省資源と省エネルギーの両輪から考えた水の有効利用 特集

No.28
TECHNICAL LETTER
2 0 16
特集
省資源と省エネルギーの
両輪から考えた水の有効利用
関東学院大学 建築・環境学部
大塚雅之 教授
目 次
特集 <省資源と省エネルギーの両輪から考えた水の有効利用> ・・・・・・・・
1
テクニカルリポート
葛飾区水元体育館 置換換気空調システムについて ・・・・・・・・・・・・・
4
北星学園大学・短期大学部新C館建築工事 井水熱利用設備について ・・・・・・
6
ニュートレンド
3Dレーザースキャナ計測による既存設備のモデル化 ・・・・・・・・・・・・・
8
不快指数を配慮した省エネ快適空調システムの開発 ・・・・・・・・・・・・・ 10
Information
全国展示会 出展報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
フィールドリポート
筑波大学国際統合睡眠医科学研究棟 新営工事 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
『京都おもてなし小路』新設工事 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
鈴鹿市第二学校給食センター 機械設備工事 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
岩手医科大学附属病院エネルギーセンター棟新築工事 ・・・・・・・・・・・・ 15
魚沼市新病院 機械設備工事 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
洗足学園音楽大学教室棟 新築工事 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
久留米市総合都市プラザ
(8番街区)
新築工事 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
特 集 関東学院大学 建築・環境学部 教授 大塚雅之
―省資源と省エネルギーの両輪から考えた水の有効利用―
1.2 水危機と食糧問題
島国であるわが国の食糧自給率は先進国の中では最も低く、世
界最大の食糧依存国である。食糧生産には水は欠かすことができ
ず、食料を介して間接的に諸外国から水を輸入していることにな
る。もし、食料を輸入している国
(消費国)
において、その輸入食料
を自国で生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定した仮
関東学院大学 建築・環境学部 教授 大塚雅之
1.地球を取り巻く水環境
想水(バーチャルウォーター)という考え方がある。わが国の例で
は、総輸入量約640億m³/ 年となり、国内における灌漑用水使用
量が約570億m³/ 年であるため、
それを超える値と試算されてい
る(図2)
。世界的な規模では多くの水の輸出入が繰り広げられて
1.1 世界の水資源
地球上に存在する水量は約14 億km³といわれ、その2.5%が
いることに留意しなければならない。
淡水、他の97.5%は海水等から成り立っている。また、淡水の約
70%は氷河、雪氷などで利用ができないため、地下水や河川など
として、
本当に利用可能な水は0.8%にすぎない
(図1)
。
水は生命の源であり、代替物のない貴重な資源である。かつて
世界四大文明であったメソポタミア文明はイラクのチグリス川、
ユーフラテス川流域に、エジプト文明はエジプトのナイル川流域
に、インダス文明はインド・パキスタンを流れるインダス川流域
に、
黄河文明は、
中国の黄河流域に生まれた。大河のほとりには、
そ
の豊かな水を使った農業が盛んになり、土の栄養分や物資の運搬
にも活用されてきた。
しかし、21世紀の現在、人類は地球温暖化による温室効果ガス
が原因となる気候変動、
世界人口の増加、
開発途上国の急激な経済
図2 日本の仮想水投入水総輸入量1)
成長と急激な都市化によって、かつて経験したことのない水危機
2.今、建築環境で求められる水の有効利用
に直面している。全世界において、安全な飲料水を継続して利用
建物における水分野の環境負荷低減技術は、決して建築や空調
できない人の割合は約17%程度と言われている。また各地での
設備分野の省エネルギー技術のように、ビジュアルで華やかなも
異常気象による集中豪雨と水害の急増、途上国における水不足な
のではない。しかし、様々な視点から考えると、多くの環境負荷削
ど、
深刻な問題が顕在化している。
減に貢献できる要素技術が見えてくる。謂わば、
“縁の下の力持ち”
のような存在であると思う。
この分野の特徴の一つは、
「省資源化」
と
「省エネ化」
の2つの側
面を持っていることである。例えば、省資源化については、水源と
なる上水や雨水・雑用水の有効利用を、節水・節湯型機器とシス
テム化させながら実現させる技術などであり、省エネ化の一番の
担い手は、高効率型の給湯機器設備システムである。また、間接的
に排水排熱や地下水脈の利用、散水の活用などにより熱源や空調
負荷の低減への貢献も担っている。一方、災害時のインフラの途
絶により建物の給水や円滑な排水が断たれた際のBCP(事業継
図1 地球の水資源量1) 続計画)やLCP(生活持続計画)への対策として欠かすことがで
きない要素技術でもある。
1
特 集 関東学院大学 建築・環境学部 教授 大塚雅之
―省資源と省エネルギーの両輪から考えた水の有効利用―
図3 建物における水の有効利用概念図(大塚)
さらに世界に目を転ずれば、水不足で飲料水に貧する国々は多
く、そこでの水の有効利用技術の提案こそ、本来、われわれ水分野
の技術開発の果たすべき使命である。このように、近年、水の有効
2013年に改正された省エネ法の住宅・建築物の省エネ基準に
利用の可能性は広がって来ており、従来の水利用という視点では
おいて、一次エネルギー消費量を指標とした評価基準が策定され
なく、概念図(図3)を示すように建物での水資源の有効利用を考
たが、その中でも各種節湯型水栓の性能が規定されている。省エ
え、総合的な水利用システムを構築し、国内外の建物に導入して行
ネ基準で規定される節湯水栓として、
「節湯 A 1
(手元止水機構)
」
、
くことが望まれている。サステイナブルな都市・建築の構築には、
「節湯B 1
(小流量吐水機構)
」
、
「節湯C 1
(水優先吐水機構)
」が定
省エネルギー技術は必須であるが、これらの水の有効技術も併せ
義されている。これらは給湯エネルギー消費に関連した①吐水
て活用することで新たな可能性が見いだされることに期待したい。
時間、②吐水流量、③吐水温度の3つの要因を考慮し、その削減を
3.省資源化への貢献と可能性
「水使用量と節水形機器」
わが国における一人一日当たり水使用量は、水洗便所の普及な
図った水栓で、効果は研究・開発段階で検証され実用化に至って
いる。台所用水栓において、従来の水栓
(整流吐水型など)
と、これ
らの節湯形水栓(泡沫・シャワー型)との節水・節湯効果を総合的
に比較すれば、明らかに従来型に比べ高い削減効果が得られるが、
どの生活様式の変化に伴い1965年から2000年までの間に約
使用者のライフスタイルや使い勝手などによって効果の程度は大
2倍に増え、この間の人口の増加や経済活動の拡大とあいまって、
きくばらつく。よって、節湯型水栓などの機器の開発において、継
生活用水の使用量は約3倍に増加した。しかし、
1998年頃をピー
続して根拠データの収集を行うことは大切であるが、その効果を
クに緩やかに減少傾向になっている。これには、年々、住宅はもち
簡易に評価できる性能試験法の提案も、グローバル化への対応と
ろん、業務用建物においても、社会やライフスタイルの変化、節水
して、
今後は必要である。
形機器の普及などが影響していると推察する。また、ペットボト
ルの普及、湯沸かしの習慣がなくなってきたこと、乾式工法トイレ
2
4.省エネルギー化への貢献と可能性
「節湯型機器とライフスタイル」
5.BCPとLCP 対策
(システムトイレユニット)
の普及により、トイレの清掃作業が軽減
2011年3月に起きた東日本大震災において、インフラが途絶
され洗浄水が減少したことも要因の一つとされている。更に、各
し、洗浄水の給水や下水道への排水が困難となり、多くの居住者が
種節水形機器が普及したこともそれに拍車をかけている。
不便を強いられる事態を招いた。そんな背景を踏まえると常時と
非常時に兼用できる汎用性のある給水排水設備システムの開発と
整備が必要である
(図4)
。
例えば洗浄水量を可変でき、非常時には、簡易水栓トイレのよう
に洗浄水量1L 以下でも排出できるBCP 対応の節水形トイレシス
テムも有効であろう 3)。それはトイレ単体ではなく、排水配管シス
テムと雨水利用システムなどを連動させることで総合的なシステ
ムとして立案できると思う。使用するトイレや衛生器具は総合的
に節水化を図り、その排水を排水横主管を介し一旦排水槽へ貯留
し、
再度その排水を最下部の排水横主管に循環させることで、
洗浄
水量が少なくても、定時間に循環される排水により停滞した汚物
等を搬送し、排水横主管内に詰まりを生ずることをなくすことが
できるシステムであり、その可能性を検証することも必要である
図4 震災時の水対策を備えた集合住宅のイメージ2)
と考える
(図5)
。
*大便器の器具排水管が、設置階のスラ
ブ下の配管としているのは、少ない洗
浄水量において、床スラブ上の配管に
て排出できる大便器の開発に至って
いないため、
本報では、
現有する簡易水
洗大便器の配管方式をもとに示した。
*** 下水道途絶時にはマンホールより引き抜き処理、
または隣接する地下ピットなどへ一時貯留
**地下ピット
**排水槽から下水道への放流は排
水ポンプまたは、自然流下を用い
て排水する。
図5 BCP対応の節水形トイレシステム3)
このようにインフラが途絶した場合でも少ない洗浄水量で使
<参考文献>
用できるトイレシステムの開発と、その実証も災害時対策の重
1)平成 20 年版日本の水資源 , 国土交通省土地・水資源局水資源部
要テーマである。特に非常時の拠点となる公共建物や避難施設
において、
給排水衛生設備の果たす役割は極めて重要である。
おわりに
(2008)
2)遠藤智行 , 大塚雅之 , 山口温 , 高橋健彦;環境・設備から考える建築
デザイン , 鹿島出版会(2014.9)
3)大塚雅之他;洗浄水量 1L 以下の超節水形大便器に対応した専用排
水システムに関する基礎研究 , 日本建築学会技術報告集
(2015.10)
今回は、水環境や給排水衛生設備をグローバルに捉えるとと
もに、
今後の水の有効利用と可能性について、
省エネルギーと省
資源化の両方の側面から意見を述べた。BCP や LCP への対応、
大塚 雅之 教授のプロフィール
●
更には国際的視点から給排水衛生設備の重要性を考えて行くこ
ともサステイナブルな建築と都市を創造する上で重要であり、
そのような時代を迎えている。
関東学院大学 建築・環境工学部 学部長 並びに
同大学 大沢記念建築設備工学研究所 所長
●
給排水衛生設備をご専門とされ、地球環境に配慮した設備
システムの研究開発に従事、更に、
空気調和・衛生工学会な
どの学協会にて大変活躍されております。
3
葛飾区水元体育館 置換換気空調システムについて
本店 工事部 副参事 櫻井 美克
1.はじめに
温水投入型吸収式冷凍機とガス焚き温水ボイラーである。熱交
葛飾区水元体育館は、地域に密着したスポーツ施設として平成
28年3月にオープンとなった。2階にバスケットボール、バレー
ボール、バドミントン、卓球競技等を行うメインアリーナと3階に
観覧用客席が960席あり置換換気空調システムが採用された。
換器の温水は空調暖房用、温水プール用、給湯用に利用され、空調
冷房用の冷水は温水投入型吸収式冷凍機で製造される。
2階のメインアリーナには置換換気空調システムが採用され、
大空間の居住域を快適な環境としている。
置換換気空調システムは、室内の発熱物体から発生する熱上昇
気流を利用することにより、居住域に良好な空気質を提供する空
調システムである。気流を感じさせない静穏な環境を実現できる
ため、音楽ホール、工場、体育館といった大空間における居住域の
空調を目的とした空調システムといえる。また、従来のミキシン
グ方式と違い、空気の比重差を利用して空気の置換を行うため、汚
染空気や熱気を効率よく排出することができ、食品工場にも採用
されている。置換換気空調システムは、少ない換気量で効率的に
換気を行うため換気系統の搬送動力削減にも効果があり、省エネ
図2 メインアリーナ
ルギー対策にも貢献している。
本稿では、施工前に実施した、気流シミュレーションによる置換
換気空調システムの効果検証について報告する。
4.置換換気空調吹出口
1)
立型メインアリーナ用置換換気空調吹出口
吹出口は一般の制気口と違い、6面体の給気チャンバーの1面
が給気口となっており、100mm程度の円形の給気口が複数配置
されている。特徴としては、整流板付給気口が縦長に配置され、給
気SAが平行、層状に吹き出される仕組みになっている。それぞ
れの給気口には整流板が取り付けられているが、向きの違う整流
板付給気口を隣り合わせにすることにより、給気SAに旋回成分
が与えられ、吹出パネル面近傍の空気が層状の空気に誘引されて
誘引量が増加するようになっている。その給気SAは、誘引量を
増すごとに吹出速度を失い、風速が低減して0.5m/s以下に落ち
図1 葛飾区水元体育館の外観
2.建物概要と空調条件
着く。旋回成分により前に押し出される力が強くなった給気SA
は、遠くにある居住域までを包み込むように供給される仕組みに
なっている。
工事名称:葛飾区水元体育館
建 設 地:東京都葛飾区水元1-24-6ほか
延床面積:12,036.53m² 構
造:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造 地上3階
空調条件:夏期 温度 26℃、
湿度 50%
誘引
冬期 温度 22℃、
湿度 40%
3.設備概要
熱源の大部分は、隣接する葛飾清掃工場より供給される余熱
(130℃)を利用している。熱源設備の構成はプレート熱交換器、
4
図3 置換換気吹出口(整流板詳細)図
図6 シミュレーションのモデル
図4 置換換気吹出口の外観
6.シミュレーションの結果と検証
2)
横型観覧席用置換換気空調吹出口
1)
夏期冷房時
3階にある観覧用客席の座席下にも置換換気吹出口が設置され
ている。座席下の足元に設置されているが低風速のため、ドラフ
トを感じることなくスポーツ競技を観覧することができる。
(吹出
口は250×250×3000L が96ヶ所)
a)
夏期コートエリア内の風速は、FL+0.5 ~ 6.0mの範囲
においては概ね0.5m/s以下となっていた。
b)
3階客席系統からの冷気が手摺上部からコートエリア内
に落下する箇所は若干風速が大きくなっていたが、
大きな
問題は見当たらなかった。
2)
冬期暖房時
冬期コートエリア内の風速は、夏期に比べて若干大きくなって
おり、FL+0.5 ~ 6.0mの範囲においては概ね0.5m/sを超える
吹出口
箇所が存在した。これは、
2階系統給気による上昇気流及び壁面、
天井面からの冷気の下降によるものと思われる。
図5 置換換気吹出口(3階観覧席)外観
5.シミュレーションの実施
施工にあたり、アリーナ部分について温度差による気流がコー
トエリア内の競技へ及ぼす影響を確認するため、次の条件で熱流
体シミュレーションを実施した。
a)
解析ソフト:STREAM V11
b)
解析内容:流れと熱
(温度のみ)
に関する定常計算
c)
メッシュ数:100,294,480メッシュ
d)
シミュレーションモデル:図6の通り
図7 シミュレーションの結果
e)
流入
(給気)
条件:以下の表の通り
器具
型式
モデル
形状
置換空調用
FMW (2F)
置換空調用
FMS (3F)
450×1,650H
*1)
200□×3,000L
*2)
風量
[CMH]
数量
[個]
系統風量
[CMH]
給気温度
冬
今回の施設では、置換換気空調システムの効果検証から施工ま
1,575
20
31,500
22℃
27℃
で一貫して携わった。近年、競技用の体育館のほとんどは空調さ
488
96
46,800
22℃
27℃
れているが、卓球やバドミントンなどの球技においては、球が軽く
風量合計
コート上での風を嫌う。そのため、風の影響が大きい従来のミキ
78,300CMH
シング方式の空調システムは採用できなかった。
f)流出(還気・排気)条件:以下の表の通り
器具
型式
壁面
RA.G
モデル
形状
数量
[個]
系統風量
[CMH]
備考
7,650
2
15,300
AHU-4系統
1,880×1,200H 15,750
4
63,000
AHU-4系統
AHU-3系統
660×2,300H
*3)
7.まとめ
夏
風量
[CMH]
風量合計
78,300CMH
低風速の置換換気空調システムを採用したことで、風を嫌う競
技でも空調しながら競技が行える。これから始まる2020年のオ
リンピックの提案施設として少しでも役立つことを期待する。
最後に、ご指導・ご協力頂きました葛飾区殿、桂設計殿、並びに
技術研究所にこの場をお借りして心から感謝申し上げます。
5
北星学園大学・短期大学部新C館建築工事 井水熱利用設備について
北海道支店 技術部 副参事 浦本 雅之
1.はじめに
近年、CO₂排出量削減と省エネへの取り組みの一環として自然
エネルギーを利用した空調設備を採用するケースが増えてきてい
る。北星学園大学では、学園創立125周年および大学開学50周
年事業の一環であるC館建築工事において、災害時でも対応可能
で省エネ性にも優れた自然エネルギーを利用した井水熱利用設備
を空調設備の熱源として採用することになった。
2)
空調換気設備
a)
講堂
空調機+ファンコイルユニット
b)
管理部門・1~2階共用部
ファンコイルユニット+全熱交換換気扇
c)
教室・3~7階共用部
ガスヒートポンプエアコン+全熱交換換気扇
本稿では、この井水熱利用設備についての概要と特筆すべき点
について報告する。
写真1 北星学園大学 新C館の外観
2.建築概要
工事名称:北星学園大学・短期大学部 新C館建築工事
4.井水熱利用設備の概要
供給する井水設備の概要は次の通り。
所 在 地:北海道札幌市厚別区大谷地西2丁目
さく井口径:200A
用
さく井深度:180m
途:大学
延床面積:7,511.98㎡
水量:360L/min
規 模:地下1階、
地上7階
井水設計温度:10℃(実際は9~10℃)
建 築 主:学校法人 北星学園
井水槽容量:49㎥
設計監理:株式会社 アトリエブンク
施 工:建築 清水建設 株式会社
用途:井水熱利用熱源水・雑用水・屋外散水
構成については、図1に示すように地下ピットの井水槽より熱交
空調・衛生 株式会社 朝日工業社
換器を介して井水熱源式水冷ヒートポンプチラーの熱源水として
電気 北工電気 株式会社
利用している。
3.空調設備概要
1)
熱源設備
この井水槽に供給している井戸ポンプは、井水槽レベル制御及
び温度制御により井水を供給している。槽内の温度が満たさない
場合
(熱量が不足の場合)
は井水を供給し続け、オーバーブローさ
井水熱源式水冷式ヒートポンプチラー 1台
せることにより熱量を確保する。オーバーブローした井水は排水
冷却能力258 kW、
加熱能力295.2 kW
ポンプにて公共下水道に放流する。
ガスヒートポンプエアコン 室外機 11台
主に講堂・管理部門及び共用部系統には井水熱源式水冷式
ヒートポンプチラー、教室等にはガスヒートポンプエアコン
を採用している。
6
写真2 井水熱源式水冷式ヒートポンプチラー
「ゼネラルヒートポンプ工業㈱製」
6.井水熱利用設備の検証結果
竣工後、
約1年間の運用における評価・検証結果は次の通り。
1)
冷房時
北海道のように夏が短く負荷のピークがなだらかな建物に
おいては、井水の安定した温度は有効であると考える。 課題としては、熱利用した井水の有効利用方法や還元井等を
設ける等、
ランニングコストの低減対策だと考える。
2)
暖房時
暖房に対しては時期により評価が分かれた。
中間期の暖房(特に北海道のような場所)には有効であると
考える。暖房負荷が比較的少なく負荷のピークがなだらか
な場合は有効と考える。但し、冷房同様、熱利用以外の有効
活用が必要である。
図1 井水熱利用設備の構成図
最低気温が氷点下となる厳寒期では、立上り時にチラーに最
大負荷が掛かるため、
現状の井水温度では能力が発揮できな
5.問題点及びその対策
いケースが見受けられた。対策としては別の温熱源を計画
施工にあたり検討した結果、
次の2つの問題点が予見された。
するか、地中熱又はその他の設備などの排熱を利用すること
1)暖房時の熱源水温度
(0 ~ 3℃程度)
と井水槽
(6 ~ 9℃程度)
により解決できると考える。
の温度差が少ないためピーク負荷時にチラーの能力が発揮
3)
全体的な評価
井水熱源式水冷式ヒートポンプチラーを採用する利点は次
出来ない可能性がある。
2)井水槽の容量が少ないため、熱量不足時に井水をオーバー
ブロー排水させると、
その分の下水道料金が課せられランニ
の通りである。
・井水は年間を通して温度変化が少ないため、ヒートポンプ
チラー単体では高いCOPが得られる。
ングコストが増となる。
これらの問題点の解決方法として次の対策を行った。
(図2)
・寒冷地で問題となるデフロスト運転が無い。
1)厳寒期の暖房対策として、C館に隣接するA館の既存温熱源
・ヒートアイランド現象の抑制。
(真空式ヒータによる温水)
をバックアップとして切替可能と
・外部への発生騒音が少ない。
欠点としては、
次の点が挙げられる。
した。
2)札幌市下水道局に問い合わせたところ、基準に則ったシステ
ムとし「良質汚水使用量減額申請書」を申請すればオーバー
・システム全体で考えるとイニシャルコストが高い。
・厳寒期での暖房対策が必要。
ブロー槽から排水される汚水量については半額に減額され
・井戸の枯渇対策の必要性。
ることが分かった。そこで給水・排水系統毎に量水器を取り
現状では利点・欠点の両方が挙げられるが、欠点については
付け、使用量を把握可能とした。なお、屋外散水栓系統の使
今後、
解決方法を模索していきたいと考える。
用量は全額免除となった。
7.おわりに
今回は、
寒冷地での井水の熱利用という事例が少ない中、
制約事
A館より直接バックアップ
水道メーターを取付
下水道料金減額
項も多く定められた工期内で、いかに井水という自然エネルギー
を有効活用し、
省エネとイニシャル・ランニングコストの抑制を両
立するという客先要望を実現するため、検討を重ね施工を進めた
結果、
無事に完工する事ができました。
井水の熱利用は、まだ色々な制約・問題等がありますが、将来的
M
には代表的な自然エネルギーとして活用されていくと思われる。
M
M
最後に、今回の工事にあたりご協力頂いた、北星学園大学殿、
㈱アトリエブンク殿、清水建設㈱殿、他多くの皆様に紙面を借りて
御礼を申し上げます。
図2 井水熱利用設備の構成図(対策後)
7
3Dレーザースキャナ計測による既存設備のモデル化
技術研究所 副主任研究員 大久保 豊晴
1.はじめに
1)
レジストレーション
(位置合わせ)
BIM(Building Information Modeling)に代表される3Dモデ
複数の計測で得られた点群データは基準点が異なるため位
ルの活用が急速に発展する中、3Dレーザースキャナ(以下、3D
置や方向が様々であり、これらの位置関係を自動認識して修正
スキャナ)利用の動きが本格化している。3Dスキャナは既存の空
し、
結合する
(図1)
。
間を短時間かつ正確に再現でき、スキャナ本体の低価格化やデー
タ処理ソフトの機能充実も相まって、特にリニューアル工事にお
ける現場調査の省力化に向けた導入が進んでいる。本稿では、
3Dスキャナ計測の概要と当社の取り組みについて紹介する。
2.3Dスキャナとは
3Dスキャナとは、レーザー照射を高速かつ連続的に行うことに
図1 レジストレーション
より、計測対象物の位置情報を瞬時に取得し、無数の点の集まり
(点群データ)として取り込む装置である。多様な製品が存在する
が、
当社ではFARO社のFocus3Dを使用している
(写真1)
。
2)
ノイズ除去
複数データの重ね合せや一時的に入り込んだ人影などの不
要な点群はノイズとして除去する。自動の除去機能もあるが、
実際には多くの手作業が発生する。
3)
フィーチャー抽出
点群から天井や配管などの形状を平面や円柱として自動認識
し、モデリングする機能である(図2)
。抽出した平面や円柱の
データはDWGやDXFなどのCADデータとして出力ができ
る。
写真1 3Dスキャナ本体
3.3Dスキャナを利用した現況図の作成
3Dスキャナは主にリニューアル工事における現況図作成のた
めの現場調査に用いられる。3Dスキャナを利用して現況図を作
成する手順は概ね以下のようになる。
図2 フィーチャー抽出
1)
3Dスキャナによる計測
3Dスキャナ計測により点群データを取得する。レーザーの
届かない障害物の裏側などは計測できないため、未計測の箇
所が発生しないよう複数の位置からの計測を行う。
2)
点群処理ソフトによるデータ処理
計測で得られた点群データは専用のソフト(点群処理ソフ
ト)により処理し、DWGやDXFなどのCADデータとして
出力する。
3)
CADEWAによる3D-CADデータの作成
点群処理ソフトより出力したデータをCADEWAに取り込
み、
手作業
(トレース等)
で3D-CADデータを作成する。
4.点群処理ソフトの概要
点群処理ソフトについて、当社ではELYSYUM社のInfiPoints
を使用しており、
主に以下のような機能を用いて処理を行う。
4)
寸法計測
点群を用いて任意の2点の距離を計測できる他、平面や円柱
軸を利用して距離やサイズを計測することができる。
5.3Dスキャナ計測の有効性
3Dスキャナを利用した現場調査には、
従来の手作業による計測
の負担軽減をはじめとして次のような利点がある。
1)
計測精度が向上するため、より正確な現況図の作成が可能に
なる。
2)
高所作業が大幅に低減されるため、安全性の向上と仮設費の
削減に繋がる。
3)
PC上で現場を忠実に再現できるため、計測ミスによる手戻
りが削減される。
4)
改修提案時において客先へのアピール力が向上する。
5)
点群を利用した様々なシミュレーションが可能になる。
8
6.当社の取り組み事例
事例1:シミュレーションモデル作成のための現場調査
1)
目的
事例2:リニューアル工事における現況図の作成
1)
目的
空調機械室のリニューアル工事において、既設配管等の正確
塗装工場の気流改善に向けたシミュレーションの実施にあ
たり、既存設備の詳細確認のため3Dスキャナにて現場調査を
行った。
な図面がなく現場調査のために3Dスキャナを利用した。
2)
作業の概要
約半日の作業で21点の計測を行い、点群データはInfiPoints
2)
作業の概要
により平面、円柱形状を抽出、補正を行った後にDWGデータに
計測は1日で行い22箇所での計測を実施した。計測作業で
て出力、CADEWAにて配管モデル等をトレースすることによ
得られた点群データはInfiPointsに取り込み、平面や円柱形状
り3D-CADデータを作成した。点群データから3D-CADデータ
等を自動抽出した後に詳細寸法を取得し、STREAMにてシミュ
作成に要した時間は、
1人の作業で約9日間であった。点群デー
レーションモデルを作成した。各作業段階における3Dモデル
タを図6に、3D-CADデータを図7に示す。
を図3 ~ 5に示す。
図6 点群データ
図3 点群データ
図4 平面・円柱自動抽出データ
図7 3D-CADデータ(CADEWA)
3)
効果検証
機械基礎の構造物から各種配管まで、位置やサイズをPC上
で確認しながらの作図が可能であり、効率的な現況図作成が可
能であった。ただし、現場の配管類には水平垂直に対する若干
の傾きが存在するため補正作業が必要となり、また保温が施さ
れた配管のモデル化においては竣工図等によるサイズ確認が必
要である。
図5 シミュレーションモデル
3)
効果検証
本事例では12m程度の高所に設置されたダクトについても
足場を設置することなく計測ができ、また形状の複雑な装置の
7.おわりに
3Dスキャナ計測による既存設備のモデル化は、安全性の向上
や作業の省力化において非常に有効な手段であり、今後も継続し
て活用していきたい。
詳細寸法等もPC上にて確認が可能であり、作業時間の短縮並
最後に、3Dスキャナ計測による現場調査に対しご理解、ご協力
びにモデル形状の精度向上にも非常に有効な手段であると考え
を頂きました施設の皆様には、日頃からのご愛顧とともに心より
る。
感謝申し上げます。
9
不快指数を配慮した省エネ快適空調システムの開発
技術研究所 主任研究員 正田 睦生
1.はじめに
4.制御概要
省エネの観点から、冷房設定温度の高温化が推奨されています
図3に空調機のシステムフローを示します。ハード的には一般
が我慢優先の省エネにより快適性が損なわれる傾向が見受けら
的な空調機と変わらず、シンプルな形態となっています。空間温
れます。今後は、快適性にも配慮した省エネ空調が求められます。
湿度を簡易制御するため、SAとRAに温湿度センサを設けてい
そこで、
冷房時の不快指数に着眼して快適性にも優れた「省エネ
ます。
快適空調システム」
(特許出願済み)を開発したので、その概要を
紹介します。
2.不快指数
不快指数
(DI)
は、
次式より求められます。
DI=0.81T+0.01H(0.99T-14.3)
+46.3
ここに
T:乾球温度
[℃]
、H:相対湿度
[% RH]
不快指数と体感の関係を表1に示します。日本人の場合、不快
指数70前後が最も快適とされ、75で約9%の人が、77で約
65%の人が、85を超えると100%の人が不快に感じると言わ
れています。
図3 空調機システムフロー
表1 不快指数と体感
(1)暖房運転
暖房運転時は、
空間温度、
湿度を個別に任意設定します。温水流
量により温度制御、加湿器にて露点(相対湿度から演算)制御しま
す。
(2)冷房運転
冷房運転は、
以下に示す2種類の運転モードを備えています。
①温度制御モード
3.開発コンセプト
空間温度を任意設定します。湿度、不快指数は成行きの状態
となります。
(1)再熱器を使わずに簡易冷房除湿
一般的な全風量冷却再熱方式のように全風量を冷却器で過冷
却せず、風量の一部をバイパスして除湿効果を向上させ省エネ化
②快適制御モード
DI< 75 を維持するように、空間設定温度を任意の範囲
(22 ~ 26℃)
で自動可変します。空間露点温度に応じて、
を図る。
2段階(強/弱)
の設定を設けています。
(2)空間温湿度を間接的に簡易制御
制御の流れとしては、
以下の様になります。
吹出し温度(SA)は、吸込み温
度(RA)と空間設定温度(SP)の
・冷水流量により、
吹出し温度を制御。
偏差に応じて自動可変する(図
・吹出し設定温度を可変し、
空間温度を間接制御。
(上記①の温度制御モード)
1)。これにより同じ空間に複数
・空間設定温度を可変し、
空間露点温度を間接制御。
の空調機を設置した場合、位置的
(上記②の快適制御モード)
負荷分布や変動に対する最適制御
を可能とする(図2)
。
図1 SA設定の自動可変
5.運転データ
図4、
5に冷房運転時におけるモード移行状態を示します。この
時の不快指数は、温度制御モードでの75.8の状態から、快適制御
モードに移行することによって、73.1(弱)
、71.8(強)
と改善さ
れていることが分かります。
図2 空間簡易制御概念
10
快適制御モードで潜熱負荷が上昇した場合、図5に示すように
9.おわりに
基準露点(弱:19℃、強:18℃)に達すると空間設定温度を低下
ビル管法の温湿度上限値は28℃、70% RHですが、その不快
(空気線図上、左に水平移動)
させ、不快指数の上昇を抑制すること
指数は78.4となり7割以上の人が不快に感じる状態となります。
で快適性を保持します。
図5からも分かるように、設定温度28℃でDI<75を維持しよ
うとすると、相対湿度で44.8% RH(露点温度で14.9℃)
まで除
湿する必要があり、省エネと快適性の両立は困難と言えます。本
システムはデシカントの様な高価な機器を使わず、不快指数を空
調制御に反映させ、必要最小限の除湿エネルギーで快適性を保ち
ます。
今後、
今回の実験結果を基に専用制御盤の製作を行う予定です。
図4 冷房運転モード移行データ
図6 冷房運転立上りデータ(空気線図)
図5 冷房運転モード移行データ(空気線図)
暖房加湿運転の場合は、20℃、40% RHの不快指数が64.7
であり、
この付近での運転が、省エネと快適性のバランスの取れた
ポイントと思われます。
6.省エネ効果
図6に冷房運転開始時の立上りデータを示します。青点が空間
図7 カビの発育範囲
温湿度の軌跡で、
その左右の白点が空調機の吸込み、
吹出し温湿度
です。立上り途中の比較的最大負荷に近い状態において、全風量
処理の冷却再熱制御と処理エネルギー量
(エンタルピ)
の比較を検
証した結果、
約47%の削減効果となりました。
7.カビ発生の抑制
図7にカビの発育範囲を示します。快適制御モードでの温度可
変範囲
(22 ~ 26℃)
において、弱モード
(基準DP19℃)
で湿性カ
ビを、強モード(基準DP18℃)で乾性カビをほぼ抑制することが
可能と言えます。
8.運用例
図8 WEBによる遠隔操作監視
本システムは、複数の空調機、送水ポンプ、熱源を含めたシステ
ム全体の最適制御や、図8に示すようなWEBによる遠隔操作監
視、
データロギングにも対応しています。
11
全国展示会 出展報告
今年度は全国6 ヶ所の展示会に出展しました。各展示会では、多くの実績とノウハウがある
「アグリ分野」
と
「省エネルギー分野」
、また、医
薬品工場の環境対策として開発しました排気用HEPAフィルタ自動リーク検査装置「SR-E」や空調設備の中央熱源最適制御システム
「ACOS™」
を出展しました。さらに、共同研究を実施しておりました
「ZEB」
につきましては、研究・開発の成果をNEDOの展示ブースに出
展しました。
各展示会では、お客様へ当社の低炭素社会実現への取り組み、ZEBや環境対策に関する新技術をPRすると共に、ソリューション提案を図
ることができました。
「インターフェックス大阪 」(大阪支社)
主催者:リード エグジビジョン ジャパン
会 場:インテックス大阪
開催日:2016 年 2 月 24 日~ 26 日
来場者数:26,768 名
6つの展示会から構成される【メディカルジャ
パン大阪 2016】へ初出展しました。医療・製薬
分野に関する空調設備について実機・パネル・
ディスプレイの展示を通し当社の豊富な技術を
PRさせて頂きました。
「メッセナゴヤ 2015」
(名古屋支店)
主催者:愛知県・名古屋市・名古屋商工会議所
会 場:ポートメッセなごや
開催日:2015 年 11 月 4 日~ 11 月 7 日
来場者数:63,802 名
本展示会は
「新たな価値を生み出す未来交流」
を
テーマとして開催されました。当社ブースでは
「化
学・医薬の危険物質への安全確保のために」をコ
ンセプトとして排気用HEPAフィルタ自動リー
ク検査装置「SR-E」
等を出展し、安全に対する
新たな技術や取り組みをPRしました。
「NEDO 省エネルギー技術フォーラム 2015」
(技術研究所)
主催者:NEDO
(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)
会 場:東京ビッグサイト
(INCHEM TOKYO 2015内の展示ブース)
開催日:2015 年11月25日~ 27日、
来場者数:22,802 名
当社は、平成 24 年度から平成 26 年度の間日建設計総合研究所
殿、大成建設株式会社殿と実施してきました「業務用ビル液冷空調
システムの開発」に関してのパネル、並びに液冷空調システム機材
の試作機を共同で展示しました。併設のセミナーでの発表時は立
ち見の方もおられ、多くの来場者に高い関心を頂きました。
12
「ビジネス EXPO 2015」
(北海道支店)
主催者:経済産業省北海道経済産業局
北海道、札幌市、
他
会 場:アクセスサッポロ
開催日:2015 年 11 月 5 日~ 6 日
来場者数:20,665 名
来場者からは「完全制御型植物栽培システ
ム」の仕組みや栽培期間、室内環境について、
また、「エコノパイロット」の削減効果や導入
事例などの質問があり、当社の技術をアピー
ルする良い機会となりました。
「もりもりフェスティバル 2015」
(本店)
主催者:中央区立環境情報センター
会 場:京橋環境ステーション
開催日:2015 年 7 月 27 日~ 8 月 2 日
当社のキャラクター「ペックくん」も参加
し 展 示 ブ ー ス e4XROSS に 子 供 達 を 誘 い
省エネ設備の紹介・説明を行いました。
なお、アドバイスとフォロー頂きました中央
区環境情報センターの方々に御礼申し上げま
す。
「アグロ・イノベーション 2015」
(技術研究所)
主催者:一般社団法人 日本能率協会
会 場:東京ビッグサイト
開催日:2015 年 11 月 18 日~ 20 日
来場者数:16,968 名
高付加価値植物に関心があるお客様が多
く,当社の高付加価値・遺伝子組換え植物へ
の取組みに興味を持って頂けたと思います。
また,海外展開(特に中国,東南アジア)を視
野に入れたお客様が多かったのが印象的で
した。
多くのお客様にご来場頂き誠に
ありがとうございました。
今 後 も 環 境 技 術・ 省 エ ネ 技 術 を 中
心とした展示会を計画しておりま
すので、ご期待下さい。
13
筑波大学国際統合睡眠医科学
研究棟 新営工事
『京都おもてなし小路』
新設工事
東関東支店 技術部 副参事 河部 忠信
建 築 概 要
建 築 概 要
所 在 地:茨城県つくば市天王台 1-1-1 筑波大学構内西地区
所 在 地:京都市下京区東塩小路高倉町 8-3
用 途:研究所
敷 地 面 積:197,854.89 ㎡
用 途:駅施設
規 模 構 造:地上 3 階建、
RC造
延 床 面 積:
設 計:ジェイアール東海コンサルタンツ株式会社
7,995.72 ㎡
規 模 構 造:地上6階、
S造
施 工:建 築 ジェイアール東海建設 株式会社
発 注 者:国立大学法人 筑波大学
建築内装 株式会社 船場
設 計:久米設計・プラナス設計 JV
空 調 株式会社 朝日工業社
施 工:建築 大成建設 株式会社
衛 生 株式会社 西原衛生工業所
電気 旭日電気工業 株式会社
機械 株式会社 朝日工業社
プロフィール
電 気 新生テクノス 株式会社
プロフィール
筑波大学国際統合睡眠医科学研究棟は、睡眠障害及び関連疾
JR東海道新幹線京都駅の商業施設
「アスティ京都」では、京
患の新規療法開発の拠点として新設されました。マウスの実験
都の特徴を生かした商業施設を目指し、レストランゾーンのリ
を通して睡眠のメカニズムを解明し、新規睡眠制御法を開発す
ニューアル工事を行いました。『京都おもてなし小路』という名
ることにより、
自然な眠りを促し、
覚醒時の活動性や気分の安定
を高め、
肥満・糖尿病等への抵抗性を高め、高齢化社会における
健康増進に大きく貢献すると期待されています。
空調設備の特徴として飼育室系統の空調方式は、50%能
力の外気処理空調機を2台設置とし、1台が故障した場合でも
空調を継続できる構成としました。また、各飼育室の給気口に
は HEPA フィルターを設置せず、外気処理空調機の給気側に
HEPA フィルターユニットを集中配置しました。これにより、
各飼育室の HEPA フィルターの交換作業が不要となり、メンテ
ナンスコストの低減が期待されると共に、空調を継続しながら
HEPA フィルターの交換も可能となります。
最後になりますが、大学関係者、設計事務所、並びに各種工事
関係者の方々のご協力に感謝すると共に、無事竣工を迎えるこ
とが出来たことをこの場を借りてお礼申し上げます。
そして、この研究施設の目覚ましい活躍を期待しております。
14
大阪支社 工事部 副参事 河本 雄二
称で新たに開業した本施設は、京都の街並みをイメージしたデ
ザインで空間を演出しています。通路の両サイドには老舗が立
ち並び、京都駅を利用される方や、京都を観光される人達に
「京
都らしさ」
を感じていただけます。
空調設備はファンコイルユニットを各所に設置し、駅全体を
まかなう既存熱源設備より冷温水を供給しています。夏は蒸し
暑く、冬は底冷えする盆地特有の厳しい季節でも京都の街並み
を快適にあじわう和みの場所が完成しました。
当社は、
京都駅(新幹線側)の工事に長年携わっており、
国際観
光都市「京都」
の玄関にふさわしい空調環境を提供しています。
鈴鹿市第二学校給食センター
機械設備工事
岩手医科大学附属病院
エネルギーセンター棟新築工事
名古屋支店 工事部 副参事 纐纈 博文
東北支店 技術部 副参事 遠藤 崇
建 築 概 要
建 築 概 要
所 在 地:三重県鈴鹿市稲生4-2-50
所 在 地:岩手県紫波郡矢巾町藤沢第一地割、
第二地割他
用 途:工場
(給食センター)
敷 地 面 積:8,795.60 ㎡
用 途:熱源供給施設
敷 地 面 積:158,838 ㎡
延 床 面 積:3,431.07 ㎡
延 床 面 積:
規 模 構 造:地上2階、
S造
規 模 構 造:地上4階、
RC造
発 注 者:鈴鹿市
発 注 者:学校法人 岩手医科大学
設 計:パシフィックコンサルタンツ 株式会社
設 計 監 理:株式会社 日建設計
監 理:株式会社 前野建築設計
施 工:建築 清水建設 株式会社
施 工:建築 大野・杉之内特定建設共同企業体
電気 近畿電設工業 株式会社
6,477 ㎡
電気 株式会社 興和電設
機械 株式会社 朝日工業社
機械 株式会社 朝日工業社
プロフィール
プロフィール
中学校における『安心安全でおいしい給食の提供拠点』
として
かねてより岩手医科大学殿が進めてきました総合移転整備事
建設された鈴鹿市第二学校給食センターは、工場のイメージを
業は、最終段階を迎え、平成 31年には岩手医科大学創立120 周
払拭し、周辺環境にも調和する外観となっています。また、調理
年記念事業の一環として、矢巾キャンパスに1,000 床規模の新
工程の見学を通して、未来ある子供たちに『食育』
の重要性を理
附属病院が開院する予定です。本工事では病院建設に先立ち、
そ
解してもらう役割も期待されています。
の熱源供給施設としてエネルギーセンターを建設しました。
本施設は、HACCP の概念に基づく明確な食材導線と交差汚
このエネルギーセンターには、当社が担当した国内最大級とな
染回避を考慮した諸室配置、ノロウイルス発生時等に対応可能
る地中熱利用設備などの再生可能エネルギーシステムのほか、
国
な特別洗浄コーナー、アレルギー対応専用調理ライン等を有し、
内初となる制御方法を用いたコージェネレーションシステムが
衛生管理面においても大変充実したものとなっています。
導入されています。また、災害などにより外部からのエネルギー
空調用熱源は、使用頻度の高い調理エリア系統は、
ランニング
供給が途絶した場合でも、最低3日間は自立供給が可能であり、
コストが優位なガスヒートポンプパッケージエアコンを採用
日本屈指の分散型エネルギーシステムを有する施設であります。
し、
使用時間帯が限定される食堂、休憩室、会議室等は、
イニシャ
当社は、総合移転整備事業において、平成17 年に着工した第
ルコストが優位な電気ヒートポンプパッケージエアコンを採用
一次事業より施工に携わり、それ以降、継続的にご下命いただき、
しています。
この度の新附属病院の施工業者にも選定されています。新附属
換気設備については、汚染室⇒非汚染室への空気の移動が発
生しないよう、
室間差圧を保持して清潔度を維持しています。
病院のコンセプトである「患者さんにやさしい病院」
、
「災害に強
い病院」
を実現するべく、東北支店の総力を挙げて新附属病院建
設工事を行っていきたいと考えております。
15
魚沼市新病院 機械設備工事
洗足学園音楽大学教室棟
新築工事
北関東支店 技術部 副参事 菅野 厚
横浜支店 技術部 副参事 清水 克敏
建 築 概 要
建 築 概 要
所 在 地:新潟県魚沼市日渡新田 34
所 在 地:神奈川県川崎市高津区久本 2-3-1
用 途:病院
敷 地 面 積:28,965 ㎡
用 途:学校
敷 地 面 積:1,094.38 ㎡
延 床 面 積:08,315 ㎡(診療棟 : 新築)
延 床 面 積:6,332.22 ㎡
6,035 ㎡(入院棟 : 改修)
規 模:地上3階(診療棟)
地上5階(入院棟)ベット数 134 床
規 模 構 造:地上6階、
RC造
設 計 監 理:株式会社 竹中工務店一級建築士事務所
施 工:建築 株式会社 竹中工務店
構 造:RC造
電気 株式会社 TAKイーヴァック
発 注 者:魚沼市
設 計 監 理:株式会社 内藤建築事務所
機械 株式会社 朝日工業社
施 工:建築 福田 ・ 伊米ヶ崎 ・ 貝瀬材木JV
電気 六興 ・ 東洋 ・ 小幡JV
機械 朝日 ・ 越後交通工業 ・ 佐藤配管JV
プロフィール
新校舎は、音楽大学の一般講義や演奏実技を学ぶために必要
出病院を継承し、新たに市立病院として整備するものです。新
な教室棟として
「アンサンブルシティ」という名称で誕生しまし
潟県が整備する魚沼基幹病院が高度医療を担うのに対し、魚沼
た。アンサンブルシティは演奏練習・ミュージカル・バレエ・
市新病院は地域医療を担う役割が求められています。
ダンスの他、音楽大学では類を見ない声優アニメソングコース
診療棟の熱源は、冷温水発生機、蒸気ボイラーにより、冷温水
を新設し、
音楽の多様化したニーズに応えて始動します。
及び蒸気を必要な箇所へ供給します。熱源機器の半分は、ガス
建物構成は1階がラウンジ・楽器庫などの共用部、2階から
とA重油による切替バーナーとし、通常時はガスを燃料とし、ガ
6階までは全て演習室で大小併せた教室が40余りあり、全て
ス遮断時にはA重油による燃焼に切替えます。
の教室は遮音区画で形成され、音響性能も重視しています。天
給水には上水と雑用水の2系統があり、雑用水には井水を使
井高も全教室で 3 mを超えるゆとりの空間となっており、天井
用しています。上水断水時の緊急用として、緊急ろ過装置を設
形状もほとんどがルーバー天井または露出天井で、更なる空間
置し、井水をろ過して飲料水を確保します。診療棟の一般排水
の広がりとデザイン性を追求した意匠も特徴となっています。
は、通常時は公共下水に放流し、
災害等で下水道が遮断された場
6階には 310㎡の大空間音楽演習室が2室あり、本格的なホー
合には、配管を切替え、
地下ピットの災害時汚水槽に一時貯留し
ル環境での授業も受けることができます。
ます。
魚沼市は新潟県中越地震で大きな被害が出た地域であるため
災害時には多数の被災者の受入れが可能となるように計画され
ています。
16
プロフィール
魚沼市新病院は、
魚沼地域の医療施設再編に伴い、新潟県立小
設備施工もこの建物構成の特徴に付随し、遮音区画貫通部の
徹底管理とデザイン性の追求による納まりや仕上げ仕様の検討
に重点を置き、
品質の良い新校舎を竣工することができました。
久留米市総合都市プラザ
(8番街区)新築工事
九州支店 技術部 副参事 若松 秀一
建 築 概 要
所 在 地:福岡県久留米市六ッ門
用 途:劇場他
延 床 面 積:23,718.44 ㎡
規 模 構 造:地上6階・地下2階、
SRC・RC・S造
発 注 者:六ッ門8番街地区市街地再開発組合
設 計 監 理:香山・DENN・國武・北島・ナカヤマ
特定設計業務共同企業体
施 工:建 築 鹿島・金子・大和・小林
特定建設工事共同企業体
機 械 朝日・古賀・津福
特定建設工事共同企業体
電 気 九電工・川浪電気工事・西部電業
特定建設工事共同企業体
舞台機構 株式会社 サンケンエンジニアリング
舞台照明 株式会社 きんでん
舞台音響 ヤマハサウンドシステム 株式会社
プロフィール
福岡県久留米市は、九州一の大河「筑後川」
が北東部から西部
にかけて貫流し、東部には屏風のように切り立つ耳納連山があ
り、広大で肥沃な筑後平野とともに緑豊かで美しい自然景観を
誇っている地区であります。
久留米市総合都市プラザは、老朽化した久留米市民会館に替
わる文化施設としての機能、医療や企業の発展・交流を促進す
るためのコンベクション施設としての機能、そして、
中心市街地
編 集 後 記
今回の特集では、関東学院大学の大塚雅之先生より
『省資源と
省エネルギーの両輪から考えた水の有効利用』について御寄稿
頂きました。食料の多くを輸入する日本は仮想水(バーチャル
ウォーター)
の観点からは水資源の輸入国でもあること、建物に
おける水資源の新たな有効利用方法・BCPに対応する節水シ
ステム等、
貴重な提言を頂きました。是非ともご高覧下さい。
ニュートレンドでは、当社が開発した快適性と省エネ性を両
立させる「省エネ快適空調システム」と、機械室内の機器・配管
類の配置情報を実測することなく図面化できる「3D レーザー
スキャナ計測」の概要と活用事例を紹介させて頂きました。こ
うした開発品や最新技術の活用事例等につきましては、全国の
展示会にも出展して広く情報発信、技術提案を行い、これからも
お客様のご要望に応えると共に省 CO₂、省資源へ貢献していき
たいと考えております。 最後になりましたが、掲載記事を執筆いただきました皆様、並
びに、施工物件の掲載にご協力頂きましたお客様に改めて感謝
いたします。
(上野)
活性化の役割を担う中核的施設としての機能を併せ持った施設
として久留米市中心市街地の六ッ門地区に建設されました。
17
03(6891)1257
2016.04