十ミ・一鴻11、了ミー二十ミニ 、了ミー.。・十ざタ雌1−“了ミー・羊ぶ 乏テ淋1ージ“ミー二十ぶ 左トラクターの添字の次のO、ユ、2,3は、それぞれ新品、一期使用ずみ、・・⋮のトラクター.一台の価値を示す。 四期使用ずみのトラクターの価値は零であるとする。この例では新品トラクターの製造部門は問題にせず、中古 のトラクターの価値決定が問題となっている。未知数は二ごす.一ジご→・Nンご池−二と小麦の価値、一一海 であり、生産過程は四箇であるから一応価値は決定できる。ただし、新品トラクターの価値は与えられていると する。偉◎でトラクターの耐用年数と小麦の生産過程の数が同一であるのはooa&昌彗の設例を検討したときに問 題になったのとは異なり、同じ小麦を生産しているがどのプロセスもそれ以前のプロセスの存在を前提にしてい るし、トラクターの新品は他都門から投入されたものである。また、標準的生産条件のもとでの標準的固定設備 の耐用年数が前提されている。したがって小麦とトラクターを結合生産しているとはいえ四つの生産過程は柵互 依存の関係に1あり、e◎の連立方程式を解いて価値を決定することは意味がある。ただし耐用年数そのものは価値 ※ 決定式e◎で決められるのではなく、標準的条件のもとで操業して置換えが必要となる年数として与えられている。 篶、物が必らずしも均等でないのは年齢を経過するにしたがって能率が不変でないとみなすからである。e◎で新 品かトラクターの価値、各化産過程の技術的状態が与えられれぼ、各年齢のトラクターの価値と小麦−単位の価 値が決まる。トラクターの耐用期問全体を通してみれぼ、偉◎式を集計して両辺から共通なものを消去すると、 ︵峯十kH+k︼十ま︶・ごノ柑11“7“、、1・o+︵ミo+ミー十き十§。。︶ 曾︶ をえる。帥をみれぱ耐用期問中の生産の全情報がわかれば、トラクタiの新品の価値は所与としているから、小 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 二七 ︵六七九︶ 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 二八 ︵六八○︶ 麦の価値は決定しうる。また、どの年齢の設備を使用しても能率が不変であるとすると、偉oは、 − きノ箏吋、・ミー・。十ミ 曾一、 となり、小麦ツ単位生産するのには、新品トラクターの価値のユ4だげが、消耗することで、ツ単位の小麦に 価値移転をしたとみなすく胃*の固定設備の取り扱いと同じ結果をえる。しかし、偶カ式で耐用期間をとおして 能率不変という仮定を置かなけれぼ6ヵ式の取り扱いは序定されないし、各年齢のトラクターの価値もわからない。 的式の特徴は、能率が不変でなくても、たとえば、掘えっけた当初は能率は低く、稼動しているうちに能率が最 良状態になり、耐用年数末期にはまた能率が悪化するような場合でも、各年齢の中古品の価値を決定しうる。小 麦−単位の価値はどの年齢設備を使用しても不変であることはいうまでもない。 体系内で決定しうることをあげている。前項の議論参照。 ※ く◎づオ窒冒彗■モデルを絶賛する森嶋8は之g昌§箏革命とよび、その内容の一っに、乞2昌彗箏モデルが寿命を 岬 中古設備の負の価値 結合生産物吃とり扱うときには、体系全体が純生産可能であっても︵c.sま式にいえば乙。o罵篶旦凹8昌¢鼻の状態 が保証されていても︶、個々の結合生産物の価値が負値をとりうることがあるということは、oos馨が指摘してい たことである。0っS聲が、この負の価値量を経済的に意義づげをしたその内容は、さきにのべたように00a&− 昌§が従っているものと同じである。当該生産物以外のものが純生産物に入りこむ量は不変とし、その体系が当 .該生産物のみを純生産ユ単位増大させなために必要な追加労働量が負であるといヶこと、したがって所望の純生 産物の組合せの変化を達成したいときに、二つの結合生産過程のうちの一方が拡張され他方が縮少されねぼなら ぬということのために拡張されるブロセスの追加必要労働量と、縮少されるプロセスの必要労働量の減少を比較 すれば縮少されるプロセスで不要に,なる労働量の方が大きいということであったここの結果、当該経済体系は明 白に増大した純生産物を生産するのに総必要労働量を減少させうるということであった。このことは、固定設備 産 山 、 , 2 財 オ貝 i lO O 1■1■11 1■ O01 i 11 0 ■ 5 − ■一,,−, 1 オ 貝 ■ 010 −−−■lI,1’1,,,■一 0. 動 Eo﹁ o n 6 4 労 nv2 3 財 10 0 入 3 ス 口 このとき価値決定方程式は、 . 3とよび、このときの投入ベクトルと産出ベクトルを︵表4︶のものであるとする。 財3と労働で財1を生産するプロセスを2、財1と労働で財2を生産するブロセスを 一期使用ずみの財2を財3とする。財2と労働で財1と財3を生産するプロセスを1 財は三種類あり、財1,2,3とするが財2は耐久生産財で二期使用可能であり、 。づけられる。この点をみるために的の想定ではなく、後の議論の必要上からも、森鳴 吋の付論で用いられた設例によって検討しよう。 この場合には○oa&昌彗の恋意的な設例とは異なり負の価値が○っ昌夢のとおり意義 定設嚇を含む生産物の数︶の均等がえられるのは経済的な根拠にもとずくものである。 耐用年数の生産プロセスが追加され、方程式の数︵生産プロセスの数︶と未知数︵中古問 て適用することに求めていた。この目的からすれぼ、すでにみたように、固定設備の 財トラクターの使用という特徴、一般に固定設備を使用する生産過程の特徴にたいし 小麦と藁の結合生産ということにー適用することに求めず、小麦生産過程での耐久生産 の中古伍値を考えるうえで有意味なものである。○っ昌馨は結合生産の取り扱いの重要な意義を小麦生産の例では、 4 ︶ ノ ・し ゴ。く 2 1 7 3 O 0. ,,5 ’ 財 ス 1−一23 O 財 投 ,1 ■1 ス 口 セセセ 口 o o oフフフ 値 ︵ 叩 結合生産・価偵・剰 余価 賀 ︶ 二九 ︵六八一︶ 、 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ “ 十 か 1 ー ポ 十 ◎ . 切 サ ー1が十ド閉 ポ ー1◎.◎◎べ9−十◎.爵 であり、解は、 “−1ード ポーーポ 81ll◎.蜆 となる。財3の価値、一期使用ずみの耐久生産財の価値は負値をとっている。 える。第・z財の純生産物か1単位生産ナるために、は“次の関係式 美ポOと十美ポP◎︶十べe。︵9一◎︶ ーざ︵9ピ◎︶1さ︵PgH︶1ぶ︵◎.ooべ9P◎︶ 11︵ドらざざ︶ で、¥11−とおきそれ以外のツをOとおげぼ、各生産プロセスでの操業度巧、 単位純生産するために必要な第ープロセスの操業度とすると、 ざ、1IH\>一ぶ、1−H\﹀−ぶ−11H\﹀ ざ、11◎.oo事\>一ぶ心H◎.oo葛\﹀一ぶ、1IN\﹀ 千責羊−毒芦ぶ。。n一一﹀一 ︵ 但 し ﹀ 1 1 − . S 岬 ︶ 一を得る。そうすると、 三〇 ︵六八二︶ 竃 竃 仏がもとまる。 勾を第.z財1 この負値の意義をoっ轟霊 式に考 篶、 竃 “、︼之3 ︵こ1−ピN、︶ 蓬 で63の解と一致する。︵∼は得ブロセスの労働投入係数︶。ここで脇で、屯11−◎.S閉\H.S閉と負値をとっている。 ﹄ 第3財すなわち一期使用ずみの耐久生産財を1単位純生産するのに第2プロセスの操業度が負値であるのはどう 5 いうことであろう。第ニプロセスは単位水準操業すれば、一期使用ずみの耐久生産財−単位と直接労働を2・単位 投入して1単位の財1を生産することができる。この場合、操業度が負値をとることは明らかに1意味がない。す ると操業度を減少させると老五る以外にない。マイナスを減少と解釈すれば、プラズの符号は増加とみなければ 斉合的でない。そこで第3財を1単位純生産するためには、第一プロセスの操業度をH\﹀、第三プロセスの操 業度もH\﹀だけ増大させ、第ニプロセスの操業度を−O.S閉\>だけ縮少すれぼよいということになる。この ため、第一と三の両プロセスで︵◎.岬十〇.轟︶\>単位の追加労働が必要で、第ニプロセスで−◎.s閉\>×ド閉n 1H・3旨\>単位の直接労働を減少させ、差引き−◎.岬単位の直接労働を減少させることになる。これが一期 使用ずみの耐久生産財の価値がが11−◎.閉と負値をとることの経済的意義であるとした。操業度の減少とか増大 を考えるためには少なくとも異たる二つの状態を想定しなげれぼならず、c。§夢は純生産物の異なる二っの状態、 この設例では、第−財の純生産物の量を篶とし第2、第3財の純生産量をOとす合︵羊P○︶の状態から、︵羊 ◎−︶の状態への変化を考えた。cっ;霊は、結合生産一般の場合に、このような負の価値量をもつ財が生じるこ とは不可避であると考えた点で不十分であった。このような負の価値の経済的意義づけが意味があるとしても、 この中古の固定設備︵一期使用ずみの耐久生産財︶を使用するプロセス2が現実に必らず正の操業度をもたねぼなら ないことはない。実際、プロセス2の操業を中止すれぱ、そして中古の固定設備を無価値とみれぼ、eヵから、 結合生産・価値・剰余価債︵甲賀︶ 三一 ︵六八三︶ 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 三二 ︵六八四︶ “1−H.ド が110.べ となり、財1も財2も価値は減少する。だから、固定設備の中古の価値が負値をとるとすれば、その中古設備を 用いての操業は中止し、中古設備を廃棄すれば財1,2の生産の労働生産性は上昇するのである。この点を考慮 して、中古設備の負の価値の意義を﹁労働生産性を最大にする11投下労働量を最小にする限度をこえて、耐久期 間が延長されていることを示す﹂としたのは置塩10である。いまとりあっかった設例では耐久生産財の寿命を二 期としたが、以上の結論は耐久期問をもっと長く考えても妥当することは容易に示しうる。 ところで、森嶋旧は耐久生産財の中古の価値が負値をとりうるということにっいて次のような議論を提出し 冒與員の価値概念の放棄を説得しようとしている。この設例で、一期使用ずみの耐久生産財を、ふたたび生産財 として使用することは、たとえ体系全体の労働生産性を悪化させることになるとしても、実質賃金率が十分小に なりさえすれば、資本家の利潤率を最大にするという技術選択基準にー照らしてみるときには、十分有利な技術に1 なりうるのであって、一期使用ずみの耐久生産財は廃棄さ加ずに実在しっづげるであろう。このプロセスでも均 等な利潤率を稼得しうるし、財3の価格評価は正値をとるであろうことにもかかわらず、負の価値をもっという ことになる。これは買實kの労働価値説にとっては許容しえないことである。したがって、結合生産過程の特 徴を一般的に理論化するためには、そうした負の価値の存在を排除することが必要なのだから、峯胃内の価値決 定の仕方、価値概念を放棄してあらたに価値をフォソ・ノイマソの線型計画法問題として定式化しなおした現実 の価値とは無関係な﹁最適価値﹂に席を譲らねばならない。これは、B、五をそれぞれ結合生産を含む産出、投 入行列とし、Xを各プロセスの操業度水準を示すベクトル、Wを労働投入係数ベクトルとする。 曽w皇十﹃ kVo の制約の下で、 薫←旨巨 にするという線型計画問題であり、さきの設例で示すと、 ざ十さー◎.o◎富ぶMド ーざ 十ぶwざ ざーぶ wま ざV9ぶVpぶV9 のもとに、◎・睾・十ド切ぶ十◎・曽ぶを最小にするという問題におきかえることである。この問題の双対間題は、 を﹁最適価値﹂ベクトルとすると、 ﹃饒1︿﹃ト十宅 ﹃V 〇 一 のもとで、 ﹃H←昌pk という問題になり、基本的双対定理により >粛1−﹃、 結合生産.価値.剰余価慎︵甲賀︶ 三三 ︵六八五︶ T 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 三四 ︵六八六︶ をえる。設例の場合には、 “−十“1◎.◎o寄炉帆◎.蜆 1“− 十ポ帆ド岬 サー“ 帆◎.旨 “V9がV98V◎ のもとで、 サk−十サkM+“ogk09りVH口︸* という問題になる。ちはS1−ポでそれ以外のツがOのときに、はちの価値と考えてもよいが、.一般に、Tはrに 依存する。個別商品の価値は決定できたいが、yという合成商品の﹁価値﹂が﹃、11薫で決まるとする解釈は 可能とたる。さらに、労働老の実質賃金ベクトルを与えれぽ、労働者階級の総必要労働量は、この﹁最適価値﹂ ※ を用いて計算することがでどる。この必要労働量と現実の総雇用量とから、搾取率も定義できるとする。 ※ 峯.呂◎ユoo巨昌−四m この森嶋の﹁最適価値﹂の方法で計算すれば、結合生産が一般的であり、しかも財の種類の数と生産過程の数 とが必らずしも同一でたくとも、各財の非負の﹁価値﹂をえることが可能とたっているが、この﹁価値﹂は、現 実の価値とは全く無関係であり、yの組合せの条件に。依存して変化するものである。森嶋旧、mの議論が、結合 生産・代替的生産方法の存在のもとで非負の﹁価値﹂を求めるということから出発したがら、個別の商品の価値 を決定できない結果に終っているのは興味深いことである。これが、旨實〆の価値決定方式では非負の価値の存 在や、価値の一意性が保証されないとして、岩胃×の価値概念を放棄して、フォソ・ノイマソ式の﹁最適価値﹂ ※ を採用して得られる帰結である。く胃内の価値概念をフォソ・ノィマソ革命の生賛にして、得られる結果は、現 実の労働者の生産過程での総労働支出・杜会的分業の諸関係とは全く異なる仮空の﹁最適価値﹂が得られるだげ である。現実の労働支出量と、もしこうすれば投下労働を最小にするような方法で所与の純生産物ベクトルを生 産することができるであろう労働量を比較することは全く無意味である。これでは搾取は説明できない、なぜな ら現実にはそのような諸条件で生産されてはいないからである。 ※ く.く◎﹃材巨昌p甘、6 森嶋剛が適摘するように、労働生産性の劣等な技術、設例の場合では直接労働を集約的に使用しなげれぼなら ない技術は実質賃金率が低水準のときは有利になりうるし、歴史的にも、きわめて陳腐化した旧設備が賃金価格 関係の変化の結果生産過程に導入されることはありえた。しかし、資本制では、各部門の固定設備が標準的条件 のもとで何期にわたって操業しうるかは、すでにみてきたように、景気の諸局面の経過をとおして決定される。 景気循環の上昇局面で実質賃金率が低下し、旧設備が有利になれぼ、下降局面では不利化する。賃金−価格関係 の変化をとおしての実質賃金率の運動が旧設備を廃棄させる。したがって、資本制のもとで一循環をこえて、設 例のプロセス2の操業が維持されるような事態にはたりえない。均衡の世界だげの思考では、経済理論の数学的 一般化は不毛化にならざるをえない一例といえる。 働 結合生産・価値現定・剰余価値 勺.oo轟豪12,H・cっa&昌。D目13、声くoユ。。巨BpO,m、置塩10,uを検討して得られたことは次の諸点である。 結合生産・価伍・剰余価値︵甲賀︶ 三五 ︵六八七︶ 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 三六 ︵六八八︶ ◎結合生産を、一般的にとり扱うのではなく、固定設備の各年齢ごとの価値を知るために適用するのは有効であ る。◎その際には一般に財の種類の数と生産プロセスの数は窓意的にではなく一致させうる。 その結果として 各年齢を経過した中古設備の価値は決定されるが、年齢のいかんにかかわらず能率が不変の場合以外には、く叫員 式の固定設備の価値移転の取り扱い、固定設備の価値/耐用年数は妥当しなくて、結合生産の方式の適用を不可 避とする。 この場合に、体系全体が純生産可能条件をみたしえたといっても、中古の設備の価値が負値をとり うる可能性は残る。 この負値の経済的意義は、その固定設備が、その耐用期間の全体にわたって労働生産性を 最大にする使用年限以上に操業が延長されることによるものであること、したがって、価値が負値をとる残存固 定設備は廃棄することによって体系全体の労働生産性を上昇させうること。また、中古設備の純生産物の定義は co轟まの方法が不可避であり、純生産物の一定の状態から他の状態への変化を前提せねばならぬこと。 この固 定設備の耐用年数の決定には景気循環の一週期をとおしての資本積蓄率と実質賃金率の運動によって規定される であろうこと、したがって、一循環をとおしてみれば負値の価値をとらねばたらないような使用ずみの固定設備 を使用する生産過程の事情は価値決定に入り込まないであろうことを指摘できた。 以上○∼ の諸結果を考慮すれば、固定設備の存在を明示的に取り扱い、︸cos夢一くsオg昌四旨式に結合 生産の方式を適用することは有効であり、その際にも、われわれがHでえた諸結果は妥当しうるものであること ※ は明らかである。 のに置塩・中谷uがある。 ※ 固定資本の存在を結合生産方式で取り扱いHの諸結果を、固定設備の能率が耐用期間中不変という仮定で証明したも 次に検討を要するのは、固定設備でない純粋の結合生産︵喜ま肩◎ま三g︶の場合に生産される結合生産物 ︵亘暮肩◎30呂の価値規定についてである。 この純粋の結合生産のヶースでは、その結合生産物が生産財として生産過程で使用される場合と、結合生産物 がどの生産過程でも使用されない純粋消費財である場合を区別して考えなげれぼならない。この二っの場合に共 通していえることは、結合生産物のいずれもが生産財、あるいは純粋消費財としてその生産物を独立した生産物 として取り扱わねばたらないような生産過程の状態、消費の状態が存在して、その事情から要請されて、これら の結合生産物が商品化し価値規定を必要とするものでなけれぼならないということである。 というのは、どの現実の生産過程でも多少にかかわらず複数の生産物を生産している。にもかかわらず杜会を 幾っかの産業都門に分割して考える必要が理論の目的から要請されるときには、複数の使用価値のものを一っの 部門の生産物として統合する必要が生じる。杜会を幾種類の産業部門から構成されていると見傲すかは客観的な 一義性をもっものではありえず理論目的に照応する。したがってある場合には、主産物1と副産物とに識別して副 産物の存在を無視することが必要でもあり可能でもある。したがって、無観定な一般化は単に煩墳であるぱかり でたく、得られた結果が何の理論目的からも現実の実践的要請からも無意味であることが十分予想される。さき に検討したように、理論の数学的一般化を無目的に、あるいはそのことを自己目的に追求することは労苦の量に 比して、得られた成果の貧しさという結果に終りがちであることに留意する必要がある。 い 生産財の場合 結合生産物が生産財として使用される場合︵同時に消費財として使用されてもよい︶にはある生産過程の生産物は、 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 三七 ︵六八九︶ 5︶ 俵 出 産 入 投 2 0 2 セ 必らず他の部門︵自部門も含む︶の生産財として生産過程に登場しなげれぽならない。 形成する場合で最も簡単な例を検討する。投入−産出表を︵表5︶のとおりとする。 いま財の種類が二であり、生産財の結合生産が存在しかつ両部門が杜会的分業体系を 物 §、 § この場合の価値決定方程式は、 〃 o ︵ 一一十一い一一一一H一一一一一Hい一 −、むデニ となる。これは、 Hの第⋮式とほぽ同じであるが、第2プロセスで第2財−単位と第 あるいは、 叫 > > 0︶ 立命館経済学︵第二十 四 巻 ・ 第五 ︶ 三八 ︵六九〇︶ ・ 六 合 併 号 1 刃 O 1 物 2 1 竹 0 o 2 1 1 0 ス 2 1 ー 2 1 働 労 2 1 ス セ ロ フ ○ ロ フ ○ 竃 1財刃単位が結合生産されている点がちがう。 酬においても、oのoじ式の場合にみたように純生産可能条件↑○、 ○が充されていれば各財の価値は正値を保証さ れ る よ う で あ る 。 そこで解を求めると、 一、、グ 但し ﹀H︵HI︸−︶︵H13︶﹁3心︵3﹁、︶ となる。 ところが、 鮒において、 ︵H−ぎ︶V◎一 >V〇一 がみたされていても、れは必らず正値をとるが、らは必らず正値をとるとはいえないことがわかる。︵£1、︶ V◎のときはもは正値をとる。しかし、︵£1、︶は負となることは十分ありうる。第−財と第2財の結合生産プ ロセスで、第−財の生産量が投入量を超過し純生産されていれぼ︵£1、︶︿〇一となる。ところで、 ︵3﹁、︶\>︿◎一 蓬 というのは、すでにみたように結合生産の場合には一方の財だげを一単位純生産するに−は、他の財を別のプロセ スの生産過程で減少させる以外に、ないということである。したがって第2財を1単位純生産するためには、第ー プロセスを傷動の値だげ減産し、第2プロセスを︵−1£︶\﹀だげ増産すれぼよいということである。そこで、 ︵s旨1∼︶が負であって、ポ︿◎であるためには、 ︵、1ぎ︶ミー︵H13−︶SV◎ .・. ︵、−、心一︶V︵HI、一一︶ § § き でなげれほならない。¢0は、直接労働−単位当り純生産率が明白に第2プロセスの方が高く第−財の生産のため に第ープロセスを使用しない方が労働生産性を上昇させるということを示している。このような場合には、第2 プロセスだげの事情で各財の価値が決まる。しかし、この場合には、例の第二式は、 ︵Hl§竃︶ポ十︵、lS一︶“H1I§ であるから、有とぢは一義的に決定できない。このときには、︵Hl享︶と︵、1£︶の比較をして純生産率の高 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶ 三九 ︵六九一︶ ∼ みなされるかもしれない。ともかく、一方の財が無価値と杜会的に見傲さ 要とされ、他−方が超過供給ぎみであれぽ、溜過供給ぎみの財の価値は零と 会の他の生産過程で主産物、副産物にかかわらずどちらか一方が大量に必 副産物の方の価値を零とみなせば、主産物の価値は決まる。また、その杜 い方の財を主産物とみ、低い方を副産物とみることが考えられる。そして 立命館経済 学 ︵ 第 二 十 四 巻 ・ 第 五 ・ 合 併 号 ︶ 四〇 ︵六九二︶ 六 h 2 的 叱工一 ︶ 2 図 ︵ うのは、︵サー1◎二ぎ買︶一︵“;毫炉11◎︶である。したがって一般的には、 れるときに他財の価値は両財に,他を振り分けるときよりも大にたる。とい ※ その杜会の生産過程の事情により、両財の価値は図1の畑上の一点に決ま るといえる。このときは勿論、価値は正値をとる。 ※ 結合生産物の直接.間接投下労働量を労働生産性の測定という見地から研究したものに松田和久閉がある。本項での 結論は松田固をこえていない。 さて、¢oの条件がみたされ狂いときには、両財の価値は、鮒で決まガ正値を保証される。 一っぎに、生産財の場合でも、結合生産がおこなわれ、いずれの生産財もいずれかの生産過程で生産され、かっ いず仇かの生産過程で生産財として投入されているとしても、生産財の種類と生産過程の数の一致は保証されな いのだから、その場合の価値規定にっいてみる。このヶースには、たとえば、 ︵3一s旨3。・︶←︵F一FNF。。︶ ︵sHq竃s畠︶←9■9−︸竃︸墨︶ という投入−産出ベクトルの場合を考えれぼ十分である。このようなヶ−スでは未知数と方程式の数の一致は保 証されない。この場合の価値規定については、いま検討した例のプロセスで財1と財2が結合生産されそこの事 情だげで価値が決まるのと全く同様である。以上の結果は、生産財が消費財として使用されても価値観定には無 関係であるから全く妥当する。 ○ 純粋消費財の場合 純粋消費財の場合には、結合生産物の価値は、方程式の数と未知数を一致させる必然性は全く存在しないのだ から、個々の消費財の最高の価値と最低値が客観的に実在し、その領域の範囲内で、その真値が決まるとしかい えない。 い 結合生産・剰余価値 結合生産が存在し、生産財.消費財の個々の価値が決定されれば剰余価値規定は、労働者の実質賃金率が与え られれば可能となる。この場合、以上の検討から、資本家階級が剰余生産物を取得していれぼ、剰余価値は必ら ず正値をとることが明らかである。H・cっ訂&昌彗のように剰余価値が負値をとることはない。しかし、結合生産 の場合には価値が一義的に決定されない場合もありうるという結果からすれば、剰余価値もやはり一義的に決定 されない可能性がある。 ︵図2︶で検討した例でいえば、畑上のどこかの点で両財の価値が決まれば搾取率は一. 義的に決まる。また、結合生産物が生産財でもあり、消費財でもある場合には、鮒式で価値は一義的に決まり、 実質賃金率が与えられれば剰余価値率も一義的に決まる。 一義的に価値が決まらないとしても、その際には生産財あるいは消費財の価値の上限が客観的に決定されるの 結合生産.価値.剰余価値︵甲賀︶ 四一 ︵六九三︶ 6︶ 俵 O 1 〃 ︶ 4 ○ ︶ 3 0 ︵ 0 ︵ 2 ︶ 仰 1 1 1 0 2 1 0 0 ︵ 1 2 0 2 2 0 O 0 ︵ O 犯 ︶ 1 刃 1 2 3 4 労 ︵ ︶ 働 2 ︶ 一一11◎一ポ婁1ーミ、 一一一一∴い∴一−斗一一二 一一一一∴い∴一一一“パニ \ーぎ HIぎ ポー−◎二一婁Hミ、 の関係をみたさなげればならない。 −、ギデギニ いま、労働者の § 竃 § § る。財1,2は生産財、3,4は消費財を示す。このとき、生産財、消費財の価値は な結合生産を想定する。生産財生産過程で二箇、消費財生産過程で二箇の結合生産があ だから剰余価値率の最下隈は客観的に決定される。この点に。ついてみる。︵表6︶のよう ・ 六 合 併 号 立命館経済学︵第二 十 四 巻 ・ 第五 ︶ 四二 ︵六九四︶ 出 産 入 投 G 2 ス 1 ’ス ロ セ プ ロ プ 財 費 消 セ 財 産 生 働∼¢ゆは、生産財−及び2の上限価値、消費財3,4の上限価値の二とおりの場合の値である。 ,実質賃金率を︵ダ3とすると、労働者の剰余労働が存在するためには、 Hl︵迂。。§二◎二十迂∼買−。二︶Vo 童 が成立すれぼ十分である。このときには剰余価値率は明白に過小評価されている。実際 蔓一一一一一い二 ・ において一方が成立することで十分である。 ところで、 ︵表6︶の場合に各部門で剰余生産物の生産が可能であるため一﹂は、各生産過程の操業度灼、均が 次の関係を満足させればよい。 汽汀一一一−ギニ ・ 減賞一パ一H一一一り︸二 婁 帥が成立するためには純生産可能であればよい。¢aの条件をみるためにー、帥・但aを変形して、等号にすること、 汀り−讐二 四三 ︵六九五︶ 但しム、qはそれぞれの剰余生産物量を示す。 ¢9の第・z式にちをかげて合計すると、 一一一讐一一一い[じ 、、 とする。 結合生産・価 直 ・ 剰 余 価 直 ︵ 甲 賀 ︶ 立命館経済学︵第二十四巻・第五・六合併号︶ 四四 ︵六九六︶ ︵H1迂。。1迂︷︶︵ミぎ十§ぶ︶11︵H︸十迂閑︶十︵Pポ十〇套︶ 8 侮oにおいて、各財の価値は正値を保証されていれば、4,qが正なるために、は、︵ミき十ぶぶ︶正であれば、 lH1︵︸。・炉十迂︷︶V◎ § でたければならない。馴は砧、なが一意に決定してもしなくてもみたされなげればならない。また体系で価値が 不定のとき制は、¢oによって代替される。︵逆もい.える。︶生産財、消費財で結合生産が存在しても、価値が正値を とり、剰余条件が帥か但◎の意味で成立すれば資本家階級は剰余価値を搾取できるし、それ以外にはない。 遁 辞 本稿では、最近の森嶋、ooa&昌。。■の議論を批判的に検討することに力点をおき、そのために最小限必要な複 雑化をして結合生産をめぐる諸論点を展望するにとどまっている。結合生産一般の場合、とくに利潤存在と剰余 条件の関連については別の機会に譲る。 ︹参考文献︺ mメ内﹄昌葦睾一、向89冒庁雰。。凹壱8くき9o・昌亘ま8彗︷;一気、§卜o§ぎ膏・︵箏彗。。軍&耳 p司h︸四箏︷向2け&ミ岸︸彗H暮昌︷g迂gげ︸U.峯.オ鼻声︶. 閉 甲賀光秀一﹁勺.キc〇四昌篶庁8らのく凹員批判について﹂︵﹃立命館経済学﹄第二四巻第一号、昭和五〇年四月︶。 レO く.く◎H−oo︸−昌∼一、向P目−亭ユ昌Bーヒ0つけ︸げ−︷けく”■pOH◎考け︸、、︵O︸.く︶Ok︷◎﹃︷bH00卜 閉 松田莉久一﹃労働生産性測定論﹄昭和三九年、有斐閣。 旧 峯.く◎Hオ︸−昌1︸一、弓︸o◎hく◎叶向o◎■◎昌−oOH◎ミけ︸,︵勺四H叶HH.く−︶O×︷◎H♀ Hooり. 博邦訳、東洋経済︶ 6− 峯.く◎ユ。。巨昌︸∴一く彗吋。。向o旨◎昌−8・>一U§H↓ぎ◎q◎︷く四H亮彗qOH◎ミ艘、お轟一〇”昌げ、己四、・︵卿高須賀義 7−く﹄冒肇§一2蓑三︸二誓・一書翁二§§一二︸8q、、向§・旨。一、一。、七、く。:N三。・ト一君・ 8−−.く9オ彗昌彗三£峯◎まH◎︷O・彗o轟一寒旨◎邑o畳p一亭﹃巨昌、内。i。考。︷向、邑。cつけ、2。。。・く。−・メ目・ oHH∼oo◎N︶−]ゴ一ざ Hoべト ︵H置岬∼o︶︵oo.H∼o︶・ ・ 側 置塩信雄一﹃再生産の理論﹄一九五六年、創文杜。 皿 置塩信雄・中谷武一﹁利潤存在と剰余労働 固定資本を考慮して ﹂︵﹃理論経済学﹄く。H・メHく一声一。・.一H署9 m置塩信雄一﹁投下労働量と固定設備一一一国民経済雑誌一第三八巻雲号、昭和四八年二月一。 オ◎一ド ︵o〇一〇◎∼り閉︶︶一 は 2−︸cつ邑賞尋きき二一〇竃暮婁易耳豪婁・︷O・竃葦蚕ま;二。声O、葺一、。;§・邑。 弓訂◎q一、岩8一9昌げユ尉9︵邦訳 菱山.山下、有斐閣︶ u 3−一.cつ蚕婁彗∴雰葦亀H◎豪幸葦曇きく二毫一易くき9、、掌二§§二。一、、芦く、、。戸H葦く・一・ o◎9 オ◎.o◎o◎“ ︵りpH一杜∼一心oo︶. に 四五 ︵六九七︶ 4−目.ぎ豪雲賢多邑■。・9げ・員cつ壱・ぎま&■ま冒O易冴邑夢侵。。−−”げ。一、掌、。、く。;当、、・、目§。、 昌ードー◎■﹃■巴一く◎一.o◎◎◎一cつop一岩べo◎.︵りpべ◎oべ∼◎◎8︶・ 結合生産・価値・剰余価値︵甲賀︶
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